JP7156638B2 - コーティング剤、樹脂部材及びその製造方法 - Google Patents

コーティング剤、樹脂部材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コーティング剤、樹脂部材及びその製造方法に関する。
従来、自動車や鉄道等の車両を構成する部品には、鋼やアルミニウム、ガラス等の無機材料が使用されてきた。近年では、車両の軽量化を目的として、無機材料からなる部品から、プラスチック等の有機材料からなる部品への置き換えが進んでいる。しかし、有機材料は、無機材料に比べて軽量である反面、軟らかく、傷がつきやすい。
そこで、有機材料からなる部品の傷に対する耐久性を向上させるために、部品の表面に硬い皮膜を形成する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、樹脂製基材と、樹脂製基材の表面に形成されたプライマー層と、プライマー層の上に形成されたハードコート層とを有する被覆部材が記載されている。
このような2層構造の皮膜は、例えば、樹脂製基材上に液状のプライマーを塗布する工程、プライマーを乾燥させてプライマー層を形成する工程、プライマー層上に液状のコーティング剤を塗布する工程、コーティング剤を硬化させてハードコート層を形成する工程を順次行うことにより作製することができる。
特開2006-240294号公報
しかし、特許文献1の被覆部材のように、プライマー層とハードコート層との2層構造からなる皮膜を形成するに当たっては、樹脂製基材上にプライマーを塗布する工程、プライマーを乾燥させてプライマー層を形成する工程、プライマー層上にコーティング剤を塗布する工程及びコーティング剤を硬化させてハードコート層を形成する工程を順次行う必要がある。そのため、皮膜の形成作業が煩雑になるとともに、皮膜の形成作業に要するコストの増大を招いている。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、樹脂からなる基材との密着性に優れ、かつ、傷に対する耐久性の高いコーティング膜を簡素な作業により形成することができるコーティング剤、このコーティング剤から形成されたコーティング膜を有する樹脂部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、ラジカル重合性官能基、フルオロアルキル基及びアルコキシシリル基を備えた有機ケイ素化合物(A)を含む膜形成成分と、
紫外光が照射された場合に塩基とラジカルとを発生させる光塩基発生剤と、を有し、
前記有機ケイ素化合物(A)は、(a1)ラジカル重合性官能基とフルオロアルキル基とを備えたアルコキシシランモノマーの縮合生成物、(a2)(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランと、フルオロアルキル基を有するアルコキシシランとの縮合生成物、(a3)ラジカル重合性官能基、フルオロアルキル基及びアルコキシシリル基を備えたシルセスキオキサンからなる群より選択される1種または2種以上の化合物であり、
前記膜形成成分を100質量部とした場合に、前記光塩基発生剤の含有量が0.1~50質量部である、コーティング剤にある。
本発明の参考態様は、ラジカル重合性官能基とアルコキシシリル基とを備えた有機ケイ素化合物(B)と、フルオロアルキル基とアルコキシシリル基とを備えた有機ケイ素化合物(C)と、を含む膜形成成分と、
紫外光が照射された場合に塩基とラジカルとを発生させる光塩基発生剤と、を有し、
前記膜形成成分を100質量部とした場合に、前記光塩基発生剤の含有量が0.1~50質量部である、コーティング剤にある。
本発明の更に他の態様は、樹脂からなる基材と、
前記の態様のコーティング剤の硬化物からなり、前記基材の表面上に配置されたコーティング膜と、を有し、
前記コーティング膜は、
前記ラジカル重合性官能基に由来する構造単位と、
シロキサン結合を有する構造単位と、
前記フルオロアルキル基と、を含む、樹脂部材にある。
前記コーティング剤の第1の態様において、コーティング剤中には、前記特定の官能基を備えた有機ケイ素化合物(A)と、紫外光が照射された場合に塩基とラジカルとを発生させる光塩基発生剤とが含まれている。また、前記コーティング剤の第2の態様において、コーティング剤中には、前記特定の官能基を備えた有機ケイ素化合物(B)及び有機ケイ素化合物(C)と、紫外光が照射された場合に塩基とラジカルとを発生させる光塩基発生剤とが含まれている。かかる組成を有するコーティング剤に紫外光を照射した場合、光塩基発生剤から塩基とラジカルとが発生する。
光塩基発生剤から発生した塩基は、有機ケイ素化合物(A)~(C)に含まれるアルコキシシリル基と反応することにより、有機ケイ素化合物(A)~(C)同士のゾルゲル反応による硬化を進行させることができる。更に、光塩基発生剤から発生したラジカルは、有機ケイ素化合物(A)及び有機ケイ素化合物(B)に含まれるラジカル重合性官能基と反応し、ラジカル重合を進行させることができる。
このように、前記コーティング剤は、紫外光を照射した場合にゾルゲル反応とラジカル重合とを並行して進行させることができる。その結果、ラジカル重合によって結合された有機成分と、ゾルゲル反応によって結合された無機成分とが混ざり合ったコーティング膜を形成することができる。
前記の方法により形成されたコーティング膜は、樹脂からなる基材との界面に、ラジカル重合性官能基に由来する構成単位を有している。そのため、前記コーティング膜は、基材との密着性に優れている。また、前記コーティング膜中にはシロキサン結合を有する構造単位、つまり、ゾルゲル反応によって形成された無機成分が含まれている。この無機成分の存在により、コーティング膜の表面の硬さを硬くすることができる。
更に、前記の方法により形成されたコーティング膜は、表面の潤滑性に優れている。この理由としては、例えば以下のような理由が考えられる。
コーティング膜中には、有機ケイ素化合物(A)及び有機ケイ素化合物(C)のうち少なくとも一方に由来するフルオロアルキル基が含まれている。コーティング膜の形成過程において基材上にコーティング剤を塗布すると、コーティング剤中の各成分は、コーティング剤の表面自由エネルギーが最小となるような配置をとる。このとき、有機ケイ素化合物(A)及び有機ケイ素化合物(C)中のフルオロアルキル基は、コーティング剤の表面自由エネルギーを最小にするため、コーティング剤の最表面に露出していると推測される。
かかる状態でコーティング剤を硬化させることにより、コーティング膜の最表面にフルオロアルキル基を露出させることができる。また、フルオロアルキル基がコーティング膜の最表面に露出することに伴い、有機ケイ素化合物(A)~(C)に由来するシロキサン結合がコーティング膜の表面近傍に集まりやすくなる。その結果、コーティング膜の表面に存在するフルオロアルキル基及びシロキサン結合の量をより多くし、コーティング膜の潤滑性を向上させることができると考えられる。
以上のように、前記コーティング剤を硬化させることにより、基材との密着性に優れたコーティング膜を得ることができる。また、このコーティング膜は、表面の硬さが硬く、高い潤滑性を有するため、傷に対する耐久性に優れている。更に、前記コーティング膜は、密着性を向上させるためのプライマー層と、表面の硬さを硬くするハードコート層とからなる従来の2層構造の皮膜と同等の機能を単一の層により実現することができる。それ故、前記コーティング剤を用いることにより、皮膜の形成作業の工程数を削減し、簡素な工程でコーティング膜を形成することができる。
前記コーティング剤に含まれる成分について説明する。前記コーティング剤には、必須成分としての膜形成成分と、光塩基発生剤とが含まれている。膜形成成分は、ゾルゲル反応またはラジカル重合によって重合し得る成分である。前記コーティング剤の第1の態様における膜形成成分は、有機ケイ素化合物(A)を含んでいる。
即ち、前記コーティング剤の第1の態様において、膜形成成分は、有機ケイ素化合物(A)のみを含んでいてもよいし、有機ケイ素化合物(A)に加えて有機ケイ素化合物(B)または有機ケイ素化合物(C)のうちいずれか一方を含んでいてもよい。膜形成成分中に有機ケイ素化合物(A)が含まれている場合には、コーティング剤中に、ラジカル重合性官能基、フルオロアルキル基及びアルコキシシリル基を備えた成分が確実に含まれている。それ故、かかるコーティング剤を硬化させることにより、基材との密着性に優れ、潤滑性が高く、硬いコーティング膜を形成することができる。
前記コーティング剤の第2の態様における膜形成成分は、有機ケイ素化合物(B)と有機ケイ素化合物(C)との両方を含んでいる。この場合、コーティング剤を硬化させる際に、有機ケイ素化合物(B)のアルコキシシリル基と有機ケイ素化合物(C)のアルコキシシリル基とを縮合させることができる。そのため、この場合には、コーティング剤を硬化させる過程において、ラジカル重合性官能基、フルオロアルキル基及びアルコキシシリル基を備えた成分を形成することができる。その結果、基材との密着性に優れ、潤滑性が高く、硬いコーティング膜を形成することができる。
・有機ケイ素化合物(A)
有機ケイ素化合物(A)は、1分子中に、ラジカル重合性官能基と、フルオロアルキル基と、アルコキシシリル基と、を有している。
有機ケイ素化合物(A)に含まれるラジカル重合性官能基は、ラジカル重合により重合可能な官能基である。ラジカル重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基等を使用することができる。有機ケイ素化合物(A)は、ラジカル重合性官能基として、これらの官能基から選択される1種の官能基のみを有していてもよいし、2種以上の官能基を有していてもよい。ラジカル重合反応における反応性を高める観点からは、有機ケイ素化合物(A)は、ラジカル重合性官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基のうち1種または2種を有していることが好ましい。
有機ケイ素化合物(A)に含まれるフルオロアルキル基は、炭化水素基の一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換されてなる官能基である。フルオロアルキル基としては、例えば、一般式CF3(CF2nCH2CH2-(但し、nは0以上の整数)で表されるフルオロアルキル基を採用することができる。かかるフルオロアルキル基としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル基等がある。有機ケイ素化合物(A)は、フルオロアルキル基として、これらの官能基から選択される1種の官能基を有していてもよいし、2種以上の官能基を有していてもよい。
有機ケイ素化合物(A)に含まれるアルコキシシリル基は、例えば、アルコキシシランモノマーの形態で存在していてもよいし、シロキサン骨格に結合していてもよい。シロキサン骨格の例としては、例えば、アルコキシシランオリゴマーやアルコキシシランポリマー等のアルコキシシランの縮合生成物に含まれる部分構造や、かご型構造を有するシルセスキオキサン、はしご型構造を有するシルセスキオキサン、ランダム構造を有するシルセスキオキサン等がある。
より具体的には、有機ケイ素化合物(A)としては、例えば、以下の化合物を使用することができる。
(a1)ラジカル重合性官能基とフルオロアルキル基とを備えたアルコキシシランモノマーの縮合生成物。(a2)3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランと、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキル基を有するアルコキシシランとの縮合生成物。(a3)ラジカル重合性官能基、フルオロアルキル基及びアルコキシシリル基を備えたシルセスキオキサン。シルセスキオキサンの分子量は、例えば、数百~数万の範囲から適宜選択することができる。
有機ケイ素化合物(A)としては、これらの化合物(a1)~(a3)から選択される1種または2種以上の化合物を使用することができる。
・有機ケイ素化合物(B)
有機ケイ素化合物(B)は、1分子中に、ラジカル重合性官能基と、アルコキシシリル基と、を有している。
有機ケイ素化合物(B)に含まれるラジカル重合性官能基としては、有機ケイ素化合物(A)に含まれるラジカル重合性官能基と同様の官能基を使用することができる。有機ケイ素化合物(B)は、ラジカル重合性官能基として、前述した官能基から選択される1種の官能基のみを有していてもよいし、2種以上の官能基を有していてもよい。ラジカル重合反応における反応性を高める観点からは、有機ケイ素化合物(B)は、ラジカル重合性官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基のうち1種または2種を有していることが好ましい。
有機ケイ素化合物(B)に含まれるアルコキシシリル基は、有機ケイ素化合物(A)と同様に、アルコキシシランモノマーの形態で存在していてもよいし、シロキサン骨格に結合していてもよい。
より具体的には、有機ケイ素化合物(B)としては、例えば、以下の化合物を使用することができる。
(b1)3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の、ラジカル重合性官能基を備えたアルコキシシランモノマー。(b2)ラジカル重合性官能基とアルコキシシリル基とを備えたシルセスキオキサン。(b3)ラジカル重合性官能基を備えたアルコキシシランモノマー(b1)及びラジカル重合性官能基とアルコキシシリル基とを備えたシルセスキオキサン(b2)のうち少なくとも一方をモノマーとする縮合生成物。
有機ケイ素化合物(B)としては、これらの化合物(b1)~(b3)から選択される1種または2種以上の化合物を使用することができる。
・有機ケイ素化合物(C)
有機ケイ素化合物(C)は、1分子中に、フルオロアルキル基と、アルコキシシリル基と、を有している。
有機ケイ素化合物(C)に含まれるフルオロアルキル基としては、有機ケイ素化合物(A)に含まれるフルオロアルキル基と同様の官能基を使用することができる。有機ケイ素化合物(C)は、フルオロアルキル基として、前述した官能基から選択される1種の官能基のみを有していてもよいし、2種以上の官能基を有していてもよい。
より具体的には、有機ケイ素化合物(C)としては、例えば、以下の化合物を使用することができる。
(c1)3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキル基を備えたアルコキシシランモノマー。(c2)フルオロアルキル基とアルコキシシリル基とを備えたシルセスキオキサン。(c3)フルオロアルキル基を備えたアルコキシシランモノマー(c1)及びフルオロアルキル基とアルコキシシリル基とを備えたシルセスキオキサン(c2)のうち少なくとも一方をモノマーとする縮合生成物。
有機ケイ素化合物(C)としては、これらの化合物(c1)~(c3)から選択される1種または2種以上の化合物を使用することができる。
有機ケイ素化合物(A)~(C)に含まれるラジカル重合性官能基の合計は、モル比において、有機ケイ素化合物(A)~(C)に含まれるフルオロアルキル基の合計の0.1~2.0倍であることが好ましい。この場合には、コーティング剤中に含まれるラジカル重合性官能基の数とフルオロアルキル基の数とのバランスを適正な範囲にすることができる。その結果、コーティング膜と基材との密着性と、コーティング膜の表面の潤滑性とを両立させることができる。
コーティング膜と基材との密着性と、コーティング膜の表面の潤滑性とをよりバランスよく高める観点からは、有機ケイ素化合物(A)~(C)に含まれるラジカル重合性官能基の合計が、モル比において、有機ケイ素化合物(A)~(C)に含まれるフルオロアルキル基の合計の0.15~1.5倍であることがより好ましく、0.20~1.25倍であることがさらに好ましく、0.25~1.2倍であることが特に好ましい。
・重合性エステル
前記膜形成成分中には、前述した有機ケイ素化合物(A)~(C)に加えて、更に、ラジカル重合性官能基を備えた重合性エステル(但し、前記有機ケイ素化合物(A)~(C)を除く。)が含まれていてもよい。重合性エステルは、光塩基発生剤から発生したラジカルによってラジカル重合し、コーティング膜中に有機成分を形成することができる。また、重合性エステルは、有機ケイ素化合物(A)及び(B)に含まれるラジカル重合性官能基と反応し、これらの有機ケイ素化合物に結合することができる。
膜形成成分中に重合性エステルを配合することにより、硬化後のコーティング膜の硬さを維持しつつ、コーティング膜の柔軟性をより向上させることができる。その結果、樹脂からなる基材とコーティング膜との密着性をより向上させることができる。
重合性エステルの含有量は、質量比において有機ケイ素化合物(A)~(C)の合計の0.1~1000倍であることが好ましい。この場合には、無機成分によるコーティング膜の硬さ向上の効果を得つつ、有機成分によってコーティング膜の柔軟性をより向上させることができる。
重合性エステルによる前述した作用効果をより確実に得る観点からは、重合性エステルの含有量を有機ケイ素化合物(A)~(C)の合計の1~100倍とすることがより好ましく、2~50倍とすることがさらに好ましく、4~10倍とすることが特に好ましい。
重合性エステルとしては、ラジカル重合性官能基を有するエステル化合物を使用することができる。なお、分子構造中に、ラジカル重合性官能基とともにアルコキシシリル基を含む化合物は、上述した有機ケイ素化合物(A)または有機ケイ素化合物(B)のいずれかとして取り扱われるものとし、重合性エステルからは除外される。
重合性エステルに含まれるラジカル重合性官能基としては、有機ケイ素化合物(A)~(B)と同様の官能基を使用することができる。また、重合性エステルに含まれるラジカル重合性官能基は、有機ケイ素化合物(A)~(B)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
より具体的には、重合性エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、1-メチルエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のモノエステル;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート等のジエステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート等の、アクリロイル基を3つ以上備えたエステル等を使用することができる。
前記コーティング剤においては、これらの重合性エステルを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、重合性エステルは、上述した化合物のモノマーであってもよいし、予め複数個のモノマーを重合させたオリゴマーであってもよい。
前記重合性エステルは、1分子当たり3個以上のラジカル重合性官能基を有していることが好ましい。この場合には、重合性エステルに由来する構造単位と有機ケイ素化合物(A)~(C)に由来する構造単位とを網目状に重合させることができる。その結果、コーティング膜の硬さをより硬くし、傷に対する耐久性をより向上させることができる。
・光塩基発生剤
前記コーティング剤中には、100質量部の膜形成成分に対して0.1~50質量部の光塩基発生剤が含まれている。光塩基発生剤の含有量が0.1質量部未満の場合には、紫外光を照射した場合に光塩基発生剤から発生するラジカルや塩基の量が不足するおそれがある。その結果、コーティング剤が十分に硬化せず、コーティング膜の硬さの低下を招くおそれがある。コーティング剤の含有量を0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。
コーティング剤の硬化をより促進させる観点からは、光塩基発生剤の含有量を多くすることが好ましい。しかし、光塩基発生剤の含有量が過度に多くなると、光塩基発生剤への紫外光の吸収量が大きくなる。その結果、コーティング剤に紫外光を照射した場合に、コーティング剤の深部まで到達する紫外光の光量が不足するおそれがある。更に、光塩基発生剤の量によっては、光塩基発生剤から発生した塩基が触媒となって、基材の樹脂の加水分解が促進されるおそれもある。これらの問題を回避する観点から、光塩基発生剤の含有量は50質量部以下とする。同様の観点から、光塩基発生剤の含有量を45質量部以下とすることが好ましく、30質量部以下とすることがより好ましく、20質量部以下とすることがさらに好ましい。
光塩基発生剤は、分子構造中に、紫外光を吸収する紫外光吸収部と、紫外光吸収部に結合した塩基部とを有している。紫外光吸収部は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アントラキノン環、キサンテン環、チオキサンテン環等の芳香族環を含む構造単位を有しており、紫外光を吸収した場合にラジカルを生成することができる。
また、塩基部は、例えば、第1級~第3級のアミノ基、第4級アンモニウムカチオン、カルバモイル基、カルバメート結合、イミド結合、窒素を含む複素環等の、紫外光吸収部から脱離した際に塩基となる構造単位を含んでいる。塩基部は、紫外光吸収部が紫外光を吸収した場合に、紫外光吸収部から脱離して塩基を生成することができる。
より具体的には、光塩基発生剤としては、例えば、芳香族カルボン酸と強塩基との塩を使用することができる。芳香族カルボン酸としては、例えば、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸等のキサントン骨格を有するカルボン酸や、2-(9-チオキサンテン-2-イル)プロピオン酸等のチオキサントン骨格を有するカルボン酸等を使用することができる。強塩基としては、例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等の化合物を使用することができる。
前記コーティング剤中には、光塩基発生剤として、キサントン骨格またはチオキサントン骨格を有する化合物が含まれていることが好ましい。これらの骨格を有する光塩基発生剤は、紫外光の吸収効率に優れているため、紫外光を吸収した際に、効率よくラジカルと塩基とを発生させることができる。そのため、キサントン骨格またはチオキサントン骨格を有する光塩基発生剤を使用することにより、コーティング剤の硬化に要する紫外光の光量をより低減することができる。
また、前記コーティング剤中には、光塩基発生剤として、アニオンと、前記アニオンに結合したカチオンとを備えたイオン型の光塩基発生剤が含まれていることが好ましい。イオン型の光塩基発生剤は、紫外光を照射した際に、アルコキシシリル基との反応性が高い強塩基を発生させることができる。そのため、イオン型の光塩基発生剤を使用することにより、有機ケイ素化合物(A)~(C)同士のゾルゲル反応をより促進させることができる。
・その他の添加剤
前記コーティング剤中には、前述した有機ケイ素化合物(A)~(C)及び光塩基発生剤の他に、コーティング剤の硬化を損なわない範囲で、コーティング膜の特性を調整するための添加剤が含まれていてもよい。例えば、前記コーティング剤中には、添加剤として、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の、コーティング膜の劣化を抑制するための添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤を使用することにより、コーティング膜の耐候性を向上させる効果を期待することができる。
また、前記コーティング剤中には、添加剤として、レベリング剤、脱泡剤等の表面調整剤が含まれていてもよい。これらの添加剤を使用することにより、基材上にコーティング剤を塗布した際に、コーティング剤の厚みを均一にすることができる。その結果、コーティング膜を備えた樹脂部材の傷に対する耐久性をより向上させる効果を期待することができる。
前記コーティング剤を硬化させることにより、基材上に透明なコーティング膜を形成することができる。そのため、例えば、窓用透明部材、即ち無機材料からなる窓ガラスの代替となる部材の表面に前記コーティング剤を適用することにより、無機材料からなるガラスに比べて軽量な窓用透明部材を得ることができる。
また、例えば、ボディパネルの表面に前記コーティング剤を適用することにより、ボディパネルの表面にクリヤーコート層を形成することができる。更に、必要に応じて前記コーティング剤中に顔料等の着色剤を添加し、コーティング膜を着色することも可能である。
前記コーティング剤を樹脂からなる基材上に塗布した後、紫外光を照射してコーティング剤を硬化させることにより、樹脂部材を得ることができる。この樹脂部材は、樹脂からなる基材と、
前記コーティング剤の硬化物からなり、基材の表面上に配置されたコーティング膜と、を有している。
また、コーティング膜は、
ラジカル重合性官能基に由来する構造単位と、
シロキサン結合を有する構造単位と、
フルオロアルキル基と、を含んでいる。
前記コーティング剤に紫外光を照射した場合、上述したように、光塩基発生剤から発生したラジカル及び塩基によって、ラジカル重合とゾルゲル反応とが並行して進行する。このようにラジカル重合とゾルゲル反応とを並行して進行させることにより、基材との密着性に優れたコーティング膜を形成することができる。
また、前記樹脂部材は、前述したように、潤滑性が高く、硬いコーティング膜を有しているため、例えば砂塵等の粒子が衝突したり擦れたりした場合に、コーティング膜の表面にへこみ傷や擦れ傷などがつきにくい。このように、前記樹脂部材は、傷に対する耐久性が高いため、自動車のボディパネルや窓用透明部材などの自動車用外装部材に好適である。
前記樹脂部材において、基材を構成する樹脂は、樹脂部材の用途に合わせて適宜選択することができる。例えば、樹脂部材を窓用透明部材として使用する場合には、基材にポリカーボネート樹脂を採用することができる。ポリカーボネート樹脂は、耐候性、強度、透明性等の、窓用透明部材に要求される諸特性に優れている。そのため、ポリカーボネート樹脂からなる基材上に透明な前記コーティング膜を形成することにより、窓用透明部材として好適な樹脂部材を得ることができる。
前記樹脂部材は、例えば、樹脂からなる基材を準備する準備工程と、
基材の表面上に前記のコーティング剤を塗布する塗布工程と、
コーティング剤に紫外光を照射することにより、基材の表面上にコーティング剤の硬化物からなるコーティング膜を形成する硬化工程と、
を有する製造方法により、製造することができる。
前記製造方法において、塗布工程でのコーティング剤の塗布には、スプレーコーター、フローコーター、スピンコーター、ディップコーター、バーコーター、アプリケーター等の公知の塗布装置の中から、所望する膜厚や基材の形状等に応じて適切な装置を選択して使用することができる。
塗布工程の後、必要に応じてコーティング剤を加熱して乾燥させる工程を行ってもよい。
硬化工程での紫外光の照射には、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、エキシマランプ等の、紫外光を発生可能な公知の光源の中から、光塩基発生剤の吸収波長や必要な光量等に応じて適切な光源を選択して使用することができる。また、硬化工程においては、大気雰囲気中で紫外光を照射してもよいし、窒素雰囲気中で紫外光を照射してもよい。必要に応じてコーティング剤を加熱し、反応を促進させつつ紫外光を照射することもできる。
また、硬化工程の後、必要に応じてコーティング膜を加熱し、硬化を促進させる工程を行ってもよい。
前記コーティング剤の実施例について説明する。なお、本発明に係るコーティング剤、このコーティング膜を備えた樹脂部材及び樹脂部材の製造方法は、以下に示す態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
本例において使用した化合物の略称は、以下の通りである。
・重合性エステル
TMPTA トリメチロールプロパントリアクリレート
・有機ケイ素化合物(A)
poly-A 3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、AcSiと省略する。)と3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(以下、FSiと省略する。)とを、モル比においてAcSi:FSi=0.9:1の比率で縮合させてなる縮合生成物
poly-B AcSiとFSiとを、モル比においてAcSi:FSi=1:4の比率で縮合させてなる縮合生成物
poly-C AcSiとFSiとを、モル比においてAcSi:FSi=4:1の比率で縮合させてなる縮合生成物
・光塩基発生剤
TXT-DBU 2-(9-チオキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(下記構造式(1)参照)
Figure 0007156638000001
・その他の化合物
PSQ-A メタクリロイル基含有シルセスキオキサン
本例では、重合性エステル、有機ケイ素化合物(A)及び光塩基発生剤を含み、表1に示す組成を有するコーティング剤(試験剤1、2、4~6)を調製した。また、これらとの比較のため、有機ケイ素化合物(A)に替えて、フルオロアルキル基を有しないシルセスキオキサンを含むコーティング剤(試験剤3、7)を調製した。これらの試験剤1~7を用いてシリコンウエハ上にコーティング膜を作製した後、コーティング膜の硬さ及び耐久性の評価を行った。
・コーティング膜の作製
アプリケーターを用いて上述した試験剤をシリコンウエハ上に塗布した後、シリコンウエハを60℃で5分間加熱してプリベークを行った。その後、窒素雰囲気中でシリコンウエハに紫外光を照射して試験剤を硬化させ、コーティング膜を形成した。紫外光の照射を行った後、シリコンウエハを100℃で10分間加熱してポストベークを行った。以上により、シリコンウエハ上にコーティング膜を作製した。
コーティング膜の厚みは3~20μmであった。なお、紫外光の光源には、ピーク波長365nmの発光ダイオードを使用した。また、紫外光の照度は50mW/cm2とし、30000~100000mJ/cm2の範囲から露光量を適宜設定した。
・硬さの評価
JIS K5400に記載された鉛筆法により、コーティング膜の引っかき硬度を評価した。各試験剤から作製されたコーティング膜の引っかき硬度は、表1に示した通りであった。
また、本例においては、試験剤1~7との比較のため、シリコンウエハ上にプライマー層とハードコート層とを順次積層したテストピースを作製した。プライマー層及びハードコート層は、特許文献1(特開2006-240294号公報)に記載された構成を有している。このハードコート層の引っかき硬度を評価したところ、引っかき硬度は4Hであった。
・水の接触角
接触角計を用い、コーティング膜上に水を滴下したときの接触角を測定した。各試験剤から作製されたコーティング膜の水の接触角は、表1に示した通りであった。
Figure 0007156638000002
表1に示したように、試験剤1~2、4~6は、重合性エステル、有機ケイ素化合物(A)及び光塩基発生剤を前記特定の範囲で含有している。そのため、コーティング剤を塗布した後紫外光を照射することにより、シリコンウエハ上にコーティング膜を形成することができた。
試験剤1~2、4~6から作製されたコーティング膜の水の接触角は、試験剤3、7から作製されたコーティング膜に比べて大きくなった。かかる結果から、試験剤1~2、4~6から作製されたコーティング膜の表面には、撥水性に優れたフルオロアルキル基が露出していると推定される。
一例として、試験剤5及び試験剤6から作製されたコーティング膜を用い、以下の方法によりコーティング膜中のフルオロアルキル基の分布状態の評価を行った。まず、硬化後のコーティング膜をシリコンウエハから剥離した。このコーティング膜の表側面、つまり、シリコンウエハ上に形成した状態における最表面であった面と、裏側面、つまり、シリコンウエハとの界面であった面とのそれぞれについて、全反射法による赤外吸収スペクトルを取得した。
次に、赤外吸収スペクトルから、Si-O結合に由来する吸収ピークの吸光度と、C-F結合に由来する吸収ピークの吸光度とを算出した。そして、各吸収ピークについて、裏側面における吸収ピークの吸光度を基準としたときの、表側面における吸収ピークの吸光度の吸光度の比を算出した。なお、Si-O結合に由来する吸収ピークの吸光度の値としては、具体的には、波数1030cm-1を含む吸収ピークの頂点における吸光度を採用した。また、C-F結合に由来する吸収ピークの吸光度の値としては、具体的には、波数900cm-1を含む吸収ピークの頂点における吸光度を採用した。
以上の結果、試験剤5については、表側面におけるC-F結合に由来する吸収ピークの吸光度は、裏側面におけるC-F結合に由来する吸収ピークの吸光度の約2.7倍となり、表側面におけるSi-O結合に由来する吸収ピークの吸光度は、裏側面におけるSi-O結合に由来する吸収ピークの吸光度の約2.2倍となった。また、試験剤6については、表側面におけるC-F結合に由来する吸収ピークの吸光度は、裏側面におけるC-F結合に由来する吸収ピークの吸光度の約2.0倍となり、表側面におけるSi-O結合に由来する吸収ピークの吸光度は、裏側面におけるSi-O結合に由来する吸収ピークの吸光度の約1.7倍となった。
このように、試験剤5及び試験剤6のいずれにおいても、表側面におけるC-F結合に由来する吸収ピークの吸光度が裏側面におけるC-F結合に由来する吸収ピークの吸光度よりも高くなった。同様に、試験剤5及び試験剤6のいずれにおいても、表側面におけるSi-O結合に由来する吸収ピークの吸光度が裏側面におけるSi-O結合に由来する吸収ピークの吸光度よりも高くなった。
これらの結果から、試験剤1~2、4~6から作製されたコーティング膜の表面には、シリコンウエハとの界面に比べて撥水性に優れたフルオロアルキル基がより多く存在していることが理解できる。また、フルオロアルキル基の表面への集積に伴い、フルオロアルキル基に結合したSi-O成分が表面近傍に集積していることも理解できる。
表1に示すように、試験剤1~2、4~6から作製されたコーティング膜は、プライマー層とハードコート層との2層構造を備えた従来の皮膜におけるハードコート層と同等以上の引っかき硬度を有している。
一方、試験剤3、7から作製されたコーティング膜の水の接触角は、試験剤1~2、4~6の水の接触角よりも小さくなった。
試験剤1~2、4~6と試験剤3、7との比較から、重合性エステル、有機ケイ素化合物(A)及び光塩基発生剤を前記特定の範囲で含有しているコーティング剤を使用することにより、撥水性及び傷に対する耐久性に優れたコーティング膜が得られることが理解できる。
なお、本例において使用した光塩基発生剤であるTXT-DBUの波長365nmにおけるモル吸光係数は3710mol・cmである。これに対し、TXT-DBUにおけるチオキサントン骨格の硫黄原子を酸素原子に置き換えた場合、波長365nmにおけるモル吸光係数は810mol・cmとなる。これらのモル吸光係数の値によれば、TXT-DBU等のチオキサントン骨格を有する光塩基発生剤は、キサントン骨格を有する光塩基発生剤に比べて波長365nmの紫外光に敏感であり、当該紫外光の照射による塩基及びラジカルの発生効率が高いことが理解できる。それ故、チオキサントン骨格を有する光塩基発生剤を使用することにより、コーティング剤中の光塩基発生剤の使用量をより低減することができる。

Claims (11)

  1. ラジカル重合性官能基、フルオロアルキル基及びアルコキシシリル基を備えた有機ケイ素化合物(A)を含む膜形成成分と、
    紫外光が照射された場合に塩基とラジカルとを発生させる光塩基発生剤と、を有し、
    前記有機ケイ素化合物(A)は、(a1)ラジカル重合性官能基とフルオロアルキル基とを備えたアルコキシシランモノマーの縮合生成物、(a2)(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランと、フルオロアルキル基を有するアルコキシシランとの縮合生成物、(a3)ラジカル重合性官能基、フルオロアルキル基及びアルコキシシリル基を備えたシルセスキオキサンからなる群より選択される1種または2種以上の化合物であり、
    前記膜形成成分を100質量部とした場合に、前記光塩基発生剤の含有量が0.1~50質量部である、コーティング剤。
  2. 前記有機ケイ素化合物(A)は、少なくとも(a2)(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシランと、フルオロアルキル基を有するアルコキシシランとの縮合生成物を含む、請求項1に記載のコーティング剤。
  3. 前記膜形成成分には、更に、ラジカル重合性官能基を備えた重合性エステル(但し、前記有機ケイ素化合物(A)を除く。)が含まれており、前記重合性エステルの含有量は、質量比において前記有機ケイ素化合物(A)の0.1~1000倍である、請求項1または2に記載のコーティング剤。
  4. 前記重合性エステルには、1分子当たり3個以上の前記ラジカル重合性官能基が含まれている、請求項3に記載のコーティング剤。
  5. 前記光塩基発生剤として、キサントン骨格を有する化合物が含まれている、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング剤。
  6. 前記光塩基発生剤として、チオキサントン骨格を有する化合物が含まれている、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング剤。
  7. 前記光塩基発生剤として、アニオンと、前記アニオンに結合したカチオンとを備えたイオン型の光塩基発生剤が含まれている、請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング剤。
  8. 樹脂からなる基材と、
    請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング剤の硬化物からなり、前記基材の表面上に配置されたコーティング膜と、を有し、
    前記コーティング膜は、
    前記ラジカル重合性官能基に由来する構造単位と、
    シロキサン結合を有する構造単位と、
    前記フルオロアルキル基と、を含む、樹脂部材。
  9. 前記基材は、ポリカーボネート樹脂から構成されている、請求項8に記載の樹脂部材。
  10. 樹脂からなる基材を準備する準備工程と、
    前記基材の表面上に、請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング剤を塗布する塗布工程と、
    前記コーティング剤に紫外光を照射することにより、前記基材の表面上に前記コーティング剤の硬化物からなるコーティング膜を形成する硬化工程と、
    を有する、樹脂部材の製造方法。
  11. 前記準備工程において、前記基材としてポリカーボネート樹脂からなる基材を準備する、請求項10に記載の樹脂部材の製造方法。
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