JP7178773B2 - ポリプロピレン樹脂組成物、及びこれを用いた医療用成形体 - Google Patents
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一実施形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、(A)プロピレン系重合体と、(B)スチレン系エラストマー又はエチレン系エラストマーのうち少なくとも一方のエラストマーと、(C)ヒンダードアミン光安定剤と、(D)リン系酸化防止剤又はヒドロキシルアミン系酸化防止剤のうち少なくとも一方の酸化防止剤とを含有する。
一実施形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、1種又は2種以上のプロピレン系重合体を含有する。プロピレン系重合体は、プロピレンに由来する単量体単位から主として構成される重合体である。プロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンとその他の共重合モノマーとの共重合体であってもよい。プロピレン系重合体は結晶性を有していてもよい。プロピレン系重合体として、通常は、アイソタクチック結晶性を有するプロピレン系重合体が用いられる。
一実施形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、スチレン系エラストマー、エチレン系エラストマー又はこれらの両方のエラストマーを含有する。これらエラストマーを含有するポリプロピレン樹脂組成物は、主にプロピレン系重合体を含む連続相と、該連続相中に分散している、主にエラストマーを含む粒子(エラストマー粒子)とから構成された相分離構造を形成する。この相分離構造において、エラストマー粒子の平均分散粒径が0.06μm以下である。エラストマー粒子が係る特定の微小な粒径で分散していることは、特に放射線による滅菌後の溶出物抑制に寄与する。エラストマー粒子の平均分散粒径は、0.05μm以下であってもよい。エラストマー粒子の平均分散粒径の下限は、特に制限されないが、通常、0.01μm以上程度である。スチレン系エラストマーは、微小な粒径を有するエラストマー粒子をプロピレン系重合体中で特に形成し易い。
一実施形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、ヒンダードアミノ基として2級又は3級アミノ基を有する1種又は2種以上のヒンダードアミン光安定剤を含有する。
一実施形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、リン系酸化防止剤又はヒドロキシルアミン系酸化防止剤のうち少なくとも一方の酸化防止剤を含有し、その含有量は、プロピレン系重合体及びエラストマーの合計量を基準として、200ppm以上1500ppm以下である。これら特定の酸化防止剤の含有量が200ppm以上1500ppm以下であることで、放射線による滅菌後の色調変化及び溶出物抑制の点で優れた効果が得られる。同様の観点から、酸化防止剤の含有量が300ppm以上、又は400ppm以上であってもよく、1300ppm以下であってもよい。ここでの「酸化防止剤の含有量」は、ポリプロピレン樹脂組成物がリン系酸化防止剤及びヒドロキシルアミン系酸化防止剤を両方含有する場合、それらの合計量である。
一実施形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、1種又は2種以上の芳香族リン酸エステル金属塩を含む造核剤を含有してもよい。造核剤は、通常、粒子の形態を有している。芳香族リン酸エステル金属塩は、芳香族リン酸エステルと金属とから形成される塩であり、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアルミニウム塩であってもよい。アルカリ金属塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩の例としては、ベリリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、及びバリウム塩が挙げられる。耐抽出性に優れるという効果の観点から、芳香族リン酸エステル金属塩は、アルミニウム塩、リチウム塩、又はナトリウム塩であってもよく、リチウム塩であってもよい。
ポリプロピレン樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、中和剤、耐侯剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、及び銅害防止剤から選ばれる他の成分を含んでいてもよい。
ポリプロピレン樹脂組成物は、例えば、プロピレン系重合体、エラストマー、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、及び必要によりその他の成分を、通常の方法によって溶融混錬して得ることができる。製造されるポリプロピレン樹脂組成物は、成形用のペレットの形態を有していてもよい。例えば、原料をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等の混合機を用いて混合して混合物を調製し、これを一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて均一に溶融混練する方法により、ペレット化されたポリプロピレン樹脂組成物を得ることができる。
上述のポリプロピレン樹脂組成物を成形して得られる成形体は、γ線等の放射線滅菌、電子線滅菌、高圧蒸気滅菌等の滅菌処理に対して優れた耐性を有することから、使用時に各種薬剤と接触する医療用成形体として有用である。医療用成形体の例は、シリンジの外筒、及びダイアライザーのハウジングを含む。シリンジは、ディスポーザブルシリンジであってもよいし、予め充填された薬液を含むプレフィルドシリンジであってもよい。
実施例及び比較例では、以下の原料を使用した。
(A)プロピレン系重合体
特開平7-216017号公報の実施例1に記載の方法によって、α-オレフィン重合用の固体重合触媒を準備した。この固体重合触媒の存在下で、プロピレン及びエチレンを気相重合することによって、パウダー状のプロピレン-エチレン共重合体を得た。得られたプロピレン-エチレン共重合体の特性を後述する方法によって測定した。メルトフローレイトは25g/10分で、エチレンに由来する単量体単位の含有量は2.5質量%で、融点は144.1℃であった。
(B-1)スチレン系エラストマー
・スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(ハイブラー7311F、クラレ(株)製、スチレンに由来する単量体単位の含有量:12質量%)
(B-2)スチレン系エラストマー
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(クレイトンG1657、クレイトンポリマー製、スチレンに由来する単量体単位の含有量:13質量%)
(B-3)スチレン系エラストマー
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(クレイトンG1643、クレイトンポリマー製、スチレンに由来する単量体単位の含有量:18質量%)
(B-4)エチレン系エラストマー
・エクセレンVL EUL731(エチレン-ブテン-1共重合体、MFR=10g/10分(190℃、2.)、密度=895(kg/m3)、高圧法重合、住友化学社製)
(C-1)1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸ジメチルとの縮合重合体(式(IIa)(式中のnは2以上の整数を示す。)で表される重合体、Tinuvin622、BASFジャパン株式会社製、分子量:3100~4000)
(C-2)N-(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジン)マレイン酸イミド及びα-オレフィン(C20-24)の共重合体(式(IIIa)(nは2以上の整数を示す。)で表される共重合体、Uvinul5050H、BASFジャパン株式会社製、分子量:3500)
(D-1)リン系酸化防止剤
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(Irgafos 168、BASFジャパン株式会社製)
(D-2)リン系酸化防止剤/ヒドロキシルアミン系酸化防止剤の混合物
・N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン50質量%とトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト50質量%の混合物(Irgastab FS301、BASFジャパン株式会社製)
(D-3)フェノール系酸化防止剤
・ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASFジャパン株式会社製)
芳香族リン酸エステル金属塩
・ヒドロキシアルミニウム-ビス[2,2-メチレン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスフェート](式(20a)で表される化合物)と炭素数8~20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩の混合物(ADEKASTAB NA-21、株式会社ADEKA製)
DHT-4C
・マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート(協和化学工業株式会社製)
(1)プロピレン系重合体における単量体単位の含有量
プロピレン系重合体(プロピレン-エチレンランダム共重合体)のIRスペクトルを測定した。得られたIRスペクトルデータから、エチレンに由来する単量体単位の含有量(単位:質量%)を、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている「(i)ランダム共重合体に関する方法」に従って求めた。
プロピレンに由来する単量体単位の含有量(質量%)=100(質量%)-エチレンに由来する単量体単位の含有量(質量%)
プロピレン系重合体の粉体100質量部を、酸化防止剤のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.5質量部とブレンドした。得られた粉体混合物を用いて、ポリプロピレン系重合体のメルトフローレイトを、JIS K 7210の条件14の方法に従って、温度230℃、荷重21.18Nの条件でメルトフローレイトを測定した。(B-4)エチレン系エラストマーのメルトフローレイトは、JIS K6760に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
(B-4)エチレン系エラストマーの密度(kg/m3)を、JIS K6760-1981に従って測定した。
ポリプロピレン系重合体を熱プレス成形して、厚さ0.5mmのシートを作成した。熱プレス成形は、230℃で5分間の予熱後、1分間かけて5.0MPaまで昇圧して2分間保圧し、次いで、30℃、5.0MPaで5分間冷却する条件で行った。得られたシートから採取した試料について、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、Diamond DSC)を用いて、以下の条件で融点を測定した。
試料10mgを窒素雰囲気下220℃で5分間熱処理後、降温速度10℃/分で50℃まで冷却した。次いで、50℃で1分間保持した後、試料を50℃から180℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、観測された融解ピークのピークトップ温度を融点[℃]とした。
3-1.ポリプロピレンシートの作成
表1に記載した組成(質量部)の原料を、ポリエチレン袋内で均一に混合した。得られた混合物を、スクリュー径30mmφの単軸押出機によって、窒素雰囲気下、吐出量6kg/時、180℃で溶融混練し、ポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得た。
ポリプロピレンシートから、表面積150cm2の試験片を切り出した。試験片に対して、空気雰囲気下、室温にて50kGyの平均線量でガンマ線を照射した。その後、試験片を幅5mm、長さ25mmに裁断し、超純水で洗った後、室温で乾燥した。乾燥後の試験片を硬質ガラス製容器に入れ、超純水50mLを加え、密栓した。試験片及び超純水が入った硬質ガラス製容器を、オーブンを用いて70℃で24時間加熱した後、室温になるまで放置した。放置後の容器内の液を試験液とした。超純水のみを入れた硬質ガラス製容器も同時に処理して、空試験液を準備した。
第一六改正日本薬局方 2.7.02 プラスチック製医薬品容器試験法 1.2溶出物試験の「(iv)紫外吸収スペクトル」に記載の試験方法に基づいて、試験液及び対照のための空試験液の紫外吸収スペクトルを測定した。波長220~240nmにおける最大吸光度が0.08以下、且つ、241~350nmにおける最大吸光度が0.05以下の条件を満たす試験片を日本薬局方の規格をクリアすると判定した。結果を表1に示す。表1中、「NG」は規格をクリアしなかったことを示す。
1mm厚みのポリプロピレンシートに対して、50kGyのガンマ線を照射した。ガンマ線照射前後のポリプロピレンシートの色差(イエロー・インデックス:YI)を、色差測定器(スガ試験機(株)製、SM-P45)を用いて測定した。ガンマ線照射前後のYIの差を、色調の変化ΔYIとして記録した。
四酸化ルテニウムでスチレン系エラストマー及びエチレン系エラストマーを蒸気染色した後、ポリプロピレンシートをクライオミクロトームで薄片化した。薄片を透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、H-7650)を用いて観察し、測定視野4.5μm四方、拡大倍率20000倍の画像写真を得た。得られた画像写真を、ニレコ社製の画像解析装置ルーゼックスAPに取り込み、2値化した。染色部(エラストマー粒子)の円相当径を算出し、それらの平均値を平均分散径とした。
Claims (5)
- (A)プロピレン系重合体と、
(B)スチレン系エラストマーと、
(C)ヒンダードアミン光安定剤と、
(D)リン系酸化防止剤又はヒドロキシルアミン系酸化防止剤のうち少なくとも一方の酸化防止剤と、
を含有し、
前記プロピレン系重合体及び前記スチレン系エラストマーの合計量を100質量部としたときに、前記スチレン系エラストマーの含有量が1質量部以上20質量部以下であり、
前記酸化防止剤の含有量が、前記プロピレン系重合体及び前記スチレン系エラストマーの合計量を基準として、200ppm以上1500ppm以下であり、
前記プロピレン系重合体を含む連続相中に前記スチレン系エラストマーを含む粒子が分散しており、前記スチレン系エラストマーを含む粒子の平均分散粒径が0.06μm以下である、
ポリプロピレン樹脂組成物。 - (E)芳香族リン酸エステル金属塩を含む造核剤を更に含有する、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物からなる医療用成形体。
- 請求項3に記載の医療用成形体を有する外筒を備える、シリンジ。
- 請求項3に記載の医療用成形体を有するハウジングを備える、ダイアライザー。
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