JP7175642B2 - 発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、型内発泡成形に使用される発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関するものである。詳しくは、揮発性有機成分の含有量を低減することのできる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
一般に、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法として、市販のスチレンモノマーを水系懸濁系で重合して樹脂粒子を作成後、発泡剤を含浸する方法や、市販のスチレン系樹脂を押出機で溶融混練して樹脂粒子を作製後、発泡剤を含浸する方法等々が知られている。かかる方法により製造された発泡性スチレン系樹脂粒子を型内発泡成形することで得られる発泡体(以下、発泡成形体と記載することもある)は、軽量であり、かつ断熱材として優れた素材であることから、建築物の壁、床、屋根等の断熱材や畳の芯材、自動車部材等として広く使用されてきた。
発泡性スチレン系樹脂粒子中には、一般に、揮発性有機成分(以下、VOCと記載することもある)を含んでいる。これらの有機揮発性成分は、発泡性スチレン系樹脂粒子の予備発泡粒子の作製時に、大気中に排出され、その臭気が作業環境の悪化につながる場合がある。又、型内発泡成形で得られた発泡成形体中に揮発性有機成分が残留している場合には、揮発性有機成分が大気中に排出されることで、その発泡成形体の養生、保管中の倉庫内において臭気が発生することがある。
近年、住宅、自動車の高気密化高断熱化が進む中で、様々な揮発性有機成分による室内空気汚染、即ちシックハウスが重要な問題となっている。このシックハウスを解決するために、室内における空気中の有機成分の量を規制する動きがある。従って、発泡性スチレン系樹脂粒子から放出される揮発性有機成分はできるだけ少なくすることが望ましい。このため、VOC量の少ない発泡性スチレン系樹脂粒子が望まれている。
ここで、発泡性スチレン系樹脂粒子中の主な揮発性有機成分は、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、スチレン等である。スチレンは、スチレン系樹脂粒子の製造工程における重合条件、重合開始剤の選択により、低減することができるが、エチルベンゼン、プロピルベンゼンは、重合反応に寄与しないために、スチレン樹脂中に残存し、そのまま、発泡性スチレン系樹脂粒子に残存してしまう。このように、スチレンの重合で製造される発泡性スチレン系樹脂粒子中には、エチルベンゼン、プロピルベンゼンが多く残留してしまい、低VOCの発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることは難しい。
また、スチレン系樹脂を用いる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法として、例えば、特許文献1には、スチレン系樹脂を押出機で溶融混練し、小孔を有するダイスを通じて押出した後カッターで切断することによりスチレン系樹脂粒子を得た後、該スチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させ、発泡剤を含有させて得る製造方法が開示されている。また、特許文献2には、スチレン系樹脂を押出機で溶融混練して製造した短ストランド状のシード粒子に、スチレン系単量体を吸収重合させて得られたスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1、2の方法では、発泡性スチレン系樹脂粒子に含まれるVOC成分を減少させることはできていない。
VOC量を低減させる方法として、例えば、特許文献3、4には、スチレン系樹脂を水と押出機で溶融混練し、脱気吸引後、発泡剤を圧入した低VOC化したポリスチレン系押出発泡断熱材の製造方法が開示されているが、型内発泡成形に用いられる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関して記載されていない。
特開2014-80514号公報 特開2006-036993号公報 特開2002-225104号公報 WO2002/022723
以上のような状況に鑑み、揮発性有機成分の含有量を低減することのできる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)難燃剤とスチレン系樹脂とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、スチレン単量体60~90重量部とアクリロニトリル単量体40~10重量部からなる重量平均分子量Mwが15万以上25万以下であるスチレン系樹脂100重量部に対して、水0.01~5重量部を押出機で溶融混練した後、揮発性有機成分を押出機内から真空度-0.08MPaG以下、溶融部のシリンダ温度200℃~250℃の条件で吸引処理し、小孔を有するダイスを通じて押出した後カッターで切断してスチレン系樹脂粒子を製造する工程と、前記工程により得られたスチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させ、温度100℃~120℃で、発泡剤を、該スチレン系樹脂粒子に含浸させて製造する工程と、を備える発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
(2)60~90重量部のスチレン単量体と40~10重量部のアクリロニトリル単量体とを合計100重量部有する樹脂と、発泡剤とを含み、揮発性有機成分量(スチレン単量体とアクリロニトリル単量体とエチルベンゼンとプロピルベンゼンの合計量)が200ppm未満である、(1)記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
(3)スチレン系樹脂を製造する工程において、スチレン単量体60~90重量部とアクリロニトリル単量体40~10重量部に、難燃剤1.0重量部以上5.0重量部以下を添加して重合したスチレン系樹脂を用いることを特徴とする(1)~(2)に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
(4)(1)~(3)のいずれかで記載された製造方法で製造した発泡性スチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、前記工程で得た予備発泡粒子を成型キャビティ内に充填して型内発泡成形する工程と、を備える発泡成形体の製造方法。
本発明によれば、揮発性有機成分の含有量が低減された発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することができる。
難燃剤とスチレン系樹脂とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、スチレン単量体60~90重量部とアクリロニトリル単量体40~10重量部からなる重量平均分子量Mwが15万以上25万以下であるスチレン系樹脂100重量部に対して、水0.01~5重量部を押出機で溶融混練した後、揮発性有機成分を押出機内から真空度-0.08MPaG以下、溶融部のシリンダ温度200℃~250℃の条件で吸引処理し、小孔を有するダイスを通じて押出した後カッターで切断してスチレン系樹脂粒子を製造する工程と、前記工程により得られたスチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させ、温度100℃~120℃で、発泡剤を、該スチレン系樹脂粒子に含浸させて製造する工程と、を備える発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、スチレン単量体60~90重量部とアクリロニトリル単量体40~10重量部からなるスチレンとアクリルニトリル共重合体である。スチレンとアクリルニトリル共重合体は、ポリスチレン(スチレン単独樹脂)と類似した性質を有する樹脂であり、ポリスチレンに比べて、ガスバリア性能が若干よい。しかし、スチレンとアクリルニトリル共重合体のガスバリア性能は、一般的にガスバリア性樹脂と呼ばれる、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート等には遠く及ばない。本発明者らは、スチレンとアクリルニトリル共重合体を基材樹脂として使用して発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することにより、発泡性スチレン系樹脂粒子中のVOC成分を、外部に放散させ難くなることを見出した。また、本発明者らは、基材樹脂としてスチレンとアクリロニトリルとの共重合体を使用した発泡性スチレン系樹脂粒子で製造した発泡成形体のVOC成分放散量が、飛躍的に低減されることを見出した。発泡性スチレン系樹脂粒子中のVOC成分放散量や発泡成形体のVOC成分放散が低減されるため、環境汚染を低減できる。
本発明の効果を損なわない範囲で、スチレンとアクリロニトリル共重合体に、共重合可能な他の単量体またはその誘導体が共重合されていてもよく、スチレンとアクリロニトリル共重合体樹脂以外のスチレン系樹脂が用いられてもよい。例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体;ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-4-ジフェニルマレイミド、N-2-クロロフェニルマレイミド、N-4-ブロモフェニルマレイミド、N-1-ナフチルマレイミドなどのN-アルキル置換マレイミド化合物、などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
建材や自動車市場での難燃性は、重要な特性であり、本発明で用いられる難燃剤は、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、クロロペンタブロモシクロヘキサンなどのハロゲン化脂環化合物;ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、2,3-ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテルなどのハロゲン化芳香族化合物あるいはその誘導体;テトラブロモビスフェノール-A、テトラブロモビスフェノール-S、テトラブロモビスフェノール-F、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノール-S-ジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノール-F-ジアリルエーテル、などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、臭素化スチレン、臭素化ブタジエン・ビニル芳香族共重合体、臭素化ノボラック樹脂アリルエーテル、臭素化ポリ(1,3-シクロアルカジエン)及び臭素化ポリ(4-ビニルフェノールアリルエーテル)等の臭素化ポリマーがあげられる。これらの物質は、単体で用いても、2種以上の混合物として用いても良い。
これらの難燃剤の添加は、スチレンとアクリルニトリル共重合体の重合時に、モノマーに溶解させて、重合粒子の中に取り込んでしまう方法や、スチレンとアクリルニトリル共重合体とをブレンドし、押出機内で溶融混連する方法があるが、重合中に取り込んでしまう方法の方が、製造コストを安価にすることができ、好ましい。
本発明で用いられるスチレンとアクリルニトリル共重合体の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)は15万以上25万以下であることが好ましい。重量平均分子量が15万未満では、得られる発泡成形体の外観が悪く、表面凹凸やしわの多い成形体が得られ、重量平均分子量が25万を超えると、所望する発泡倍率が上がらない。重量平均分子量の調整は、開始剤量を調整することによって可能であるが、連鎖移動剤を用いることで、容易に調整することができる。
本発明で用いられる水は、押出機内で溶融されたスチレン系樹脂と混練し、溶融物を脱揮することで、有機揮発性成分を、効率よく押出機内から吸引除去することができる。水の働きは、VOC成分と水との混合によって、極小共沸点を有し水の沸点(100℃)より低い温度で沸騰するため、溶融したスチレン系樹脂中のVOC成分を効率よく除去することができる。
本発明における水の添加量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上3重量部以下であることがより好ましい。水の添加量が0.01重量部未満の場合、共沸の効果が少なく、VOC成分量を低減することができず、水の添加量が5重量部を超えると、押出機の圧力変動が大きくなり、小孔を有するダイスを通じて押出したストランドが不安定となり、ストランド切れの多発、樹脂粒子の重量バラツキが大きくなる。
本発明では、スチレン系樹脂粒子の製造工程で、予め、スチレン系樹脂に、難燃剤、熱安定剤(フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤,ラクトン系安定剤、ベンゾトリアゾール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤)や、加工助剤(ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、流動パラフィンなど)や、顔料をブレンドし、押出機による混練することができる。
具体的な熱安定剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-t-ブチル-4-メチルフェニル)-ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系安定剤、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジニル)、デカン二酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ-4-ピペリジニル)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラートなどの4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヒドロキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、または4-ヒドロキシ-1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピレリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステルであるヒンダードアミン系安定剤、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系安定剤、などが挙げられる。
これらは、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系樹脂粒子製造工程と、発泡剤含浸工程と、を備える。スチレン系樹脂粒子製造工程には、(1)スチレン系樹脂の重合工程と、(2)吸引脱気口を付帯している押出機を用いて、スチレン系樹脂と配合剤とを溶融混練したのち粒子状に切断して樹脂粒子を得る押出工程とが含まれる。(3)発泡剤含浸工程は、押出工程で得られた樹脂粒子を、水中に懸濁させ、温度100℃~120℃で、発泡剤を、該スチレン系樹脂粒子に含浸して発泡性スチレン性樹脂粒子を得る工程である。
(1)スチレン系樹脂の重合工程
攪拌翼付き耐圧容器を用いて、水性懸濁媒体中に、重合開始剤と共に、スチレン、アクリロニトリル、難燃剤を添加し、所定の温度、好ましくは85℃以上98℃未満で一定時間重合し、単量体の重合転化率が90%以上99%以下に達した時点で、重合温度を120℃に昇温し、所定時間保持し、残モノマー量を低減させ、重合工程を完了させる。水系懸濁重合の分散剤としては、一般的に用いられている分散剤、例えば、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩が挙げられ、α-オレフィンスルフォン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダなどのアニオン性界面活性剤を併用すると、分散安定性が増すので効果的である。
(2)押出工程
重合工程で得られたスチレン系樹脂を、押出機を用いて、スチレン系樹脂粒子を製造する。
本発明の製造方法で用いられる吸引脱気口を付帯している押出機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。
本発明の製造方法における押出機の溶融部でのシリンダ温度は、スチレン系樹脂が溶融する温度であればよく、200℃以上250℃以下であることが好ましい。スチレン系樹脂および各種配合物を供給してから溶融混錬終了までの押出機内滞留時間が7分以下であることが好ましい。200℃より低い場合は、押出機の負荷が大きくなって押出が不安定になったり、添加する材料の分散性が悪化したりする場合がある。一方、250℃を越える場合、および/または、融混錬終了までの押出機内滞留時間が7分より長い場合には、スチレン系樹脂自体の分解、あるいは難燃剤自体の分解が起こる場合がある。
水の添加は、単軸あるいは二軸スクリューを有する押出機の原料フィード部以降のシリンダよりダイス側の箇所より、圧入ポンプを用いて圧入することが、所定量が添加されることから好ましい。スチレン系樹脂に水をブレンダーで予め混合した樹脂組成物を、押出機へ投入すると、押出機の原料供給が不安定となり、ストランド切れ等が発生し、粒重量がそろったスチレン系樹脂粒子が得られない傾向がある。
吸引脱気口は、水の圧入部分よりダイス側の箇所に設け、押出機中に1ヶ所以上が設けることが好ましい。更に、スチレン系樹脂が溶融混練している箇所に、吸引脱気口を設置することが好ましい。溶融混練していない箇所に吸引口を設けると、配合剤の粉末が吸引脱気口から、飛散してしまうことがある。
吸引脱気する真空度は、低いほどVOC成分を除去することができるが、―0.08MPaG以下が好ましく、VOC成分を効率よく、吸引除去される。下限値を記載するなら、-1.0MPaGである。-1.0MPaGより低くなると、装置負荷の観点から好ましくない。すなわち、-1.0MPaから―0.08MPaGの範囲が好ましい。―0.08MPaGより高いと、VOC成分量の吸引除去量が少なくなる。
本発明の製造方法においては、押出機内で溶融混練された溶融樹脂を、押出機先端に取り付けたダイスを通じて得られるストランドを10℃以上40℃以下の水槽にて冷却し、回転カッターによりストランドを切断し、粒重量0.3mg~1.0mgのスチレン系樹脂粒子を得る。ダイスにおける小孔の直径は、0.2mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1.0mm以下であることがより好ましい。又、アンダーウォーターカットのように、スチレン系樹脂粒子を造粒する方法も差し支えない。
(3)発泡剤含浸工程
攪拌翼付き耐圧容器を用いて、押出工程で得られたスチレン系樹脂粒子を、分散剤とともに水中に懸濁させる。分散剤としては、一般的に用いられている分散剤、例えば、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩が挙げられる。これら、難水溶性無機塩を用いる場合には、α-オレフィンスルフォン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダなどのアニオン性界面活性剤を併用すると、分散安定性が増すので効果的である。
次いで、懸濁液中に、発泡剤を添加する。本発明で使用する発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上が使用される。使用量としてはスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは2重量部以上10重量部以下、更に好ましくは4重量部以上8重量部以下である。
発泡剤を添加した後、重合系内の温度を100℃以上120℃以下、好ましくは、110℃以上120℃以下に上昇させ、一定時間、発泡剤を樹脂粒子中に含浸させる。含浸温度100℃未満の場合、樹脂粒子への発泡剤の含浸度合が悪く、発泡粒子のセル構造が不均一となり、得られる発泡成形体表面にクボミ等の外観を損ねることになる。一方、120℃を超えると、発泡剤の含浸は良くなるが、重合機の内圧が高くなり、重装備の耐圧を有する重合機仕様が必要となる場合がある。発泡剤含浸の所定時間が終了したら、重合温度を冷却、乾燥を経て、発泡性スチレン系樹脂粒子が得られる。
発泡性スチレン系樹脂粒子中のVOC量の上限値は、200ppm未満であることが好ましい。下限は、実用的には0ppmになり難いので敢えて表示するなら1ppm以上である。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、一般的な予備発泡方法によって、予備発泡粒子とすることができる。具体的には攪拌機を具備した容器内に入れ水蒸気等の熱源により加熱することで、所望の発泡倍率までに予備発泡を行う。予備発泡時の加熱による容器内温度は、吹き込み蒸気圧及びエアー量により適宜調整されるものであるが、通常101~105℃程度である。
更に予備発泡粒子は、一般的な型内成形方法によって成形し、発泡成形体にすることができる。具体的には、閉鎖し得るが密閉しえない金型内に充填し、水蒸気により加熱融着することで発泡成形体とする。型内成形時の吹き込み蒸気圧としては、通常0.7~0.9kgf/cm程度でで、金型温度としては、吹き込み蒸気圧により適宜調整されるものであるが、通常113~117℃程度である。
発泡成形体中のVOC量は、発泡性スチレン系樹脂粒子中のVOC量より多くなることはないため、VOC含有量が200ppm未満の発泡性スチレン系樹脂粒子を用いることで、200ppm未満の低VOCが要求される建材や自動車内装材等の発泡成形体を製造することができる。なお、発泡成形体中のVOC量は少ないことが好ましく、130ppm未満であることが好ましく、100ppm未満であることがより好ましく、80ppm以下であることが更に好ましい。但し、当該発泡成形体を、VOC量が多い発泡成形体と混在して保管していると、放散したVOCを当該発泡成形体中に吸収し、200ppmを超えることがあるので、注意が必要である。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例の評価は下記の方法で行なった。
(スチレン、アクリルニトリル、エチルベンゼン、プロピルベンゼンの測定)
サンプルを、塩化メチレン(内部標準シクロペンタノール)に溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC-2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx-1、カラム温度条件:50→80℃(3℃/min)後、80→180℃昇温(10℃/min)、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、スチレン系樹脂、発泡性スチレン系樹脂粒子、発泡成形体中に含まれるVOC成分(スチレン、アクリルニトリル、エチルベンゼン、プロピルベンゼン量(ppm))を定量した。
(分子量測定法)
樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン20ccに溶解し、GPC(東ソー(株)製HLC-8020、カラム:TSKgel Super HZM-H、カラム温度:40℃、流速:0.35ml/1min.)にて測定した。重量平均分子量は標準ポリスチレンの換算値として求めた。
(押出安定性)
押出工程において、押出時の圧力変動なく、ダイスを通じて得られるストランドを安定的に引き取れたものについては○、そうでないものについては×とした。
(揮発分)
発泡性スチレン系樹脂粒子を、オーブン150℃、30分間で熱処理し、減量分を測定した。
(発泡成形体の外観)
発泡成形体の外観を目視観察にて評価した。数値が大きいほうが粒子同士の隙間に凹凸やしわが少ない美麗な表面状態であり、5点満点で表現した3以上を合格とした。
5:凹凸・しわが見当たらない
4:部分的に凹凸・しわがあるが、ほとんどわからない
3:部分的にしわがあるが、全体としては許容できる
2:しわが多き
1:大きく収縮し、しわが多い。
(成形体の融着)
発泡成形体を割断し、割断面の全体外観を目視観察にて評価した。割断面の全ての発泡粒子が割断している場合は100、半分の発泡粒子が割断している場合は50、発泡粒子の界面で破壊している場合は0とした。成形体の融着として80以上が許容する指標である。
<スチレン系樹脂(AS-1)の製造>
撹拌機付きオートクレーブに水96重量部、第3リン酸カルシウム0.17重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ0.005重量部、過酸化ベンゾイル0.15部、2、2-ジ-t-アミルパーオキシブタン(化薬アクゾ(株)製 カヤケタールAM-C55)0.28重量部、連鎖移動剤:α-メチルスチレンダイマー(日本油脂(株)製)0.6重量部、難燃剤テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル(第一工業製薬(株)製、ピロガードSR-130)2重量部、難燃助剤ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製パークミルD)を仕込んだ後、スチレン76重量部、アクリロニトリル24重量部を仕込み、昇温し、98℃で4時間重合を行った。次いで、120℃に昇温し、4時間の後処理を実施後、40℃まで冷却、脱水乾燥し、スチレン系樹脂(AS-1)を得た。
<スチレン系樹脂(AS-2)の製造>
連鎖移動剤α-メチルスチレンダイマーを、1.2重量部に変更した以外、スチレン系樹脂(AS-1)の製造と同様の操作を実施し、スチレン系樹脂(AS-2)を得た。
表1に、スチレン系樹脂の重合処方、樹脂特性(重量平均分子量、VOC成分)の測定結果を示す。
Figure 0007175642000001
(実施例1)
[スチレン系樹脂粒子の作製]
スチレン系樹脂(AS-1)100重量部を、二軸押出機(TEM-26SX、東芝(株)製)へ供給し、押出機内で、溶融部のシリンダ温度240℃で、溶融混錬し、圧入ポンプで、水0.5重量部を圧入し、真空ポンプ(SW-25S、神港精機(株)製)を用いて、脱気吸引口より、真空度―0.09MPaGで、脱気した。押出機先端に取り付けられた直径1.4mmの小穴が20個設けられたダイスを通して吐出200kg/時間で押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、ストランドカッターで、粒重量1.0mgのスチレン系樹脂粒子を得た。このとき押出機先端部での樹脂の温度が248℃、押出機内滞留時間3分であった。
スチレン系樹脂粒子中のVOC量を、表2に示す。
Figure 0007175642000002
[発泡性スチレン系樹脂粒子の作製]
次いで, 容積が6L の撹拌装置付きオートクレーブに, 得られたスチレン系樹脂粒子100重量部に対して脱イオン水200重量部、リン酸三カルシウム1重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.03重量部、塩化ナトリウム1重量部 を投入し圧力容器を密閉した。その後、発泡剤としてブタン( ノルマルブタン70 % とイソブタン30 % の混合物)8重量部 を30分かけて圧力容器内に添加した後、120 ℃まで30分かけて昇温し、そのまま5時間保持した。保持後室温まで冷却し、オートクレーブから発泡剤の含浸された樹脂粒子を取り出し、塩酸での酸洗、水洗し、遠心分離機で脱水後、気流乾燥機で樹脂粒子表面に付着している水分を乾燥させ、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。発泡性スチレン系樹脂粒子中のVOC量を、表2に示す。
[予備発泡粒子の作製]
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対してステアリン酸亜鉛0.1重量部をドライブレンドした後、予備発泡機[大開工業(株)製、BHP-300]に投入し、0.08MPaの水蒸気を予備発泡機に導入して発泡させ、発泡倍率40倍の予備発泡粒子を得た。
[発泡成形体の作製]
得られた予備発泡粒子を、発泡スチロール用成形機[ダイセン工業(株)製、KR-57]に取り付けた型内成形用金型(400mm×300mm×厚み25mm)内に充填して、0.06MPaの水蒸気を導入し、直方体状のスチレン系発泡成形体を得、温度40℃の乾燥室で、1時間放置し、室温に取り出した。乾燥機から取り出した発泡成形体は、他の発泡体から放出されるVOCの吸収を防止するために、測定までの期間は、発泡成形体をアルミ箔、さらに、旭化成(株)製のサランラップ(登録商標)で包み、室温にて保管した。表2に、発泡成形体中のVOC量、成形体外観、融着を示す。
(実施例2)
スチレン系樹脂粒子の製造において、水量を1.0重量に変更した以外は、実施例1と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(実施例3)
スチレン系樹脂粒子の製造において、水量を2.0重量に変更した以外は、実施例1と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(実施例4)
スチレン系樹脂粒子の製造において、水量を5.0重量に変更した以外は、実施例1と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(比較例1)
スチレン系樹脂粒子の製造において、水の無添加、脱気処理しなかった以外は、実施例1と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(比較例2)
スチレン系樹脂粒子の製造において、水の無添加で、実施例1と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(比較例3)
スチレン系樹脂粒子の製造において、水を6部添加で、実施例1と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(比較例4)
スチレン系樹脂(AS-2)を用いて、水の無添加で、比較例2と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(比較例5)
スチレン系樹脂(AS-2)を用いて、実施例3と同様の操作をした。表2に、評価結果を示す。
(参考例1)
スチレン単独樹脂[PSジャパン(株)製、G9401:重量平均分子量Mw:31万]を用い、スチレン系樹脂粒子の製造において、水2部添加、熱安定剤:ビス(2,6-t-ブチル-4-メチルフェニル)-ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製、アデカスタブPEP-36]を0.15重量部、難燃剤:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル[第一工業製薬(株)製、ピロガードSR-130]4重量部をブレンダーに投入して、10分間ブレンドして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、二軸押出機(TEM-26SX、東芝(株)製)へ供給し、押出機内で、溶融部のシリンダ温度240℃で、溶融混錬し、圧入ポンプで、水2重量部を圧入し、真空ポンプ(SW-25S、神港精機(株)製)を用いて、脱気吸引口より、真空度―0.09MPaGで、脱気した。押出機先端に取り付けられた直径1.4mmの小穴が20個設けられたダイスを通して吐出200kg/時間で押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、ストランドカッターで、粒重量1.0mgのスチレン系樹脂粒子を得た。このスチレン系樹脂粒子を、実施例1と同様の操作をした。

Claims (4)

  1. 難燃剤とスチレン系樹脂とを含む発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
    スチレン単量体60~90重量部とアクリロニトリル単量体40~10重量部からなる重量平均分子量が15万以上25万以下であるスチレン系樹脂100重量部に対して、水0.01~5重量部を押出機で溶融混練した後、揮発性有機成分を押出機内から真空度-0.08MPaG以下、溶融部のシリンダ温度200℃~250℃の条件で吸引処理し、小孔を有するダイスを通じて押出した後カッターで切断してスチレン系樹脂粒子を製造する工程と、
    前記スチレン系樹脂粒子を製造する工程により得られたスチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させ、温度100℃~120℃で、発泡剤を、該スチレン系樹脂粒子に含浸させる発泡剤含浸工程と、
    を備える発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記スチレン系樹脂の揮発性有機成分量(スチレン単量体とアクリロニトリル単量体とエチルベンゼンとプロピルベンゼンの合計量)が200ppm未満である、
    請求項1記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記スチレン系樹脂を製造する工程において、スチレン単量体60~90重量部とアクリロニトリル単量体40~10重量部に、難燃剤1.0重量部以上5.0重量部以下を添加して重合したスチレン系樹脂を用いることを特徴とする、
    請求項1~2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  4. 請求項1~3のいずれかで記載された製造方法で製造した発泡性スチレン系樹脂粒子を加熱して予備発泡させて予備発泡粒子を得る工程と、
    前記工程で得た予備発泡粒子を成型キャビティ内に充填して型内発泡成形する工程と、
    を備える発泡成形体の製造方法。

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