JP7180279B2 - コンクリート加飾用工程紙 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート加飾用工程紙に関する。
従来、フィルムシート(基材)上に、コンクリート硬化遅延剤が混合された樹脂組成物を含む硬化遅延剤層が部分的に形成されて、フィルムシート上に硬化遅延剤層による平面模様を有するコンクリート加飾用工程紙が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のコンクリート加飾用工程紙では、コンクリートの型枠の内面に貼り付けることで、打設されたコンクリートの表面を硬化遅延剤層で部分的に未硬化とし、コンクリート表面に平面模様を転写し、コンクリート表面に意匠を付与するようになっている。
しかし、特許文献1に記載のコンクリート加飾用工程紙を用いて、コンクリート表面に平面模様を転写した場合、転写位置の正面以外からは、平面模様を視認し難かった。
特表2002-537141号公報
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、複数方向から視覚効果を得ることができるコンクリート加飾用工程紙を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)基材シートと、(b)基材シートの一方の面上に形成された、コンクリート硬化遅延剤を含有する樹脂組成物を含む硬化遅延剤層と、を備え、(c)硬化遅延剤層の基材シートと反対側の面には、上記一方の面に対して傾斜した面を含む立体模様が形成されているコンクリート加飾用工程紙であることを要旨とする。
本発明によれば、コンクリート表面に立体模様を転写できるため、複数方向から視覚効果を得ることができるコンクリート加飾用工程紙を提供することができる。
本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙を表す断面図である。 変形例に係るコンクリート加飾用工程紙を表す断面図である。 硬化遅延剤層の構成を表す断面図である。 コンクリート加飾用工程紙の製造方法を示す図である。 コンクリート加飾用工程紙の製造方法を示す図である。 実施例・比較例に係るコンクリート加飾用工程紙を示す断面図である。 コンクリート加飾用工程紙を用いたコンクリートを示す断面図である。 視覚範囲の評価方法を説明するための図である。 視覚認証性の評価方法を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙について図面を参照しつつ説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた形態も、本発明の範囲に含まれる。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
(構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10は、基材シート11と、基材シート11の一方の面11a上に形成されて、基材シート11上に立体模様を形成する硬化遅延剤層13とを備えている。そして、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10は、コンクリートの型枠の内面に貼り付けることで、打設されたコンクリートの表面を硬化遅延剤層13で立体模様に対応させて未硬化として、コンクリート表面に立体模様を転写し、コンクリート表面に意匠を付与可能となっている。
(基材シート)
基材シート11は、基材となるシートである。基材シート11は、フィルムシート、両面ラミクラフト紙を用いて形成される。フィルムシートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムシートを採用できる。熱可塑性樹脂は、Tダイ成形法によってシート状とされる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来のコンクリート加飾用工程紙でフィルムシート(基材)に使用されている熱可塑性樹脂と同様のものを使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはこれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することができる。
なお、フィルムシートに使用可能な熱可塑性樹脂として、多数の熱可塑性樹脂を挙げたが、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは望ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが望ましい。特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)の少なくとも一方を使用することが最も望ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した多くの種類から選択すればよく、特に、ポリプロピレン系樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体が好適である。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合したり、それらに更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等を例示することができる。また、ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられる低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、或いはその水素添加物等の改質剤を添加してもよい。フィルムシートの厚さは、100μm~250μm程度が好ましい。
また、両面ラミクラフト紙としては、図2に示すように、ポリオレフィン層112を両面にラミネートした紙基材111を採用できる。紙基材111としては、特に制限はなく、従来のコンクリート加飾用工程紙で両面ラミクラフト紙(基材)に使用されている紙基材と同様のものを使用できる。例えば、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、クラフト紙、樹脂含浸紙等の紙素材や、各種合成紙等を使用することができる。クラフト紙を用いた場合、紙基材111の厚さは、60μm~260μm程度が好ましい。また、ポリオレフィン層112としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。ポリオレフィン層112の厚さは、10μm~40μm程度が好ましい。また、紙基材111の厚さは、60μm~260μm程度が好ましい。したがって、両面ラミクラフト紙の厚さは、100μm~300μm程度が好ましい。
(硬化遅延剤層)
硬化遅延剤層13は、基材シート11の一方の面11a上に形成され、コンクリート表面を未硬化として、コンクリート表面に意匠を付与するための層である。硬化遅延剤層13は、コンクリート硬化遅延剤を含有する樹脂組成物を含んで形成され、基材シート11と反対側の面13aに一方の面11aに対して傾斜した面を含む立体模様が形成されている。例えば、図3(a)に示すように、コンクリート硬化遅延剤が混合された樹脂組成物が立体模様を形成する構成としてもよいし、図3(b)に示すように、樹脂組成物が立体模様の外形を形成しており、樹脂組成物の表面にコンクリート硬化遅延剤が配置される構成としてもよい。また、樹脂組成物としては、例えば、アクリル系の紫外線硬化型樹脂、ウレタン系の紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等、各種の速乾硬化型樹脂を使用できる。
コンクリート硬化遅延剤としては、例えば、オキシカルボン酸や添加剤をアクリル系樹脂又はロジン系樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる塗工液を使用できる。オキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等或いはこれらの2種以上の混合物、複合体等を使用できる。添加剤としては、例えば、珪藻土、酸化チタンを使用できる。また、アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル或いはこれらの2種以上の混合物、複合体等を使用できる。
珪藻土の粒径は、10μm以上100μm以下が好ましい。また、硬化遅延剤層13が含む各成分の比率は、硬化遅延剤層13の全質量に対して、オキシカルボン酸が10質量%以上20質量%以下、アクリル系樹脂が25質量%以上60質量%以下、珪藻土が10質量%以上15質量%以下、酸化チタンが5質量%以上10質量%以下が好ましい。
立体模様としては、任意の模様を用いることができ、例えば、木の模様、石の模様等を使用できる。硬化遅延剤層13の厚さは、30μm以上500μm以下が好ましい。特に、複数方向から視覚効果を得る点から、150μm以上200μm以下がより好ましい。また、立体模様は、基材シート11の一方の面11aに対して垂直方向に破断した断面に、一方の面11aから20°以上60°以下の鋭角状に突き出した部分を含んでいる。
(コンクリート加飾用工程紙の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10の製造方法を説明する。
まず、コンクリート加飾用工程紙10が、一辺が1m以上の正方形状である場合について説明する。ニッケルメッキが周面に施された金属ロール15を用意する。続いて、図4(a)に示すように、金属ロール15に銅メッキを施す。続いて、図4(b)に示すように、レーザー彫刻で金属ロール15の周面に立体模様を施す。続いて、図4(c)に示すように、金属ロール15にクロムメッキを施す。これにより、印刷版17を作製する。
続いて、図4(d)に示すように、作製した印刷版17に、コンクリート硬化遅延剤が混合された樹脂組成物形成用の塗工液19を塗布する。これにより、印刷版17の立体模様の凹部に塗工液19が満たされる。続いて、図4(e)に示すように、印刷版17の上側に基材シート11を接触させ、塗布した塗工液19を基材シート11の一方の面11aに転写する。続いて、図4(f)に示すように、印刷版17に基材シート11を接触させた状態で、基材シート11を透過するように紫外線を照射して塗工液19を硬化させ、硬化遅延剤層13を形成する。これにより、印刷版17の立体模様が、ほぼ型崩れなく、基材シート11の一方の面11aに転写される。続いて、図4(g)に示すように、基材シート11を剥離する。このような手順によりコンクリート加飾用工程紙10を作製する。
なお、塗工液19としては、コンクリート硬化遅延剤が混合されていない樹脂組成物形成用の塗工液を用いるようにしてもよい。このような塗工液を用いた場合には、硬化した樹脂組成物の表面にコンクリート硬化遅延剤を塗布し、硬化遅延剤層13を形成する。
続いて、コンクリート加飾用工程紙10が、一辺が1m角以下の正方形状である場合について説明する。まず、金属板21を用意する。続いて、図5(a)に示すように、切削を行って金属板21の上面に立体模様を施す。これにより、印刷版23を作製する。
続いて、図5(b)に示すように、作製した印刷版23に、コンクリート硬化遅延剤が混合された樹脂組成物形成用の塗工液25を塗布する。これにより、印刷版17の立体模様の凹部に塗工液19が満たされる。続いて、図5(c)に示すように、印刷版23の上面に基材シート11を接触させ、塗布した塗工液25を基材シート11の一方の面11aに転写する。続いて、図5(d)に示すように、印刷版17に基材シート11を接触させた状態で、基材シート11を透過するように紫外線を照射して塗工液25を硬化させ、硬化遅延剤層13を形成する。これにより、印刷版17の立体模様が、ほぼ型崩れなく、基材シート11の一方の面11aに転写される。続いて、図5(e)に示すように、基材シート11を剥離する。このような手順によりコンクリート加飾用工程紙10を作製する。
なお、塗工液25としては、コンクリート硬化遅延剤が混合されていない樹脂組成物形成用の塗工液を用いるようにしてもよい。このような塗工液を用いた場合には、硬化した樹脂組成物の表面にコンクリート硬化遅延剤を塗布し、硬化遅延剤層13を形成する。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10は、基材シート11と、基材シート11の一方の面11a上に形成された、コンクリート硬化遅延剤を含有する樹脂組成物を含む硬化遅延剤層13とを備えるようにした。そして、硬化遅延剤層13の基材シート11と反対側の面13aには、一方の面11aに対して傾斜した面を含む立体模様を形成するようにした。それゆえ、コンクリート表面に立体模様を転写できるため、複数方向から視覚効果を得られるコンクリート加飾用工程紙10を提供できる。また、立体模様を観察する方向によって、異なる柄模様を視認させることができる。
さらに、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10では、硬化遅延剤層13が、コンクリート硬化遅延剤が混合された樹脂組成物が立体模様を形成するようにした。それゆえ、硬化遅延剤層13の形成に要する手間を低減することができる。
また、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10では、硬化遅延剤層13が、樹脂組成物が立体模様を形成し、樹脂組成物の表面にコンクリート硬化遅延剤を配置するようにした。それゆえ、硬化遅延剤層13の形成に要する手間を低減できる。
さらに、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10では、硬化遅延剤層13が、オキシカルボン酸、添加剤、並びにアクリル系樹脂又はロジン系樹脂を含むようにした。それゆえ、有機系化合物のコンクリート硬化遅延剤を用いるようにしたため、無機系化合物のコンクリート硬化遅延材に比べ遅延効果を大きくすることができる。
また、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10では、硬化遅延剤層13の厚さは、150μm以上200μm以下とした。それゆえ、コンクリート表面により深い立体模様を形成でき、複数方向からの視覚効果をより適切に得ることができる。
また、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10では、基材シート11を、ポリオレフィン系樹脂のフィルムシート、ポリエステル系樹脂のフィルムシート、又はポリオレフィン系樹脂を両面にラミネートしたクラフト紙とした。それゆえ、環境問題の面に加え、各種物性や加工性、汎用性、経済性の面からも望ましい。
さらに、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10では、ポリオレフィン系樹脂のフィルムシートの厚さ、及び前記ポリエステル系樹脂のフィルムシートの厚さを、100μm以上250μm以下とした。また、ポリオレフィン系樹脂を両面にラミネートしたクラフト紙の厚さを、100μm以上300μm以下とした。それゆえ、コンクリートから基材シート11を剥がすときに、基材シート11が破れることを防止できる。また、基材シート11の柔軟性を確保でき、基材シート11の剥がしやすさを確保できる。
以下に、本発明の実施形態に係るコンクリート加飾用工程紙10の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、ポリオレフィン系樹脂を両面にラミネートしたクラフト紙を、基材シート11として作製した。ラミネート方法としては、クラフト紙の両面に溶融したポリオレフィン系樹脂をTダイと呼ばれるスリット状のダイからフィルム状に押出してラミネートする方法を用いた。基材シート11の厚さは、250μmとした。続いて、印刷版17に塗工液19を塗布した後、印刷版17に基材シート11を接触させ、塗布した塗工液19を基材シート11の一方の面11aに転写した。塗工液19としては、塗工液19の全質量に対して、オキシカルボン酸(乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等)を10~65質量%、UV系樹脂を35~80質量%、酸化チタンを5~10質量%含むものを用いた。
続いて、紫外線を照射して塗工液19を硬化させて、硬化遅延剤層13を形成した。硬化遅延剤層13は、図6(a)に示すように、断面が三角形状で且つ細く平面方向に延びている複数の突出部27を有し、立体模様を形成している。突出部27の高さは、30μm以上50μm以下とした。これにより、コンクリート加飾用工程紙10を作製した。
(実施例2)
実施例2では、突出部27の高さを100μm以上150μm未満とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順でコンクリート加飾用工程紙10を作製した。
(実施例3)
実施例3では、図6(b)に示すように、突出部27の高さを150μm以上200μm以下とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順でコンクリート加飾用工程紙10を作製した。
(実施例4)
実施例4では、突出部27の高さを200μmより大きく250μm以下とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順でコンクリート加飾用工程紙10を作製した。
(比較例1)
比較例1では、図6(c)に示すように、硬化遅延剤層13によって平面模様を形成した。それ以外は実施例1と同じ材料・手順でコンクリート加飾用工程紙10を作製した。
(性能評価)
実施例1~4、比較例1のコンクリート加飾用工程紙10を用いて、コンクリートの表面に意匠を付与し、この意匠を付与したコンクリートに対して、以下の性能評価を行った。コンクリートの表面に意匠を付与する工程では、まず、コンクリート加飾用工程紙10をコンクリート型枠(幅20cm×奥行き10cm×高さ5cm)の底面に接着テープで貼り付けた。続いて、コンクリート材料(粗骨剤25~40%、細骨剤25~40%、ポルトランドセメント10~30%)1kgに対して、水0.05~0.20kgを投入し、薬さじ等を用いて2~3分間撹拌した。続いて、撹拌したコンクリートをコンクリート型枠に0.5~1.3kg程度流し込み、常温で24時間養生した。これにより、流し込んだコンクリートを硬化させるとともに、コンクリートの底面を部分的に未硬化とした。
続いて、コンクリートをコンクリート型枠から取り外した。続いて、取り外したコンクリートからコンクリート加飾用工程紙10を引き剥がした。続いて、コンクリートを水に浸しながらブラシで2分間洗い流すことで、コンクリートの底面(表面)の未硬化部分を除去した。続いて、未硬化部分を除去したコンクリートを常温で1時間以上乾燥させた。
これにより、図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示すように、意匠を付与したコンクリート29を作製した。図7(a)は、実施例1のコンクリート加飾用工程紙10を用いて意匠を付与したコンクリート29であり、図7(b)は、実施例2のコンクリート加飾用工程紙10を用いて意匠を付与したコンクリート29であり、図7(c)は、比較例1のコンクリート加飾用工程紙10を用いて意匠を付与したコンクリート29である
(視覚範囲)
視覚範囲評価では、図8に示すように、コンクリート29における意匠を付与した箇所を中心とした半径5mの半円上の複数の箇所のそれぞれから、意匠(柄模様)を明確に見ることができる角度範囲を評価した。
(視覚認証性)
視覚認証性評価では、図9に示すように、コンクリート29における意匠を付与した面から5m離れた面上の複数の箇所のそれぞれから、意匠(柄模様)を明確に見ることができる距離(柄模様正面からの距離)を評価した。
(評価結果)
これらの評価結果を表1に示す。
Figure 0007180279000001
表1に示すように、実施例1~4のコンクリート加飾用工程紙10は、視覚範囲評価及び視覚認証性評価の総合評価が合格「◎」、「○」となった。一方、比較例1のコンクリート加飾用工程紙10は、視覚範囲が80°~90°と狭く、視覚認証性が2mと短いため、視覚範囲評価及び視覚認証性評価の総合評価が不合格「△」となった。
したがって、実施例1~4のコンクリート加飾用工程紙10は、比較例1のコンクリート加飾用工程紙10よりも、複数方向から視覚効果を得られることが確認された。特に、硬化遅延剤層13を150μm以上200μm以下とした場合、コンクリート表面に適切な立体模様を形成でき、複数方向からの視覚効果を適切に得られることが確認された。
10…コンクリート加飾用工程紙、11…基材シート、11a…面、13…硬化遅延剤層、13a…基材シートと反対側の面、15…金属ロール、17…印刷版、19…塗工液、21…金属板、23…印刷版、25…塗工液、27…突出部、29…コンクリート、111…紙基材、112…ポリオレフィン層

Claims (6)

  1. 平坦な基材シートと、
    前記基材シートの一方の面上に形成され、コンクリート硬化遅延剤が混合された樹脂組成物で構成された硬化遅延剤層と、を備え、
    前記硬化遅延剤層は、前記一方の面の面内の位置に応じて連続的に厚さが変化することで、前記一方の面に対して傾斜した面である傾斜面を含む立体模様を形成しており、
    前記傾斜面の傾斜角度は、前記一方の面から20°以上60°以下であり、
    前記立体模様の高低差は、30μm以上500μm以下であることを特徴とするコンクリート加飾用工程紙。
  2. 前記立体模様の高低差は、150μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート加飾用工程紙。
  3. 前記硬化遅延剤層は、オキシカルボン酸、添加剤、並びにアクリル系樹脂又はロジン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート加飾用工程紙。
  4. 前記基材シートは、ポリオレフィン系樹脂のフィルムシート、ポリエステル系樹脂のフィルムシート、又はポリオレフィン系樹脂を両面にラミネートしたクラフト紙であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のコンクリート加飾用工程紙。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂のフィルムシートの厚さ、及び前記ポリエステル系樹脂のフィルムシートの厚さは、100μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート加飾用工程紙。
  6. 前記ポリオレフィン系樹脂を両面にラミネートしたクラフト紙の厚さは、100μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載のコンクリート加飾用工程紙。
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