以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるガスセンサ10Aの構造を透過的に示す略平面図である。また、図2は、ガスセンサ10Aをセラミックパッケージ21に収容した状態を示す略断面図であり、図1に示すA-A線に沿った断面に対応している。
図1及び図2に示すように、本実施形態によるガスセンサ10Aは、基板11と、基板上11上に形成されたヒータ抵抗MH及びサーミスタRdを備えている。本実施形態によるガスセンサ10Aは、図2に示すセラミックパッケージ21に収容して使用することができる。セラミックパッケージ21は、上部が開放された箱形のケースであり、上部にはリッド22が設けられている。リッド22は複数の通気口23を有しており、これにより、雰囲気中の測定対象ガス(例えばCO2ガスやCOガス)がセラミックパッケージ21内に流入可能とされている。本実施形態によるガスセンサ10Aは、端子電極E1~E6に接続される外部回路をさらに備えている。外部回路の回路構成については後述する。
基板11は、適度な機械的強度を有し、且つ、エッチングなどの微細加工に適した材質であれば特に限定されるものではなく、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板などを用いることができる。基板11には、ヒータ抵抗MHによる熱が基板11へ伝導するのを抑制するため、平面視でヒータ抵抗MHと重なる位置にキャビティ11aが設けられている。キャビティ11aにより基板11が取り除かれた部分は、メンブレンと呼ばれる。メンブレンを構成すれば、基板11を薄肉化した分だけ熱容量が小さくなるため、より少ない消費電力で加熱を行うことが可能となる。
基板11の下面及び上面には、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁材料からなる絶縁膜12,13がそれぞれ形成されている。絶縁膜12,13として例えば酸化シリコンを用いる場合には、熱酸化法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの成膜法を用いればよい。絶縁膜12,13の膜厚は、絶縁性が確保される限り特に限定されず、例えば0.1~1.0μm程度とすればよい。特に、絶縁膜13は、基板11にキャビティ11aを形成する際のエッチング停止層としても用いられるため、当該機能を果たすのに適した膜厚とすればよい。
ヒータ抵抗MHは、絶縁膜13上に形成される。ヒータ抵抗MHの平面形状は図1に示す通りであり、一筆書き可能な1本のミアンダ状の導体パターンによって構成される。ヒータ抵抗MHの一端及び他端は、基板11に設けられた端子電極E1,E2にそれぞれ接続される。また、ヒータ抵抗MHの2つの内部ノードは、端子電極E3,E4にそれぞれ接続される。そして、ヒータ抵抗MHのうち、端子電極E3と端子電極E4の間に接続された区間は第1の区間MH1を構成し、端子電極E1と端子電極E3の間に接続された区間、並びに、端子電極E2と端子電極E4の間に接続された区間は第2の区間MH2を構成する。
ヒータ抵抗MHは、温度によって抵抗率が変化する導電性物質からなり、比較的高融点の材料からなる金属材料、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)又はこれら何れか2種以上を含む合金などが好適である。また、イオンミリングなどの高精度なドライエッチングが可能である導電材質であることが好ましく、特に、耐腐食性が高い白金(Pt)を主成分とすることがより好適である。また、絶縁膜13との密着性を向上させるために、Ptの下地にチタン(Ti)などの密着層を形成することが好ましい。
ヒータ抵抗MHの上部には、ヒータ保護膜14が形成される。ヒータ保護膜14の材料としては、絶縁膜13と同じ材料を用いることが望ましい。ヒータ抵抗MHは、常温から例えば150℃或いは300℃にまで上昇し、再び常温へ下がるという激しい熱変化を繰り返し生じるため、絶縁膜13及びヒータ保護膜14にも強い熱ストレスがかかり、この熱ストレスを継続的に受けると層間剥離やクラックといった破壊につながる。しかしながら、絶縁膜13とヒータ保護膜14を同じ材料によって構成すれば、両者の材料特性が同じであり、且つ、密着性が強固であることから、異種材料を用いた場合と比べて、層間剥離やクラックといった破壊が生じにくくなる。ヒータ保護膜14の材料として酸化シリコンを用いる場合、熱酸化法やCVD法などの方法により成膜すればよい。ヒータ保護膜14の膜厚は、サーミスタRdとの絶縁が確保される膜厚であれば特に限定されず、例えば0.1~3.0μm程度とすればよい。
ヒータ保護膜14上には、サーミスタRdが設けられる。サーミスタRdは、サーミスタ膜30及びこれに接する一対のサーミスタ電極31,32によって構成される。サーミスタ電極31,32の平面形状は図1に示す通りである。
サーミスタ膜30は、例えば、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウムなどの負の抵抗温度係数を持つ材料からなり、スパッタ法、CVDなどの薄膜プロセスを用いて形成することができる。サーミスタ膜30の膜厚は、目標とする抵抗値に応じて調整すればよく、例えばMnNiCo系酸化物を用いて室温での抵抗値(R25)を2MΩ程度に設定するのであれば、0.2~1μm程度の膜厚に設定すればよい。ここで、感温抵抗素子としてサーミスタ膜30を用いているのは、また、白金測温体などに比べて抵抗温度係数が大きいことから、大きな検出感度を得ることができるためである。また、薄膜構造であることから、ヒータ抵抗MHの発熱を効率よく検出することも可能となる。
サーミスタ電極31,32は、サーミスタ膜30の成膜工程および熱処理工程などのプロセスに耐えうる導電性物質であって、比較的高融点の材料、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)又はこれら何れか2種以上を含む合金などからなる。図1に示すように、サーミスタ電極31,32の一端はそれぞれ端子電極E5,E6に接続され、サーミスタ電極31,32の他端はいずれも開放されている。
サーミスタ電極31,32は、互いに平行な状態を保ったまま、サーミスタ膜30上においてy方向に延在している。つまり、サーミスタ電極31,32のx方向における間隔はほぼ一定である。これにより、端子電極E5と端子電極E6の間の抵抗値は、温度によって変化することになる。本実施形態においては、いずれのサーミスタ電極31,32も、ヒータ抵抗MHのx方向に延在する部分と重なりを有している。
サーミスタRdは、サーミスタ保護膜15で覆われる。尚、サーミスタ膜30と還元性を持つ材料を接触させて高温状態にすると、サーミスタ膜30から酸素を奪って還元を引き起こし、サーミスタ特性に影響を与えてしまう。これを防止するためには、サーミスタ保護膜15の材料としては、シリコン酸化膜等の還元性を持たない絶縁性酸化膜であることが望ましい。
端子電極E1~E6は、ボンディングワイヤ16を介して、セラミックパッケージ21に設けられたパッケージ電極17に接続される。パッケージ電極17は、セラミックパッケージ21の裏面に設けられた外部端子18を介して外部回路に接続される。
このように、本実施形態によるガスセンサ10Aは、ヒータ抵抗MHとサーミスタRdが基板11上において積層された構成を有していることから、ヒータ抵抗MHによって生じる熱がサーミスタRdに効率よく伝わる。
図3は、端子電極E1~E4に接続される外部回路の一部を示す回路図である。
図3に示すように、端子電極E1と端子電極E2の間には定電圧源42が接続され、端子電極E3と端子電極E4の間にはスイッチ回路SW1が接続される。かかる構成により、スイッチ回路SW1がオフしている期間は、第1の区間MH1と第2の区間MH2に同じ電流が流れる。これに対し、スイッチ回路SW1がオンしている期間は、第1の区間MH1がスイッチ回路SW1によってバイパスされるため、第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少する。
サーミスタ膜30は、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1と重なる第1の領域30aと、ヒータ抵抗MHの第2の区間MH2と重なる第2の領域30bを有している。このため、スイッチ回路SW1がオフしている期間は、サーミスタ膜30の第1及び第2の領域30a,30bの両方が加熱されるのに対し、スイッチ回路SW1がオンしている期間は、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱される一方、サーミスタ膜30の第1の領域30aはほとんど加熱されなくなる。尚、第1の領域30aは、第2の領域30bによってy方向から挟まれている。y方向とは、サーミスタ電極31とサーミスタ電極32が向かい合う方向(x方向)と直交する方向である。図3に示すように、サーミスタ電極31に対応する端子電極E5は接続ノードNに接続され、サーミスタ電極32に対応する端子電極E6にはグランド電位が与えられる。
図4は、本実施形態によるガスセンサ10Aの回路図である。
図4に示すように、接続ノードNは基準抵抗41を介して電源Vccに接続される。接続ノードNに現れる検知レベルVdetは、検出回路であるコンパレータ43に供給される。コンパレータ43は検知レベルVdetと参照レベルVrefを比較し、その差分に基づいて出力信号Voutを生成する。また、スイッチ回路SW1は、ヒータ制御回路40によってオン/オフが切り替えられる。ヒータ制御回路40は、定電圧源42自体の活性/非活性を切り替えても構わない。
図5は、本実施形態によるガスセンサ10Aの動作を説明するためのタイミング図である。
図5に示すように、本実施形態によるガスセンサ10Aは、スイッチ回路SW1がオフする期間T1と、スイッチ回路SW1がオンする期間T2が交互に繰り返すよう動作する。スイッチ回路SW1がオフする期間T1は、ヒータ抵抗MHの第1及び第2の区間MH1,MH2に同じ電流を流す第1の制御状態である。スイッチ回路SW1がオンする期間T2は、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少する第2の制御状態である。図5に示す例では、期間T1よりも期間T2を長く設定している。
図6は、本実施形態によるガスセンサ10Aにおけるサーミスタ膜30の面内温度分布を示す模式図であり、(a)はスイッチ回路SW1がオフする期間T1における面内温度分布を示し、(b)はスイッチ回路SW1がオンする期間T2における面内温度分布を示している。尚、図6(a)に示すグラフの破線は期間T2における面内温度分布を示し、図6(b)に示すグラフの破線は期間T1における面内温度分布を示している。
図6(a)に示すように、スイッチ回路SW1がオフする期間T1においては、ヒータ抵抗MHの第1及び第2の区間MH1,MH2に同じ電流が流れることから、サーミスタ膜30の第1及び第2の領域30a,30bの両方が加熱される。しかしながら、サーミスタ膜30の面内温度分布は均一とはならず、中心部の温度が高く、周辺部の温度が低くなる。これは、サーミスタ膜30の中心部は、周辺部に比べて熱が溜まりやすいからである。
一方、図6(b)に示すように、スイッチ回路SW1がオンする期間T2においては、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少することから、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱される一方、サーミスタ膜30の第1の領域30aはほとんど加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が低下する。
このため、期間T1と期間T2を交互に繰り返すことにより、熱が溜まりやすいサーミスタ膜30の中心部の温度が低下し、サーミスタ膜30のy方向における温度分布がより均一化される。y方向とは、サーミスタ電極31とサーミスタ電極32が向かい合う方向(x方向)と直交する方向であることから、サーミスタ電極31からサーミスタ電極32に流れる電流の電流密度がより均一化される。
以上説明したように、本実施形態によるガスセンサ10Aは、期間T2においてスイッチ回路SW1をオンすることにより、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少することから、期間T1と期間T2を交互に繰り返すことによって、サーミスタ膜30のy方向における温度分布をより均一化することが可能となる。特に、図5に示すように期間T1よりも期間T2を長く設定すれば、サーミスタ膜30の中心部に熱が溜まりにくくなるため、温度分布がより均一化する。
尚、図5に示す動作では、期間T1と期間T2の間にインターバルが存在しないが、実際には、期間T1と期間T2の間にヒータ抵抗MHを加熱しないインターバル期間を設けることによって、消費電力を削減することが好ましい。この場合、インターバル期間においては、ヒータ制御回路40によって定電圧源42を非活性すればよい。
<第2の実施形態>
図7及び図8は、それぞれ第2の実施形態によるガスセンサ10Bの構造を透過的に示す略平面図及び回路図である。
図7に示すように、本実施形態によるガスセンサ10Bは、端子電極E1と端子電極E3の間、並びに、端子電極E2と端子電極E4の間にスイッチ回路SW2がさらに接続された構成を有している。スイッチ回路SW1とスイッチ回路SW2は、図8に示すヒータ制御回路40によって排他的にオンする。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるガスセンサ10Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
かかる構成により、スイッチ回路SW1がオフ、スイッチ回路SW2がオンしている期間は、第2の区間MH2がスイッチ回路SW2によってバイパスされるため、第2の区間MH2に流れる電流が大幅に減少する。これに対し、スイッチ回路SW1がオン、スイッチ回路SW2がオフしている期間は、第1の区間MH1がスイッチ回路SW1によってバイパスされるため、第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少する。
図9は、本実施形態によるガスセンサ10Bの動作を説明するためのタイミング図である。
図9に示すように、本実施形態によるガスセンサ10Bは、スイッチ回路SW1がオフし、スイッチ回路SW2がオンする期間T1と、スイッチ回路SW1がオンし、スイッチ回路SW2がオフする期間T2が交互に繰り返すよう動作する。上述の通り、期間T1においてはヒータ抵抗MHの第2の区間MH2に流れる電流が大幅に減少し、期間T2においてはヒータ抵抗MHの第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少する。図9に示す例では、期間T1よりも期間T2を長く設定している。本実施形態においても、期間T1と期間T2の間にヒータ抵抗MHを加熱しないインターバル期間を設けることによって、消費電力を削減することが好ましい。
図10は、本実施形態によるガスセンサ10Bにおけるサーミスタ膜30の面内温度分布を示す模式図であり、(a)は期間T1における面内温度分布を示し、(b)は期間T2における面内温度分布を示している。尚、図10(a)に示すグラフの破線は期間T2における面内温度分布を示し、図10(b)に示すグラフの破線は期間T1における面内温度分布を示している。
図10(a)に示すように、期間T1においては、ヒータ抵抗MHの第2の区間MH2に流れる電流が大幅に減少することから、サーミスタ膜30の第1の領域30aは加熱される一方、サーミスタ膜30の第2の領域30bはほとんど加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が低下する。
一方、図10(b)に示すように、期間T2においては、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少することから、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱される一方、サーミスタ膜30の第1の領域30aはほとんど加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が低下する。
このため、期間T1と期間T2を交互に繰り返すとともに、期間T1よりも期間T2を長く設定することにより、熱が溜まりやすいサーミスタ膜30の中心部の温度が低下し、サーミスタ膜30のy方向における温度分布がより均一化される。
以上説明したように、本実施形態によるガスセンサ10Bは、サーミスタ膜30の第1の領域30aと第2の領域30bを交互に加熱することができることから、期間T1と期間T2を交互に繰り返すとともに、期間T1よりも期間T2を長く設定すれば、サーミスタ膜30の中心部に熱が溜まりにくくなり、温度分布をより均一化しやすくなる。
<第3の実施形態>
図11及び図12は、それぞれ第3の実施形態によるガスセンサ10Cの構造を透過的に示す略平面図及び回路図である。
図11に示すように、本実施形態においては、ヒータ抵抗MHがミアンダ状ではなく、第1の区間MH1がx方向及びy方向における中央部に位置し、第2の区間MH2が中央部を取り囲む外周部に位置する形状を有している。これに対応して、サーミスタ膜30のうち、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1と重なる第1の領域30aは中央部に位置し、ヒータ抵抗MHの第2の区間MH2と重なる第2の領域30bは外周部に位置している。つまり、第1の領域30aは第2の領域30bによって囲まれている。
ヒータ抵抗MHの一端及び他端は、端子電極E1,E2にそれぞれ接続される。ここで、端子電極E1は第1の区間MH1側に位置し、端子電極E2は第2の区間MH2側に位置する。さらに、ヒータ抵抗MHの中間点であり、第1の区間MH1と第2の区間MH2の境界に位置する部分は、端子電極E7に接続される。そして、端子電極E1と端子電極E2の間に定電圧源42が接続され、端子電極E1と端子電極E7の間にスイッチ回路SW1が接続される。その他の基本的な構成は、第1の実施形態によるガスセンサ10Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態によるガスセンサ10Cの動作は、図5に示した第1の実施形態によるガスセンサ10Aの動作と同じである。したがって、スイッチ回路SW1がオフしている第1の期間は、第1の区間MH1と第2の区間MH2に同じ電流が流れる。これに対し、スイッチ回路SW1がオンしている第2の期間は、第1の区間MH1がスイッチ回路SW1によってバイパスされるため、第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少する。これにより、スイッチ回路SW1がオフしている第1の期間は、サーミスタ膜30の全体が加熱されるのに対し、スイッチ回路SW1がオンしている第2の期間は、サーミスタ膜30の外周部が加熱される一方、サーミスタ膜30の中央部はほとんど加熱されなくなる。
図13は、本実施形態によるガスセンサ10Cにおけるサーミスタ膜30の面内温度分布を示す模式図であり、(a)は期間T1における面内温度分布を示し、(b)は期間T2における面内温度分布を示している。尚、図13(a)に示すグラフの破線は期間T2における面内温度分布を示し、図13(b)に示すグラフの破線は期間T1における面内温度分布を示している。
図13(a)に示すように、スイッチ回路SW1がオフする期間T1においては、ヒータ抵抗MHの第1及び第2の区間MH1,MH2に同じ電流が流れることから、サーミスタ膜30の第1及び第2の領域30a,30bの両方が加熱される。しかしながら、サーミスタ膜30の面内温度分布は均一とはならず、中心部の温度が高く、周辺部の温度が低くなる。これは、サーミスタ膜30の中心部は、周辺部に比べて熱が溜まりやすいからである。
一方、図13(b)に示すように、スイッチ回路SW1がオンする期間T2においては、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1に流れる電流が大幅に減少することから、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱される一方、サーミスタ膜30の第1の領域30aはほとんど加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が低下する。
このため、期間T1と期間T2を交互に繰り返すとともに、期間T1よりも期間T2を長く設定することにより、熱が溜まりやすいサーミスタ膜30の中心部の温度が低下し、サーミスタ膜30のx方向及びy方向における温度分布がより均一化される。
以上説明したように、本実施形態によるガスセンサ10Cは、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1が中央部に位置し、第2の区間MH2が外周部に位置していることから、サーミスタ膜30のy方向における温度分布だけでなく、x方向における温度分布についても均一化することが可能となる。
<第4の実施形態>
図14及び図15は、それぞれ第4の実施形態によるガスセンサ10Dの構造を透過的に示す略平面図及び回路図である。
図14に示すように、本実施形態においては、端子電極E7に定電圧源42が接続され、スイッチ回路SW1を介して端子電極E1,E2のいずれか一方が接地される点において、第3の実施形態によるガスセンサ10Cと相違している。その他の基本的な構成は、第3の実施形態によるガスセンサ10Cと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図16は、本実施形態によるガスセンサ10Dの動作を説明するためのタイミング図である。
図16に示すように、本実施形態によるガスセンサ10Dは、スイッチ回路SW1がノードa側に接続される期間T1と、スイッチ回路SW1がノードb側に接続される期間T2が交互に繰り返すよう動作する。スイッチ回路SW1がノードa側に接続される期間T1においては、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1に電流が流れる一方、第2の区間MH2には電流が流れない。逆に、スイッチ回路SW1がノードb側に接続される期間T2においては、ヒータ抵抗MHの第2の区間MH2に電流が流れる一方、第1の区間MH1には電流が流れない。
図17は、本実施形態によるガスセンサ10Dにおけるサーミスタ膜30の面内温度分布を示す模式図であり、(a)は期間T1における面内温度分布を示し、(b)は期間T2における面内温度分布を示している。尚、図17(a)に示すグラフの破線は期間T2における面内温度分布を示し、図17(b)に示すグラフの破線は期間T1における面内温度分布を示している。
図17(a)に示すように、期間T1においては、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、第2の区間MH2には電流が流れないことから、サーミスタ膜30の第1の領域30aは加熱される一方、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が低下する。
一方、図17(b)に示すように、期間T2においては、ヒータ抵抗MHの第2の区間MH2にのみ電流が流れ、第1の区間MH1には電流が流れないことから、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱される一方、サーミスタ膜30の第1の領域30aは加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が低下する。
このため、期間T1と期間T2を交互に繰り返すとともに、期間T1よりも期間T2を長く設定することにより、熱が溜まりやすいサーミスタ膜30の中心部の温度が低下し、サーミスタ膜30のx方向及びy方向における温度分布がより均一化される。
以上説明したように、本実施形態によるガスセンサ10Dは、第2の実施形態によるガスセンサ10Bと同様、サーミスタ膜30の第1の領域30aと第2の領域30bを交互に加熱することができることから、期間T1と期間T2を交互に繰り返すとともに、期間T1よりも期間T2を長く設定すれば、サーミスタ膜30の中心部に熱が溜まりにくくなり、温度分布をより均一化しやすくなる。しかも、本実施形態によるガスセンサ10Dは、第3の実施形態によるガスセンサ10Cと同様、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1が中央部に位置し、第2の区間MH2が外周部に位置していることから、サーミスタ膜30のy方向における温度分布だけでなく、x方向における温度分布も均一化することが可能となる。
<第5の実施形態>
図18及び図19は、それぞれ第5の実施形態によるガスセンサ10Eの構造を透過的に示す略平面図及び回路図である。
図18に示すように、本実施形態においては、ヒータ抵抗MHが第1の区間MH1と第2の区間MH2に完全に分離されている。第1の区間MH1の一端は端子電極E3に接続され、第1の区間MH1の他端は端子電極E4に接続されている。また、第2の区間MH2の一端は端子電極E1に接続され、第2の区間MH2の他端は端子電極E2に接続されている。そして、端子電極E1と端子電極E2の間に定電圧源42とスイッチ回路SW1が直列に接続されているとともに、端子電極E3と端子電極E4の間に定電圧源44とスイッチ回路SW2が直列に接続されている。スイッチ回路SW1とスイッチ回路SW2は、図19に示すヒータ制御回路40によって排他的にオンする。このため、定電圧源42と定電圧源44は共通であっても構わない。その他の基本的な構成は、第2の実施形態によるガスセンサ10Bと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
かかる構成により、スイッチ回路SW1がオン、スイッチ回路SW2がオフしている期間は、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、第2の区間MH2には電流が流れない。逆に、スイッチ回路SW1がオフ、スイッチ回路SW2がオンしている期間は、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、第2の区間MH2には電流が流れない。
図20は、本実施形態によるガスセンサ10Eの動作を説明するためのタイミング図である。
図20に示すように、本実施形態によるガスセンサ10Eは、スイッチ回路SW1がオンし、スイッチ回路SW2がオフする期間T1と、スイッチ回路SW1がオフし、スイッチ回路SW2がオンする期間T2が交互に繰り返すよう動作する。上述の通り、期間T1においてはヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、期間T2においてはヒータ抵抗MHの第2の区間MH2にのみ電流が流れる。図20に示す例では、期間T1よりも期間T2を長く設定している。本実施形態においても、期間T1と期間T2の間に、スイッチ回路SW1,SW2の両方がオフするインターバル期間を設けることによって、消費電力を削減することが好ましい。
図21は、本実施形態によるガスセンサ10Eにおけるサーミスタ膜30の面内温度分布を示す模式図であり、(a)は期間T1における面内温度分布を示し、(b)は期間T2における面内温度分布を示している。尚、図21(a)に示すグラフの破線は期間T2における面内温度分布を示し、図21(b)に示すグラフの破線は期間T1における面内温度分布を示している。
図21(a)に示すように、期間T1においては、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、第2の区間MH2には電流が流れないことから、サーミスタ膜30の第1の領域30aは加熱される一方、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が低下する。
一方、図21(b)に示すように、期間T2においては、ヒータ抵抗MHの第2の区間MH2にのみ電流が流れ、第1の区間MH1には電流が流れないことから、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱される一方、サーミスタ膜30の第1の領域30aは加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が低下する。
このため、期間T1と期間T2を交互に繰り返すとともに、期間T1よりも期間T2を長く設定することにより、熱が溜まりやすいサーミスタ膜30の中心部の温度が低下し、サーミスタ膜30のy方向における温度分布がより均一化される。
以上説明したように、本実施形態によるガスセンサ10Eは、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1と第2の区間MH2を独立して制御できることから、より高精度な制御が可能となる。また、上記の例では、期間T1と期間T2を交互に繰り返しているが、必要に応じ、スイッチ回路SW1とスイッチ回路SW2の両方をオンさせる第3の期間を挿入しても構わない。
<第6の実施形態>
図22は、第6の実施形態によるガスセンサ10Fの構造を透過的に示す略平面図である。第6の実施形態によるガスセンサ10Fの回路図は、図19と同じである。
図22に示すように、本実施形態によるガスセンサ10Fは、第3の実施形態によるガスセンサ10Cと同様、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1が中央部に位置し、第2の区間MH2が外周部に位置している。また、第5の実施形態によるガスセンサ10Eと同様、ヒータ抵抗MHが第1の区間MH1と第2の区間MH2に完全に分離されている。第1の区間MH1の一端は端子電極E1に接続され、第1の区間MH1の他端は端子電極E9に接続されている。また、第2の区間MH2の一端は端子電極E2に接続され、第2の区間MH2の他端は端子電極E8に接続されている。
そして、端子電極E1と端子電極E9の間に定電圧源42とスイッチ回路SW1が直列に接続されているとともに、端子電極E2と端子電極E8の間に定電圧源44とスイッチ回路SW2が直列に接続されている。スイッチ回路SW1とスイッチ回路SW2は、図19に示すヒータ制御回路40によって排他的にオンする。このため、定電圧源42と定電圧源44は共通であっても構わない。その他の基本的な構成は、第5の実施形態によるガスセンサ10Eと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
かかる構成により、スイッチ回路SW1がオン、スイッチ回路SW2がオフしている期間は、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、第2の区間MH2には電流が流れない。逆に、スイッチ回路SW1がオフ、スイッチ回路SW2がオンしている期間は、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、第2の区間MH2には電流が流れない。
本実施形態によるガスセンサ10Fの動作は、図20に示した第5の実施形態によるガスセンサ10Eの動作と同じである。したがって、期間T1においてはヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、期間T2においてはヒータ抵抗MHの第2の区間MH2にのみ電流が流れる。
図23は、本実施形態によるガスセンサ10Fにおけるサーミスタ膜30の面内温度分布を示す模式図であり、(a)は期間T1における面内温度分布を示し、(b)は期間T2における面内温度分布を示している。尚、図23(a)に示すグラフの破線は期間T2における面内温度分布を示し、図23(b)に示すグラフの破線は期間T1における面内温度分布を示している。
図23(a)に示すように、期間T1においては、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1にのみ電流が流れ、第2の区間MH2には電流が流れないことから、サーミスタ膜30の第1の領域30aは加熱される一方、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が低下する。
一方、図23(b)に示すように、期間T2においては、ヒータ抵抗MHの第2の区間MH2にのみ電流が流れ、第1の区間MH1には電流が流れないことから、サーミスタ膜30の第2の領域30bは加熱される一方、サーミスタ膜30の第1の領域30aは加熱されなくなる。これにより、サーミスタ膜30の第2の領域30bの温度が上昇し、サーミスタ膜30の第1の領域30aの温度が低下する。
このため、期間T1と期間T2を交互に繰り返すとともに、期間T1よりも期間T2を長く設定することにより、熱が溜まりやすいサーミスタ膜30の中心部の温度が低下し、サーミスタ膜30のy方向における温度分布がより均一化される。
以上説明したように、本実施形態によるガスセンサ10Fは、第5の実施形態によるガスセンサ10Eと同様、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1と第2の区間MH2を独立して制御できることから、より高精度な制御が可能となる。しかも、しかも、本実施形態によるガスセンサ10Fは、第3の実施形態によるガスセンサ10Cと同様、ヒータ抵抗MHの第1の区間MH1が中央部に位置し、第2の区間MH2が外周部に位置していることから、サーミスタ膜30のy方向における温度分布だけでなく、x方向における温度分布も均一化することが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。