JP7153757B2 - 車両用窓ガラス - Google Patents
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Description
図1に示すように、本実施形態に係る車両用窓ガラスは、ガラス板1上に、デフォッガ2、FMアンテナ素子3、AMアンテナ素子4、及びFM/DAB兼用アンテナ素子5が、実装されている。以下、各部材について、順に説明する。
ガラス板1は、自動車用の公知のガラス板を利用することができる。例えば、ガラス板1として、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラス若しくはグリーンガラス、又はUVグリーンガラスが利用されてもよい。ただし、このようなガラス板1は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、日射吸収率、可視光線透過率などが安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラスの組成の一例と、熱線吸収ガラス組成の一例を示す。
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
R2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.08~0.14質量%
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl2O3)をT-Fe2O3、CeO2及びTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
次に、デフォッガ2について説明する。図1に示すように、デフォッガ2は、ガラス板1における垂直方向の中央付近に配置されており、ガラス板1の左右方向全体に亘って延びるように形成されている。具体的には、このデフォッガ2は、ガラス板1の両側縁に沿って上下方向に延びる一対の給電用のバスバー21a,21bを備えている。両バスバー21a,21bの間には、複数の水平エレメント(水平加熱線)22が所定間隔をおいて平行に配置されており、バスバー21a,21bからの給電により、防曇用の熱が発生するようになっている。また、このデフォッガ2には、水平エレメント22を水平方向に概ね4等分するように、上下方向に延びる3つの垂直FMエレメント23が設けられている。これら垂直FMエレメント23は、後述するFM帯域受信用のアンテナ素子の一部として機能する。また、これら垂直FMエレメントは、最も上方にある水平エレメント(以下、最上部水平エレメントという)221と、下から3番目の水平エレメント22とを結ぶように延びている。
次に、FMアンテナ素子(第1メディア用アンテナ素子)3について説明する。このFMアンテナ素子3は、ガラス板1上で、デフォッガ2の上方にあるスペースに配置されている。具体的には、このFMアンテナ素子3は、ガラス板の上縁の中央よりも左側に設けられた左側給電部(第2給電部)30から延びるように形成されている。具体的には、このFMアンテナ素子3は、下方に延びる垂直エレメント31と、この垂直エレメント31から左側へ延びる4本の水平エレメント、つまり第1~第4水平エレメント321~324と、を備えている。第1~第4水平エレメント321~324は、上下方向に所定間隔をおいて平行に配置されており、最も下側に配置される第4水平エレメント324は、垂直エレメント31の下端から左側へ延びている。また、この第4水平エレメント324は、デフォッガ2の最上部水平エレメント221と、距離D1の間隔をあけ、平行に延びている。これにより、デフォッガ2とFMアンテナ素子3とは、容量結合しており、その結果、FMアンテナ素子3の実効面積を広げることができる。距離D1は、0~60mmであることが好ましく、20~50mmであることがさらに好ましく、30~45mmであることが特に好ましい。但し、第4水平エレメント324とデフォッガ2の最上部水平エレメント221とを直接結合してもよく、この場合、距離D1は0mmとなる。なお、このFMアンテナ素子3は、AM放送の受信にも用いられる。
AMアンテナ素子4は、FMアンテナ素子と同じく、左側給電部30から延びるように形成されている。具体的には、このAMアンテナ素子4は、FMアンテナ素子3の垂直エレメント31の右側で、左側給電部30から下方に延びる第1垂直エレメント411と、この垂直エレメント31の上端付近から右側へ延びる第1水平エレメント421と、を備えている。さらに、このAMアンテナ素子4は、第1水平エレメント421の右端から下方へ延びる第2垂直エレメント412と、この第2垂直エレメント412から左側へ延びる3つの水平エレメント、つまり第2~第4水平エレメント422~424と、を備えている。
続いて、FM/DAB兼用アンテナ素子(混合アンテナ素子)5について説明する。DABは、ヨーロッパ等で採用されているデジタルラジオの放送規格である。DABでは、主に、周波数帯域が174MHz~240MHzのバンド3と周波数帯域が1452MHz~1492MHzのLバンドとが用いられている。本発明においては、主としてバンド3を周波数帯域とするDAB放送が対象となる。
上記のようなデフォッガ2、及び各アンテナ素子3,4,5は、導電性を有する導電性材料をガラス板1の表面に所定のパターンを有するように積層することで形成することができる。そのような材料としては、導電性を有していればよく、実施の形態に適宜選択可能であり、一例として、銀、金、白金等を挙げることができる。この上記各部材は、例えば、銀粉末、ガラスフリット等を含む導電性の銀ペーストをガラス板1の表面に印刷し焼成することによって形成することができる。
次に、本実施形態に係る窓ガラスの製造方法を説明する。本実施形態に係る窓ガラスのガラス板1は、プレスによって成形するプレス成形工法、ガラス板1の自重で曲げる自重曲げ工法等によって成形することができる。
以上のように、本実施形態によれば、FM/DAB兼用アンテナ素子5を有することで、1つの給電部50から延びるアンテナ素子にもかかわらず、FM周波数帯域及びDAB周波数帯域の両方の受信が可能となる。また、このFM/DAB兼用アンテナ素子5は、DAB用エレメント51とFM用エレメント53との間に、折り返し部分522を有するキャンセルエレメント52を有しており、これによって、DAB周波数帯域の受信信号を遮断又は減衰させることができる。その結果、DAB用エレメント51がFM用エレメント53に影響を受けず、DAB用エレメント51の長さを、DAB周波数帯域の受信に合わせたものとすることができる。特に、第1水平部521及び第2水平部523のいずれか一方の長さが、DAB放送の波長帯のλ/4付近±50mm(好ましくは±30mm、さらに好ましくは±10mm)であれば、この効果が顕著になる。これは、インピーダンスを無限大にすることで電波に対する抵抗を最大にして、DAB周波数帯域の受信信号をキャンセルしてしまうからである。なお、実際のキャンセルエレメントの長さは、車体の影響を考慮して、チューニングする必要がある。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
上記実施形態のデフォッガ2の形態は一例であり、水平エレメント22の数、垂直FMエレメント23の数、交差数などは、特には限定されない。また、受信感度を向上するために、追加のエレメントを適宜設けることもできる。
上記実施形態におけるFMアンテナ素子3、AMアンテナ素子4、FM/DAB兼用アンテナ素子5の形態は一例であり、エレメントの数、長さ、方向などは、特には限定されない。また、FMアンテナ素子3、AMアンテナ素子4の給電部30を別個にすることもできる。さらに、各アンテナ3,4,5を、アース接続エレメントを設けた、いわゆる双曲型アンテナにより構成することもできる。
上記実施形態では、FM/DAB兼用アンテナ素子5のキャンセルエレメント52を設け、DAB用エレメント51がFM用エレメント53に影響を受けるのを防止しているが、FM/DAB兼用アンテナ素子5の各部位の長さによっては、このキャンセルエレメント52をDAB用アンテナ及び/またはFM用アンテナとして機能させることができる。
上記実施形態では、FMアンテナ素子3をデフォッガ2と容量結合させているが、直接結合でもよい。また、FM/DAB兼用アンテナ素子5のFM用エレメント53は、延長エレメント24を介して、デフォッガ2と容量結合しているが、延長エレメント24を設けることなく、FM用エレメント53とデフォッガ2を近接させることにより、容量結合させることもできる。また、FM用エレメント53と延長エレメント24とを直接結合することもできる(この場合は、FM用エレメント53と延長エレメント24の区別がなくなり、FM用エレメント53がデフォッガ2と直接結合されたことになる)。このような直接結合を行うと、容量結合よりも位相差を調整できる点で優れている。この場合、FM用エレメント53は、デフォッガ2に直接結合されているため、必ずしも右側給電部50に接続されていなくても(延長エレメント24のように離れていてもよい)、FM放送波を受信することができる。但し、このFM用エレメント53をデフォッガ2と容量結合させることもできる。さらに、延長エレメント24とFM用エレメント53とは、容量結合のために一部が平行に延びるように配置しているが、必ずしも厳密な平行でなくてもよく、例えば、両者の間隔が20mm以下であれば、平行に配置した場合と同様の効果を奏する。
FM/DAB兼用アンテナ素子5のキャンセルエレメント52は、必ずしも必須ではない。また、キャンセルエレメント52の長さや形状は、特には限定されず、上述した以外の形状も可能である。すなわち、所望の性能のために、長さを変更したり、折り返し部分の数を減らしたり、増やしたりすることができる。
上記実施形態では、FMアンテナ素子3、デフォッガ2、及びAMアンテナ素子4を設けているが、本発明に係る車両用窓ガラスにおいては、少なくともFM/DAB兼用アンテナ素子5が設けられていればよい。但し、種々のアンテナ素子を付加することもでき、例えば、キー用アンテナ素子などを設けることもできる。キー用アンテナ素子とは、例えば、キーレスエントリーやスマートエントリー等のリモコンによるドアの施錠や解錠のための信号を受信するためのものである。
FMアンテナ素子3やFM/DAB兼用アンテナ素子5とデフォッガ2とが容量結合した場合、一般的には、給電部30,50とアンプ(図示省略)の間にRFC回路を設けなくてもよい。また、一般的に、デフォッガ2のGND側のバスバーと車体とを接続するハーネスが短い場合には、バスバーとの車体との間に、RFC回路を設けると、受信感度が向上する。
FMアンテナ素子3とFM/DAB兼用アンテナ素子5との受信感度の調整は、通常のダイバーシステムにより行うことができるほか、FMフェイズダイバーシステムを用いることもできる。
上記実施形態では、本発明の第1メディアとしてFM放送を採用し、第2メディアとしてDAB放送を採用したが、これに限定されるものではない。すなわち、第2メディアの周波数帯域が第1メディアよりも高いものであれば採用でき、例えば、第1メディアをFM放送とし、第2メディアをDTV(デジタルテレビ放送)とすることもできる。
上記実施形態では、本発明に係るガラスアンテナを自動車のリアガラスに実装した例を示したが、これ以外のガラスのガラス面に実装することもできる。
実施例1として、図1及び図2に示す車両用窓ガラスを準備した。各パーツの寸法は、図3に示している。また、実施例2として、図4に示す車両用窓ガラスを準備した。実施例2では、キャンセルエレメントを設けず、DAB用エレメントに、FM用エレメントを直接接続した。これらを用いて、FM/DAB兼用アンテナ素子におけるFM周波数帯域(88~108MHz)、及びDABのバンド3(174~240MHz)における受信性能を下記のとおり実測した。
・アンテナが実装された窓ガラスの取付角:水平方向に対して23度傾斜
・角度分解能:角度3度毎に自動車を360度回転させて測定
・電波の発信位置とアンテナとの仰角:1.7度(地面と水平方向を0度、天頂方向を90度とする)
次に、FM/DAB兼用アンテナ素子とFMアンテナ素子との距離、及びFM/DAB兼用アンテナ素子のFM用エレメントと延長エレメントとの平行箇所の長さLが、各FMアンテナの受信感度にどのように影響するかを検討した。すなわち、図7に示すように、FM/DAB兼用アンテナ素子とFMアンテナ素子との距離Xが異なる3つの実施例、つまり実施例3~5を準備した。実施例3での距離Xは447mm、実施例4での距離Xは587mm,実施例5での距離Xは517mmとした。また、実施例3~5においては、FM/DAB兼用アンテナ素子からキャンセルエレメントを取り除くとともに、FM用エレメントをDAB用エレメントに連結した。また、FM用エレメントと延長エレメントとの距離D2は10mmとした。また、各実施例3~5においては、FM用エレメントの長さを調整し、延長エレメントと平行な箇所の長さLを変えつつ、受信感度を算出した。すなわち、FM周波数帯域(88~108MHz)における受信感度を上記条件で実測した。
次に、実施例6及び7を準備した。実施例6では、図4と同様に、FM/DAB兼用アンテナ素子からキャンセルエレメントを取り除くとともに、FM用エレメントをDAB用エレメントに直接連結した。また、FM用エレメントと延長エレメントとの平行箇所の長さLを245mmとした。一方、実施例7は、図11に示すように、図4のFM/DAB兼用アンテナ素子からFM用エレメント及びキャンセルエレメントを取り除いた。但し、この場合、図4の延長エレメントは、図11に示すように、FM用エレメントとして機能する。そして、FM周波数帯域(88~108MHz)における受信感度を上記条件で実測した。
2 :デフォッガ
22 :水平エレメント(水平加熱線)
24 :延長エレメント
3 :FMアンテナ素子(第1メディア用アンテナ素子)
5 :FM/DAB兼用アンテナ素子(混合アンテナ素子)
51 :DAB用エレメント(第2メディア用エレメント)
52 :キャンセルエレメント
53 :FM用エレメント(第1メディア用エレメント)
Claims (4)
- ガラス板と、
前記ガラス板に配置される第1給電部と、
前記ガラス板に配置される第2給電部と、
前記ガラス板に配置され、複数の水平エレメントを有するデフォッガと、
前記第2給電部に接続され、前記デフォッガと容量結合するFMアンテナ素子と、
前記第1給電部に接続され、FM周波数帯域及びDAB周波数帯域の両方の受信を可能な混合アンテナ素子と、
を備え、
前記第1給電部は前記ガラス板の上縁の右側に配置に配置され、
前記第2給電部は前記ガラス板の上縁の左側に配置に配置され、
前記デフォッガは前記ガラス板の垂直方向の中央付近に配置されている、車両用窓ガラス。
- 前記FMアンテナ素子において、前記デフォッガに最も近接する第1近接水平エレメントと、前記デフォッガにおいて、前記FMアンテナ素子に最も近接する第2近接水平エレメントとが、容量結合する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
- 前記FMアンテナ素子の前記第1近接水平エレメントと、前記デフォッガの前記第2近接水平エレメントとの間の距離が、0~60mmである、請求項2に記載の車両用窓ガラス。
- 前記混合アンテナ素子は、
前記第1給電部から給電を受けるDAB用エレメントと、
前記第1給電部から給電を受けるFM用エレメントと、
前記第1給電部と前記FM用エレメントとの間に配置される追加のエレメントと、
を備えている、請求項1から3のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
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