以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ赤道線は、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいい、本実施形態では、タイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4及びビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その外周表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面は、主に走行時に路面と接触し得る面であって、トレッド面10として構成されている。
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア15とビードフィラー16とを有する。ビードコア15は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー16は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア15の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア15でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、且つ、タイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、例えば、ポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト7a,7bを積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト7a,7bは、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20°~30°)で複数並設されたコード(図示省略)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなる。また、重なり合うベルト7a,7bは、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示省略)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、例えば、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維からなり、コードの角度はタイヤ周方向に対して±5°の範囲内になっている。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、或いは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。即ち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものである。また、ベルト補強層8は、例えば幅が10mm程度の帯状のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。
なお、上述した空気入りタイヤ1の内部構造は、空気入りタイヤ1における代表的な例を示すものであるが、内部構造は、これに限定されるものではない。
トレッド部2のトレッド面10は、図2に示すように、タイヤ周方向に延びる周方向主溝30が複数形成されており、本実施形態では、周方向主溝30は、3本がタイヤ幅方向に並んで形成されている。3本の周方向主溝30のうち、タイヤ幅方向において最も外側に配設される2本の周方向主溝30、即ち、3本の周方向主溝30のうちタイヤ幅方向における両端に配設される2本の周方向主溝30は、最外主溝32になっている。また、3本の周方向主溝30のうち、タイヤ幅方向において2本の最外主溝32の間に配設される周方向主溝30はセンター主溝31になっている。このうち、センター主溝31は、タイヤ赤道面CL上に位置している。また、2本の最外主溝32のうち、タイヤ幅方向におけるセンター主溝31の一方側に配設される最外主溝32は第一最外主溝33になっており、タイヤ幅方向におけるセンター主溝31の他方側に配設される最外主溝32は第二最外主溝34になっている。
また、2本の最外主溝32は、それぞれ接地領域のタイヤ幅方向における両最外端である接地端Tよりも、タイヤ幅方向内側に配設されている。図2では、接地端Tをタイヤ周方向に連続して示している。接地領域は、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みし、且つ、規定内圧を充填すると共に規定荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面10が乾燥した平坦な路面と接地する領域である。この場合における規定リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、規定内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、規定荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
また、周方向主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に周方向主溝30は、5.0mm以上の溝幅を有し、5.0mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。本実施形態では、周方向主溝30は、5.0mm以上12.0mm以下の溝幅を有し、5.0mm以上9.0mm以下の溝深さを有しており、タイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLと実質的に平行である。周方向主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよいし、波形状またはジグザグ状に設けられてもよい。
トレッド面10には、上記3本の周方向主溝30によって4列の陸部20が区画形成されている。4列の陸部20は、センター主溝31のタイヤ幅方向両側に配設される2列のセンター陸部21,22と、2本の最外主溝32のそれぞれのタイヤ幅方向外側に配設される2列のショルダー陸部23,24とを有している。
また、第一最外主溝33のタイヤ幅方向両側に配設されるセンター陸部21とショルダー陸部23とには、タイヤ周方向に延びると共に、溝幅が周方向主溝30の溝幅よりも狭い溝幅で形成される周方向細溝40が、それぞれ形成されている。センター陸部21とショルダー陸部23とに形成される周方向細溝40のうち、第一最外主溝33のタイヤ幅方向内側に配設されてセンター陸部21に形成される周方向細溝40は、内側周方向細溝41になっており、第一最外主溝33のタイヤ幅方向外側に配設されてショルダー陸部23に形成される周方向細溝40は、外側周方向細溝42になっている。
周方向細溝40は、周方向細溝40が形成される陸部20(センター陸部21またはショルダー陸部23)において、接地領域の端部からのタイヤ幅方向の距離W2が、周方向細溝40が形成される陸部20(センター陸部21またはショルダー陸部23)の接地幅W1の20%以上80%以下の範囲内に配設されている。陸部20の接地領域は、上記接地端Tの条件と同じ条件で陸部20のトレッド面10が接地する領域になっている。このため、センター陸部21の接地幅W1は、センター陸部21を区画形成するセンター主溝31と第一最外主溝33とのそれぞれのセンター陸部21を挟むエッジ(開口端部)間のタイヤ幅方向における距離になっている。また、ショルダー陸部23の接地幅W1は、ショルダー陸部23を区画形成する第一最外主溝33のショルダー陸部23側のエッジ(開口端部)と、ショルダー陸部23上に位置する接地端Tとの間のタイヤ幅方向における距離になっている。
従って、内側周方向細溝41は、センター陸部21を区画形成するセンター主溝31または第一最外主溝33のエッジからのタイヤ幅方向における距離W2が、センター陸部21の接地幅W1に対して20%以上80%以下の範囲内となる位置に配設されている。また、外側周方向細溝42は、ショルダー陸部23を区画形成する第一最外主溝33のエッジまたはショルダー陸部23上に位置する接地端Tからのタイヤ幅方向における距離W2が、ショルダー陸部23の接地幅W1に対して20%以上80%以下の範囲内となる位置に配設されている。これらのように形成される周方向細溝40は、溝幅が1.5mm以上4.5mm以下の範囲内になっており、溝深さが2.0mm以上5.0mm以下の範囲内になっている。
また、第一最外主溝33のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダー陸部23と、第二最外主溝34のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダー陸部24は、それぞれにタイヤ幅方向に延びるラグ溝50が複数設けられている。このうち、外側周方向細溝42が形成されるショルダー陸部23に形成されるラグ溝50である第一ラグ溝51は、タイヤ幅方向内側の端部が外側周方向細溝42に連通し、タイヤ幅方向外側の端部が接地端Tを超えてデザインエンドEで開口している。また、他方のショルダー陸部24に形成されるラグ溝50である第二ラグ溝52は、タイヤ幅方向内側の端部がショルダー陸部24内で終端し、タイヤ幅方向外側の端部が接地端Tを超えてデザインエンドEで開口している。これらのラグ溝50は、それぞれタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜している。
これらのように形成されるラグ溝50は、溝幅が3.0mm以上10.0mm以下の範囲内で、溝深さが4.0mm以上8.0mm以下の範囲内になっている。また、デザインエンドEは、接地端Tのタイヤ幅方向外側に位置し、トレッド部2のトレッド面10のタイヤ幅方向最外側端をいい、トレッド部2において溝が形成されるタイヤ幅方向最外側端である。図2では、デザインエンドEをタイヤ周方向に連続して示している。即ち、トレッド部2は、乾燥した平坦な路面において、接地端TよりもデザインエンドE側の領域は、通常路面に接地しない領域となる。
また、陸部20には、複数の補助溝60が形成されている。ここでいう補助溝60は、溝幅が0.4mm以上1.2mm以下の範囲内で、溝深さが2.0mm以上5.0mm以下の範囲内となる溝になっている。補助溝60は、第一最外主溝貫通補助溝61と、第二最外主溝貫通補助溝62と、センター補助溝63と、がある。
第一最外主溝貫通補助溝61は、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延び、第一最外主溝33を跨いで形成される補助溝60になっている。つまり、第一最外主溝貫通補助溝61は、第一最外主溝33によって区画形成されるショルダー陸部23における外側周方向細溝42よりもタイヤ幅方向内側の位置から、センター陸部21における内側周方向細溝41のタイヤ幅方向外側の位置にかけて、第一最外主溝33を貫通して形成されている。
第二最外主溝貫通補助溝62は、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延び、第二最外主溝34を跨いで形成される補助溝60になっている。詳しくは、第二最外主溝貫通補助溝62は、センター主溝31に対して、タイヤ幅方向において内側周方向細溝41が形成されるセンター陸部21側の反対側に位置するセンター陸部22におけるタイヤ幅方向内側端部の位置から、第二最外主溝34を介して当該センター陸部22と隣り合うショルダー陸部24における第二最外主溝34の近傍の位置にかけて、第二最外主溝34を貫通して形成されている。この第二最外主溝貫通補助溝62は、センター陸部22に形成される部分は、両端部が、センター陸部22を区画形成するセンター主溝31と第二最外主溝34とにそれぞれ連通すると共に、センター陸部22内でタイヤ周方向に屈曲している。また、第二最外主溝貫通補助溝62におけるショルダー陸部24に形成される部分は、一端が第二最外主溝34に連通し、他端がショルダー陸部24内で終端している。
センター補助溝63は、内側周方向細溝41が形成されるセンター陸部21における内側周方向細溝41とセンター主溝31との間の領域に、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延びて形成されており、一端がセンター主溝31に連通し、他端がセンター陸部21内で終端している。
また、陸部20には、複数のサイプ65が形成されている。ここでいうサイプ65は、トレッド面10に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みし、規定内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部20の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部20の変形によって互いに接触するものをいう。サイプ65は、第一ショルダーサイプ66と、第二ショルダーサイプ67と、がある。
第一ショルダーサイプ66は、第一最外主溝33によって区画形成されるショルダー陸部23における外側周方向細溝42よりもタイヤ幅方向外側の領域に、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延びて形成されており、両端がショルダー陸部23内で終端している。ショルダー陸部23に形成される第一ショルダーサイプ66は、同じくショルダー陸部23に形成される第一ラグ溝51とタイヤ周方向に交互に配設されている。
第二ショルダーサイプ67は、第二最外主溝34によって区画形成されるショルダー陸部24に、タイヤ周方向に傾斜しつつタイヤ幅方向に延びて形成されており、両端がショルダー陸部24内で終端している。ショルダー陸部24に形成される第二ショルダーサイプ67は、同じくショルダー陸部24に形成される第二ラグ溝52とタイヤ周方向に交互に配設されている。
図3は、図2のA部詳細図である。図4は、図3に示す外側周方向細溝42と第一ラグ溝51との連結部48を示す斜視図である。図5は、図3のB-B断面図である。図6は、図5のC-C矢視図である。図7は、図3のD部詳細図である。図8は、図7のタイヤ幅方向の断面図である。
図3~図8に示すように、周方向細溝40とラグ溝50とが連結される部位は、連結部48となっている。連結部48は、本実施形態では、外側周方向細溝42のタイヤ幅方向外側の開口端部と第一ラグ溝51のタイヤ幅方向内側の端部とが連結される部位である。連結部48は、外側周方向細溝42と第一ラグ溝51とが交差する交差部48Aと、第一ラグ溝51内のラグ溝側連結部48Bと、外側周方向細溝42内の細溝側連結部48Cと、を有している。交差部48Aは、図3に示す平面視において、第一ラグ溝51をタイヤ幅方向内側の端部からタイヤ幅方向内側に延長して外側周方向細溝42内で重なるように交差した部分をいう。ラグ溝側連結部48Bは、図3に示す平面視において、第一ラグ溝51内で交差部48Aに連なる部分をいう。細溝側連結部48Cは、図3に示す平面視において、外側周方向細溝42内で交差部48Aに連なる部分をいう。このような連結部48には、底上部70が形成されている。
底上部70は、交差底上部71と、幅方向底上部72と、周方向底上部73と、を有している。交差底上部71は、交差部48Aに形成されている。幅方向底上部72は、第一ラグ溝51内でラグ溝側連結部48Bに形成されて交差底上部71に連結される。周方向底上部73は、外側周方向細溝42内で細溝側連結部48Cに形成されて交差底上部71に連結される。
交差底上部71は、外側周方向細溝42内に形成されており、外側周方向細溝42の溝底42aからタイヤ径方向外側に隆起するように底上げされている。交差底上部71は、外側周方向細溝42の一方の溝壁42bの一部に一体に形成されている。交差底上部71は、図6~図8に示すように、溝底42aからタイヤ径方向外側に最も離れて位置する頂面71aを有している。頂面71aは、交差部48A内に配置され、溝底42aに対して略平行に形成された平面になっている。また、交差底上部71は、外側周方向細溝42内においてタイヤ周方向の一方に向く端面71bを有している。端面71bは、頂面71aと溝底42aとの間に設けられた面である。端面71bは、本実施形態では、頂面71aから溝底42aに向かうに従って、タイヤ周方向に拡がるように外側周方向細溝42の溝深さ方向に対して傾斜している。端面71bは、本実施形態では、交差部48Aからタイヤ周方向に外れるように傾斜して設けられている。また、端面71bは、図には明示しないが、頂面71aから溝底42aに向かってタイヤ径方向に沿って設けられて交差部48A内に配置される立壁面として形成されていてもよい。
幅方向底上部72は、第一ラグ溝51内に形成されており、第一ラグ溝51の溝底51aからタイヤ径方向外側に隆起するように底上げされている。幅方向底上部72は、第一ラグ溝51の両溝壁51bの一部に一体に形成されている。幅方向底上部72は、交差底上部71のタイヤ幅方向外側において交差底上部71に連結されている。幅方向底上部72は、図6~図8に示すように、溝底51aからタイヤ径方向外側に最も離れて位置する頂面72aを有している。頂面72aは、ラグ溝側連結部48B内に配置され、溝底51aに対して略平行に形成された平面になっている。また、幅方向底上部72は、第一ラグ溝51内においてタイヤ幅方向外側に向く端面72bを有している。端面72bは、頂面72aと溝底51aとの間に設けられた面である。端面72bは、本実施形態では、頂面72aから溝底51aに向かうに従って、タイヤ周方向に拡がるように第一ラグ溝51の溝深さ方向に対して傾斜している。端面72bは、本実施形態では、ラグ溝側連結部48Bからタイヤ周方向に外れるように傾斜して設けられている。また、端面72bは、図には明示しないが、頂面72aから溝底51aに向かってタイヤ径方向に沿って設けられてラグ溝側連結部48B内に配置される立壁面として形成されていてもよい。
周方向底上部73は、外側周方向細溝42内に形成されており、外側周方向細溝42の溝底42aからタイヤ径方向外側に隆起するように底上げされている。周方向底上部73は、外側周方向細溝42の両溝壁42bに一体に形成されている。周方向底上部73は、交差底上部71のタイヤ周方向の一方において交差底上部71に連結されている。周方向底上部73は、図には明示しないが、交差底上部71のタイヤ周方向の両方において交差底上部71に連結されていてもよい。周方向底上部73は、図6~図8に示すように、溝底42aからタイヤ径方向外側に最も離れて位置する頂面73aを有している。頂面73aは、細溝側連結部48C内に配置され、溝底42aに対して略平行に形成された平面になっている。また、周方向底上部73は、外側周方向細溝42内においてタイヤ周方向の他方(交差底上部71の端面71bが向く反対方向)に向く端面73bを有している。端面73bは、頂面73aと溝底42aとの間に設けられた面である。端面73bは、本実施形態では、頂面73aから溝底42aに向かうに従って、タイヤ周方向に拡がるように外側周方向細溝42の溝深さ方向に対して傾斜している。端面73bは、本実施形態では、細溝側連結部48Cからタイヤ周方向に外れるように傾斜して設けられている。また、端面73bは、図には明示しないが、頂面73aから溝底42aに向かってタイヤ径方向に沿って設けられて細溝側連結部48C内に配置される立壁面として形成されていてもよい。
本実施形態の空気入りタイヤ1は、連結部48に形成された底上部70において、図8に示すように、外側周方向細溝42の溝底42aを基準とし、溝底42aから頂面71aまでの交差底上部71の高さHrと、溝底42a(溝底42aの位置をタイヤ幅方向に延長した位置)から頂面72aまでの幅方向底上部72の高さHaと、溝底42aから頂面73aまでの周方向底上部73の高さHbと、の関係が規定されている。
具体的には、幅方向底上部72の高さHaと交差底上部71の高さHrとがHa<Hrの関係を満たし、かつ周方向底上部73の高さHbと交差底上部71の高さHrとがHb<Hrの関係を満たしている。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部5にリムホイールを嵌合することによってリムホイールに空気入りタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。車両が走行すると、空気入りタイヤ1は、トレッド面10のうち下方に位置する部分のトレッド面10が路面に接触しながら回転する。車両は、トレッド面10と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。
例えば、空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面10と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面10と路面との間の水が周方向主溝30やラグ溝50等に入り込み、これらの溝でトレッド面10と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド面10は路面に接地し易くなり、トレッド面10と路面との間の摩擦力により、車両は所望の走行をすることが可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪をトレッド面10で押し固めると共に、路面上の雪が周方向主溝30やラグ溝50に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすることにより、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪柱せん断力が発生し、雪柱せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を雪上路面に伝達することができ、車両は雪上路面での走行が可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、周方向主溝30やラグ溝50、補助溝60、サイプ65のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面を走行する際には、周方向主溝30及びラグ溝50のエッジや、補助溝60及びサイプ65のエッジが雪面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。これにより、トレッド面10は、摩擦力やエッジ効果によって雪上路面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行性能を確保することができる。さらに、トレッド面10には、タイヤ周方向に延びる溝として、周方向主溝30の他に周方向細溝40が形成されているため、エッジ効果をより高めることができる。これにより、雪上路面を走行する際における操縦安定性であるスノー性能を、より確実に向上させることができる。
一方で、ラグ溝50である第一ラグ溝51と周方向細溝40である外側周方向細溝42との連結部48には、底上部70が形成されているため、外側周方向細溝42を形成することによる陸部20の剛性の低下を、この底上部70によって抑制することができる。つまり、底上部70は、第一ラグ溝51内に形成される幅方向底上部72と、外側周方向細溝42内に形成される周方向底上部73と、第一ラグ溝51と外側周方向細溝42との交差部48Aにおいて幅方向底上部72及び周方向底上部73が連結される交差底上部71と、を有しているため、第一ラグ溝51と外側周方向細溝42との連結部48付近の陸部20の剛性を確保することができる。これにより、陸部20の剛性の低下に起因して、乾燥した路面を走行する際における操縦安定性であるドライ性能が低下することを抑制することができる。従って、外側周方向細溝42を形成することによってスノー性能を確保しつつ、外側周方向細溝42が形成されるショルダー陸部23の剛性を底上部70によって確保することにより、ドライ性能を向上させることができる。
さらに、底上部70は、外側周方向細溝42と第一ラグ溝51とが交差する交差部48Aに交差底上部71が形成されている。この交差底上部71は、外側周方向細溝42の溝底42aを基準とした高さHrが、幅方向底上部72の高さHaや周方向底上部73の高さHbよりも高く形成されている。このため、ラグ溝50である第一ラグ溝51と周方向細溝40である外側周方向細溝42との連結部48において、外側周方向細溝42を形成することによる陸部20の剛性の低下をより抑制することができる。これらの結果、スノー性能を確保しつつドライ性能を向上させることができる。
また、周方向底上部73が形成される周方向細溝40である外側周方向細溝42は、最外主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるため、より確実にスノー性能を確保しつつドライ性能を向上させることができる。つまり、最外主溝32のタイヤ幅方向外側に配設されるショルダー陸部23は、車両の旋回時に大きな荷重で接地し易く、旋回時における操縦安定性を確保する際における重要性が高くなっているが、本実施形態では、ショルダー陸部23に周方向細溝40として外側周方向細溝42が形成されている。このため、車両の旋回時に大きな荷重で接地し易いショルダー陸部23内でのエッジ効果を高めることができ、より確実にスノー性能を確保することができる。また、ショルダー陸部23に形成される外側周方向細溝42と第一ラグ溝51との連結部48に底上部70が形成されているため、ショルダー陸部23の剛性を確保することができ、より確実にドライ性能を確保することができる。これらの結果、より確実にスノー性能を確保しつつドライ性能を向上させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図8に示すように、幅方向底上部72の高さHaと、交差底上部71の高さHrとが、(1.75×Ha)≦Hr≦(2.25×Ha)の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、(1.75×Ha)≦Hrとすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、確実にドライ性能を向上させることができる。一方、Hr≦(2.25×Ha)とすることで、ショルダー陸部23の剛性過多を抑制することができ、スノー性能を確保させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図8に示すように、周方向底上部73の高さHbと、交差底上部71の高さHrとが、(1.75×Hb)≦Hr≦(2.25×Hb)の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、(1.75×Hb)≦Hrとすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、確実にドライ性能を向上することができる。一方、Hr≦(2.25×Hb)とすることで、ショルダー陸部23の剛性過多を抑制することができ、スノー性能を確保させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図7に示すように、第一ラグ溝51の溝幅Wg1と、幅方向底上部72の傾斜した端面72bを除く頂面72aのタイヤ幅方向の長さLaとが、(0.5×Wg1)≦La≦(1.5×Wg1)の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、(0.5×Wg1)≦Laとすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、より確実にドライ性能を向上させることができる。一方、La≦(1.5×Wg1)とすることで、排水性を確保させることができ、濡れた路面を走行する際における操縦安定性であるウエット性能を確保させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図7に示すように、外側周方向細溝42の溝幅Wg2と、周方向底上部73の傾斜した端面73bを除く頂面73aのタイヤ周方向の長さLbとが、(0.5×Wg2)≦Lb≦(1.5×Wg2)の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、(0.5×Wg2)≦Lbとすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、より確実にドライ性能を向上させることができる。一方、Lb≦(1.5×Wg2)とすることで、排水性を確保させることができ、ウエット性能を確保させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図8に示すように、外側周方向細溝42の溝深さ(交差部48Aの深さ)Dg1と、幅方向底上部72の高さHaとが、(0.15×Dg1)≦Ha≦(0.35×Dg1)の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、(0.15×Dg1)≦Haとすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、より確実にドライ性能を向上することができる。一方、Ha≦(0.35×Dg1)とすることで、排水性を確保させることができ、ウエット性能を確保させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図8に示すように、外側周方向細溝42の溝深さ(交差部48Aの深さ)Dg1と、周方向底上部73の高さHbとが、(0.15×Dg1)≦Hb≦(0.35×Dg1)の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、(0.15×Dg1)≦Hbとすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、より確実にドライ性能を向上させることができる。一方、Hb≦(0.35×Dg1)とすることで、排水性を確保させることができ、ウエット性能を確保させることができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図8に示すように、幅方向底上部72の高さHaと、周方向底上部73の高さHbとが、0.75≦Ha/Hb≦1.25の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1では、幅方向底上部72の高さHaと、周方向底上部73の高さHbとの差を規定範囲とすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、より確実にドライ性能を向上することができる。
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、図8に示すように、交差底上部71の高さHrと、幅方向底上部72の高さHaと、周方向底上部73の高さHbとが、[1.75×{(Ha+Hb)/2}]≦Hr≦[2.25×{(Ha+Hb)/2}]の関係を満たすことが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、[1.75×{(Ha+Hb)/2}]≦Hrとすることで、ショルダー陸部23の剛性を十分に確保することができ、確実にドライ性能を向上することができる。一方、Hr≦[2.25×{(Ha+Hb)/2}]とすることで、ショルダー陸部23の剛性過多を抑制することができ、スノー性能を確保させることができる。
[変形例]
上述した実施形態では、底上部70は、外側周方向細溝42と第一ラグ溝51との連結部48に形成されているが、底上部70は、これ以外の連結部48に形成されていてもよい。つまり、底上部70が有する交差底上部71は、外側周方向細溝42と第一ラグ溝51以外の周方向細溝40とラグ溝50との交差部に形成されていてもよく、幅方向底上部72は、第一ラグ溝51以外のラグ溝50に形成されていてもよく、周方向底上部73は、外側周方向細溝42以外の周方向細溝40に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、周方向主溝30が3本形成され、周方向細溝40は、第一最外主溝33のタイヤ幅方向における両側に形成されているが、トレッドパターンはこれ以外でもよい。トレッド面10に形成されるトレッドパターンは、上述した実施形態におけるパターンに限られない。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、スノー性能(雪上路面を走行する際における操縦安定性であるスノー操安性)及びドライ性能(乾燥した路面を走行する際における操縦安定性であるドライ制動性能)に関する性能試験が行われた(図9及び図10参照)。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが185/65R15サイズの空気入りタイヤ1を、リムサイズ15×6JのJATMA標準のリムホイールにリム組みして前輪駆動の車両に装着し、空気圧を前輪220kPa、後輪210kPaに調整して1名乗車でテスト走行をすることにより行った。
スノー性能の評価方法は、上記試験車両で、雪上路面のテストコースを走行した際の操縦安定性を、テストドライバーの官能評価により比較した。スノー性能は、テストドライバーの官能評価を、後述する従来例を100として指数で表すことによって評価し、指数が大きいほど雪上路面を走行した際の操縦安定性が高く、スノー性能に優れていることを示している。なお、本実施例のスノー性能の評価において、指数95以上でスノー性能が確保されていることを示す。
ドライ性能の評価方法は、上記試験車両で、乾燥した路面のテストコースで制動試験を行い、制動距離の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど制動距離が短く、ドライ性能に優れていることを示している。なお、本実施例のドライ性能の評価において、指数109以上でドライ性能が改善されていることを示す。
図9において、従来例の空気入りタイヤは、図1及び図2に示す空気入りタイヤ1に対し周方向細溝40を有しているが底上部70を有していない。比較例1の空気入りタイヤは、周方向細溝40を有しているが底上部70において周方向底上部73及び交差底上部71を有していない。比較例2の空気入りタイヤは、周方向細溝40を有しているが底上部70において幅方向底上部72及び交差底上部71を有していない。比較例3の空気入りタイヤは、周方向細溝40を有しているが底上部70において交差底上部71を有していない。
一方、図9及び図10において、実施例1~実施例24の空気入りタイヤは、図1、図2及び図6に示す空気入りタイヤのように、周方向細溝40及び底上部70を有し、底上部70が幅方向底上部72、周方向底上部73及び交差底上部71を有しており、周方向細溝40の溝底を基準とし、幅方向底上部72の高さHaと交差底上部71の高さHrとがHa<Hrの関係を満たし、かつ周方向底上部73の高さHbと交差底上部71の高さHrとがHb<Hrの関係を満たしている。
図9及び図10の試験結果に示すように、実施例1~実施例24の空気入りタイヤは、スノー性能を確保しつつドライ性能が改善されていることが分かる。