JP2006028565A - 金属質粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属質粒子の表面に有機金属化合物の加水分解・重縮合物の層を歩留り良く被覆し、金属質粒子の耐酸化性などをより一層改善する。
【解決手段】金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁した懸濁液に、アルコキシシランなどの加水分解性有機金属化合物を混合した後、溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないような状態(低温状態、密閉状態あるいは還流状態)で水を混合して、該有機金属化合物を加水分解し、次いで、前記の懸濁液に、開放状態(半開放状態を含む)で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を混合し該有機金属化合物の加水分解生成物を重縮合して、金属質粒子の表面に被覆させる。
【選択図】なし
【解決手段】金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁した懸濁液に、アルコキシシランなどの加水分解性有機金属化合物を混合した後、溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないような状態(低温状態、密閉状態あるいは還流状態)で水を混合して、該有機金属化合物を加水分解し、次いで、前記の懸濁液に、開放状態(半開放状態を含む)で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を混合し該有機金属化合物の加水分解生成物を重縮合して、金属質粒子の表面に被覆させる。
【選択図】なし
Description
本発明は、金属質粒子の製造方法に関し、詳細には金属質粒子の耐酸化性などを改善するために金属質粒子の表面に有機金属化合物の加水分解・重縮合物を被覆する方法に関する。
金属質粒子は電気伝導性、熱伝導性、金属光沢性など優れた性質を有することから種々の用途に利用されている。例えば、銀、パラジウム、ニッケル、銅などの金属質粒子は良好な電気伝導性を有する材料であり、コンデンサー等の外部電極、プリント配線板の回路等の電極部材や、各種電気的接点部材などの電気的導通を確保するための材料として幅広く用いられている。特にニッケル、銅などの金属質粒子は廉価な材料であることから近年、積層セラミックスコンデンサーの内部電極にも用いられている。
積層セラミックスコンデンサーは、電解コンデンサー、フィルムコンデンサー等他の形式のコンデンサーと比較して、大容量が得られ易く、実装性に優れ、安全性・安定性が高いので、急速に普及している。最近の電子機器の小型化に伴い、積層セラミックスコンデンサーも小型化する方向にあるが、大容量を維持するには、セラミックスシートの積層数を減らさずに小型化する必要があり、強度等の点でシートの薄層化には限界があるため、パラジウム、ニッケルや銅などの微細な金属質粒子を用い内部電極を薄層化することで、積層セラミックスコンデンサーの小型化を実現している。
このような分野では、一般的に、金属質粒子をエポキシ樹脂、フェノール樹脂などのバインダーと混合してペースト化あるいは塗料化し、この金属ペースト・塗料を、例えば、プリント配線板であれば、基板にスクリーン印刷した後、積層セラミックスコンデンサーであれば、薄層のセラミックスシート上に塗布し、シートを積層した後、それぞれ加熱焼成して電気回路、電極等を形成している。
電気的導通を確保するには、用いる金属質粒子に金属酸化物ができる限り含まれないものが良いが、金属質粒子は非常に酸化され易く、加熱焼成を窒素ガス等の不活性ガスを用いて非酸化性雰囲気下で行っても、金属質粒子表面の酸化を十分に防げず、所望の性能の電極等が得られないという問題がある。また、金属質粒子を光沢顔料として用いるには、金属質粒子をバインダーと混合して塗料化し、この金属塗料を被塗面に塗布して塗膜を形成して用いられるが、塗料化工程や塗膜中で徐々に酸化されると光沢性の低下、色相の不均一化が生じるため、金属質粒子表面の酸化を防止する必要がある。
金属質粒子の酸化を防止するためには、金属質粒子の表面に無機化合物等の処理が行われており、例えば、水溶性の有機溶媒中で、金属銅粉、アルコキシシラン、水を反応させてアルコキシシランの加水分解生成物を生成させ、得られた懸濁液にゲル化剤を添加して銅粉の粒子表面にSiO2ゲルコーティング膜を被着させる技術が提案されている(特許文献1参照)。また一方、金属銅微粒子が液中に分散しているスラリーに、珪酸のアルカリ金属塩等を含む水溶液を添加し、次いで酸もしくはアルカリでpHを調整して、該水溶性塩から誘導される金属酸化物や複合酸化物を銅微粒子表面に固着させて、熱収縮特定を改善する技術が提案されている(特許文献2参照)。
金属質粒子の表面に珪素酸化物等を被覆することにより、金属質粒子と大気中の酸素との接触はある程度回避され、金属質粒子の耐酸化性は改善されるものの、その効果は十分ではなく更なる改善が求められている。即ち、特許文献1記載の技術では、銅粒子の存在下にオルガノシランを加水分解し、次いで、ゲル化剤を添加して銅粒子表面にSiO2系ゲルコーティング膜を形成しているが、加水分解工程、ゲル化工程とも液組成を実質的に変化させないように通常密閉状態で行われ、そのため、得られるSiO2系ゲルコーティング膜は極薄であり、十分な厚みの膜形成ができないためその効果が十分ではない。一方、特許文献2記載の技術では、珪酸のアルカリ金属塩を中和して析出させるため、金属銅粒子の表面には多孔質のシリカ層が形成され、耐酸化性の効果は不十分であり、所望の耐酸化性は得られていない。
そこで、本発明は、より一層耐酸化性に優れた金属質粒子を製造する方法を提供する。
そこで、本発明は、より一層耐酸化性に優れた金属質粒子を製造する方法を提供する。
本発明者は、金属質粒子の耐酸化性をより改善するために、金属質粒子全面に緻密な被覆層を均質に形成させる必要があると考え、鋭意研究を重ねた結果、金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁した懸濁液に、被覆層を形成するための加水分解性有機金属化合物と水とを混合して、加水分解性有機金属化合物を加水分解する工程を溶媒として用いたアルコールが実質的に揮散しない通常の状態、具体的には、低温状態、密閉状態あるいは還流状態で行った後、溶媒として用いたアルコールを揮散させる開放状態で塩基触媒あるいは酸触媒を混合すると、アルコール濃度の減少に伴い有機金属化合物の加水分解生成物が速やかに重縮合して、金属質粒子の表面全体に緻密な被覆層を均質に形成し、耐酸化性が改善できることなどを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、(1)金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁した懸濁液に加水分解性有機金属化合物を混合した後、溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないような状態(低温状態、密閉状態あるいは還流状態)で水を混合して、該有機金属化合物を加水分解する第一工程、次いで、第一工程で得られた懸濁液に、開放状態(半開放状態を含む)で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を混合し該有機金属化合物の加水分解生成物を重縮合して、金属質粒子の表面に被覆させる第二工程を経ることを特徴とする有機金属化合物の加水分解・重縮合物を被覆した金属質粒子の製造方法、または、(2)金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁した懸濁液に、溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないような状態(低温状態、密閉状態あるいは還流状態)で加水分解性有機金属化合物と水を混合して、該有機金属化合物を加水分解する第一工程、次いで、第一工程で得られた懸濁液に、開放状態(半開放状態を含む)で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を混合し該有機金属化合物の加水分解生成物を重縮合して、金属質粒子の表面に被覆させる第二工程を経ることを特徴とする有機金属化合物の加水分解・重縮合物を被覆した金属質粒子の製造方法である。
本発明は、金属質粒子の表面に有機金属化合物の加水分解・重縮合物の層が歩留り良く被覆され、金属質粒子全面に均質な厚い被覆層が形成されるので、金属質粒子の耐酸化性をより一層改善できる。このため、比表面積が大きい微細な金属質粒子にも効果が高く、コンデンサー等の外部電極や内部電極、プリント配線板の回路等の電極部材や、各種電気的接点部材などの電気的導通を確保するための材料として幅広く用いることができる。特に、酸化が著しい金属銅質粒子にも適用でき、本発明で得られた金属銅質粒子をコンデンサー等の外部電極や内部電極、プリント配線板の回路等の電極部材に適用すると、薄膜で高密度の電極が得られる。また、バインダー樹脂や溶媒との親和性を改良する効果もあり、分散が容易で、少量のバインダー樹脂、溶媒でペースト化や塗料化が容易にできる。
本発明は、金属質粒子の存在下、加水分解性有機金属化合物を加水分解する第一工程、次いで、有機金属化合物の加水分解生成物を重縮合して金属質粒子の表面に被覆させる第二工程を経る金属質粒子の処理方法であって、第一工程を溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないような状態で水を混合して加水分解し、次の第二工程を開放状態で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を混合して重縮合することが重要である。また、このようにして得られた金属質粒子を80〜250℃の範囲で加熱する第三工程を追加することもできる。
本発明において、アルコールが実質的に揮散しない状態とは、溶媒として用いたアルコールが蒸発しない温度を保持した状態(これを本発明では低温状態と呼ぶ)、アルコールが蒸発しても反応容器外に飛散しない状態(これを本発明では密閉状態と呼ぶ)、あるいは、反応容器の上部に冷却器をつけて気化したアルコールを凝縮させて液状とし、再びもとの反応容器内にもどす操作を行っている状態(これを本発明では還流状態と呼ぶ)をいい、反応容器内のアルコール量は実質的に減少しない。一方、アルコールが揮散する状態とは、蒸発したアルコールが反応容器外に飛散したり、アルコール蒸気を冷却器等で凝縮したとしても反応容器内にもどさず、反応容器内のアルコール量が減少する状態をいい、このような状態を開放状態と呼ぶ。この開放状態には、反応容器の一部を開放したり、凝縮したアルコールの一部を反応容器にもどし残りのアルコールはもどさない状態、これらを半開放状態というが、このような半開放状態を含む。
表面に被覆処理を施す金属質粒子とは、金属単体だけを構成成分とした金属粒子のほかに、金属粒子に酸素、硫黄、リン、水素等の原子が製造方法由来の不純物として含まれているもの、あるいは金属粒子の表面にその金属の化合物またはその他の無機化合物や有機化合物がすでに被覆しているものを含み、少なくとも金属の性質を有するものすべてを含む意味で用いている。金属質粒子を構成する金属種には特に制限はなく、遷移金属元素、典型金属元素などを対象とすることができるが、周期表VIII族(鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)、IB族(銅、銀、金)であれば、多くの用途に用いることができる。その中でも、金、銀、白金、パラジウム、銅、ニッケルは導電性に優れているので好ましく、銀、銅、ニッケルがより好ましく、銅が特に好ましい。金属種はこれらから一種を選択して用いても良く、二種以上の金属種を組み合わせて用いても良く、具体的には二種以上の金属を合金にしたり、一種以上の金属を金属粒子の表面に被覆させて用いることができる。
金属質粒子の形状は球状、板状、フレーク状、角形状などあらゆる形状のものであっても良く、優れた充填性を有するほぼ真球の球状粒子であるのが好ましい。また、金属質粒子の大きさはどのようなものであっても良く、平均粒子径として10μm以下であればペースト、インキ、塗料に用いられ易い。特に、0.005〜1μmの範囲であると、欠陥がほとんどない高密度の電極が得られ易く、しかも塗料等への分散性に優れているので、好ましい。より好ましい範囲は、0.05〜1.0μmであり、さらに好ましい範囲は0.1〜1.0μmであり、最も好ましい範囲は0.2〜1.0μmである。平均粒子径は電子顕微鏡法により測定した累積50%径で表される。金属の粒子形状は電子顕微鏡で観察される。このような金属質粒子は、公知の方法で得られたものを用いることができ、例えば、アトマイズ法等の気相で金属化合物を還元反応する方法、湿式還元法の液相で金属化合物を還元する方法等が挙げられる。中でも、特別な設備を要しない湿式還元法が工業的に有利である。
本発明においてはまず、金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁させる。金属質粒子は粉体の状態のものや水や有機溶媒にすでに分散した状態のものなどを用いることができ、それらをアルコール系溶媒と混合して懸濁させる。溶媒として用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール、メトキシエタノール、メトキシプロパノールなどのエーテル基含有アルコールなどが挙げられ、それらの一種を用いても二種以上を混合して用いても良い。本発明では、第二工程でアルコールを揮散させることを考えると低い温度で揮散が可能なように、沸点が100℃以下のアルコールが好ましい。アルコール系溶媒としては、前記のようなアルコール類やそれらの工業用アルコールを溶媒として用いるほかに、有機溶媒を含有させても良く、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類を混合して用いても良い。アルコール系溶媒中のアルコール含有量は通常約80〜100重量%程度であり、好ましくは90〜100重量%、より好ましくは95〜100重量%である。アルコール系溶媒には水分をできるだけ含まないように予め水分を除いておくのが良い。金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁させる際には、超音波を照射したり、コロイドミル、クイックミルなどの湿式ミルで解砕して、金属質粒子を充分分散しておくのが好ましい。
次に、本発明の第一工程では、有機金属化合物の加水分解反応を溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないようにして行う。具体的には、(a)金属質粒子のアルコール系懸濁液に加水分解性有機金属化合物を混合した後、水を徐々に添加して加水分解する方法、(b)金属質粒子のアルコール系懸濁液に、加水分解性有機金属化合物と水をそれぞれ徐々に添加して加水分解する方法があり、加水分解反応の均一化の観点から(a)の方法が好ましい。いずれの方法においても、溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないように低温状態、密閉状態あるいは還流状態で行うことが重要である。
被覆層を形成するための加水分解性有機金属化合物としては特に限定されず、水によって加水分解され、重縮合する化合物であれば良く、それを一種または二種以上を組み合わせて用いて所望の組成を形成することができる。例えば、珪素、ホウ素、チタン、ジルコニウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、アルミニウム、マンガン、コバルトなどの金属のアルコキシド、アセチルアセトナトや酢酸塩等の化合物、または前記化合物モノマーを部分縮合したオリゴマーなどを用いることができ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、フルオロジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、チタンイソプロポキシド、ジルコニウムプロポキシド、バリウムプロポキシド等の金属アルコキシド、ビスアセチルアセトナトマンガン、ビスアセチルアセトナトコバルト、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトコバルト等のアセチルアセトナトなどが挙げられる。このような有機金属化合物をそのままの状態で金属質粒子のアルコール系懸濁液に添加し混合しても良いし、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類や水に希釈または溶解して添加しても良い。加水分解性有機金属化合物の使用量は、金属質粒子に対し、金属換算のモル比で0.01〜1程度であり、0.05〜0.5程度であれば優れた耐酸化性が得られるので好ましい。
有機金属化合物として、耐酸化性を一層改善できる点から有機珪素化合物が好ましく、アルコキシシランは加水分解反応を制御し易いのでより好ましい。アルコキシシランは、化学式:R'4−nSiORn(R、R'は同種または異種のアルキル基、nは1〜4の整数)で表される化合物や、それを部分縮合させたオリゴマーを包含する化合物である。前記化学式で表されるアルコキシシランは、反応性を有するアルコキシ基の数が多い、例えばnが4のテトラアルコキシランが好ましく、Rの分子量が小さいと加水分解が進み易いので、例えば、テトラメトキシラン、テトラエトキシラン等がさらに好ましい。また、オリゴマーを用いると、モノマーに比べ加水分解・縮重合の速度制御や取扱いが容易であるため好ましく、平均重合度が3〜10程度のものがより好ましい。
有機金属化合物を加水分解するため懸濁液に水を添加し混合するが、水をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類に希釈して添加しても良い。水添加量は適宜設定することができ、有機金属化合物1モルに対して1〜24モル程度が適当である。また、加水分解のその他の条件は適宜設定することができ、反応時間は水添加時間で表すと30分〜7時間程度が適当であり、また、反応温度は室温〜(溶媒として用いたアルコールの沸点)の範囲が適当であり、室温〜50℃程度がより適当である。水を添加した後加水分解生成物を均質化させるために、その状態を保持しながら熟成しても良く、熟成時間は30分〜5時間程度が適当である。なお、この加水分解反応の際に、保護コロイド、解膠剤、分散剤のような付加的な成分を添加しておいても良い。
次に、本発明の第二工程では、有機金属化合物の加水分解生成物の重縮合反応を溶媒として用いたアルコールを揮散させながら行うことが重要である。具体的には、第一工程で得られた懸濁液に、前記の開放状態(半開放状態を含む)で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を徐々に添加し混合して重縮合反応を行い、金属質粒子の表面に被覆させる。アルコールの揮散は懸濁液中のすべての量を短時間に揮散させる必要はなく、懸濁液中の一部のアルコールを反応の間徐々に揮散させるのが好ましい。アルコールの揮散量は、反応容器内のすべてのアルコールに対して少なくとも20重量%とすると重縮合反応が進み易く、25〜80重量%程度が好ましく、30〜60重量%程度の量であると重縮合反応が速やかに進むためより好ましい。そのためには開放状態の程度、反応温度、反応時間を制御して行うことができる。反応温度は溶媒として用いたアルコールが揮散する程度の温度範囲で適宜設定することができ、室温〜(溶媒として用いたアルコールの沸点)の範囲が適当であり、室温〜50℃程度がより適当である。反応時間を触媒添加時間で表すと30分〜5時間程度が適当である。また、触媒を添加した後重縮合生成物を均質化させるために、その開放状態(半開放状態を含む)を保持しながら熟成しても良く、熟成時間は30分〜5時間程度が適当である。
重縮合の触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基触媒、あるいは、塩酸、硫酸、燐酸などの酸触媒を用いることができ、触媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類や水に希釈して添加しても良い。触媒添加量は適宜設定することができ、有機金属化合物1モルに対して0.05〜1.0モル程度が適当である。
このようにして金属質粒子を得た後、必要に応じて適宜、ろ別、洗浄、乾燥を行い、またさらに必要に応じて粉砕する。乾燥は金属質粒子が酸化し難いように、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の非酸化性ガス(不活性ガス)の雰囲気下で行うのが好ましい。また、得られた金属質粒子を80〜250℃の範囲で加熱する第三工程を行うと、未反応の有機金属化合物を除去でき、より耐酸化性を改善できるため、好ましい。この加熱は金属質粒子が酸化し難いように、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の非酸化性ガス(不活性ガス)の雰囲気下で行うのが好ましく、加熱時間は適宜設定することができ、1〜30時間程度が適当である。
本発明では、前記の第一工程、第二工程、必要に応じて第三工程を経ることにより、金属質粒子の表面に有機金属化合物の加水分解・重縮合物を歩留り良く被覆することができ、溶媒として用いたアルコールの揮散量などを調整することにより60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%の歩留りを確保することができる。
本発明の製造方法で得た金属質粒子は、必要に応じて溶媒あるいはバインダー樹脂と混合して、金属ペースト、金属インキあるいは金属塗料(金属インク)などの流動性を有する組成物にして用いられる。溶媒は用途に応じて適宜選択することができ、例えば、比較的高沸点の非極性溶剤あるいは低極性溶剤、具体的には、テルピネオール、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン等を用いることができる。また、バインダー樹脂も用途に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができ、フェノール樹脂、エポキシ樹脂は、基板との密着性が良好であるので、樹脂成分としてより好ましいものである。溶媒、バインダー樹脂の配合量は用途に応じて適宜設定することができ、例えば、金属質粒子100重量部に対して、溶媒は1〜500重量部程度、バインダー樹脂は1〜50重量部程度とすることができる。この流動性組成物には、粘度調整剤等の流動性調整剤やガラスなどの各種添加剤を配合しても良い。
このような流動性組成物は、通常の方法により基板に塗布後、加熱焼成して、積層セラミックスコンデンサーの内部電極、プリント配線基板の回路等や、その他の電極、金属塗膜を製造するのに用いることができる。本発明の金属質粒子は耐酸化性に優れているので、これを用いて製造した前記の電極は電気特性の優れたものとなる。
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
500mLのマヨネーズ瓶にエタノール(純度95重量%)200g、湿式法で製造した金属銅粉(乾燥品)50gとメディアとしてジルコニアビーズを投入後、クイックミルで湿式粉砕を60分間行った。メディア分離後の金属銅エタノール溶液を4つ口フラスコに移し、室温まで冷却した。そこへテトラエトキシシラン(TEOS)52gを添加し、密閉状態で窒素ガスを吹き込みながら撹拌・混合状態に保持した。一方、別容器にエタノール(純度95重量%)100gを量りとった中に純水90gを混合し、水−エタノール混合溶液を準備した。
次いで、第一工程を次のようにして行った。調製した水−エタノール混合溶液をチューブポンプを用いて密閉状態の金属銅エタノール溶液中に室温下で約1時間かけて滴下した。添加完了後、溶液を50℃に昇温し、その後、還流条件下で4時間の熟成を行った。
続いて、第二工程を次のようにして行った。前記熟成スラリーを別容器(上面の開口面積が大きいもの)に移液して開放状態にした後50℃に昇温し、別に準備したエタノール(純度95重量%)45gにアンモニア(28%)10gを添加した触媒−アルコール混合溶液をチューブポンプを用いて約1時間かけて滴下した。添加完了後、開放状態で50℃、3時間の熟成を行った。
反応終了後のスラリーを室温まで冷却したのち真空濾過を行い、その回収ケーキを60℃の窒素雰囲気中で約8時間乾燥の後、粗粉砕して、本発明の金属銅質粒子(試料A)を得た。
実施例1の第一工程では使用したエタノールは実質的に揮散せず、次の第二工程では使用した全エタノールの約60重量%が揮散した。また、試料Aは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは仕込み量に対して、SiO2基準で約87重量%であった。
500mLのマヨネーズ瓶にエタノール(純度95重量%)200g、湿式法で製造した金属銅粉(乾燥品)50gとメディアとしてジルコニアビーズを投入後、クイックミルで湿式粉砕を60分間行った。メディア分離後の金属銅エタノール溶液を4つ口フラスコに移し、室温まで冷却した。そこへテトラエトキシシラン(TEOS)52gを添加し、密閉状態で窒素ガスを吹き込みながら撹拌・混合状態に保持した。一方、別容器にエタノール(純度95重量%)100gを量りとった中に純水90gを混合し、水−エタノール混合溶液を準備した。
次いで、第一工程を次のようにして行った。調製した水−エタノール混合溶液をチューブポンプを用いて密閉状態の金属銅エタノール溶液中に室温下で約1時間かけて滴下した。添加完了後、溶液を50℃に昇温し、その後、還流条件下で4時間の熟成を行った。
続いて、第二工程を次のようにして行った。前記熟成スラリーを別容器(上面の開口面積が大きいもの)に移液して開放状態にした後50℃に昇温し、別に準備したエタノール(純度95重量%)45gにアンモニア(28%)10gを添加した触媒−アルコール混合溶液をチューブポンプを用いて約1時間かけて滴下した。添加完了後、開放状態で50℃、3時間の熟成を行った。
反応終了後のスラリーを室温まで冷却したのち真空濾過を行い、その回収ケーキを60℃の窒素雰囲気中で約8時間乾燥の後、粗粉砕して、本発明の金属銅質粒子(試料A)を得た。
実施例1の第一工程では使用したエタノールは実質的に揮散せず、次の第二工程では使用した全エタノールの約60重量%が揮散した。また、試料Aは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは仕込み量に対して、SiO2基準で約87重量%であった。
実施例2〜4
実施例1において、第二工程のアンモニアの量、反応温度を表1に記載の条件とすること以外は実施例1と同様にして、本発明の金属銅質粒子(試料B〜D)を得た。
実施例2〜4の第一工程では使用したエタノールは実質的に揮散せず、次の第二工程では使用した全エタノールの約60重量%が揮散した。また、試料B〜Dはいずれも、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。それぞれのシリカの歩留りは表1に示めすように、約72〜92重量%程度であった。
実施例1において、第二工程のアンモニアの量、反応温度を表1に記載の条件とすること以外は実施例1と同様にして、本発明の金属銅質粒子(試料B〜D)を得た。
実施例2〜4の第一工程では使用したエタノールは実質的に揮散せず、次の第二工程では使用した全エタノールの約60重量%が揮散した。また、試料B〜Dはいずれも、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。それぞれのシリカの歩留りは表1に示めすように、約72〜92重量%程度であった。
実施例5
実施例1の条件で作製した試料Aを窒素雰囲気下200℃、15時間加熱して、本発明の金属銅質粒子(試料E)を得た。
試料Eは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは実施例1と同じであり、仕込み量に対してSiO2基準で約87重量%であった。
実施例1の条件で作製した試料Aを窒素雰囲気下200℃、15時間加熱して、本発明の金属銅質粒子(試料E)を得た。
試料Eは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは実施例1と同じであり、仕込み量に対してSiO2基準で約87重量%であった。
比較例1
実施例1と同様に密閉状態の金属銅エタノール溶液を調製し、この中にテトラエトキシシラン(TEOS)52gを添加した後、表1の記載のように調製した水−アンモニア−エタノール混合溶液をチューブポンプを用いて室温下約1時間かけて滴下した。添加完了後、溶液を50℃に昇温し、その後、還流条件下で4時間の熟成を行った。
反応終了後のスラリーを室温まで冷却したのち真空濾過を行い、その回収ケーキを60℃の窒素雰囲気中で約8時間乾燥の後、粗粉砕して、金属銅質粒子(試料F)を得た。
比較例1では使用した全エタノールは反応中実質的に揮散していなかった。また、試料Fは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは仕込み量に対して、SiO2基準で約56重量%であった。
実施例1と同様に密閉状態の金属銅エタノール溶液を調製し、この中にテトラエトキシシラン(TEOS)52gを添加した後、表1の記載のように調製した水−アンモニア−エタノール混合溶液をチューブポンプを用いて室温下約1時間かけて滴下した。添加完了後、溶液を50℃に昇温し、その後、還流条件下で4時間の熟成を行った。
反応終了後のスラリーを室温まで冷却したのち真空濾過を行い、その回収ケーキを60℃の窒素雰囲気中で約8時間乾燥の後、粗粉砕して、金属銅質粒子(試料F)を得た。
比較例1では使用した全エタノールは反応中実質的に揮散していなかった。また、試料Fは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは仕込み量に対して、SiO2基準で約56重量%であった。
比較例2
実施例1において、第二工程を反応・熟成終了まで密閉状態で行ったこと以外は、同様にして金属銅質粒子(試料G)を得た。
比較例2では使用した全エタノールは反応中実質的に揮散していなかった。また、試料Gは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは仕込み量に対して、SiO2基準で約15重量%であった。
実施例1において、第二工程を反応・熟成終了まで密閉状態で行ったこと以外は、同様にして金属銅質粒子(試料G)を得た。
比較例2では使用した全エタノールは反応中実質的に揮散していなかった。また、試料Gは、テトラエトキシシランの加水分解・重縮合物であるシリカが被覆されていた。そのシリカの歩留りは仕込み量に対して、SiO2基準で約15重量%であった。
耐酸化性の評価
実施例1〜5、比較例1〜2で得られた試料A〜Gならびに実施例1で用いた湿式法で製造した金属銅粉(無処理1)10gを、窒素ガス雰囲気下60℃の温度で10時間加熱した後、さらに酸化性空気雰囲気下100℃、200℃、300℃、400℃、500℃の温度で、それぞれ20分間加熱焼成した後の重量を測定し、重量増加率を算出した。結果を表2に示す。重量増加が少ない程、耐酸化性が優れていることを示しており、本発明の金属銅質粒子は耐酸化性が優れていることがわかる。特に、加熱処理を施した本発明の金属銅質粒子は、400℃の温度の焼成でもほとんど重量増加が起こらない。
実施例1〜5、比較例1〜2で得られた試料A〜Gならびに実施例1で用いた湿式法で製造した金属銅粉(無処理1)10gを、窒素ガス雰囲気下60℃の温度で10時間加熱した後、さらに酸化性空気雰囲気下100℃、200℃、300℃、400℃、500℃の温度で、それぞれ20分間加熱焼成した後の重量を測定し、重量増加率を算出した。結果を表2に示す。重量増加が少ない程、耐酸化性が優れていることを示しており、本発明の金属銅質粒子は耐酸化性が優れていることがわかる。特に、加熱処理を施した本発明の金属銅質粒子は、400℃の温度の焼成でもほとんど重量増加が起こらない。
実施例では金属銅質粒子を用いたが、本発明の方法はそのほかの金属質粒子にも適応でき、また、テトラエトキシシラン以外の有機金属化合物を用いることができることを確認した。
本発明によると耐酸化性などに優れた金属質粒子を簡便に製造することができ、金属質粒子を種々の用途に利用することができる。例えば、コンデンサー等の外部電極や内部電極、プリント配線板の回路等の電極部材や、各種電気的接点部材などの電気的導通を確保するための材料として有用である。特に、本発明で得られた金属銅質粒子を銅ペースト、銅インキ、銅塗料(銅インク)等の流動性組成物にして、例えば、積層セラミックスコンデンサーの内部電極、プリント配線基板の回路等や、その他の電極に用いると、電気特性の優れたものが得られると期待される。
Claims (6)
- 金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁した懸濁液に加水分解性有機金属化合物を混合した後、溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないような状態で水を混合して、該有機金属化合物を加水分解する第一工程、次いで、第一工程で得られた懸濁液に、開放状態で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を混合し該有機金属化合物の加水分解生成物を重縮合して、金属質粒子の表面に被覆させる第二工程を経ることを特徴とする有機金属化合物の加水分解・重縮合物を被覆した金属質粒子の製造方法。
- 金属質粒子をアルコール系溶媒に懸濁した懸濁液に、溶媒として用いたアルコールを実質的に揮散しないような状態で加水分解性有機金属化合物と水を混合して、該有機金属化合物を加水分解する第一工程、次いで、第一工程で得られた懸濁液に、開放状態で溶媒として用いたアルコールを揮散させながら、塩基触媒あるいは酸触媒を混合し該有機金属化合物の加水分解生成物を重縮合して、金属質粒子の表面に被覆させる第二工程を経ることを特徴とする有機金属化合物の加水分解・重縮合物を被覆した金属質粒子の製造方法。
- 第二工程で得られた金属質粒子を80〜250℃の範囲で加熱する第三工程を経ることを特徴とする請求項1または2に記載の金属質粒子の製造方法。
- 加水分解性有機金属化合物として加水分解性を有する有機珪素化合物を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属質粒子の製造方法。
- 加水分解性有機珪素化合物としてアルコキシシランを用いることを特徴とする請求項4に記載の金属質粒子の製造方法。
- 金属質粒子として金属銅質粒子を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属質粒子の製造方法。
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- 2004-07-14 JP JP2004207381A patent/JP2006028565A/ja active Pending
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