JP7179656B2 - Cxcr4産生抑制用組成物 - Google Patents
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Description
近年、ウイルス感染や腫瘍の転移に関わるタンパク質としてCXCR4が注目されている。CXCR4は、全身の細胞に存在し、エイズウイルスが宿主細胞へ感染する際に利用するケモカイン受容体である。また、腫瘍の転移が起こりやすい臓器ではCXCR4のリガンドCXCL12(SDF-1/PBSF)が発現し、腫瘍細胞ではCXCR4の発現が亢進していることが知られている。さらに乾癬の表皮肥厚に関与していることが明らかになっている。またがん細胞ではCXCR4高発現細胞の方が、がん細胞の組織浸潤性が高いともいわれている。
このCXCR4の作用を抑制してCXCR4が関与する疾患の予防や治療の目的でアンタゴニスト(特許文献1、2)、リガンド(特許文献3)、抗体(特許文献4)などを使用することが提案されている。
すなわち、本発明はCXCR4の産生抑制用組成物を提供することを課題とする。また本発明は、CXCR4産生抑制用組成物を用いた細胞浸潤抑制用組成物を提供すること課題とする。
(1)プルネチン及び/又はプルネチン含有抽出物を有効成分として含有するCXCR4産生抑制用組成物。
(2)プルネチン及び/又はプルネチン含有抽出物を有効成分として含有する、細胞浸潤抑制用組成物。
(3)プルネチン及び/又はプルネチン含有抽出物を有効成分として含有する、基底膜破壊抑制用組成物
(4)プルネチン含有抽出物が、サクラ、カンゾウから選択される1以上の植物の抽出物である(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
また、本発明によりCXCR4を抑制することによって、CXCR4に由来する細胞浸潤を抑制するための組成物が提供される。さらにまた、本発明によって皮膚基底膜破壊を抑制する組成物が提供される。
また、本願明細書において使用する「細胞浸潤抑制」とは、本来その組織固有のものでない細胞が、当該組織の基底膜を越えて、組織の中に出現することをいう。
1.プルネチン
プルネチン(Prunetin :4’,5-dihydroxy-7-methoxy-2,3-didehydroisoflavan-4-one、4’,5-ジヒドロキシ-7-メトキシ-2,3-ジデヒドロイソフラバン-4-オン)は、下記化学式1で表される構造を有しているフラボノイド化合物に分類される公知の化合物である。
本発明のCXCR4産生抑制組成物、細胞浸潤抑制用組成物には、プルネチンを0.000000001~10質量%、好ましくは0.00000001~1質量%、特に好ましくは0.00000001~0.1質量%配合する。
本発明のプルネチンを含有するCXCR4産生抑制組成物、細胞浸潤抑制用組成物、各種医薬品、食品、健康食品、化粧品、医薬部外品等とすることが可能である。剤形としては特に制限されず、種々の形態とすることができ、具体的には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等経口投与のための形態、注射剤、外用剤、クリーム、軟膏とすることができる。
またプルネチンは、サクラ属(Prunus)に含有される。その中でもソメイヨシノ(Cerasus yedoensis)の葉を用いることが好ましい。そのほか、カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物の全草から抽出することができる。このプルネチンを含有する抽出物を、本発明の有効成分として、CXCR4産生抑制組成物、細胞浸潤抑制用組成物に配合することができる。
植物体から抽出する場合、本発明において、溶媒抽出に用いられる抽出溶媒は、植物材料からの溶媒抽出に用いられる公知の抽出溶媒であればいずれも使用可能である。抽出溶媒としては、親水性の高い溶媒を用いると、本願発明の目的に合致した、効果の高い抽出物が得られるため、好ましく用いられる。このような溶媒として、本発明では、水、水溶性有機溶剤又はこれらの混合溶媒から選ばれる溶媒が特に好ましく用いられる。前記水溶性有機溶媒とは、水と相溶性を有する溶媒を指し、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、その他アセトン等の極性の高い有機溶剤が挙げられる。上記抽出溶媒の中で、好適なものとしては、エタノール又はエタノール水溶液が挙げられる。
また、プルネチン含有植物抽出物は、食品、健康食品、化粧品、医薬部外品等とすることが可能である。剤形としては特に制限されず、種々の形態とすることができ、具体的には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等経口投与のための形態、注射剤、外用剤、クリーム、軟膏、塗布剤、ローション等の液状化粧料とすることができる。
1.プルネチン又はサクラエキスBによるCXCR4遺伝子の発現抑制試験
(1)ケラチノサイトを用いた試験
1)試験に用いた細胞
[ケラチノサイト]
正常ヒト表皮由来のケラチノサイト(Thermo Fisher Scientific)を90000cells/cm2でφ35mm ディッシュに播種し、EpiLife(登録商標) Medium with 60μM Calcium(Thermo Fisher Scientific社製)にHumedia-KG2増殖添加剤(倉敷紡績株式会社製)を添加した培地で2日間培養したものを試験細胞とした。
細胞は、37℃、5%二酸化炭素、95%雰囲気下にて培養を行った。
試験試料として精製プルネチン(Sigma Aldrich社)及びソメイヨシノ葉抽出液(製品名「サクラエキスB(一丸ファルコス株式会社))(組成:ソメイヨシノ葉エキス 2.0質量%、1,3-ブチレングリコール49.0質量%、精製水 49.0質量%)」プルネチン含有量0.00001質量%を用いた。
ケラチノサイトを培養中の上記ディッシュに試験試料(プルネチン0、6.25,25μM、サクラエキス0、0.2、0.4質量%)を添加し(n=3)、24時間培養したものを試験細胞とした。その後、HANKS(-)2mlで細胞を洗浄後、HANKS(-)1mlを入れ、15mJ/cm2のUVBを照射してCXCR4を誘導した。さらに24時間経過後にmRNAを抽出した。培養ディッシュにTRIZOL(Thermo Fisher Scientific社製)を0.5ml添加してmRNAを溶解した。定法に従ってmRNAを抽出し、PrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ社製)でcDNAを合成した。
SYBRPremix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus) (タカラバイオ社製)で調製し、LightCycler(登録商標)480システム II(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)でRPS18をリファレンス遺伝子として、CXCR4の発現を下記のプライマーを使用し、ΔΔCt法により評価した。なお比較対照としてUVB非照射(CXCR4の誘導なし)を用いた。
CXCR4
Forward CCTGCCTGGTATTGTCATCCTG(配列番号1)
Reverse ACTGTGGTCTTGAGGGCCTTG(配列番号2)
RPS18
Forward TTTGCGAGTACTCAACACCAACATC(配列番号3)
Reverse GACCATATCTTCGGCCCACAC(配列番号4)
1)試験に用いた細胞
[メラノサイト]
正常ヒト表皮由来のメラノサイト(ロンザジャパン)を150000cells/cm2Medium 254(Thermo Fisher Scientific社製)にHMGS(Thermo Fisher Scientific社製)を添加した培地で24時間培養したものを試験細胞とした。
細胞は、37℃、5%二酸化炭素、95%雰囲気下にて培養を行った。
試験試料として精製プルネチン(Sigma Aldrich社)及びソメイヨシノ葉抽出液(製品名「サクラエキスB(一丸ファルコス株式会社)」プルネチン含有量0.00001質量%を用いた。
メラノサイトを培養中の上記ディッシュに試験試料(プルネチン0、3.125、6.25μM、サクラエキス0、0.2、0.4質量%)を添加し(n=3)、24時間培養した。その後、HANKS(-)2mlで細胞を洗浄後、HANKS(-)1mlを入れ、15mJ/cm2のUVBを照射し、さらに24時間経過後にmRNAをRNeasy Mini Kit(Qiagen社製)で定法に従ってmRNAを抽出した。PrimeScriptII 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ社製)でcDNAを合成し、SYBR(登録商標)Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus)(タカラバイオ社製)を用い、LightCycler(登録商標)480システム II(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)でRPS18をリファレンス遺伝子として、CXCR4の発現を下記のプライマーを使用してΔΔCt法によって評価した。なお比較対照としてUVB非照射(CXCR4の誘導なし)を用いた。
CXCR4
Forward CCTGCCTGGTATTGTCATCCTG(配列番号1)
Reverse ACTGTGGTCTTGAGGGCCTTG(配列番号2)
RPS18
Forward TTTGCGAGTACTCAACACCAACATC(配列番号3)
Reverse GACCATATCTTCGGCCCACAC(配列番号4)
プルネチンによるケラチノサイトCXCR4の発現抑制試験の結果を図1、プルネチンによるメラノサイトCXCR4の発現抑制試験の結果を図2に示す。
また、サクラエキスBによるケラチノサイトCXCR4の発現抑制試験の結果を図3、サクラエキスBによるメラノサイトCXCR4の発現抑制試験の結果を図4に示す。
また図中の有意差符号は、*:P<0.05、***:P<0.001 VS UVB非照射かつプルネチン、サクラエキスB無添加、#:P<0.05、##:P<0.01 VS UVB照射かつプルネチン、サクラエキスB無添加を示す。
UVB紫外線は、皮膚基底膜にCXCR4を増加させ、基底層の破壊及び細胞浸潤をもたらす。このUVB紫外線のCXCR4増加をプルネチンが抑制することを確認するためヒト皮膚組織を用いた試験を行った。
1)試験試料としてプルネチン(100μMに0.025% DMSO・PBS(-)で調製)を用いた。
各バンドの発光強度をImage J(アメリカ国立衛生研究所NIH)で画像解析し、CXCR4のバンドの発光強度をGAPDHのバンドの濃さで割り返した割合の3ウエルの平均値を求め、無処置ウエルを1とする相対値を算出した。
紫外線によるCXCR4産生量比較結果を図6に示す。皮膚中のCXCR4は紫外線照射により増加するが、プルネチンの添加により増加の抑制が確認された。基底膜構成コラーゲンであるTypeIVコラーゲンを免疫染色した蛍光顕微鏡観察画像を図5に示す。比較のためUVB照射なし(UVB(-))、UVB照射のみ(UVB(+))、UVB照射プルネチン塗布(UVB(+)+prunetin)の画像を示す。
この染色標本の画像では、表皮と真皮の境界にあるTypeIVコラーゲン陽性の基底膜は、黄色の蛍光を発していることで観察できる(UVB(-)画像の4倍に拡大した画像参照)。一方、この基底膜は、UVB照射により見えなくなる(UVB(+)画像の4倍に拡大した画像参照)が、プルネチン塗布によってTypeIVコラーゲン陽性の基底膜特有の黄色蛍光を確認することができた。
これらの結果から、プルネチンの塗布によって皮膚中のCXCR4産生が抑制され、基底膜の組織がUVB照射によって破壊されないことが確認できた。したがって基底膜破壊とそれに伴う基底膜内に基底層の細胞が浸潤を抑制することが可能となる。
処方例1 ローション
成分 配合量(質量%)
1.グリセリン 9.5
2.1,3-ブチレングリコール 4.5
3.ブドウ糖 1.5
4.エタノール 5
5.カルボキシビニルポリマー 0.02
6.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
7.ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
8.プルネチン 0.00000001
9.クエン酸 0.05
10.クエン酸ナトリウム 0.1
11.イオン交換水 残余
12.水酸化カリウム 0.01
室温下で、成分11に1~10の成分を加え攪拌溶解し、成分12を加えて均一に溶解してローションを得た。
成分 配合量(質量%)
1.ステアリルアルコール 6
2.ステアリン酸 2
3.スクワラン 9
4.オクチルドデカノール 10
5.1,3-ブチレングリコール 8
6.ポリエチレングリコール1500 4
7.POE(25)セチルアルコールエーテル 3
8.モノステアリン酸グリセリル 2
9.精製水 残余
10.プルネチン 0.003
成分1~4を80℃に加熱溶解し油相とする。成分5~9を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、成分10を加えた後、さらに30℃まで攪拌冷却してクリームを得た。
成分 配合量(質量%)
1.ポリビニルアルコール 15
2.カルボキシメチルセルロース 5
3.1,3-ブチレングリコール 5
4.エタノール 12
5.サクラ葉エキス 0.1
6.POEオレイルアルコールエーテル 0.5
7.クエン酸 0.02
8.クエン酸ナトリウム 0.04
9.精製水 残余
Claims (2)
- プルネチン及び/又はプルネチン含有抽出物を有効成分として含有するCXCR4産生抑制用組成物。
- プルネチン含有抽出物が、サクラ、カンゾウから選択される1以上の植物の抽出物である請求項1に記載の組成物。
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