以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。図1に示すドア10は、車両ボディ(図示略)の右側前席の側方に取り付けられる側面ドアであり、車両ボディにはドア10によって開閉されるドア開口(図示略)が形成されている。ドア10は、ドアパネル10a(一点鎖線で仮想的に示す)とドアフレーム10bとを備えている。ドアパネル10aの上縁部とドアフレーム10bとによって囲まれる窓開口10cが形成されている。
以下の説明における車内側と車外側は、ドア10を閉じた状態での車両ボディの内側と外側に対応しており、車内側と車外側を結ぶ方向(ドア10の厚み方向)を車内外方向と呼ぶ。また、ドアフレーム10bのうち、窓開口10cに向く側を内周側、窓開口10cの反対側(ドア10を閉じた状態でボディ開口の内縁に向く側)を外周側とし、内周側と外周側を結ぶ方向を内外周方向と呼ぶ。
図示を省略するが、ドアパネル10aは、車内側に位置するインナパネルと、車外側に位置するアウタパネルとを組み合わせて構成されている。インナパネルとアウタパネルの間にドアパネル内空間(図示略)が形成されており、ドアパネル内空間の上縁は窓開口10c側に開口している。
ドアフレーム10bは、ドア10の上縁に位置するアッパサッシュ11と、アッパサッシュ11からドアパネル10aへ向けて概ね上下方向に延びている立柱サッシュ12及びフロントサッシュ(案内部材)13とを有している。立柱サッシュ12はドアフレーム10bの最後部に位置しており、ドア10の後部上方の角隅部は、アッパサッシュ11の後端と立柱サッシュ12の上端が交わるドアコーナー部10dとなっている。ドアコーナー部10dでは、アッパサッシュ11の後端と立柱サッシュ12の上端が、接続部材を介して接続されている。立柱サッシュ12とフロントサッシュ13は略平行に延びており、立柱サッシュ12が窓開口10cの後縁を形成し、フロントサッシュ13が窓開口10cの前縁を形成する。また、アッパサッシュ11が窓開口10cの上縁を形成する。
立柱サッシュ12は、ドアコーナー部10dから下方(斜め下方)に延びてドアパネル内空間に挿入される。アッパサッシュ11は、ドアコーナー部10dから前方に延び、途中から前方に進むにつれて下方に湾曲して、ドアパネル内空間に達する。フロントサッシュ13は、アッパサッシュ11の途中位置から下方(斜め下方)に延びてドアパネル内空間に挿入される。アッパサッシュ11と立柱サッシュ12とフロントサッシュ13はそれぞれ、ドアパネル内空間内でドアパネル10aに対して固定される。
ドアパネル内空間には、前部にミラーブラケット14が配され、後部にロックブラケット15が配されている。ミラーブラケット14とロックブラケット15はそれぞれドアパネル10aに対して固定され、ミラーブラケット14にフロントサッシュ13が固定され、ロックブラケット15に立柱サッシュ12が固定される。ミラーブラケット14の一部は、ドアパネル10aよりも上方に突出してアッパサッシュ11とフロントサッシュ13の間の三角状のスペースに収まる形状をなし、ミラーブラケット14の当該部分に対してドアミラー(図示略)等が取り付けられる。ロックブラケット15にはドアロック機構(図示略)等が取り付けられる。
ドアパネル内空間の上縁付近に、前後方向に延びるベルトラインリンフォース16が配されている。ベルトラインリンフォース16は、車内側に位置するインナリンフォース16aと車外側に位置するアウタリンフォース16bで構成されている。インナリンフォース16aの前端がミラーブラケット14に固定され、後端がロックブラケット15に固定されている。図1に示すように、インナリンフォース16aの後端は、締結部Q1、Q2でロックブラケット15に締結固定されている。締結部Q1ではさらに、後述する駆動ユニット60が、ロックブラケット15とインナリンフォース16aに対して締結固定(共締め)される。
立柱サッシュ12とフロントサッシュ13に沿って昇降して窓開口10cを開閉させるウインドウガラス(開閉体)Wを備える。ウインドウガラスWは、車外側を向く車外側面W1と、車内側を向く車内側面(開閉体の内面)W2と、外周側を向く縁面W3とを有する板状のガラス材である。ウインドウガラスWは、後述するウインドレギュレータ19によって、全閉位置(図1の位置)と全開位置との間で昇降し、全閉位置ではウインドウガラスWの上縁がアッパサッシュ11まで達する。全閉位置から全開位置へ下降したウインドウガラスWは、ドアパネル内空間に収容される。
詳細は後述するが、立柱サッシュ12に組み込まれる(立柱サッシュ12を構成する)ガイドレール40によって、ウインドウガラスWが昇降方向へ移動可能に支持及び案内される。そのため、ガイドレール40は、全開位置から全閉位置までのウインドウガラスWの後縁部分の移動範囲に対応する長さを有しており、立柱サッシュ12よりも下方のドアパネル内空間の下端付近まで延びている。また、フロントサッシュ13も、全開位置から全閉位置までのウインドウガラスWの前縁部分の移動範囲に対応する長さを有しており、ドアパネル内空間の下端付近まで延びている。
図9に示すように、アッパサッシュ11は、車内側に位置する中空断面形状のフレーム部20と、車外側に位置する意匠部21を、接続部22によって接続した断面構造を有する。フレーム部20と意匠部21と接続部22によって囲まれる凹部として、ガラスラン収納部23が形成される。ガラスラン収納部23は内周側に向けて開放しており、その内部に弾性体からなるガラスラン(図示略)が収容される。
ウインドウガラスWの全閉位置(図1)では、ウインドウガラスWの上縁部がアッパサッシュ11のガラスラン収納部23に進入する。ガラスラン収納部23に進入したウインドウガラスWの車外側面W1と車内側面W2と縁面W3に対してガラスランが密着して、車内側への雨滴等の浸入を防ぐ水密状態になると共に、ウインドウガラスWの上縁部がガラスランによって弾性的に保持される。
図9に示すように、アッパサッシュ11にはさらに、ガラスラン収納部23と反対の外周側にウェザストリップ保持部24が形成されている。ウェザストリップ保持部24は弾性体からなるウェザストリップ(図9では省略している)を保持する。ウェザストリップ保持部24に保持されるウェザストリップは、後述する立柱サッシュ12に保持されるウェザストリップ38(図5、図6)に連続するものである。
図2及び図3に示すように、立柱サッシュ12は、長尺部材であるインナサッシュ30とガイドレール40を組み合わせて構成されている。インナサッシュ30やガイドレール40の材質は、鉄やアルミなどの金属製でもよいし、合成樹脂のような非金属製でもよい。本実施形態では、インナサッシュ30が鉄又はアルミ、ガイドレール40がアルミで構成されている。ウインドウガラスWは、車外側に向けて凸となる湾曲形状を有している。このウインドウガラスWの湾曲形状に対応して、立柱サッシュ12も車外側に向けて凸となる湾曲形状を有している。主に図5及び図6を参照して、立柱サッシュ12の構造を説明する。
インナサッシュ30は、車内側に位置するフレーム部31と、車外側に位置する意匠部32と、フレーム部31及び意匠部32を接続する段部33とを有する。フレーム部31は、アッパサッシュ11におけるフレーム部20に対応する部分である。より詳しくは、フレーム部31は、車内側に位置する車内側壁31aと、車内側壁31aの内周側の端部から車外側に延びる内周側壁31bと、車内側壁31aの外周側の端部から車外側に延びる外周側壁31cとを有する。内周側壁31bと外周側壁31cは、車内側壁31aから離れるにつれて互いの間隔を大きくする。
閉鎖断面形状であるアッパサッシュ11のフレーム部20(図9参照)とは異なり、立柱サッシュ12のインナサッシュ30は、フレーム部31における内周側壁31bと外周側壁31cの車外側の端部を接続せずに車外側に向けて開放させた、袋状の断面形状を有している。
インナサッシュ30の段部33は、外周側壁31cの車外側の端部から外周側に延びる外周延設部33aと、外周延設部33aの外周側の端部から車外側に延びる車外延設部33bとを有する。意匠部32は、車外延設部33bの車外側の端部から外周側に延びている。
ガイドレール40は、インナサッシュ30におけるフレーム部31と段部33の車外側の開放部分の内側に嵌まるように配置されている。より詳しくは、ガイドレール40は、車内側に位置する車内側壁41と、車内側壁41の内周側の端部から車外側に延びる内周側壁42と、車内側壁41の外周側の端部から車外側に延びる外周側壁43と、外周側壁43の車外側の端部から外周側に延びる外周延設部44とを有する。内周側壁42の車外側の端部には、外周側に向けて突出する屈曲部45が設けられている。
ガイドレール40では、内外周方向に離間して並ぶ内周側壁42及び外周側壁43と、これらを接続する車内側壁41とによって、車外側に向けて開放した凹部が形成され、この凹部内がガイド空間Sになっている。内周側壁42と外周側壁43の一対の対向面(ガイド空間Sに臨む内面)は、互いに略平行であり、内外周方向の間隔を一定に保って上下方向に延びている。内周側壁42と外周側壁43はそれぞれ、インナサッシュ30のフレーム部31の内周側壁31bと外周側壁31cの内側に嵌合している。そのため、内周側壁42と外周側壁43はそれぞれ、車内側壁41から離れて車外側に進むにつれて、肉厚が大きくなっている。内周側壁42と外周側壁43の肉厚が最大になっている部分が、車外側を向く端面になっている。この内周側壁42の端面と外周側壁43の端面は、ガイド空間Sの開口部分を挟んで概ね面一の関係にある。
屈曲部45は、内周側壁42の肉厚が最大になっている車外側の端部から、さらに内周側壁42の肉厚を増大させる方向(外周側)に突出しており、ガイド空間Sの車外側を部分的に塞いでいる。つまり、屈曲部45によって、内外周方向へのガイド空間Sの開口幅が、ガイド空間S内部の幅よりも狭くなっている。
フレーム部31の内周側壁31bと外周側壁31cに対して内周側壁42と外周側壁43を嵌合させることで、内外周方向と車内外方向におけるインナサッシュ30とガイドレール40の相対位置が定まる。このとき、インナサッシュ30の段部33の外周延設部33aとガイドレール40の外周延設部44が車内外方向に重なる。外周延設部33aには貫通孔33cが形成され、外周延設部44には貫通孔44aが形成されている。インナサッシュ30とガイドレール40が上下方向で所定の位置関係になると、貫通孔33cと貫通孔44aが車内外方向に連通する。
この状態で、車内側から貫通孔33cと貫通孔44aにボルト17の軸部を挿入する。段部33内に突出したボルト17の軸部がナット18に螺合する。ボルト17の頭部が外周延設部33aに当接した状態で所定の締め付けトルクをかけると、インナサッシュ30とガイドレール40が固定される。図3に示すように、ボルト17とナット18による締結固定は、インナサッシュ30とガイドレール40の長手方向の複数箇所で行われる。
インナサッシュ30のフレーム部31を車内側から覆うインナガーニッシュ34と、意匠部32と段部33を車外側から覆うアウタガーニッシュ35を備える。インナガーニッシュ34とアウタガーニッシュ35は、立柱サッシュ12の長手方向に延びる長尺部材であり、合成樹脂や金属などで形成される。インナガーニッシュ34が立柱サッシュ12の車内側の外観を構成し、アウタガーニッシュ35が立柱サッシュ12の車外側の外観を構成する。
アウタガーニッシュ35と段部33の間には空間があり、この空間内にボルト17とナット18の螺合部分が位置する。従って、アウタガーニッシュ35を取り付けることで、インナサッシュ30とガイドレール40の締結部分が車外側から視認されなくなる。インナガーニッシュ34とアウタガーニッシュ35はそれぞれ、所定の固定手段(接着など)によってインナサッシュ30に対して固定される。
アウタガーニッシュ35の内周側の位置で、ガイドレール40に対して弾性カバー36と弾性カバー37が取り付けられている。弾性カバー36、37はいずれも、非通水性の弾性材(例えばゴム)で形成されており、立柱サッシュ12の長手方向に延びる長尺部材である。図5及び図6は、外力を受けていない初期状態(自由状態)の弾性カバー36、37の形状を示している。
ガイドレール40の車外側を向く端面に座面が設けられ、座面の車外側の面に弾性カバー36、37が支持されている。座面は、ガイド空間Sの開口部分を挟んで内周側座面46と外周側座面47に分かれている。内周側座面46は、内周側壁42の端面に支持されている。外周側座面47は、外周側壁43の端面から外周延設部44にかけて支持されている。内周側に位置する弾性カバー36が内周側座面46上に支持され、外周側に位置する弾性カバー37が外周側座面47上に支持されている。弾性カバー36と弾性カバー37はそれぞれ、所定の固定手段(接着など)によって内周側座面46と外周側座面47に固定される。
弾性カバー36は、内部が中空状である中空部36aと、中空部36aから外周側に延びる片持ち状のリップ部36bとを有し、中空部36aが内周側座面46に支持されている。中空部36aの一部は、内周側へ片持ち状に延びてインナガーニッシュ34の車外側端部を覆っており、インナサッシュ30の内周側壁31bの端部が露出することを防いでいる。
弾性カバー37は、外周側座面47に支持される基部37aと、基部37aから車内側に突出する板状部37bと、板状部37bの先端付近から内周側に突出する片持ち状の第1リップ部37cと、基部37aの内周側端部付近から車外側及び内周側に突出する片持ち状の第2リップ部37dと、板状部37bの外周側に位置する押さえ部37eと、を有する。
弾性カバー36のリップ部36bと、弾性カバー37の第2リップ部37dは、互いに接近する方向に延びてガイド空間Sの車外側を覆っている。弾性カバー37の第1リップ部37cは、第2リップ部37dよりも車外側に位置している。アウタガーニッシュ35には、内周側の端部を車内側へ屈曲させた屈曲部35aが形成されている。屈曲部35aは、板状部37bと押さえ部37eの間に嵌合して、弾性カバー37を安定して保持する。
本実施形態の立柱サッシュ12は、アウタガーニッシュ35の車外側面が、車内外方向においてウインドウガラスWの車外側面W1と概ね同じ位置にある、いわゆるフラッシュサーフェス構造である。弾性カバー36、37は、このフラッシュサーフェス構造におけるウインドウガラスW周りの防水や振動抑制に寄与するものである。
弾性カバー37の第1リップ部37cは、内外周方向でウインドウガラスWの後方の縁面W3に対向する位置にある。縁面W3によって第1リップ部37cが外周側に押し込まれて弾性変形する。第1リップ部37cに加わる押圧力は板状部37bが受け、板状部37bはアウタガーニッシュ35の屈曲部35aに当接して外周側への移動が規制される。また、板状部37bと押さえ部37eが屈曲部35aに嵌合しているので、弾性カバー37の安定性が高い。従って、第1リップ部37cが所定の反力を伴いながら縁面W3に密着して、ウインドウガラスWとアウタガーニッシュ35の間を水密に塞ぐと共に、ウインドウガラスWの振動を抑制する。
弾性カバー36の中空部36aは、車内外方向でウインドウガラスWの車内側面W2とガイドレール40(内周側座面46)との間に位置する。中空部36aにおける車外側への突出部分がウインドウガラスWの車内側面W2によって押圧され、中空部36aが車内外方向に圧縮変形される。これにより、弾性カバー36が車内側面W2とガイドレール40との間を水密に塞ぐと共に、ウインドウガラスWの振動を抑制する。ウインドウガラスWの縁面W3に対する第1リップ部37cによる密封に加えて、ウインドウガラスWの車内側面W2に対する中空部36aによる密封を行うことで、ウインドウガラスWと立柱サッシュ12の間の水密性がさらに向上する。
特に本実施形態のドア10では、後述するようにウインドレギュレータ19の構成要素が立柱サッシュ12内に組み込まれている。そのため、弾性カバー36、37によってウインドウガラスWと立柱サッシュ12の間を高度に防水することの有効性が高い。
詳細は後述するが、ガイドレール40のガイド空間Sは、ウインドウガラスWに取り付けられるスライダシュー52、53を摺動可能に支持する部分である。そして、ガイドレール40のガイド空間Sを構成する内周側壁42と外周側壁43によって、内外周方向へのウインドウガラスWの位置が定まり、車内側壁41と屈曲部45によって、車内外方向へのウインドウガラスWの位置が定まる。弾性カバー36、37を支持する内周側座面46と外周側座面47は、ガイドレール40に設けられている。すなわち、ガイドレール40を基準として、ウインドウガラスWと弾性カバー36、37の両方の位置決めを行っている。これにより、ウインドウガラスWと弾性カバー36、37の位置関係が安定する(ばらつきにくくなる)。弾性カバー36、37はウインドウガラスWによる押圧を受けてシール部材として機能するため、ウインドウガラスWと弾性カバー36、37の位置関係が安定していると、ウインドウガラスWや立柱サッシュ12の各部に対する弾性カバー36、37の密着度が安定し、弾性カバー36、37による高度な水密性を確保できる。
また、後述するように、弾性カバー36、37はリップ部36bと第2リップ部37dをスライダベース51に対して当接させるため、ウインドウガラスWと弾性カバー36、37の位置関係が安定していると、スライダベース51に対する負荷変動も抑えられ、ガイドレール40に対するスライダベース51の摺動性能が良好になる。
アウタガーニッシュ35と弾性カバー37は、立柱サッシュ12で最も車外側に位置して、ウインドウガラスWと共にドア10の外面を構成する部分である。弾性カバー37は、第1リップ部37cの基端側(板状部37bに接続する側)が、ウインドウガラスWの車外側面W1及びアウタガーニッシュ35の車外側面と略面一になる。従って、弾性カバー37は、優れた防水性能を備えつつ、ウインドウガラスW及びアウタガーニッシュ35と共にフラッシュサーフェス構造の外観を構成し、外観品質を高めることができる。
また、アウタガーニッシュ35よりも内周側では、ウインドウガラスWの車内側に弾性カバー36の全体と弾性カバー37の第2リップ部37dが位置し、立柱サッシュ12の内部構造がほとんど外観に表れることなくカバーされる。従って、ウインドウガラスWと立柱サッシュ12が車内外方向に重なる領域においても優れた美観が得られる。
立柱サッシュ12にはさらに、ウェザストリップ38が取り付けられる。ウェザストリップ38は、非通水性の弾性材(例えばゴム)で形成されている。インナサッシュ30の外周側壁31cには、外周側に向く座面39が設けられており、ウェザストリップ38の脚部38aが座面39に固定される。ウェザストリップ38がインナガーニッシュ34の一部を覆うことで、インナサッシュ30の外周側壁31cとインナガーニッシュ34の間の段差が車内側から視認されなくなる。
また、ウェザストリップ38は、段部33の外周延設部33aを車内側から覆う。このウェザストリップ38によって覆われる領域には、ボルト17の頭部も含まれる。従って、ウェザストリップ38を取り付けることで、インナサッシュ30とガイドレール40の締結部分が車内側から視認されなくなる。
ウェザストリップ38は、脚部38aから突出する中空状の弾接部38bを有している。車両ボディに対してドア10を閉じると、ドア開口に沿って延びる車両ボディのボディピラーPに弾接部38bが接触して弾性変形し、車両ボディとドア10(立柱サッシュ12)の間を水密に塞ぐ。
ドア10は、ウインドウガラスWを昇降駆動させるウインドレギュレータ19を備えている。図2及び図3に示すように、ウインドレギュレータ19は、ガイドレール40によってウインドウアッセンブリ50を昇降方向へ移動可能に支持及び案内し、駆動ユニット60の駆動力をウインドウアッセンブリ50に伝達してウインドウガラスWを昇降させる。そして、ウインドレギュレータ19の構成要素が立柱サッシュ12に組み込まれている。以下、ウインドレギュレータ19を含むガラス昇降駆動用の構造について説明する。
図4に示すように、ウインドウアッセンブリ50は、スライダベース51と、一対のスライダシュー52、53と、ラック54と、スライドガイド(スライダ)55とを、ウインドウガラスWに組み付けて構成されている。
ウインドウガラスWは前縁よりも後縁の方が長い。スライダベース51は、上下方向に延びる長尺部材であり、ウインドウガラスWの後縁の略全体に沿う長さを有している。スライダベース51の材質は、金属製でもよいし、合成樹脂のような非金属製でもよい。スライダベース51は、車外側に位置するガラス固定部51aと、ガラス固定部51aから車内側に突出する接続部51bとを有し、長手方向に対する垂直な断面形状が略T字状になっている。
ガラス固定部51aは車内外方向に表裏の面(側面)が向く板状部である。ガラス固定部51aの車外側の面が、ウインドウガラスWの車内側面W2の取付領域G1(図4)に対して接着等で固定される。図5及び図6に示すように、ガラス固定部51aは取付領域G1への固定箇所よりも外周側に延びており、ガラス固定部51aの外周側の端部は、ウインドウガラスWの縁面W3よりも外周側に位置している。
図4に示すように、ガラス固定部51aの下端に、下端受け部51cが設けられている。下端受け部51cは、ガラス固定部51aから車外側に突出する平板状の部位である。ガラス固定部51aの下端部分には、下方に進むにつれて徐々に内外周方向の幅を拡大させる(幅広になる)拡幅部51gが形成されており、拡幅部51gに連続して下端受け部51cが形成されている(図4参照)。ガラス固定部51aから車外側への下端受け部51cの突出量は、ウインドウガラスWの厚さ以上である。ウインドウガラスWにスライダベース51を取り付けるときに、ウインドウガラスWの下端を下端受け部51cで支持するように、スライダベース51の位置が定められる。
ウインドウガラスWとスライダベース51を昇降方向に相対移動させようとする力は、車内側面W2(取付領域G1)とガラス固定部51aの間で昇降方向への剪断荷重として作用する。スライダベース51に設けた下端受け部51cでウインドウガラスWの下端を受けることによって、ウインドウガラスWとスライダベース51を高い強度で固定させることができ、このような剪断荷重によるウインドウガラスWとスライダベース51の位置ずれや分離を確実に防ぐことができる。
接続部51bは、ガラス固定部51aの車内側の面から突出して、内外周方向に両側面が向く板状部である。接続部51bのうち上端側と下端側のそれぞれの一部分が、車内側への突出量を大きくしてシュー支持部51d、51eを形成している。上端側のシュー支持部51dにスライダシュー52が取り付けられ、下端側のシュー支持部51eにスライダシュー53が取り付けられている。シュー支持部51d、51eはそれぞれ、接続部51bの車内側端部を外周側に屈曲したL字状の断面形状を有しており、このL字状部分に対してスライダシュー52、53が嵌め込まれる(図4及び図6参照)。
スライダシュー52、53はそれぞれ、ガイドレール40のガイド空間S内に収まる矩形状の断面形状の摺動基部52a、53aを有している。摺動基部52a、53aから、片持ち状の第1弾接部52b、53bと、片持ち状の第2弾接部52d、53dが、それぞれ突出している。また、摺動基部52a、53aからスライダベース51の長手方向に向けてストッパ部52c、53cが突出している。スライダシュー52、53はそれぞれ、異音や振動を防ぎながら円滑な移動を実現するべく、ガイドレール40を構成する材質に比して硬度が低い合成樹脂等で形成されている。
スライダシュー52とスライダシュー53は同一構造の部材であり、互いに上下反転させた関係でスライダベース51に組み付けられている。図7に示すように、上端側のスライダシュー52は、ストッパ部52cを下方に向けて組み付けられる。ストッパ部52cは、スライダベース51の接続部51bの内周側の面に沿って下方に延びる。下端側のスライダシュー53は、ストッパ部53cを上方に向けて組み付けられる。ストッパ部53cは、スライダベース51の接続部51bの外周側の面に沿って上方に延びる。
スライダシュー52をスライダベース51に組み付けると、第1弾接部52bが摺動基部52aに対して車内側に突出し、第2弾接部52d(図8参照)が摺動基部52aに対して外周側に突出する。スライダシュー53をスライダベース51に組み付けると、第1弾接部53bが摺動基部53aに対して車内側に突出し、第2弾接部53dが摺動基部52aに対して内周側に突出する。
摺動基部52a、53aに形成した孔に固定ネジ56(図4)を挿入し、シュー支持部51d、51eに設けたネジ孔に対して固定ネジ56を螺合させて締め付けることで、スライダシュー52、53がそれぞれスライダベース51に固定される。
図4に示すように、スライダベース51にはさらにラック54が取り付けられる。ラック54は上下方向に延びる長尺部材であり、スライダベース51のうち、スライダシュー52とスライダシュー53が取り付けられる上下端の一部を除いた長さを有している。
図4及び図5に示すように、ラック54は、本体部54aと、本体部54aから車外側に突出する板状の取付部54bとを有している。取付部54bには板厚方向に貫通する取付孔54c(図5)が形成されている。ラック54の長手方向に位置を異ならせて複数の取付部54bと取付孔54cが設けられている。
ラック54は、取付部54bを接続部51bの外周側の面に当接させてスライダベース51に取り付けられる。接続部51bには、取付孔54cに対応する複数のネジ孔51fが形成されており、各取付孔54cを通して各ネジ孔51fに固定ネジ57(図4、図5)を螺合させて締め付けることで、ラック54がスライダベース51に対して固定される。本体部54aのうち車外側を向く部分は、接続部51bの車内側端部を嵌合させる凹部になっており(図5参照)、スライダベース51に対してラック54を強固に固定することができる。
ラック54の本体部54aのうち、スライダベース51に取り付けた状態で内周側に向く面には、長手方向に等間隔で歯54dが形成されている(図4、図7参照)。歯54dは、本体部54aを部分的に凹ませて形成されており、歯54dの車外側と車内側は、本体部54aを構成する側壁部54g、54hによって塞がれている。歯54dの両側に側壁部54g、54hを設けることによって、ラック54の剛性が向上する。本体部54aのうち、歯54dとは反対の外周側に向く面には、支持突起54e(図5)が形成されている。
図7及び図8に示すように、スライダシュー52とラック54をスライダベース51に取り付けると、スライダベース51の長手方向で、ラック54の歯54dの延長上(上方)にスライダシュー52のストッパ部52cが位置する。ラック54の上端には、ストッパ部52cの外周側の面が当接する規制部54f(図8)が形成されている。
ウインドウガラスWの前縁側にスライドガイド55が取り付けられる。図9に示すように、スライドガイド55は、車内外方向に両側面を向けた板状部材であり、内周側に位置する取付部55aと、取付部55aから外周側に突出する突出部55bと、取付部55a及び突出部55bを接続する段差部55cと、を有している。取付部55aは突出部55bよりも車外側に位置しており、段差部55cは突出部55bから取付部55aに向かうにつれて車外側へ突出する傾斜形状になっている。取付部55aの車外側を向く面が、ウインドウガラスWの車内側面W2の取付領域G2(図4)に対して接着等で固定される。
以上のようにして、ウインドウガラスWに対して、スライダベース51、一対のスライダシュー52、53、ラック54、スライドガイド55がそれぞれ取り付けられて、ウインドウアッセンブリ50となる。ウインドウアッセンブリ50をドアフレーム10bに組み込むと、図5、図6及び図9に示す状態になる。
図6に示すように、立柱サッシュ12では、上下2つのスライダシュー52、53が、ガイドレール40のガイド空間S内に対して、ガイドレール40の長手方向(ウインドウガラスWの昇降方向)に摺動可能に収容されている。ガイド空間Sを囲む車内側壁41と屈曲部45によって、車内外方向へのスライダシュー52、53の移動を規制している。また、内周側壁42と外周側壁43によって、内外周方向へのスライダシュー52、53の移動を規制している。
スライダシュー52に設けた第1弾接部52bと第2弾接部52dが、車内側壁41と外周側壁43に当接して弾性変形することで、スライダシュー52のがたつきを防止する。スライダシュー53に設けた第1弾接部53bと第2弾接部53dが、車内側壁41と内周側壁42に当接して弾性変形することで、スライダシュー53のがたつきを防止する。
より詳しくは、スライダシュー52、53の第1弾接部52b、53bはそれぞれ、車内側壁41に当接した状態で、車外側に向けて押圧されて弾性変形しており、弾性変形から復元しようとする力によって、摺動基部52a、53aを車外側に押圧する。車外側に押圧された摺動基部52a、53aは、ガイド空間Sの車外側を部分的に覆う屈曲部45に押し付けられて、車内外方向に安定した状態で保持される。
スライダシュー52の第2弾接部52dは、外周側壁43に当接した状態で、内周側に向けて押圧されて弾性変形しており、弾性変形から復元しようとする力によって、摺動基部52aを内周側に押圧する。内周側に押圧された摺動基部52aは、内周側壁42に押し付けられて、内外周方向に安定した状態で保持される。
スライダシュー53の第2弾接部53dは、内周側壁42に当接した状態で、外周側に向けて押圧されて弾性変形しており、弾性変形から復元しようとする力によって、摺動基部53aを外周側に押圧する。外周側に押圧された摺動基部53aは、外周側壁43に押し付けられて、内外周方向に安定した状態で保持される。
このように、ウインドウガラスWの後縁部分の上端側に位置するスライダシュー52では、外周側に突出する第2弾接部52dによって、摺動基部52aを内周側(前方)に押し付けると共に、外周側(後方)へのガタつきを吸収可能になっている。一方、ウインドウWの後縁部分の下端側に位置するスライダシュー53では、内周側に突出する第2弾接部53dによって、摺動基部53aを外周側(後方)に押し付けると共に、内周側(前方)へのガタつきを吸収可能になっている。このスライダシュー52とスライダシュー53の機能分担には、次のような利点がある。
ウインドウガラスWは、前縁よりも後縁の方が上下方向に長く、かつ後縁から前縁に向けて徐々に上縁の高さが低くなる形状を有している(図1から図4参照)。そのため、後縁に沿ってスライダシュー52、53による支持を受けるウインドウガラスWには、前倒れ方向(図1のように車内側から見て反時計方向)への負荷が常に作用する。この前倒れ方向の負荷は、上側のスライダシュー52に対しては内周側へ移動させようとする力として働き、下側のスライダシュー53に対しては外周側へ移動させようとする力として働く。ここで、各スライダシュー52、53は、当該負荷の作用方向へは、強度が高く面積が大きい摺動基部52a、53aの側面をガイドレール40(ガイド空間Sの内面)に当接させているので、優れた耐荷重性を得ることができる。
また、悪路走行等で車体に激しい振動が加わると、ウインドウガラスWを上記の前倒れ方向とは逆方向(図1のように車内側から見て時計方向)に傾動させようとする負荷が作用する。この逆方向の負荷は、上端側のスライダシュー52に対しては外周側へ移動させようとする力として働き、下端側のスライダシュー53に対しては内周側へ移動させようとする力として働く。ここで、各スライダシュー52、53は、当該負荷の作用方向へは、第2弾接部52d、53dの弾性変形によって負荷を吸収しながら、ガイドレール40に対する振動を効率的に抑制できる。
各スライダシュー52、53がガイド空間Sの内面に沿って移動することで、ウインドウガラスWが昇降移動する。つまり、ガイドレール40は、ウインドレギュレータ19における各スライダシュー52、53の昇降案内用のガイド部として機能する。ガイドレール40はウインドウガラスWの曲率に対応した湾曲形状を有しており、各スライダシュー52、53によって、湾曲するガイドレール40に沿って精度良くウインドウガラスWを昇降させることができる。
ウインドレギュレータ19を構成するスライダシュー52とスライダシュー53が上下方向に大きく離れた位置でウインドウガラスWを支持する(2つのスライダシュー52、53の上下方向間隔であるシューピッチが大きい)ため、ウインドウガラスWの位置精度と安定性が極めて高くなっている。シューピッチが大きいほど、ガイドレール40に対するウインドウガラスWの傾き(特に車両前後方向への傾き)を抑制しやすく、ウインドウガラスWの高精度な支持と高い安定性を得ることができる。
特に、ウインドウガラスWはフロントサッシュ13に沿う前縁部よりも立柱サッシュ12に沿う後縁部の方が上下に長い。このウインドウガラスWの後縁部の上端付近と下端付近に離間させてスライダシュー52とスライダシュー53を配置することで、ウインドウガラスWに対する上下方向の有効な支持長が非常に大きくなり、前後方向の片側の縁部(本実施形態では後縁部)でウインドウガラスWを支持する構造であっても十分な安定性と支持強度を得ることができる。そして、ドアパネル内空間のうち、フロントサッシュ13とガイドレール40の間の広い領域で、ウインドウガラスWを支持及び案内するための手段を設けずに済み、優れたスペース効率を得ることができる。
このように優れた精度と安定性でウインドウガラスWを支持している立柱サッシュ12側の支持構造においては、ウインドウガラスWを車内外方向に挟んで保持する弾性部材(一般的な凹型構造のガラスラン)が設けられていない。ウインドウガラスWの後縁付近が当接する弾性カバー36、37は、ウインドウガラスWと立柱サッシュ12(アウタガーニッシュ35)の間に防水性を持たせると共に、立柱サッシュ12の外観構成部分として機能するものであり、コンパクトでシンプルな断面形状にすることができる。
スライダベース51の接続部51bは、ガイドレール40のガイド空間S内に配置されるスライダシュー52、53と、ガイド空間Sの外側(車外側)に位置するガラス固定部51aとを接続している。そのため、ガイドレール40は、接続部51bを車内外方向に通すために、ガイド空間Sを車外側に開放させた断面形状になっている。接続部51bは、スライダシュー52、53に加えてラック54を取り付ける対象であるため、上下方向に長く延びている。その結果、ガイドレール40は、長手方向の全体に亘って、車外側への開放部分を有している。
弾性カバー36のリップ部36bと弾性カバー37の第2リップ部37dは、内外周方向に延びて、自由状態で互いの先端付近が重なる関係にある(図5、図6参照)。そのため、スライダベース51が存在する立柱サッシュ12の断面位置では、弾性変形したリップ部36bと第2リップ部37dが、接続部51bに対して両側から密着すると共に、ガラス固定部51aに対して車内側から密着する。これにより、スライダベース51周りを確実にシールすることができる。ガラス固定部51aをウインドウガラスWの縁面W3よりも外周側の位置まで延ばすことにより、ガラス固定部51aに対する第2リップ部37dの接触範囲を確保できる。また、ウインドウガラスWが下降してスライダベース51が存在しなくなった立柱サッシュ12の断面位置では、ガイドレール40の車外側を向く開放部分を、リップ部36bと第2リップ部37dが互いに重なりながら覆う。これにより、ウインドウガラスWの昇降位置に関わらず、立柱サッシュ12(特にガイドレール40)の内部構造が、車外側から視認可能な状態で露出せず、立柱サッシュ12の外観品質を高めることができる。
また、スライダベース51の接続部51bによって分断される内周側空間と外周側空間に分けて、別体の弾性カバー36と弾性カバー37を配しているので、それぞれの空間でのシール性を最適化させやすい。具体的には、接続部51bの内周側では、ウインドウガラスWの車内側面W2とガイドレール40との間をシールするのに適した形状の弾性カバー36を配している。接続部51bの外周側では、ウインドウガラスWの縁面W3とアウタガーニッシュ35との間や、アウタガーニッシュ35とガイドレール40との間をシールするのに適した形状の弾性カバー37を配している。
図5に示すように、スライダシュー52、53に加えて、ラック54もガイドレール40のガイド空間S内に位置する。ラック54の本体部54aは、スライダシュー52、53の摺動基部52a、53aよりも断面積が小さく、ガイド空間Sの内面との間にクリアランスがあるので、スライダシュー52、53を介したウインドウガラスWの昇降動作の妨げにはならない。ラック54の歯54dは、ガイド空間S内で内周側(内周側壁42)に向いている。
ガイドレール40は、インナサッシュ30やインナガーニッシュ34よりも下方に長く延設されており、インナサッシュ30と重なる立柱サッシュ12の形成領域から、ドアパネル内空間の最下方に亘る長さを有している(図1から図3参照)。ドアパネル内空間ではガイドレール40がインナサッシュ30やインナガーニッシュ34に囲まれずに露出する。図2及び図8に示すように、ドアパネル内空間で内周側壁42の一部を切り欠いて、ラック54の歯54dを露出させる切欠48が形成されている。そして、切欠48を通して、駆動ユニット60のピニオン61がラック54の歯54dに噛み合っている。
駆動ユニット60は、ウインドレギュレータ19における駆動源であるモータMを備えており、モータMの駆動力をピニオン61に伝達して回転させる。駆動ユニット60は、ロックブラケット15に取り付けられる。図2及び図3に示すように、ロックブラケット15はインナサッシュ30よりも車内側に位置しており、インナサッシュ30の下方のドアパネル内空間には、ロックブラケット15の車外側に所定のスペースが有る。ガイドレール40は、ドアパネル内空間で当該スペースを通っている。そして、駆動ユニット60は、ロックブラケット15の車外側の面に対して固定される。この状態でピニオン61の回転軸は、車内側方向を向く。
ロックブラケット15の所定位置に駆動ユニット60を取り付けると、ピニオン61がラック54に対して内周側から噛み合う。ラック54に設けた支持突起54eは、外力が加わらない状態ではガイド空間Sの内面から離間している。ピニオン61からラック54に対して強い負荷(特に外周側へ押圧する力)が加わると、支持突起54eが外周側壁43に当接してガイドレール40に負荷を受け渡す。これにより、ガイド空間S内でのラック54の過度な変形が防がれ、ピニオン61とラック54の噛合が適切に維持される。
以上のようにウインドレギュレータ19の構成要素を含むドア構成部品(ドアフレーム10b、ウインドウアッセンブリ50及び駆動ユニット60)の組み付けを行うことで、ウインドレギュレータ19を含むドアフレームアッセンブリ10eが構成される。ドアフレームアッセンブリ10eは、ドアフレーム10bとウインドレギュレータ19とを含んで構成される(図2参照)。図2では、ドアフレームアッセンブリ10eを組み立てる前の状態について示している。
ウインドレギュレータ19が組み付けられた状態で駆動ユニット60のモータMを駆動してピニオン61を回転させると、ラック54を介してガイドレール40の長手方向への移動力に変換される。すると、ラック54を固定したスライダベース51が、スライダシュー52、53をガイドレール40に対して摺動させながら、ウインドウガラスWと共に移動する。従って、ピニオン61が正逆に回転すると、ラック54を含むウインドウアッセンブリ50が、ガイドレール40に沿って昇降する。ラック54は、ウインドウガラスWの全閉位置から全開位置までの可動範囲の全体でピニオン61に噛合する長さを有している。
ウインドウアッセンブリ50が下方に移動すると、スライダベース51の上端に取り付けられているスライダシュー52の位置が下方に変化する。スライダシュー52のストッパ部52cが、ラック54の歯54dの延長上(上方)に位置するので、スライダシュー52の位置が下方に変化すると、ストッパ部52cがピニオン61に接近する。そして、図8に示すように、ストッパ部52cがピニオン61の位置まで達すると、ストッパ部52cの側面に対してピニオン61の歯が当接する。
ピニオン61の歯がストッパ部52cに当接した状態で、ピニオン61がさらにガラス下降方向(図8の時計方向)へ回転しようとすると、ストッパ部52cを外周側に押し込む。ストッパ部52cは、ラック54の上端に設けた規制部54fによって外周側への移動が規制されているので、ガラス下降方向へのピニオン61の回転が規制される。これにより、ピニオン61とラック54がロックした状態になり、ウインドウガラスWの下方への移動が機械的に制限される。ウインドウガラスWの昇降を案内するスライダシュー52と、ウインドウガラスWに昇降駆動力を与えるピニオン61とによって機械的なストッパが構成されるので、ストッパ部材を別途設ける必要がなく、構成が簡単で低コストに得ることができる。
ストッパ部52cがピニオン61に当接する機械的な制限位置(図8)を、ウインドウガラスWの全開位置とすることができる。あるいは、駆動ユニット60の通常の駆動制御で移動させるウインドウガラスWの全開位置を、図8に示す機械的な制限位置よりも上方に設定し、ウインドウガラスWが全開位置よりも開方向に所定量移動したときにだけストッパ部52cがピニオン61に当接するように構成してもよい。
なお、下端側のスライダシュー53については、ストッパ部53cを備えない専用部品にすることも可能である。
図9及び図10に示すように、フロントサッシュ13は、車内側に位置する車内側壁70と、車内側壁70の外周側の端部から車外側に延びる接続壁71と、接続壁71の車外側の端部から内周側に延びる車外側壁72とを有し、内周側に向けて開放されている。内外周方向において、車外側壁72はウインドウガラスWの前縁の縁面W3よりも前方に位置する。車内側壁70は、接続壁71に接続する基部(外周部)70aと、先端側に位置して基部70aに対して車外側にずれて位置する先端部(内周部)70bと、基部70a及び先端部70bを接続する段差部70cと、を有している。内外周方向で、基部70aが外周側に位置し、先端部70bが内周側に位置している。車内側壁70は車外側壁72よりも内周側への突出量が大きく、先端部70bが車外側壁72よりも内周側に位置する。
フロントサッシュ13は、接続壁71から外周側に突出する固定部73を有し、固定部73の車外側の面がミラーブラケット14に固定される。また、車内側壁70のうち先端部70bの車内側の面もミラーブラケット14に固定される。さらに、ミラーブラケット14の車外側を覆う外装部材75が設けられる。
ウインドウアッセンブリ50をドアフレーム10bに取り付けると、フロントサッシュ13の車内側壁70の先端部70bがウインドウガラスWの車内側に面して位置する。ウインドウガラスWの前縁側の車内側面W2(図4に示す取付領域G2)に取り付けられたスライドガイド55の取付部55aが、車内側壁70の先端部70bに対して車内外方向に対向する。スライドガイド55の突出部55bは、車内外方向で、車内側壁70の基部70aと車外側壁72の間に位置する。また、外装部材75の車外側の面とウインドウガラスWの車外側面W1とが略面一になり、立柱サッシュ12と同様のフラッシュサーフェス構造になる。
フロントサッシュ13に弾性カバー(車内側弾性部材)76と弾性カバー(車外側弾性部材)77が取り付けられている。弾性カバー76、77はいずれも、非通水性の弾性材(例えばゴム)で形成されており、フロントサッシュ13の長手方向に延びる長尺部材である。図9及び図10は、外力を受けていない初期状態(自由状態)の弾性カバー76、77の形状を示している。
弾性カバー76は、フロントサッシュ13の車内側壁70のうち先端部70bとミラーブラケット14の内周側端部とに対して嵌合する嵌合部76aと、嵌合部76aから突出する片持ち状の第1リップ部76b及び第2リップ部76cとを有する。第1リップ部76bは、ウインドウガラスWの車内側面W2に当接して弾性変形する、第2リップ部76cは、スライドガイド55の取付部55aに車内側から当接して弾性変形する。
弾性カバー77は、フロントサッシュ13の車外側壁72に嵌合する嵌合部77aと、嵌合部77aから内周側に突出する片持ち状の第1リップ部77bと、嵌合部77aから車内側に突出する片持ち状の第2リップ部77cとを有する。第1リップ部77bは、内外周方向でウインドウガラスWの前方の縁面W3に対向する位置にある。縁面W3によって第1リップ部77bが外周側に押し込まれて弾性変形する。第1リップ部77bの一部は、ウインドウガラスWの縁面W3と外装部材75の内周側端部との隙間を埋めるように位置して、ドア10の外面の一部を構成する。第2リップ部77cは、スライドガイド55の突出部55bに車外側から当接して弾性変形する。
弾性カバー76と弾性カバー77によって、ウインドウガラスW及びスライドガイド55、フロントサッシュ13、外装部材75の間を水密に塞ぐと共に、ウインドウガラスWの振動を抑制する。また、弾性カバー76と弾性カバー77は、フロントサッシュ13の内部構造が車内側から視認されないように覆って、ウインドウガラスWの前縁付近の美観を向上させる。
図9及び図10に示すように、スライドガイド55は、弾性カバー76、77に対して弾性的に接触しているのみであり、フロントサッシュ13には当接していない。上述のように、立柱サッシュ12側に設けたウインドレギュレータ19によって、ウインドウガラスWを高精度に支持及び昇降させることができる。そのため、ウインドウガラスWの前縁では、ウインドレギュレータ19によるウインドウガラスWの支持及び駆動に影響しないように、通常状態ではフロントサッシュ13とスライドガイド55を離間させている。つまり、フロントサッシュ13は、弾性カバー76、77を介して、スライドガイド55を弾性的に支持及び案内している。所定以上の強い外力が加わった場合には、フロントサッシュ13の内面がスライドガイド55の移動を規制して、ドアフレーム10bからのウインドウガラスWの脱落を防止する。
図10に示すように、スライドガイド55の取付部55aは、ウインドウガラスWの車内側面W2に沿って延びている。より詳しくは、取付部55aは車内側面W2と平行な板状部であり、車内側面W2に対向している。この取付部55aにおける車内側面W2との対向領域の大部分が、取付領域G2で車内側面W2に対して接着固定されている。接着の対象となる取付領域G2は、ウインドウガラスWの前側の縁面W3よりも僅かに内周側に入り込んだ範囲までの設定であり、取付部55aのうち外周側の一部は、取付領域G2と縁面W3の間で、車内側面W2に対して接着はされずに該車内側面W2に沿っている。
スライドガイド55のうち、取付部55aの外周側端部に続く位置にある段差部55cは、ウインドウガラスWの縁面W3よりも外周側に位置し、且つ取付部55aから離れるにつれて車内側へ傾斜している。また、突出部55bは、段差部55cの外周側端部から、取付部55aと略平行に外周側へ延びている。つまり、突出部55bと段差部55cはいずれも、ウインドウガラスWと車内外方向に対向せず(内外周方向での位置がウインドウガラスWと異なり)、しかもウインドウガラスWの車内側面W2に対して車内外方向の間隔も空く配置になっている。
図10に示すように、フロントサッシュ13の車内側壁70は、スライドガイド55よりも内外周方向に長く、スライドガイド55の全体が車内側壁70に対向する。ここで、ウインドウガラスWに対して車外側から車内側へ向けて強い負荷Tが加わると、スライドガイド55のうち、ウインドウガラスWの車内側面W2に沿って延びている取付部55aの方が、車内側面W2に沿って延びていない(ウインドウガラスWと車内外方向で対向せず、且つウインドウガラスWに対して車内外方向に間隔を空けている)突出部55bや段差部55cよりも先に、車内側壁70による移動規制を受ける。
具体的には、車内側壁70のうち、先端部70bの車外側の面が、弾性カバー76の嵌合部76aで覆われている。そして、嵌合部76aの車外側を向く部分に、第2リップ部76cの根元部76d(図10)が接続している。第2リップ部76cは、根元部76dから車外側に向けて突出し、ある程度車外側に進むと外周側に湾曲する形状になっている。そのため、第2リップ部76cは、車外側から押圧されたときに、先端側は車内側へ弾性変形しやすいが、根元部76dは大きく変形せずに嵌合部76aと先端部70bに力を受け渡す。すなわち、第2リップ部76c(特に根元部76d)と嵌合部76aは、車内側壁70と共に、フロントサッシュ13の車内側部の一部を構成している。
従って、スライドガイド55が車内側へ移動すると、第2リップ部76cの先端側の変形量を増大させながら、取付部55aが嵌合部76aに接近する。そして、第2リップ部76cの先端側が所定量変形して撓み限界に達すると、取付部55aのそれ以上の車内側への移動が、根元部76dと嵌合部76aと先端部70bによって制限される。この取付部55aの移動制限が生じる段階で、突出部55bや段差部55cが、車内側壁70の基部70aや段差部70cに当接しないように、スライドガイド55とフロントサッシュ13の間の寸法関係が設定されている。具体的には、図10に示すように、取付部55aの車内側の面から第2リップ部76cの根元部76dまでの車内外方向の間隔D1と、突出部55bの車内側の面から基部70aの車外側の面までの車内外方向の間隔D2よりも小さい。また、間隔D1は、段差部55cの車内側の面から段差部70cの車外側の面までの車内外方向の間隔D3よりも小さい。
車内側壁70では、段差部70cによって、基部70aよりも先端部70bの方が車外側に位置づけられている。さらに、先端部70bの車外側を覆う嵌合部76aと根元部76dが、取付部55aとの車内外方向の間隔を狭くさせている。上記の通り、嵌合部76aと根元部76dは、取付部55aの移動規制に関与する部位である。これにより、取付部55aが車内側への移動規制を受けるタイミングの方が、突出部55bや段差部55cが基部70aや段差部70cに当接するタイミングよりも早くなる。
このように、ウインドウガラスWの前縁部分では、車外側から車内側へ強く押圧されると、スライドガイド55のうち、ウインドウガラスWの車内側面W2に沿って延びる取付部55aがフロントサッシュ13による移動規制を受ける。車内外方向に並ぶ位置関係であるウインドウガラスW、取付部55a、先端部70b(弾性カバー76の嵌合部76aや根元部76dを含む)の順で負荷を受けるので、各々の当接箇所で板厚方向への圧縮荷重が作用する。この圧縮荷重は、ウインドウガラスWと取付部55aを密着させる力として働くので、ウインドウガラスWからのスライドガイド55の剥離を生じさせない。また、スライドガイド55がウインドウガラスWと平行に車内側に押圧されて、ウインドウガラスWを車内側に延長した位置にある先端部70bで移動規制を受けるので、移動規制時にスライドガイド55を曲げたり傾かせたりするモーメントが生じない。さらに、先端部70bの車外側がミラーブラケット14で補強されているので、車外側からの荷重に対して、より一層優れた強度を得ることができる。
また、車内側に押圧された取付部55aが接触するのは、弾性カバー76であり、先端部70bには直接接触しないので、硬質な部材(フロントサッシュ13とスライドガイド55)どうしの衝突による衝撃音の発生を抑制できる。
車内外の気圧差などによって、ウインドウガラスWを車内側から車外側へ押し出す(吸い出す)力が加わった場合は、スライドガイド55の突出部55bが、フロントサッシュ13の車外側壁72による車外側への移動規制を受ける。
具体的には、車外側壁72が弾性カバー77の嵌合部77aで覆われている。スライドガイド55が車外側へ移動すると、第2リップ部77cの変形量を増大させながら、突出部55bが嵌合部77aに接近する。そして、第2リップ部77cの撓み限界に達すると、突出部55bのそれ以上の車外側への移動が、車外側壁72によって制限される。このとき突出部55bが接触するのは、弾性カバー77であり、車外側壁72には直接接触しないので、硬質な部材(フロントサッシュ13とスライドガイド55)どうしの衝突による衝撃音の発生を抑制できる。
以上の通り、本実施形態のドア10では、ウインドウガラスWの前縁に設けたスライドガイド55において、ウインドウガラスWの車内側面W2に沿って延びる取付部55aで車内側への移動規制を行い、取付部55aよりも外周側に突出する(ウインドウガラスWに沿って位置しない)突出部55bや段差部55cで車外側への移動規制を行うように機能分担させている。これにより、車外側からの負荷T(図10)に対して、取付部55aで車内側への移動規制を行う際の耐荷重性が特に優れた構造となる。
上記実施形態では、弾性カバー76(嵌合部76aや第2リップ部76c)の撓み量を加味して、取付部55aと根元部76dの車内外方向の間隔D1と、突出部55bと基部70aの車内外方向の間隔D2とを設定して、スライドガイド55が車内側に移動する際に取付部55aが先に移動規制を受けるようにしている。これと異なる構成を選択することも可能である。
例えば、取付部55aの車内側への延長上に弾性カバー76が存在しない構成にしてもよい。この場合、単純に、取付部55aと先端部70bの車内外方向の間隔を、突出部55bと基部70aの車内外方向の間隔よりも大きく設定すれば、取付部55aが優先して車内側への移動規制を受けるようにできる。あるいは、車内側壁70の基部70aから先端部70bにかけて全域が、均一の肉厚の弾性材で覆われるようにしてもよい。この場合、取付部55aと弾性材の車内外方向の間隔を、突出部55bと弾性材の車内外方向の間隔よりも大きく設定すれば、取付部55aが優先して車内側への移動規制を受けるようにできる。
また、取付部55aの車内側の面に別部材を取り付けて先端部70bとの間隔を小さくさせることで、先端部70bによる移動規制のタイミング(スライドガイド55の車内側への可動量)を調整させることも可能である。この別部材を弾性材で構成することで、上記実施形態における根元部76dや嵌合部76aに相当する役割を持たせることもできる。
このように、突出部55bよりも取付部55aが先に車内側への移動規制を受けるという関係を満たしていれば、フロントサッシュ13とスライドガイド55の細部構成は、適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、スライドガイド55において、車外側からの荷重に対してフロントサッシュ13側に先当たりしない部分(突出部)として、取付部55aに対して傾斜して車内側に延びる段差部55cと、段差部55cから取付部55aと略平行に延びる突出部55bとを備えているが、本発明における突出部の構成はこれに限定されない。上記実施形態の取付部55aが車内側への移動規制を受ける(先当たりする)のに適しているのは、ウインドウガラスWの車内側面W2に沿って延びているためである。従って、仮にウインドウガラスWの車内側の延長上に位置していても、上記実施形態の取付部55aとは異なり、車内側面W2に沿わずに車内側に大きく離間している形状の部位では、車内側への荷重を受けるための先当たり部分としては適さない。このような車内側面W2から車内側へ離れた部位が先当たりして負荷を受けると、車内側面W2に取り付けられている部分との間で不要なモーメントなどが発生し、強度的に不利になる。
本発明を適用する取付部は、上記実施形態の取付部55aのように、大部分がウインドウガラスWに対して接着固定されていることが強度的に好ましい。少なくとも、ウインドウガラスWに接着固定されている部分は、本発明の取付部である。しかし、本発明では、ウインドウガラスの内面(車内側面)に沿って延びているという要件を満たしていれば、ウインドウガラスに対する取付部の固定範囲が、部分的なものであってもよい。すなわち、ウインドウガラスの内面に沿った取付部は、車外側からの負荷に応じて移動規制を受ける際に、ウインドウガラスとの間で上記のようなモーメントを発生しにくいので、突出部を先当たりさせる場合に比して耐荷重性能に優れており、この効果は、取付部の固定範囲の広狭に関わらず得ることができる。一例として、図10に示す取付領域G2よりも、内外周方向の接着領域を狭くさせても(車内側面W2に接着はされないが対向はする取付部55aの範囲を増やしても)、所要の効果を得られる。
以上のように、本実施形態のドア10では、駆動源であるモータMの駆動力をウインドウガラスWに伝達して昇降させるウインドレギュレータ19の構成部品(ガイドレール40、スライダベース51、スライダシュー52、53、ラック54など)が、立柱サッシュ12内を通るように配置している。これにより、窓開口10cの下方のドアパネル内空間にウインドレギュレータを配置する既存の構成に比して、ドアパネル10a周りにおけるスペース効率やレイアウト性を向上させることができる。例えば、ドアパネル10aの車内側に設けるドアトリムの形状設定の自由度が高くなる。また、ドア内面を車外側に寄せた形状にして乗降時の足さばき性を向上させることができる、あるいは、ドアパネル内空間を広くして、ウインドレギュレータ以外の機能部品の配置スペースを確保したり、ドアパネル10a内への部品の組み付け性の向上を実現したりできる。
また、ウインドウガラスWに駆動力を伝える機構を、ラック54とピニオン61を用いて構成したため、部品点数が少なく、構成の簡単さや生産性などの点で有利である。
また、ウインドレギュレータ19は、ウインドウガラスWよりも車内側で、ガイドレール40によってスライダシュー52、53が保持されて車内側と車外側の両方向の移動が規制されている。ウインドウガラスWを挟まずに、ウインドウガラスWの車内側のみでスライダシュー52、53に対する車内外方向の移動規制を行っている。そのため、立柱サッシュ12内にウインドレギュレータ19の構成部品を収容しつつ、立柱サッシュ12の大型化(特に車内外方向の大型化)を回避することができる。
また、立柱サッシュ12に沿って配置したウインドレギュレータ19の構成部品がウインドウガラスWの車外側の構成を制約しないので、ドア10の外面デザインの自由度が高くなる。これにより、ウインドウガラスWの車外側面W1と立柱サッシュ12の車外側の面(アウタガーニッシュ35)が略面一となる構造を採用できる。
また、ウインドウガラスWの前縁に設けたスライドガイド55を弾性的に支持及び案内するフロントサッシュ13において、優れた耐荷重性能を得ることができる。特に車外側から車内側へ向けて働く負荷に対して、高い強度を備えている。
上記実施形態のドア10は、ドアパネル10aとは別部材で構成された枠状のドアフレーム10bが設けられているタイプのドア(サッシュドア)である。そして、ドアフレーム10bにドアパネル10aを取り付ける前に、ドアフレーム10bを構成する立柱サッシュ12やロックブラケット15に対して、ウインドレギュレータ19の構成部品を組み付けて、ドアフレームアッセンブリ10e(図2参照)を形成している。
サッシュドアにおける異なる形態として、ドアフレーム10bにドアパネル10aを取り付けた後で、立柱サッシュ12やロックブラケット15に対して、ウインドレギュレータ19の構成部品を組み付けることも可能である。
本発明はさらに、サッシュドア以外のドアにも適用が可能である。例えば、ドアパネルとドアサッシュを一体的に形成するタイプのドア(インナパネルとドアサッシュを一体形成したインナフルドア、インナパネルとアウタパネルのそれぞれとドアサッシュのインナ側とアウタ側を一体形成してから組み合わせたパネルドア)にも適用が可能である。すなわち、本発明は、窓開口を形成するドアサッシュがドアパネルと一体であるか別体であるかを問わず、窓開口内にウインドウガラスを昇降させる車両ドアであれば適用対象となる。
上記実施形態は、車両の右側前席の側方に取り付けられる側面ドアに適用したものであるが、これ以外のドアへの適用も可能である。例えば、車両の後部側面ドアに適用してもよい。後部側面ドアでは、ウインドウガラスの前縁が後縁よりも長い場合が多い。そのため、上記実施形態とは逆に、ウインドウガラスの後縁に沿ってスライドガイド55を固定させるとよい。
上記実施形態のウインドウガラスWはガラス製であるが、窓開口10cを開閉する開閉体として、樹脂製ウインドウなどを適用することも可能である。
上記実施形態では、ウインドウガラスWが上下に昇降して窓開口10cを開閉するが、開閉体の開閉方向はこれに限定されるものではない。例えば、ウインドウガラスWに相当する開閉体が水平方向にスライドするタイプの車両ドアにも本発明を適用可能である。この場合、開閉体が移動する水平方向に沿ってスライダ(スライドガイド55)を延設させる。
また、本発明の実施の形態は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。