以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。図1に示すドア10は、車両ボディ(図示略)の右側前席の側方に取り付けられる側面ドアであり、車両ボディにはドア10によって開閉されるドア開口(図示略)が形成されている。ドア10は、ドアパネル10a(一点鎖線で仮想的に示す)とドアサッシュ10bとを備えている。ドアパネル10aの上縁部とドアサッシュ10bとによって囲まれる窓開口10cが形成されている。
以下の説明における車内側と車外側は、ドア10を閉じた状態での車両ボディの内側と外側に対応しており、車内側と車外側を結ぶ方向(ドア10の厚み方向)を車内外方向と呼ぶ。また、ドアサッシュ10bのうち、窓開口10cに向く側を内周側、窓開口10cの反対側(ドア10を閉じた状態でボディ開口の内縁に向く側)を外周側とし、内周側と外周側を結ぶ方向を内外周方向と呼ぶ。
図示を省略するが、ドアパネル10aは、車内側に位置するインナパネルと、車外側に位置するアウタパネルとを組み合わせて構成されている。インナパネルとアウタパネルの間にドアパネル内空間(図示略)が形成されており、ドアパネル内空間の上縁は窓開口10c側に開口している。
ドアサッシュ10bは、ドア10の上縁に位置するアッパサッシュ11と、アッパサッシュ11からドアパネル10aへ向けて概ね上下方向に延びている立柱サッシュ12及びフロントサッシュ13とを有している。立柱サッシュ12はドアサッシュ10bの最後部に位置しており、ドア10の後部上方の角隅部は、アッパサッシュ11の後端と立柱サッシュ12の上端が交わるドアコーナー部10dとなっている。立柱サッシュ12とフロントサッシュ13は略平行に延びており、立柱サッシュ12が窓開口10cの後縁を形成し、フロントサッシュ13が窓開口10cの前縁を形成する。また、アッパサッシュ11が窓開口10cの上縁を形成する。
立柱サッシュ12は、ドアコーナー部10dから下方(斜め下方)に延びてドアパネル内空間に挿入される。アッパサッシュ11は、ドアコーナー部10dから前方に延び、途中から前方に進むにつれて下方に湾曲する。アッパサッシュ11の前端はドアパネル10aのドアパネル内空間に挿入される。フロントサッシュ13は、アッパサッシュ11の途中位置から下方(斜め下方)に延びてドアパネル内空間に挿入される。アッパサッシュ11と立柱サッシュ12とフロントサッシュ13はそれぞれ、ドアパネル内空間内でドアパネル10aに対して固定される。
ドアパネル内空間には、前部にミラーブラケット14が配され、後部にロックブラケット15が配されている。ミラーブラケット14とロックブラケット15はそれぞれドアパネル10aに対して固定され、ミラーブラケット14にフロントサッシュ13が固定され、ロックブラケット15に立柱サッシュ12が固定される。ミラーブラケット14の一部は、ドアパネル10aよりも上方に突出してアッパサッシュ11とフロントサッシュ13の間の三角状のスペースに収まる形状をなし、ミラーブラケット14の当該部分に対してドアミラー(図示略)等が取り付けられる。ロックブラケット15にはドアロック機構(図示略)等が取り付けられる。
ドアパネル内空間の上縁付近に、前後方向に延びるベルトラインリンフォース16が配されている。ベルトラインリンフォース16は車外側に位置するアウタリンフォースを少なくとも備えており、その前部がミラーブラケット14に固定され後部がロックブラケット15に固定される。なお、ベルトラインリンフォース16の構成として、アウタリンフォースに加えて、車内側に位置するインナリンフォースを備えてもよい。
立柱サッシュ12とフロントサッシュ13に沿って昇降して窓開口10cを開閉させる開閉体であるウインドガラスWを備える。ウインドガラスWは、車外側を向く車外側面W1と、車内側を向く車内側面W2と、外周側を向く縁面W3とを有する板状のガラス材である(図19参照)。ウインドガラスWは、後述するウインドレギュレータ40によって、全閉位置(図1の位置、図20の実線位置)と全開位置(図20の二点鎖線位置)との間で昇降し、全閉位置ではウインドガラスWの上縁がアッパサッシュ11まで達する。全閉位置から全開位置へ下降したウインドガラスWは、ドアパネル内空間に収容される。
図2に示すように、アッパサッシュ11は、車内側に位置するサッシュ本体20と、車外側に位置するサッシュモールディング21とを組み合わせて構成されている。
サッシュ本体20は、アッパサッシュ11を剛体とさせる厚肉の金属製の長尺部材であり、車内側に位置する中空断面形状のフレーム部20aと、フレーム部20aから車外側に向けて突出する板状部20bとを有する。フレーム部20aは、車内側に位置する車内側壁20cと、車内側壁20cの内周側の端部から車外側に延びる内周側壁20dと、車内側壁20cの外周側の端部から車外側に延びる外周側壁20eと、内周側壁20d及び外周側壁20eの車外側の端部を接続する車外側壁20fとを有する。板状部20bは、外周側壁20eと車外側壁20fの境界付近から車外側へ突出している。
サッシュモールディング21は、サッシュ本体20よりも肉厚が小さい金属製の長尺部材であり、板状部20bの外周側に重なる支持部21aと、支持部21aの車外側に位置する意匠部21bとを有する。板状部20bと支持部21aはリベット等によって固定される。すなわち、アッパサッシュ11は、車内側に位置するフレーム部20aと車外側に位置する意匠部21bを、板状部20b及び支持部21aからなる接続部によって接続した構成を有する。
アッパサッシュ11には、フレーム部20aの車外側壁20fと、板状部20bと、支持部21aとによって囲まれる凹部として、ガラスラン収納部22が形成される。ガラスラン収納部22は内周側に向けて開放しており、その内部に弾性体からなるガラスラン23が収容される。ガラスラン収納部22内には内周側へのガラスラン23の脱落を防ぐ抜け止め用の凹凸形状が設けられている。ガラスラン23はガラスラン収納部22の内面に沿う凹状の断面形状を有しており、弾性変形可能な複数のリップ部が内側に形成されている。
図2に示すように、ウインドガラスWの全閉位置では、ウインドガラスWの上縁部がガラスラン収納部22に進入する。ガラスラン収納部22に進入したウインドガラスWはガラスラン23のリップ部を押圧して弾性変形させる。すると、ガラスラン23のリップ部がウインドガラスWの車外側面W1と車内側面W2と縁面W3にそれぞれ密着して、車内側への雨滴等の浸入が防がれる水密状態になると共に、ウインドガラスWの上縁部がガラスラン23によって弾性的に保持される。
アッパサッシュ11にはさらに、ガラスラン収納部22と反対の外周側にウェザストリップ保持部24が形成されている。ウェザストリップ保持部24は、支持部21aとその車内側及び車外側に形成した外周側への曲折部とによって構成される凹部である。ウェザストリップ保持部24は外周側に向けて開放しており、その内部に弾性体からなるウェザストリップ(図示略)の脚部が嵌合保持される。ウェザストリップはウェザストリップ保持部24から外周側に突出する弾接部を有する。ドア10を閉じると、車両ボディのドア開口の内縁部にウェザストリップの弾接部が当接して弾性変形する。後述するように、ウェザストリップは立柱サッシュ12に沿う部分にも連続しており、ドア10を閉じた状態では、ドアサッシュ10bの全体とドア開口との間がウェザストリップによって水密状態にシールされる。
アッパサッシュ11は、ドアコーナー部10d側の後端位置からフロントサッシュ13の上端と接続する位置(前方コーナー部と呼ぶ)まで、以上に述べた一般断面形状を維持する。図示を省略するが、アッパサッシュ11のうち前方コーナー部よりも前方の部分は、サッシュモールディング21が設けられずにガラスラン収納部22が省略されている。フロントサッシュ13には、アッパサッシュ11のガラスラン収納部22に連続する凹状の断面形状のガラスラン収納部(図示略)が設けられており、ガラスラン23は、フロントサッシュ13のガラスラン収納部内に保持されて、前方コーナー部から下方に向けて配設される。
図3と図4に示すように、立柱サッシュ12は、それぞれが金属製の長尺部材であるインナサッシュ30とガイドレール31を組み合わせて構成されている。なお、インナサッシュ30やガイドレール31は、合成樹脂のような非金属の材質で形成することも可能である。図9に示すように、インナサッシュ30とガイドレール31の車外側にガーニッシュ32と弾性カバー33が取り付けられている。
インナサッシュ30は、車内側に位置するフレーム部30aと、車外側に位置する意匠部30bと、フレーム部30aと意匠部30bを接続する段部30cとを有する。フレーム部30aは、アッパサッシュ11におけるフレーム部20aに対応する部分である。より詳しくは、図9に示すように、車内側に位置する車内側壁30dと、車内側壁30dの内周側の端部から車外側に延びる内周側壁30eと、車内側壁30dの外周側の端部から車外側に延びる外周側壁30fとを有する。外周側壁30fは概ね車内外方向へストレートに延びている。内周側壁30eは、車内側壁30dから離れるにつれて外周側壁30fに対する間隔を大きくする(内周側への突出量を大きくする)傾斜領域を有し、傾斜領域の車外側は内周側壁30eと略平行な平行領域となっている。
フレーム部20aを閉鎖断面形状としているアッパサッシュ11のサッシュ本体20とは異なり、立柱サッシュ12のインナサッシュ30は、フレーム部30aにおける内周側壁30eと外周側壁30fの車外側の端部を接続せずに車外側に向けて開放された袋状の断面形状を有している。
インナサッシュ30の段部30cは、外周側壁30fの車外側の端部から外周側に延びる外周延設部30gと、外周延設部30gの外周側の端部から車外側に延びる車外延設部30hとを有する。意匠部30bは、車外延設部30hの車外側の端部から外周側に延びている。
ガイドレール31は、車外側に向けて開放した凹状の断面形状を有しており、インナサッシュ30における袋状断面形状のフレーム部30aの車外側の開放部分の内側に嵌まるように配置されている。より詳しくは、ガイドレール31は、車内側に位置する車内側壁31aと、車内側壁31aの内周側の端部から車外側に延びる内周側壁31bと、車内側壁31aの外周側の端部から車外側に延びる外周側壁31cとを有する。内周側壁31bの車外側の端部と外周側壁31cの車外側の端部には、内周側に向けて突出する屈曲部31dとカバー壁31eが設けられている。ガイドレール31はさらに、車内側壁31aの内外周方向の途中位置から車外側に突出する隔壁31fと、隔壁31fの車外側の端部から内周側に突出する保持壁31gとを有している。
内外周方向に並ぶ3つの壁(内周側壁31b、外周側壁31c、隔壁31f)と、これら3つの壁を接続する車内側壁31aとによって、ガイドレール31内には内外周方向に隣接する第1区画S1と第2区画S2が形成される。保持壁31gは、内周側壁31bとの間に隙間を形成しながら、第1区画S1の車外側を部分的に塞いでいる。カバー壁31eは、隔壁31fとの間に隙間を形成しながら、第2区画S2の車外側を部分的に塞いでいる。
隔壁31fは外周側壁31cよりも内周側壁31bに近い位置に設けられており、内外周方向におけるサイズは、第1区画S1よりも第2区画S2の方が大きい。車内側壁31aを基準とする車外側への突出量は、外周側壁31cが最も大きく、次いで内周側壁31bが大きく、隔壁31fが最も小さい。したがって、第1区画S1よりも第2区画S2の方が、内外周方向と車内外方向のいずれにも広い。また、第1区画S1の車外側の面を形成する保持壁31gよりも、第2区画S2の車外側の面を形成するカバー壁31eの方が内外周方向に長い。
インナサッシュ30とガイドレール31を組み合わせた状態で、フレーム部30aの車外側の開口部分をガイドレール31が塞ぐ。内周側壁30eの端部が屈曲部31dに当接して、インナサッシュ30とガイドレール31の車内外方向の相対的な位置が決まる(図14参照)。内周側壁31bと外周側壁31cは、フレーム部30aの内側から内周側壁30eと外周側壁30fに対して当接しており、この当接によってインナサッシュ30とガイドレール31は内外周方向に一体化される。ガイドレール31の車内側壁31aは、インナサッシュ30の内周側壁30eと外周側壁30fを内外周方向に接続する。そして、車内側壁30dと内周側壁30eと外周側壁30fと車内側壁31aとによって囲まれる第3区画S3が形成される。第3区画S3は、第1区画S1と第2区画S2の車内側に隣接して位置し、車内側壁31aによって第1区画S1及び第2区画S2と隔てられている。
また、インナサッシュ30とガイドレール31を組み合わせた状態では、ガイドレール31の外周側壁31cが、インナサッシュ30の外周延設部30gよりも車外側に突出して、段部30cの内周側に位置する位置決め部31c1を形成する(図9から図11参照)。そして、段部30cの車外延設部30hと位置決め部32c1を両側壁として外周延設部30gを底部とする、車外側に開放された保持凹部U1がフレーム部30aの外側(車外側且つ外周側)に形成される(図9から図11参照)。
ガイドレール31で外周側壁31cに続けて形成されるカバー壁31eは、ウインドガラスWに対して車内側に離間して対向する。カバー壁31eは外周延設部30gよりも車外側に位置しており、ウインドガラスWの車内側面W2とカバー壁31eとの間には、保持凹部U1に連通する隙間U2が形成される(図9から図11参照)。
ガーニッシュ32は、意匠部30bの車外側を覆って立柱サッシュ12の長手方向に延びる長尺部材であり、車外側に向く車外側面32aと、車内側に向き意匠部30bに対向する車内側面32bとを有する。内外周方向ではガーニッシュ32は意匠部30bの全体を覆う幅を有している。ガーニッシュ32の内周側の縁部と外周側の縁部にはそれぞれ、車内側に向けて湾曲(屈曲)して車内側面32bよりも車内側に突出する形状の内周縁部32cと外周縁部32dが設けられている。
より詳しくは、図10と図11に示すように、ガーニッシュ32の内周縁部32cは、内周側を向く内周側面32eと、外周側を向く外周側面32fと、車内側を向く端面32gとを有する。内周側面32eは、車外側面32aに連続する面であり、車内側に進むほど内周側に突出する傾斜形状を有し、且つ内周側に向けて凸となる湾曲形状を有している(特に、車外側面32aに接続する部分から所定の領域が凸状の湾曲面となっている)。外周側面32fは、車内側面32bに連続する面であり、車内側に進むほど内周側に突出する傾斜形状を有し、且つ内周側に向けて凹となる湾曲形状を有している(特に、車内側面32bに接続する部分から所定の領域が凹状の湾曲面となっている)。端面32gは、内周側面32eと外周側面32fのそれぞれの車内側端部を接続しており、車内側を向く平面形状を有する。
インナサッシュ30の意匠部30bと車外延設部30hの境界部分は湾曲形状を有し、内周縁部32cの内周側面32eや外周側面32fの湾曲形状は、このインナサッシュ30の湾曲形状に沿うものである。そして、端面32gを含む内周縁部32cの先端側の一部が、車外延設部30hよりも内周側に位置して保持凹部U1の内側に入り込んでいる。ガーニッシュ32の車外側面32aは、車内外方向においてウインドガラスWの車外側面W1と概ね同じ位置にあり、端面32gは、車内外方向においてウインドガラスWの車内側面W2に近い位置にある。
ガーニッシュ32は合成樹脂等の材質からなる成形品であり、図13に示す成形用の型を用いて成形される。この成形用の型は、車外側面32aと車内側面32bを表裏とするガーニッシュ32の表裏方向(ガーニッシュ32を立柱サッシュ12に組み付けた状態での車内外方向に相当する)に相対移動可能な上型80と下型81を有する。
上型80は、ガーニッシュ32の車外側面32aを形成する平面状の第1の形成領域80aと、第1の形成領域80aに続けて凹状に湾曲しながら延設されて内周側面32eの一部を形成する第2の形成領域80bとを有する。下型81は、ガーニッシュ32の車内側面32bを形成する平面状の第1の形成領域81aと、第1の形成領域81aに続けて凸状に湾曲しながら延設されて外周側面32fを形成する第2の面形成領域81bと、第2の面形成領域81bに連続して端面32gを形成する第3の形成領域81cと、第3の形成領域81cに続けて内周側面32eの一部を形成する第4の形成領域81dとを有する。上型80は第2の形成領域80bに続く合わせ面80cを有し、下型81は第4の形成領域81dに続く合わせ面81eを有する。合わせ面80cと合わせ面81eは、上型80と下型81の接離方向に正対する平面である。
図13に示すように、第2の形成領域80bと第4の形成領域81dが連続するように位置合わせした上で、合わせ面80cと合わせ面81eが当接するまで上型80と下型81を接近させる。そして、上型80と下型81の内面(各形成領域80a、80b、81a、81b、81c、81d)によってガーニッシュ32を成形する。図示を省略するが、上型80と下型81の内面には、外周縁部32dを形成するための領域も設けられており、内周縁部32cだけでなく外周縁部32dも上型80と下型81によって形成される。
成形後に上型80と下型81をガーニッシュ32の表裏方向に離間させると、ガーニッシュ32の内周縁部32cには、合わせ面80cと合わせ面81eの境界に対応する部分にパーティングラインL1(図13参照)が形成される。パーティングラインL1は、ガーニッシュ32の車内側面32bを延長した仮想線(仮想平面)が内周側面32eと交差する交差箇所K1(図13参照)よりも車内側に位置している。
ガーニッシュ32は、合成樹脂製以外に金属製(例えば鋼板のロール成形品、アルミニウム合金のダイキャスト品等)とすることも可能である。
弾性カバー33は、弾性体からなる長尺部材であり、ガーニッシュ32の内周側に隣接して立柱サッシュ12の長手方向に延びている。弾性カバー33は、中空断面形状の中空部33aと、中空部33aから内周側に突出する片持ち状のリップ部33bとを有している。
図10は、ウインドガラスWやガーニッシュ32による押圧を受けない初期状態(自由状態)の弾性カバー33の形状を示している。この初期状態における弾性カバー33の各部は、次のような形状及び構造を有している。
弾性カバー33の中空部33aは、車外側壁33c、内周側壁33d、外周側壁33e、外周突出壁33f、車内側壁33g、内周側基部壁33h、外周側基部壁33iで囲まれた閉断面構造の内部空間を有している。
車外側壁33cは車外側に位置し、ウインドガラスWの車外側面W1やガーニッシュ32の車外側面32aと内外周方向に並ぶ位置関係にある。内周側壁33dは、車外側壁33cの内周側の端部からリップ部33bまで延びており、内外周方向でウインドガラスWの縁面W3に対向する位置にある。外周側壁33eと外周突出壁33fは、ガーニッシュ32の内周縁部32cに沿うL字状の形状をなし、外周側壁33eが内周側面32eに対向し、外周突出壁33fが端面32gに対向する。
車内側壁33gは、インナサッシュ30の外周延設部30gに当接する。この外周延設部30gに対する車内側壁33gの当接によって、弾性カバー33(特に中空部33a)の車内外方向の位置が定まる。接続部材35が設けられているドアコーナー部10dでは、車内側壁33gは接続部材35の屈曲部35hにも当接する(図16から図18参照)。
内周側基部壁33hは、車内側壁33gの内周側端部とリップ部33bの間の角部に形成されており、ガイドレール31の位置決め部31c1に当接する。外周側基部壁33iは、外周突出壁33fと車内側壁33gのそれぞれの外周側端部を接続しており、車内側(車内側壁33g)から車外側(外周突出壁33f)に進むにつれて外周側に突出する傾斜形状を有している。位置決め部31c1に内周側基部壁33hを当接させた状態で、外周側基部壁33iは段部30cから離間する(外周側基部壁33iと外周延設部30g及び車外延設部30hとの間に三角形状のスペースが形成される)ように、初期状態の中空部33aの形状及びサイズが設定されている(図10参照)。すなわち、位置決め部31c1に対する内周側基部壁33hの当接によって、弾性カバー33の内外周方向の位置が定まる。
中空部33aにおいては、車内側壁33gや内周側基部壁33hの肉厚が大きく、車外側壁33c、内周側壁33d、外周側壁33e、外周突出壁33fの肉厚が小さくなっている。別言すれば、中空部33aは、保持凹部U1内でインナサッシュ30やガイドレール31に当接して保持される(位置決めされる)部分では肉厚が大きく安定性に優れ、ウインドガラスWとガーニッシュ32に挟まれる部分では肉厚が小さく弾性変形しやすくなっている。
弾性カバー33のリップ部33bは、中空部33aの内周側壁33dと内周側基部壁33hの間から内周側へ向けて延設されている。リップ部33bのうち中空部33aに接続する基端側の所定範囲が、ウインドガラスWとカバー壁31eの間の隙間U2内に挿入され、リップ部33bの先端部は隙間U2から内周側に突出している。
図10に示すように、初期状態(自由状態)のリップ部33bは、カバー壁31eに対向する車内側面33jがカバー壁31eに沿う平面形状であり、ウインドガラスWの車内側面W2に対向する車外側面33kは凹凸形状を有している。より詳しくは、車外側面33kのうち中空部33a(内周側壁33d)に近い基端部分は車内側に凹んだ凹状で、当該凹状部分よりも内周側が車外側へ膨らむ凸状になっている。このリップ部33bの凸状部分の車内外方向への肉厚は、隙間U2の幅よりも大きい。
リップ部33bのうち隙間U2から内周側に突出する部分は、弾性変形自在になっている。リップ部33bの当該突出部分は、内周側に進むほど車内側に突出するように湾曲した形状を有しており、リップ部33bの先端は、ガイドレール31の保持壁31gの先端近傍に位置している。
図10に示すように、初期状態(自由状態)での弾性カバー33は、中空部33aのうち内周側壁33dの一部(リップ部33bに近い領域)と、リップ部33bの車外側面33kの凸状部分とが、ウインドガラスWと重なる関係にある。また、中空部33aのうち外周側壁33eの一部(車外側壁33cに近い領域)がガーニッシュ32と重なる関係にある。弾性カバー33は、これらの重なり部分がウインドガラスWやガーニッシュ32から押圧されて弾性変形し、図11に示す保持状態の形状になる。
図11の保持状態では、弾性カバー33の中空部33aの内周側壁33dが、縁面W3に沿う形状になりながらウインドガラスWから押圧される。ウインドガラスWからの押圧力は、中空部33aをガーニッシュ32に押し付けるように外周側に向けて作用し、外周側壁33eがガーニッシュ32の内周側面32eとの密着度を増大させる。また、中空部33aに対しては、ガーニッシュ32からも内周方向へ向けて押圧力が作用し、内周側壁33dがウインドガラスWの縁面W3に密着する。したがって、弾性カバー33の中空部33aが内外周方向に弾性変形しながらウインドガラスWとガーニッシュ32の双方に密着し、ウインドガラスWとガーニッシュ32の間を水密に塞ぐ。中空部33aの車外側壁33cは、ウインドガラスWの車外側面W1及びガーニッシュ32の車外側面32aと略面一の関係となる。
中空部33aの内周側壁33dは、初期状態の傾斜形状(図10参照)によって、ウインドガラスWの縁面W3に当接して押圧される際に、外周側に加えて車内側への押圧力も受ける。つまり、ウインドガラスWから外周側への分力と車内側への分力によって中空部33aが押圧される。これにより、車内側壁33gが外周延設部30gに押し付けられる。この押し付けによって、車内側壁33gを内外周方向へ押し広げようとする力が働く。内周側基部壁33hは初期状態(図10)で位置決め部32c1に当接する形状であるため、内周側基部壁33hは位置決め部32c1への密着を維持して内外周方向における中空部33aの位置を定める。一方、外周側基部壁33iと段部30cとの間には初期状態(図10)でスペースに余裕があり、中空部33aは、段部30cと外周側基部壁33iの間のスペースを小さくさせながら、外周側基部壁33iから外周突出壁33fにかけての部分を車外延設部30hに押し付ける。
図11に示す弾性カバー33の保持状態ではさらに、リップ部33bにおける車外側面33kの凸状部分がウインドガラスWの車内側面W2によって押圧されて、リップ部33bが車内外方向に圧縮変形されて隙間U2内を水密に塞ぐ。ウインドガラスWの縁面W3での中空部33aによる密封に加えて、ウインドガラスWの車内側面W2でのリップ部33bによる密封を行うことで、ウインドガラスWと立柱サッシュ12の間の水密性がさらに向上する。
特に本実施の形態のドア10では、後述するようにウインドレギュレータ40の構成要素が立柱サッシュ12内に組み込まれている。そのため、弾性カバー33によってウインドガラスWと立柱サッシュ12の間を高度な水密状態で密封することの有効性が高い。
弾性カバー33において、保持凹部U1に保持されてウインドガラスWとガーニッシュ32により挟持される部分を中空部33aにしたことで、部分的に開放された開放断面や片持ち状の形態に比べて、断面構造の安定性に優れたシール部材となっている。その結果、弾性カバー33やその周辺部材(インナサッシュ30、ガイドレール31、ガーニッシュ32等)の部品精度や組付精度のばらつきを吸収しながら、中空部33aを適切な接触圧で確実にウインドガラスWと立柱サッシュ12の各部(段部30c、位置決め部31c1、ガーニッシュ32の内周縁部32c)に密着させて、高度な水密性能を得ることができる。
また、内外周方向におけるウインドガラスWとガーニッシュ32の間隙にばらつきがある場合でも、中空部33aは内外周方向に安定した外観上の幅を維持できる。
また、初期状態(図10)の中空部33aにおいて外周側基部壁33iが段部30cとの間に所定のスペースを備えており、保持状態(図11)にする際に当該スペースを小さくさせる方向に弾性カバー33を弾性変形させる構成とすることで、精度のばらつき吸収性能が向上する。
図11の保持状態における中空部33aは、略L字状をなす外周側壁33eと外周突出壁33fがガーニッシュ32の内周縁部32cに嵌合することで、さらに高い安定性が得られる。先に述べたように、中空部33aは初期状態(図10)の内周側壁33dの傾斜形状によって、ウインドガラスWから外周側と車内側への押圧力を受け、車内側壁33gがインナサッシュ30の外周延設部30gに当接して車内側への移動が規制される。さらに、ガーニッシュ32の内周縁部32cの端面32gに外周突出壁33fが対向することで、車外側への中空部33aの移動(脱落)が規制される。したがって、中空部33aは車内外方向に安定して保持される。
詳細は後述するが、ガイドレール31の第1区画S1は、ウインドガラスWを支持するスライダ45、46のシュー43、44を摺動可能に支持する部分である。すなわち、ガイドレール31の第1区画S1を構成する内周側壁31bと隔壁31fによって、内外周方向へのウインドガラスWの位置が定まり、車内側壁31aと保持壁31gによって、車内外方向へのウインドガラスWの位置が定まる。弾性カバー33の内外周方向の位置決めを行う位置決め部31c1は、ガイドレール31の一部である。すなわち、ガイドレール31を基準として、ウインドガラスWと弾性カバー33の両方の位置決めを行っている。これにより、ウインドガラスWと弾性カバー33の位置関係が安定する(ばらつきにくくなる)。弾性カバー33は保持状態(図11)でウインドガラスWによる押圧を受けてシール部材として機能するため、ウインドガラスWと弾性カバー33の位置関係が安定していると、ウインドガラスWや立柱サッシュ12の各部に対する弾性カバー33の密着度が安定し、弾性カバー33による高度な水密性を確保できる。また、後述するように、弾性カバー33はリップ部33bをスライダ45、46に対して当接させるため、ウインドガラスWと弾性カバー33の位置関係が安定しているとスライダ45、46に対する負荷変更も抑えられ、ガイドレール31に対するスライダ45、46の摺動性能が良好になる。
ガーニッシュ32と弾性カバー33は、ドア10を車外側から見たときに立柱サッシュ12の外観を構成する部分である。立柱サッシュ12は、ガーニッシュ32がウインドガラスWの車外側面W1と概ね面一に近い位置関係で並ぶ、いわゆるフラッシュサーフェス構造である。弾性カバー33は、上記のように車外側への中空部33aの膨出等が生じにくい高精度で安定した状態で保持されるため、優れた水密性能を備えつつ、ウインドガラスW及びガーニッシュ32と共に美観に優れたフラッシュサーフェス構造の外観を構成することができる。
また、ガーニッシュ32は、成形により生じるパーティングラインL1の位置を、内周縁部32cの内周側面32e上の交差箇所K1(車内側面32bを延長した位置)よりも車内側に設定している(図13参照)。これにより、多少の精度のばらつきがあっても、パーティングラインL1を確実に弾性カバー33によって覆うことができる。パーティングラインL1が外観に表れないためガーニッシュ32の見栄えが良く、立柱サッシュ12の美観向上に寄与する。
また、弾性カバー33は、ウインドガラスWとガーニッシュ32の間で直接的に立柱サッシュ12の外観に表れる中空部33aに加えて、ウインドガラスWの車内側に位置してガイドレール31の大部分を車外側から覆うリップ部33bを備える。これにより、ガーニッシュ32よりも内周側で立柱サッシュ12の内部構造がほとんど外観に表れることなくカバーされ、ウインドガラスWと立柱サッシュ12が車内外方向に重なる領域においても優れた美観が得られる。
立柱サッシュ12に対して弾性カバー33を取り付ける際には、図12に示すように、取り付け対象となる立柱サッシュ12の断面位置にウインドガラスWが存在しない状態にする。具体的には、ウインドガラスWを全開位置(図20参照)に下降させる。この状態で、図12のように弾性カバー33を傾けて、中空部33aを矢印INの方向に挿入する。中空部33aは、ガイドレール31の位置決め部31c1とガーニッシュ32の内周縁部32cとの間を通って保持凹部U1内に入る。このとき、弾性カバー33の外周側基部壁33iとガーニッシュ32の内周側面32eが当接する。外周側基部壁33iと内周側面32eは、挿入方向(矢印IN)に進むにつれて中空部33aを内周側に押し込むような傾斜形状を有している。そのため、中空部33aは、内外周方向に押し縮められながら、位置決め部31c1との間を通って保持凹部U1内に挿入される。外周側基部壁33iと内周側面32eが互いに滑らかな傾斜形状であるため、中空部33aをスムーズに保持凹部U1内に挿入させることができる。
図12の矢印INに沿って中空部33aが保持凹部U1に挿入されたら、弾性カバー33を図12の時計方向に回転させる。すると、弾性カバー33の外周側壁33eと外周突出壁33fがガーニッシュ32の内周縁部32cに嵌合して、弾性カバー33は図10に示す安定した保持状態となる。このとき弾性カバー33の中空部33aは、位置決め部31c1と内周縁部32cによって、保持凹部U1から内周側や車外側への脱落が規制される。すなわち、弾性カバー33の中空部33aは、保持凹部U1に対して車内外方向と内外周方向のいずれにも位置が定められる。したがって、取り付け後の弾性カバー33は、ウインドガラスWが開かれた状態(図10からウインドガラスWを省略した状態)でも、安定して立柱サッシュ12に保持される。
以上のように、アッパサッシュ11と立柱サッシュ12の断面構造は部分的に異なっている。このように異なる断面構造のアッパサッシュ11と立柱サッシュ12は、ドアコーナー部10dで接続部材35を介して接続される。接続部材35は、アルミ等の金属をダイキャストで製造したものである。接続部材35は、アッパサッシュ11の延長上に位置する第1フレーム部35aと、立柱サッシュ12の延長上に位置する第2フレーム部35bとを有する。
接続部材35における第1フレーム部35aの前端は、アッパサッシュ11のサッシュ本体20の後端に対向する当接端面35cとなっている。当接端面35cは、サッシュ本体20におけるフレーム部20aと板状部20bを含む形状を有しており、フレーム部20aの中空部分に相当する領域は当接端面35cでは塞がれている。これにより、当接端面35cに対してサッシュ本体20の後端面を確実に当接させることができる。
当接端面35cから前方に向けて突出する差込突起35dが設けられている(図6、図7参照)。差込突起35dは、中空状のフレーム部20aの内面に沿う形状を有しており、サッシュ本体20の後端面を当接端面35cに当接させた状態で、差込突起35dがフレーム部20a内に挿入される。この状態で接続部材35とサッシュ本体20が溶接等の手段を用いて接合される。
接続部材35の上端に、アッパサッシュ11と第1フレーム部35aを接合した状態でアッパサッシュ11の板状部20bに連続する板状部35iを有している。アッパサッシュ11のウェザストリップ保持部24に保持されたウェザストリップ(図示略)は、接続部材35上まで延びて板状部35iによって連続して保持される。
接続部材35における第2フレーム部35bの下端は、立柱サッシュ12のインナサッシュ30のうち、意匠部30bを除く部分に対応する形状を有する。より詳しくは、接続部材35は、車内側壁30dに連続する車内側壁35eと、内周側壁30eに連続する内周側壁35fと、外周側壁30fに連続する外周側壁35gとを有する。また、外周側壁35gの車外側の端部に、外周延設部30gの内周側の一部に連続する屈曲部35hが設けられている。
第2フレーム部35bのうち内周側壁35fは、内外周方向への肉厚が部分的に異なっている。第2フレーム部35bの下端付近では内周側壁35fの肉厚が大きく、内周側壁35fの下端面から下方に向けて突出する差込突起35jが設けられている(図6、図7参照)。差込突起35jはインナサッシュ30のフレーム部30aの内面に沿う形状を有しており、インナサッシュ30の上端面を第2フレーム部35bの下端面に当接させた状態で、差込突起35jがフレーム部30a内に挿入される。この状態で、接続部材35とインナサッシュ30が溶接等の手段を用いて接合される。
インナサッシュ30の意匠部30bと段部30c(車外延設部30hの全体と外周延設部30gの外周側の一部)は、立柱サッシュ12の上端まで延びている。上記の第2フレーム部35bの下端面とインナサッシュ30の上端面の接合箇所よりも上方では、段部30cに形成された上下方向へ延びる側方当接面30iに対して、接続部材35の屈曲部35hの縁部が当接する(図16から図18参照)。
図16や図17に示すように、内周側壁35fの車外側の端部がガイドレール31の屈曲部31dに当接して、インナサッシュ30に対する接続部材35の車内外方向の位置が決まる。そして、立柱サッシュ12と接合された第2フレーム部35bの内部には、立柱サッシュ12の一般断面部(図9)と同様に、車内側壁35e、内周側壁35f、外周側壁35g、ガイドレール31の車内側壁31aとによって囲まれる第3区画S3が形成される。
以上のようにして第1フレーム部35aと第2フレーム部35bをそれぞれサッシュ本体20とインナサッシュ30に接合させることにより、接続部材35を介してアッパサッシュ11と立柱サッシュ12がつながってドアコーナー部10dが形成される。
接続部材35における車内側壁35eは、図5のように車内側から側面視して、立柱サッシュ12の上端付近から前方と下方に向けて延びるL字状の形状を有しており、アッパサッシュ11の車内側壁20cと立柱サッシュ12の車内側壁30dのそれぞれに対して略面一の関係となる。接続部材35における内周側壁35fは、湾曲しながら前方と下方に向けて延びて、アッパサッシュ11の内周側壁20dと立柱サッシュ12の内周側壁30eのそれぞれに対して略面一の関係となる。同様に、接続部材35における外周側壁35gは、湾曲しながら前方と下方に向けて延びて、アッパサッシュ11の外周側壁20eと立柱サッシュ12の外周側壁30fのそれぞれに対して略面一の関係となる。すなわち、アッパサッシュ11のフレーム部20a(車外側壁20fを除く)と、立柱サッシュ12のフレーム部30aとが、接続部材35の第1フレーム部35aと第2フレーム部35bによって滑らかに接続される。
接続部材35は、上下方向位置の違いに応じて第2フレーム部35bの内部形状を変化させる。図16や図17に示すように、一般断面部におけるインナサッシュ30の内周側壁30e(図9参照)とは異なり、第2フレーム部35bにおける内周側壁35fは、車内側壁35eに接続する部分から車外側へ進むにつれての肉厚が徐々に大きくなっている。そして、内外周方向において内周側壁35fがガイドレール31の一部とオーバーラップし、車内側壁31aと内周側壁31bの境界の角部に嵌合する形状の段部35kが内周側壁35fに形成されている(図16、図17参照)。第2フレーム部35bのさらに上方では、図18に示すように、内周側壁35fが前方に延びて第1フレーム部35aに連続していく。
また、第2フレーム部35bは、車内側壁35eを基準とした車内外方向の肉厚も部分的に異なっている。第2フレーム部35bの下端付近では、車内側壁35eの肉厚がインナサッシュ30の車内側壁30dの肉厚と概ね同じになっている。図6、図16、図17に示すように、車内側壁35eは概ねこの肉厚を維持しながら上方へ延びており、立柱サッシュ12の上端に近い位置まで、第3区画S3は車内外方向における幅が大きく確保されている。
図6や図18に示すように、第2フレーム部35bのさらに上方(第1フレーム部35aの後方延長上の位置)では、上記の車内側壁35eに上方に連続する領域が、部分的にガイドレール31の車内側壁31aに近接する位置まで肉厚を大きくした厚肉部35mとなっている。厚肉部35mは車外側に向く座面を形成しており、この座面から車内側に凹設する形で、第3区画S3の一部である逃げ凹部35nと、逃げ凹部35nに連通するネジ孔35pが形成されている。逃げ凹部35nは、車内側壁31aに沿って第1区画S1と第2区画S2の車内側に位置する第1の領域と、第1の領域のうち第1区画S1に対応する部分を車内側に延長した第2の領域とを有するL字状の断面形状を有する空間である。ネジ孔35pは、逃げ凹部35nの第1の領域のうち第2区画S2に対応する部分を車内側に延長した円筒状の孔部であり、内周面に雌ネジが形成されている。逃げ凹部35nとネジ孔35pはいずれも、車外側から車内側に向けて凹設された有底の凹部や孔部であり、第2フレーム部35bの車内側の面には貫通(開口)していない。
以上のようにドアサッシュ10bの長手方向位置の違いによって断面形状や肉厚が異なる複雑な構造を有する接続部材35は、ダイキャストによって高精度に製造することができる。また、ダイキャスト製の接続部材35は、外面上に成形用の型抜き孔等を形成することなく、有底のネジ孔35pや厚肉部35m等を内部に高精度に形成可能であるため、内部の機能性の高さと優れた外観性を両立させることができる。
図4に示すように、立柱サッシュ12はさらに、インナサッシュ30と接続部材35を車内側から覆うインナカバー36を有している。なお、立柱サッシュ12の断面図(図9から図11、図14から図18)においては、インナカバー36の図示を省略している。インナカバー36は、インナサッシュ30のフレーム部30aや接続部材35の第2フレーム部35bの断面形状に概ね対応する断面形状のフレーム部36aと、フレーム部36aから車外側に向けて突出する板状部36bとを有する。
インナカバー36の板状部36bは、接続部材35の板状部35iに連続する形状を有している。板状部35iから板状部36bに亘って別部品からなるウェザストリップ保持部(図示略)が取り付けられる。ウェザストリップは、アッパサッシュ11のウェザストリップ保持部24(図2参照)から板状部35iと板状部36b上のウェザストリップ保持部に連続して保持され、ドアコーナー部10dを含むドアサッシュ10bの外周部分の全体に亘って配設される。
ドア10は、ウインドガラスWを昇降駆動させるウインドレギュレータ40(図8、図22から図24参照)を備えている。ウインドレギュレータ40は立柱サッシュ12に組み込まれている。
ウインドレギュレータ40は、ウインドガラスWに対して固定される上下2つのシューベース41、42と、各シューベース41、42に取り付けられてガイドレール31に対して上下方向に摺動可能に支持される上下2つのシュー43、44とを有する。図8や図21に示すように、シューベース41にシュー43を取り付けて上側のスライダ45が構成され、シューベース42にシュー44を取り付けて下側のスライダ46が構成される。そして、インナサッシュ30と共に立柱サッシュ12を構成するガイドレール31は、ウインドレギュレータ40における各スライダ45、46の昇降案内用のガイド部としても機能する。
ガイドレール31はインナサッシュ30やインナカバー36よりも下方に長く延設されており(図3、図4参照)、ドアパネル10aの内部空間ではガイドレール31がインナサッシュ30やインナカバー36に囲まれずに露出する。このドアパネル10aの内部空間におけるガイドレール31の露出部分に、ウインドレギュレータ40における駆動源であるモータMを備えたモータユニット50が取り付けられる(図1、図8、図19参照)。
モータユニット50に内蔵した巻取ドラム51(図8、図22から図24参照)に、第1ワイヤ52と第2ワイヤ53のそれぞれの一端部が接続している。第1ワイヤ52は、巻取ドラム51から上方に延設されて、ガイドレール31の上端付近(ドアコーナー部10d)に回転自在に支持されたガイドプーリ54に巻回されて下方に向きを変えて、他端部が上方からスライダ45のシューベース41に接続する。第2ワイヤ53は、巻取ドラム51から上方に延設されて、他端部が下方からスライダ45のシューベース41に接続する。
モータユニット50のモータMを駆動して巻取ドラム51を回転させると、巻取ドラム51の周面に形成した螺旋溝に対する第1ワイヤ52と第2ワイヤ53の巻回量が相対的に変化する。巻取ドラム51を第1の方向に回転させて第1ワイヤ52の巻回量が増加すると、第1ワイヤ52によってスライダ45(シューベース41)が上方に牽引され、シュー43をガイドレール31に摺動させながらスライダ45が上方に移動する。巻取ドラム51を第2の方向に回転させて第2ワイヤ53の巻回量が増加すると、第2ワイヤ53によってスライダ45(シューベース41)が下方に牽引され、シュー43をガイドレール31に摺動させながらスライダ45が下方に移動する。巻回量が増加する側と反対の各ワイヤ52、53は、巻取ドラム51から繰り出されて(弛緩して)、スライダ45の移動に追随する。スライダ45が上下に移動すると、シューベース41に固定されているウインドガラスWが昇降動作を行う。シューベース42を介してウインドガラスWに固定されているスライダ46は、シュー44をガイドレール31に摺動させながらウインドガラスWと共に移動して、ウインドガラスWの姿勢を安定させる。以上のように動作するウインドレギュレータ40の詳細な構造について説明する。
スライダ45とスライダ46を構成する要素のうち、ウインドガラスWに固定されるシューベース41とシューベース42はそれぞれ、金属等で形成された剛体となっている。ガイドレール31に対して摺動して移動されるシュー43とシュー44はそれぞれ、異音や振動を防ぎながら円滑な移動を実現するべく、ガイドレール31を構成する金属等に比して硬度が低い合成樹脂等で形成されている。
図8と図21に示すように、シューベース41は上下方向に長い形状をなし、車外側に位置するガラス支持部41aと、ガラス支持部41aから車内側に突出する接続部41bと、接続部41bの車内側端部に設けたシュー支持部41cと、を備えている。図15や図16に示すように、ガラス支持部41aは車内外方向に表裏の面(側面)が向く板状部であり、ガラス支持部41aの車外側の面がウインドガラスWの車内側面W2に対向する。接続部41bは、ガラス支持部41aの車内側の面から突出して、内外周方向に両側面が向く板状部である。すなわち、シューベース41におけるガラス支持部41aと接続部41bは、長手方向に対して垂直な断面形状が略T字状になっている(図25(A)参照)。
ガラス支持部41aと接続部41bはそれぞれ、長手方向の両端部に負荷低減部41dと負荷低減部41eを有している。ガラス支持部41aの車内側を向く面は、長手方向の端部付近で、先端に進むにつれて車外側へ傾斜するテーパー面となっており、このテーパー面によって先細(断面積を徐々に小さくする形状)になっている部分が負荷低減部41dである。図25(B)に示すように、接続部41bの長手方向の端部付近では、内周側を向く側面と外周側を向く側面がそれぞれ、先端に進むにつれて互いの間隔を小さくするテーパー面41e1となっており、これらのテーパー面41e1によって先細(断面積を徐々に小さくする形状)になっている部分が負荷低減部41eである。
ガラス支持部41aの車外側を向く面がウインドガラスWの車内側面W2に対して接着等で固定される。接続部41bのうち上端側の一部分が、車内側への突出量を大きくして、ガイドレール31の内周側壁31bと保持壁31gとの間を通って第1区画S1内に入る(図15、図16参照)。この第1区画S1に挿入される接続部41bの突出部分にシュー支持部41cが設けられている。シュー支持部41cは接続部41bの車内側端部を外周側に屈曲したL字状の断面形状を有しており、シュー支持部41cに対してシュー43が取り付けられる(図15、図16参照)。
図8と図21に示すように、シュー43は上下方向に長い形状をなし、長手方向の中間に位置する摺動基部43aと、摺動基部43aの上端と下端からそれぞれ突出する第1弾接部43bと第2弾接部43cとを有している。摺動基部43aは、シュー43の長手方向に対して垂直な断面形状が略矩形状の中実構造である。シュー支持部41cは摺動基部43a内に挿入され、接続ピン47(図15参照)を介してシュー支持部41cに摺動基部43aが固定される。
第1弾接部43bは、摺動基部43aの上端面から突出する細長の輪状体であり、車内外方向に向けて凸となる一対の湾曲部を上下端で接続した形状をなし、一対の湾曲部の間の中空部が内外周方向に向けて貫通している。この形状によって、第1弾接部43bは、車内外方向に弾性変形しやすくなっている。
第2弾接部43cは、摺動基部43aの下端面から突出する細長の輪状部であり、内外周方向に向けて凸となる一対の湾曲部を上下端で接続した形状をなし、一対の湾曲部の間の中空部が車内外方向に向けて貫通している。この形状によって、第2弾接部43cは、内外周方向に弾性変形しやすくなっている。
シュー43はガイドレール31の第1区画S1内に挿入される(図15、図16参照)。シューベース41においてガラス支持部41aとシュー支持部41cを接続している接続部41bは、内周側壁31bと保持壁31gの間を通過しており、ガイドレール31とは干渉しない。第1区画S1を囲むガイドレール31の車内側壁31a、内周側壁31b、隔壁31f、保持壁31gに対して、矩形状断面の摺動基部43aの4つの外面がそれぞれ対向して摺動可能に当接する。これにより、シュー43は、ガイドレール31に対する車内外方向と内外周方向への移動が規制されながら、第1区画S1内を上下方向に摺動可能に支持される。
シュー43の第1弾接部43bは、第1区画S1内で、車内外方向に対向する車内側壁31aと保持壁31gに対面している(図18参照)。第1弾接部43bは車内側と車内側のいずれかの方向に付勢されて、保持壁31gと車内側壁31aのいずれかに接触する状態を維持しようとする。これにより、車内外方向におけるシュー43のガタつきを抑制する。本実施形態では、第1弾接部43bは保持壁31gに当接する方向(車外側)に付勢されている(図18参照)。
シュー43の第2弾接部43cは、第1区画S1内で、内外周方向に対向する内周側壁31bと隔壁31fに対面している。第2弾接部43cは内周側と外周側のいずれかの方向に付勢されて、内周側壁31bと隔壁31fのいずれかに接触する状態を維持しようとする。これにより、内外周方向におけるシュー43のガタつきを抑制する。
薄肉且つ中空形状で弾性変形しやすい第1弾接部43bや第2弾接部43cに比して、摺動基部43aは肉厚が大きい中実構造で硬度が高いため、シュー43はガイドレール31に対して、車内外方向と内外周方向のいずれにも高精度に位置を定めながら摺動することができる。
弾性カバー33のリップ部33bは、自由状態(図9のように、ウインドガラスWの車内側面W2とガイドレール31のカバー壁31eの間に基部が保持されているだけの状態)で、先端付近がシューベース41の移動軌跡上に位置している。そのため、ガイドレール31に対してシュー43を介して支持させた状態でスライダ45を上下に移動させると、リップ部33bがシューベース41に当接して押圧力を受けて弾性変形する。
より詳しくは、図9から図11、図14から図18に表れているのは、自由状態でのリップ部33bの形状である。シューベース41に当接した状態のリップ部33bの形状を図25(A)と図25(B)に示した。図25(A)はシューベース41の長手方向に対して垂直な断面を示したものであり、図25(B)はシューベース41の長手方向に沿う断面を示したものである。図25(A)に示すように、リップ部33bは、その途中部分がガラス支持部41aの外周側且つ車内側の角部に近い位置を通り、先端部分が接続部41bの外周側の面に当接する。先端部分がシューベース41から押圧されることで、リップ部33bは、ウインドガラスWの車内側面W2とカバー壁31eに挟まれる箇所を支点として、車内側と外周側に向けて弾性変形する。図25(A)に一点鎖線で示すのが、弾性変形前のリップ部33bの形状である。リップ部33bは、当該方向に弾性変形しやすい湾曲形状を元々有しているので、シューベース41に対して過大な負荷をかけずにスムーズに変形することができる。
さらに、上下に移動するシューベース41によって最初にリップ部33bの先端部分を押し込む箇所である接続部41bの両端部には、負荷低減部41eが形成されている。図25(B)に示すように、負荷低減部41eは、内外周方向の両側に設けたテーパー面41e1により、シューベース41の端部(進行方向)に進むにつれて断面積が小さくなってリップ部33bに対する接触圧を低減させるテーパー形状を有している。そのため、移動するシューベース41は常に、負荷低減部41eによって、小さい負荷で滑らかにリップ部33bの押圧を開始する。
また、接続部41bの負荷低減部41eと同様に、ガラス支持部41aの両端に設けた負荷低減部41dは、リップ部33bに接触したときの負荷を低減させる作用を有する。なお、図25(A)に一点鎖線で示すように、リップ部33bは、接続部41bによる押圧を受けない自由状態で、ガラス支持部41aに対して近接するものの接触はしないように設計されている。そのため負荷低減部41dは、精度のばらつき等によってリップ部33bが設計上の位置よりもガラス支持部41aに近づいて接触した場合にのみ機能する、補助的な役割となる。
以上のようにシューベース41に負荷低減部41eや負荷低減部41dを設けた結果、シューベース41とリップ部33bの間で引っかかり等を生じさせずに、リップ部33bのスムーズな弾性変形と、シューベース41のスムーズな移動を実現できる。また、シューベース41とリップ部33bとの間で生じる異音(リップ部33bのビビリ音等)を抑制する効果が得られる。上端側の負荷低減部41eや負荷低減部41dは、シューベース41が上方に移動する際の動作の円滑性向上に寄与し、下端側の負荷低減部41eや負荷低減部41dは、シューベース41が下方に移動する際の動作の円滑性向上に寄与する。
なお、シューベース41の接続部41bについては、負荷低減部41eのように内周側と外周側の両方にテーパー面41e1を有する構成に変えて、リップ部33bの先端部分が当接する外周側の面にのみテーパー面41e1を有する非対称構造を採用することも可能である。
シューベース41と同様に、シューベース42は上下方向に長い形状をなし、車外側に位置するガラス支持部42aと、ガラス支持部42aから車内側に突出する接続部42bと、接続部42bの車内側端部に設けたシュー支持部42cと、を備えている(図8、図21参照)。
シューベース42は、先に説明したシューベース41と略同じ構造(ガラス支持部41aと接続部41bとシュー支持部41cを上下に反転させたような構造)であり、個々の部位におけるガイドレール31に対する配置や役割はシューベース41と共通しているので、詳細な説明は省略する。ガラス支持部42aの上下端に形成した負荷低減部41dと負荷低減部42e(テーパー面41e2)についても、シューベース41の負荷低減部41dや負荷低減部41eと同様に機能する。図25(A)と図25(B)には、シューベース42においてシューベース41と対応する部位の符号を括弧書きで示した。
シュー44は、中実構造の摺動基部44aと、摺動基部44aの下端と上端からそれぞれ突出する第1弾接部44bと第2弾接部44cとを有している。摺動基部44a、第1弾接部44b、第2弾接部44cはそれぞれ、先に説明したシュー43の摺動基部43a、第1弾接部43b、第2弾接部43cと略同じ構造(第1弾接部43bと第2弾接部43cの上下を入れ替えたような構造)であり、個々の部位におけるガイドレール31に対する配置や役割はシュー43側と共通しているので、詳細な説明は省略する。
以上のように、下側のスライダ46は上側のスライダ45と同様の基本構造を有している。図15はスライダ45を通る断面位置を示したものであるが、スライダ46についても同様にしてガイドレール31の案内を受けることを示すために、スライダ46の構成要素を表す符号を括弧書きで記載している。
図20に示すように、スライダ45のシューベース41とスライダ46のシューベース42はそれぞれ、ウインドガラスWにおいて立柱サッシュ12に沿う後縁側を支持している。上方に位置するシューベース41のガラス支持部41aは、ウインドガラスWの後縁の上端近傍から下方に向けて上下方向の範囲E1(図20)に亘ってウインドガラスWに対して固定されている。下方に位置するシューベース42のガラス支持部42aは、ウインドガラスWの後縁の下端近傍から上方に向けて上下方向の範囲E2(図20)に亘ってウインドガラスWに対して固定されている。
このように、ウインドレギュレータ40を構成するスライダ45とスライダ46が上下方向に大きく離れた位置でウインドガラスWを支持するため、立柱サッシュ12に沿う部分ではウインドガラスWの位置精度と安定性が極めて高くなっている。特に、図20に示すように、ウインドガラスWはフロントサッシュ13に沿う前縁部よりも立柱サッシュ12に沿う後縁部の方が上下に長い。このウインドガラスWの後縁部の上端付近と下端付近に離間させてスライダ45とスライダ46を配置することで、ウインドガラスWに対する上下方向の有効な支持長が非常に大きくなり、前後方向の片側の縁部だけでウインドガラスWを支持する構造であっても十分な安定性と支持強度を得ることができる。
また、上側のスライダ45においては、シューベース41の上端寄りにシュー43が設けられ、下側のスライダ46においては、シューベース42の下端寄りにシュー44が設けられている(図8、図21、図23、図24参照)。これにより、シューベース41、42が設けられている上下方向の範囲内で最も大きいシューピッチ(2つのシュー43、44の上下方向間隔)が得られる。シューピッチが大きいほど、ガイドレール31に対するウインドガラスWの傾き(特に内外周方向への傾き)を抑制しやすく、ウインドガラスWの高精度な支持と高い安定性を得ることができる。
このように優れた精度と安定性でウインドガラスWを支持している立柱サッシュ12においては、アッパサッシュ11のガラスラン23のような、ウインドガラスWを車内外方向に挟んで保持する弾性部材が設けられていない。ウインドガラスWの後縁が当接する弾性カバー33は、ウインドガラスWと立柱サッシュ12(ガーニッシュ32)の間に防水性を持たせると共に、立柱サッシュ12の外観構成部分として機能するものであり、ガラスラン23に比してコンパクトでシンプルな断面形状にすることができる。
図8や図21に示すように、上側のスライダ45を構成するシューベース41はさらに、第1ワイヤ52と第2ワイヤ53を接続する部分を備えている。シュー支持部41c(図8参照)よりも下方に、接続部41bから側方へ突出する上下一対の腕部を有し、各腕部の先端にワイヤエンド支持部41fとワイヤエンド支持部41gが設けられる。ワイヤエンド支持部41f、41gはそれぞれシューベース41の本体部分と一体に形成されている。
シュー43をガイドレール31の第1区画S1に挿入した状態で、ワイヤエンド支持部41fとワイヤエンド支持部41gがそれぞれ第2区画S2内に入る(図17参照)。各ワイヤエンド支持部41f、41gには、上下方向に貫通するワイヤ挿通孔41hとワイヤ挿通孔41iが形成されている。ワイヤ挿通孔41hとワイヤ挿通孔41iはいずれも上下方向の両端のみが開口しており、側方(車内外方向へ内外周方向)への開口を有さない閉鎖断面形状の孔である。
ワイヤエンド支持部41fのワイヤ挿通孔41hには第1ワイヤ52が挿入され、第1ワイヤ52の端部が接続するワイヤエンド55がワイヤエンド支持部41fの下方に位置する。第1ワイヤ52は、ワイヤ挿通孔41hを出て第2区画S2内を通って上方へ延設される。ワイヤエンド55の上端面(第1ワイヤ52が接続する側の端面)がワイヤエンド支持部41fの下端面に当接することによって、シューベース41に対するワイヤエンド55の上方への移動が規制される(ワイヤエンド55が上方へ牽引されるとその力がシューベース41に伝わる)。
ワイヤエンド55は下端付近に大径のフランジを有しており、該フランジとワイヤエンド支持部41fとの間に圧縮バネ56が挿入されている。圧縮バネ56によってワイヤエンド55はシューベース41に対して下方に向けて付勢され、この付勢力によって第1ワイヤ52の弛みが除去される。
ワイヤエンド支持部41gのワイヤ挿通孔41iには第2ワイヤ53が挿入され、第2ワイヤ53の端部が接続するワイヤエンド57がワイヤエンド支持部41gの上方に位置する。第2ワイヤ53は、ワイヤ挿通孔41iを出て第2区画S2内を通って下方へ延設される。ワイヤエンド57の下端面(第2ワイヤ53が接続する側の端面)がワイヤエンド支持部41gの上端面に当接することによって、シューベース42に対するワイヤエンド57の下方への移動が規制される(ワイヤエンド57が下方へ牽引されるとその力がシューベース41に伝わる)。
ワイヤエンド57は上端付近に大径のフランジを有しており、該フランジとワイヤエンド支持部41gとの間に圧縮バネ58が挿入されている。圧縮バネ58によってワイヤエンド57はシューベース41に対して上方に向けて付勢され、この付勢力によって第2ワイヤ53の弛みが除去される。
シュー43、44が挿入される第1区画S1や、シューベース41、42のワイヤエンド支持部41f、41gが配置される第2区画S2は、ガイドレール31の車内側壁31aに対して車外側に位置している。一方、モータユニット50は、ベルトラインリンフォース16よりも下方のドアパネル内空間において、ガイドレール31の車内側壁31aの車内側の面に取り付けられている。
図8に示すように、モータユニット50は、モータMと減速ギヤ機構等を有する駆動部50aと、巻取ドラム51を回転可能に収容するドラムハウジング50bとを備えている。ドラムハウジング50bの周面には、巻取ドラム51から延出される第1ワイヤ52と第2ワイヤ53を通す切欠きが形成されている。駆動部50aとドラムハウジング50bを組み合わせると、駆動部50a側の駆動軸50cが巻取ドラム51の軸孔に連結されて、モータMの駆動力が巻取ドラム51に伝わるようになる。
モータユニット50は、ドラムハウジング50bに設けた上下のブラケット50d、50eを車内側壁31aの車内側の面に対して当接させ、この当接部分をボルト留めすることでガイドレール31に固定される。モータユニット50を固定すると、巻取ドラム51の回転中心(駆動軸50cの軸線)が内外周方向に向く。
ガイドレール31の車内側壁31aには、上下方向でブラケット50dとブラケット50eの締結位置の間に貫通孔31hが形成されている(図8、図22参照)。貫通孔31hは、車内側壁31aのうち第2区画S2を形成している領域(内外周方向で外周側寄りの領域)に設けられている。
貫通孔31hの僅かに上方の位置で、ガイドレール31の車内側壁31aに対してワイヤガイド部材60とワイヤガイド部材61が取り付けられる。ワイヤガイド部材60とワイヤガイド部材61は、ボルト70を用いてドラムハウジング50bのブラケット50dと共に車内側壁31aに固定される。
ワイヤガイド部材60はブラケット50dの車内側に重ねて固定されており、ワイヤガイド部材60とブラケット50dにはそれぞれボルト70を挿通させる貫通孔が形成されている。ワイヤガイド部材61は、ガイドレール31の第2区画S2内に位置して、車内側壁31aの車外側の面に当接して固定されている。ワイヤガイド部材61には車内側に向くネジ孔が形成され、このネジ孔と連通する貫通孔が車内側壁31aに形成されている。ボルト70は、ワイヤガイド部材60とブラケット50dと車内側壁31aのそれぞれの貫通孔に対してネジ部を車内側から挿入させて、ワイヤガイド部材61のネジ孔にネジ部を螺合させる。固定状態におけるボルト70のネジ部の先端は、ワイヤガイド部材61のネジ孔内に位置しており、ガイドレール31の第2区画S2内には露出しない(図22参照)。すなわち、第2区画S2内を通るシューベース41の各ワイヤエンド支持部41f、41gや各ワイヤ52、53に対してボルト70は干渉しない。
ワイヤガイド部材60には、ボルト70による締結位置から上方に延びるアーム部60aが設けられている。アーム部60aの上端は、ボルト70とは異なるボルトによってガイドレール31に固定される。アーム部60aには上下方向へ延びるガイド溝60bが形成されている。ガイド溝60bは車外側に向けて開放した有底溝であり、ガイドレール31の車内側壁31aの車内側の面に対して所定の間隔を空けて対向している(図22参照)。
図22に示すように、ワイヤガイド部材61には、上下方向へ延びるガイド溝61aが形成されている。ガイド溝61aは車外側に向けて開放した有底溝である。ワイヤガイド部材61の上端にはストッパ面61bが形成されている。ガイドレール31の第2区画S2内でシューベース41が下方に移動すると、下側のワイヤエンド支持部41gの下端面がストッパ面61bに当接し、シューベース41のそれ以上の下方への移動が規制される(図24参照)。この当接によって、シューベース41が支持するウインドガラスWの下方への移動端(下死点)が決まる。
ドラムハウジング50bの下側のブラケット50eは、ボルト71とナット72を介してガイドレール31に固定される。ボルト71は、車内側壁31aのうち第2区画S2の底部に形成した貫通孔と、ブラケット50dに形成した貫通孔とに対して、車外側からネジ部を挿入してナット72に螺合する。ボルト71の頭部は第2区画S2内に位置する。ボルト71による締結位置はドラムハウジング50b内の巻取ドラム51よりも下方である。そのため、第2区画S2内を通るシューベース41の各ワイヤエンド支持部41f、41gや各ワイヤ52、53は、ボルト71の頭部の位置まで達することはなく、ボルト71との間で干渉が生じるおそれはない(図22参照)。
ガイドレール31の上端付近では、車内側壁31aの車内側の面にプーリブラケット62がボルト留めで固定される。プーリブラケット62に対してプーリピン62aを介してガイドプーリ54が回転自在に支持される。ガイドプーリ54は、外周にワイヤガイド溝が環状に形成された円板状の部材であり、ガイドレール31にプーリブラケット62を固定した状態で、ガイドプーリ54の回転中心(プーリピン62aの軸線)が内外周方向に向く。
図8に示すように、ガイドレール31には、プーリブラケット62の取り付け位置の近傍に、車内側壁31aを貫通する貫通孔31iが形成されている。貫通孔31iは、車内側壁31aのうち第2区画S2を形成している領域(内外周方向で外周側寄りの領域)に設けられており、貫通孔31iによって第2区画S2と第3区画S3が連通している。図16に示すように、プーリピン62aは第3区画S3内に位置し、ガイドプーリ54は、プーリピン62aの軸線と直交する径方向を車内外方向に向け、貫通孔31iを通して第2区画S2と第3区画S3にまたがって配置される。
ガイドプーリ54が取り付けられるドアコーナー部10dでは、ガイドレール31と接続部材35が組み合わされている。ガイドプーリ54とプーリブラケット62は、接続部材35の第2フレーム部35bにおける車内側壁35e、内周側壁35f、外周側壁35gに囲まれる空間内に収まるように配置されており、立柱サッシュ12の外側には露出しない。
より詳しくは、プーリブラケット62は上下方向に長く(図6、図8、図22から図24参照)、上面視(または長手方向に対して垂直に断面視)すると、車内外方向に延びる板状のプーリ支持部62bと、プーリ支持部62bの車外側の端部から外周側に延びる上下一対の支持座62c、62dとを有するL字状の形状を有している(図17、図18参照)。支持座62cと支持座62dは、ガイドレール31の車内側壁31aの車内側の面に当接する。支持座62cと支持座62dは上下に離間しており、車内側壁31aには、支持座62cと支持座62dが当接する位置の間に貫通孔31iが形成されている。プーリピン62aは支持座62cと支持座62dの間の上下方向位置でプーリ支持部62bに支持されている(図6参照)。
プーリブラケット62の上側の支持座62cがガイドレール31に取り付けられる図18の断面位置では、車内側壁31aの車内側に接続部材35の厚肉部35mが配され、厚肉部35mに逃げ凹部35nとネジ孔35pが形成されている。支持座62cは、車内側壁31aと厚肉部35mとの間に挟まれて逃げ凹部35n内に位置し、車内側を向く面が厚肉部35mに当接される。支持座62cと車内側壁31aにはそれぞれ、ネジ孔35pに連通する貫通孔が形成されている。これらの貫通孔に対して、車外側から車内側に向けてボルト73のネジ部が挿入されてネジ孔35pに螺合される。ボルト73は頭部がガイドレール31の第2区画S2内に位置し、該頭部が車内側壁31aの車外側の面に所定の圧力で当接するまで締め込まれる。これにより、車内側壁31aと厚肉部35mの間に支持座62cが挟持されて固定される。
すなわち、接続部材35の第2フレーム部35b(第3区画S3)の内部に設けた厚肉部35mを支持座面とし、この支持座面上にネジ孔35pを凹設することによって、プーリブラケット62の支持座62cを取り付けるための取付部を構成している。この取付部は、剛性の高い厚肉部35mに支持座62cを支持させた上で、厚肉部35m内に形成されたネジ孔35pに対してボルト73を螺合させる構造であるため、結合強度に優れている。また、接続部材35に対してボルト73を直接的に螺合させるため、複雑な形状のドアコーナー部10dの内部における部品の組み付け作業性にも優れている。
なお、図6や図23に示すように、支持座62cは2本のボルト73を用いて固定される。上側のボルト73は、上記の通り接続部材35のネジ孔35pに螺合する。下側のボルト73のネジ部は、支持座62cと車内側壁31aのそれぞれの貫通孔を通して、厚肉部35mの下方のスペース(接続部材35の第2フレーム部35bの内部空間)に挿入されてナット77に螺合する。
上側のボルト73によるプーリブラケット62の締結位置(図18)では、プーリ支持部62bと支持座62cが逃げ凹部35n内に位置しており、プーリブラケット62は厚肉部35mとは干渉せず、立柱サッシュ12の外観にも露出しない。
また、各ボルト73によるプーリブラケット62の締結位置は、ガイドプーリ54よりも上方である。そのため、第2区画S2内を通るシューベース41の各ワイヤエンド支持部41f、41gや各ワイヤ52、53は、各ボルト73の頭部の位置まで達することはなく、ボルト73との間で干渉が生じるおそれはない。
プーリブラケット62の下側の支持座62dがガイドレール31に取り付けられる図17の断面位置では、接続部材35は厚肉部35mを備えておらず、第3区画S3が車内外方向に広くなっている。接続部材35とは別体のナット75を第3区画S3内に配し、ナット75に螺合するボルト74を用いて、支持座62dとガイドレール31が締結される。支持座62dと車内側壁31aにはそれぞれ、ナット75のネジ孔に連通する貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に対して、車外側(第2区画S2側)から車内側に向けてボルト74のネジ部が挿入されてナット75のネジ孔に螺合される。ボルト74は頭部が車内側壁31aの車外側の面に所定の圧力で当接するまで締め込まれる。
ボルト74によるプーリブラケット62の締結位置では、プーリ支持部62bと支持座62dとナット75が第3区画S3内に収容されており、プーリブラケット62やナット75は外観に露出しない。また、ボルト74は車内側壁31aから車外側に向けて頭部がほとんど突出しない皿ネジとなっているため、第2区画S2内を通るシューベース41の各ワイヤエンド支持部41f、41gや各ワイヤ52、53は、ボルト74の頭部と干渉しない。
以上のようにしてプーリブラケット62を介してガイドレール31(及び接続部材35)に組み付けられたガイドプーリ54は、回転中心となるプーリピン62aの軸線の向きを内外周方向に設定することによって、貫通孔31iを通して第2区画S2と第3区画S3に亘って配置されている(図16参照)。これにより、ガイドプーリ54を介して第1ワイヤ52を、第2区画S2内に位置するシューベース41のワイヤエンド支持部41fと、第3区画S3の下方に位置する巻取ドラム51とに導くことができる。
立柱サッシュ12におけるインナサッシュ30のフレーム部30aや、接続部材35の第2フレーム部35bは、内外周方向への幅よりも車内外方向への奥行きの方が大きい(図9、図14から図17参照)。ガイドプーリ54は、軸線方向の厚みよりも直径の方が大きい扁平形状であり、第2フレーム部35b内の第2区画S2と第3区画S3に亘って車内外方向に直径方向を向けて配置することで、スペース効率良く接続部材35の内部に収めることができる。
図16や図17示すように、接続部材35が設けられている部分では、肉厚の大きい内周側壁35fの存在によって、第3区画S3のうち内周寄りの領域(第1区画S1の車内側の領域)がやや狭くなっている。しかし、第3区画S3のうち外周寄りの領域(第2区画S2の車内側の領域)は、インナサッシュ30が設けられている部分(図9、図14、図15参照)と同程度の広さが保たれている。よって、第3区画S3内で外周寄りの領域の位置にガイドプーリ54を配することで、車内側壁35eの至近に外周部が位置する大径のガイドプーリ54を用いつつ、ガイドプーリ54を第2フレーム部35b内に収めることができる。別言すれば、ガイドレール31の車内側壁31aを跨いだ第2区画S2と第3区画S3にかけての第1ワイヤ52の案内を実現しつつ、接続部材35の第2フレーム部35b内に収まる最大級のサイズのガイドプーリ54を使用可能となっている。ガイドプーリ54の径(曲率半径)が大きい方が、案内される第1ワイヤ52の湾曲が緩やかになるため、ウインドレギュレータ40の駆動時の抵抗軽減や動作の円滑性において有利となる。
図8や図22に示すように、ガイドレール31にはさらに、上下方向においてモータユニット50が取り付けられる位置とガイドプーリ54(プーリブラケット62)が取り付けられる位置との間(ガイドプーリ54と巻取ドラム51から概ね等距離)に、ワイヤ押さえ部材63が取り付けられる。ワイヤ押さえ部材63が設けられているのは、インナサッシュ30とガイドレール31で立柱サッシュ12を構成している一般断面部であり、第3区画S3の内部(第2区画S2に対して車内側の位置)にワイヤ押さえ部材63が収められている(図14参照)。
ワイヤ押さえ部材63は、ガイドレール31の車内側壁31aの車内側の面に当接させてボルト留めで固定される。ワイヤ押さえ部材63には車外側に向けてネジ孔が形成され、ガイドレール31の車内側壁31aのうち第2区画S2を形成している領域には、ワイヤ押さえ部材63のネジ孔に連通する貫通孔が形成されている。この貫通孔に対して車外側からボルト76のネジ部を挿入し、ワイヤ押さえ部材63のネジ孔に螺合させることで、ワイヤ押さえ部材63がガイドレール31に固定される(図23参照)。上下方向に位置を異ならせて4本のボルト76が用いられる。各ボルト76は車内側壁31aから車外側に向けて頭部がほとんど突出しない皿ネジとなっているため、第2区画S2内を通るシューベース41のワイヤエンド支持部41f、41gやワイヤ52、53は、各ボルト76の頭部と干渉しない(図14参照)。
ワイヤ押さえ部材63は上下方向に長手方向を向けており、上下方向へ延びるガイド溝63aが形成されている。図23に示すように、ガイド溝63aは車外側に向けて開放された有底溝であり、ガイド溝63aの底面とガイドレール31の車内側壁31aとの間に所定の隙間がある。
ウインドレギュレータ40において、各ワイヤ52、53は以下のように配索される。前提として、ドア10は車外側に向けて凸となる湾曲した外面形状を有しており、これに対応して立柱サッシュ12のインナサッシュ30やガイドレール31は、長手方向(上下方向)における中間部分が上下端部に対して車外側に向けて突出する湾曲した形状を有している(図4参照)。
巻取ドラム51において、螺旋溝への第2ワイヤ53の巻回(引き込み)が開始される位置(図22に巻回開始ポイントP1として示す)は、回転中心である駆動軸50cに対して車外側に設定されている。図22に示すように、第2ワイヤ53は、巻回開始ポイントP1から斜め上方に向けて延設され、ガイドレール31の貫通孔31hを通って第2区画S2内に導かれる。第2区画S2に入った第2ワイヤ53は、貫通孔31hの僅かに上方に位置するワイヤガイド部材61のガイド溝61aに挿入される。ガイド溝61aの両側面によって、内外周方向への第2ワイヤ53の振れが規制される。
ワイヤガイド部材61のガイド溝61aの底面は、車外側に向けて凸となる湾曲面であり、車内側壁31aよりも曲率が大きい。仮に、ガイドレール31の貫通孔31hを通った第2ワイヤ53を、ワイヤガイド部材61を用いずにそのまま車内側壁31aに沿わせると、貫通孔31hのエッジ部分(特に上縁部)に対して第2ワイヤ53が擦れてダメージを受けるおそれがある。ガイド溝61aの底面で第2ワイヤ53を支持して、車内側壁31aから車外側に離れた位置に第2ワイヤ53を通すことで、貫通孔31hのエッジ部分に第2ワイヤ53が擦れることを防いでいる。
車内側壁31aに対するガイド溝61aの底面の位置を低く(車内寄りに)すると、貫通孔31hに対して巻取ドラム51側からの第2ワイヤ53の進入角が小さくなり、スムーズな軌跡で第2区画S2へ導くことができる。その反面、貫通孔31hのエッジ部分に第2ワイヤ53が擦れやすくなる。車内側壁31aに対するガイド溝61aの底面の位置を高く(車外寄りに)すると、貫通孔31hに対する巻取ドラム51側からの第2ワイヤ53の進入角が大きくなるため、貫通孔31hのエッジ部分に対する第2ワイヤ53の接触は生じにくくなる。その反面、第2区画S2内での第2ワイヤ53の屈曲の度合いが大きくなり、駆動時の抵抗増大等を招くおそれがある。これらの条件を考慮して、巻取ドラム51の巻回開始ポイントP1から第2区画S2へ第2ワイヤ53がスムーズに導かれ、且つ貫通孔31hのエッジ部分に対する第2ワイヤ53の擦れが生じない最適な高さとなるように、ガイド溝61aの底面位置が設定されている。
ワイヤガイド部材61よりも上方では、ガイドレール31の車内側壁31aの車外側の面(第2区画S2の底面)に沿って第2ワイヤ53が延設される(図9、図22参照)。車内側壁31aの車外側の面は車外側に向けて凸状に湾曲している滑らかな面であるため、第2ワイヤ53は引っかかり等を生じることなくスムーズに案内される。
そして、第2ワイヤ53はワイヤエンド支持部41gのワイヤ挿通孔41iに挿入されて、ワイヤエンド57を介してシューベース41に接続される(図21参照)。なお、ワイヤエンド支持部41gのワイヤ挿通孔41iは側方に開口するスリットを有さない閉鎖断面形状の孔である。そのため、組み立て時には、ワイヤ挿通孔41iへの第2ワイヤ53の挿入(ワイヤエンド57と反対側の端部を挿入する)を先に行い、続いて巻取ドラム51への第2ワイヤ53の巻回及び接続を行うことが好ましい。
巻取ドラム51において、螺旋溝への第1ワイヤ52の巻回(引き込み)が開始される位置(図22に巻回開始ポイントP2として示す)は、回転中心である駆動軸50cに対して車内側に設定されている。図22に示すように、第1ワイヤ52は、巻回開始ポイントP2から上方に向けて延設される。巻取ドラム51から上方に向かう第1ワイヤ52は、ワイヤガイド部材60のガイド溝60bに挿入される。ガイド溝60bの両側面によって、内外周方向への第1ワイヤ52の振れが規制される。
ワイヤガイド部材60のガイド溝60bの底面は、車外側に向けて凸となる湾曲面であり、車内側壁31aよりも曲率が大きい。ワイヤガイド部材60で保持しない場合、第1ワイヤ52の軌跡は、車外側へ凸となる形状のガイドレール31の凹部側(車内側)で巻取ドラム51とガイドプーリ54を最短距離で結ぶものとなる。この仮想のワイヤ軌跡を図22にワイヤ短絡軌跡52xとして示した。ガイド溝60bの底面は、ワイヤ短絡軌跡52xに対して第1ワイヤ52を車外側に押し込んだ状態で支持している。
図22に示すように、第1ワイヤ52はさらに、上下方向における巻取ドラム51とガイドプーリ54の中間位置で、ワイヤ押さえ部材63による支持を受ける。ワイヤ押さえ部材63のガイド溝63aの両側面によって、内外周方向への第1ワイヤ52の振れが規制される。
ワイヤ押さえ部材63のガイド溝63aの底面は、車外側に向けて凸となる湾曲面であり、車内側壁31aよりも曲率が大きい。ガイド溝63aの底面は、ワイヤガイド部材60のガイド溝60bの底面よりもガイドレール31の車内側壁31aからの距離が小さく(図22参照)、ガイド溝60bの底面によって保持されている第1ワイヤ52をさらに車外側に押し込むものである。
ワイヤガイド部材60とワイヤ押さえ部材63によってワイヤ短絡軌跡52xから軌跡が変更された第1ワイヤ52は、凹状に湾曲しているガイドレール31の車内側壁31aの車内側の面に対して適切な距離(第3区画S3に収まる位置)を保ちながら、上下方向に配索される。
ガイドレール31がインナサッシュ30で覆われずに露出しているドアパネル10aの内部では、第1ワイヤ52は、ガイドレール31の車内側壁31aと所定の距離を保ちつつ、露出した状態で上下方向に延びている。
ベルトラインリンフォース16よりも上方の立柱サッシュ12の一般断面部では、第1ワイヤ52は、インナサッシュ30のフレーム部30aとガイドレール31の車内側壁31aとによって囲まれる第3区画S3内を通る(図9参照)。ワイヤ押さえ部材63は一般断面部で第3区画S3内に収容されており、第1ワイヤ52を確実に案内する(図14参照)。インナサッシュ30のフレーム部30aに代わって接続部材35が設けられるドアコーナー部10dにおいても、第1ワイヤ52は引き続き、第2フレーム部35bと車内側壁31aで囲まれる第3区画S3内を通る(図17参照)。
そして、ガイドレール31の上端近くまで達した第1ワイヤ52は、ガイドプーリ54の外周のワイヤガイド溝に掛け回される。先に述べたように、ガイドプーリ54は、ガイドレール31の貫通孔31iを通して第2区画S2と第3区画S3に跨る位置に設けられている。そのため、第3区画S3側で上方に延びてガイドプーリ54に導かれた第1ワイヤ52は、ガイドプーリ54のワイヤガイド溝に沿って延設方向を反転させて、第2区画S2内で下方に向かう。別言すれば、ガイドプーリ54のワイヤガイド溝に対する第1ワイヤ52の巻回領域の一端と他端(図16と図23に示す巻回開始ポイントQ1と巻回開始ポイントQ2)が、プーリピン62aに関して略対称な位置関係で第2区画S2と第3区画S3に配置されている。
ガイドプーリ54の巻回開始ポイントQ2から下方に延びる第1ワイヤ52は、第2区画S2内でワイヤエンド支持部41fのワイヤ挿通孔41hに挿入されて、ワイヤエンド55を介してシューベース41に接続される(図21参照)。なお、ワイヤエンド支持部41fのワイヤ挿通孔41hは側方に開口するスリットを有さない閉鎖断面形状の孔である。そのため、組み立て時には、ワイヤ挿通孔41hへの第1ワイヤ52の挿入(ワイヤエンド55と反対側の端部を挿入する)を先に行い、続いてガイドプーリ54と巻取ドラム51への第1ワイヤ52の巻回及び接続を行うことが好ましい。
以上のように第1ワイヤ52と第2ワイヤ53を配索すると、圧縮バネ56と圧縮バネ58がワイヤエンド55とワイヤエンド57を互いの接近方向に押圧することで、各ワイヤ52、53に所定のテンションがかかる。これにより、各ワイヤ52、53が接続するスライダ45が安定し、スライダ45を介して位置制御されるウインドガラスWが高精度に保持及び昇降される。
図21に示すように、シューベース41は、ワイヤエンド支持部41fとワイヤエンド支持部41gの間に56、57と圧縮バネ56、58を収容している。この収容部分を構成するのは、2つのワイヤエンド支持部41f、41gの対向する端面部分(ワイヤエンド55とワイヤエンド57の端面が当接する面)のみであり、ワイヤエンド55やワイヤエンド57の側面を囲む側壁等は存在していない。そのため、非常にコンパクト且つシンプルな構成でワイヤ接続構造が成立している。
図21に示すように、ワイヤエンド支持部41f、41gはそれぞれ、ワイヤエンド55、57が当接する端面の幅に比して、上下方向の長さが大きい。すなわち、ワイヤ挿通孔41h、41hによる各ワイヤ52、53の支持長が大きくなっている。支持長の長いワイヤ挿通孔41h、41hによって各ワイヤ52、53の直線性が保たれると、その直近に位置するワイヤエンド55、57の側方への振れを抑制する効果が得られる。
また、ワイヤエンド支持部41f、41gをガイドレール31の第2区画S2に挿入した状態では、第2区画S2の内面(車内側壁31a、外周側壁31c、カバー壁31e、隔壁31f)がワイヤエンド55、57の側方を囲んで振れを抑制する。図17に示すように、第2区画S2の内面とワイヤエンド55(またはワイヤエンド57)との間には所定の大きさのクリアランスがあり、ワイヤエンド55、57の位置を厳密に定めるものではない。しかし、ワイヤエンド支持部41f、41gの延長上位置から逸脱するようなワイヤエンド55、57の過大な位置ずれを第2区画S2の内面によって防ぐことができる。
以上から、シューベース41におけるワイヤ接続構造として、各ワイヤ52、53の延設方向にワイヤエンド55、57の端面を当接させて牽引力を受ける最小限の構成(駆動力の伝達部)があれば足りる。特に本実施形態のウインドレギュレータ40では、上下方向に細長い立柱サッシュ12の内部空間に、モータユニット50を除く昇降機構の大部分を収容している。そのため、上下方向に離間するワイヤエンド支持部41f、41gの対向面間の細長いスペースでワイヤ接続構造が完成することが、スペース効率の点で極めて有効である。具体的には、ワイヤエンド支持部41f、41gが収められる第2区画S2の断面積が小さくて済む。したがって、内外周方向へのフレーム部30aの幅を増大させずに、シュー43、44が挿入される第1区画S1と、ワイヤ52、53が挿通される第2区画S2とを並列配置することが可能になっている。また、第2区画S2は車内外方向にもコンパクトであるため、各ワイヤ52、53が挿通される第2区画S2と第3区画S3とを、ウインドガラスWからフレーム部30aの車内側壁30d(第2フレーム部35bの車内側壁35e)までの奥行きの制約された寸法内に並列配置することができる。
ウインドレギュレータ40の組み立てに際しては、各ワイヤ52、53が緩んだ状態で作業を行い、各ワイヤ52、53に最終的なテンションをかけるのはできるだけ遅い段階にすることが、作業性の観点から好ましい。本実施の形態のウインドレギュレータ40の製造においては、一通りの部品組み付けやワイヤ配索を行った後で、ワイヤ押さえ部材63を取り付けることによって各ワイヤ52、53のテンション張りを行う。先に述べたように、ワイヤ押さえ部材63は、湾曲形状のガイドレール31の凹部側(車内側)で、巻取ドラム51とガイドプーリ54を最短距離で結ぶワイヤ短絡軌跡52xよりも車外側(凹部の内側)に位置して第1ワイヤ52を支持している。すなわち、車外側に向けて第1ワイヤ52の配索軌跡を変化させ、第1ワイヤ52の実際の軌跡をワイヤ短絡軌跡52xよりも長くさせることで、第1ワイヤ52の張力を増大させている。
なお、ガイドレール31の凹部側(車内側)では、ワイヤ押さえ部材63以外にワイヤガイド部材60も第1ワイヤ52を支持している。そのため、ワイヤ押さえ部材63を取り付けていなくても、ワイヤガイド部材60を取り付けた段階で、各ワイヤ52、53にはある程度のテンションがかかっている。各ワイヤ52、53が緩み過ぎると、ガイドプーリ54からのワイヤ脱落等が生じやすく組み立て性が悪くなってしまうが、ワイヤガイド部材60を取り付けることで、各ワイヤ52、53が適度に安定した状態にして作業を進めることができる。そして、最終段階でワイヤ押さえ部材63を組み付ける際に、予めワイヤガイド部材60で支持されている第1ワイヤ52を少量押圧するだけでよいため、ワイヤ押さえ部材63の組み付け性にも優れている。
ワイヤ押さえ部材63は、立柱サッシュ12の完成状態で第3区画S3内に収容される(図14参照)。そのため、ガイドレール31をインナサッシュ30や接続部材35と組み合わせる前に、ワイヤ押さえ部材63を含むウインドレギュレータ40の各部品の組み付けを完了させる。この状態のレギュレータアッセンブリ40Aを示したのが図19である。レギュレータアッセンブリ40Aは、ガイドレール31に沿ってウインドガラスWを移動(昇降)させる機能部として既に完成している。よって、レギュレータアッセンブリ40Aの状態で動作確認、検品、出荷(販売)、メンテナンス等を行うことが可能である。
なお、図19に示すレギュレータアッセンブリ40Aでは、接続部材35が取り付けられていない。そのため、プーリブラケット62の支持座62cを締結させる一対のボルト73のうち上側のボルト73(図18、図23参照)は、接続部材35のネジ孔35pに対して未固定の状態にある。しかし、下側のボルト73がナット77に螺合しており、支持座62cはガイドレール31に対して固定されて安定している。
以上の構成のウインドレギュレータ40によってウインドガラスWを昇降させた状態を図20、図23、図24に示した。図20に実線で示しているのは、ウインドガラスWが最も上昇した全閉位置(上死点)であり、図20に二点鎖線で示しているのは、ウインドガラスWが最も下降した全開位置(下死点)である。図23はウインドガラスWの全開位置でのウインドレギュレータ40の状態を示し、図24はウインドガラスWの全開位置でのウインドレギュレータ40の状態を示している。
ウインドガラスWの全閉位置では、図23に示すように、上側のスライダ45のシュー43は、ガイドレール31の上端付近に達している。ガイドレール31の上端付近にはガイドプーリ54が設けられているが、シュー43が挿入されている第1区画S1と、ガイドプーリ54が配されている第2区画S2は内外周方向に並列して分離されているので、シュー43とガイドプーリ54が互いに干渉することはない。
また、ウインドガラスWの全閉位置では、図23に示すように、スライダ45に設けた上側のワイヤエンド支持部41fがガイドプーリ54(巻回開始ポイントQ1)の直下に位置している。スライダ45において、ワイヤエンド支持部41fはシュー43(シュー支持部41c)に対して下方に位置をずらせて設けられている(図21参照)。そのため、上記のようにシュー43がガイドプーリ54と並列する位置まで達した状態で、ワイヤエンド支持部41fをガイドプーリ54の直下に位置させることができる。すなわち、ガイドプーリ54周りでの第1ワイヤ52のスムーズな配索を損なわずに、ガイドレール31の上端付近に駆動系の各要素をスペース効率良く収めることができる。
さらに、上側のスライダ45の上部が立柱サッシュ12の上端付近(ドアコーナー部10d)に位置し、下側のスライダ46の下部がベルトラインリンフォース16付近に位置しており(図1参照)、上下方向で立柱サッシュ12の略全域に亘ってウインドガラスWを支持している。これにより、ウインドガラスWを極めて高い精度で安定して支持し、車両前後方向や車内外方向へのウインドガラスWの倒れ耐性を向上させることができる。
図24に示すように、ウインドガラスWの全開位置では、スライダ45を構成するシューベース41の下側のワイヤエンド支持部41gの下端面が、ワイヤガイド部材61のストッパ面61bに対して当接して、それ以上のウインドガラスWの下降が規制される。すなわち、ワイヤガイド部材61は、ウインドレギュレータ40における下降移動端を定める機械的なストッパとしても機能する。
全開位置においても、ガイドレール31に対してウインドガラスWがドアパネル10a内の上下方向の広い範囲で支持されるので、上記の全閉位置と同様にウインドガラスWの高い支持精度と安定性が得られる。
以上のように、本実施の形態のドア10では、ウインドレギュレータ40のうち、駆動源であるモータMの駆動力をウインドガラスWに伝達する昇降機構の構成部品を立柱サッシュ12に組み込んでいる。これにより、窓開口10cの下方のドアパネル10aの内部空間にウインドレギュレータを配置する既存の構成に比して、ドアパネル10a周りにおけるスペース効率やレイアウト性を向上させることができる。例えば、ドア内面側のドアトリムの形状設定の自由度が高くなる。また、ドア内面を車外側に寄せた形状にして乗降時の足さばき性を向上させることができる。あるいは、ドアパネル10aの内部空間を広くして、ウインドレギュレータ以外の機能部品の配置スペースを確保したり、ドアパネル10a内への部品の組み付け性の向上を実現したりできる。
図26と図27に、第2の実施形態のウインドレギュレータ140を示す。先の実施形態のウインドレギュレータ40がワイヤ式の伝達機構を備えているのに対し、このウインドレギュレータ140はラックピニオン式の伝達機構を備えている。その他の構成は先の実施形態と共通しており、共通する箇所については先の実施形態と共通の符号を付して説明を省略する。
図26に示すように、ウインドレギュレータ140を構成するモータユニット150は、先の実施形態のモータユニット50と略同じ位置(すなわちドアパネル10aの内部)でガイドレール31に取り付けられる。モータユニット150は、モータMを備えた駆動部150aと、ピニオン90を回転可能に支持するピニオン支持部材150bとを備えている。ピニオン90は駆動軸150cに接続し、駆動部150aから駆動軸150cを介して回転駆動力が伝達される。ピニオン支持部材150bは、上下のブラケット150d、150eをガイドレール31の車内側壁31aに対して車内側から当接させて締結固定される。このように支持されたピニオン90は、内外周方向へ向く駆動軸150cを中心として回転駆動される。
ガイドレール31の車内側壁31aには、ピニオン支持部材150bの上下のブラケット150d、150eが固定される位置の間に、車内外方向へ貫通する貫通孔31jが形成されている。貫通孔31jは、立柱サッシュ12内の第2区画S2と第3区画S3(図27参照)を連通させる位置に形成されている。ピニオン90の一部が貫通孔31jを通して第2区画S2内に進入する。図27はピニオン90の位置よりも上方の立柱サッシュ12の一般断面位置を示しており、ピニオン90を一点鎖線で仮想的に表している。
立柱サッシュ12(ガイドレール31)内の第2区画S2内にはラック91が配置される。ラック91はガイドレール31の長手方向に沿って延びる長尺部材であり、車内側に向く歯部91aが長手方向に連続的に形成されている。第2区画S2内にはラック91を安定して上下方向へ移動可能にさせるラックガイド92が設けられている(図27参照)。
スライダ45のシューベース41には、長手方向の中央付近(シュー支持部41cよりも下方)に、接続部41bから外周側に突出するラック接続部41jが設けられている。ラック接続部41jは第2区画S2内に延びて、ラック91の車外側の面(歯部91aが形成されていない側の面)に固定されている。ラック接続部41jに固定されるのはラック91上端付近の一部である。
第2区画S2内に配置されるラック91は貫通孔31jの形成位置まで延びており、貫通孔31jを通して第2区画S2内に進入するピニオン90がラック91の歯部91aに噛み合う。モータMの駆動力でピニオン90が正逆に回転すると、噛合するラック91が上下方向に移動する。このラック91の移動がスライダ45に伝わり、ウインドガラスWが昇降する。ラック91は、ウインドガラスWの全閉位置から全開位置まで(図20参照)の可動範囲の全体でピニオン90に噛合する長さを有している。
先の実施形態のウインドレギュレータ40と同様に、ウインドレギュレータ140は、駆動源であるモータMの駆動力をウインドガラスWに伝達する昇降機構の構成部品を立柱サッシュ12に組み込んでいる。特に、スライダ45に駆動力を伝える伝達部がピニオン90とラック91のみで構成されるため部品点数が少なく、構成のシンプルさや生産の行い易さ等の点で有利である。
以上のように、上記実施形態のドア10におけるウインドレギュレータ40、140では、昇降方向(上下方向)に離間してウインドガラスWの後縁部分を支持する2つのスライダ45、46を備え、各スライダ45、46のシュー43、44を、立柱サッシュ12に設けたガイドレール31の第1区画S1に対して昇降方向に移動するように支持させている。
立柱サッシュ12に沿って配したガイドレール31によりスライダ45、46のシュー43、44を可動に支持するため、ドアパネル10a内で前後方向の中央部分には広いスペースが確保され、ドアパネル10aの内部空間の設計自由度を高めることができる。また、ウインドレギュレータ40、140はウインドガラスWの後縁側だけを支持するものであるため、複数の昇降機構を備える場合に比して低コストに得ることができる。
そして、シュー43を介した支持部分とシュー44を介した支持部分は、ドア10における車両前後方向(立柱サッシュ12に対する内外周方向)や車内外方向のウインドガラスWの傾きを互いに規制するように働く。すなわち、昇降方向に離間する複数のシュー43、44を介してウインドガラスWを支持しているので、ウインドガラスWの姿勢安定性にも優れている。特に、ウインドレギュレータ40、140ではウインドガラスWの後縁部を支持しているため、仮に昇降方向の一箇所のみをスライダのシューで支持した場合、当該シューによる支持箇所を中心とするモーメントが働き、ウインドガラスWは車両前後方向に倒れやすくなる。しかし、上記実施形態のように昇降方向の複数箇所(スライダ45、46のシュー43、44)でウインドガラスWを支持した上で、シュー43とシュー44のそれぞれをガイドレール31(第1区画S1)によって車両前後方向に位置規制することにより、前後への傾きを確実に抑えることができる。
なお、上記実施形態では、スライダ45のシュー43とスライダ46のシュー44のそれぞれが、ガイドレール31(第1区画S1)に対して車両前方と車両後方の両方向の移動規制を受けているが、シュー43が車両前方と車両後方のいずれか一方のみの移動規制を受け、シュー44が車両前方と車両後方の他方のみの移動規制を受けるように、機能分担させてもよい。
また、図19に示すように、ウインドガラスWの前後縁のうち長い後縁側で、昇降方向に最大限離間させてスライダ45、46を配している。また、個々のスライダ45、46のガラス支持部41a、42aがウインドガラスWに対して固定される範囲E1、E2も昇降方向に長い。これにより、ウインドガラスWの片側の縁部を支持する構成でありながら、非常に安定した支持を実現することができる。
ウインドガラスWの昇降方向に長い立柱サッシュ12に沿って、同じく昇降方向に細長いスライダ45、46を並べているため、スライダ45、46は省スペースに配置される。また、スライダ45、46のシュー43、44は、元々中空状の形状を有する立柱サッシュ12の内部空間(フレーム部30a内)に沿って移動するため、立柱サッシュ12の格別に大型化させることなく、スペース効率良く構成できる。
また、各スライダ45、46におけるシュー43、44は、昇降方向に長い中実構造の摺動基部43a、44aをガイドレール31の第1区画S1内に配置させている。さらに、摺動基部43a、44aから突出する第1弾接部43b、44bと第2弾接部43c、44cによって車内外方向と内外周方向(車両前後方向)へのシュー43、44の振れを抑えている。したがって、ガイドレール31に対するスライダ45、46の摺動の安定性にも優れている。
複数のスライダ45、46のうち、モータMからの駆動力が伝達されるのは上側のスライダ45である。ウインドガラスWを閉じる際には、上側のスライダ45を介してウインドガラスWが上方に引き上げられる。ウインドガラスの下縁部をスライダで支持して、スライダで押し上げながらウインドガラスを閉じさせる構成に比べて、上側のスライダ45を介してウインドガラスWを引き上げる構成の方が、ウインドガラスWの摺動を安定させやすい。すなわち、上記実施形態のように複数のスライダ45、46(より詳しくは、ウインドガラスWに固定されるシューベース41、42)を備える場合、昇降方向の最も上方のスライダ45(シューベース41)を、駆動力を伝達する対象として選択することが好ましい。
ガイドレール31は、内外周方向で第1区画S1に隣接する位置に第2区画S2を備え、上側のスライダ45は、第1区画S1内にシュー43を位置させると共に、ワイヤエンド支持部41f、41gやラック接続部41jを第2区画S2側に延出させている。第2区画S2では、ウインドガラスWを昇降させる駆動力が第1ワイヤ52やラック91を介してスライダ45に対して伝えられる。すなわち、スライダ45は、ガイドレール31によって昇降方向に案内される摺動部(シュー43)と、スライダ45に対して駆動力を伝達する伝達部材(第1ワイヤ52、ラック91)が接続する被伝達部(ワイヤエンド支持部41f、41g、ラック接続部41j)とが、内外周方向(車両前後方向)に位置を異ならせて配置されている。この構成によって、スライダ45をスペース効率よく立柱サッシュ12内に配置することができる。
なお、伝達部材が接続しない下側のスライダ46においても、ガイドレール31によって昇降方向に案内される摺動部(シュー44)は第1区画S1内に位置しているので、第2区画S2を通る伝達部材に干渉することなく、スペース効率に優れた配置が実現されている。
上記実施形態では、昇降方向に位置を異ならせて2つのスライダ45、46を備えているが、変形例として、3つ以上のスライダを備える構成を選択することも可能である。例えば、図20に示す範囲E1、E2よりも各スライダの固定範囲を昇降方向に短くすれば、上記実施形態のウインドガラスWを3つ以上のスライダで支持することもできる。
図28はスライダのさらなる変形例を示している。図28に示すスライダ48は、上下方向に長い1つのシューベース49を備えており、シューベース49に対して2つのシュー43、44が接続した構成である。シュー43、44については、先に説明した実施形態と同様の構成と配置である。詳細な図示を省略するが、シューベース49の断面形状は、先の実施形態のシューベース41やシューベース42と略同じである。すなわちシューベース49は、ウインドガラスWの車内側面W2に固定される板状のガラス支持部と、ガラス支持部から車内側に突出してシュー43、44が接続されるシュー支持部とを備えている。
シューベース49が設けられる上下方向の範囲E3(図28)は、図20に示すシューベース41の範囲E1の上端からシューベース42の範囲E2の下端までに概ね相当するものである。すなわち、シューベース49は、立柱サッシュ12に沿うウインドガラスWの後縁側の略全体の上下方向範囲で、ウインドガラスWに対して固定されている。
以上の変形例のスライダ48から分かるように、ガイドレール31に対してウインドガラスWの昇降方向に移動可能に案内される摺動部(シュー43、44)の数と、ウインドガラスWに固定されるガラス支持部(シューベース49)の数が異なる構成も選択可能である。すなわち、ウインドガラスの支持及び昇降案内を行うスライダの構成要素として、ガラス支持部を少なくとも1つ、昇降方向に位置を異ならせた摺動部を複数(2つ以上)備えるという要件を満たせば、本発明は成立する。
なお、図28のシューベース49は、上下方向の範囲E3の全体でウインドガラスWの車内側面W2に固定されているが、1つのシューベース(ガラス支持部)がウインドガラスWに対して固定される箇所を非連続的に設定することも可能である。例えば、上記実施形態のシューベース41とシューベース42のうち互いの接続部41b、42bを延長して接続したような、一体構造のシューベースを用いることができる。この場合、一体構造のシューベースは、ガラス支持部41a、42aの領域(図20に示す範囲E1、E2)でウインドガラスWに固定され、その中間の領域(接続部41b、42bを延長して接続した部分)ではウインドガラスWに対して車内側に離間して位置する。
上記実施形態では、立柱サッシュ12に組み込まれるガイドレール31とドアコーナー部10dを構成する接続部材35に、ウインドレギュレータ40、140の構成要素を全て組み付けている。これと異なり、ウインドガラスWの昇降支持に関与する部位(上記実施形態ではガイドレール31とスライダ45、46、48)以外の部位を、ドア10の他の箇所に配置することも可能である。例えば、昇降方向の駆動源であるモータや、駆動力をウインドガラスWに伝えるワイヤ機構やラックピニオン機構を、ドアパネル10aに組み付けることも可能である。
上記実施形態では、フロントサッシュ13よりも立柱サッシュ12の方が昇降方向に長いため、スライダ45、46、48を立柱サッシュ12側に支持させることが好適である。しかし、フロントサッシュ側に十分な長さがある車両ドアの場合、フロントサッシュに対して昇降方向に位置を異ならせてスライダを構成する複数の摺動部を支持させることも可能である。あるいは、昇降するウインドガラスにより開閉される窓開口と、固定窓で塞がれる固定窓枠とを隔てさせるディビジョンバーを備える車両ドアの場合、ディビジョンバーに対して昇降方向に位置を異ならせて複数の摺動部を支持させることも可能である。これらのフロントサッシュやディビジョンバーはいずれも、本発明のサッシュ部材に相当する。従って、本発明のガラス昇降装置は、昇降動作させるウインドガラスの前縁と後縁のいずれかに沿ってスライダのガラス支持部(シューベース)を固定させるものであれば、広く適用が可能である。
まとめると、本発明のガラス昇降装置では、ウインドガラス(W)に固定されるガラス支持部(シューベース41、42、49)と、サッシュ部材(立柱サッシュ12)に設けたガイドレール(31)に沿ってガラス昇降方向に移動可能に案内される摺動部(シュー43、44)とを備えるものをスライダ(45、46、48)とする。スライダ及びガラス支持部の数は、単数と複数のいずれでも成立する。摺動部については、スライダ(ガラス支持部)が単数であるか複数であるかを問わず、昇降方向に位置を異ならせて複数(2つ以上)が設けられ、さらに、ガイドレールによって車両前後方向の少なくとも一方の方向と少なくとも他方の方向に位置規制される関係の2つの摺動部を含むことを要件とする。また、スライダのガラス支持部を固定する対象は、ウインドガラスの前縁と後縁のいずれに沿う領域でもよい。
本発明において、ウインドガラスを支持するスライダの形状等は、上記実施形態のスライダ45、46、48に限定されない。例えば、上記実施形態では、ガイドレール31に対して摺動するシュー43、44に設けた第1弾接部43b、44bと第2弾接部43c、44cをいずれも細長の輪状体としている。これと異なり、シュー43、44に設ける弾接部を片持ち形状等に変更することも可能である。弾接部は、ガイドレール31の内壁面に対して常時当接するように付勢されてシュー43、44のガタつきを抑制するものであるため、付勢方向にのみ配置された片持ち形状にしても、所要の機能を得ることができる。
また、上記実施形態のシュー43、44とは異なり、車内外方向への振れ止め用の第1弾接部43b、44bと、内外周方向への振れ止め用の第2弾接部43c、44cの一方のみを備えてもよい。
上記実施形態のドア10は、ドアパネル10aの上方に、ドアパネル10aとは別部材で構成された枠状のドアサッシュ10bが設けられているタイプのドア(サッシュドア)であるが、これ以外のドアにも適用が可能である。例えば、ドアパネルとドアサッシュを一体的に形成するタイプのドア(インナパネルとドアサッシュを一体形成したインナフルドア、インナパネルとアウタパネルのそれぞれとドアサッシュのインナ側とアウタ側を一体形成してから組み合わせたパネルドア)にも適用が可能である。すなわち、本発明は、窓開口を形成するドアサッシュがドアパネルと一体であるか別体であるかを問わず、窓開口内にウインドガラスを昇降させる車両ドアであれば適用対象となる。
上記実施形態では、ガイドレール31と、スライダ45、46(48)付きのウインドガラスWと、モータユニット50(150)とによってウインドレギュレータ40(140)を構成している。ガイドレール31は、立柱サッシュ12に取り付けられる案内部材である。ウインドガラスWに設けられるスライダ45、46(48)は、ガイドレール31の案内を受ける被案内部材(摺動部)であるシュー43、44と、被駆動部材であるシューベース41、42(49)を備えている。モータユニット50(150)は、ウインドガラスWの被駆動部部材に駆動力を付与する駆動手段である。これらの各要素にウインドレギュレータの各機能を振り分けたことにより、ウインドレギュレータの組み立てに関して、順序や方法の選択肢が多くなり、様々な納入形態を選択可能になる。
例えば、上記実施形態では、ガイドレール31と、スライダ45、46(48)付きのウインドガラスWと、モータユニット50とを予め組み合わせてレギュレータアッセンブリ40A(図19)にしてから、立柱サッシュ12を構成するフレーム構造体であるインナサッシュ30への組み付けを行う態様を示した。レギュレータアッセンブリ40Aとして先組みすることで、ウインドガラスWの駆動に関する動作確認等を行いやすくなる。しかし、これとは異なり、ガイドレールを先にドアサッシュ(立柱サッシュ12)に固定してから、ウインドレギュレータの他の構成要素を組み付けることも可能である。
ドアサッシュに固定したガイドレールに対して2つのシュー付きのウインドガラスを後から組み付けるのに適した変形例を、図29及び図30に示した。図29及び図30に示すガイドレール131は、上記実施形態のガイドレール31のうち、シュー43、44を案内する部分のみを示したものである。すなわち、ガイドレール131は、車内側壁131aと内周側壁131bと外周側壁131cとカバー壁131dによって囲まれる内部区画S11を有し、カバー壁131dと内周側壁131bの間には、内外周方向に隙間(内部区画S11を部分的に露出させる開口部)がある。ウインドガラスW側の構成は上記実施形態と共通であり、ウインドガラスWの車内側面W2に、シューベース41、42を介してシュー43、44が取り付けられている。ウインドガラスWが昇降するときに、カバー壁131dと内周側壁131bの隙間をシューベース41、42の一部が通る。
ガイドレール131は、長手方向(ウインドガラスWの開閉方向)の途中に切欠(通過部)131eを有している。切欠131eは、カバー壁131dの内周側の縁部を切り欠いて形成されている。シュー43、44は、カバー壁131dと内周側壁131bの隙間を車内外方向に通過することはできず、切欠131eの形成箇所でのみシュー43、44が車内外方向(ウインドガラスWの開閉方向と交差する方向)に通過可能である。
上方のシュー43の下端から下方のシュー44の上端までの間隔をL1、切欠131eの下端からガイドレール131の下端までの長さをL2とすると、L1>L2である。また、切欠131eの上端からガイドレール131の上端までの長さをL3とすると、長さL2と長さL3はいずれも、ウインドガラスWの全閉位置から全開位置までの可動域に対応する各シュー43、44の移動量(シューストローク)よりも大きい。
ガイドレール131にウインドガラスWを組み付ける際に、上方のシュー43を切欠131eに位置合わせする。L1>L2であるため、上方のシュー43を切欠131eに合わせると、下方のシュー44はガイドレール131の下端よりも下方に位置する。そして、ガイドレール131とウインドガラスWを車内外方向に接近させると、シュー43が切欠131eを通過してガイドレール131の内部(内部区画S11)に進入する。シュー44は、ガイドレール131の下方を通って内部区画S11の延長上に移動する。
続いて、ガイドレール131とウインドガラスWを上下方向に相対移動させ、各シュー43、44をガイドレール131に対して上方に位置変化させる。すると、シュー43は、切欠131eから離れて、カバー壁131dによって車外側への離脱が規制される状態になる。シュー44は、ガイドレール131の下端の開口から内部区画S11に進入し、カバー壁131dによって車外側への離脱が規制される状態になる。
図30は、ウインドガラスWが全開位置(下死点)にあるときのガイドレール131との位置関係を示している。シュー43が切欠131eよりも僅かに上方に位置し、シュー44がガイドレール131の下端よりも僅かに上方に位置している。これにより、シュー43とシュー44は、車内外方向と内外周方向のいずれにも移動を制限された状態で内部区画S11に収容される。
ウインドガラスWが全開位置から全閉位置(上死点)へ移動すると、シュー43、44がガイドレール131に対して上方へ移動する。ガイドレール131における長さL2と長さL3がそれぞれ、ウインドガラスWの全閉位置から全開位置に至るまでの各シュー43、44の移動量よりも大きい。従って、ウインドガラスWが全閉位置に達したときに、シュー43はガイドレール131の上端よりも下方に位置し、シュー44は切欠131eよりも下方に位置し、各シュー43、44がガイドレール131内に支持される状態が維持される。
ガイドレール131が切欠131eを備えない場合、上方のシュー43をガイドレール131の下端から挿入する、あるいは下方のシュー44をガイドレール131の上端から挿入する、という形態での組み付けになる。そのため、ガイドレール131の長手方向に大きなスペースが必要になる。特に、立柱サッシュ12(図1参照)にガイドレール131を先に取り付けた場合、ガイドレール131の上端はドアコーナー部10d(図1参照)で塞がれるので、上端側からのシュー43、44の挿入が制限される。また、ガイドレール131の下端は立柱サッシュ12よりも下方に延びており(図1におけるガイドレール31と立柱サッシュ12の関係と同様)、ガイドレール131の下端よりも下方にシュー43を位置させようとすると、ウインドガラスWを逃がすためのスペースを得ることが難しい。特に、ガイドレール131の下方にドアフレームを構成する部材が存在する場合は、ガイドレール131の下端側から各シュー43、44を挿入するためのスペースは極めて制約される。このように、ガイドレール131を立柱サッシュ12に組み込んだ状態で、シュー43、44付きのウインドガラスWをガイドレール131に組み付ける場合には、組み付けへの制約が多くなる。
しかし、ガイドレール131に切欠131eを設けることで、ガイドレール131に対して、2つのシュー43、44を車内外方向に組み付け可能となり、しかも組み付けの際の移動量が小さくて済む。よって、上記の制約を受けずに、狭い作業スペースでも簡単にシュー43、44付きのウインドガラスWを組み付けることができる。そして、アッパサッシュ11や立柱サッシュ12を含むドアサッシュ10b(図1)、ウインドガラスW、ガイドレール131を含むウインドレギュレータの構成要素、ドアサッシュ10bに固定される各種ブラケット(ミラーブラケット14やロックブラケット15)、等で構成されるドアフレームアッセンブリとしての生産を行いやすくなる。
図29及び図30の変形例に示すように、本発明を適用するウインドレギュレータでは、組み立ての条件等に応じて、個々の構成要素を適宜改変することができる。
なお、上記実施形態では2つのシュー43、44が共通の寸法であるため、シュー43、44がいずれも切欠131eを通過可能であるが、2つのシューの寸法(特にウインドガラスWの開閉方向への長さ)が異なっていてもよい。この場合、ガイドレール131に設ける切欠131eは、少なくとも一方のシュー(図29及び図30の場合はシュー43)を通過させるサイズ及び形状を有していればよい。
図31は、ウインドガラスWに取り付けられるスライダのシューの変形例を示している。図31に示すシュー97、98は、上記実施形態のシュー43、44に対応するものであり、シュー97がウインドガラスWの後縁の上端付近(上側)に配置され、シュー98がウインドガラスWの後縁の下端付近(下側)に配置されている。
シュー97、98はそれぞれ、ガイドレール31の第1区画S1(図9や図15を参照)に収まる矩形状の断面形状の摺動基部97a、98aを有している。摺動基部97a、98aから、片持ち状の第1弾接部97b、98bと片持ち状の第2弾接部97c、98cが突出している。
第1弾接部97b、98bはそれぞれ、摺動基部97a、98aに対して車内側に突出しており、ガイドレール31の車内側壁31a(図9や図15を参照)に当接している。車内側壁31aに当接した状態の第1弾接部97b、98bは、車外側に向けて押圧されて弾性変形しており、弾性変形から復元しようとする力によって、摺動基部97a、98aを車外側に押圧する。車外側に押圧された摺動基部97a、98aは、第1区画S1の車外側を部分的に覆う保持壁31g(図9や図15を参照)に押し付けられて、車内外方向に安定した状態で保持される。
第2弾接部97cは、摺動基部97aに対して外周側に突出しており、ガイドレール31の隔壁31fに当接している。隔壁31fに当接した状態の第2弾接部97cは、内周側に向けて押圧されて弾性変形しており、弾性変形から復元しようとする力によって、摺動基部97aを内周側に押圧する。内周側に押圧された摺動基部97aは、内周側壁31bに押し付けられて、内外周方向に安定した状態で保持される。
第2弾接部98cは、摺動基部98aに対して内周側に突出しており、ガイドレール31の内周側壁31bに当接している。内周側壁31bに当接した状態の第2弾接部98cは、外周側に向けて押圧されて弾性変形しており、弾性変形から復元しようとする力によって、摺動基部98aを外周側に押圧する。外周側に押圧された摺動基部98aは、隔壁31fに押し付けられて、内外周方向に安定した状態で保持される。
このように、ウインドガラスWの後縁部分の上端側に位置するシュー97では、外周側に突出する第2弾接部97cによって、摺動基部97aを内周側(すなわち前方)に押し付けると共に、外周側(すなわち後方)へのガタつきを吸収可能になっている。一方、ウインドガラスWの後縁部分の下端側に位置するシュー98では、内周側に突出する第2弾接部98cによって、摺動基部98aを外周側(すなわち後方)に押し付けると共に、内周側(すなわち前方)へのガタつきを吸収可能になっている。このシュー97とシュー98の機能分担には、次のような利点がある。
ウインドガラスWは、前縁よりも後縁の方が上下方向に長く、かつ後縁から前縁に向けて徐々に上縁の高さが低くなる形状を有している(図1参照)。そのため、後縁に沿ってシュー97、98による支持を受けるウインドガラスWには、前倒れ方向(図1のように車外側から見て時計方向)への負荷が常に作用する。この前倒れ方向の負荷は、上側のシュー97に対しては内周側へ移動させようとする力として働き、下側のシュー98に対しては外周側へ移動させようとする力として働く。ここで、各シュー97、98は、当該負荷の作用方向へは、強度が高く面積が大きい摺動基部97a、98aの側面をガイドレール31(第1区間S1の内面)に当接させているので、優れた耐荷重性を得ることができる。
また、悪路走行等で車体に激しい振動が加わると、ウインドガラスWを上記の前倒れ方向とは逆方向(図1のように車外側から見て反時計方向)に傾動させようとする負荷が作用する。この逆方向の負荷は、上端側のシュー97に対しては外周側へ移動させようとする力として働き、下端側のシュー98に対しては内周側へ移動させようとする力として働く。ここで、各シュー97、98は、当該負荷の作用方向へは、第2弾接部97c、98cの弾性変形によって負荷を吸収しながら、ガイドレール31に対する振動を効率的に抑制できる。
また、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の実施の形態は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。