JP7166525B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
[1]
エポキシ樹脂と、
アミン成分と酸成分とからなる塩と、
芳香族アミンと、
を含む、エポキシ樹脂組成物。
[2]
前記アミン成分が、1級アミン成分又は2級アミン成分を含む、[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]
前記アミン成分のアミン官能基数を「A」、前記酸成分の官能基数を「B」とした場合に、「A+B」が3以上である、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]
「A」が2以上であり、「B」が2以上である、[3]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[5]
前記酸成分が、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[1]乃至[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[6]
前記芳香族アミンが、ジアミノジフェニルスルホンである、[1]乃至[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]
前記ジアミノジフェニルスルホンが、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンまたは4,4’-ジアミノジフェニルスルホンである、[6]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]
繊維強化複合材料のマトリックス樹脂用である、[1]乃至[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[9]
繊維と、前記繊維に含浸した[8]に記載のエポキシ樹脂組成物とを含む、繊維強化複合材料。
[10]
アミン成分と酸成分とからなる塩と、芳香族アミンと、エポキシ樹脂とを混合し、エポキシ樹脂組成物を調製する工程と、
前記エポキシ樹脂組成物を繊維に含浸させる工程と、
前記繊維に含浸させたエポキシ樹脂組成物を加熱処理により硬化させる工程と、
を含む、繊維強化複合材料の製造方法。
1:エポキシ樹脂組成物
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、芳香族アミンと、アミン成分と酸成分からなる塩とを含んでいる。芳香族アミンは、耐熱性や保存安定性に優れたエポキシ樹脂用の硬化剤であるが、アミン成分と酸成分からなる塩を使用すると、耐熱性をさらに向上させることができる。また、硬化剤として芳香族アミンを単独で使用した場合には、硬化処理として高温で長時間の加熱処理が必要になる場合がある。これに対して、本実施形態によれば、アミン成分と酸成分とからなる塩を芳香族アミンと併用することにより、加熱処理に要する時間及び温度を低下させることができる。すなわち、アミン成分と酸成分とからなる塩は、芳香族アミンを有するエポキシ樹脂組成物における硬化剤乃至硬化促進剤として機能していると考えられ、その結果、より耐熱性および低温硬化性に優れるエポキシ樹脂組成物を得ることができると考えられる。
エポキシ樹脂は、加熱により硬化する機能を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂及びハロゲン化エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられ、好ましくは、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
芳香族アミンは、加熱処理によってエポキシ樹脂と反応し、エポキシ樹脂を硬化させる機能を有するものであればよく、特に限定されない。
芳香族アミンとしては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、及びこれらの異性体などが挙げられ、好ましくはジアミノジフェニルスルホン及びその異性体である。
ジアミノジフェニスルスルホンとしては、いずれの異性体のものも使用可能であるが、好ましくは、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホンである。
芳香族アミンの含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば10~50質量部、好ましくは15~45質量部、より好ましくは20~40質量部である。
芳香族アミンは1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
アミン成分と酸成分とからなる塩は、アミン成分と酸成分とが酸塩基反応によって結合した物質であり、例えば、アミン成分が1級アミンかつ酸成分がカルボン酸である場合、アミン成分と酸成分とからなる塩は、下記式(I)により表されるような化合物である。
(なお、式Iにおいて、R1及びR2はそれぞれ独立して有機基を表す)。
このような官能基数を有するアミン成分及び酸成分を使用することで、エポキシ樹脂組成物の耐熱性及び保存安定性をより改善することができる。
アミン成分としては、酸成分と反応して塩を形成するものであればよく、特に限定されない。アミン成分としては、例えば、それ単独でもエポキシ樹脂の硬化機能を有する化合物を用いることができる。アミン成分としては、例えば、1級アミン成分及び2級アミン成分が挙げられる。アミン成分は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
式(II)中、環Aは、5~7員の飽和又は不飽和環を表し、好ましくは、6員の飽和又は不飽和の炭素環である。L2は独立して単結合又はC1-6アルキレン基を表し、好ましくは単結合又はメチレン基である。aは1~4の整数を表し、好ましくは、2である。環Aは、L2部分とは別に、C1-6アルキル基等の置換基を有していてもよい。
式(III)中、環B及び環Cは、それぞれ独立に、5~7員の飽和又は不飽和環を表し、好ましくは6員の飽和又は不飽和の炭素環であり、より好ましくはシクロヘキサン環である。
L3は、C1-6アルキレン基を表し、好ましくはメチレン基である。
L4及びL5は、独立して、単結合又はC1-6アルキレン基を表し、好ましくは単結合である。
環B及び/又は環Cは、L3~L5部分とは別に、C1-6アルキル基等の置換基を有していてもよい。
酸成分としては、1級アミン成分と反応して塩を形成するものであればよく、特に限定されない。酸成分としては、例えば、それ単独でもエポキシ樹脂の硬化機能を有する化合物を用いることができる。
好ましい酸成分としては、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸が挙げられる。
酸成分は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
カルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、フタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、コハク酸、セバシン酸、マレイン酸、ドデセニルコハク酸、クロレンデック酸、トリメリット酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びシクロヘキセンジカルボン酸、及びそれらの異性体などが挙げられ、好ましいものとして、シクロヘキサンジカルボン酸及びシクロヘキセンジカルボン酸が挙げられる。
シクロヘキサンジカルボン酸としては、例えば、cis-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。シクロヘキセンジカルボン酸としては、例えば、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が挙げられる。
スルホン酸としては、分子内にスルホン酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、スルホン酸基数が2以上である化合物が好ましい。スルホン酸の官能基数は、好ましくは2~4であり、更に好ましくは2である。スルホン酸としては、例えば、ナフタレンジスルホン酸等が挙げられる。
ホスホン酸は、R-P(=O)(OH)2(RはH又は有機基)で表される化合物であり、Rに付加している-P(=O)(OH)2の数は特に限定されない。好ましくは、ホスホン酸は、(HO)2PH(=O)である。
式(IV)中、環Dは、5~12員の単環又は二環式の飽和又は不飽和環を表し、好ましくは、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環又はナフタレン環である。R3は、カルボン酸又はスルホン酸を表す。bは、1~4の整数を表し、好ましくは2~4、より好ましくは2である。環Dは、C1-6アルキル基等の置換基を有していてもよい。
式(V)中、L6は、炭素数1~20の、分岐鎖または直鎖の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数4~10の、分岐鎖または直鎖の炭化水素基を表す。炭化水素基は不飽和結合を含んでいてもよい。
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、エポキシ樹脂以外の樹脂、硬化剤(ジアミノジフェニルスルホン、及び、アミン成分と酸成分とからなる塩以外のもの)、充填剤、安定剤、難燃剤、及び顔料などが挙げられる。
加えて、本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、常温(5~35℃)であれば、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合した状態であっても、硬化反応が進行しにくい。すなわち、保存安定性に優れている。
また、本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、芳香族アミンを単独で用いた場合に比べて、低温で熱硬化させることができる。また耐熱性も向上する。
以上のような性質から、本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、一液性の液状のエポキシ樹脂組成物として好適である。繊維強化複合材料のマトリックス樹脂用として好適である。
表1乃至4に記載される組成にて、実施例1乃至19及び比較例1乃至6に係る硬化剤を調製した。詳細は以下の通りである。
200mlのエタノールに、酸成分としてピロメリット酸(酸成分)20gを溶解した。更に、得られた溶液に、ピロメリット酸と1:1モルとなる量の1,2-シクロヘキサンジアミン(アミン成分)を添加し、薬さじで攪拌した。攪拌後、25℃で1時間、溶液を静置した。静置後、生じた沈殿物を、ブフナー漏斗で5Cのろ紙を使用してろ過した。得られたろ過物をオーブンに投入し、40℃で1時間、60℃で3時間、乾燥させた。乾燥後、コーヒーミルを使用して試料を粉砕し、得られた試料を実施例1に係る硬化剤として得た。
酸成分及びアミン成分を、表1~3に記載される化合物に変更し、アミンと酸の種類を表1の組み合わせに変更した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、実施例2~18に係る硬化剤を得た。
表4に記載される化合物を、それぞれ、比較例1乃至6に係る硬化剤として用意した。
(実施例1~18、比較例1~6)
エポキシ樹脂(jER828EL、三菱化学社製、エポキシ当量190)100質量部に、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン30質量部と、実施例1乃至18及び比較例1乃至6の各々に係る硬化剤5質量部を添加した。添加後、公転自転撹拌機(株式会社シンキー製ARE-250「あわとり錬太郎」)で撹拌し、実施例1乃至18及び比較例1乃至6に係るエポキシ樹脂組成物を得た。
(比較例7)
実施例1乃至18及び比較例1乃至6に係る硬化剤5質量部を添加しなかった点を除いて同様の方法により、比較例7に係るエポキシ樹脂組成物を得た。
(反応開始温度)
実施例及び比較例に係る各エポキシ樹脂組成物5mgを、サンプルパンに量り取って蓋で密閉し、日立ハイテクサイエンス社製高感度示差走査型熱量測定装置DSC7000Xを用いて、昇温速度5℃/分の条件下で、DSC測定を行った。得られた発熱ピークの曲線の立ち上がりと、基線の外挿とが交わる点の温度を、反応開始温度として求めた。結果を表5に示す。尚、得られた反応開始温度が低いほど、低温での硬化が可能となることを意味している。
RE80型粘度計(東機産業株式会社製)にコーンローター(ローターコードNo.6;3°×R9.7)を装着した。実施例及び比較例に係る各エポキシ樹脂組成物0.2~0.3mlをシリンジにて量り取り、25℃に設定した粘度計の測定室に投入した。ローターの回転数を20rpmに設定して120秒間回転させた後、粘度を測定し、測定結果を初期粘度とした(単位:Pa・s)。
また、エポキシ樹脂組成物を、25℃及び40℃の条件下で、それぞれ2日間及び7日間保管した後、初期粘度と同じ方法にて粘度を測定した。更に、保管後の粘度と初期粘度との値から、下記式により、保管後の粘度の初期粘度に対する倍数を求め、結果を保存安定性とした。
(式1):保存安定性=保管後粘度/初期粘度
12mlのアルミホイルシャーレ―、各エポキシ樹脂組成物2質量部を量り取り、180℃に設定したオーブンに投入し、所定時間加熱し、硬化物を得た。得られた硬化物10mgをサンプルパンに量り取って蓋で密閉し、日立ハイテクサイエンス社製高感度型示差走査型熱量測定装置DSC7000Xを用いて窒素雰囲気中、昇温速度5℃/分、交流測定の条件下でDSC測定し、得られた比熱曲線よりガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表5に示す。
表5に示されるように、硬化剤として芳香族アミンである4,4’-ジアミノジフェニルスルホン酸のみ使用した比較例7においては、反応開始温度が163℃であった。これに対して、アミン成分と酸成分とからなる塩を添加した実施例1乃至18においては、比較例7よりも反応開始温度が低下していた。このことから、比較例7よりも実施例1乃至18の方が硬化処理に必要な熱量が少なく、低温短時間でエポキシ樹脂組成物を硬化できることが判る。
また、酸成分として安息香酸を用いた実施例17及び18よりも、酸成分として2~4官能のカルボン酸、2官能のスルホン酸、又は、ホスホン酸を用いた実施例1~16の方が、保存安定性により優れていた。
Claims (11)
- エポキシ樹脂と、
アミン成分と酸成分とからなる塩と、
芳香族アミンと、
を含み、
前記アミン成分が、1級アミン成分であり、
前記酸成分が、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、
エポキシ樹脂組成物。 - 前記アミン成分のアミン官能基数を「A」、前記酸成分の官能基数を「B」とした場合に、「A+B」が3以上である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 「A」が2以上であり、「B」が2以上である、請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記芳香族アミンが、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン又はジアミノジフェニルエーテルである、請求項1乃至3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記芳香族アミンが、ジアミノジフェニルスルホンである、請求項1乃至3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記ジアミノジフェニルスルホンが、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンまたは4,4’-ジアミノジフェニルスルホンである、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 繊維強化複合材料のマトリックス樹脂用である、請求項1乃至6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 繊維と、前記繊維に含浸した請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物とを含む、繊維強化複合材料。
- アミン成分と酸成分とからなる塩と、芳香族アミンと、エポキシ樹脂とを混合し、エポキシ樹脂組成物を調製する工程と、
前記エポキシ樹脂組成物を繊維に含浸させる工程と、
前記繊維に含浸させたエポキシ樹脂組成物を加熱処理により硬化させる工程と、
を含み、
前記アミン成分が、1級アミン成分であり、
前記酸成分が、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、
繊維強化複合材料の製造方法。 - 前記芳香族アミンが、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン又はジアミノジフェニルエーテルである、請求項9に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
- 前記芳香族アミンが、ジアミノジフェニルスルホンである、請求項9に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
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