以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタック10は、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給に伴い発電を行うと共に、冷却媒体の供給に伴い温度が調整される複数の発電セル12を備える。また、燃料電池スタック10は、複数の発電セル12を積層した状態で内部に収容するスタックケース14を備える。この燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池車両のモータルームに搭載される。
複数の発電セル12は、燃料電池スタック10を燃料電池車両に搭載した状態で、電極面を立位姿勢にして車長方向(矢印A方向)に直交する車幅方向(矢印B方向)に沿って積層された積層体16に構成される。なお、複数の発電セル12は重力方向(矢印C方向)に積層されていてもよい。
また、積層体16の積層方向(矢印B方向)の両端には、図示しないターミナルプレート、インシュレータが外方に向かって順に配置される。ターミナルプレートは、発電セル12から電力を取り出す金属製の板部材であり、図示しない電力取出端子を積層体16の所定位置から突出させている。インシュレータは、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等の絶縁性材料により形成される。
図2に示すように、発電セル12は、樹脂枠付きMEA24が、2つのセパレータ(以下、それぞれ「第1セパレータ26」、「第2セパレータ28」ともいう)により挟持される。第1及び第2セパレータ26、28は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、或いはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。第1セパレータ26と第2セパレータ28は、その外周同士が溶接、ろう付け、かしめ等により接合され、一体的な接合セパレータに構成される。
樹脂枠付きMEA24は、電解質膜・電極構造体30(以下、「MEA30」という)と、MEA30の外周部に接合され当該外周部を周回する樹脂枠部材32とを備える。MEA30は、電解質膜34と、電解質膜34の一方の面に設けられたアノード電極36と、電解質膜34の他方の面に設けられたカソード電極38とを有する。なお、MEA30は、樹脂枠部材32を用いることなく、電解質膜34を外方に突出させてもよい。また、外方に突出した電解質膜34の両側に枠形状の樹脂製フィルムを設けてもよい。
電解質膜34は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)が適用される。なお、電解質膜34は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。
第1セパレータ26は、酸化剤ガス(例えば、酸素を含むエア)を流動させる酸化剤ガス流路40を、樹脂枠付きMEA24のカソード電極38に対向する面26aに備える(図2中では、便宜的に、MEA30のカソード電極38上に酸化剤ガスの流動方向を示す)。酸化剤ガス流路40は、第1セパレータ26の矢印A方向(水平方向)に延在する複数本の凸部間に形成された直線状流路溝又は波状流路溝によって構成される。
第2セパレータ28は、燃料ガス(例えば、水素含有ガス)を流動させる燃料ガス流路42を、樹脂枠付きMEA24のアノード電極36に対向する面28aに備える。燃料ガス流路42は、第2セパレータ28の矢印A方向に延在する複数本の凸部間に形成された直線状流路溝又は波状流路溝によって構成される。
互いに接合される第1セパレータ26の面26bと第2セパレータ28の面28bとの間には、冷却媒体(例えば、水)を流動させる冷却媒体流路44が設けられる。冷却媒体流路44は、酸化剤ガス流路40が形成された第1セパレータ26の裏面形状と、燃料ガス流路42が形成された第2セパレータ28の裏面形状とが重なり合って形成される。
また、発電セル12の長辺方向である矢印A方向の両側部(矢印Ar側、矢印Af)には、酸化剤ガス、燃料ガス及び冷却媒体を、発電セル12の積層方向に沿って独立的に流動させる複数の連通孔46が設けられている。
矢印Ar(燃料電池スタック10の後方)側に設けられる複数の連通孔46は、第2連通孔である酸化剤ガス入口連通孔48aと、第1連通孔である2つの燃料ガス出口連通孔50bと、第3連通孔である2つの冷却媒体出口連通孔52bと、を含む。相互の連通孔46は上下方向に沿って概ね並んでいる。酸化剤ガス入口連通孔48a、2つの冷却媒体出口連通孔52b及び2つの燃料ガス出口連通孔50bは、発電セル12を積層方向に貫通している。
酸化剤ガス入口連通孔48aは、矢印C方向に5つ並ぶ連通孔46の真中に形成されている。2つの冷却媒体出口連通孔52bは、酸化剤ガス入口連通孔48aの上下に隣接して、この酸化剤ガス入口連通孔48aを間に挟む位置に形成されている。2つの燃料ガス出口連通孔50bは、上側の冷却媒体出口連通孔52bよりも上側位置と、下側の冷却媒体出口連通孔52bよりも下側位置とに配置され、酸化剤ガス入口連通孔48a及び2つの冷却媒体出口連通孔52bを間に挟んでいる。
矢印Af(燃料電池スタック10の前方)側に設けられる複数の連通孔46は、第2連通孔である2つの酸化剤ガス出口連通孔48b、第1連通孔である燃料ガス入口連通孔50a、第3連通孔である2つの冷却媒体入口連通孔52aを含む。相互の連通孔46は矢印C方向に概ね並んでいる。2つの酸化剤ガス出口連通孔48b、燃料ガス入口連通孔50a、2つの冷却媒体入口連通孔52aは、それぞれ発電セル12を積層方向に貫通している。
燃料ガス入口連通孔50aは、矢印C方向に5つ並ぶ連通孔46の中間位置に形成されている。2つの冷却媒体入口連通孔52aは、燃料ガス入口連通孔50aの上下に隣接して、この燃料ガス入口連通孔50aを間に挟む位置に形成されている。2つの酸化剤ガス出口連通孔48bは、上側の冷却媒体入口連通孔52aよりも上側位置と、下側の冷却媒体入口連通孔52aよりも下側位置とに配置され、燃料ガス入口連通孔50a及び2つの冷却媒体入口連通孔52aを間に挟んでいる。
また本実施形態において、酸化剤ガス入口連通孔48a及び燃料ガス入口連通孔50aは、六角形状に形成されている。さらに燃料ガス入口連通孔50aの流路断面積は、酸化剤ガス入口連通孔48aの流路断面積よりも小さい。一方、酸化剤ガス出口連通孔48b、燃料ガス出口連通孔50b、冷却媒体入口連通孔52a及び冷却媒体出口連通孔52bは、略三角形状に形成されている。
酸化剤ガス流路40は、酸化剤ガス入口連通孔48a及び2つの酸化剤ガス出口連通孔48bに流体的に連通する。酸化剤ガス流路40は、酸化剤ガス入口連通孔48aから酸化剤ガスが供給されることで、この酸化剤ガスを矢印A方向に沿って流動させ、2つの酸化剤ガス出口連通孔48bに酸化剤ガスを排出する。2つの酸化剤ガス出口連通孔48bは、三角形状の一辺(底辺)が酸化剤ガス流路40に向いている。
燃料ガス流路42は、燃料ガス入口連通孔50a及び2つの燃料ガス出口連通孔50bに流体的に連通する。燃料ガス流路42は、燃料ガス入口連通孔50aから燃料ガスが供給されることで、この燃料ガスを矢印A方向(酸化剤ガスと反対方向)に沿って流動させ、2つの燃料ガス出口連通孔50bに燃料ガスを排出する。2つの燃料ガス出口連通孔50bは、三角形状の一辺(底辺)が燃料ガス流路42に向いている。
冷却媒体流路44は、2つの冷却媒体入口連通孔52a及び2つの冷却媒体出口連通孔52bに流体的に連通する。冷却媒体流路44は、2つの冷却媒体入口連通孔52aから冷却媒体が供給されることで、この冷却媒体を矢印A方向(燃料ガスと同方向)に沿って流動させ、2つの冷却媒体出口連通孔52bに冷却媒体を排出する。2つの冷却媒体入口連通孔52a及び2つの冷却媒体出口連通孔52bは、三角形状の一頂部が共に冷却媒体流路44に向いている。
なお、酸化剤ガス連通孔48(酸化剤ガス入口連通孔48a、酸化剤ガス出口連通孔48b)、燃料ガス連通孔50(燃料ガス入口連通孔50a、燃料ガス出口連通孔50b)、冷却媒体連通孔52(冷却媒体入口連通孔52a、冷却媒体出口連通孔52b)の配置位置、数、形状は、上記に限定されない。各連通孔46は、要求される仕様に応じて適宜設計されればよい。
第1及び第2セパレータ26、28の表面には、例えば、プレス成形により複数のメタルビードシール(シール部材54)が樹脂枠付きMEA24に向かって一体成形される。シール部材54は、メタルビードシールに代えて、弾性材料からなる凸状弾性シールが適用されてもよい。
また、発電セル12には、燃料電池スタック10の運転時(発電時)にカソード側で生じた生成水を排出する第1ドレン56が設けられている。第1ドレン56は、第1及び第2セパレータ26、28、樹脂枠部材32が重なる位置に貫通形成されている。第1ドレン56は、積層体16の端部(例えば、インシュレータ)に設けられた図示しない第1連結流路を介して、酸化剤ガス出口連通孔48bに連通している。
さらに、発電セル12には、燃料電池スタック10の運転時(発電時)にアノード側で生じた生成水を排出するための第2ドレン58が設けられている。第2ドレン58は、第1及び第2セパレータ26、28、樹脂枠部材32が重なる位置に貫通形成されている。第2ドレン58は、積層体16の端部(例えば、インシュレータ)に設けられた図示しない第2連結流路を介して、燃料ガス出口連通孔50bに連通している。
図1に戻り、複数の発電セル12を収容するスタックケース14は、面状に延在して全面を覆う壁部18を前面、上面及び底面に有する。その一方で、スタックケース14の後面及び左右両側の側面は、スタックケース14の内部空間14aに連通する窓20aを有する窓枠20(フレーム状)に形成されている。
積層体16の積層方向の一端側(矢印Br側)に設けられる図示しないターミナルプレート及び絶縁プレートは、発電セル12と共にスタックケース14内に収容される。スタックケース14の矢印B方向一端側には、スタックケース14の窓20aを閉塞する側壁60が、シール部材61を挟んで取り付けられる。この側壁60は、発電セル12の積層方向に締付荷重を付与する一方のエンドプレートを構成する。なお、スタックケース14の後面も、窓20aを閉塞する後壁62が、シール部材61を挟んで取り付けられる。
積層体16の積層方向の他端側(矢印Bl側)に設けられる図示しないターミナルプレート及び絶縁プレートは、発電セル12と共にスタックケース14内に収容される。そして、発電セル12の積層方向他端側のスタックケース14の側面には、窓20aを閉塞するように、シール部材61を挟んで補機ケース64が取り付けられる。
補機ケース64は、マニホールド構造22を収容及び保護するための保護筐体であり、スタックケース14の水平方向に固定される。図3に示すように、マニホールド構造22は、燃料電池システムの補機66(デバイス)や配管67を含み、流体である燃料ガス、酸化剤ガス、冷却媒体を流動させる。補機ケース64は、スタックケース14にねじ止めされる凹形状の第1ケース部材68と、第1ケース部材68に接合される凹形状の第2ケース部材70とを有し、これらの部材の内部に、マニホールド構造22を収納する収納空間64aが形成される。
第1ケース部材68は、ボルトによりスタックケース14に接合され、スタックケース14の内部空間14aと補機ケース64の収納空間64aとを区画する取付壁部72を有する。取付壁部72は、発電セル12の積層体16に積層方向の締付荷重を付与するエンドプレートとしての機能を有している。
図1に戻り、取付壁部72は、発電セル12の複数の連通孔46(酸化剤ガス連通孔48、燃料ガス連通孔50、冷却媒体連通孔52)にそれぞれ連通する複数の孔部74を有する。なお、取付壁部72には、矢印Ar側及びAf側に上下方向に延在する一対の長孔を有し、後記のマニホールド構造22(第1配管構造85)から一対の長孔を貫通し、各連通孔46に対応する管を突出させた構成でもよい。
複数の孔部74は、取付壁部72を厚さ方向に貫通形成されている。各孔部74は、酸化剤ガス入口連通孔48aに連通する酸化剤ガス導入用孔部76aと、2つの酸化剤ガス出口連通孔48bに各々連通する2つの酸化剤ガス導出用孔部76bと、燃料ガス入口連通孔50aに連通する燃料ガス導入用孔部78aと、2つの燃料ガス出口連通孔50bに各々連通する2つの燃料ガス導出用孔部78bと、2つの冷却媒体入口連通孔52aに各々連通する2つの冷却媒体導入用孔部80aと、2つの冷却媒体出口連通孔52bに各々連通する2つの冷却媒体導出用孔部80bと、を含む。また図示は省略するが、孔部74の内壁には、ガスケットが取り付けられ、ガスケットは、外側(矢印Bl側)において正円形状に形成され、内側(矢印Br側)に向かって各連通孔46の形状に応じた形に徐々に変化するように構成されている。なお孔部74の内壁自体の形状が徐々に変化する構成でもよい。
図3に示すように、補機ケース64の収納空間64aには、燃料電池システムの補機66及び配管67を含むマニホールド構造22の構造部82が構築されている。この構造部82は、燃料電池スタック10から外側(矢印Bl方向)に向かって順に第1~第3層部84、86、88を有している。つまり、第1層部84は、第1ケース部材68の取付壁部72の隣接位置に設置され、第2層部86は、第1層部84の矢印Bl側の隣接位置に設置され、第3層部88は、第2層部86の矢印Bl側の隣接位置に設置される。
第1~第3層部84、86、88は、燃料ガス、酸化剤ガス、冷却媒体を流動させる配管67をユニット状に構成した3つの配管構造によって区分される。すなわち、第1層部84には第1配管構造85、第2層部86には第2配管構造87、第3層部88には第3配管構造89が設けられている。
第1配管構造85は、図4及び図5に示すように、第1ケース部材68の取付壁部72に固定され、取付壁部72に設けられた全ての孔部74に重なるブロック形状に形成されている。詳細には、第1配管構造85は、第1ケース部材68の取付壁部72を臨む正面視で、略二等辺三角形状を呈する本体部90と、本体部90の頂角側に連なり上下方向に短く延在する縦延在部92と、縦延在部92の上下方向途中位置から本体部90と反対方向に延在する一対の横延在部94と、を有する。また、第1配管構造85は、取付壁部72から矢印B方向(厚さ方向)に所定長さ突出し、流体(本実施形態では燃料ガス、冷却媒体)が流動可能な第1流通路96を内部に備える。第1配管構造85の突出端側(矢印Bl側)の構造壁85aは、第1流通路96を非露出とする平坦状に形成されている。
第1配管構造85は、溶接、接着等の適宜の接合方法により取付壁部72に接合される。接合状態では、縦延在部92及び横延在部94が矢印Af側となり、本体部90の底辺側が矢印Ar側となる。また接合状態では、縦延在部92が取付壁部72の矢印Af側に形成された複数の孔部74に重なり、本体部90の底辺側が壁部の矢印Ar側に形成された複数の孔部74に重なる。
本体部90の底辺側は、複数の孔部74の設置形状に応じて波状に形成されている。そして本体部90は、矢印Ar側において、上下方向中央部の3つの孔部74に重なる位置に複数(3つ)の第1貫通孔98を有する。各第1貫通孔98は、本体部90を厚さ方向に貫通して各孔部74に連通する。各第1貫通孔98は、酸化剤ガス導入用孔部76aに連通する酸化剤ガス導入用第1貫通孔98aと、2つの冷却媒体導出用孔部80bの各々に連通する冷却媒体導出用第1貫通孔98bと、を含む。すなわち、酸化剤ガス導入用第1貫通孔98aは、酸化剤ガス入口連通孔48a(図2参照)に連通し、2つの冷却媒体導出用第1貫通孔98bは、冷却媒体出口連通孔52b(図2参照)に連通する。
一方、本体部90の矢印Ar側において上下方向の底角付近は、本体部90の構造壁85aによって2つの燃料ガス導出用孔部78bを覆っている。本体部90の底角付近において取付壁部72と対向する面には、2つの燃料ガス導出用孔部78bにそれぞれ連通する内側開口部100aが設けられている。また、本体部90の頂角付近は、構造壁85aにより燃料ガス導入用孔部78aを覆っており、この頂角付近において取付壁部72と対向する面には燃料ガス導入用孔部78aに連通する内側開口部100bが設けられている。各内側開口部100a、100bは、本体部90内に形成された第1流通路96に連通している。
本体部90の第1流通路96は、構造壁85aによって覆われて本体部90の面方向(矢印A方向及び矢印C方向)に沿って延在している。本実施形態において、本体部90の第1流通路96は、燃料ガスが流動する燃料ガス流通路102として構成されている。例えば、燃料ガス流通路102は、内側開口部100aに連なる一対の第1路102aと、一対の第1路102aに連なる第2路102b、第3路102cと、を有する。第2路102bは、本体部90の外部に設けられた燃料ガス系装置のエゼクタ103(補機66)に、燃料ガス(アノードオフガス)を流動させる。第3路102cは、アノードオフガスを排出する配管67bに接続される。
また、燃料ガス流通路102は、燃料ガス系装置のインジェクタ104(補機66)及びエゼクタ103の下流側の配管67aが外部に接続されると共に、本体部90の外部から内側開口部100bに連通する第4路102dを有する。第4路102dは、インジェクタ104の駆動下に、燃料ガスを内側開口部100b、燃料ガス入口連通孔50aに供給する。
第1配管構造85の縦延在部92は、本体部90の頂角側から上下方向に向かって2つの酸化剤ガス導出用孔部76bに達する長さに延在している。縦延在部92は、取付壁部72の矢印Af側に設けられた4つの孔部74(2つの冷却媒体導入用孔部80a、2つの酸化剤ガス導出用孔部76b)に対応した波状で、且つ本体部90と同じ厚さに形成されている。縦延在部92は、2つの酸化剤ガス導出用孔部76bの対向位置に酸化剤ガス導出用第1貫通孔98c(第1貫通孔98)をそれぞれ有する。つまり、2つの酸化剤ガス導出用第1貫通孔98cは、発電セル12の酸化剤ガス出口連通孔48b(図2参照)に連通している。
その一方で、縦延在部92は、2つの冷却媒体導入用孔部80aを構造壁85aにより覆っている。縦延在部92の取付壁部72との対向面側には、2つの冷却媒体導入用孔部80aにそれぞれ連通する2つの内側開口部100cが設けられている。
一対の横延在部94は、各内側開口部100cの形成位置の側方に連なり、その内部に冷却媒体を供給する第1流通路96である冷却媒体導入路106を有する。冷却媒体導入路106は、縦延在部92まで延在して内側開口部100cに連通している。つまり冷却媒体導入路106は、冷却媒体導入用孔部80aを介して、冷却媒体入口連通孔52a(図2参照)に連通している。冷却媒体導入路106の他端は、一対の横延在部94に沿って第1ケース部材68の外部に延在し、図示しない冷却装置に繋がる配管に連通する。
上記の第1層部84(第1配管構造85)に対して第2層部86が積層される。図4及び図6に示すように、第2層部86は、酸化剤ガス系装置のデバイスである加湿器108と、加湿器108に連設するように設けられる第2配管構造87と、を含み、加湿器108及び第2配管構造87は、相互に一体化した状態で第1層部84に取り付けられる。
加湿器108は、発電セル12を発電に適当な湿潤状態とするために、燃料電池スタック10に供給する酸化剤ガスを加湿する。例えば、加湿器108は、燃料電池スタック10から排出される酸化剤ガス(カソードオフガス)を循環して、カソードオフガスに含まれる水により加湿を行う。
第2配管構造87は、加湿器108の矢印Ar側の端部に設置される連結体110と、加湿器108の矢印Af側の端部に設置される一対の連結管112とを有する。連結体110及び連結管112の各々は、第1配管構造85の所定位置に接合されることで、第1配管構造85の構造壁85aに対し加湿器108を若干離れた位置に位置決めする。連結体110及び連結管112は、溶接、接着等の適宜の接合方法により第1配管構造85に接合されるとよい。
連結体110は、第1配管構造85に設けられた酸化剤ガス導入用第1貫通孔98a及び2つの冷却媒体導出用第1貫通孔98bに重なるブロック状に形成され、第1配管構造85よりも矢印B方向に長く延在している。連結体110の上下方向中央部の内部には、第1配管構造85の酸化剤ガス導入用第1貫通孔98aに連通する酸化剤ガス導入用第2流通路116(第2流通路114)が設けられている。連結体110の上下方向両側部は、第1配管構造85の一対の冷却媒体導出用第1貫通孔98bに連通する冷却媒体導出用第2貫通孔118a(第2貫通孔118)が設けられている。
加湿器108の矢印Af側に設けられる一対の連結管112は、第1配管構造85の第1貫通孔98と加湿器108とを接続する管体に形成されている。一対の連結管112の内部には、第2流通路114が設けられ、この第2流通路114は、第1配管構造85の酸化剤ガス導出用第1貫通孔98cと加湿器108との間を連通する酸化剤ガス導出用第2流通路117となっている。すなわち、酸化剤ガス導出用第2流通路117は、酸化剤ガス導出用孔部76b及び酸化剤ガス導出用第1貫通孔98cを介して、積層体16から排出される酸化剤ガス(カソードオフガス)を加湿器108に流動させる。
連結体110が接続される加湿器108の一端側には、加湿器108内に酸化剤ガスを供給するための供給管120が接続されている。供給管120は、補機ケース64の外部に設けられた図示しないエアポンプに接続されている。
連結管112が連結される加湿器108の他端側には、加湿器108に酸化剤ガス(カソードオフガス)流入した酸化剤ガスを、加湿器108(第2層部86)から外部に排出するための排出管122が接続されている。排出管122には、酸化剤ガスの流動量や流動経路を変化させる図示しないバルブが設けられる。
図4及び図7に示すように、上記の第2層部86(第2配管構造87の連結体110)に対して第3層部88が積層される。第3層部88は、ユニット状に構成された第3配管構造89を有し、この第3配管構造89は、溶接、接着等の適宜の接合方法により連結体110の矢印Bl側の突出端に接合される。
第3配管構造89は、一対の冷却媒体導出用第2貫通孔118aに連通する冷却媒体導出用第3流通路126(第3流通路124)を内部に有している。具体的には、第3配管構造89は、連結体110の一対の冷却媒体導出用第2貫通孔118aに対向する2つの分岐管128と、2つの分岐管128が合流する1本の合流管130と、を有する。
一対の分岐管128は、連結体110に隣接する端部(矢印Br)側に分岐管128同士を架橋し且つ連結体110に固定するための固定板部132を備えている。固定板部132は、連結体110の突出端面を全体的に覆うように接合される。合流管130は、上下に並ぶ分岐管128から下方向に延在して所定位置で90°屈曲することで、加湿器108の下側を迂回して矢印Af方向に向かって延在している。合流管130は、燃料電池スタック10の前方側に設けられた図示しない冷却装置に接続されている。
本実施形態に係る燃料電池スタック10のマニホールド構造22は、基本的には以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
燃料電池スタック10は、図1に示すように、製造時に、複数の発電セル12を積層した積層体16をスタックケース14に収容する。そして、スタックケース14の矢印Br側に側壁60を固定すると共に、スタックケース14の矢印Bl側に補機ケース64の第1ケース部材68を固定して、積層体16の積層方向に締付荷重を付与する。第1ケース部材68の取付壁部72は、取付状態で、積層体16の各連通孔46に各々対向するように複数の孔部74を配置しており、酸化剤ガス、燃料ガス及び冷却媒体を供給及び排出可能としている。
マニホールド構造22の構造部82の製造では、図5に示すように、まず取付壁部72の全ての孔部74に重なるように、第1層部84の第1配管構造85を接合する。接合状態において第1配管構造85の矢印Ar側は、酸化剤ガス導入用孔部76aに酸化剤ガス導入用第1貫通孔98aが連通し、2つの冷却媒体導出用孔部80bに2つの冷却媒体導出用第1貫通孔98bが連通し、2つの燃料ガス導出用孔部78bに燃料ガス流通路102が連通する。また第1配管構造85の矢印Af側は、燃料ガス導入用孔部78aに燃料ガス流通路102が連通し、2つの冷却媒体導入用孔部80aに2つの冷却媒体導入路106が連通し、2つの酸化剤ガス導出用孔部76bに2つの酸化剤ガス導出用第1貫通孔98cが連通する。
次に、図6に示すように、第1配管構造85に対し、第2層部86を構成する第2配管構造87、及び第2配管構造87と一体化した加湿器108を接合する。接合状態において第2配管構造87の矢印Ar側は、連結体110が配置され、酸化剤ガス導入用第1貫通孔98a、酸化剤ガス導入用第2流通路116が連通し、2つの冷却媒体導出用第1貫通孔98bの各々に2つの冷却媒体導出用第2貫通孔118aが連通する。また第2配管構造87の矢印Af側は、一対の連結管112が配置され、2つの酸化剤ガス導出用第1貫通孔98cに2つの酸化剤ガス導出用第2流通路117が連通する。
そして、第2配管構造87の矢印Ar側に対し、第3層部88を構成する第3配管構造89を接合する。接合状態において、第3配管構造89は、2つの冷却媒体導出用第2貫通孔118aに対して冷却媒体導出用第3流通路126を連通させる。第1~3層部84、86、88を積層して構成されたマニホールド構造22は、第1~第3流通路96、114、124及び第1、第2貫通孔98、118を通して、積層体16に流体を供給及び排出させる。
燃料ガスは、インジェクタ104の駆動下に第1配管構造85の燃料ガス流通路102に供給され、燃料ガス導入用孔部78aを介して燃料ガス入口連通孔50aに流入する。また2つの燃料ガス出口連通孔50bを流動する燃料ガス(アノードオフガス)は、2つの燃料ガス導出用孔部78bを介して第1配管構造85の燃料ガス流通路102に流出される。第1配管構造85内の燃料ガス流通路102は、所定形状に設計されていることで、アノードオフガスの一部を燃料ガス導入用孔部78aに環流させると共に、アノードオフガスの他部を第1配管構造85から排出させる。
酸化剤ガスは、エアポンプの駆動下に供給管120を通して加湿器108に供給される。また酸化剤ガスは、加湿器108から酸化剤ガス導入用第2流通路116、酸化剤ガス導入用第1貫通孔98a、酸化剤ガス導入用孔部76aを介して酸化剤ガス入口連通孔48aに流入する。さらに、2つの酸化剤ガス出口連通孔48bを流動する酸化剤ガス(カソードオフガス)は、2つの酸化剤ガス導出用孔部76b、2つの酸化剤ガス導出用第1貫通孔98cを介して、2つの酸化剤ガス導出用第2流通路117に流出される。さらにカソードオフガスは、加湿器108を通して酸化剤ガスを加湿した後、排出管122を介して外部に排出される。
冷却媒体は、冷却装置のポンプ(不図示)の駆動下に横延在部94に接続される配管から冷却媒体導入路106及び冷却媒体導入用孔部80aを介して冷却媒体入口連通孔52aに流入する。また冷却媒体出口連通孔52bを流動する冷却媒体は、冷却媒体導出用孔部80b、冷却媒体導出用第1貫通孔98b、冷却媒体導出用第2貫通孔118aを介して、第3配管構造89の冷却媒体導出用第3流通路126に流出される。
なお、第1~第3層部84、86、88(第1~第3配管構造85、87、89)の接続部分は、溶接や接着等の接合方法に限定されるものではなく、種々の方法を採用してよい。例えば図7に示すように、第1配管構造85と第2配管構造87の境界部分や第2配管構造87と第3配管構造89の境界部分に筒状のジョイント部材134を収容し、各構造同士を接合してもよい。ジョイント部材134は、各孔の内壁に密着可能な外径に設計され、また樹脂材料(弾性材料を含む)や金属材料等の適宜の材料により構成される。ジョイント部材134は、第1貫通孔98と第2貫通孔118の接続、第1貫通孔98と第2流通路114の接続、第2貫通孔118と第3流通路124の接続をガイドすると共に、境界部分からの流体の漏出を防ぐことができる。
また、ジョイント部材134は、取付壁部72と第1配管構造85との接合箇所に適用してもよい。ジョイント部材134の構成は、特に限定されず、例えば、取付壁部72、第1~第3配管構造85、87、89内を一連に連続する筒状に形成されていてもよい。
上記の実施形態から把握し得る本発明の技術的思想及び効果について、以下に記載する。
燃料電池スタック10のマニホールド構造22は、第1層部84と第2層部86とを備える構造部82によって、レイアウトの自由度、及びマニホールドの設置箇所付近の強度を高めることができる。すなわち、第1層部84は、第1流通路96により第1層部84内で燃料ガスを流動させ、第1貫通孔98により酸化剤ガス、冷却媒体を別経路に案内する。第2層部86は、第2流通路114により第2層部86内で酸化剤ガスを流動させ、第2貫通孔118により冷却媒体を別経路に案内する。よって、異なる流体(燃料ガス及び酸化剤ガス)のレイアウトを層毎に容易に形成することができ、各層において流体を良好に流動させることが可能となる。また、第1及び第2層部84、86は、従来の配管を支持する部品や従来の配管により生じるクリアランスをなくし、マニホールドの設置箇所付近の強度を高め、しかも製造時の組立性を大幅に向上することができる。
また、構造部82は、第2層部86の隣接位置に設置され、第2貫通孔118に連通する第3流通路124を内部に有する第3層部88を備える。第3層部88は、第2貫通孔118に連通する第3流通路124によって、冷却媒体をより良好に流動させることができる。
第1層部84は、エンドプレート(取付壁部72)の面方向に沿って延在する一連の配管構造(第1配管構造85)として構成されている。これにより、第1配管構造85は、流体の流路を簡単に確保すると共に、取付壁部72を補強することができる。
第3流通孔(冷却媒体連通孔52)は、複数設けられ、当該複数の冷却媒体連通孔52のうち一部は、配管構造(第1配管構造85)に設けられた第1流通路96(燃料ガス流通路102)とは異なる流通路(冷却媒体導入路106)に連通している。これにより、第1層部84の冷却媒体導入路106を介して冷却媒体を別経路に案内することができる。
第1連通孔(燃料ガス入口連通孔50a、燃料ガス出口連通孔50b)、第1層部84の第1流通路96(燃料ガス流通路102)は、燃料ガスを流動させる一方で、第2連通孔(酸化剤ガス入口連通孔48a、酸化剤ガス出口連通孔48b)、第1層部84の第1貫通孔98(酸化剤ガス導入用第1貫通孔98a、酸化剤ガス導出用第1貫通孔98c)及び第2層部86の第2流通路114(酸化剤ガス導入用第2流通路116、酸化剤ガス導出用第2流通路117)は、酸化剤ガスを流動させる。これにより、第1層部84に燃料ガス系装置の補機66や配管67を容易に配置すると共に、第2層部86に酸化剤ガス系装置の補機66や配管67を容易に配置することができる。
第2層部86は、酸化剤ガスを加湿する加湿器108と、加湿器108に取り付けられると共に当該加湿器108に連通する第2流通路114、及び第2貫通孔118を有する連結体110と、を含む。これにより、構造部82は、第2層部86の加湿器108において加湿した酸化剤ガスを、連結体110の第2流通路114を介して発電セル12の第2連通孔(酸化剤ガス入口連通孔48a)に供給することが可能となる。
連結体110の積層方向に沿った長さは、第1層部84の積層方向に沿った長さよりも長い。これにより、構造部82は、加湿器108等の比較的大きなデバイスを配置しても、第2層部86を確実に形成することが可能となる。
発電セル12の積層方向の端部には、構造部82を収容する補機ケース64が設けられ、発電セル12に積層される補機ケース64の取付壁部72がエンドプレートを構成する。このように補機ケース64の取付壁部72がエンドプレートを構成しても、複数の発電セル12に締付荷重を付与しつつ、また構造部82を通して流体を良好に流動させることができる。
第1貫通孔98と第2貫通孔118の境界部分には、第1層部84と第2層部86の取付をガイドすると共に、境界部分を覆う筒状のジョイント部材134が収容されてもよい。マニホールド構造22は、ジョイント部材134によって第1層部84と第2層部86の組立を容易に行うことができる。しかもジョイント部材134は、第1層部84と第2層部86の組立状態で、流体の漏出を防止することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、マニホールド構造22は、上述の実施形態では補機ケース64内に収容された構成であったが、燃料電池スタック10の平板状に形成されたエンドプレートに隣接するように設けられてもよい。
また例えば、第1配管構造85の内部に形成される第1流通路96の形状は、上述した燃料ガス流通路102に限定されず自由に設計してよい。さらに、構造部82において第1層部84の第1流通路96、第2層部86の第2流通路114、第3層部88の第3流通路124を流動させる流体(燃料ガス、酸化剤ガス、冷却媒体)の種類は特に限定されない。他の例としては、第1層部84の第1流通路96に酸化剤ガスを流動させ、第2層部86に燃料ガスを流動させる構成、或いは第1層部84に冷却媒体を流動させ、第2層部86に燃料ガスを流動させ、第3層部88に酸化剤ガスを流動させる構成等があげられる。換言すれば、構造部82において、燃料ガス系装置が設けられる層と、酸化剤ガス系装置が設けられる層と、冷却装置(配管67)が設けられる層との積層順は任意に設定してよい。この場合、第1~第3層部84、86、88は、流動させる流体(燃料ガス、酸化剤ガス、冷却媒体)の種類に応じて適切な流路形状に設計されればよい。
第1層部84は、第1配管構造85に加えて、水素ガス系装置の補機66が一体に取り付けられたユニット形状に形成されてもよい。第2層部86は、加湿器108が設けられていなくてもよく、また第1配管構造85の本体部90のようにエンドプレートの面方向に延在し内部に第2流通路114を有するブロック状に形成されていてもよい。
また、マニホールド構造22は、エンドプレート(取付壁部72)の内部に冷却媒体の流路(冷却媒体導入路106)等を設けて、エンドプレートの内部を通して冷却媒体を流動させる構成でもよい。これによりエンドプレートの外側近傍位置の構成をより一層簡素化させることができる。またエンドプレートの内部に冷却媒体を流動させる構成でも、エンドプレートに隣接する第1層部84に燃料ガス系装置(燃料ガスを流動させる構造)を配置する構造に限定されず、酸化剤ガス系装置(酸化剤ガスを流動させる構造)を配置してもよい。すなわち、この構成でも、積層順を任意に設計し得る。
さらに、冷却媒体の配管は、燃料ガス系装置(例えば、第1層部84)及び酸化剤ガス系装置(例えば、第2層部86)等を直接加温するラインとして、適宜のデバイスの間やデバイス自体を通すように構成してもよい。またさらに冷却媒体の配管は、燃料電池スタック10の低温時に、燃料電池スタック10の外部をバイパスして各デバイスを加温するラインとして設定してもよい。