JP7168973B2 - 修飾銀焼結構造及びその製法 - Google Patents
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Description
また、特許文献3は、Si(OC2H5)4とZr(OC2H5)4を使用するが、金属微粒子でなく半導体微粒子の表面にそれらの混合酸化物層を1層だけ形成した非線形光学材料を製造するものである。これに対し、本発明は、銀粒子にシリカ層と酸化ジルコニウム層の2層を分離して積層させた修飾銀粒子を形成するものであり、しかも導電性接着剤や導電性ペーストの材料を提供するものであるから、目的・構成・作用・効果において全く異なるものである。
更に、特許文献12-13は、明細書の中に単語としては相互に関連性なく、銀粒子とシランカップリング剤とジルコニウムアルコキシドが出現する。しかし、その実体は、表示装置のタッチパネル用の樹脂シートに導電性を付与するための成分として銀等の金属を含ませ、シランカップリング剤で高分子溶液中での銀の分散性を高め、ジルコニウム、チタンなどのアルコキシドは紫外線による樹脂の酸化防止目的として使用されているに過ぎない。シランカップリング剤は銀粒子に吸着されるが、ジルコニウムアルコキシドは樹脂シートの全体に分散して銀粒子とは結合せず、蛍光灯などの紫外線による樹脂シートの劣化を防止しているに過ぎない。従って、銀粒子にシリカ層と酸化ジルコニウム層の2層を被覆形成する本願発明とは全く異なる。
また、金属粒子にジルコニウムアルコキシド層を1層だけ被覆形成した従来例は存在しないが、仮に存在したとしても、銀粒子は水酸基を形成し難いため、ジルコニウムアルコキシド層が金属粒子から剥離しやすいという問題が避けられない。
そして、本発明の第4の目的は、上記修飾銀粒子を含有した導電性ペーストや導電性接着剤などの導電性材料を提供することであり、また本発明の第5の目的は、これらの導電性材料を用いて電極や導電膜や導電体を形成・焼結して高耐熱性及び低抵抗率の修飾銀焼結構造を提供することである。
本発明に係る銀粒子の粒径のオーダーは単位でnm~μmのサイズまで適用される。この銀粒子の表面にシラン系カップリング剤を糊剤としてジルコニウムアルコキシドが結合され、換言すれば銀粒子の外周面に結合して第1層としてシラン系カップリング剤層が被覆され、その外周に結合して第2層としてジルコニウムアルコキシド層が積層状態で形成される。
ジルコニウムアルコキシドの化学式はZr(OR)4であり、ここでORはアルコキシル基であり、Rは炭化水素基である。炭化水素基としては、CH3、C2H5、C3H7などがある。
銀粒子の表面にシラン系カップリング剤とジルコニウムアルコキシドを結合させた修飾銀粒子は、シラン系カップリング剤層とジルコニウムアルコキシド層により保護されているため、銀粒子単体よりも耐熱性が増大し、加熱温度が低い段階では高い比抵抗を示す。しかし、シラン系カップリング剤層とジルコニウムアルコキシド層には多数の微小細孔が存在するため、加熱温度を高温化すると、内部の銀粒子が表面融解を生起し、溶融銀が微小細孔を流動して表面まで到達するから、修飾銀粒子の比抵抗が急激に低下して、導電性が急激に増大する特性を示す。更に、銀粒子はシラン系カップリング剤層とジルコニウムアルコキシド層に保護されているから、銀粒子の結晶成長は阻止されて粒径成長は抑制され、同時に修飾銀粒子同士が結合しても全体としての体積収縮が抑制される効果がある。
反応基Xとしては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基などが利用でき、特にエポキシ基、アミノ基が好ましい。また、加水分解基(OR')としてはメトキシ基(OCH3)、エトキシ基(OC2H5)などのアルコキシ基が利用される。
具体的には、エポキシ系では、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等がある。
アミノ系では、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸基などがある。
シラン系カップリング剤であるXY-Si-(OR')3の加水分解基(OR')は、ゾルーゲル反応により、銀粒子表面(Ag)の水酸基OHと加水分解反応と脱水縮合反応を経て、-O-により相互に結合し、銀粒子表面に最終的にはXY-Si-O-Ag(銀粒子)の結合形態を形成する。また、多数のXY-Si-O-は横方向にも-Si-O-Si-により相互に結合し、ゾルーゲルの最終の乾燥工程により酸化ケイ素層に変化する。しかも、ゾルーゲル段階では有機基XYは存在するから、ゾルーゲル反応の途中段階及びゾルーゲルの最終段階では、酸化ケイ素層と異なり種々の変化形を含めて酸化ケイ素前駆体層と称する。
また、シラン系カップリング剤の反応基Xが結合するジルコニウムアルコキシドであるZr(OR)4も、加水分解反応と脱水縮合反応を経て、最終的に-Zr-O-となり、多数の-Zr-O-は横方向にも-Zr-O-Zr-により相互に結合し、ゾルーゲルの最終の乾燥工程により酸化ジルコニウム層に変化する。しかも、ゾルーゲル段階では有機基XYは存在するから、ゾルーゲル反応の途中段階及びゾルーゲルの最終段階では、酸化ジルコニウム層と異なり種々の変化形を含めて酸化ジルコニウム前駆体層と称する。
銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層を有した修飾銀粒子は、酸化ケイ素前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層により保護されているため、銀粒子単体よりも耐熱性が増大し、加熱温度が低い段階では高い比抵抗を示す。しかし、酸化ケイ素前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層には多数の微小細孔が存在するため、加熱温度を高温化すると、内部の銀粒子が表面融解を生起し、溶融銀が微小細孔を流動して表面まで到達するから、修飾銀粒子の比抵抗が急激に低下して、導電性が急激に増大する特性を示す。更に、銀粒子は酸化ケイ素前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層に保護されているから、銀粒子の結晶成長は阻止されて粒径成長は抑制され、同時に修飾銀粒子同士が結合しても全体としての体積収縮が抑制される効果がある。
シラン系カップリング剤の添加量が少ない場合や、ジルコニウムアルコキシドの添加量が多い場合には、酸化ケイ素前駆体層の中に酸化ジルコニウム前駆体が混入して、第1層が酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層に鳴る場合が存在する。この第1層を取り巻く第2層、即ち最外層は耐熱性の高い酸化ジルコニウム前駆体層である。
酸化ジルコニウム前駆体層を-Zr-O-と書く場合には、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層は-Zr-O-Ag(銀粒子表面)と-Si-O-Ag(銀粒子表面)が横方向に結合して-Zr-O-Si-と書くことができる。
銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層を有した修飾銀粒子は、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層により保護されているため、銀粒子単体よりも耐熱性が増大し、加熱温度が低い段階では高い比抵抗を示す。しかし、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層には多数の微小細孔が存在するため、加熱温度を高温化すると、内部の銀粒子が表面融解を生起し、溶融銀が微小細孔を流動して表面まで到達するから、修飾銀粒子の比抵抗が急激に低下して、導電性が急激に増大する特性を示す。更に、銀粒子は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層に保護されているから、銀粒子の結晶成長は阻止されて粒径成長は抑制され、同時に修飾銀粒子同士が結合しても全体としての体積収縮が抑制される効果がある。
第2の形態の修飾銀粒子は、銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させており、また酸化ケイ素前駆体層の中には反応基Xを含んだ有機基XYが残存している。焼成により有機基XYは消散し、酸化ケイ素前駆体層は酸化ケイ素層に変化し、酸化ジルコニウム前駆体層は酸化ジルコニウム層に変化する。従って、本第4形態の修飾銀粒子が生成される。
銀粒子の表面に酸化ケイ素層と酸化ジルコニウム層を有した修飾銀粒子は、酸化ケイ素層と酸化ジルコニウム層により保護されているため、銀粒子単体よりも耐熱性が増大し、加熱温度が低い段階では高い比抵抗を示す。しかし、酸化ケイ素層と酸化ジルコニウム層には多数の微小細孔が存在するため、加熱温度を高温化すると、内部の銀粒子が表面融解を生起し、溶融銀が微小細孔を流動して表面まで到達するから、修飾銀粒子の比抵抗が急激に低下して、導電性が急激に増大する特性を示す。更に、銀粒子は酸化ケイ素層と酸化ジルコニウム層に保護されているから、銀粒子の結晶成長は阻止されて粒径成長は抑制され、同時に修飾銀粒子同士が結合しても全体としての体積収縮が抑制される効果がある。
第3の形態の修飾銀粒子は、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させており、また酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層の中には反応基Xを含んだ有機基XYが残存している。焼成により有機基XYは消散し、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層は酸化ケイ素・酸化ジルコニウム混合層に変化し、酸化ジルコニウム前駆体層は酸化ジルコニウム層に変化する。従って、本第5形態の修飾銀粒子が生成される。
銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と酸化ジルコニウム層を有した修飾銀粒子は、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と酸化ジルコニウム層により保護されているため、銀粒子単体よりも耐熱性が増大し、加熱温度が低い段階では高い比抵抗を示す。しかし、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と酸化ジルコニウム層には多数の微小細孔が存在するため、加熱温度を高温化すると、内部の銀粒子が表面融解を生起し、溶融銀が微小細孔を流動して表面まで到達するから、修飾銀粒子の比抵抗が急激に低下して、導電性が急激に増大する特性を示す。更に、銀粒子は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と酸化ジルコニウム層に保護されているから、銀粒子の結晶成長は阻止されて粒径成長は抑制され、同時に修飾銀粒子同士が結合しても全体としての体積収縮が抑制される効果がある。
金属材料、その他の電子材料が含まれる。
導電性ペーストとしては、本形態の修飾銀粒子、他の導電粒子、樹脂剤、溶剤、その他の助剤などで構成された接合用・電極用・導体用材料である。導電性接着剤としては、本形態の修飾銀粒子、他の導電粒子、樹脂剤、その他助剤などで構成された接合用材料である。導電性塗料としては本形態の修飾銀粒子、他の導電粒子、溶剤、増粘剤などで構成された接合用・電極用・導体用材料である。
本形態においては、少なくとも本発明に係る修飾銀粒子が含有された導電性材料でおれば、他の含有組成の種類・配合量に拘わらず、本形態の導電性材料に包含されるものである。
本発明の第2形態の修飾銀粒子は、銀粒子の表面に第1層の酸化ケイ素前駆体層を介して第2層の酸化ジルコニウム前駆体層で被覆されている。また、本発明の第4形態の修飾銀粒子は、銀粒子の表面に第1層の酸化ケイ素層を介して第2層の酸化ジルコニウム層で被覆されている。しかも、それら第1層及び第2層には多数の微細孔が存在している。
これらの修飾銀粒子を塗布・塗着・堆積などの方法により密集状態で多数集合させ、その後焼結すると、前記酸化ケイ素前駆体層は酸化ケイ素層に変化し、前記酸化ジルコニウム前駆体層は酸化ジルコニウム層に変化する。
また、前記焼結により、銀粒子の表面が融解し、この溶融銀が前記微細孔を通して相互に流動し合って銀導通路が形成され、隣接する銀粒子と銀粒子が銀導通路により相互に電気的に導通した構造を有する修飾銀焼結構造が形成される。銀導通路が形成される前には電気的に抵抗率が高いが、銀導通路が形成されると全体が導通状態になり電気的に抵抗率が急激に低下し、電気導通性の高い修飾銀焼結構造が実現される。
しかも、銀粒子の周囲に酸化ケイ素層と酸化ジルコニウム層の2層が存在するため、焼結に際して熱収縮が小さく、銀粒子が成長することも抑制されて設計通りの修飾銀焼結構造を実現することができる。従来の純粋な銀粒子の焼結では、熱収縮が大きいと同時に銀粒子が大きく結晶成長するため、焼結設計に種々の問題点が存在したが、本発明の修飾銀焼結構造はこれらの問題点を解消することに成功したものである。
本発明の第3形態の修飾銀粒子は、銀粒子の表面に第1層の酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層を介して第2層の酸化ジルコニウム前駆体層で被覆されている。また、本発明の第5形態の修飾銀粒子は、銀粒子の表面に第1層の酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層を介して第2層の酸化ジルコニウム層で被覆されている。しかも、第1層及び第2層には多数の微細孔が存在している。
これらの修飾銀粒子を塗布・塗着・堆積などの方法により密集状態で多数集合させ、その後焼結すると、前記酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層に変化し、前記酸化ジルコニウム前駆体層は酸化ジルコニウム層に変化する。
また、前記焼結により、銀粒子の表面が融解し、この溶融銀が前記微細孔を通して相互に流動し合って銀導通路が形成され、隣接する銀粒子と銀粒子が銀導通路により相互に電気的に導通した構造を有する修飾銀焼結構造が形成される。銀導通路が形成される前には電気的に抵抗率が高いが、銀導通路が形成されると全体が導通状態になり電気的に抵抗率が急激に低下し、電気導通性の高い修飾銀焼結構造が実現される。
しかも、銀粒子の周囲に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と酸化ジルコニウム層の2層が存在するため、焼結に際して熱収縮が小さく、銀粒子が成長することも抑制されて設計通りの修飾銀焼結構造を実現することができる。従来の純粋な銀粒子の焼結では、熱収縮が大きいと同時に銀粒子が大きく結晶成長するため、焼結設計に種々の問題点が存在したが、本発明の修飾銀焼結構造はこれらの問題点を解消することに成功したものである。
このようなゾルーゲル法に基づいて表面処理を行うことにより、本発明の第1形態のように、銀粒子の表面にシラン系カップリング剤を介してジルコニウムアルコキシドを結合させた修飾銀粒子を生成することができる。また、ゾルーゲル法の途中段階及び完成段階を含めて、本発明の第2形態のように、銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子を生成することができる。更に、ゾルーゲル法の途中段階及び完成段階を含めて、本発明の第3形態のように、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子を生成することができる。
本形態では、まずジルコニウムアルコキシドとシラン系カップリング剤を有機溶媒の中で反応させてコーティング液を調製するから、コーティング液の中でジルコニウムアルコキシドとシラン系カップリング剤が結合して、ジルコニウムアルコキシド・シラン系カップリング剤結合体が生成される。そして、このコーティング液の中に多数の銀粒子を投入して銀粒子の表面処理を行うから、ジルコニウムアルコキシド・シラン系カップリング剤結合体のシラン系カップリング剤が銀粒子に結合して、本発明の修飾銀粒子を生成することができる。
このようなゾルーゲル法に基づいて表面処理を行うことにより、本発明の第1形態のように、銀粒子の表面にシラン系カップリング剤を介してジルコニウムアルコキシドを結合させた修飾銀粒子を生成することができる。また、ゾルーゲル法の途中段階及び完成段階を含めて、本発明の第2形態のように、銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子を生成することができる。更に、ゾルーゲル法の途中段階及び完成段階を含めて、本発明の第3形態のように、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子を生成することができる。
この第11形態はゾルーゲル反応の詳細な条件を定める4条件を限定している。第1条件は、ジルコニウムアルコキシドと結合する反応基がエポキシ系又はアミノ系であるシラン系カップリング剤を使用することである。第2条件は、シラン系カップリング剤の添加量が1wt%~5wt%の範囲内で使用されることである。第3条件は、ジルコニウムアルコキシドの濃度が0.01mol/dm3~0.1mol/dm3の範囲内で使用されることである。第4条件は、表面処理の時間が1分~24時間の範囲に限定されることである。
上記第1条件~第4条件の一つ以上を使用する修飾銀粒子の製法が提供され、1条件だけ、2条件、3条件又は4条件の全てを使用することも包含される。これらの条件でゾルーゲル反応を行って、最良の修飾銀粒子を製造することが本形態の目的である。
ゾルーゲル法で本発明の修飾銀粒子を製造すると、通常は第2形態と第3形態の修飾銀粒子が製造される。シラン系カップリング剤が多い場合には、第2形態で示されるように、銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子が生成される。また、シラン系カップリング剤が少ない場合には、第3形態で示されるように、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子が生成される。
この修飾銀粒子を加熱して有機物を消散させると、第2形態の修飾銀粒子では、酸化ケイ素前駆体層は酸化ケイ素層に変化し、酸化ジルコニウム前駆体層は酸化ジルコニウム層に変化する。従って、第4形態で示すように、銀粒子の表面に酸化ケイ素層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた修飾銀粒子が生成されることになる。
また、修飾銀粒子を加熱して有機物を消散させると、第3形態の修飾銀粒子では、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層に変化し、酸化ジルコニウム前駆体層は酸化ジルコニウム層に変化する。従って、第5形態で示すように、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた修飾銀粒子が生成される。
本発明の第7形態の修飾銀焼結構造では、銀粒子の表面に酸化ケイ素層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた多数の修飾銀粒子が相互に密接して緻密に配置される。酸化ケイ素層と酸化ジルコニウム層には多数の微小細孔が形成されているから、加熱により銀粒子から溶融銀が前記微小細孔の内部を流動して、銀粒子と銀粒子を導通連絡する銀導通路が形成される。その結果、銀粒子と銀粒子が銀導通路により相互に電気的に導通接続された修飾銀焼結構造が形成される。
また、本発明の第8形態の修飾銀焼結構造では、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた多数の修飾銀粒子が相互に密接して緻密に配置される。酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と酸化ジルコニウム層には多数の微小細孔が形成されているから、加熱により銀粒子から溶融銀が前記微小細孔の内部を流動して、銀粒子と銀粒子を導通連絡する銀導通路が形成される。その結果、銀粒子と銀粒子が銀導通路により相互に電気的に導通接続された修飾銀焼結構造が形成される。
XY-Si-(OR')3はシランカップリング剤の一般式であり、OR'は加水分解基で、XYは有機基でその端部に反応基Xを有している。Zr-(OR)4はジルコニウムアルコキシドの一般式で、ORはアルコキシル基、Rは炭化水素基である。この炭化水素基Rには、メチル基(CH3)、エチル基(C2H5)、プロピル基(C3H7)などが存在する。アルコキシル基ORと反応基Xとは水素結合などで化学結合している。銀粒子の表面には水酸基OHやカルボキシル基COOHが結合しており、加水分解基OR'と水酸基OHが加水分解と脱水縮合して結合する。
ここに図示されるシラン系カップリング剤は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、加水分解基OR'がメトキシ基OCH3であり、反応基Xはエポキシ基である。メトキシ基が水酸基OHと脱水され、銀粒子と-Si-O-Agのように結合する。エポキシ基はアルコキシル基ORと化学結合する。このようにして、ジルコニウムアルコキシドがシランカップリング剤を介して銀粒子と結合し、銀粒子が第1層のシランカップリング層と第2層のジルコニウムアルコキシド層により被覆された修飾銀粒子が生成される。
ここに図示されるシラン系カップリング剤は3-アミノプロピルトリメトキシシランであり、加水分解基OR'がメトキシ基OCH3であり、反応基Xはアミノ基である。メトキシ基が水酸基OHと脱水され、銀粒子と-Si-O-Agのように結合する。アミノ基はアルコキシル基ORと化学結合する。このようにして、ジルコニウムアルコキシドがシランカップリング剤を介して銀粒子と結合し、銀粒子が第1層のシランカップリング層と第2層のジルコニウムアルコキシド層により被覆された修飾銀粒子が生成される。
具体的には、エポキシ系では、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等がある。
アミノ系では、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸基などがある。
(4A)にはシラン系カップリングが示され、その加水分解基OR'が加水分解されると、(4B)の水酸基OHに変化する。(4C)に示されるように、横方向に隣接するシランカップリング剤同士では、OHとOHが脱水縮合して-Si-O-Si-のように結合し、酸化ケイ素層が形成されてゆく。更に、シランカップリング剤の水酸基OHが銀粒子表面の水酸基OHと水素結合した状態が(4D)に示される。そして、最後にシランカップリング剤の水酸基OHが銀粒子表面の水酸基OHと脱水縮合して乾燥されると、シランカップリング剤が銀粒子とSi-O-Agにより強力に結合して、(4E)の状態に至る。
上記の過程を経て、シラン系カップリング層は有機基XYを含有した形で酸化ケイ素層へと変化してゆく。
(5A)では、ジルコニウムアルコキシドのアルコキシル基ORが加水分解により水酸基OHへと変化する。(5B)では、隣接するジルコニウムアルコキシドのOH基とOH基が脱水縮合されて-Zr-O-Zr-となる。同時に、(5C)では、隣接するジルコニウムアルコキシドのOH基とOR基がROHを分離縮合して-Zr-O-Zr-となる。
上記の過程を経て、ジルコニウムアルコキシド層は酸化ジルコニウム層へと変化してゆく。
(6A)では、銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層の2層が形成された修飾銀粒子が図示されている。酸化ケイ素前駆体層である理由は反応基Xを含んだ有機基XYが含有されているからである。しかし、XY-Si-O3だけでなく、その中間体である、XY-Si-O(OH)2やXY-Si-O2OHなども含めた意味である。同様に、酸化ジルコニウム前駆体層も、-Zr-O4だけでなく、その中間体である、-Zr-O3OHや-Zr-O2(OH)2、-Zr-O(OH)3含めた意味である。
(6B)では、銀粒子の表面に酸化ケイ素層と酸化ジルコニウム層の2層が形成された修飾銀粒子が図示されている。(6A)の修飾銀粒子を完全に酸化してしまうと、酸化ケイ素前駆体層は酸化ケイ素層に変化し、酸化ジルコニウム前駆体層も酸化ジルコニウム層に変化する。(6A)の修飾銀粒子を加熱すると(6B)の修飾銀粒子が生成される。
(6A)の修飾銀粒子が本発明の実施例2であり、(6B)の修飾銀粒子が本発明の実施例3であり、どちらの構造も本発明に包含される。
(7A)では、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層の2層が形成された実施例4の修飾銀粒子が図示されている。ゾルーゲル法でこの修飾銀粒子を生成する際に、シラン系カップリング剤の添加量が少ないとき、又はジルコニウムアルコキシドの添加量が多い場合には、1層目にジルコニウムアルコキシドが混入して、シラン系カップリング剤とジルコニウムアルコキシドが混合した第1層が形成されることがある。実施例4はこのような場合の修飾銀粒子を意味している。前駆体層の意味は前述した意味と同様である。
(7B)では、銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と酸化ジルコニウム層の2層が形成された修飾銀粒子が図示されている。(7A)の修飾銀粒子を完全に酸化してしまうと、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層に変化し、酸化ジルコニウム前駆体層も酸化ジルコニウム層に変化する。(7A)の修飾銀粒子を加熱すると(7B)の修飾銀粒子が生成される。
(7A)の修飾銀粒子が本発明の実施例4であり、(7B)の修飾銀粒子が本発明の実施例5であり、どちらの構造も本発明に包含される。
(8A)は実施例2の修飾銀粒子1の構造を示している。この修飾銀粒子1は、銀粒子2の表面に第1層の酸化ケイ素前駆体層3と第2層の酸化ジルコニウム前駆体層5を被覆しており、第1層及び第2層共に貫通状の多数の微小細孔6が分布している。
後述するように、上記実施例2の修飾銀粒子1を焼成すると焼成修飾銀粒子11になり、第1層の酸化ケイ素前駆体層3は酸化ケイ素層13に変化し、第2層の酸化ジルコニウム前駆体層5は酸化ジルコニウム層15に変化する。同時に銀粒子2が一部溶融または表面溶融して焼成銀粒子12になり、溶融銀が微小細孔6に進入して銀導通路16へと成長し、焼成修飾銀粒子11の表面に銀が析出して導電性を帯びる。
(8B)は実施例4の修飾銀粒子1の構造を示している。この修飾銀粒子1は銀粒子2の表面に第1層の酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層4と第2層の酸化ジルコニウム前駆体層5を被覆しており、第1層及び第2層共に貫通状の多数の微小細孔6が分布している。
後述するように、上記実施例4の修飾銀粒子1を焼成すると焼成修飾銀粒子11になり、第1層の酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層4は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層14に変化し、第2層の酸化ジルコニウム前駆体層5は酸化ジルコニウム層15に変化する。同時に銀粒子2も一部溶融または表面溶融して焼成銀粒子12になり、溶融銀が微小細孔6に進入して銀導通路16へと成長し、焼成修飾銀粒子11の表面に銀が析出して導電性を帯びる。
(9A)は実施例6の修飾銀焼結構造10を示している。修飾銀粒子1を焼成すると焼成修飾銀粒子11になり、第1層の酸化ケイ素前駆体層3は酸化ケイ素層13に変化し、第2層の酸化ジルコニウム前駆体層5は酸化ジルコニウム層15に変化する。この修飾銀焼結構造10では、焼成修飾銀粒子11は、焼成銀粒子12の表面に第1層の酸化ケイ素層13と第2層の酸化ジルコニウム層15を被覆している。隣接する焼成銀粒子12、12から一部溶融または表面溶融した溶融銀が微小細孔6に進入して銀導通路16へと成長する。その結果、焼成銀粒子12、12は銀導通路16により電気的に導通し、修飾銀焼結構造10の全体としての電気抵抗率は急激に低下して純銀焼結構造と同程度の電気抵抗率を発現する。しかも、酸化ケイ素層13と酸化ジルコニウム層15により、体積収縮が抑制されると同時に、銀粒子の結晶成長も抑制され、良好な修飾銀焼結構造10を実現することができる。
(9B)は実施例7の修飾銀焼結構造10を示している。修飾銀粒子1を焼成すると焼成修飾銀粒子11になり、第1層の酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層4は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層14に変化し、第2層の酸化ジルコニウム前駆体層5は酸化ジルコニウム層15に変化する。この修飾銀焼結構造10では、焼成修飾銀粒子11は、焼成銀粒子12の表面に第1層の酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層14と第2層の酸化ジルコニウム層15を被覆している。隣接する焼成銀粒子12、12から一部溶融または表面溶融した溶融銀が微小細孔6に進入して銀導通路16へと成長する。その結果、焼成銀粒子12、12は銀導通路16により電気的に導通し、修飾銀焼結構造10の全体としての電気抵抗率は急激に低下して純銀焼結構造と同程度の電気抵抗率を発現する。しかも、酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層14と酸化ジルコニウム層15により、体積収縮が抑制されると同時に、銀粒子の結晶成長も抑制され、良好な修飾銀焼結構造10を実現することができる。
まず、本発明者らは、ジルコニウムアルコキシドとシラン系カップリング剤を有機溶剤に添加して混合したコーティング液を調整した。具体的には、有機溶剤(又は有機溶媒)にジルコニウムアルコキシドを添加し、続いて、シラン系カップリング剤を添加する。添加後、有機溶剤の沸点まで加熱・還流して溶解し、室温まで冷却する。このコーティング液はゾウーゲル反応液である。
前記溶解温度は有機溶剤の沸点が良好であるが、ジルコニウムアルコキシドが溶解する温度であれば沸点に限定されるものではない。
前記有機溶剤は、アルコールが適しており、炭素数1~10までのアルコールが望ましいが、ジルコニウムアルコキシドが溶解するアルコールであれば、炭素数は上記範囲に限定されない。
エポキシ系カップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等がある。信越化学工業株式会社の商品では、上記5種類のエポキシ系カップリング剤の製品名はその順に、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403である。
また、アミノ系カップリング剤としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸基などある。信越化学工業株式会社の商品では、上記7種類のアミノ系カップリング剤の製品名はその順に、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103P、KBM-573、KBM-575である。
修飾銀粒子製造装置20では、ビーカー21にコーティング液22を注入し、この中に銀粒子2を多数投入し、モーター23で攪拌翼24を回転させて混合攪拌を行い、多数の銀粒子2の表面にシラン系カップリング剤を介してジルコニウムアルコキシドを結合させている。その結果、図1に示される修飾銀粒子が生成されてゆく。攪拌時間が経過するに従って、加水分解反応と脱水縮合反応が進行する。反応が終了した後、デカンテーションまたはフィルターで濾過してコーティング溶液22を排除し、乾燥すると、目的とする修飾銀粒子が得られる。このようにして、(6A)及び/又は(7A)に示される修飾銀粒子、即ち(8A)及び/又は(8B)に示される修飾銀粒子が製造される。
この他の修飾銀粒子製造装置20では、ビーカー21にコーティング液22を注入し、この中に銀粒子2を多数投入し、金属の攪拌子25を内蔵して、マグネテイックスターラー26で攪拌子24を回転させて混合攪拌を行う。多数の銀粒子2の表面にシラン系カップリング剤を介してジルコニウムアルコキシドを結合させる。その結果、上述と同様に、図1に示される修飾銀粒子が生成されてゆく。攪拌時間が経過するに従って、加水分解反応と脱水縮合反応が進行する。反応が終了した後、デカンテーションまたはフィルターで濾過してコーティング溶液22を排除し、乾燥すると、目的とする修飾銀粒子が得られる。このようにして、(6A)及び/又は(7A)に示される修飾銀粒子、即ち(8A)及び/又は(8B)に示される修飾銀粒子が製造される。
0.05mol/dm3のジルコニウムブトキシドと1wt%のN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(アミノ系KBM-603)を200mLのエタノールに添加して、70℃で加熱還流しながら溶解させてコーティング液を調製した。このコーティング液を2時間後、室温まで冷却した。このコーティング液100mLに対して湿式還元法で合成した平均粒径0.5μmの銀粒子10gを添加し、攪拌機を用いて室温で10分間混合した。上澄み液をデカンテーションで排除した後、アセトンで溶媒置換して35℃で1日乾燥した。
図13は、上記具体的製法により製造された修飾銀粒子の電子顕微鏡写真である。走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-6510)を用いて撮影されたSEM画像である。銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層が被覆された修飾銀粒子が撮影されており、種々の形状を有することが分かる。この修飾銀粒子は酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層又は酸化ケイ素混合前駆体層と酸化ジルコニウム前駆体層の2層の被覆層により銀粒子単体よりも耐熱性が格段に増強されている。換言すると、銀粒子の表面にシラン系カップリング剤を含むジルコニウムアルコキシドをコーティングすることで銀粒子へ酸化物層を強固に被覆し、更に、熱処理により酸化物層を多孔質化させることで、導電パスを確保して電気的特性を維持しながら耐熱性を向上させることに成功した。
製造された修飾銀粒子を、エチルセルロースをブチルカルビトールアセテートに溶かしたビヒクルと混合して導電性ペーストを調製した。修飾銀粒子、エチルセルロース及びブチルカルビトールアセテートの混合比は、重量比で85wt%:2wt%:13wt%とした。製造された導電性ペーストの粘度は約200Pa・sに調製した。
上記導電性ペーストをペットフィルム上にドクターブレードで約250μmの膜厚で塗工した後、100℃で2時間乾燥した。ペットフィルムから膜を剥がし、13mmφの円盤型にくり抜いた試料を熱機械分析(リガクTMA8310)で900℃まで昇温させ、体積収縮率を測定した。
図14は導電性ペーストの収縮曲線図であり、(a)は攪拌時間が10分で生成した本発明の修飾銀粒子、(b)は攪拌時間が14時間で生成した本発明の修飾銀粒子、(c)は湿式還元法で製造した従来の銀粒子である。(c)は220℃から収縮が始まっているのに比べて、(a)・(b)は500℃から収縮が始まっており、コーティング層により体積収縮抑制効果が強力に発現していることが証明された。
上記導電性ペーストをペットフィルム上にドクターブレードで約250μmの膜厚で塗工した後、100℃で2時間乾燥した。ペットフィルムから膜を剥がし、13mmφの円盤型にくり抜いた試料を10℃/minで900℃まで昇温させた。試料に白金電極を付けマルチメーター(三菱化学MCP-T360)で電気抵抗率を測定した。
図15は電気抵抗率の温度変化図であり、黒丸は攪拌時間が10分で生成した本発明の修飾銀粒子、黒四角は攪拌時間が14時間で生成した本発明の修飾銀粒子、黒三角は従来の湿式還元法で製造した銀粒子である。本発明の修飾銀粒子は500℃では電気抵抗率が高いものの、900℃では従来の純粋な銀粒子とほぼ同じになった。従って、本発明の修飾銀粒子は低い加熱温度では高電気抵抗率であるが、銀の焼結温度では純粋銀粒子と同程度の電気抵抗率に低下し、高導電性を有することが分かった。
図16は電気抵抗率の温度変化表で、図15に示された電気抵抗率の温度変化図の基礎データである。10分処理の本発明の修飾銀粒子と14時間処理の本発明の修飾銀粒子と従来の銀粒子を対比している。この表からも分かるように、本発明の修飾銀粒子は500℃では電気抵抗率が高いものの、900℃では従来の純粋な銀粒子とほぼ同程度であることが証明された。
図17は本発明の修飾銀焼結構造(17A)と従来銀焼結構造(17B)の電子顕微鏡写真である。
上記導電性ペーストをペットフィルム上にドクターブレードで約250μmの膜厚で塗工した後、100℃で2時間乾燥した。ペットフィルムから膜を剥がし、13mmφの円盤型にくり抜いた試料を10℃/minで900℃まで昇温させた。そして、試料を室温まで冷却させた後、試料表面の電子顕微鏡写真を撮影した。走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-6510)を用いて撮影されたSEM画像である。
従来銀粒子を用いた従来銀焼結構造(17B)では、その結晶粒界から銀粒子が大きく結晶成長していることが分かる。これに対し、本発明のコーティングした修飾銀粒子を用いた修飾銀焼結構造(17A)は、900℃の焼結温度であっても、結晶粒子の成長がほとんど起きておらず、コーティングにより、結晶成長抑制の効果が確認された。
2 銀粒子
3 酸化ケイ素前駆体層
4 酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層
5 酸化ジルコニウム前駆体層
6 微小細孔
10 修飾銀焼結構造
11 焼成修飾銀粒子
12 焼成銀粒子
13 酸化ケイ素層
14 酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層
15 酸化ジルコニウム層
16 銀導通路
20 修飾銀粒子製造装置
21 ビーカー
22 コーティング液
23 モーター
24 攪拌翼
25 攪拌子
26 マグネテイックスターラー
Claims (3)
- 銀粒子の表面に酸化ケイ素層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた多数の修飾銀粒子が相互に密接して緻密に配置され、隣接する銀粒子と銀粒子が前記酸化ケイ素層と前記酸化ジルコニウム層を貫通する多数の微細な銀導通路により相互に電気的に導通した構造を有することを特徴とする修飾銀焼結構造。
- 銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた多数の修飾銀粒子が相互に密接して緻密に配置され、隣接する銀粒子と銀粒子が前記酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層と前記酸化ジルコニウム層を貫通する多数の微細な銀導通路により相互に電気的に導通した構造を有することを特徴とする修飾銀焼結構造。
- 請求項1又は2に記載の修飾銀焼結構造の製法であり、下記に記載された(1)~(5)のいずれかの修飾銀粒子が選択され、
(1)銀粒子の表面にシラン系カップリング剤を介してジルコニウムアルコキシドを結合させた修飾銀粒子、
(2)銀粒子の表面に酸化ケイ素前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子、
(3)銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合前駆体層を介して酸化ジルコニウム前駆体層を被覆させた修飾銀粒子、
(4)銀粒子の表面に酸化ケイ素層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた修飾銀粒子
、
(5)銀粒子の表面に酸化ジルコニウム・酸化ケイ素混合層を介して酸化ジルコニウム層を被覆させた修飾銀粒子、
上記選択された修飾銀粒子を多数使用し、前記修飾銀粒子を加熱して隣接する銀粒子と銀粒子から溶融銀を流動させて微細な銀導通路を形成し、銀粒子と銀粒子を前記銀導通路により相互に電気的に導通接続させて前記修飾銀焼結構造を形成することを特徴とする修飾銀焼結構造の製法。
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