(第1の実施形態)
以下、把持装置を具体化した第1の実施形態を図1~図4にしたがって説明する。
図1に示すように、把持装置10は、把持対象物W1を把持する一対の把持爪11と、一対の把持爪11を開閉させる流体圧シリンダ12とを備えている。流体圧シリンダ12は、有底筒状のシリンダチューブ14を有している。シリンダチューブ14は、底壁14aと、底壁14aの外周部からシリンダチューブ14の軸方向に延びる円筒状の外周壁14bとを有している。シリンダチューブ14の開口は、ヘッドカバー15によって閉塞されている。そして、シリンダチューブ14及びヘッドカバー15によってシリンダチューブ14内にシリンダ室16が区画されている。よって、シリンダチューブ14は、シリンダ室16を有している。
シリンダチューブ14の外周壁14bにおけるヘッドカバー15寄りの部位には、シリンダ室16に開口する第1流体給排ポート17aが形成されている。シリンダチューブ14の外周壁14bにおける底壁14a寄りの部位には、シリンダ室16に開口する第2流体給排ポート17bが形成されている。
シリンダ室16には、シリンダ室16内をシリンダチューブ14の軸方向に往復動可能な円環状のピストン18が収容されている。ピストン18は、シリンダ室16を、ヘッドカバー15側の第1圧力作用室16aと、底壁14a側の第2圧力作用室16bとに区画している。第1圧力作用室16aは第1流体給排ポート17aに連通するとともに、第2圧力作用室16bは第2流体給排ポート17bに連通している。
ピストン18の外周面には、第1圧力作用室16aと第2圧力作用室16bとの間をシールするゴム製のピストンパッキン18sが装着されている。また、ピストン18の外周面におけるピストンパッキン18sよりもヘッドカバー15寄りには、ピストン位置検出用のマグネット19が装着されている。
ピストン18には、ピストンロッド20が一体的に設けられている。ピストンロッド20は、ピストン18における底壁14a側の端面18aから突出する第1ロッド部20aと、ピストン18におけるヘッドカバー15側の端面18bから突出する第2ロッド部20bとを有している。第1ロッド部20aと第2ロッド部20bとの外径は同じになっている。ピストン18は、ピストン18の端面18aに設けられる円環状のクッションゴム18gを有している。クッションゴム18gは、第1ロッド部20aに圧入されることにより、ピストン18側の端面がピストン18の端面18aに当接した状態で位置決めされている。
シリンダチューブ14における開口側の端面には、筒状のケーシング21が設けられている。ケーシング21は、シリンダチューブ14における開口側の端面に取り付けられている。ケーシング21におけるシリンダチューブ14とは反対側の開口は、蓋部材22によって閉塞されている。
第1ロッド部20aは、底壁14aに形成された挿通孔14hを介してシリンダチューブ14の外部に突出している。第1ロッド部20aは、シリンダチューブ14に対して出没可能になっている。よって、ピストンロッド20は、シリンダチューブ14に対して出没する。第2ロッド部20bは、ヘッドカバー15に形成された挿通孔15hを介してケーシング21の内部に突出し、蓋部材22に形成された挿通孔22hを貫通してケーシング21の外部に突出している。よって、第2ロッド部20bは、ケーシング21の内部を貫通しており、ケーシング21に対して出没可能になっている。
第1ロッド部20aの突出端部には、第1ロッド部20aの軸方向に対して直交する方向に貫通するリンクピン51が設けられている。よって、リンクピン51の両端部は、第1ロッド部20aの外周面に対して、第1ロッド部20aの周方向で互いに180度離れた位置にそれぞれ突出している。リンクピン51の両端部には、平面視L字状のリンク部52の一端がそれぞれ係止されている。各リンク部52は、支軸54を揺動中心として両リンク部52の他端が互いに接離する方向へ揺動可能になっている。
シリンダチューブ14におけるケーシング21とは反対側の端面には、支持ブロック53が取り付けられている。各リンク部52は、支軸54を介して支持ブロック53に対して回動可能にそれぞれ支持されている。また、支持ブロック53は、第1ロッド部20aの軸方向に対して直交する方向に延びるガイドレール55を有している。ガイドレール55には、各把持爪11の基端部11aが係合されている。各把持爪11の基端部11aには、支軸56が設けられている。各リンク部52の他端は、各支軸56を介して各把持爪11に係合されている。
ピストン18は、第1圧力作用室16aの流体(例えばエア)の圧力をピストン18の端面18bによって受圧するとともに、第2圧力作用室16bの流体の圧力をピストン18の端面18a及びクッションゴム18gにおけるピストン18とは反対側の端面によって受圧する。第1ロッド部20aと第2ロッド部20bとの外径は同じになっているため、ピストン18における第1圧力作用室16a側の受圧面積と、ピストン18における第2圧力作用室16b側の受圧面積とは同じになっている。
把持装置10は、切換弁CV、第1速度制御弁SV1、及び第2速度制御弁SV2を備えている。切換弁CVは、配管C1を介して流体供給源A1に接続されている。第1速度制御弁SV1は、配管C2を介して切換弁CVに接続されている。第2速度制御弁SV2は、配管C3を介して切換弁CVに接続されている。
第1速度制御弁SV1及び第2速度制御弁SV2は、チェック弁SV1a,SV2a及び可変絞り弁SV1b,SV2bをそれぞれ有している。第1速度制御弁SV1は、配管C4を介して第1流体給排ポート17aに接続されている。第2速度制御弁SV2は、配管C5を介して第2流体給排ポート17bに接続されている。
切換弁CVは、両配管C1,C2同士を連通させ、且つ配管C3と外部とを連通させる第1弁体位置と、両配管C1,C3同士を連通させ、且つ配管C2と外部とを連通させる第2弁体位置と、に切り換え可能である。
切換弁CVが第1弁体位置に切り換えられている場合、流体供給源A1からの流体が、配管C1、切換弁CV、配管C2、第1速度制御弁SV1のチェック弁SV1a、及び配管C4を通過して第1流体給排ポート17aに供給される。そして、第1流体給排ポート17aから第1圧力作用室16aに流体が供給されると、ピストン18の端面18bが、第1圧力作用室16aの流体の圧力を受圧して、ピストン18が底壁14aに向けて移動し始める。すると、第2圧力作用室16bの流体が第2流体給排ポート17bから排出されて、配管C5、第2速度制御弁SV2の可変絞り弁SV2b、配管C3、及び切換弁CVを通過して外部へ排出され、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達するまで移動する。これにより、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へ移動する。ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達すると、クッションゴム18gが底壁14aに当接する。これにより、クッションゴム18gが押し潰されてピストン18からの衝撃が吸収され、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドで緩衝的に停止する。
ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へ移動すると、一対のリンク部52が、支軸54を揺動中心として一対のリンク部52の他端が互いに離間する方向へ揺動する。これにより、一対の把持爪11の基端部11aがガイドレール55に沿って互いに離間する方向へ移動し、一対の把持爪11が互いに離間する方向へ移動して一対の把持爪11の開度が大きくなっていく。そして、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達すると、一対の把持爪11の開度が最大になる。
図2に示すように、切換弁CVが第2弁体位置に切り換えられている場合、流体供給源A1からの流体が、配管C1、切換弁CV、配管C3、第2速度制御弁SV2のチェック弁SV2a、及び配管C5を通過して第2流体給排ポート17bに供給される。そして、第2流体給排ポート17bから第2圧力作用室16bに流体が供給されると、ピストン18の端面18a及びクッションゴム18gの端面が、第2圧力作用室16bの流体の圧力を受圧して、ピストン18がヘッドカバー15に向けて移動し始める。すると、第1圧力作用室16aの流体が第1流体給排ポート17aから排出されて、配管C4、第1速度制御弁SV1の可変絞り弁SV1b、配管C2、及び切換弁CVを通過して外部へ排出され、ピストン18がヘッドカバー15に向けて移動する。これにより、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入する方向へ移動する。
ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入する方向へ移動すると、一対のリンク部52が、支軸54を揺動中心として一対のリンク部52の他端が互いに接近する方向へ揺動する。これにより、一対の把持爪11の基端部11aがガイドレール55に沿って互いに接近する方向へ移動し、一対の把持爪11が互いに接近する方向へ移動して一対の把持爪11の開度が小さくなっていく。
よって、ピストンロッド20は、シリンダチューブ14に対して出没して一対の把持爪11を開閉させる。そして、ピストンロッド20における出没方向の一方への移動に伴って一対の把持爪11が把持対象物W1を把持する方向へ動作するとともに、ピストンロッド20における出没方向の他方への移動に伴って一対の把持爪11が把持対象物W1を解放する方向へ動作する。ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入する方向へのピストンロッド20の移動は、ピストンロッド20における出没方向の一方への移動である。ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へのピストンロッド20の移動は、ピストンロッド20における出没方向の他方への移動である。
ピストン18の外径は、ピストン18におけるシリンダ室16に供給される流体の圧力を受圧する受圧面積が、ピストンロッド20における出没方向への移動のみに必要とされる面積となるように設定されている。つまり、本実施形態の把持装置10では、第2圧力作用室16bに供給される流体の圧力のみでは、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態を維持することが不可能な構成になっている。
ケーシング21内には、ピストンロッド20にロックする斜板23が設けられている。斜板23は、ピストンロッド20が貫通する貫通孔23hを有している。斜板23は、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜して、貫通孔23hを形成する斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面とが圧接することにより、ピストンロッド20にロックする。
ケーシング21内には、ピストンロッド20にロックした斜板23と係止してピストンロッド20と一体的にピストンロッド20の出没方向に移動可能な把持力発生ピストン24が設けられている。ピストンロッド20は、把持力発生ピストン24を貫通している。把持力発生ピストン24は、斜板23を取り囲むように配置される円筒状のピストン部25と、ピストン部25の軸方向一端側の開口を閉塞する第1閉塞部26と、ピストン部25の軸方向他端側の開口を閉塞する第2閉塞部27と、を有している。把持力発生ピストン24は、第1閉塞部26が蓋部材22側に位置するとともに、第2閉塞部27がヘッドカバー15側に位置するようにケーシング21内に収容されている。第1閉塞部26は、円環状の第1抜け止め部材28aによって、ピストン部25からの抜け止めがなされている。第2閉塞部27は、円環状の第2抜け止め部材28bによって、ピストン部25からの抜け止めがなされている。
斜板23は、ピストン部25の内側であって、且つ第1閉塞部26と第2閉塞部27との間に配置されている。よって、斜板23は、把持力発生ピストン24に内蔵されている。把持力発生ピストン24の内部において、斜板23と第1閉塞部26との間には、斜板23をピストンロッド20の軸方向に対して傾斜させる方向に斜板23を付勢する斜板ばね28が収容される収容室29が形成されている。
ケーシング21内には、付勢ばね30が設けられている。付勢ばね30は、ケーシング21内において、第2抜け止め部材28bとヘッドカバー15との間に介在されている。付勢ばね30は、把持力発生ピストン24を蓋部材22に向けて付勢する。よって、付勢ばね30は、把持力発生ピストン24をピストンロッド20の出没方向の一方に向けて付勢する。
さらに、ケーシング21内において、蓋部材22と把持力発生ピストン24との間には、付勢ばね30の付勢力に抗して把持力発生ピストン24をヘッドカバー15に向けて付勢するための流体が供給される復帰用圧力室31が設けられている。よって、復帰用圧力室31に供給される流体は、付勢ばね30の付勢力に抗して把持力発生ピストン24をピストンロッド20の出没方向の他方に向けて付勢して把持力発生ピストン24を付勢ばね30によって付勢される前の元の位置に復帰させる。
ケーシング21内において、ピストン部25の内側であって、且つ斜板23と第2閉塞部27との間には、斜板23を、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜していない状態に位置決めするための流体が供給されるロック解除圧力室32が設けられている。斜板23が、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜していない状態では、斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面とが圧接しておらず、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除された状態になっている。よって、ロック解除圧力室32に供給される流体は、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除された状態に斜板23を位置決めする。
また、ケーシング21は、給排ポート33を有している。給排ポート33には、配管C6を介してロック用切換弁RVが接続されている。ロック用切換弁RVは、配管C7を介して配管C1に接続されている。ロック用切換弁RVは、両配管C6,C7同士を連通させる第1弁体位置と、配管C6と外部とを連通させる第2弁体位置と、に切り換え可能になっている。
ピストン部25には、給排ポート33とロック解除圧力室32とを連通させる連通孔25aが形成されている。そして、ロック用切換弁RVが第1弁体位置に切り換えられると、流体供給源A1の流体における配管C1、配管C7、ロック用切換弁RV、及び配管C6を介した給排ポート33への流体の供給が許容され、給排ポート33から連通孔25aを介してロック解除圧力室32に流体が供給される。一方、ロック用切換弁RVが第2弁体位置に切り換えられると、流体供給源A1の流体における配管C1、配管C7、ロック用切換弁RV、及び配管C6を介した給排ポート33への供給が遮断される。そして、給排ポート33からの流体における配管C6及びロック用切換弁RVを介した外部への排出が許容され、ロック解除圧力室32の流体が、連通孔25a及び給排ポート33を介して外部へ排出される。
ピストン部25の外周面における蓋部材22寄り、及びピストン部25の外周面におけるヘッドカバー15寄りには、ウェアリング34,35が装着されている。ウェアリング34,35の外周面は、ピストン部25の外周面よりもピストン部25の径方向外側に位置している。そして、ウェアリング34,35の外周面がケーシング21の内周面に摺接することにより、把持力発生ピストン24が偏心してしまうことが抑制されている。
給排ポート33と復帰用圧力室31とは、ピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間、及びウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間を介して連通している。そして、給排ポート33からの流体は、ピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間、及びウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間を介して復帰用圧力室31に供給される。
ピストン部25の外周面における連通孔25aとウェアリング35との間には、シール部材36が装着されている。シール部材36はリップパッキンである。シール部材36は、給排ポート33からの流体がピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間を介してケーシング21内における第2抜け止め部材28bとヘッドカバー15との間の空間に流れ込むことを抑止する。
斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面との間には、ロック解除圧力室32と収容室29との間をシールする第1シール部材37が設けられている。第1シール部材37はリップパッキンであり、ロック解除圧力室32の流体が斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面との間を介して収容室29に流れ込むことを抑止する。第1閉塞部26の内周面とピストンロッド20の外周面との間には、復帰用圧力室31と収容室29との間をシールする第2シール部材38が設けられている。第2シール部材38はリップパッキンであり、復帰用圧力室31の流体が第1閉塞部26の内周面とピストンロッド20の外周面との間を介して収容室29に流れ込むことを抑止する。
第2閉塞部27の内周面とピストンロッド20の外周面との間には、ロック解除圧力室32とケーシング21内における第2抜け止め部材28bとヘッドカバー15との間の空間との間をシールするシール部材39が設けられている。シール部材39はリップパッキンであり、ロック解除圧力室32の流体が第2閉塞部27の内周面とピストンロッド20の外周面との間を介してケーシング21内における第2抜け止め部材28bとヘッドカバー15との間の空間に流れ込むことを抑止する。
斜板23の外周面には、ロック解除圧力室32と収容室29との間をシールするシール部材40が装着されている。シール部材40はリップパッキンであり、ロック解除圧力室32の流体が斜板23の外周面とピストン部25の内周面との間を介して収容室29に流れ込むことを抑止する。
なお、上記構成の把持装置10は、把持力発生ピストン24が付勢ばね30の付勢力によって蓋部材22側のストロークエンドに到達した状態では、シリンダ室16において、ピストン18は、ヘッドカバー15側のストロークエンドに到達しないようになっている。
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、上記構成の把持装置10を用いて、把持対象物W1を一対の把持爪11によって把持対象物W1の外側から挟み込むようにして把持する際には、まず、切換弁CVを第1弁体位置に切り換える。これにより、流体供給源A1からの流体が第1流体給排ポート17aを介して第1圧力作用室16aに供給されるとともに、第2圧力作用室16bの流体が、第2流体給排ポート17bを介して外部へ排出され、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達するまで移動する。
また、このとき、ロック用切換弁RVは第1弁体位置に切り換えられており、流体供給源A1から給排ポート33への流体の供給が許容され、給排ポート33から連通孔25aを介してロック解除圧力室32に流体が供給されている。そして、ロック解除圧力室32の流体の圧力が斜板23に作用することにより、斜板ばね28の付勢力に抗して、斜板23が押圧されて、斜板23が、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜していない状態に位置決めされており、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除されている。これにより、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へ移動して、一対の把持爪11の開度が最大になる。
また、給排ポート33からピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間、及びウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間を介して復帰用圧力室31に流体が供給されている。そして、復帰用圧力室31の流体の圧力が把持力発生ピストン24に作用することにより、付勢ばね30の付勢力に抗して把持力発生ピストン24がヘッドカバー15側のストロークエンドに到達した状態に維持されている。
図2に示すように、開度が最大である一対の把持爪11の間に把持対象物W1を配置した状態で、切換弁CVを第2弁体位置に切り換える。これにより、流体供給源A1からの流体が第2流体給排ポート17bを介して第2圧力作用室16bに供給されるとともに、第1圧力作用室16aの流体が、第1流体給排ポート17aを介して外部へ排出され、ピストン18がヘッドカバー15に向けて移動する。すると、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入方向へ移動し、一対の把持爪11の開度が小さくなっていく。そして、一対の把持爪11が把持対象物W1に接触する把持位置まで動作する。
図3に示すように、一対の把持爪11が把持位置まで動作すると、ロック用切換弁RVを第2弁体位置に切り換える。これにより、流体供給源A1からの流体における給排ポート33への供給が遮断されるとともに給排ポート33から外部への流体の排出が許容され、ロック解除圧力室32の流体が、連通孔25a及び給排ポート33を介して外部へ排出される。すると、斜板ばね28の付勢力によって、斜板23がピストンロッド20の軸方向に対して傾動して、斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面とが圧接し、斜板23がピストンロッド20にロックする。
さらに、復帰用圧力室31の流体が、ウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間、及びピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間を介して給排ポート33から外部へ排出されるとともに、付勢ばね30の付勢力によって、把持力発生ピストン24が蓋部材22に向けて付勢される。付勢ばね30の撓み量は、把持対象物W1の大きさに無関係に一定である。そして、付勢ばね30の付勢力によって、把持力発生ピストン24が斜板23を介してピストンロッド20と一体的に蓋部材22に向けて移動する。これにより、一対の把持爪11には、付勢ばね30のばね力が、リンク部52を介して伝達され、一対の把持爪11によって把持対象物W1が安定的に把持される。一対の把持爪11における把持対象物W1に対する把持力は、付勢ばね30のばね力によって設定されている。
図4に示すように、例えば、配管C5の接続不良などが生じて、第2圧力作用室16b内の流体が外部に漏れて、シリンダ室16の圧力が低下した状態になったとしても、付勢ばね30の付勢力によって、把持力発生ピストン24が斜板23を介してピストンロッド20と一体的に蓋部材22に向けて付勢されている。よって、シリンダ室16の圧力が低下しても、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態が維持される。
第1の実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1-1)ケーシング21内には、ピストンロッド20にロックする斜板23と、ピストンロッド20にロックした斜板23と係止してピストンロッド20と一体的にピストンロッド20の出没方向に移動可能な把持力発生ピストン24と、把持力発生ピストン24を蓋部材22に向けて付勢する付勢ばね30とが設けられている。また、ケーシング21内には、付勢ばね30の付勢力に抗して把持力発生ピストン24をヘッドカバー15に向けて付勢して把持力発生ピストン24を付勢ばね30によって付勢される前の元の位置に復帰させるための流体が供給される復帰用圧力室31が設けられている。さらに、ケーシング21内には、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除された状態に斜板23を位置決めするための流体が供給されるロック解除圧力室32が設けられている。
そして、一対の把持爪11によって把持対象物W1を把持する際には、ロック解除圧力室32の流体が外部へ排出され、斜板23がピストンロッド20にロックする。また、復帰用圧力室31の流体が外部へ排出され、把持力発生ピストン24が付勢ばね30の付勢力によって、斜板23を介してピストンロッド20と一体的に蓋部材22に向けて付勢される。これにより、一対の把持爪11が、把持力発生ピストン24のストローク分だけ把持対象物W1を把持する方向へ動作し、一対の把持爪11によって把持対象物W1が安定的に把持される。さらに、第2圧力作用室16b内の流体が外部に漏れて、シリンダ室16の圧力が低下した状態になったとしても、付勢ばね30の付勢力によって、把持力発生ピストン24が斜板23を介してピストンロッド20と一体的に蓋部材22に向けて付勢されている。したがって、シリンダ室16の圧力が低下しても、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態を維持することができる。
ピストンロッド20の出没方向への移動は、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除された状態で行われる。したがって、ピストンロッド20の出没方向への移動は、付勢ばね30の弾性力とは無関係に行われる。よって、例えば、従来技術のように、シリンダ室16の容積を、一対の把持爪11の開閉可能ストロークと付勢ばね30の圧縮ストロークとを加えた量に設定する必要が無い。以上のことから、一対の把持爪11の開閉量に関わりなく空気消費量を抑えつつも、シリンダ室16の圧力が低下しても、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態を維持することができる。
(1-2)ピストン18の外径は、ピストン18におけるシリンダ室16に供給される流体の圧力を受圧する受圧面積が、ピストンロッド20における出没方向への移動のみに必要とされる面積となるように設定されている。これによれば、ピストン18の外径を極力小さくすることができるため、シリンダ室16の容積を小さくすることができ、シリンダ室16への流体の供給量をさらに抑えることができる。また、ピストン18の外径を極力小さくすることができるため、把持装置10全体の体格を小型化することができる。さらに、第2圧力作用室16bに供給される流体の圧力のみでは、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態を維持することが不可能な構成になっているため、一対の把持爪11が把持対象物W1に接触する際の衝撃を緩和することができる。
(第2の実施形態)
以下、把持装置を具体化した第2の実施形態を図5~図7にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
図5に示すように、把持装置10は、メイン切換弁61、サブ切換弁62、第1速度制御弁SV1、及び第2速度制御弁SV2を備えている。メイン切換弁61は、配管C11を介して流体供給源A1に接続されている。また、メイン切換弁61は、配管C12を介して給排ポート33に接続されている。メイン切換弁61は、両配管C11,C12同士を連通させる第1弁体位置と、配管C12と外部とを連通させる第2弁体位置と、に切り換え可能になっている。
サブ切換弁62は、配管C13を介して配管C12に接続されている。また、第1速度制御弁SV1は、配管C14を介してサブ切換弁62に接続されている。第2速度制御弁SV2は、配管C15を介してサブ切換弁62に接続されている。サブ切換弁62は、両配管C13,C14同士を連通させ、且つ配管C15と外部とを連通させる第1弁体位置と、両配管C13,C15同士を連通させ、且つ配管C14と外部とを連通させる第2弁体位置と、に切り換え可能になっている。
第2の実施形態におけるピストン18の外径は、ピストン18におけるシリンダ室16に供給される流体の圧力を受圧する受圧面積が、第2圧力作用室16bに供給される流体の圧力のみで、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態を維持することが可能となる面積となるように設定されている。したがって、第2の実施形態におけるピストン18の外径は、第1の実施形態におけるピストン18の外径よりも大きい。
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
上記構成の把持装置10を用いて、把持対象物W1を一対の把持爪11によって把持対象物W1の外側から挟み込むようにして把持する際には、まず、メイン切換弁61及びサブ切換弁62をそれぞれ第1弁体位置に切り換える。これにより、流体供給源A1からの流体が、配管C11、メイン切換弁61、配管C12、配管C13、サブ切換弁62、配管C14、第1速度制御弁SV1のチェック弁SV1a、配管C4、及び第1流体給排ポート17aを介して第1圧力作用室16aに供給される。また、第2圧力作用室16bの流体が、第2流体給排ポート17b、配管C5、第2速度制御弁SV2の可変絞り弁SV2b、配管C15、及びサブ切換弁62を介して外部へ排出される。その結果、ピストン18が底壁14a側のストロークエンドに到達するまで移動する。
また、このとき、流体供給源A1から流体が、配管C11、メイン切換弁61、配管C12、給排ポート33、及び連通孔25aを介してロック解除圧力室32に供給されている。そして、ロック解除圧力室32の流体の圧力が斜板23に作用することにより、斜板ばね28の付勢力に抗して、斜板23が押圧されて、斜板23が、ピストンロッド20の軸方向に対して傾斜していない状態に位置決めされており、斜板23におけるピストンロッド20に対するロックが解除されている。これにより、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へ移動して、一対の把持爪11の開度が最大になる。
また、給排ポート33からピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間、及びウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間を介して復帰用圧力室31に流体が供給されている。そして、復帰用圧力室31の流体の圧力が把持力発生ピストン24に作用することにより、付勢ばね30の付勢力に抗して把持力発生ピストン24がヘッドカバー15側のストロークエンドに到達した状態に維持されている。
図6に示すように、開度が最大である一対の把持爪11の間に把持対象物W1を配置した状態で、サブ切換弁62を第2弁体位置に切り換える。これにより、流体供給源A1からの流体が、配管C11、メイン切換弁61、配管C12、配管C13、サブ切換弁62、配管C15、第2速度制御弁SV2のチェック弁SV2a、配管C5、及び第2流体給排ポート17bを介して第2圧力作用室16bに供給される。また、第1圧力作用室16aの流体が、第1流体給排ポート17a、配管C4、第1速度制御弁SV1の可変絞り弁SV1b、配管C14、及びサブ切換弁62を介して外部へ排出される。その結果、ピストン18がヘッドカバー15に向けて移動する。すると、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入方向へ移動し、一対の把持爪11の開度が小さくなっていく。そして、一対の把持爪11が把持対象物W1に当接する。
ここで、第2の実施形態では、ピストン18の外径が、ピストン18におけるシリンダ室16に供給される流体の圧力を受圧する受圧面積が、第2圧力作用室16bに供給される流体の圧力のみで、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態を維持することが可能となる面積となるように設定されている。よって、一対の把持爪11によって把持対象物W1が安定的に把持される。
図7に示すように、一対の把持爪11によって把持対象物W1を把持した状態において、メイン切換弁61が第2弁体位置に切り換えられたとする。すると、第2圧力作用室16bの流体が、第2流体給排ポート17b、配管C5、第2速度制御弁SV2の可変絞り弁SV2b、配管C15、サブ切換弁62、配管C13、配管C12、及びメイン切換弁61を介して外部へ排出される。これにより、シリンダ室16の圧力が低下した状態となる。
このとき、ロック解除圧力室32の流体が、連通孔25a、給排ポート33、配管C12、及びメイン切換弁61を介して外部へ排出される。すると、斜板ばね28の付勢力によって、斜板23がピストンロッド20の軸方向に対して傾動して、斜板23の内周面とピストンロッド20の外周面とが圧接し、斜板23がピストンロッド20にロックする。
さらに、復帰用圧力室31の流体が、ウェアリング34の外周面とケーシング21の内周面との間、及びピストン部25の外周面とケーシング21の内周面との間を介して給排ポート33から外部へ排出されるとともに、付勢ばね30の付勢力によって、把持力発生ピストン24が蓋部材22に向けて付勢される。そして、付勢ばね30の付勢力によって、把持力発生ピストン24が斜板23を介してピストンロッド20と一体的に蓋部材22に向けて移動する。これにより、一対の把持爪11が、把持力発生ピストン24のストローク分だけ把持対象物W1を把持する方向へ動作し、一対の把持爪11によって把持対象物W1が安定的に把持される。その結果、シリンダ室16の圧力が低下しても、一対の把持爪11における把持対象物W1の把持状態が維持される。したがって、第2の実施形態では、第1の実施形態の効果(1-1)と同様の効果を得ることができる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ 上記各実施形態において、第1圧力作用室16a及び第2圧力作用室16bに流体がそれぞれ供給された状態とすることにより、ピストン18におけるシリンダ室16での移動を停止させてバランス状態とし、その後、ロック解除圧力室32の流体を外部へ排出し、斜板23がピストンロッド20にロックするようにしてもよい。これによれば、付勢ばね30の付勢力によって、把持力発生ピストン24が斜板23を介してピストンロッド20と一体的に蓋部材22に向けて移動する際に、ピストン18が急加速して移動してしまうことが抑制されるため、ピストンロッド20の移動を安定させることができる。
・ 上記各実施形態において、復帰用圧力室31の流体を給排する給排ポートと、ロック解除圧力室32の流体を給排する給排ポートとをそれぞれケーシング21に設けてもよい。
・ 上記各実施形態において、ピストン18における第1圧力作用室16a側の受圧面積と、ピストン18における第2圧力作用室16b側の受圧面積とは同じでなくてもよい。
・ 上記各実施形態において、マグネット19を用いてピストン18の位置を検出する構成でなくてもよく、例えば、第2ロッド部20bにおけるケーシング21からの外部への突出量によって、ピストン18の位置を検出する構成であってもよい。
・ 上記各実施形態では、把持対象物W1を一対の把持爪11によって把持対象物W1の外側から挟み込むようにして把持したが、これに限らず、例えば、筒状の把持対象物W1の内側に一対の把持爪11を配置して、一対の把持爪11の開度を大きくすることにより把持対象物W1を内側から支持するように把持する把持装置10であってもよい。この場合、ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して突出する方向へのピストンロッド20の移動は、ピストンロッド20における出没方向の一方への移動である。ピストンロッド20の第1ロッド部20aがシリンダチューブ14に対して没入する方向へのピストンロッド20の移動は、ピストンロッド20における出没方向の他方への移動である。そして、付勢ばね30、復帰用圧力室31、及びロック解除圧力室32の配置位置が、ピストンロッド20の軸方向において上記各実施形態から反転し、一対の把持爪11によって把持された把持対象物W1を把持する際の、把持力発生ピストン24の移動方向が上記各実施形態とは逆になる。