JP7172933B2 - パージ制御弁装置 - Google Patents

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Description

この明細書における開示は、パージ制御弁装置に関する。
特許文献1は、二つの可動子のそれぞれを、別々のソレノイドコイルによって形成した磁界に応じて個別に駆動する電磁バルブ装置が開示されている。この電磁バルブ装置は、二つの可動子のそれぞれについて、個別の電気回路を有している。
特許第4611384号公報
特許文献1の電磁バルブ装置は、二つの可動子を電磁的に駆動するために、二つの電気回路が必要である。特許文献1の電磁バルブ装置は、部品点数の点で改善の余地がある。
この明細書に開示する目的は、二つの可動子を一つの電気回路によって駆動可能なパージ制御弁装置を提供することである。
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
開示されたパージ制御弁装置の一つは、キャニスタ(13)から流出した蒸発燃料が流入する流入ポート(31a)と、蒸発燃料がエンジン(2)に向けて流出する流出ポート(33a)と、流入ポートと流出ポートとを連絡するハウジング内部通路を有するハウジング(31)と、ハウジングの内部に設けられて、ハウジング内部通路を流下する蒸発燃料の流量を制御する第1弁体(340)を有する第1バルブ(34;134)と、ハウジングの内部に設けられて、ハウジング内部通路を流下する蒸発燃料の流量を制御する第2弁体(350)を有する第2バルブ(35;135)と、通電されて一つの電気回路を形成する一つのソレノイド部(36)と、一つの電気回路によって発生する電磁力に応じて第1弁体とともに駆動する第1可動子(341;1341)と、一つの電気回路によって発生する電磁力に応じて第2弁体とともに駆動する第2可動子(351;1351)と、を備え、
第1可動子と第2可動子のうち、一方の可動子は硬質磁性材料を含んで形成され、他方の可動子は一方の可動子よりも外部磁場によって磁化が変わりやすい軟質磁性材料を含んで形成されている。
この装置によれば、一つのソレノイド部への通電によって形成される一つの電気回路がもたらす電磁力が第1可動子と第2可動子とを駆動する。これによれば、二つの可動子を一つの電気回路によって駆動可能なパージ制御弁装置を提供でき、部品点数の低減を図ることができる。さらに、この二つの可動子の一方は、硬質磁性材料を含んで形成されているので、他方の可動子よりも電磁力の影響を受けにくい特性を有する。このため、第1可動子と第2可動子を個別に駆動できるので、第1弁体と第2弁体はそれぞれの内部通路に対する開度を異なる状態にできる。これにより、この装置は、二つの弁体について個別の開度制御が可能であり、蒸発燃料のパージ流量を調整することができる。
明細書に開示するパージ制御弁装置を含む蒸発燃料処理装置の構成図である。 第1実施形態のパージ制御弁装置の概要構成を示す断面図である。 第1増加率域におけるパージ制御弁装置の動作を示す断面図である。 第2増加率域におけるパージ制御弁装置の動作を示す断面図である。 パージ制御弁装置の制御に係るフローチャートである。 パージ制御弁装置に係る制御と流量特性との関係を示した図である。 第2実施形態の制御に係るフローチャートである。 第2実施形態に係る制御と流量特性と関係を示した図である。 第3実施形態のパージ制御弁装置の概要構成を示す断面図である。 第1増加率域におけるパージ制御弁装置の動作を示す断面図である。 第2増加率域におけるパージ制御弁装置の動作を示す断面図である。
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
第1実施形態について図1~図6を参照しながら説明する。パージ制御弁装置は、車両に搭載される蒸発燃料パージシステムである蒸発燃料処理装置1に用いられる。パージバルブ3は、パージ制御弁装置の一例である。蒸発燃料処理装置1は、図1に示すように、キャニスタ13に吸着した燃料中のHCガス等をエンジン2の吸気通路に供給する。これにより、燃料タンク10からの蒸発燃料が大気に放出されることを防止できる。蒸発燃料処理装置1は、内燃機関であるエンジン2の吸気通路を構成するエンジン2の吸気系と、蒸発燃料をエンジン2の吸気系に供給する蒸発燃料パージ系とを備える。
エンジン2の吸気圧によって吸気通路に導入された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジン2に供給される燃焼用燃料と混合されてエンジン2の燃焼室で燃焼される。エンジン2は少なくともキャニスタ13から脱離された蒸発燃料と燃焼用燃料とを混合して燃焼する。エンジン2の吸気系は、吸気通路を構成する吸気管21が吸気マニホールド20に接続されている。この吸気系は、さらに吸気管21の途中にスロットルバルブ25、エアフィルタ24等が設けられて構成されている。
蒸発燃料パージ系において燃料タンク10とキャニスタ13は、ベーパ通路を構成する配管11によって接続されている。蒸発燃料パージ系においてキャニスタ13と吸気管21は、パージ通路を構成する配管14とパージバルブ3とを介して接続されている。また、パージ通路の途中には、パージポンプを設けるように構成してもよい。エアフィルタ24は、吸気管21の上流部に設けられ、吸気中の塵や埃等を捕捉する。スロットルバルブ25は、吸気マニホールド20の入口部の開度を調節して、吸気マニホールド20内に流入する吸気量を調節する吸気量調節弁である。吸気は、吸気通路を通過して吸気マニホールド20内に流入し、インジェクタ等から噴射される燃焼用燃料と所定の空燃比となるように混合されて燃焼室で燃焼される。
燃料タンク10は、例えばガソリン等の燃料を貯留する容器である。燃料タンク10は、ベーパ通路を形成する配管11によってキャニスタ13の流入部に接続されている。ORVRバルブ15は、燃料タンク10に設けられている。ORVRバルブ15は、燃料給油中に燃料タンク10内の蒸発燃料が給油口から大気中に排出されることを防止する。ORVRバルブ15は、燃料の液面高さに応じて位置が変位するフロート弁である。燃料タンク10内の燃料が少ない場合は、ORVRバルブ15は開弁し、給油時の圧力によってペーパを燃料タンク10からキャニスタ13へ排出する。燃料タンク10内に所定量以上の燃料が存在する場合は、ORVRバルブ15が燃料による浮力によって閉弁し、蒸発燃料がキャニスタ13へ流出することを防止する。
キャニスタ13は、内部に活性炭等の吸着材が封入された容器である。キャニスタ13は、燃料タンク10内で発生する蒸発燃料を、ベーパ通路を介して取り入れて吸着材に一時的に吸着する。キャニスタ13には、バルブモジュール12が、一体に設けられまたはダクト部を介して設けられている。バルブモジュール12には、キャニスタクローズバルブと内部ポンプとを含んでいる。キャニスタクローズバルブは、外部の新鮮な空気を吸入するための吸入部を開閉する。キャニスタ13はキャニスタクローズバルブを備えることにより、キャニスタ13内に大気圧を作用させることができる。キャニスタ13は、吸入された新鮮な空気によって吸着材に吸着した蒸発燃料を容易に脱離可能、すなわちパージすることができる。
パージバルブ3は、パージ通路の一部であるハウジング内のハウジング内部通路を開閉する複数の弁体を備えたパージ制御弁装置である。パージ制御弁装置は、複数の電磁弁を内部に有する。パージバルブ3は、キャニスタ13からの蒸発燃料をエンジン2へ供給することを許可および阻止できる。
車両の走行時に、制御装置50によって流入ポート31aと流出ポート33aとが連通する状態に制御されると、ピストンの吸入作用によって発生する吸気マニホールド20内の負圧とキャニスタ13にかかる大気圧との差が生じる。この圧力差によって、キャニスタ13内に吸着された蒸気燃料は、パージ通路、パージバルブ3を流れ、吸気管21内を通じて吸気マニホールド20内に吸引される。
吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジン2に供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジン2のシリンダ内で燃焼される。エンジン2のシリンダ内においては、燃焼用燃料と吸気との混合割合である空燃比が予め定めた所定の空燃比となるように制御される。制御装置50は、印加電圧の制御により、第1バルブ34と第2バルブ35の作動を制御する。パージバルブ3は、一つのソレノイド部36を有し、ソレノイド部36への通電により一つの電気回路を構成する。第1バルブ34と第2バルブ35は、共通の電気回路が発生する磁束による電磁駆動力を用いて軸方向に駆動して開弁し、それぞれの通路を開放する。
制御装置50は、バッテリなどの電源部51から供給される電力を制御して、ソレノイド部36に印加するように構成されている。制御装置50は、正側電圧のオン、オフ合計の単位時間に対するオン時間の比率である正側電圧のデューティ比を制御して、コイル部360に通電を行うことができる。正側電圧を印加する通電制御は、正側電圧の印加と非印加とを交互に繰り返す形態の通電制御である。制御装置50は、図6に示すように正側電圧印加のデューティ比を0%~100%の範囲に制御する。このような正側電圧のデューティ通電制御により、パージバルブ3内の下流側通路を流通する蒸発燃料の流量は、デューティ比に比例して変化する。制御装置50は、交流信号電圧を制御するインバータ装置を有し、交流信号電圧を制御してコイル部360に通電を行うことができる。制御装置50は、図6に示すように、交流信号電圧の制御によって、正側電圧印加のデューティ比または負側電圧印加のデューティ比とを0%~100%の範囲に制御する。制御装置50は、通電を制御することによって第1バルブ34と第2バルブ35とを適正に制御し、所定の空燃比が維持されるように蒸発燃料のパージ量を調節する。
制御装置50は、少なくとも一つの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくとも一つのメモリ装置とを有する。制御装置50は、例えばコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置50は、一つのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置50によって実行されることにより、制御装置50をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置50を機能させる。
制御装置50が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置50がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
近年、低燃費化によるエンジン負圧の減少傾向やハイブリッド車などのエンジン稼働時間の減少傾向により、パージバルブ3には大流量を調整可能な性能が要求されている。パージバルブ3の大流量化を実現しようとすると、パージバルブ3とキャニスタ13とを連結する流路において圧力の変動幅が大きくなりうる。圧力変動幅の増大は、脈動による配管の振動をもたらし車両における騒音の要因になる。また、パージバルブ3の大流量化に伴い、ORVRバルブ15のばたつき音が発生しうる。パージバルブ3とキャニスタ13とを接続する配管14は、例えば車室内の床下に設けられている。このため、配管の振動による騒音、ORVRバルブ15のばたつき音は、車室内に伝わりやすい。このため、蒸発燃料処理装置1はキャニスタ側の流路における圧力変動幅やORVRバルブ15のばたつき音を抑制する効果を奏する。また、パージバルブ3の大流量化を実現しようとすると、流量制御の精度が低下するため、蒸発燃料の濃度学習の精度が低下する傾向になる。このため、蒸発燃料処理装置1は、蒸発燃料の濃度学習の精度を確保する効果を奏する。
パージバルブ3の構成について説明する。図2に示すように、パージバルブ3はハウジングの内部に設けられた第1バルブ34と第2バルブ35とを有している。第1バルブ34と第2バルブ35は、パージバルブ3のハウジング内部通路において、並列に配置されている構成である。この構成により、第1バルブ34と第2バルブ35のうち、いずれか一方を開弁状態に制御し他方を閉弁状態に制御しても、吸気管21へ蒸発燃料を供給できる。第1バルブ34と第2バルブ35は、第1弁体340と第2弁体350がパージバルブ3の軸方向、または弁体の変位方向に沿うように、並んでいる。図2は、第1バルブ34と第2バルブ35とが閉弁状態に制御されていることを示している。
第1バルブ34は、パージバルブ3内に設けられた第1内部通路34a2を開閉する。第2バルブ35は、パージバルブ3内に設けられた第2内部通路35a2を開閉する。第1内部通路34a2は、第1ハウジング31に一体に設けられた第1ダクト34a内の通路である。第2内部通路35a2は、第1ハウジング31に一体に設けられた第2ダクト35a内の通路である。第1内部通路34a2と第2内部通路35a2は、ハウジング内の内部通路において、並列に配置されている。第2内部通路35a2は、通路横断面積が第1内部通路34a2よりも大きい通路である。この構成を採用する場合、パージバルブ3は、小流量を調整可能とする第1バルブ34と、第1バルブ34に比べて大流量を調整可能な第2バルブ35とを備える。
第1ダクト34aは、第1弁体340が着座する第1弁座部34a1を上流端部に備える。第2ダクト35aは、第2弁体350が着座する第2弁座部35a1を上流端部に備える。第1ダクト34a、第2ダクト35aのそれぞれは、通路横断面積が上流端通路よりも下流端通路の方が大きい内部通路を形成している。第1内部通路34a2は上流端に向かうほど通路横断面積が小さくなっている。第2内部通路35a2は上流端に向かうほど通路横断面積が小さくなっている。
パージバルブ3は、ハウジングとして、第1ハウジング31と、第2ハウジング33とを備えている。第1ハウジング31、第2ハウジング33は、例えば樹脂材料によって形成されている。第1ハウジング31は、キャニスタ13からの蒸発燃料が流入する流入ポート31aを備える。流入ポート31aは、蒸発燃料処理装置1においてパージ通路を形成する配管14に接続されている。流入ポート31aは、接続された配管14を介してキャニスタ13に連通している。
ハウジングには、ソレノイド部36に通電するためのターミナル371を内蔵するコネクタ37が設けられている。ターミナル371は、コイル部360と電気的に接続されている通電用端子である。コネクタ37には、電源部51や電流制御装置からの電力を供給するための電源側コネクタが接続される。コネクタ37と電源側コネクタとが接続されてターミナル371が制御装置50等に電気的に接続される構成により、コイル部360に通電する電流を制御できる。
流入ポート31aは、内部に流体の流入通路31a1を有する管状部の一部であり、第1ハウジング31における上流端部に位置する。流入通路31a1の下流端部は、第1ハウジング31内の流入側チャンバ室に繋がっている。流入側チャンバ室は、流入通路31a1よりも通路横断面積が大きく、第1ハウジング31の内部においてソレノイド部36の周囲に設けられている。流入側チャンバ室は、第1内部通路34a2の上流側端部と第2内部通路35a2の上流側端部とに繋がっている。流入側チャンバ室は、連通通路321を介して連通する第1流入側チャンバ室と第2流入側チャンバ室とを含んでいる。第1内部通路34a2の上流側端部は、第1流入側チャンバ室に位置し、第1流入側チャンバ室に連通している。第2内部通路35a2の上流側端部は、第2流入側チャンバ室に位置し、第2流入側チャンバ室に連通している。
第1ハウジング31は、第1バルブ34および第2バルブ35を収容している。第1ハウジング31の内部には、第1バルブ34と第2バルブ35が同軸に設けられている。ソレノイド部36は、第1ハウジング31の内部において、樹脂モールド部32によって囲まれている。ソレノイド部36は、コイル部360、ボビン361、コアステータ362、ヨーク363等を備えている。連通通路321は樹脂モールド部32を貫通する通路である。第1バルブ34と第2バルブ35はソレノイド部36と同軸に設けられている。
第2ハウジング33は、吸気管21へ向けて蒸発燃料を流出する流出ポート33aを備える。流出ポート33aは、接続される配管を介して吸気管21内に連通している。流出ポート33aは、内部に流体の流出通路33a1を有する管状部であり、第2ハウジング33の下流端部に位置する。流出通路33a1の下流端部は、第2ハウジング33内の流出側チャンバ室331に繋がっている。流出側チャンバ室は、流出通路33a1よりも通路横断面積が大きく、第1内部通路34a2の下流側端部と第2内部通路35a2の下流側端部とに繋がっている。第1内部通路34a2と第2内部通路35a2は、流出側チャンバ室331を介して流出通路33a1に連通している。
パージバルブ3は、外部から流体が流入する1個の流入ポート31aと、流体が外部へ流出する1個の流出ポート33aとを備える。パージバルブ3に流入した流体は、流入側チャンバ室から、第1内部通路34a2と第2内部通路35a2の少なくとも一つを経由して流出側チャンバ室331、流出通路33a1の順に流下する。第1バルブ34と第2バルブ35には、共通のソレノイド部36への電圧印加により形成される共通の磁気回路によって発生する電磁力が与えられる。第1バルブ34の第1可動子341と第2バルブ35の第2可動子351は、外部磁場に対する磁化しやすさに違いがある構成を備える。この構成により、共通の磁気回路によって可動子が受ける電磁力に差があるため、第1可動子341の動作と第2可動子351の動作とが異なる。これにより、第1バルブ34と第2バルブ35は、同様に動作せず個別に動作する。
第1バルブ34は、第1可動子341、第1シャフト部342、第1スプリング343等を備えている。第1可動子341の中心軸は、第1バルブ34の中心軸やパージバルブ3の中心軸に相当する。第1可動子341は有底のカップ状体である。第1可動子341は、第1スプリング343を取り囲むように設けられている。第1スプリング343は、第1シャフト部342と第1可動子341との間に設けられている。第1スプリング343は、第1可動子341を第1シャフト部342から離れる方向に移動させる付勢力を提供する。第1スプリング343は、第1可動子341を第1弁座部34a1側へ移動させようとする付勢力を提供する。第1弁体340は、ゴム等の弾性変形可能な材質で形成されている。第1弁体340は、第1可動子341の軸方向端部に一体に設けられている。
第2バルブ35は、第2可動子351、第2シャフト部352、第2スプリング353等を備えている。第2可動子351の中心軸は、第2バルブ35の中心軸やパージバルブ3の中心軸に相当する。第2可動子351は有底のカップ状体である。第2可動子351は、第2スプリング353を取り囲むように設けられている。第2スプリング353は、第2シャフト部352と第2可動子351との間に設けられている。第2スプリング353は、第2可動子351を第2シャフト部352から離れる方向に移動させる付勢力を提供する。第2スプリング353は、第2可動子351を第2弁座部35a1側へ移動させようとする付勢力を提供する。第2弁体350は、ゴム等の弾性変形可能な材質で形成されている。第2弁体350は、第2可動子351の軸方向端部に一体に設けられている。
第1可動子341と第2可動子351のうち、一方の可動子は硬質磁性材料を含んで形成されている構成でもよい。他方の可動子は一方の可動子よりも軟質磁性材料を含んで形成されている。軟質磁性材料は、硬質磁性材料よりも、外部磁場によって磁化が変わりやすい材料である。硬質磁性材料は、保磁力が高く、外部磁場に対して容易に減磁しない磁性材料である。硬質磁性材料には、例えば、永久磁石、フェライト磁石、NdFeB系磁石、白金鉄、白金コバルトなどを採用することができる。軟質磁性材料は、磁化と透磁率が大きく、外部磁場の方向や大きさに対応して磁化を変化させる磁性材料である。軟質磁性材料には、例えば、電磁純鉄、フェライト、けい素鉄などを採用することができる。
第1可動子341が軟質磁性材料を含み、第2可動子351が硬質磁性材料を含む構成である場合について説明する。コイル部360の通電時には、磁気回路が形成される。磁気回路は、ヨーク363、コアステータ362、第1可動子341を通る磁気の第1経路と、ヨーク363、コアステータ362、第2可動子351を通る磁気の第2経路とを形成する。第1経路は、第1スプリング343の付勢力に抗して第1可動子341を第1シャフト部342に吸引する電磁力を発生させる。第1弁体340は、この電磁力によって、閉弁状態から開弁状態に切り換わる。正側電圧が印加された場合、第2経路によって発生する磁束は、第2可動子351が有するN極から延びる磁束と反発し合うようになる。このとき、第2弁体350は、第2スプリング353に付勢されたままであり閉弁状態となる。負側電圧が印加された場合、第2経路によって発生する磁束は、第2可動子351が有するN極から延びる磁束と引き合うようになる。このとき、第2弁体350は、第2スプリング353の付勢力に抗して第2可動子351を第2シャフト部352に吸引する電磁力を発生させる。第2弁体350は、この電磁力によって、閉弁状態から開弁状態に切り換わる。
図3は、第1バルブ34が第1弁座部34a1から離間する開弁状態であり、第2バルブ35が第2弁座部35a1に着座する閉弁状態であることを示している。パージバルブ3は、図6のグラフに示すような流量増加率が小さい第1増加率域のモードを実施するときに、図3に示す状態に制御される。制御装置50は、電源部51から供給される電力を、正側電圧のデューティ比を制御してコイル部360に印加する。
パージバルブ3は、正側電圧印加のときにソレノイド部36によって発生する磁束が硬質磁性材料を含む可動子が有する磁束と反発し合うように、構成されている。例えば、永久磁石である第2可動子351が発生する磁束と、磁気回路によってコアステータ362と第2可動子351に作用する磁束とが反発する場合には、第2可動子351が第2弁座部35a1に着座した閉弁状態が維持されることになる。第1バルブ34は、第1可動子341が軟質磁性材料を含むために、印加電圧のデューティ比に応じた割合で開弁することになる。第1増加率域のモードでは、図6に示すように、第1バルブ34は正側電圧のデューティ比に応じた割合で開弁し、第2バルブ35はデューティ比に関わらず閉弁状態になる。制御装置50は、図6に示す第1増加率域のモードのように、正側電圧印加のデューティ比を0%から100%へ徐々に増加させていく通電制御を実行する。これにより、第1バルブ34の開弁率が増加していき、第1内部通路34a2を流下する流量が増加していく。
図4は、第1バルブ34が開弁状態であり、第2バルブ35が第2弁座部35a1から離間する開弁状態であることを示している。パージバルブ3は、図6のグラフに示すような流量増加率が第1増加率域よりも大きい第2増加率域のモードを実施するときに、図4に示す状態に制御される。制御装置50は、電源部51から供給される電力を、交流信号電圧のデューティ比を制御してコイル部360に印加する。交流信号電圧を印加する通電制御は、正側電圧と負側電圧とを交互に印加する形態の通電制御である。交流信号電圧のデューティ比は、単位時間に対する負側電圧の印加時間の比率である。
パージバルブ3は、負側電圧印加のときにソレノイド部36によって発生する磁束が硬質磁性材料を含む可動子が有する磁束と引きつけ合うように、構成されている。例えば、永久磁石である第2可動子351が発生する磁束と、磁気回路によってコアステータ362と第2可動子351に作用する磁束とが引き合う場合には、第2可動子351が第2弁座部35a1から離間する開弁状態になる。第1バルブ34は、第1可動子341が軟質磁性材料を含むために、正側電圧の印加時間と負側電圧の印加時間の両方で開弁するので、図6に示すように開弁し続ける。第2増加率域のモードでは、図6に示すように、第1バルブ34は開弁し続ける状態になり、第2バルブ35は負側電圧のデューティ比に応じた割合で開弁する。制御装置50は、第2増加率域のモードのように、交流信号電圧印加における負側電圧印加のデューティ比を0%から100%へ徐々に増加させていく通電制御を実行する。この制御により、第1バルブ34は全開した状態で、第2バルブ35の開弁率が増加していき、第2内部通路35a2を流下する流量が増加していく。第1増加率域のモードの後に第2増加率域のモードに移行する場合は、パージバルブ3から流出する流量が大きく変化しないで連続的に増加し続ける。
図5のフローチャートを参照してパージ弁制御装置の作動を説明する。制御装置50は、図5のフローチャートにしたがった処理を実行する。本フローチャートは、蒸発燃料をエンジン2へ向けて流下させる場合に開始する。
本フローチャートが開始されると、制御装置50は、ステップS100で蒸発燃料の濃度学習を行う状態か否かを判定する。ステップS100で濃度学習を行う状態であると判定すると、制御装置50は、ステップS120で第2バルブ35が閉弁状態であるか否かを判定する。ステップS120で第2バルブ35が閉弁状態であると判定すると、再びステップS100に戻り、ステップS100の判定処理を実行する。ステップS120で第2バルブ35が閉弁状態でないと判定すると、ステップS125でコイル部360に正側電圧を印加し、ステップS100の判定処理を実行する。制御装置50は、正側電圧のデューティ比を0%から100%になるまで徐々に増加していく制御を実行する。
ステップS100で濃度学習を行う状態でないと判定すると、制御装置50は、ステップS110で騒音発生条件が成立するか否かを判定する。騒音発生条件は、蒸発燃料が流れる通路における圧力変動やORVRバルブ15のばたつき音の発生に伴って騒音の発生が想定できる、予め設定された条件である。騒音発生条件は、例えば、現在の車速が所定速度以下である場合に成立すると設定することができる。この場合、制御装置50は、車速センサ61によって検出される車速情報に基づいて現在の車速を取得する。車速センサ61は、車両の走行制御や車両の走行に必要な冷却系統などの制御を行う車両ECU60に車速情報を出力し、車速情報は車両ECU60から制御装置50に出力される。所定速度は、実験結果または経験則に基づいて設定されることが好ましく、騒音が走行音にかき消されて車室内の乗員に認識しにくいような車速に設定されるものとする。現在の車速が所定速度を下回っている場合に騒音発生条件成立を設定することにより、車速が小さく走行音が小さいときに発生しやすい騒音を抑えることができる。
例えば、車両の停止時、低速走行時、エンジン2のアイドリング状態などに該当すると、制御装置50は、ステップS110で騒音発生条件が成立すると判定する。ステップS110で騒音発生条件が成立すると判定すると、ステップS120に進み、ステップS120の判定処理を実行する。
ステップS120からステップS100に戻る流れ、ステップS125を実行後にステップS100に戻る流れは、図6の第1増加率域のモードを実施する。第1増加率域のモード時は、流体の流量増加率が小さいため、蒸発燃料の濃度学習精度の向上を図ることができる。第1増加率域のモードによれば、流量増加率が一定である電磁弁に比べて、小流量域における流量変化を小さくすることができる。さらに第1増加率域のモード時は、流量が抑えられるため、脈動の低減を図り、騒音を抑制する効果が得られる。さらに第1増加率域のモード時は、流体流量が抑えられるため、ORVRバルブ15のばたつき低減を図り、騒音を抑制する効果が得られる。
ステップS110で騒音発生条件が成立しないと判定すると、制御装置50は、ステップS130で正側電圧のデューティ比が100%に達したか否かを判定する。ステップS130で正側電圧のデューティ比が100%に達していないと判定すると、ステップS100に戻り、ステップS100の判定処理を実行する。ステップS130で正側電圧のデューティ比が100%に達していると判定すると、ステップS140で第2バルブ35が閉弁状態であるか否かを判定する。
ステップS140で第2バルブ35が閉弁状態でないと判定すると、ステップS100に戻り、ステップS100の判定処理を実行する。ステップS140で第2バルブ35が閉弁状態であると判定すると、制御装置50は、ステップS150でコイル部360に交流信号電圧を印加する。制御装置50は、ステップS160で交流信号電圧における負側電圧のデューティ比を0%から100%になるまで徐々に増加していく制御を実行し、ステップS100に戻る。ステップS150、S160の処理により、パージバルブ3が制御する流体流量を図6に示すように第1増加率域から第2増加率域へ滑らかに移行させることができる。
交流信号電圧の印加によって第2バルブ35が開弁している状態は、図6に図示する第2増加率域のモードを実施している。第2増加率域のモード時は、第1バルブ34の開弁状態に加え、大流量を調整可能な第2バルブ35の開弁率を増加させていくため、大流量化を促進できる。第2増加率域のモードによれば、流量増加率が一定である電磁弁に比べて、大きな流量域における流量変化を大きくすることができる。このため、騒音が発生しにくい状態において迅速に流体流量を増加でき、エンジン2の出力要求を満たす運転を実現できる。図5のフローチャートに従った制御によれば、図6のように、ORVRバルブ15のばたつきに起因する騒音を抑制するとともに、大流量化も図れる流量制御を提供できる。
また、制御装置50は、ステップS110で現在のエンジン2の回転数が所定回転数を下回っている場合に騒音発生条件が成立すると判定してもよい。この判定処理を採用する場合、所定回転数は、実験結果または経験則に基づいて設定されることが好ましく、騒音がエンジン音にかき消されて乗員に認識されにくいような回転数に設定されるものとする。現在のエンジン2の回転数が所定回転数を下回っている場合に騒音発生条件の成立を設定することにより、エンジン回転数が小さく静かなときに、圧力変動等に伴う音が騒音になることを抑えることができる。
第1実施形態のパージバルブ3によって例示されたパージ制御弁装置がもたらす作用効果について説明する。パージ制御弁装置は、ハウジングの内部に設けられる第1バルブ34および第2バルブ35と、通電されて一つの電気回路を形成する一つのソレノイド部36とを備える。パージ制御弁装置は、一つの電気回路によって発生する電磁力に応じて駆動する、第1可動子341および第2可動子351を備える。第1可動子341と第2可動子351のうち、一方の可動子は硬質磁性材料を含んで形成され、他方の可動子は一方の可動子よりも外部磁場によって磁化が変わりやすい軟質磁性材料を含んで形成されている。
この装置によれば、一つのソレノイド部36への通電により形成される一つの電気回路がもたらす電磁力が第1可動子341と第2可動子351とを駆動する。パージ制御弁装置は、二つの可動子を一つの電気回路によって駆動可能であるので、部品点数を抑える装置を提供できる。さらに、この二つの可動子の一方は硬質磁性材料を含んで形成されているため、他方の可動子よりも電磁力の影響を受けにくい特性を有する。このため、第1可動子341と第2可動子351を個別に駆動できるので、第1弁体340と第2弁体350はそれぞれの内部通路に対する開度を異なる状態にできる。これにより、パージバルブ3は、二つの弁体について個別の開度制御が可能であり、蒸発燃料のパージ流量を調整することができる。
ハウジング内部通路は、第1弁体340によって開閉される第1内部通路34a2と、第2弁体350によって開閉される第2内部通路35a2とを含む。第1内部通路34a2を流下する蒸発燃料と第2内部通路35a2を流下する蒸発燃料は、流出ポート33aよりも上流において合流するように構成されている。第1可動子341と第2可動子351は、可動方向が同軸になるように並んで設けられている。この構成によれば、可動方向または軸方向に対して直交する方向の装置の体格を抑えることができ、当該方向の搭載スペースを抑えた装置を提供できる。
さらに第1可動子341と第2可動子351は、閉弁動作において、互いに逆向きに動作するように構成されている。この構成によれば、第1バルブ34と第2バルブ35には閉弁時に逆向きの荷重がかかるようになる。この荷重方向によれば、第1バルブ34に係る荷重と第2バルブ35に係る荷重とが相殺されやすく、装置の振動を抑制することに寄与する。
第1内部通路34a2と第2内部通路35a2のうち、一方の内部通路は他方の内部通路よりも通路横断面積が大きく形成された通路である。制御装置50は、蒸発燃料の流量増加に関して、第1増加率域のモードと第2増加率域のモードとを実施するように、ソレノイド部36に対する印加電圧を制御する。第1増加率域のモード時に他方の内部通路を開放し、第2増加率域のモード時に他方の内部通路と一方の内部通路とを開放する。これによれば、ORVRバルブ15のばたつきに起因する騒音の抑制と大流量化とが図れる流量制御を提供できる。
制御装置50は、流出ポート33aから流出する蒸発燃料の流量を、ゼロ状態から第1増加率域のモードを実施した後、第2増加率域のモードを実施する流量増加制御を行う。この制御によれば、パージ開始時から、蒸発燃料の濃度学習を実施でき、またはORVRバルブ15のばたつきを抑制でき、さらにその後にパージの大流量性能を発揮できるパージ制御弁装置を提供できる。
制御装置50は、蒸発燃料の濃度学習を実施するときに第1増加率域のモードを実施するように、ソレノイド部36に対する印加電圧を制御する。この制御によれば、流量変化が小さい状態で蒸発燃料の濃度学習を実施できる。これにより、ORVRバルブ15のばたつき抑制と大流量の確保とを両立でき、さらに濃度学習の精度を向上できるパージ制御弁装置を提供できる。
制御装置50は、騒音が想定可能な騒音発生条件が成立する場合に第1増加率域のモードを実施するように、ソレノイド部36に対する印加電圧を制御する。この制御によれば、ORVRバルブ15のばたつきに起因する騒音が発生し得る状態で第1増加率域のモードを実施できる。これにより、より効率的に騒音抑制が図れるとともに、大流量の確保にも対応できるパージ制御弁装置を提供できる。
制御装置50は、正側電圧印加または負側電圧印加のデューティ比を制御する第1モードと、交流信号電圧印加における正側電圧印加と負側電圧印加のうち、第1モードにおいて制御していない方の電圧印加のデューティ比を制御する第2モードとにわたって切り換える。この制御によれば、軟質磁性材料を含む可動子を有するバルブに対する電圧印加のデューティ比を増加させていく第1モードと、硬質磁性材料を含む可動子を有するバルブに対する電圧印加のデューティ比を増加させていく第2モードとを実施することができる。第2モードでは、硬質磁性材料を含む可動子を有するバルブについて開弁率を増加させながら、軟質磁性材料を含む可動子を有するバルブについて開弁状態を維持することができる。
第1内部通路と第2内部通路のうち、一方の内部通路は他方の内部通路よりも通路横断面積が大きく形成された通路である。さらにパージバルブ3は、第1モードでは小さい他方の内部通路を開放し、第2モードでは他方の内部通路と一方の内部通路とを開放する。これによれば、第1モードにおいて第1増加率域のモードを実施でき、第2モードにおいて第2増加率域のモードを実施できる。したがって、第1増加率域のモードから第2増加率域のモードへの移行の際に、流出ポート33aから流出する蒸発燃料の流量が大きく変動しないパージ流量制御を実施できる。
(第2実施形態)
第2実施形態について図7および図8を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、ソレノイド部36に印加する通電制御が相違する。第2実施形態において特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、異なる点についてのみ説明する。
第2実施形態においてパージバルブ3は、図8のグラフに示すような流量増加率が小さい第1増加率域のモードを実施するときに、図3に示す状態に制御される。パージバルブ3は、負側電圧印加のときにソレノイド部36によって発生する磁束が硬質磁性材料を含む可動子が有する磁束と引きつけ合うように、構成されている。例えば、永久磁石である第2可動子351が発生する磁束と、磁気回路によってコアステータ362と第2可動子351に作用する磁束とが引きつけ合う場合には、第2可動子351が第2弁座部35a1に対して離間した開弁状態になる。
第1増加率域のモードでは、図8に示すように、第1バルブ34は正側電圧のデューティ比に応じた割合で開弁し、第2バルブ35はデューティ比に関わらず閉弁状態になる。制御装置50は、図8に示す第1増加率域のモードのように、正側電圧印加のデューティ比を0%から100%へ徐々に増加させていく通電制御を実行する。この通電制御により、第1バルブ34の開弁率が増加していき、第1内部通路34a2を流下する流量が増加していく。
パージバルブ3は、図8のグラフに示すような流量増加率が第1増加率域よりも大きい第2増加率域のモードを実施するときに、図4に示す状態に制御される。制御装置50は、電源部51から供給される電力を、負側電圧のデューティ比を制御してコイル部360に印加する。負側電圧を印加する通電制御は、負側電圧の印加と非印加とを交互に繰り返す形態の通電制御である。
第2実施形態は、負側電圧印加のときにソレノイド部36によって発生する磁束が、硬質磁性材料を含む可動子が有する磁束と引きつけ合うように、構成されている。第1バルブ34は、第1可動子341が軟質磁性材料を含むために、正側電圧の印加時間と負側電圧の印加時間の両方で開弁する。このため、第1バルブ34は、図8に示すように第2増加率域のモードにおいて第2バルブと同じタイミングで開弁する。第2バルブ35は負側電圧のデューティ比に応じた割合で開弁する。制御装置50は、第2増加率域のモードのように、負側電圧印加のデューティ比を所定値であるX%から100%へ徐々に増加させていく通電制御を実行する。この制御により、第1増加率域のモードの後に第2増加率域のモードに移行するときに、パージバルブ3から流出する流量が大きく変化しないで連続的に増加し続ける。
図7のフローチャートを参照してパージ弁制御装置の作動を説明する。制御装置50は、図7のフローチャートにしたがった処理を実行する。図7に示すフローチャートは、蒸発燃料をエンジン2へ向けて流下させる場合に開始する。
本フローチャートが開始されると、制御装置50は、ステップS200で蒸発燃料の濃度学習を行う状態か否かを判定する。ステップS200で濃度学習を行う状態であると判定すると、制御装置50は、ステップS220で第2バルブ35が閉弁状態であるか否かを判定する。ステップS220で第2バルブ35が閉弁状態であると判定すると、再びステップS200に戻り、ステップS200の判定処理を実行する。ステップS220で第2バルブ35が閉弁状態でないと判定すると、ステップS225でコイル部360に正側電圧を印加し、ステップS200の判定処理を実行する。制御装置50は、ステップS225において印加した正側電圧のデューティ比を0%から100%になるまで徐々に増加していく制御を実行する。
ステップS200で濃度学習を行う状態でないと判定すると、制御装置50は、ステップS210で騒音発生条件が成立するか否かを判定する。ステップS210における処理は第1実施形態のステップS110と同様の処理である。例えば、車両の停止時、低速走行時、エンジン2のアイドリング状態などに該当すると、制御装置50は、ステップS210で騒音発生条件が成立すると判定する。ステップS210で騒音発生条件が成立すると判定すると、ステップS220に進み、ステップS220の判定処理を実行する。
ステップS220からステップS200に戻る流れ、ステップS225を実行後にステップS200に戻る流れは、図8の第1増加率域のモードを実施する。第1増加率域のモード時は、第1実施形態と同様に、蒸発燃料の濃度学習精度の向上、脈動の低減、ORVRバルブ15のばたつき低減などを図ることができる。
ステップS210で騒音発生条件が成立しないと判定すると、制御装置50は、ステップS230で正側電圧のデューティ比が100%に達したか否かを判定する。ステップS230で正側電圧のデューティ比が100%に達していないと判定すると、ステップS200に戻り、ステップS200の判定処理を実行する。ステップS230で正側電圧のデューティ比が100%に達していると判定すると、ステップS240で第2バルブ35が閉弁状態であるか否かを判定する。
ステップS240で第2バルブ35が閉弁状態でないと判定すると、ステップS200に戻り、ステップS200の判定処理を実行する。ステップS240で第2バルブ35が閉弁状態であると判定すると、制御装置50は、ステップS250でコイル部360に、所定のデューティ比である負側電圧を印加する。
制御装置50は、ステップS250において、所定値であるX%のデューティ比によって、負側電圧印加を開始する。制御装置50は、ステップS260において負側電圧のデューティ比を所定値から100%に向けて徐々に増加していく制御を実行し、ステップS200に戻る。ステップS250、S260の処理により、パージバルブ3が制御する流体流量を図8に示すように第1増加率域から第2増加率域へ滑らかに移行させることができる。
第2バルブ35が開弁している状態は、図8に図示する第2増加率域のモードを実施している。第1実施形態同様に第2増加率域のモード時は、第1バルブ34の開弁状態に加え、大流量を調整可能な第2バルブ35の開弁率を増加させていくため、大流量化を促進できる。図7のフローチャートに従った制御によれば、図8のように、ORVRバルブ15のばたつきに起因する騒音を抑制するとともに、大流量化も図れる流量制御を提供できる。
次に第2実施形態がもたらす効果について述べる。制御装置50は、正側電圧印加のデューティ比を制御する正側電圧モードと、負側電圧印加のデューティ比を制御する負側電圧モードとにわたって切り換える。この制御によれば、軟質磁性材料を含む可動子を有するバルブに対する電圧印加のデューティ比を増加させていく正側電圧モードと、硬質磁性材料を含む可動子を有するバルブに対する電圧印加のデューティ比を増加させていく負側電圧モードとを実施できる。負側電圧モードでは、硬質磁性材料を含む可動子を有するバルブについて開弁率を増加させながら、軟質磁性材料を含む可動子を有するバルブについて開弁状態を維持できる。
制御装置50は、正側電圧モードと負側電圧モードのうち一方のモードにおいて、印加電圧のデューティ比を上昇していくように制御する。制御装置50は、一方のモードから他方のモードに移行するときに、他方のモードにおいて印加電圧のデューティ比を0%よりも大きい値である所定値から上昇していくように制御する。これによれば、第1増加率域のモードから第2増加率域のモードへの移行の際に、流出ポート33aから流出する蒸発燃料の流量が大きく変動しないパージ流量制御を実施できる。
(第3実施形態)
第3実施形態について図9~図11を参照して説明する。第3実施形態のパージバルブ103は、第1実施形態に対して第1バルブ134と第2バルブ135が相違する。第3実施形態において特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、異なる点についてのみ説明する。
図9に示すように、パージバルブ103は、ハウジングの内部に設けられた、第1バルブ134と第2バルブ135とを備える。第1バルブ134と第2バルブ135は、パージバルブ103のハウジング内部通路において、並列に配置されている構成である。この構成により、第1バルブ134と第2バルブ135のうち、いずれか一方を開弁状態に制御し他方を閉弁状態に制御しても、吸気管21へ蒸発燃料を供給できる。第1バルブ134と第2バルブ135は、第1弁体340の軸方向と第2弁体350の軸方向が径方向に並ぶように配置されている。図9は、第1バルブ134と第2バルブ135とが閉弁状態に制御されていることを示している。パージバルブ103は、小流量を調整可能とする第1バルブ134と、第1バルブ134に比べて大流量を調整可能な第2バルブ135とを備える。
制御装置50は、印加電圧の制御により、第1バルブ134と第2バルブ135の作動を制御する。パージバルブ103は、一つのソレノイド部36を有し、ソレノイド部36への通電により一つの電気回路を構成する。第1バルブ134と第2バルブ135は、共通の電気回路が発生する磁束による電磁駆動力を用いて軸方向に駆動して開弁し、それぞれの通路を開放する。ソレノイド部36は、コイル部360aとコイル部360bとを備える。コイル部360aとコイル部360bは、連結部360cによって直列接続されている。
ソレノイド部36は、コイル部360、ボビン361a、ボビン361b、コアステータ362a、コアステータ362b、ヨーク1342、ヨーク1352等を備える。第1バルブ134は、コイル部360a、第1可動子1341、コアステータ362a、第1スプリング1343、リンク部1344等を備えている。コイル部360aはボビン361aに巻回されている。第1可動子1341の中心軸は、第1バルブ134の中心軸に相当する。第1可動子1341とヨーク1342はリンク部1344によって連結されている。第1スプリング1343は、第1可動子1341をコアステータ362aから離れる方向に移動させる付勢力を提供する。第1スプリング1343は、第1可動子1341を第1弁座部34a1側へ移動させようとする付勢力を提供する。第1弁体340は、第1可動子1341の軸方向端部に一体に設けられている。
第2バルブ135は、コイル部360b、第2可動子1351、コアステータ362b、第2スプリング1353、リンク部1354等を備えている。コイル部360bはボビン361bに巻回されている。第2可動子1351の中心軸は、第2バルブ135の中心軸に相当する。第2可動子1351とヨーク1352はリンク部1354によって連結されている。第2スプリング1353は、第2可動子1351をコアステータ362bから離れる方向に移動させる付勢力を提供する。第2スプリング1353は、第2可動子1351を第2弁座部35a1側へ移動させようとする付勢力を提供する。第2弁体350は、第2可動子1351の軸方向端部に一体に設けられている。
図10は、第1バルブ134が第1弁座部34a1から離間する開弁状態であり、第2バルブ135が第2弁座部35a1に着座する閉弁状態であることを示している。図10に示す破線は、第1バルブ134において形成される磁気回路を示している。第1バルブ134の開弁状態では、第1可動子1341における一端側に位置する非支持部1341bが他端側に位置する支持部1341aよりもコアステータ362a寄りに位置する。これは、非支持部1341bが電磁力によってコアステータ362a側に引きつけられるからである。パージバルブ103は、図6のグラフに示すような流量増加率が小さい第1増加率域のモードを実施するときに、図10に示す状態に制御される。
図11は、第1バルブ134が開弁状態であり、さらに第2バルブ135が第2弁座部35a1から離間する開弁状態であることを示している。第2バルブ135の開弁状態では、第2可動子1351における一端側に位置する非支持部1351bが他端側に位置する支持部1351aよりもコアステータ362b寄りに位置する。これは、非支持部1351bが電磁力によってコアステータ362b側に引きつけられるからである。パージバルブ103は、図6のグラフに示すような流量増加率が第1増加率域よりも大きい第2増加率域のモードを実施するときに、図11に示す状態に制御される。
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
第2実施形態において説明した通電制御は、第3実施形態のパージバルブ103に、適用することができる。この場合、パージバルブ103の作動や作用効果は、第2実施形態において説明した作用効果と同様である。
前述の実施形態において、第1内部通路と第2内部通路は、通路横断面積が同等である構成でもよい。この場合、図6等に示す第1増加率域と第2増加率域は、流量変化率が同等である関係になる。
前述の実施形態において、第1内部通路は通路横断面積が第2内部通路よりも大きい構成でもよい。この場合、図6等に示す第1増加率域と第2増加率域は、流量変化率が第1増加率域の方が大きい関係になる。
前述の実施形態において、硬質磁性材料を含む可動子が第1可動子であり、軟質磁性材料を含む可動子が第2可動子である構成でもよい。この場合、前述の実施形態における記載は、第1可動子と第2可動子とを入れ替えて読み替えるものとする。
2…エンジン、 13…キャニスタ、 31…第1ハウジング(ハウジング)
31a…流入ポート、 33a…流出ポート、 34,134…第1バルブ
35,135…第2バルブ、 36…ソレノイド部
340…第1弁体、 341,1341…第1可動子、 350…第2弁体
351,1351…第2可動子

Claims (11)

  1. キャニスタ(13)から流出した蒸発燃料が流入する流入ポート(31a)と、
    蒸発燃料がエンジン(2)に向けて流出する流出ポート(33a)と、
    前記流入ポートと前記流出ポートとを連絡するハウジング内部通路を有するハウジング(31)と、
    前記ハウジングの内部に設けられて、前記ハウジング内部通路を流下する蒸発燃料の流量を制御する第1弁体(340)を有する第1バルブ(34;134)と、
    前記ハウジングの内部に設けられて、前記ハウジング内部通路を流下する蒸発燃料の流量を制御する第2弁体(350)を有する第2バルブ(35;135)と、
    通電されて一つの電気回路を形成する一つのソレノイド部(36)と、
    一つの前記電気回路によって発生する電磁力に応じて前記第1弁体とともに駆動する第1可動子(341;1341)と、
    一つの前記電気回路によって発生する電磁力に応じて前記第2弁体とともに駆動する第2可動子(351;1351)と、
    を備え、
    前記第1可動子と前記第2可動子のうち、一方の可動子は硬質磁性材料を含んで形成され、他方の可動子は一方の前記可動子よりも外部磁場によって磁化が変わりやすい軟質磁性材料を含んで形成されているパージ制御弁装置。
  2. 前記ハウジング内部通路は、前記第1弁体によって開閉される第1内部通路(34a2)と、前記第2弁体によって開閉される第2内部通路(35a2)とを含み、
    前記第1内部通路を流下する蒸発燃料と前記第2内部通路を流下する蒸発燃料は、前記流出ポートよりも上流において合流するように構成されており、
    前記第1可動子と前記第2可動子は、可動方向が同軸になるように並んで設けられている請求項1に記載のパージ制御弁装置。
  3. 前記第1可動子と前記第2可動子は、閉弁動作において、互いに逆向きに動作するように構成されている請求項2に記載のパージ制御弁装置。
  4. 前記ハウジング内部通路は、前記第1弁体によって開閉される第1内部通路(34a2)と、前記第2弁体によって開閉される第2内部通路(35a2)とを含み、
    前記第1内部通路と前記第2内部通路のうち、一方の内部通路は他方の内部通路よりも通路横断面積が大きく形成された通路であり、
    蒸発燃料の流量増加に関して、第1増加率域のモードと前記第1増加率域よりも流量増加率が大きい第2増加率域のモードとを実施するように、前記ソレノイド部に対する印加電圧を制御する制御装置(50)を備え、
    前記第1増加率域のモード時に前記他方の内部通路を開放し、前記第2増加率域のモード時に前記他方の内部通路と前記一方の内部通路とを開放する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパージ制御弁装置。
  5. 前記制御装置は、前記流出ポートから流出する蒸発燃料の流量をゼロである状態から前記第1増加率域のモードを実施した後、前記第2増加率域のモードを実施する流量増加制御を行う請求項4に記載のパージ制御弁装置。
  6. 前記制御装置は、蒸発燃料の濃度学習を実施するときに前記第1増加率域のモードを実施するように、前記ソレノイド部に対する印加電圧を制御する請求項4または請求項5に記載のパージ制御弁装置。
  7. 前記制御装置は、騒音が想定可能な騒音発生条件が成立する場合に前記第1増加率域のモードを実施するように、前記ソレノイド部に対する印加電圧を制御する請求項4または請求項5に記載のパージ制御弁装置。
  8. 前記ソレノイド部に対する印加電圧を制御する制御装置(50)を備え、
    前記制御装置は、正側電圧印加または負側電圧印加のデューティ比を制御する第1モードと、交流信号電圧印加における正側電圧印加と負側電圧印加のうち、前記第1モードにおいて制御していない方の電圧印加のデューティ比を制御する第2モードとにわたって切り換える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパージ制御弁装置。
  9. 前記ハウジング内部通路は、前記第1弁体によって開閉される第1内部通路(34a2)と、前記第2弁体によって開閉される第2内部通路(35a2)とを含み、
    前記第1内部通路と前記第2内部通路のうち、一方の内部通路は他方の内部通路よりも通路横断面積が大きく形成された通路であり、
    前記第1モードでは他方の前記内部通路を開放し、前記第2モードでは他方の前記内部通路と一方の前記内部通路とを開放する請求項8に記載のパージ制御弁装置。
  10. 前記ソレノイド部に対する印加電圧を制御する制御装置(50)を備え、
    前記制御装置は、正側電圧印加のデューティ比を制御する正側電圧モードと、負側電圧印加のデューティ比を制御する負側電圧モードとにわたって切り換える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパージ制御弁装置。
  11. 前記制御装置は、前記正側電圧モードと前記負側電圧モードのうち一方のモードにおいて、印加電圧のデューティ比を上昇していくように制御し、一方の前記モードから他方のモードに移行するときに、他方の前記モードにおいて印加電圧のデューティ比を0%よりも大きい値である所定値から上昇していくように制御する請求項10に記載のパージ制御弁装置。
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