JP7170989B2 - 酵素固定化用担体および固定化酵素 - Google Patents
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Description
本実施形態に係る酵素固定化用担体は、(A)多孔質材料と、(B)アミノ基を有するセルロース(以下、アミノ化セルロースということもある。)と、を含むものである。
多孔質材料とは、多数の微細な空隙を持つ物質であり、水不溶性の様々な多孔質材料を担体に用いることができる。多孔質材料は、繊維質であってもよく、非繊維質であってもよい。多孔質材料としては、内部に水が浸み込むことができるものを用いることが好ましく、より好ましくは水を透過することができる貫通気孔を持つものである。
アミノ化セルロースとしては、グルコースがβ-1,4結合により連結された構造を持つセルロース(より詳細にはセロオリゴ糖)において、そのアノマー位にアミノ基を含む置換基を持つものが用いられる。アミノ基としては、1級アミノ基であることが好ましい。アミノ基を有することにより、酵素を吸着して固定化することが可能となる。
本実施形態に係る固定化酵素は、上記酵素固定化用担体と、アミノ化セルロースに固定化された酵素とを含むものである。すなわち、固定化酵素は、多孔質材料と、前記多孔質材料に固定化されたアミノ化セルロースと、前記アミノ化セルロースに固定化された酵素と、を含むものである。
本実施形態に係る酵素固定化用担体は、上記アミノ化セルロースをアルカリ水溶液に溶解させた水溶液に、酸を加えて多孔質材料の存在下でアミノ化セルロースを析出させることにより製造することができる。すなわち、多孔質材料の存在下でアミノ化セルロースを析出させることにより、多孔質材料にアミノ化セルロースが固定化されるため、本実施形態に係る酵素固定化用担体が得られる。
本実施形態に係る固定化酵素は、以下の工程により製造することができる。
(1)上記アミノ化セルロースをアルカリ水溶液に溶解させた水溶液に、酸を加えて多孔質材料の存在下でアミノ化セルロースを析出させることにより、前記多孔質材料にアミノ化セルロースを固定化させるセルロース固定化工程、及び、
(2)アミノ化セルロースに酵素を固定化させる酵素固定化工程。
本実施形態に係る酵素固定化用担体及び固定化酵素は、酵素を利用して物質の検知等を行うバイオセンサや、酵素を利用して物質の生産等を行うバイオリアクターなど、公知の様々な用途に用いることができる。
4N水酸化ナトリウム水溶液、6N塩酸、塩化マグネシウム六水和物、2-メルカプトエタノールはナカライテスクより購入した。αGDP二ナトリウム水和物、β-ガラクトシダーゼ(β-Gal、等電点:pH4.6)、p-ニトロフェニルβ-D-ガラクトピラノシド(PNPG)、リン酸二水素ナトリウム二水和物は和光純薬工業より購入した。濾紙(Whatman、グレード1、円型、直径10mm)はGEヘルスケアより購入した。超純水は、Milli-Qシステム(Milli-Q Advantage A-10,Merck Millipore)で供給した。その他は、ナカライテスクより特級以上の試薬を購入し、使用した。
(1)セルロースおよびアミノ化セルロースの調製
T.Serizawaら,Polym.J.,2016年,48,539-544に記載の方法に従い、平均重合度が10のセルロース(下記式(3))を合成した。また、下記方法に従い、平均重合度が10のアミノ化セルロース(下記式(4))を合成した。
2-アミノエチル-β-D-グルコシドは、B.Raoら,Chem. Commun.,2013年,49,10808-10810に記載の方法に基づき調製した。CDPは、CDPは、M.Krishnareddyら,J.Appl.Glycosci.,2002年,49,1-8に記載の方法に基づき調製した。
200mMのαG1P、50mMの2-アミノエチル-β-D-グルコシド、及び0.2U/mLのCDPを、500mMのHEPES緩衝液(pH7.5)中で混合し、60℃で3日間インキュベートした。沈澱した生成物を含む反応液を遠心(15000rpm、10分間以上、4℃)し、上清を取り除いた後、超純水を加えて生成物を再分散させ、遠心(同条件)する操作を繰り返することで、上清の置換率が99.999%以上となるまで精製して、アミノ化セルロースを得た。
1.7mLチューブ中で凍結乾燥した所定量のセルロースまたはアミノ化セルロースに1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて分散させた。これを-20℃で30分間インキュベーションし、溶液を室温に戻した後にピペッティングして溶解させ、2%(w/v)、4%(w/v)、6%(w/v)のセルロース水溶液、及び6%(w/v)のアミノ化セルロース水溶液をそれぞれ調製した。
方法1および2で調製した実施例1,2の濾紙/アミノ化セルロース複合体および比較例1~6の濾紙/セルロース複合体を、それぞれ24穴プレート内で超純水3mLにより10回ピペッティングすることで洗浄した。洗浄液の紫外可視吸収スペクトルを紫外可視分光光度計(V-670、日本分光)により測定した。測定条件は、測定波長:200-800nm、操作速度:400nm/min、バンド幅:0.5nm、データ取り込み間隔:0.5nm、レスポンス:Fastとした。
方法2により調製した比較例6の濾紙/セルロース複合体および実施例2の濾紙/アミノ化セルロース複合体について、それぞれ赤外吸収スペクトルを全反射赤外分光光度計(FT/IR-4100typeA、日本分光)により測定し、濾紙内に担持したセルロースおよびアミノ化セルロースの結晶構造を評価した。酵素反応によりあらかじめ調製したセルロースまたはアミノ化セルロースの結晶化物(コントロール試料)、ならびに、未処理の濾紙のみについても、同様に測定した。測定条件は、測定波長:350-7800cm-1、分解能:2cm-1、積算回数:100とした。
24穴プレートのウェルにβ-Gal水溶液500μL(10nMβ-Gal、50mMリン酸緩衝液、1mM塩化マグネシウム(pH7.3))を添加した後に、サンプルを25℃で30分間、浸漬させた。その後、洗浄液1mL(50mMリン酸緩衝液、1mM塩化マグネシウム(pH7.3))を添加した24穴プレートに、β-Galを固定化したサンプルを移し、15分間、静置した。これを5回繰り返すことで、サンプルを洗浄した。サンプルとしては、比較例6の濾紙/セルロース複合体、実施例2の濾紙/アミノ化セルロース複合体、濾紙のみ(濾紙を30μLの超純水で濡らしたもの)を用いた。
上記安定性評価における複合体洗浄液の紫外可視吸収スペクトルを図1に示し、これらから得られた担持率を下記表1に示す。複合化方法に関し、方法1に比べて、方法2の方がより高い担持率となり、方法2の担持率は条件によらず97%以上の値であった。方法1ではセルロースまたはアミノ化セルロースをあらかじめ部分的に自己組織化させているため、溶液内で生成した自己組織化物が濾紙内に浸透しにくく、濾紙から洗浄除去されてしまうものと考えられる。これに対し、方法2ではセルロースまたはアミノ化セルロースを最初から濾紙内で自己組織化させているため、自己組織化物が濾紙の網目と物理的に絡み合い、洗浄除去されにくいものと考えられる。このように、濾紙内にセルロースまたはアミノ化セルロースを安定に担持するには、最初からそれらを濾紙内で自己組織化させる手法(方法2)が有効であることがわかった。但し、アミノ化セルロースでは、方法1でも70%以上固定化されていた。そのため、アミノ化セルロースを固定化させる酵素固定化用担体の製造方法としては、実施例2に係る方法2だけでなく、実施例1に係る方法1についても有用性が認められた。
Claims (7)
- 多孔質材料と、アミノ基を含む置換基をアノマー位に有し前記多孔質材料に固定化されたセルロースと、を含む、等電点がpH7.0以下の酵素を固定化するための酵素固定化用担体。
- 前記多孔質材料が繊維質材料からなる、請求項1又は2に記載の酵素固定化用担体。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の酵素固定化用担体と、前記セルロースに固定化された等電点がpH7.0以下の酵素と、を含む、固定化酵素。
- 等電点がpH7.0以下の酵素を固定化するための担体を製造する方法であって、
アミノ基を含む置換基をアノマー位に有するセルロースをアルカリ水溶液に溶解させた水溶液に、酸を加えて多孔質材料の存在下で前記セルロースを析出させることにより、前記多孔質材料に前記セルロースを固定化させる、酵素固定化用担体の製造方法。 - アミノ基を含む置換基をアノマー位に有するセルロースをアルカリ水溶液に溶解させた水溶液に、酸を加えて多孔質材料の存在下で前記セルロースを析出させることにより、前記多孔質材料に前記セルロースを固定化させる工程と、
前記セルロースに等電点がpH7.0以下の酵素を固定化させる工程と、
を含む、固定化酵素の製造方法。 - 前記多孔質材料に前記セルロースを固定化させた後に、前記セルロースに前記酵素を固定化させる、請求項6に記載の固定化酵素の製造方法。
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