JP7162504B2 - ジルコニア-炭素含有耐火物の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら,前記特許文献1,2に記載のジルコニア-黒鉛質耐火物及びジルコニア-黒鉛材料は,現在の高生産の操業時においては,耐熱衝撃性と耐食性の双方を十分に満足するものとはいえない。
さらに,アルミナ-黒鉛材質やアルミナ-シリカ-黒鉛材質など,数種類の材質から構成された浸漬ノズルには,受鋼時の熱的な構造安定性の観点から,比較的リニアな熱膨張特性を示すCaO,MgO,Y2O3等を3~10質量%含有する部分安定化骨材や完全安定化骨材原料を適用するのが一般的である。また,骨材間を接着する結合炭素を含むため,パウダー・ライン部に使用されるZrO2-C材質中のZrO2成分の含有率は約86質量%が上限とされている。さらに,割れの発生頻度が少なく,安定操業が可能な高耐食性用パウダー・ライン部として使用するため,一般にはZrO2成分の含有率は82質量%以下として使用されている。
すなわち,従来技術では,ZrO2成分の含有率が80質量%程度までは,ZrO2成分の含有率が高いほどパウダーに対する耐食性は向上するが,ZrO2成分が80質量%程度を超える領域になると,逆に耐食性が低下する傾向となる。このことからZrO2成分の含有率の上限は82質量%程度に止まっていた。
ジルコニア原料を84質量%以上95質量%以下含み,残部が主として黒鉛から成る配合物に,粒径100μm以下の含有率が80質量%以上である珪化ジルコニウムを前記配合物の合量100質量%に対して外掛けで0.5質量%以上3質量%以下添加して成る原料配合物を,有機バインダーとともに混練,成形した後,1200℃以下の非酸化雰囲気中で熱処理することを特徴とするジルコニア-炭素含有耐火物の製造方法。
一般に,見掛け気孔率が低い材質ほどスラグの浸潤が抑えられ,耐食性は向上するとされている。本発明によれば,珪化ジルコニウム由来の酸化物の生成により見掛け気孔率が減少することで,耐食性が向上する。
このように,珪化ジルコニウムの反応によって,見掛け気孔率を低下させる効果と,CaO安定化ジルコニア粒子等のジルコニア粒子を崩壊させる脱安定化現象が競合していると考えられるところ,本発明では珪化ジルコニウムの外掛け添加量を0.5~3質量%としたことで,脱安定化現象により耐食性低下する効果よりも,気孔を閉塞し耐食性を向上する効果のほうが優位となり,耐食性が向上したと考えられる。一方,珪化ジルコニウムの外掛け添加量が3質量%超の場合には,脱安定化現象により耐食性を低下させる効果の方が気孔を閉塞して耐食性を向上させる効果よりも優位となって,耐食性が低下すると考えられる。以上のように,適正添加量であれば耐食性が向上する。
本発明においては,そのような特にZrO2成分を80質量%以上含有する高い耐食性を要求されるジルコニア-炭素含有耐火物に珪化ジルコニウムを含有させることにより,顕著な耐食性改善を実現することができる。ひいては鋼の連続鋳造における長時間操業に耐え得る連続鋳造用浸漬ノズルを提供することができる。
第1の工程として,ジルコニア材料,炭素基質材料,耐火物中の炭素成分の酸化防止や金属としての珪化ジルコニウム,その他金属,金属炭化物,金属窒化物等の微量材料等の,粉末状の耐火原料(以下単に「骨材粒子」ともいう。)を混和して原料配合物を得,さらにそれに有機バインダーを添加して混練し,成形用のはい土を得る。
この原料配合物を得る混和工程において,ジルコニア原料を84質量%以上95質量%以下含み,残部が主として黒鉛から成る配合物に,粒径100μm以下の含有率が80質量%以上である珪化ジルコニウムを前記配合物の合量100質量%に対して外掛けで0.5質量%以上3質量%以下添加する。
そうすると,ジルコニア-炭素含有耐火物の組織中の気孔径内に分散した珪化ジルコニウムが前記気孔内でCOガス雰囲気に曝されることにより,ZrO2及びSiO2を含有する酸化物粒子へと変化する。その際に体積が膨張して空間である前記気孔を減少または閉塞させ,スラグの浸透を抑制して溶損速度を低下させるものと考えられる。
また,この珪化ジルコニウムの純度は,80質量%以上であることが好ましい。珪化ジルコニウムの純度が80質量%未満であると,十分な見掛け気孔率低減効果が得られない可能性がある。
ここで,「安定化度50%以上のジルコニア」としては,CaO,MgO,Y2O3等で部分安定化又は完全安定化されたジルコニア骨材を使用することができる。特に,耐熱衝撃性を高めつつZrO2含有率を高める点から,少量の添加で安定化効果が比較的大きなCaO安定化ジルコニアを用いるのが最も好ましい。
混和,混練にはそれぞれ耐火物の混和,混練用に使用される一般的なミキサーが使用できる。
混練時に添加する有機バインダーとしては,ピッチ,タール,フェノール樹脂等,熱処理により残留炭素を示すものを使用することができ,これらの何れか一若しくはこれらを任意に組み合わせた混合物等を使用することができる。炭素の結合の形成を多くするために,できるだけ残留炭素の割合が多いものが好ましい。
なお,この成形時の圧力等は,成形体の構造,大きさ等の個別の設計条件に応じて最適な条件に適宜調整することができる。
熱処理工程における非酸化雰囲気は,炭素質の充填材で満たされた,又は単に外気を遮断した密閉容器による非酸化雰囲気中であればよい。最高熱処理温度は約600℃~約1200℃程度とすることができる。しかし,操業時の予熱工程での熱を利用して熱処理と同様の効果を得ることができる場合は,約600℃未満での熱処理による製品とすることも可能である。いずれの場合にも,最高温度での熱処理前に,溶剤や水分を除去するため,又は有機バインダーの強度発現を促進する目的で,150℃~250℃程度の温度での乾燥工程を加えることが好ましい。
その後,前記乾燥,熱処理した成形体を必要に応じて表面加工し,メタルケース等の付帯物を設置する。
前記特許文献3に,この技術思想を示しているが,前記特許文献3においては,見掛け気孔率と炭素基質材料の合計はが25体積%以上42体積%以下としていた。この下限値25体積%は主として当該耐火物の一定レベルの耐熱衝撃性を確保するための好ましい値であり,上限値42体積%は当該耐火物の一定レベルの耐食性を確保するための好ましい値である。すなわちこの下限値未満であると耐食性は向上するものの,耐熱衝撃性が好ましいレベルよりも低下し,この上限値を超えると耐熱衝撃性は向上するものの,耐食性が好ましいレベルよりも低下するからである。
本発明では,珪化ジルコニウムの耐食性向上効果により,この上限値を45体積%とすることができる。
耐食性即ち溶損性の評価は,1550℃で溶解した低炭鋼の表面にCaO/SiO2質量比を1.0に調整したモールド・パウダーを約30mm浮かべたルツボ中に,所定のジルコニア-炭素含有耐火物の角柱試料(20×20×180mm)を60分間浸漬し,引き上げた後に,溶鋼-溶融パウダー界面位置の溶損量を測定し,その程度を比較する方法にて行った。
この溶損量の値は,比較例1の溶損量を100とする指数にて表示しており,溶損指数100未満が課題解決の効果が認められる。
一方で比較例2に示す珪化ジルコニウム添加量が0.5質量%未満の場合,及び比較例3に示す珪化ジルコニウム添加量が3質量%超の場合には,耐食性の向上効果が得られないことがわかる。
なお,浸漬試験後の見掛け気孔率減少指数が,実施値では92以下,最小81となっており,耐火物組織が緻密化していることがわかる。
Claims (1)
- ジルコニア原料を84質量%以上95質量%以下含み,残部が主として黒鉛から成る配合物に,粒径100μm以下の含有率が80質量%以上である珪化ジルコニウムを前記配合物の合量100質量%に対して外掛けで0.5質量%以上3質量%以下添加して成る原料配合物を,有機バインダーとともに混練,成形した後,1200℃以下の非酸化雰囲気中で熱処理することを特徴とするジルコニア-炭素含有耐火物の製造方法。
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