JP7180699B2 - フィルムコンデンサ、及び、フィルムコンデンサ用の誘電体樹脂フィルム - Google Patents
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Description
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
本発明のフィルムコンデンサは、誘電体樹脂フィルムと、上記誘電体樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた金属層と、を備えている。
なお、本発明のフィルムコンデンサは、第1の金属層が設けられた第1の誘電体樹脂フィルムと、第2の金属層が設けられた第2の誘電体樹脂フィルムとが積層されてなる積層型のフィルムコンデンサなどであってもよい。
図1に示すフィルムコンデンサ1は、巻回型のフィルムコンデンサであり、巻回状態の第1の誘電体樹脂フィルム11及び第2の誘電体樹脂フィルム12と、第1の誘電体樹脂フィルム11又は第2の誘電体樹脂フィルム12を挟んで互いに対向する第1の金属層(第1の対向電極)21及び第2の金属層(第2の対向電極)22とを備えるとともに、第1の金属層21に電気的に接続される第1の外部端子電極31、及び、第2の金属層22に電気的に接続される第2の外部端子電極32を備えている。
なお、金属層の厚みは、金属層が設けられた誘電体樹脂フィルムを厚み方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
本発明の誘電体樹脂フィルムは、第1有機材料及び第2有機材料から得られる硬化性樹脂を主成分として含み、上記第1有機材料は、ガラス転移温度Tgが87℃より高い第1フェノキシ樹脂を含むフェノキシ樹脂であることが好ましい。
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
なお、第1有機材料の分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン標準試料を基準として算出した重量平均分子量(Mw)を意味する。
このうち、ビフェニル骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ビスフェノールフルオレン骨格、ビスフェノールS骨格、及び、ビスフェノールシクロヘキサノン骨格はビスフェノールA骨格よりも剛直な構造とした骨格であり、エポキシ変性ビスフェノールA骨格は-CH2-CH(OH)-CH2-骨格よりも剛直な構造とした骨格である。
特許文献1の実施例において用いられているフェノキシ樹脂の骨格よりも剛直な骨格が誘電体樹脂フィルムに対して12.5mol%以上含まれていれば、125℃よりも高温での損失係数を低くすることができる。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
硬化性樹脂は、ビフェニル骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ビスフェノールフルオレン骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールシクロヘキサノン骨格、及び、エポキシ変性ビスフェノールA骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を含むことが好ましい。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
なお、フィルムの厚みとは、金属層の厚みを含まないフィルム単独の厚みを意味する。また、フィルムの厚みは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
(比較例1)
第1有機材料(主剤)として、上記式(a)で示されるビスフェノールA骨格を有するビスフェノールA型フェノキシ樹脂を用いた。この材料のTgは87℃である。第2有機材料(硬化剤)として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。メチルエチルケトン溶剤に溶解したフェノキシ樹脂とイソシアネート硬化剤を混合し、メチルエチルケトンを希釈溶剤に用いて樹脂塗料を調合した。調合した塗料を、フィルム成型機を用いてドクターブレード法によりPETフィルム上に厚みが3μmになるようにフィルム成膜した。フィルム成型機は乾燥温度60℃で加熱搬送した。そのフィルムを熱風式オーブンにて150℃、4時間の熱処理を経て熱硬化させた。組成は全て主剤と硬化剤が等量反応するような組成で作製した。
実施例1では、第1有機材料(主剤)として、ビフェニル型エポキシ樹脂とビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂を共重合して得られるフェノキシ樹脂を用いた。第2有機材料(硬化剤)としては、イソシアネート化合物を用いた。本組成では、主剤成分と硬化剤成分の配合比率を変えて熱硬化性フィルムを作製した。また、主剤のビフェニル-ビスフェノールアセトフェノン共重合フェノキシ樹脂にビスフェノールA型フェノキシ樹脂を添加し、ビフェニル骨格やアセトフェノン骨格の濃度を変えて熱硬化性フィルムを作製した。作製したフィルムの125℃、150℃、175℃、200℃の誘電正接(tanδ)の値を測定し、125℃から各温度へのtanδの変動率を算出した。
第1有機材料(主剤)として、上記式(1)で示されるビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂と上記式(2)で示されるビスフェノールアセトフェノン骨格を有するビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂が1:1で共重合したフェノキシ樹脂を用いた。この材料のTgは105℃である。第2有機材料(硬化剤)として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はトルエンジイソシアネート(TDI)を用いた。メチルエチルケトン溶剤に溶解したフェノキシ樹脂とイソシアネート硬化剤を混合し、メチルエチルケトンを希釈溶剤に用いて樹脂塗料を調合した。調合した塗料を、フィルム成型機を用いてドクターブレード法によりPETフィルム上に厚みが3μmになるようにフィルム成膜した。フィルム成型機は乾燥温度60℃で加熱搬送した。そのフィルムを熱風式オーブンにて180℃、4時間の熱処理を経て熱硬化させた。
表1に示すように、硬化剤の比率を変更した組成として、主剤と硬化剤のモル比率が等量、硬化剤量が等量の半分、硬化剤量が等量の1.5倍の3水準を作製した。
表2に示すように、第1有機材料(主剤)にビスフェノールA型フェノキシ樹脂を添加し、硬化後のビフェニル骨格とビスフェノールアセトフェノン骨格の濃度を減らしたフィルムを作製した。ビフェニル-ビスフェノールアセトフェノン共重合フェノキシ樹脂とビスフェノールA型フェノキシ樹脂のモル比率が66/33、50/50、25/75の3水準でフィルムを作製した。それぞれの組成の実質的なビフェニル骨格/ビスフェノールアセトフェノン骨格/ビスフェノールA骨格のモル比率は33/33/33、25/25/50、12.5/12.5/75となる。主剤と硬化剤のモル比率は等量になるように作製した。
作製した幾つかのフィルムについて、DSC装置によりTgfilmを測定した。昇温速度5℃/minで測定を行い、吸発熱温度の時間微分のピークトップの温度を求めた。
作製したフィルムの両面に真空蒸着機を用いて20nmの厚さでAl電極を形成した。Al電極を形成した評価用試料に対して、LCRメーター(4284A:アジレント製)を用いて、測定周波数:100Hz、測定電圧:1Vの条件下で各温度における誘電正接(tanδ)の値を測定することにより損失係数を求めた。
最終的な硬化物であるフィルムにビフェニル骨格が含まれていることは、GC-MSにより検出することができる。測定手順とその結果を下記に示す。
同様に、その他の組成に関しても、GC-MSによりビフェニル骨格が含まれていることを確認することができる。
実施例2では、第1有機材料(主剤)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂を共重合して得られるフェノキシ樹脂を用いた。第2有機材料(硬化剤)としては、実施例1と同様にイソシアネート化合物を用いた。本組成では、主剤成分と硬化剤成分の配合比率を変えて熱硬化性フィルムを作製した。また、主剤のビスフェノールA-ビスフェノールフルオレン共重合フェノキシ樹脂にビスフェノールA型フェノキシ樹脂を添加し、ビスフェノールフルオレン骨格の濃度を変えて熱硬化性フィルムを作製した。作製したフィルムの125℃、150℃、175℃、200℃のtanδの値を測定し、125℃から各温度へのtanδの変動率を算出した。
第1有機材料(主剤)として、上記式(a)で示されるビスフェノールA骨格を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と上記式(3)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が1:1で共重合したフェノキシ樹脂を用いた。この材料のTgは150℃である。第2有機材料(硬化剤)として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はトルエンジイソシアネート(TDI)を用いた。メチルエチルケトン溶剤に溶解したフェノキシ樹脂とイソシアネート硬化剤を混合し、テトラヒドロフランを希釈溶剤に用いて樹脂塗料を調合した。調合した塗料を、フィルム成型機を用いてドクターブレード法によりPETフィルム上に厚みが3μmになるようにフィルム成膜した。フィルム成型機は乾燥温度60℃で加熱搬送した。そのフィルムを熱風式オーブンにて180℃、4時間の熱処理を経て熱硬化させた。
表3に示すように、硬化剤の比率を変更した組成として、主剤と硬化剤のモル比率が等量、硬化剤量が等量の半分、硬化剤量が等量の1.5倍の3水準を作製した。
表4に示すように、第1有機材料(主剤)にビスフェノールA型フェノキシ樹脂を添加し、硬化後のビスフェノールフルオレン骨格の濃度を減らしたフィルムを作製した。ビスフェノールA-ビスフェノールフルオレン共重合フェノキシ樹脂とビスフェノールA型フェノキシ樹脂のモル比率が66/33、50/50、25/75の3水準でフィルムを作製した。ビスフェノールA-ビスフェノールフルオレン共重合フェノキシ樹脂自体にビスフェノールA骨格が半分含まれているため、それぞれの組成の実質的なビスフェノールフルオレン骨格/ビスフェノールA骨格のモル比率は33/66、25/75、12.5/87.5となる。主剤と硬化剤のモル比率は等量になるように作製した。
最終的な硬化物であるフィルムにフルオレン骨格が含まれていることは、GC-MSにより検出することができる。測定手順とその結果を下記に示す。
実施例3では、実施例1及び実施例2で用いたフェノキシ樹脂以外のフェノキシ樹脂を用いた。作製したフィルムの125℃、150℃、175℃、200℃のtanδの値を測定し、125℃から各温度へのtanδの変動率を算出した。
第1有機材料(主剤)として、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(Tg=87℃)よりTgが高いフェノキシ樹脂を用いた。用いたフェノキシ樹脂の名称とTgを表5に示す。第2有機材料(硬化剤)として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。メチルエチルケトン溶剤に溶解したフェノキシ樹脂とイソシアネート硬化剤を混合し、メチルエチルケトンもしくはテトラヒドロフランを希釈溶剤に用いて樹脂塗料を調合した。調合した塗料を、フィルム成型機を用いてドクターブレード法によりPETフィルム上に厚みが3μmになるようにフィルム成膜した。フィルム成型機は乾燥温度60℃で加熱搬送した。そのフィルムを熱風式オーブンにて180℃、4時間の熱処理を経て熱硬化させた。組成は全て、主剤と硬化剤が等量反応するように作製した。
実施例3においても、硬化後のフィルムに剛直な骨格が含まれていることをGC-MSにより検出することができる。代表的な例として、ビスフェノールS骨格を分取する方法とその結果を下記に示す。
11 第1の誘電体樹脂フィルム
12 第2の誘電体樹脂フィルム
21 第1の対向電極(第1の金属層)
22 第2の対向電極(第2の金属層)
31 第1の外部端子電極
32 第2の外部端子電極
Claims (27)
- 前記誘電体樹脂フィルムは、ガラス転移温度Tgfilmが188℃以上である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、ガラス転移温度Tgfilmが400℃以下である、請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、175℃、100Hzにおける損失係数が0%以上、3%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、175℃、100Hzにおける損失係数が1%以下である、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、150℃、100Hzにおける損失係数が0%以上、1%以下である、請求項4又は5に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、125℃、100Hzにおける損失係数が0%以上、1%以下である、請求項4~6のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、200℃、100Hzにおける損失係数が0%以上、5%以下である、請求項4~7のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、125℃から175℃への100Hzにおける損失係数の変動率が+100%以下である、請求項1又は4に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、125℃から175℃への100Hzにおける損失係数の変動率が+40%以下である、請求項9に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、125℃から175℃への100Hzにおける損失係数の変動率が0%以下である、請求項10に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、125℃から175℃への100Hzにおける損失係数の変動率が-100%以上である、請求項9~11のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、125℃から150℃への100Hzにおける損失係数の変動率が0%以下である、請求項1、4及び9のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、125℃から150℃への100Hzにおける損失係数の変動率が-100%以上である、請求項13に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記誘電体樹脂フィルムは、イソシアネート基及び水酸基の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
- 誘電体樹脂フィルムと、
前記誘電体樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた金属層と、を備えるフィルムコンデンサであって、
前記誘電体樹脂フィルムは、第1有機材料及び第2有機材料から得られる硬化性樹脂を主成分として含み、
前記第1有機材料は、ガラス転移温度Tgが87℃より高い第1フェノキシ樹脂を含むフェノキシ樹脂である、フィルムコンデンサ。 - 前記第1フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度Tgが90℃以上である、請求項16に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記第1フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度Tgが200℃以下である、請求項16又は17に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記第1フェノキシ樹脂は、ビフェニル骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ビスフェノールフルオレン骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールシクロヘキサノン骨格、及び、エポキシ変性ビスフェノールA骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を含む、請求項16~19のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記第1フェノキシ樹脂は、ビフェニル-ビスフェノールアセトフェノン共重合フェノキシ樹脂、ビスフェノールA-ビスフェノールフルオレン共重合フェノキシ樹脂、ビスフェノールS-ビスフェノールA共重合フェノキシ樹脂、ビスフェノールA-ビスフェノールTMC共重合フェノキシ樹脂、ビフェニル-ビスフェノールTMC共重合フェノキシ樹脂、ビフェニル-ビスフェノールフルオレン共重合フェノキシ樹脂、及び、エポキシ変性ビスフェノールA-ビスフェノールA共重合フェノキシ樹脂からなる群より選択されるいずれか1種のフェノキシ樹脂である、請求項20に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記第1有機材料中には、前記第1フェノキシ樹脂が前記誘電体樹脂フィルムに対して12.5mol%以上含まれる、請求項16~21のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記第2有機材料は、イソシアネート化合物である、請求項16~22のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記イソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)のいずれか一方である、請求項23に記載のフィルムコンデンサ。
- 前記第1有機材料に対する前記第2有機材料のモル比(第2有機材料/第1有機材料)は、0.5以上、1.5以下である、請求項16又は24に記載のフィルムコンデンサ。
- 第1有機材料及び第2有機材料から得られる硬化性樹脂を主成分として含み、
前記第1有機材料は、ガラス転移温度Tgが87℃より高い第1フェノキシ樹脂を含むフェノキシ樹脂である、フィルムコンデンサ用の誘電体樹脂フィルム。
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