JP7167385B1 - 銅合金材ならびにそれを用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器 - Google Patents

銅合金材ならびにそれを用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器 Download PDF

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Abstract

優れたプレス打ち抜き加工性を有するとともに、十分に高い体積抵抗率を有し、抵抗温度係数(TCR)が負であって絶対値が小さく、かつ対銅熱起電力(EMF)の絶対値が小さい銅合金材ならびにそれを用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器を提供する。銅合金材は、Mn:20.0質量%以上35.0質量%以下、Ni:5.0質量%以上17.0質量%以下、ならびにFeおよびCoのうち1種または2種:合計で0.10質量%以上2.00質量%以下を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、ビッカース硬さ(HV)が115以上275以下の範囲である。

Description

本発明は、銅合金材ならびにそれを用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器に関する。
抵抗器に使用される抵抗材の金属材料には、環境温度が変化しても抵抗器の抵抗が安定するように、その指標である抵抗温度係数(TCR)の絶対値が小さいことが要求される。抵抗温度係数とは、温度による抵抗値の変化の大きさを1℃当たりの百万分率(ppm)で表したものであり、TCR(×10-6/℃)={(R-R)/R}×{1/(T-T)}×10という式で表される。ここで、式中のTは試験温度(℃)、Tは基準温度(℃)、Rは試験温度Tにおける抵抗値(Ω)、Rは基準温度Tにおける抵抗値(Ω)を示す。特に、Cu-Mn-Ni合金やCu-Mn-Sn合金は、TCRが非常に小さいため、抵抗材を構成する合金材料として広く用いられている。
しかしながら、たとえば抵抗材料を用いて回路(パターン)を形成することによって所定の抵抗値になるように設計される抵抗器に、これらのCu-Mn-Ni合金やCu-Mn-Sn合金を抵抗材料として用いた場合には、体積抵抗率が50×10-8(Ω・m)未満と小さいことで、抵抗材料の断面積を小さくして抵抗器の抵抗値を大きくする必要がある。このような抵抗器では、回路に一時的に大電流が流された場合や、常にある程度大きな電流が流され続けるような場合に、断面積の小さな抵抗材料に生じるジュール熱が高くなって発熱し、その結果、抵抗材料が熱により破断(溶断)しやすくなってしまうという不都合があった。
このため、抵抗材料の断面積が小さくなるのを抑制するために、体積抵抗率のより大きな抵抗材料が求められている。
例えば、特許文献1には、Mnを23質量%以上28質量%以下の範囲で含有し、かつNiを9質量%以上13質量%以下の範囲で含有する銅合金において、Mnの質量分率とNiの質量分率を、銅に対する熱起電力が20℃で±1μV/℃より小さくなるように構成することで、50×10-8[Ω・m]以上の高い電気抵抗(体積抵抗率ρ)を得ることができるとともに、銅に対する熱起電力(対銅熱起電力、EMF)が小さく、電気抵抗の温度係数が低く、かつ、固有の電気抵抗の時間に対する高い安定性(時間不変性)を有する銅合金を得ることができるとしている。
また、特許文献2には、Mnを21.0質量%以上30.2質量%以下の範囲で含有し、かつNiを8.2質量%以上11.0質量%以下の範囲で含有する銅合金において、20℃から60℃までの温度範囲におけるTCRの値x[ppm/℃]を-10≦x≦-2または2≦x≦10の範囲にし、かつ、体積抵抗率ρを80×10-8[Ω・m]以上115×10-8[Ω・m]以下にすることで、抵抗材料を用いたチップ抵抗器などの抵抗器の回路の断面積が小さくなるのを抑制するとともに、抵抗材料のジュール熱が高くなるのを抑制することができるとしている。
特表2016-528376号公報 特開2017-053015号公報
近年の電気電子部品の小型高集積化に伴い、抵抗器やそれに用いられる抵抗材料も小型化が進んでいる。抵抗器に用いられる抵抗材料は、一般に、プレス打ち抜き加工などの切断加工を施すことにより形成されるため、抵抗値のばらつきを小さくするには、銅合金材が優れたプレス打ち抜き加工性を有することが求められる。ここで、優れたプレス打ち抜き加工性を銅合金材にもたらすには、プレス打ち抜き加工を行なう際の切断面の寸法精度を高める必要がある。
さらに、近年、電気自動車の電装系などにおいて、シャント抵抗器やチップ抵抗器などの抵抗器として、体積抵抗率ρが大きいもののほか、より高温の使用環境に耐える高精度なものが求められており、このような抵抗器に用いられる銅合金としても、より高温の使用環境に耐える高精度なものが求められている。より具体的には、体積抵抗率ρが大きく、かつ、常温から高温までの広い温度範囲での使用環境も考慮したときに、抵抗温度係数(TCR)が負であって絶対値が小さく、かつ対銅熱起電力(EMF)の絶対値が小さい銅合金材が求められている。
したがって、本発明の目的は、優れたプレス打ち抜き加工性を有するとともに、十分に高い体積抵抗率を有し、抵抗温度係数(TCR)が負であって絶対値が小さく、かつ対銅熱起電力(EMF)の絶対値が小さい銅合金材ならびにそれを用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器を提供することにある。
本発明者らは、Mn:20.0質量%以上35.0質量%以下、Ni:5.0質量%以上17.0質量%以下、ならびにFeおよびCoのうち1種または2種:合計で0.10質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有するとともに、ビッカース硬さ(HV)が115以上275以下の範囲である銅合金材によることで、例えば抵抗材料として十分に高い体積抵抗率ρを有するとともに、常温(例えば20℃)から高温(例えば150℃)までの広い温度範囲での使用環境も考慮した、抵抗温度係数(TCR)が負でありかつ絶対値が小さく、対銅熱起電力(EMF)の絶対値も小さく、かつプレス打ち抜き加工性に優れた銅合金材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)Mn:20.0質量%以上 35.0質量%以下、Ni:5.0質量%以上17.0質量%以下、ならびにFeおよびCoのうち1種または2種:合計で0.10質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、ビッカース硬さ(HV)が115以上275以下の範囲である、銅合金材。
(2)前記合金組成は、Mn:20.0質量%以上30.0質量%以下を含有する、上記(1)に記載の銅合金材。
(3) 前記合金組成は、Co:0.01質量%以上1.50質量%以下を含有し、かつFe:0質量%以上0.30質量%以下(Feの含有量が0質量%の場合を含む)である、上記(1)または(2)に記載の銅合金材。
(4)前記合金組成は、Sn:0.01質量%以上3.00質量%以下、Zn:0.01質量%以上5.00質量%以下、Cr:0.01質量%以上0.50質量%以下、Ag:0.01質量%以上0.50質量%以下、Al:0.01質量%以上1.00質量%以下、Mg:0.01質量%以上0.50質量%以下、Si:0.01質量%以上0.50質量%以下、およびP:0.01質量%以上0.50質量%以下からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の銅合金材。
(5)前記銅合金材の平均結晶粒径が50μm以下である、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の銅合金材。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の銅合金材からなる、抵抗器用抵抗材料。
(7)上記(6)に記載の抵抗器用抵抗材料を有する、シャント抵抗器またはチップ抵抗器である抵抗器。
本発明によれば、優れたプレス打ち抜き加工性を有するとともに、十分に高い体積抵抗率を有し、抵抗温度係数(TCR)が負であって絶対値が小さく、かつ対銅熱起電力(EMF)の絶対値が小さい銅合金材ならびにそれを用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器を提供することができる。
本発明の銅合金材に対してプレス打ち抜き加工を行なったときの切断面を示す模式図である。 本発明例および比較例の供試材について、対銅熱起電力(EMF)を求める方法を説明するための模式図である。 図3は、本発明例および比較例の銅合金材について、ビッカース硬さ(HV)と、板厚tに対する剪断比の割合(A)の関係を示すグラフであり、ビッカース硬さ(HV)を横軸に、板厚tに対する剪断比の割合(A)を縦軸にしたものである。 本発明例および比較例の銅合金材についてプレス打ち抜き加工を行なったときの切断面について、厚さ方向および幅方向を含む断面で見たときの走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図4(a)は本発明例8の銅合金材の切断面、図4(b)は比較例2の銅合金材の切断面についてのSEM写真である。
以下、本発明の銅合金材の好ましい実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明の合金の成分組成において、「質量%」を単に「%」と示すこともある。
本発明に従う銅合金材は、Mn:20.0質量%以上35.0質量%以下、Ni:5.0質量%以上17.0質量%以下、ならびにFeおよびCoのうち1種または2種:合計で0.10質量%以上2.0質量%以下を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、ビッカース硬さ(HV)が115以上275以下の範囲である。
このように、本発明に従う銅合金材では、Mnを20.0質量%以上35.0質量%以下の範囲で含有し、Niを5.0質量%以上17.0質量%以下の範囲で含有し、かつFeおよびCoのうち1種または2種を合計で0.10質量%以上2.00質量%以下の範囲で含有する銅合金材について、ビッカース硬さ(HV)を115以上275以下の範囲内にすることで、銅合金材に対してプレス打ち抜き加工を行なう際の寸法精度を高めることができる。
加えて、本発明に従う銅合金材では、Mnを20.0質量%以上35.0質量%以下の範囲で含有し、Niを5.0質量%以上17.0質量%以下の範囲で含有するとともに、FeおよびCoのうち1種または2種を合計で0.10質量%以上2.00質量%以下の範囲で含有することで、FeやCoを含有しない場合と比べて、20℃と80℃の温度環境の間で発生する対銅熱起電力(EMF)(以下、単に「対銅熱起電力」という場合がある)の絶対値が小さくなるため、高温環境下においても、抵抗器の高精度化を進めることができる。また、Mnを20.0質量%以上35.0質量%以下の範囲で含有し、かつNiを5.0質量%以上17.0質量%以下の範囲で含有することで、体積抵抗率ρを高めるとともに、20℃以上150℃以下の温度範囲における抵抗温度係数(TCR)(以下、単に「抵抗温度係数」という場合がある)の絶対値を小さくし、かつ対銅熱起電力の絶対値を小さくすることができる。
これに関し、上述の特許文献1、2に記載の銅合金では、対銅熱起電力(EMF)の絶対値を小さくするためには、Niの含有量を増加させる必要があり、その場合、抵抗温度係数(TCR)の絶対値が大きくなる傾向があった。また、上述の特許文献1、2記載の銅合金は、電気抵抗の温度依存性について、例えば特許文献1の図3に記載されるように、より高温域を含む20℃から150℃までの温度範囲において、抵抗温度係数(TCR)が大きな負の数になるため、高温域において抵抗値に誤差を生じやすい傾向があった。しかしながら、本発明に従う銅合金材では、特にFeおよびCoのうち1種または2種を合計で0.10質量%以上2.00質量%以下の範囲で含有することで、FeやCoを含有せずにNiの含有量のみを増加させた場合と比べて、抵抗温度係数(TCR)の絶対値が大きくなることを抑制することができる。その結果、抵抗材料として十分に高い体積抵抗率を有するとともに、常温(例えば20℃)から高温(例えば150℃)までの広い温度範囲での使用環境も考慮した、抵抗温度係数の絶対値が小さく、かつ対銅熱起電力の絶対値が小さい点においても優れている。
その結果、本発明に従う銅合金材によることで、優れたプレス打ち抜き加工性を有するとともに、十分に高い体積抵抗率ρを有し、抵抗温度係数(TCR)が負であって絶対値が小さく、かつ対銅熱起電力(EMF)の絶対値が小さい銅合金材ならびにそれを用いた抵抗器用抵抗材料および抵抗器を提供することができる。
[1]銅合金材の組成
<必須含有成分>
本発明の銅合金材の合金組成は、必須含有成分として、Mn:20.0質量%以上35.0質量%以下、Ni:5.0質量%以上17.0質量%以下、ならびにFeおよびCoのうち1種または2種:合計で0.10質量%以上2.00質量%以下を含有するものである。
(Mn:20.0質量%以上35.0質量%以下)
Mn(マンガン)は、体積抵抗率ρを高めるとともに、負の値である抵抗温度係数(TCR)を正の方向に調整することで、抵抗温度係数(TCR)の絶対値を小さくする元素である。この作用を発揮するとともに、均質な銅合金材を得るためには、Mnは、20.0質量%以上含有することが好ましく、22.0質量%以上含有することがより好ましく、24.0質量%以上含有することがさらに好ましい。ここで、Mn含有量を22.0質量%以上または24.0質量%以上に増加させることで、銅合金材の体積抵抗率ρをより一層高めることができる。他方で、Mn含有量が35.0質量%を超えると、銅合金材の融点が低下することで、熱間加工の制御が困難になるため、均一な特性を得ることが困難になる。また、Mn含有量が35.0質量%を超えると、対銅熱起電力(EMF)の絶対値が大きくなりやすい。このため、Mn含有量は、20.0質量%以上35.0質量%以下の範囲にすることが好ましい。他方で、Mn含有量が30.0質量%を超えると、銅合金材を抵抗材料などとして長期間用いるうちに、母相である第1相とは異なる第2相が生じやすくなり、それにより電気的特性が時間の経過によって変化しやすくなる。そのため、Mn含有量を30.0質量%以下にすることが、熱などに対する電気的特性の安定性を高める観点からは好ましい。
(Ni:5.0質量%以上17.0質量%以下)
Ni(ニッケル)は、対銅熱起電力(EMF)の正の方向に調整する元素である。この作用を発揮するには、Niは、5.0質量%以上含有することが好ましい。他方で、Ni含有量が17.0質量%を超えると、均一な組織が得られ難くなり、体積抵抗率ρや対銅熱起電力(EMF)などが変化する恐れがある。特に、Ni含有量は、抵抗温度係数(TCR)の絶対値を小さくする観点から、5.0質量%以上17.0質量%以下の範囲にすることが好ましく、5.0質量%以上12.0質量%以下の範囲にすることがより好ましく、5.0質量%以上9.0質量%以下の範囲にすることがさらに好ましい。
(FeおよびCoのうち1種または2種:合計で0.10質量%以上2.00質量%以下)
Fe(鉄)およびCo(コバルト)は、Ni(ニッケル)と同じく、対銅熱起電力(EMF)を正の方向に調整する元素である。また、Ni(ニッケル)のみを添加した場合と比較して、Fe(鉄)およびCo(コバルト)のうち1種または2種を添加することで、対銅熱起電力(EMF)の絶対値を大きくせずに、抵抗温度係数(TCR)の絶対値を小さくする作用があるため、これらの元素は必須である。この作用を発揮するには、FeおよびCoは、合計で0.10質量%以上含有することが好ましい。他方で、FeおよびCoのうち1種または2種の合計量が2.00質量%を超えると、均一な組織が得られ難くなることによって、電気的な性能にばらつきが生じやすくなる。したがって、FeおよびCoのうち1種または2種の含有量は、合計で0.10質量%以上2.00質量%以下の範囲にすることが好ましい。
このうち、Feは、安価な元素である一方で、時間の経過による電気的特性の変動を大きくする元素である。そのため、Fe含有量は、0.5質量%以下であることが好ましい。特に、熱などに対する電気特性の安定性をより高め、それにより抵抗材料などとして長期間用いたときの信頼性をより高める観点では、Fe含有量は、0.30質量%以下とすることがより好ましく、0.20質量%以下とすることがさらに好ましい。このとき、Fe含有量は、0質量%であってもよい。また、Coは、高価な元素であるが、Feと異なり2.00質量%以下の範囲であれば、時間の経過による電気的特性の変動を起こし難い。その中でも、熱などに対する電気特性の安定性をより一層高める観点では、Coを0.01質量%以上1.50質量%以下の範囲で含有するとともに、Feの含有量を0質量%以上0.30質量%以下(Feの含有量が0質量%の場合を含む)にすることが好ましい。
<任意添加成分>
本発明の銅合金材は、任意添加成分として、Sn:0.01質量%以上3.00質量%以下、Zn:0.01質量%以上5.00質量%以下、Cr:0.01質量%以上0.50質量%以下、Ag:0.01質量%以上0.50質量%以下、Al:0.01質量%以上1.00質量%以下、Mg:0.01質量%以上0.50質量%以下、Si:0.01質量%以上0.50質量%以下、およびP:0.01質量%以上0.50質量%以下からなる群から選択される少なくとも1種を、さらに含有することができる。
(Sn:0.01質量%以上3.00質量%以下)
Sn(錫)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Snを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、Sn含有量は、3.00質量%以下にすることで、銅合金材が脆化することによる製造性の低下を起こり難くすることができる。
(Zn:0.01質量%以上5.00質量%以下)
Zn(亜鉛)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Znを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、Zn含有量は、体積抵抗率ρ、抵抗温度係数(TCR)、対銅熱起電力(EMF)といった、抵抗器の電気的な性能の安定性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、5.00質量%以下にすることが好ましい。
(Cr:0.01質量%以上0.50質量%以下)
Cr(クロム)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Crを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、Cr含有量は、体積抵抗率ρ、抵抗温度係数(TCR)、対銅熱起電力(EMF)といった、抵抗器の電気的な性能の安定性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、0.50質量%以下にすることが好ましい。
(Ag:0.01質量%以上0.50質量%以下)
銀(Ag)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Agを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、Ag含有量は、体積抵抗率ρ、抵抗温度係数(TCR)、対銅熱起電力(EMF)といった、抵抗器の電気的な性能の安定性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、0.50質量%以下にすることが好ましい。
(Al:0.01質量%以上1.00質量%以下)
Al(アルミニウム)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Alを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、Al含有量は、銅合金材を脆化させる恐れがあるため、1.00質量%以下にすることが好ましい。
(Mg:0.01質量%以上0.50質量%以下)
Mg(マグネシウム)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Mgを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、Mg含有量は、銅合金材を脆化させる恐れがあるため、0.50質量%以下にすることが好ましい。
(Si:0.01質量%以上0.50質量%以下)
Si(ケイ素)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Siを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、Si含有量は、銅合金材を脆化させる恐れがあるため、0.50質量%以下にすることが好ましい。
(P:0.01質量%以上0.50質量%以下)
P(リン)は、体積抵抗率ρの調整に用いることができる成分である。この作用を発揮するには、Pを0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、P含有量は、銅合金材を脆化させる恐れがあるため、0.50質量%以下にすることが好ましい。
(任意添加成分の合計量:0.01質量%以上5.00質量%以下)
これらの任意添加成分は、上述した任意添加成分による効果を得るため、合計で0.01質量%以上含有することが好ましい。他方で、これらの任意添加成分は、多量に含むと均一性を損なうことで脆化する恐れがあるため、合計で5.00質量%以下にすることが好ましい。
<残部:Cuおよび不可避不純物>
上述した必須含有成分および任意添加成分以外は、残部がCu(銅)および不可避不純物からなる。なお、ここでいう「不可避不純物」とは、おおむね銅系製品において、原料中に存在するものや、製造工程において不可避的に混入するもので、本来は不要なものであるが、微量であり、銅系製品の特性に影響を及ぼさないため許容されている不純物である。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、硫黄(S)、酸素(O)などの非金属元素や、アンチモン(Sb)などの金属元素が挙げられる。なお、これらの成分含有量の上限は、上記成分ごとに0.05質量%、上記成分の総量で0.10質量%とすることができる。
[2]銅合金材の物性
本発明の銅合金材は、ビッカース硬さ(HV)が115以上275以下の範囲である。特に、銅合金材のビッカース硬さ(HV)を115以上にすることで、銅合金材に対してプレス打ち抜き加工などの切断加工を行なう際に、厚さ(板材の場合は板厚)に対する剪断比の割合を小さくすることができるため、切断加工後の形状の寸法精度を高めることができる。特にMnを20.0質量%以上含有する銅合金では、剪断比が大きいと、切断加工後の形状の寸法精度は向上するものの、金型や切断工具の寿命を縮めることが懸念される。その点からも、銅合金材のビッカース硬さ(HV)は、115以上にすることが好ましく、125以上にすることがより好ましい。他方で、ビッカース硬さ(HV)が275を超えると、切断加工を行なう際に、剪断比が厚さに相対して小さくなり過ぎるため、不均一な破断面が多くなってしまう。
特に、銅合金材からなる板材を抵抗器に用いる場合、銅合金材に対してプレス打ち抜き加工を行なった後、得られた切断面を接合する、端面処理が施される。このとき、剪断面および破断面の境界に位置する境界線を、厚さ方向zに沿って振れが少なくなるように構成することで、切断面の大きさについての寸法精度を高めてゆがみを起こり難くするとともに、銅合金材の端面の処理を容易にすることができる。すなわち、剪断面および破断面の境界に位置する境界線を、厚さ方向zに沿って振れが少なくなるように構成するとともに、剪断面を適度な大きさで構成することで、プレス打ち抜き加工後の端部処理にも好適な状態とすることができる。
したがって、剪断面および破断面の境界に位置する境界線の振れを小さくするとともに、剪断面を適正に生じさせて、プレス打ち抜き加工性に優れた銅合金材を得る観点では、銅合金材のビッカース硬さ(HV)は、115以上275以下の範囲が好ましく、125以上275以下の範囲がより好ましく、150以上275以下の範囲がさらに好ましく、205以上275以下の範囲がさらに好ましい。
ここで、ビッカース硬さ(HV)は、例えばJIS Z2244(2009)に記載されるビッカース硬さの試験方法に準拠して、銅合金材の表面からビッカース硬さ(HV)を測定することができる。より具体的には、試験片である銅合金材の断面にダイヤモンド圧子を押し込む際の荷重(試験力)を0.98Nとし、圧子の圧下時間を15秒としたときの測定値とすることができる。
[3]銅合金材の形状と金属組織
本発明の銅合金材の形状は、特に限定されるものではないが、後述する熱間または冷間での延伸工程や、プレス打ち抜き加工などの切断加工を行ないやすくする観点では、板材であることが好ましい。ここで、板材のように、圧延によって形成される銅合金材では、圧延方向を延伸方向とすることができる。他方で、本発明の銅合金材は、線材、平角線材、リボン材、条材または棒材などであってもよく、本発明の銅合金材でこれらの形状を形成することで、端末についての切断加工を行ない易くすることができる。ここで、伸線や引抜、押出によって形成されるこれらの形状の銅合金材では、伸線方向、引抜方向および押出方向のいずれかを延伸方向とすることができる。
ここで、銅合金材は、平均結晶粒径が、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。このように、銅合金材を構成する結晶の平均結晶粒径を小さくすることで、銅合金材に対してプレス打ち抜き加工などの切断加工を行なった際に、剪断面と破断面の境界に位置する境界線の振れが小さくなるため、銅合金材の切断面の寸法精度をより一層高めることができる。また、銅合金材を構成する結晶の平均結晶粒径を50μm以下にすることで、銅合金材に粗大な結晶粒が形成され難くなるため、抵抗温度係数の絶対値を小さくし、かつ対銅熱起電力の絶対値を小さくすることができる。特に、本発明の銅合金材では、Coを含有することで、第2相によるピン止めが起こり難くなるため、結晶粒の粒径の制御が容易になり、その結果、平均結晶粒径が50μm以下の銅合金材を得易くすることができる。他方で、平均結晶粒径の下限は、特に限定されるものではないが、製造上の観点から、0.1μm以上としてもよい。なお、結晶の平均結晶粒径は、結晶が等軸状に形成されておらず、延伸方向に沿った圧延や伸線などの加工によって、結晶粒の大きさに異方性があるような場合は、延伸方向に対して直交する面で測定を行うものとする。
本明細書における平均結晶粒径の測定は、JIS H0501に記載される伸銅品結晶粒度試験方法に準拠して行なうことができる。より具体的には、銅合金材の断面が露出するように樹脂に埋め込んで供試材を作製した後、この延伸方向に対して直交する断面を研磨し、次いでクロム酸水溶液を用いてエッチングを行ない、露出する結晶を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで粒径を測定することにより行なうことができる。特に、延伸方向に対して直交する面における平均結晶粒径を測定する場合は、銅合金材の延伸方向に対して直交する断面が露出するように樹脂に埋め込んで供試材を作製する。
[4]銅合金材の製造方法の一例
上述した銅合金材は、合金組成や製造プロセスを組み合わせて制御することによって実現することができ、その製造プロセスは特に限定されない。その中でも、上述した銅合金材を得ることが可能な、製造プロセスの一例として、以下の方法を挙げることができる。
本発明の銅合金材の製造方法の一例として、上述した銅合金材の合金組成と実質的に同じ合金組成を有する銅合金素材に、少なくとも、鋳造工程[工程1]、均質化熱処理工程[工程2]、熱間延伸工程[工程3]、第1冷間延伸工程[工程4]、第1焼鈍工程[工程5]を順次行なうものである。このうち、均質化熱処理工程[工程2]では、加熱温度を750℃以上900℃以下の範囲とし、保持時間を10分間以上10時間以下の範囲とする。また、第1冷間延伸工程[工程4]では、総加工率を50%以上とする。また、第1焼鈍工程[工程5]では、加熱温度を600℃以上800℃以下の範囲とし、保持時間を1分以上2時間以下の範囲とする。
(i)鋳造工程[工程1]
鋳造工程[工程1]は、高周波溶解炉を用いて、不活性ガス雰囲気中もしくは真空中で、上述の合金組成を有する銅合金素材を溶融させ、これを鋳造することによって、所定形状(例えば厚さ300mm、幅500mm、長さ3000mm)の鋳塊(インゴット)を作製する。なお、銅合金素材の合金組成は、製造の各工程において、添加成分によっては溶解炉に付着したり揮発したりして製造される銅合金材の合金組成とは必ずしも完全には一致しない場合があるが、銅合金材の合金組成と実質的に同じ合金組成を有している。
(ii)均質化熱処理工程[工程2]
均質化熱処理工程[工程2]は、鋳造工程[工程1]を行なった後の鋳塊に対して、均質化のための熱処理を行なう工程である。ここで、均質化熱処理工程[工程2]における熱処理の条件は、結晶粒の粗大化を抑制する観点から、加熱温度を750℃以上900℃以下の範囲にし、かつ保持時間を10分間以上10時間以下の範囲にすることが好ましい。
(iii)熱間延伸工程[工程3]
熱間延伸工程[工程3]は、均質化熱処理を行なった鋳塊に対して、所定の厚さになるまで熱間で圧延や伸線などの延伸加工を施して、熱延材を作製する工程である。熱間延伸工程[工程3]の条件は、加工温度は750℃以上900℃以下の範囲であることが好ましく、均質化熱処理工程[工程2]における加熱温度と同じであってもよい。また、熱間延伸工程[工程3]における加工率は、10%以上であることが好ましい。
ここで、「加工率」は、圧延や伸線などの延伸加工を施す前の断面積から、加工後の断面積を引いた値を、加工前の断面積で除して100を乗じ、パーセントで表した値であり、下記式で表される。
[加工率]={([加工前の断面積]-[加工後の断面積])/[加工前の断面積]}×100(%)
熱間延伸工程[工程3]後の熱延材は、冷却することが好ましい。ここで、熱延材に対する冷却の手段は、特に限定されないが、例えば結晶粒の粗大化を起こり難くすることができる観点では、できるだけ冷却速度を大きくする手段であることが好ましく、例えば水冷などの手段により、冷却速度を50℃/秒以上にすることが好ましい。
ここで、冷却後の熱延材に対して、表面を削り取る面削を行なってもよい。面削を行なうことで、熱間延伸工程[工程3]で生じた表面の酸化膜や欠陥を除去することができる。面削の条件は、通常行なわれている条件であればよく、特に限定されない。面削により熱延材の表面から削り取る量は、熱間延伸工程[工程3]の条件に基づいて適宜調整することができ、例えば熱延材の表面から0.5~4mm程度とすることができる。
(v)第1冷間延伸工程[工程4]
第1冷間延伸工程[工程4]は、熱間延伸工程[工程3]を行なった後の熱延材に、製品の厚さや大きさに合わせた任意の加工率で、冷間で圧延や伸線などの延伸加工を施す工程である。第1冷間延伸工程[工程4]における圧延や伸線などの延伸加工の条件は、熱延材の大きさに合わせて設定することができる。特に、後述する第1焼鈍工程[工程5]で、冷延材に含まれる結晶粒を微細にし、再結晶による結晶粒の均一な形成を促す観点では、第1冷間延伸工程[工程4]における総加工率を50%以上とすることが好ましい。
(vi)第1焼鈍工程[工程5]
第1焼鈍工程[工程5]は、第1冷間延伸工程[工程4]を行なった後の冷延材に対して熱処理を施して再結晶させる焼鈍の工程である。ここで、第1焼鈍工程[工程5]における熱処理の条件は、加熱温度が600℃以上800℃以下の範囲であり、かつ保持時間が1分以上2時間以下の範囲である。他方で、加熱温度が600℃未満の場合や、保持時間が1分未満の場合、銅合金材の再結晶が困難になり、銅合金材のビッカース硬さの制御が困難になる。また、加熱温度が800℃を超える場合や、保持時間が2時間を超える場合、結晶粒が粗大化して数が減少するため、体積抵抗率、抵抗温度係数および対銅熱起電力のうち少なくともいずれかが適正でなくなる。また、銅合金材のビッカース硬さが低くなり過ぎることで、銅合金材に対してプレス打ち抜き加工などの切断加工を行なったときに、ダレが生じ易くなる。
ここで、第1焼鈍工程[工程5]を行なった後の冷延材に対して、冷間延伸工程および焼鈍工程を1回以上繰り返し行なうことが好ましい。例えば、第1焼鈍工程[工程5]を行なった後の冷延材に対して、2回目の冷間延伸工程および焼鈍工程を行なってもよく、このときの冷間延伸工程および焼鈍工程を、それぞれ第2冷間延伸工程[工程6]および第2焼鈍工程[工程7]とすることができる。さらに、第2冷間延伸工程[工程6]および第2焼鈍工程[工程7]を行なった後の冷延材に対して、仕上げの冷間延伸工程および焼鈍工程を行なってもよく、このときの冷間延伸工程および焼鈍工程を、それぞれ仕上げ冷間延伸工程[工程8]および仕上げ焼鈍工程[工程9]とすることができる。また、第1焼鈍工程[工程5]を行なった後の冷延材に対して、仕上げの冷間延伸工程および焼鈍工程として、冷間延伸工程[工程8]および仕上げ焼鈍工程[工程9]を行なってもよい。このように、冷間延伸工程および焼鈍工程を1回以上繰り返し行なうことで、銅合金材が所望の形状を有する板材や線材、平角線材、リボン材などになるとともに、粗大な結晶粒が形成され難くなるため、少なくとも体積抵抗率、抵抗温度係数および対銅熱起電力において良好な銅合金材を得ることができる。特に、仕上げ冷間延伸工程[工程8]および仕上げ焼鈍工程[工程9]を行なうことで、銅合金材のビッカース硬さをより一層高めることができる。
このとき、第2冷間延伸工程[工程6]における総加工率は、再結晶による結晶粒の均一な形成を促す観点から、50%以上とすることが好ましい。また、第2焼鈍工程[工程7]における熱処理の条件は、銅合金材の再結晶を促す観点から、加熱温度が600℃以上800℃以下の範囲であり、かつ保持時間が1分以上2時間以下の範囲であることが好ましい。
また、仕上げ冷間延伸工程[工程8]における総加工率は、銅合金材のビッカース硬さを所望の範囲に調整する観点から、5%以上70%以下の範囲で行なうことが好ましく、10%以上70%以下の範囲で行なうことがより好ましい。特に、仕上げ冷間延伸工程[工程8]における総加工率を5%以上にし、より好ましくは10%以上にすることで、銅合金材のビッカース硬さをより一層高めることができる。他方で、仕上げ焼鈍工程[工程9]における熱処理の条件は、仕上げ冷間延伸工程[工程8]で生じたひずみによる電気抵抗の増加を緩和させる観点から、上述の第1焼鈍工程[工程5]および第2焼鈍工程[工程7]よりも加熱温度の低い条件であり、より具体的には、加熱温度が200℃以上400℃以下の範囲であり、かつ保持時間が30秒以下である。
[5]銅合金材の用途
本発明の銅合金材は、抵抗器、例えばシャント抵抗器またはチップ抵抗器に用いられる抵抗器用抵抗材料として極めて有用である。すなわち、抵抗器用抵抗材料は、上述の銅合金材からなることが好ましい。また、シャント抵抗器またはチップ抵抗器などの抵抗器は、上述の銅合金材からなる抵抗器用抵抗材料を有することが好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、本発明例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(本発明例1~17および比較例1~5)
表1に示す合金組成を有する銅合金素材を溶解し、これを溶湯から冷却して鋳造する鋳造工程[工程1]を行なって鋳塊を得た。ここで、比較例1の合金組成は、上述の特許文献1に記載される銅合金と同じ合金組成を有するものである。また、比較例5の合金組成は、上述の特許文献2に記載される銅合金と同じ合金組成を有するものである。
この鋳塊に対して、800℃の加熱温度および5時間の保持時間で熱処理を行なう均質化熱処理工程[工程2]を行ない、次いで、800℃の加工温度で、総加工率が67%(加工前の厚みが30mm、加工後の厚みが10mm)となるように、長手方向に沿って圧延する熱間延伸工程[工程3]を行なって熱延材を得た。その後、水冷により室温まで冷却して、表面に形成された酸化膜を除去する面削を行なった。
熱間延伸工程[工程3]後の熱延材に対して、表2に記載の総加工率で長手方向に沿って圧延する、第1冷間延伸工程[工程4]を行なった。次いで、第1冷間延伸工程[工程4]を行なった後の冷延材に対して、表2に記載の保持温度および保持時間で熱処理を行なう、第1焼鈍工程[工程5]を行なった。
さらに、第1焼鈍工程[工程5]を行なった後の熱延材に対して、表2に記載の総加工率で長手方向に沿って圧延する、第2冷間延伸工程[工程6]を行なった。次いで、第2冷間延伸工程[工程6]を行なった後の冷延材に対して、表2に記載の保持温度および保持時間で熱処理を行なう、第2焼鈍工程[工程7]を行なった。なお、本発明例11、比較例2、4、5については、第2冷間延伸工程[工程6]および第2焼鈍工程[工程7]を行なわずに、後述する仕上げ冷間延伸工程[工程8]を行なった。
また、本発明例4、6、9、11~13、17、比較例2、4、5については、仕上げ冷間延伸工程[工程8]および仕上げ焼鈍工程[工程9]を行なった。より具体的には、第2焼鈍工程[工程7]を行なった後の熱延材に対して、表2に記載の総加工率で長手方向に沿って圧延する、仕上げ冷間延伸工程[工程8]を行なった。次いで、仕上げ冷間延伸工程[工程8]を行なった後の冷延材に対して、表2に記載の保持温度および保持時間で熱処理を行なう、仕上げ焼鈍工程[工程9]を行なった。このようにして、本発明例1~17および比較例1~4の銅合金板材を作製した。
なお、表1では、銅合金素材の合金組成に含まれない成分の欄には横線「-」を記載し、該当する成分を含まない、または含有していたとしても検出限界値未満であることを明らかにした。
[各種測定および評価方法]
上記本発明例および比較例に係る銅合金材(銅合金板材)を用いて、下記に示す特性評価を行なった。各特性の評価条件は下記のとおりである。
[1]ビッカース硬さ(HV)の測定
作製した銅合金材について、JIS Z2244(2009)に記載されるビッカース硬さの試験方法に準拠して、試験片である銅合金材の表面にダイヤモンド圧子を押し込む際の荷重(試験力)を0.98Nとし、圧子の圧下時間を15秒としたときの、銅合金材の表面からのビッカース硬さ(HV)を5回測定し、それらの平均を測定値とした。
[2]平均結晶粒径の測定
作製した銅合金材について、銅合金材の加工時の延伸方向に対して直交する断面が露出するように樹脂に埋め込んで供試材を作製した後、この延伸方向に対して直交する断面を研磨した。次いで、研磨後の供試材について、クロム酸水溶液を用いてエッチングを行なった後、露出する結晶粒について、走査型電子顕微鏡(SEM)((株)島津製作所製、型番:SSX-550)を用いて、平均結晶粒径に応じて50倍~2000倍の倍率で3視野を観察し、JIS H 0501に記載される伸銅品結晶粒度試験方法の内の切断法によって結晶粒度を測定し、3視野における結晶粒度の平均値として平均結晶粒径を算出した。結果を表3に示す。
[3]プレス打ち抜き加工性の評価方法
作製した銅合金材のプレス打ち抜き加工性は、日本伸銅協会技術標準JCBA T310:2019に規定される、銅及び銅合金薄板条の剪断試験方法に記載の剪断試験を行なった。すなわち、銅合金材に対して、上型(パンチ)と下型(ダイ)のクリアランスが10μmとなるように調整して、延伸方向yに沿った大きさが2mm、延伸方向yに対して直角に交わる方向(図1のx方向)に沿った大きさが10mmの長方形の形状に打ち抜き加工を施し、外周に切断面2を有する銅合金材10の供試材を作製した。
図1は、本発明の銅合金材に対してプレス打ち抜き加工を行なったときの切断面を示す模式図である。図1に示す銅合金材10は、図示しない下型(ダイ)上に固定された状態で上型(パンチ)を下降させて行なう、プレス打ち抜き加工を施した後の切断面2を示すものである。ここで、切断面2は、プレス打ち抜き加工された銅合金材10の上面10a側から順に、ダレ3、剪断面4および破断面5が形成される。また、切断面2の下端縁には、破断面5から外側に延出するように、バリ6が形成されることが多い。また、剪断面4および破断面5の境界には、境界線7が形成される。
本実施例では、形成された切断面2のうち、延伸方向yに対して直角に交わる方向(図1のx方向)に沿った面について、走査型電子顕微鏡(SEM)((株)島津製作所製、SSX-550)を用いて、200倍の倍率で観察を行なった。そして、切断面2の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から、銅合金材10の供試材の板厚tと、銅合金材10の供試材の厚さ方向zに沿った剪断面4および破断面5の境界に位置する境界線7の振れΔtについて、それぞれ5ヶ所ずつ測定した平均を測定値とした。剪断比については、日本伸銅協会技術標準JCBA T310:2002に規定の「銅及び銅合金薄板条のせん断試験方法」に沿って測定した。ここで、剪断面4と破断面5の境界線7の振れΔtは、1つのSEM写真の視野内において、境界線7が最も下面10bに近い箇所(視野内で剪断比が最大になる箇所)と、最も上面10aに近い箇所(視野内で剪断比が最小になる箇所)との間における、境界線7の振れを算出した。また、板厚tに対する剪断比の割合(A)は、視野内で剪断比が最大になる箇所における値を採用した。そして、得られるこれらの測定値から、板厚tに対する剪断比の割合(A)と、板厚tに対する、剪断面4および破断面5の境界に位置する境界線7の振れΔtの割合(B)とを算出した。
算出された板厚tに対する剪断比の割合(A)について、30%以上57%以下の範囲にあった場合を、板厚tに対する剪断比の割合(A)が適正範囲にある点で優れているとして「◎」と評価した。また、板厚tに対する剪断比の割合(A)が57%超60%以下にあった場合を、板厚tに対する剪断比の割合(A)が良好であるとして「○」と評価した。一方、30%未満または60%超であった場合を、板厚tに対する剪断比の割合(A)が適正範囲にない点で不良であるとして「×」と評価した。結果を表3に示す。
また、算出された板厚tに対する境界線7の振れΔtの割合(B)について、15%以下であった場合を、境界線7の振れΔtが十分に小さく、切断面2の寸法精度に優れているとして「◎」と評価した。また、板厚tに対する境界線7の振れΔtの割合(B)が15%超20%以下の範囲にあった場合を、境界線7の振れΔtが小さく、切断面2の寸法精度が良好であるとして「○」と評価した。他方で、板厚tに対する境界線7の振れΔtの割合(B)が20%より大きい場合を、境界線7の振れΔtが大きく、切断面2の大きさに関する寸法精度が不良であるとして「×」と評価した。本実施例では、「◎」と「○」を合格レベルとして評価した。結果を表3に示す。
このようにして得られる、板厚tに対する剪断比の割合(A)および板厚tに対する境界線7の振れΔtの割合(B)の評価結果について、両方とも「◎」と評価した場合を、プレス打ち抜き加工性に優れるとして「◎」と評価した。また、これら2つの評価結果のうち、一方を「◎」と評価し、かつ他方を「○」と評価した場合を、プレス打ち抜き加工性が良好であるとして「○」と評価した。また、これらの評価結果のうち、一方または両方の評価結果が「×」になった場合を、プレス打ち抜き加工性が不合格であるとして「×」と評価した。結果を表3に示す。
[4]体積抵抗率の測定
作製した銅合金材について、得られた厚さ0.3mmの板材を幅10mm、長さ300mmに切断し、供試材を作製した。
体積抵抗率ρの測定は、電圧端子間距離を200mm、測定電流を100mAとして、室温20℃で、JIS C2525に規定された方法に準じた四端子法によって電圧を測定し、得られた値から体積抵抗率ρ[μΩ・cm]を求めた。
測定された体積抵抗率ρについて、80μΩ・cm以上であった場合を体積抵抗率ρが十分に大きく、抵抗材料として優れているとして「◎」と評価した。また、体積抵抗率ρが70μΩ・cm以上80μΩ・cm未満であった場合を、体積抵抗率ρが大きく、抵抗材料として良好であるとして「○」と評価した。他方で、体積抵抗率ρが70μΩ・cm未満であった場合を、体積抵抗率ρが小さく抵抗材料としては不良であるとして「×」と評価した。本実施例では、「◎」と「○」を合格レベルとして評価した。結果を表3に示す。
[5]対銅熱起電力(EMF)の測定方法
作製した銅合金材について、得られた厚さ0.3mmの板材を幅10mm、長さ1000mmに切断し、供試材を作製した。
供試材の対銅熱起電力(EMF)の測定は、JIS C2527に沿って行なった。より具体的には、図2に示すように、供試材11の対銅熱起電力(EMF)の測定は、十分に焼鈍された直径1mm以下の純銅線を標準銅線21として用い、供試材11および標準銅線21の一方の端部を接続させた測温接点Pを、80℃の恒温槽41で保温している温水に浸漬させるとともに、供試材11および標準銅線21の他方の端部をそれぞれ銅線31、32に接続させた基準接点P21、P22を、氷点装置42で保冷している0℃の氷水に浸漬させたときの起電力を、電圧測定器43で測定した。得られた起電力について、温度差である80[℃]で割ることで、対銅熱起電力EMF(μV/℃)を求めた。
測定された対銅熱起電力(EMF)について、絶対値が0.5μV/℃以下であった場合を、対銅熱起電力(EMF)の絶対値が小さく、抵抗材料として良好であるとして「◎」と評価した。他方で、対銅熱起電力(EMF)の絶対値が0.5μV/℃より大きい場合を、対銅熱起電力(EMF)の絶対値が大きく、抵抗材料として不良であるとして「×」と評価した。結果を表3に示す。
[6]抵抗温度係数(TCR)の測定方法
作製した銅合金材について、得られた厚さ0.3mmの板材を幅10mm、長さ300mmに切断し、供試材を作製した。
抵抗温度係数(TCR)の測定は、電圧端子間距離を200mm、測定電流を100mAとして、JIS C2525およびJIS C2526に規定された方法に準じた四端子法によって、供試材の温度を150℃に加熱したときの電圧を測定し、得られた値から150℃での抵抗値R150℃[μΩ]を求めた。次いで、供試材の温度を20℃に冷却したときの電圧を測定し、得られた値から20℃での抵抗値R20℃[μΩ]を求めた。そして、得られる抵抗値であるR150℃およびR20℃の値から、TCR={(R150℃[μΩ]-R20℃[μΩ])/R20℃[μΩ]}×{1/(150[℃]-20[℃])}×10の式から、抵抗温度係数(ppm/℃)を算出した。
測定された抵抗温度係数(TCR)について、絶対値が50ppm/℃以下であった場合を、抵抗温度係数(TCR)の絶対値が十分に小さく、抵抗材料として優れているとして「◎」と評価した。他方で、抵抗温度係数(TCR)の絶対値が50ppm/℃より大きい場合を、抵抗温度係数(TCR)の絶対値が大きく抵抗材料としては不良であるとして「×」と評価した。結果を表3に示す。
[7]信頼性についての評価
さらに、本発明例1~17および比較例1~7について、銅合金材を抵抗材料などとして長期間用いたときの信頼性、特に熱などに対する電気的特性の安定性について検討するため、上述の[4]体積抵抗率の測定において体積抵抗率を測定した後の供試材について、400℃で2時間にわたり加熱することで、熱に対する電気的特性の安定性について加速試験を行なった。加熱による加速試験の後、上述の[4]体積抵抗率の測定と同じ方法で、供試材の体積抵抗率を測定し、加熱前の体積抵抗率から加熱後の体積抵抗率を引いた体積抵抗率の差をそれぞれ求めた。ここで、加熱前の体積抵抗率から加熱後の体積抵抗率を引いた体積抵抗率の差が1.0μΩ・cm以下であった場合を、加熱による体積抵抗率の低下が十分に小さく、信頼性に優れているとして「◎」と評価した。また、加熱前の体積抵抗率から加熱後の体積抵抗率を引いた体積抵抗率の差が1.0μΩ・cm超2.0μΩ・cm以下であった場合を、加熱による体積抵抗率の低下が小さく、信頼性が良好であるとして「○」と評価した。また、加熱前の体積抵抗率から加熱後の体積抵抗率を引いた体積抵抗率の差が2.0μΩ・cm超であった場合を、加熱による体積抵抗率の低下が大きく、信頼性の観点では相対的に良好でないとして「△」と評価した。結果を表2に示す。
[8]総合評価
これらの評価結果のうち、プレス打ち抜き加工性、体積抵抗率ρ、対銅熱起電力(EMF)および抵抗温度係数(TCR)に関する4つの評価結果について、4つとも「◎」と評価した場合を、プレス打ち抜き加工性、体積抵抗率ρ、対銅熱起電力(EMF)および抵抗温度係数(TCR)の4つの特性が優れているとして「◎」と評価した。また、これらの4つの評価結果のうち、体積抵抗率ρとプレス打ち抜き加工性の一方または両方で「○」と評価し、残りを「◎」と評価した場合を、これらの4つの特性が少なくとも良好であるとして「○」と評価した。他方で、プレス打ち抜き加工性、体積抵抗率ρ、対銅熱起電力(EMF)および抵抗温度係数(TCR)のうち少なくともいずれかで評価結果が「×」になった場合を、これらの4つの特性のうち少なくともいずれかが不合格であるとして「×」と評価した。結果を表2に示す。
Figure 0007167385000001
Figure 0007167385000002
Figure 0007167385000003
表1~表3の結果から、本発明例1~17の銅合金材は、合金組成およびビッカース硬さ(HV)が本発明の適正範囲内であるとともに、板厚tに対する剪断比の割合(A)と、板厚tに対する境界線7の振れΔtの割合(B)が、いずれも「◎」または「○」と評価されているため、プレス打ち抜き加工性の評価においても「◎」または「〇」と評価されるものであった。また、本発明例1~17の銅合金材は、体積抵抗率ρ、対銅熱起電力(EMF)および抵抗温度係数(TCR)についても、いずれも「◎」または「〇」と評価されるものであった。
他方で、比較例1の銅合金材は、Fe及びCoをいずれも含有しておらず、合金組成が本発明の適正範囲外であった。そのため、比較例1の銅合金材は、対銅熱起電力(EMF)と抵抗温度係数(TCR)において「×」と評価されていた。
また、比較例2の銅合金材は、ビッカース硬さ(HV)が小さく、本発明の適正範囲外であった。そのため、比較例2の銅合金材は、板厚tに対する剪断比の割合(A)と、板厚tに対する境界線7の振れΔtの割合(B)のうち一方が、「×」と評価されており、プレス打ち抜き加工性の評価も「×」と評価されるものであった。
また、比較例3、6の銅合金材はいずれも、合金組成が本発明の適正範囲外であり、かつビッカース硬さ(HV)が大きく、本発明の適正範囲外であった。そのため、比較例3、6の銅合金材は、対銅熱起電力(EMF)、抵抗温度係数(TCR)およびプレス打ち抜き加工性において「×」と評価されていた。特に、比較例3の銅合金材は、FeおよびCoの含有量がいずれも多いことで、信頼性の評価結果が「△」となった。また、比較例6の銅合金材は、Niの含有量が多いことで、信頼性の評価結果が「△」となった。
また、比較例4の銅合金材は、Mnの含有量が少なく、またはFe及びCoの合計量が少なく、合金組成が本発明の適正範囲外であった。そのため、比較例4の銅合金材は、体積抵抗率ρとプレス打ち抜き加工性において「×」と評価されていた。
また、比較例5の銅合金材は、Mnの含有量が多く、合金組成が本発明の適正範囲外であった。そのため、比較例5の銅合金材は、対銅熱起電力(EMF)において「×」と評価されていた。
また、比較例7の銅合金材は、Niの含有量が少なく、合金組成が本発明の適正範囲外であった。そのため、比較例7の銅合金材は、対銅熱起電力(EMF)において「×」と評価されていた。
この結果から、本発明例の銅合金材は、合金組成およびビッカース硬さ(HV)が本発明の適正範囲内であるときに、プレス打ち抜き加工性が少なくとも良好であることが確認された。それとともに、本発明例の銅合金材は、体積抵抗率ρ、対銅熱起電力(EMF)および抵抗温度係数(TCR)も、少なくとも良好であることが確認された。
また、図3に、本発明例および比較例の銅合金材について、ビッカース硬さ(HV)と、板厚tに対する剪断比の割合(A)の関係を示すグラフを示す。図3のグラフは、ビッカース硬さ(HV)を横軸に、板厚tに対する剪断比の割合(A)を縦軸にしたものである。このグラフからも、本発明例の銅合金材は、ビッカース硬さ(HV)が115以上275以下の範囲であるときに、板厚tに対する剪断比の割合(A)が、適正範囲である30%以上60%以下の範囲にあることが確認された。
また、図4に、本発明例および比較例の銅合金材についてプレス打ち抜き加工を行なったときの切断面について、厚さ方向および幅方向を含む断面で見たときの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。ここで、図4(a)は、本発明例8の銅合金材の切断面についてのSEM写真であり、図4(b)は、比較例2の銅合金材の切断面についてのSEM写真である。これらのSEM写真から、本発明例の銅合金材10は、比較例の銅合金材10と比べて、剪断面4と破断面5の境界である境界線7の振れΔtが小さいことが確認された。
さらに、本発明例7では、Mn含有量が30.0質量%を超える場合において、Feの含有量を0.30質量%以下にすることで、Feの含有量が0.40質量%であり信頼性の評価結果が「△」と評価された本発明例4と比べて、熱などに対する電気的特性の安定性が高められていたため、信頼性の評価結果において「〇」と評価されていることが分かった。
また、本発明例1~3、5、6、8~11、13~17では、Feの含有量を0.20質量%以下にすることで、Feの含有量が0.30質量%以上であり信頼性の評価結果が「〇」または「△」と評価された本発明例4、7、12と比べて、熱などに対する電気的特性の安定性が高められていたため、信頼性の評価結果において「◎」と評価されていることが分かった。
10 銅合金材
10a 銅合金材の上面
10b 銅合金材の下面
11 供試材
21 標準銅線
31、32 銅線
41 恒温槽
42 氷点装置
43 電圧測定器
2 切断面
3 ダレ
4 剪断面
5 破断面
6 バリ
7 境界線
銅合金材の供試材の板厚
銅合金材の供試材のダレの厚さ
Δt 境界線の振れ
測温接点
21、P22 基準接点
x 幅方向
y 延伸方向
z 厚さ方向

Claims (7)

  1. Mn:20.0質量%以上35.0質量%以下、
    Ni:5.0質量%以上17.0質量%以下、ならびに
    FeおよびCoのうち1種または2種:合計で0.10質量%以上2.00質量%以下
    を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、
    ビッカース硬さ(HV)が115以上275以下の範囲である、銅合金材。
  2. 前記合金組成は、
    Mn:20.0質量%以上30.0質量%以下を含有する、請求項1に記載の銅合金材。
  3. 前記合金組成は、
    Co:0.01質量%以上1.50質量%以下を含有し、かつ
    Fe:0質量%以上0.30質量%以下(Feの含有量が0質量%の場合を含む)である、請求項1に記載の銅合金材。
  4. 前記合金組成は、
    Sn:0.01質量%以上3.00質量%以下、
    Zn:0.01質量%以上5.00質量%以下、
    Cr:0.01質量%以上0.50質量%以下、
    Ag:0.01質量%以上0.50質量%以下、
    Al:0.01質量%以上1.00質量%以下、
    Mg:0.01質量%以上0.50質量%以下、
    Si:0.01質量%以上0.50質量%以下、および
    P:0.01質量%以上0.50質量%以下からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する、請求項1に記載の銅合金材。
  5. 前記銅合金材の平均結晶粒径が50μm以下である、請求項1に記載の銅合金材。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の銅合金材からなる、抵抗器用抵抗材料。
  7. 請求項6に記載の抵抗器用抵抗材料を有する、シャント抵抗器またはチップ抵抗器である抵抗器。
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