JP7151974B2 - p型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法、太陽電池素子の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

p型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法、太陽電池素子の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、p型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法、太陽電池素子の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法に関する。
近年、ナノテクノロジーに対する関心が急速に高まっている。中でも、粒子をナノメートルオーダーまで微細化したものはナノ粒子と呼ばれ、触媒分野、コーティング分野、医薬分野等を初めとして様々な応用が試みられている。ナノ粒子のうち、半導体特性を示す物質をナノ粒子化したものは量子ドットとして振る舞うことが知られている。量子ドットとして振る舞うナノ粒子は、その粒子径に応じてバンドギャップの大きさを制御することができるので、その光学的特性、電気的特性、磁気的特性、化学的特性等を任意に変化させることができる。また、量子ドットは、バルク結晶にはない物性を示すことや、微少サイズの粒子構造を持つこと等から、様々な分野への応用が期待されている(例えば、特許文献1や特許文献2等を参照)。特に太陽電池の分野では、半導体層として量子ドット構造を備えたものが高い変換効率を有することが知られている(例えば、特許文献3を参照)。
こうした量子ドットとしての特性を示すナノ粒子の中でも、シリコン(Si)のナノ粒子は、資源の豊富さや、既に量子ドットとして応用されているものの有毒なセレン化カドミウム(CdSe)等と異なって無毒性である等の観点で、様々な分野への利用の期待が高まっている。
ところで、現在行われているナノ粒子の製造法は、大きく分けて二種類あり、バルク物質を機械的に粉砕して微粒子とするトップダウン法(ブレイクダウン法)と、金属源となる反応性の化合物を気相、液相又は固相で反応させてナノ粒子に成長させるビルドアップ法が挙げられる。しかしながら、前者は、サブミクロンオーダー程度の粒子を得るのが限度であり、数nm~数十nmといったナノサイズの粒子を製造するのには向いていない。また、後者は、粒子サイズの制御に優れる気相法では大量合成に向かないし、大量合成に向いている液相法では粒子サイズの制御に工夫やノウハウが必要になるなど、一長一短があるのが現状である。
このような状況下、特許文献4には、化学エッチング法によりシリコン粉末からシリコンナノ粒子を製造するシリコンナノ粒子の製造方法が提案されている。この製造方法では、水と有機溶媒とを混合させた混合溶液にバルク粒子であるシリコン粉末を分散させ、その後、この溶液にエッチング液を加えることでシリコン粒子を細粒化させてナノ粒子とする。このエッチング液には硝酸とフッ化水素酸が含まれ、硝酸がシリコン表面を酸化してシリカの膜を形成させ、形成されたシリカの膜をフッ化水素酸が溶解して新たなシリコン表面を露出させることを繰り返してシリコン粒子を細粒化させる。
国際公開第2007/086302号 国際公開第2012/173162号 特開2016-178170号公報 特開2014-172766号公報
ところで、半導体分野では、シリコンのような真性半導体に各種の不純物を添加(ドープ)して半導体中のキャリア密度を増加させたり、p型特性やn型特性を付与したりするのが一般的である。ここで、p型不純物がドープされたシリコンナノ粒子を製造する場合を考えると、例えばビルドアップ法の一つである化学的気相成長(CVD)法を用いる場合には、比較的粒径の揃ったドープシリコンナノ粒子が得られる反面、自然発火性や毒性を有するジボランガス等のような材料を用いる必要があったり、大量生産に向かなかったりする等の問題がある。そして、n型不純物がドープされたシリコンナノ粒子をCVD法で製造する場合もまた、自然発火性や毒性を有するホスフィンガス等のような材料を用いる必要があったり、大量生産に向かなかったりする等の問題がある点で、上記p型不純物がドープされたシリコンナノ粒子の場合と同様の問題がある。
特許文献4に記載されたシリコンナノ粒子の製造方法によれば、大量合成に適した液相法によりシリコンナノ粒子を効率良く調製することが可能であるが、本発明者らの検討によれば、この製造方法でシリコンナノ粒子を調製するには条件設定がやや難しく、粒径分布にムラのあるシリコンナノ粒子が調製されることがしばしば観察された。また、シリコンナノ粒子にp型不純物であるホウ素をドープする場合、ドーピングにおける加熱プロセスの際に、シリコンナノ粒子表面酸化物(シリカ)層へのホウ素の拡散を生じてしまうので、ホウ素のドープ量を多くすることができないといった問題がある。これは、シリコン原子とホウ素原子との原子量差に起因するものと考えられる。また、シリコンナノ粒子にn型不純物であるリンをドープする場合、粒子の表面にリンを付着させ、これを拡散源層として加熱処理を行うことになるが、その際にリン原子がシリコンナノ粒子の表面に存在する酸化物層へリン酸化物として取り込まれてしまう問題があった。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、大量生産に適した液相法によるトップダウン法を採用しつつ、p型又はn型不純物原子のシリコン内部への効果的なドーピングを実現することのできるp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法、並びにそのような製造方法で得られたシリコンナノ粒子を用いた太陽電池素子及び半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特許文献4に記載されたシリコンナノ粒子の製造方法で用いられるエッチング液について、フッ化水素酸と酸化剤(特許文献4記載の発明では硝酸)とを同時に添加するのではなく、まず、第一投入工程としてフッ化水素酸を添加してからこれを十分に反応させ、その後に第二添加工程として酸化剤を添加してから、エッチング工程として外力を加えながらこれらをシリコン粉末と十分に作用させる化学エッチングを行うことで、量子ドットとしてより均一性の高いシリコンナノ粒子が得られることを見出した。さらに、このような製造方法において、p型不純物をドープする場合には、化学エッチングによりシリコンナノ粒子とする前のシリコン粉末の段階でp型不純物のドーピングを行っておくことにより、p型不純物のドープ量を十分に確保できることを見出し、n型不純物をドープする場合には、このエッチングを行う際にn型の不純物材料を共存させておくことにより、酸化物層(以下、酸化皮膜とも呼ぶ。)が完全に除去された粒子表面にn型の不純物を含む拡散源層を形成させることができ、酸化皮膜への不純物の取り込みを抑制できることを見出した。本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、次のようなものを提供する。
本発明は、p型又はn型の不純物を含有するシリコンナノ粒子の製造方法であって、分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製し、これらを反応させることでその反応混合物に含まれる上記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子表面の酸化皮膜を除去する第一投入工程と、上記第一投入工程を経た上記反応混合物に、上記第一投入工程で添加したフッ化水素酸を存在させたまま、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する第二投入工程と、上記第二投入工程を経た上記反応混合物に対して、上記反応混合物を混合させるための外力を加えながら上記フッ化水素酸と上記酸化剤との作用により上記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を細粒化させるエッチング工程と、からなる細粒化三工程の前又は後に上記不純物をシリコン粒子の内部へ拡散させる拡散工程を備え、上記不純物がp型の場合、シリコン粉末と、p型不純物となる元素からなる単体又はp型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源の粉末と、を混合することでシリコン粒子の表面に不純物源を付着させる複合化工程と、上記複合化工程を経たシリコン粉末を加熱して、シリコン粒子の内部へp型不純物を拡散させる上記拡散工程と、が上記細粒化三工程の前に実行され、上記不純物がn型の場合、上記エッチング工程がn型不純物となる元素からなる単体又はn型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源を上記反応混合物中に含む状態で実行され、さらに、上記エッチング工程を経ることにより上記不純物源の付着したシリコン粒子を加熱して、このシリコン粒子の内部へn型不純物を拡散させる上記拡散工程が上記細粒化三工程の後に実行されることを特徴とするp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法である。
上記第一投入工程を行う前処理として、シリコン粉末を投入された上記水系溶媒に外力を加えることにより上記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を予め微分散させる前分散工程を備えることが好ましい。
上記不純物がp型の場合、当該不純物がホウ素であることが好ましく、上記不純物がn型の場合、当該不純物がリンであることが好ましい。
上記酸化剤が硝酸であることが好ましい、
上記水系溶媒が水とアルコールとの混合溶媒であることが好ましい。
また本発明は、太陽電池素子における活性層に含まれる量子ドットとして、上記の製造方法で得られたp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を用いることを特徴とする太陽電池素子の製造方法でもある。
また本発明は、上記の製造方法で得られたp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を活性層の少なくとも一部として用いることを特徴とした半導体デバイスの製造方法でもある。
本発明によれば、大量生産に適した液相法によるトップダウン法を採用しつつ、p型又はn型不純物原子のシリコン内部への効果的なドーピングを実現することのできるp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法、並びにそのような製造方法で得られたシリコンナノ粒子を用いた太陽電池素子及び半導体デバイスの製造方法が提供される。
図1は、実施例3及び比較例1のシリコンナノ粒子のそれぞれについての蛍光スペクトルである。 図2は、実施例3のシリコンナノ粒子についてのX線光電子分光スペクトル(XPS)である。 図3は、実施例3のシリコンナノ粒子についてのラマン散乱スペクトルである。 図4は、実施例4~6及び比較例2のシリコンナノ粒子のそれぞれについての蛍光スペクトルである。 図5は、実施例4~6のシリコンナノ粒子のそれぞれについてのX線光電子分光スペクトル(XPS)である。 図6は、実施例3及び比較例1のシリコンナノ粒子、並びに実施例5、実施例6及び比較例2のシリコンナノ粒子のそれぞれを用いて作製された太陽電池素子の模式図である。 図7は、実施例3又は比較例1のシリコンナノ粒子を用いて太陽電池素子を作製したときの電流密度-電圧特性を示すプロットである。 図8は、実施例5、実施例6又は比較例2のシリコンナノ粒子を用いて太陽電池素子を作製したときの電流密度-電圧特性を示すプロットである。
以下、本発明に係るp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法(以下、単に「シリコンナノ粒子の製造方法」とも呼ぶ。)、太陽電池素子の製造方法、及び半導体デバイスの製造方法の実施態様について説明する。なお、本発明は、以下の実施態様に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
<シリコンナノ粒子の製造方法の第一実施態様(p型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法)>
まず、本発明のシリコンナノ粒子の第一実施態様として、p型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法について説明する。本実施態様では、分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製する第一投入工程と、上記第一投入工程を経た上記反応混合物に、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する第二投入工程と、上記第二投入工程を経た上記反応混合物に対して、上記反応混合物を混合させるための外力を加えながら上記フッ化水素酸と上記酸化剤との作用により上記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を細粒化させるエッチング工程と、からなる細粒化三工程を備え、シリコン粉末と、p型不純物となる元素からなる単体又はp型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源の粉末と、を混合することでシリコン粒子の表面に不純物源を付着させる複合化工程と、上記複合化工程を経たシリコン粉末を加熱して、シリコン粒子の内部へp型不純物を拡散させる上記拡散工程と、が上記細粒化三工程の前に実行されることを特徴とする。つまり、上記複合化工程を経たシリコン粉末が、上記細粒化三工程におけるシリコン粉末として供される。言い換えれば、本実施態様は、シリコン粉末と、p型不純物となる元素からなる単体又はp型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源の粉末と、を混合することでシリコン粒子の表面に不純物源を付着させる複合化工程と、上記複合化工程を経たシリコン粉末を加熱して、シリコン粒子の内部へp型不純物を拡散させる拡散工程と、上記拡散工程を経たシリコン粉末を分散状態で含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製する第一投入工程と、上記第一投入工程を経た反応混合物に、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する第二投入工程と、上記第二投入工程を経た反応混合物に対して、この反応混合物を混合させるための外力を加えながら上記フッ化水素酸と上記酸化剤との作用により上記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を細粒化させるエッチング工程と、を備える。本発明で製造されるp型不純物含有シリコンナノ粒子は、ナノメートルオーダーの粒子であり、その径は概ね3nm~20nm程度である。
既に述べたように、本発明のシリコンナノ粒子の製造方法は、シリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸と酸化剤とを同時に添加するのではなく、まず第一投入工程としてフッ化水素酸を添加した後で、第二投入工程として酸化剤を添加する点に特徴を有する。つまり、フッ化水素酸と酸化剤とを別々に、しかもフッ化水素酸から添加するのがポイントの一つである。
上記のように、酸化剤は、シリコン粒子の表面に酸化皮膜を形成させる。こうして形成された酸化皮膜はフッ化水素酸によって溶解されるが、酸化皮膜が溶解して新たに内部から露出するシリコンはフッ化水素酸では溶解されない。そして、新たに露出したシリコン表面には酸化剤により酸化皮膜が形成され、その酸化皮膜はフッ化水素酸により溶解されて新たなシリコン表面が露出する。シリコン粉末を含む水系溶媒中にフッ化水素酸と酸化剤との両方が存在する場合には、このような反応が連続して起こり、シリコン粉末は徐々に細粒化されてナノ粒子へと転換される。
シリコン粉末は、数百nm~数十μm程度の粒径のシリコン粒子からなるものが市販されている。市販のものも含め、通常、こうした微細な粒子は互いに凝集しており、様々な大きさの凝集体を形成している。このような状態のシリコン粉末に対して、フッ化水素酸と酸化剤との両方を含んだエッチング液を添加すると、様々な大きさの凝集体が存在する状態から細粒化が開始されるので、細粒化が均一に起こらず、最終生成物であるシリコンナノ粒子の粒径の均一性が損なわれる結果につながる。上記特許文献4に記載されたシリコンナノ粒子の製造方法では、これを改善するために、シリコン粉末を含む溶液へエッチング液を添加する前に超音波振動を用いた前分散処理を行うが、それでも凝集体が単一のシリコン粒子まで十分に分散されることにはならず、得られるシリコンナノ粒子の均一性は必ずしも十分なものとはならなかった。
ところで、シリコンは、大気中の酸素により容易に酸化される性質があるので、シリコン粉末に含まれるシリコン粒子の表面には酸化皮膜が形成されているのが通常である。そのため、凝集するシリコン粒子は、シリコンの酸化皮膜を介して凝集しているともいえる。本発明者は、この点に注目し、エッチング液としてフッ化水素酸と酸化剤との両方を一度に加えるのでなく、まずフッ化水素酸を先に添加してシリコン粒子間に存在する酸化皮膜を十分に取り除くことによりシリコン粒子の凝集体を破壊して粒子を分散させ、次いで酸化剤を添加することでシリコン粒子の細粒化を行えばよいことを見出した。その後、酸化剤によるシリコン粒子表面への酸化皮膜の形成とフッ化水素酸による当該酸化皮膜の除去が繰り返されることにより、徐々にシリコンナノ粒子まで細粒化されることは上記と同様である。
また、シリコン粒子へp型不純物をドープしようとする場合、特にp型不純物としてホウ素を用いたときは、熱処理時にシリコン粒子の表面に存在する酸化皮膜へp型不純物が拡散してしまい、シリコン粒子の内部の不純物濃度が低下しがちである。このため、所望の濃度でのドーピングが行われないことも多い。本発明では、市販のシリコン粉末を化学エッチングにより細粒化させてシリコンナノ粒子を調製するが、細粒化させる前のシリコン粉末の時点でp型不純物を粒子表面に付着(複合化)させ、これを熱処理することでp型不純物をシリコン粒子の内部へ拡散させる。このことも本発明のポイントの一つである。細粒化させる前のシリコン粒子は、細粒化させた後よりも遙かに表面積が小さいので、酸化皮膜の総量も遙かに小さいことになる。このような時点でp型不純物をドープすることにより、酸化皮膜へ移行するp型不純物の量を抑え、高濃度にドープすることが可能になる。
これらの知見に基づく本実施態様のp型シリコンナノ粒子の製造方法では、化学エッチング法によりシリコン粒子を細粒化させる前に、シリコン粒子の表面に不純物源を付着させる複合化工程と、熱処理によりこのシリコン粒子の内部へp型不純物を拡散させる拡散工程と、を備えることを第一の特徴とする。その後、拡散工程を経たシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸のみを添加する第一投入工程を経てから、これに酸化剤を添加する第二投入工程を行うことを第二の特徴とする。そして、本実施態様では、第二投入工程を実施した後、外力を加えながらシリコン粉末を細粒化させるエッチング工程が行われる。本発明では、これら第一投入工程、第二投入工程及びエッチング工程をまとめて細粒化三工程と呼ぶ。以下、各工程について説明する。なお、本実施態様では、上記第一投入工程を行う際の前処理として、シリコン粉末を投入された水系溶媒に外力を加えることによりシリコン粉末に含まれるシリコン粒子を予め微分散させる前分散工程を備える。そこで、複合化工程、拡散工程、前分散工程、第一投入工程、第二投入工程、エッチング工程の順に説明する。
[複合化工程]
複合化工程は、シリコン粉末と、p型不純物となる元素からなる単体又はp型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源の粉末と、を混合することでシリコン粒子の表面に不純物源を付着させる工程である。
シリコン粉末は、シリコンナノ粒子の原料となるものであり、これに含まれるシリコン粒子が後述の各工程、すなわち細粒化三工程を経ることで細粒化されてシリコンナノ粒子になる。シリコン粉末は、シリコンの粉末であればどのようなものでもよく、半導体の生産過程で生じるシリコンウェーハの切削粉や、珪石を還元して得られたシリコンを粉砕したものであってもよい。特に好ましくは、プラズマを用いてシラン化合物を気相にて還元したものが挙げられ、このような製法で製造された100nm径程度のシリコン粉末が市販されているのでこれを用いてもよい。
不純物源は、p型不純物となる元素からなる単体又はp型不純物となる元素を含む化合物であり、後述する拡散工程における加熱処理によりp型不純物となる元素をシリコン粒子内部へと拡散させることのできるものであればよい。このような不純物源としては、ホウ素、酸化ホウ素、三酸化二ホウ素、ホウ酸等が例示され、これらの中でもホウ素が好ましく例示される。不純物源の添加量は、シリコン粉末の総量に対して質量比で0.1~1倍量程度を挙げることができる。
シリコン粉末及び不純物源は、互いに混合されることにより複合化される。複合化とは、シリコン粉末に含まれるシリコン粒子の表面に不純物源を付着させることをいう。混合は、液相で行っても固相で行ってもよい。
混合を液相で行う場合、溶媒にシリコン粉末及び不純物源を投入し、その後、当該溶媒に外力を加えることによりシリコン粉末に含まれるシリコン粒子を撹拌分散させつつ、不純物源とシリコン粒子との接触機会を増やす。溶媒としては、エタノール、アセトン等の有機溶媒を挙げることができる。シリコン粉末と溶媒との混合比としては、シリコン粉末100mgに対して溶媒20mL程度を例示できるが、特に限定されない。「溶媒に外力を加える」とは、溶媒に含まれるシリコン粉末及び不純物源を粉砕し、シリコン粒子を微分散させるための作用を与えることを意味しており、このような外力としては、撹拌、超音波振動、振とう等を挙げることができる。
これらのうち、撹拌については、化学実験でしばしば用いられるスターラによる撹拌でもよいが、高速で回転するロータとステータとを組み合わせた、いわゆるハイシェアミキサが好ましく用いられる。このような装置では、高速で回転するロータとして回転羽根を備え、その回転羽根とステータとの間に僅かなクリアランスが設けられている。そして、ロータが回転している状態で、シリコン粉末を含んだ上記水系溶媒がこのクリアランスを通過すると、水系溶媒に高いせん断力が加えられ、シリコン粉末が分散される。このようなハイシェアミキサは各社から市販されているので、適宜選択して用いることができる。ハイシェアミキサでは上記クリアランスを通過するときのみせん断力が加えられるので、シリコン粉末を含んだ上記水系溶媒が何度もこのクリアランスを通過することができるように上記水系溶媒を循環させることが望ましい。このような撹拌方式を採用する場合、撹拌時間としては10分~15分程度を挙げることができる。
混合を固相で行う場合、シリコン粉末及び不純物源を乳鉢等により、外力を加えながら混合すればよい。
複合化工程を経たシリコン粉末は、拡散工程に付される。なお、混合を液相で行った場合、不純物源と複合化されたシリコンナノ粒子は、溶媒と混合したまま、又はメンブランフィルタ等を用いて溶媒から分離された状態で拡散工程に付される。
[拡散工程]
拡散工程は、上記複合化工程を経ることにより不純物源の付着したシリコン粒子を加熱して、このシリコン粒子の内部へp型不純物を拡散させる工程である。
この工程では、上記複合化工程を経たシリコン粉末が熱処理(アニーリング)される。前工程を終了したシリコン粉末中のシリコン粒子の表面には、不純物源が付着している。表面に付着した不純物源は、熱処理によりp型の不純物元素を生成し、この不純物元素はシリコン粒子の内部へと拡散してドーピングが行われる。
シリコン粒子は、前工程で用いた溶媒とともに、又は溶媒から分離された状態で耐熱基板の表面に蒔かれる。耐熱基板としては、シリコン基板を好ましく例示できる。
熱処理は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。熱処理の温度としては、900℃~1100℃程度が例示され、熱処理の時間としては30分~60分程度を挙げることができる。
熱処理後の耐熱基板の表面には、p型不純物がドープされたシリコン粉末が残るので、この粉末を表面から掻き取って回収する。拡散工程を経たシリコン粉末は、前分散工程に付される。
[前分散工程]
前分散工程は、上記拡散工程を経たシリコン粉末を投入された水系溶媒に外力を加えることにより当該シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を予め微分散させる工程である。
水系溶媒は、水を主体とした溶媒であり、水と水溶性の有機溶媒とを混合したものであってもよい。水としては、純水(蒸留水)、イオン交換水、水道水等を用いることができるが、好ましくない副反応が生じるのを抑制する観点からは、純水やイオン交換水を用いるのが好ましい。水溶性の有機溶媒は、シリコン粉末の分散を向上させたり、後述するエッチング工程におけるエッチング反応、すなわちシリコン粒子を細粒化させる反応の程度を制御したりするために好ましく用いられる。水溶性の有機溶媒としてはアルコールが好ましく挙げられ、これらの中でもメタノール、エタノール、プロパノールがより好ましく挙げられ、メタノールが最も好ましく挙げられる。水と水溶性の有機溶媒との混合物を水系溶媒として用いる場合、それらの混合比率としては、水:水溶性の有機溶媒の体積比で30:1~1:1程度を挙げることができる。シリコン粉末に含まれる水分量により好ましい混合比は変動するので、エッチング反応の終了後に得られるシリコンナノ粒子の粒径を見ながら、両者の混合比を適宜調節すればよい。
水系溶媒に上記拡散工程を経たシリコン粉末を投入し、その後、当該水系溶媒に外力を加えることによりシリコン粉末に含まれるシリコン粒子を分散させる。シリコン粉末と水系溶媒との混合比については、シリコン粉末100mgに対して水系溶媒が10mL~20mL程度であることを挙げることができるが、特に限定されない。水系溶媒に外力を加える手段は上記複合化工程で述べたのと同様である。
上記の処理により、水系溶媒に投入されたシリコン粉末は粉砕され、シリコン粒子が水系溶媒に微分散された状態になる。前分散工程を経た水系溶媒とシリコン粉末との混合物は、第一投入工程に付される。既に述べたように、後述の第一投入工程、第二投入工程及びエッチング工程をまとめて細粒化三工程と呼ぶ。
[第一投入工程]
第一投入工程は、分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製する工程である。
この工程では、上記前分散工程で得られた水系溶媒とシリコン粉末との混合物へフッ化水素酸を添加する。なお、「分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒」とは、本実施態様においては、上記前分散工程で得られた水系溶媒とシリコン粉末との混合物を意味するものである。
フッ化水素酸は46wt%の水溶液が市販されているので、それをそのまま用いればよい。フッ化水素酸の添加量としては、フッ化水素酸(46wt%):水系溶媒の体積比として1:1~1:2程度を挙げることができるが、後述するエッチング工程の終了後に得られるシリコンナノ粒子の粒径を見ながら、両者の混合比を適宜調節すればよい。
水系溶媒とシリコン粉末との混合物へフッ化水素酸を添加した後、5分~10分程度の反応時間を確保することが望ましい。こうした反応時間を確保することにより、シリコン粒子の表面に存在する酸化皮膜が十分に除去され、シリコン粒子の分散を促進することができる。なお、反応を行っている際に、反応混合物へ上記の外力を加え続けることが好ましい。反応中にこのような外力を加え続けることにより、酸化皮膜の除去という化学的な作用と、シリコン粒子へのせん断力付与という物理的な作用とが協調し、シリコン粒子の分散がより進むことになる。
なお、本工程から後述のエッチング工程を行う間は、反応混合物の温度を2℃~40℃程度に制御しておくことが好ましい。反応混合物の温度を40℃以下にすることにより、エッチング反応が過剰に進みすぎてシリコン粒子が完全に溶解してしまうことを抑制できるので好ましく、反応溶液の温度を2℃以上にすることにより、良好なエッチング速度を得ることができるので好ましい。
上記の処理により反応混合物が調製される。本工程で得られた反応混合物は、第二投入工程に付される。
[第二投入工程]
第二投入工程は、上記第一投入工程を経た反応混合物に、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する工程である。
この工程では、上記第一投入工程を経た反応混合物に酸化剤が添加される。反応混合物に含まれるシリコン粒子は、この酸化剤により表面が酸化され、酸化皮膜が形成される。そして、反応混合物には第一添加工程で添加されたフッ化水素酸が残っているので、酸化剤で形成された上記酸化皮膜は直ちに溶解される。その後、シリコン粒子の表面にて酸化皮膜の形成と溶解が繰り返されてシリコン粒子が細粒化されることは既に述べた通りである。
酸化剤としては、シリコン粒子の表面を酸化させることのできるものであればよく、硝酸、硫酸、過酸化水素等が例示できるが、これに限定されない。これらの酸化剤の中で、硝酸が好ましく例示される。
反応混合物への酸化剤の添加量は、後述するエッチング工程の終了後に得られるシリコンナノ粒子の粒径を見ながら、適宜決定すればよい。酸化剤として硝酸を選択した場合を例とすれば、市販の硝酸(60wt%)と上記第一投入工程で添加したフッ化水素酸との体積比として、硝酸:フッ化水素酸=1:15~1:8程度を好ましく挙げることができ、硝酸:フッ化水素酸=1:12~1:10程度をより好ましく挙げることができる。
本工程を経た反応混合物は、エッチング工程に付される。
[エッチング工程]
エッチング工程は、上記第二投入工程を経た反応混合物に対して、当該反応混合物を混合させるための外力を加えながらフッ化水素酸と酸化剤との作用によりシリコン粒子を細粒化させる工程である。すなわち、第二添加工程を経た反応混合物にはフッ化水素酸と酸化剤との両方が含まれており、これら両者の作用によりシリコン粒子を細粒化させるのが本工程である。なお、フッ化水素酸と酸化剤との作用によりシリコン粒子が細粒化されることについては既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
本工程では、反応混合物に対して、当該反応混合物を混合させるための外力が加えられる。ここでいう外力とは上記前分散工程で説明したものと同じであり、要するに、エッチング工程を行っている最中に反応混合物に対して撹拌や超音波振動等を加えればよい。既に述べたように上記第一添加工程でもこうした外力を加えることが好ましいので、上記前分散工程から本工程に至るまで一貫してこうした外力を加え続けることが好ましい。
エッチング工程における反応時間としては、30秒~60秒程度を挙げることができる。エッチング工程を経た反応混合物にはシリコンナノ粒子が含まれる。その後の用途に応じて、得られた反応混合物をシリコンナノ粒子分散液としてそのまま用いてもよいし、メンブランフィルタ等を用いて得られた反応混合物からシリコンナノ粒子を濾別により回収してもよい。
以上の各工程を経ることにより、p型不純物含有シリコンナノ粒子が調製される。本発明で得られるシリコンナノ粒子は、その径が3nm~20nm程度であり量子ドットとしての性質を示すほか、キャリア密度が高く抵抗値が低いので、太陽電池素子や半導体デバイス等の分野で好適に使用できる。本発明のシリコンナノ粒子の製造方法によれば、粒径がほぼ均一で、電気伝導性の高いp型シリコンナノ粒子が得られる。また、本発明のシリコンナノ粒子の製造方法によれば、ホウ素等のように、毒性が小さく、安価な材料を不純物源として用いることができ、またCVD法等のような従来法に比べて短時間で大量にp型不純物含有シリコンナノ粒子を製造することが可能になる。
<シリコンナノ粒子の製造方法の第二実施態様(n型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法)>
次に、本発明のシリコンナノ粒子の第二実施態様として、n型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法について説明する。本実施態様では、分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製する第一投入工程と、上記第一投入工程を経た上記反応混合物に、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する第二投入工程と、上記第二投入工程を経た上記反応混合物に対して、上記反応混合物を混合させるための外力を加えながら上記フッ化水素酸と上記酸化剤との作用により上記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を細粒化させるエッチング工程と、からなる細粒化三工程を備え、上記エッチング工程がn型不純物となる元素からなる単体又はn型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源を上記反応混合物中に含む状態で実行され、さらに、上記エッチング工程を経ることにより上記不純物源の付着したシリコン粒子を加熱して、このシリコン粒子の内部へn型不純物を拡散させる上記拡散工程が上記細粒化三工程の後に実行されることを特徴とする。言い換えれば、本実施態様は、分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製する第一投入工程と、上記第一投入工程を経た反応混合物に、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する第二投入工程と、上記第二投入工程を経た反応混合物に対して、この反応混合物を混合させるための外力を加えながら上記フッ化水素酸と上記酸化剤との作用により上記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を細粒化させるエッチング工程と、を備え、上記エッチング工程が、n型不純物となる元素からなる単体又はn型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源を上記反応混合物中に含む状態で実行され、さらに、上記エッチング工程を経ることにより上記不純物源の付着したシリコン粒子を加熱して、このシリコン粒子の内部へn型不純物を拡散させる拡散工程を備える。本発明で製造されるn型不純物含有シリコンナノ粒子は、ナノメートルオーダーの粒子であり、その径は概ね3nm~20nm程度である。
上記第一実施態様の説明でも述べたように、本発明のシリコンナノ粒子の製造方法は、シリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸と酸化剤とを同時に添加するのではなく、まず第一投入工程としてフッ化水素酸を添加した後で、第二投入工程として酸化剤を添加する点に特徴を有する。つまり、フッ化水素酸と酸化剤とを別々に、しかもフッ化水素酸から添加するのがポイントの一つである。本実施態様でも、上記第一実施態様と同様に、第一投入工程、第二投入工程、及びエッチング工程からなる細粒化三工程を経て、シリコン粉末がシリコンナノ粒子に転換される。
エッチング工程では、酸化剤とフッ化水素酸との存在下でシリコン粒子の細粒化が行われる。このとき、酸化剤によって形成された酸化皮膜が、系内に存在するフッ化水素酸により速やかに除去されるので、シリコン粒子は、常に酸化皮膜の除去されたシリコン領域の表面が現れた状態になっている。そのため、このときの反応溶液中にn型の不純物元素となる不純物源を共存させておくと、酸化皮膜の除去されたシリコン粒子表面へ直接不純物源を付着させこれらを複合化させることができる。このことも本発明のポイントの一つである。これにより、その後の工程でシリコン粒子の表面に存在するn型不純物をシリコン粒子の内部へ拡散させる際に、シリコン酸化皮膜へのn型不純物の取り込みが生じるのを抑制できる。
これらの知見に基づく本実施態様のn型シリコンナノ粒子の製造方法では、まずシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸のみを添加する第一投入工程を経てから、これに酸化剤を添加する第二投入工程を行うことを第一の特徴とし、さらにその後のエッチング工程でn型不純物となる不純物源を共存させることを第二の特徴とする。なお、不純物源は、エッチング工程の際に反応混合物内に存在すればよいので、エッチング工程で添加されてもよいし、それよりも前の工程で添加されてもよい。以下、各工程について説明する。なお、本実施態様では、上記第一投入工程を行う際の前処理として、シリコン粉末を投入された水系溶媒に外力を加えることによりシリコン粉末に含まれるシリコン粒子を予め微分散させる前分散工程を備える。そこで、まずは前分散工程について説明する。
[前分散工程]
前分散工程は、シリコン粉末を投入された水系溶媒に外力を加えることにより当該シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を予め微分散させる工程である。
シリコン粉末及び水系溶媒については、既に説明した第一実施態様におけるものと同じなので、ここでの説明を省略する。
本実施態様では、後述するエッチング工程においてn型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源を反応混合物中に含むことを特徴の一つとするが、この不純物源は、前分散工程で添加しておくことが好ましい。そこで、本実施態様では、前分散工程にて不純物源をシリコン粉末とともに水系溶媒へ投入する。なお、既に述べたように、不純物源は、後述するエッチング工程において反応混合物中に存在すればよいので、エッチング工程で添加されてもよいし、それよりも前の工程で添加されてもよい。
不純物源は、n型不純物となる元素からなる単体又はn型不純物となる元素を含む化合物であり、後述する拡散工程における加熱処理によりn型不純物となる元素をシリコン粒子内部へと拡散させることのできるものであればよい。このような不純物源としては、赤リン、オキシ塩化リン、五酸化二リン、有機リン酸化合物等が例示され、これらの中でも赤リンが好ましく例示される。不純物源の添加量は、投入したシリコン粉末に対して質量比で0.1~1倍量程度を挙げることができる。
水系溶媒にシリコン粉末及び不純物源を投入し、その後、当該水系溶媒に外力を加えることによりシリコン粉末に含まれるシリコン粒子を分散させる。シリコン粉末と水系溶媒との混合比については、シリコン粉末50mgに対して水系溶媒が10mL~20mL程度であることを挙げることができるが、特に限定されない。「水系溶媒に外力を加える」とは、水系溶媒に含まれるシリコン粉末を粉砕し、シリコン粒子を微分散させるための作用を与えることを意味しており、このような外力としては、撹拌、超音波振動、振とう等を挙げることができる。
これらのうち、撹拌については、化学実験でしばしば用いられるスターラによる撹拌でもよいが、高速で回転するロータとステータとを組み合わせた、いわゆるハイシェアミキサが好ましく用いられる。このような装置では、高速で回転するロータとして回転羽根を備え、その回転羽根とステータとの間に僅かなクリアランスが設けられている。そして、ロータが回転している状態で、シリコン粉末を含んだ上記水系溶媒がこのクリアランスを通過すると、水系溶媒に高いせん断力が加えられ、シリコン粉末が分散される。このようなハイシェアミキサは各社から市販されているので、適宜選択して用いることができる。ハイシェアミキサでは上記クリアランスを通過するときのみせん断力が加えられるので、シリコン粉末を含んだ上記水系溶媒が何度もこのクリアランスを通過することができるように上記水系溶媒を循環させることが望ましい。
上記の処理により、水系溶媒に投入されたシリコン粉末は粉砕され、シリコン粒子が水系溶媒に微分散された状態になる。不純物源についても、水系溶媒への溶解性が乏しく固体として水系溶媒中に存在する場合には、同様に粉砕され、水系溶媒に微分散された状態となる。前分散工程を経た水系溶媒、シリコン粉末及び不純物源の混合物は、第一投入工程に付される。既に述べたように、後述の第一投入工程、第二投入工程及びエッチング工程をまとめて細粒化三工程と呼ぶ。
[第一投入工程]
第一投入工程は、分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製する工程である。
この工程では、上記前分散工程で得られた水系溶媒、シリコン粉末及び不純物源の混合物へフッ化水素酸を添加する。なお、「分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒」とは、本実施態様においては、上記前分散工程で得られた水系溶媒、シリコン粉末及び不純物源の混合物を意味するものである。
フッ化水素酸は46wt%の水溶液が市販されているので、それをそのまま用いればよい。フッ化水素酸の添加量としては、フッ化水素酸(46wt%):水系溶媒の体積比として1:1~1:2程度を挙げることができるが、後述するエッチング工程の終了後に得られるシリコンナノ粒子の粒径を見ながら、両者の混合比を適宜調節すればよい。
水系溶媒、シリコン粉末及び不純物源の混合物へフッ化水素酸を添加した後、5分~10分程度の反応時間を確保することが望ましい。こうした反応時間を確保することにより、シリコン粒子の表面に存在する酸化皮膜が十分に除去され、シリコン粒子の分散を促進することができる。なお、反応を行っている際に、反応混合物へ上記の外力を加え続けることが好ましい。反応中にこのような外力を加え続けることにより、酸化皮膜の除去という化学的な作用と、シリコン粒子へのせん断力付与という物理的な作用とが協調し、シリコン粒子の分散がより進むことになる。
なお、本工程から後述のエッチング工程を行う間は、反応混合物の温度を2℃~40℃程度に制御しておくことが好ましい。反応混合物の温度を40℃以下にすることにより、エッチング反応が過剰に進みすぎてシリコン粒子が完全に溶解してしまうことを抑制できるので好ましく、反応溶液の温度を2℃以上にすることにより、良好なエッチング速度を得ることができるので好ましい。
上記の処理により反応混合物が調製される。本工程で得られた反応混合物は、第二投入工程に付される。
[第二投入工程]
第二投入工程は、上記第一投入工程を経た反応混合物に、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する工程である。
この工程では、上記第一投入工程を経た反応混合物に酸化剤が添加される。反応混合物に含まれるシリコン粒子は、この酸化剤により表面が酸化され、酸化皮膜が形成される。そして、反応混合物には第一添加工程で添加されたフッ化水素酸が残っているので、酸化剤で形成された上記酸化皮膜は直ちに溶解される。その後、シリコン粒子の表面にて酸化皮膜の形成と溶解が繰り返されてシリコン粒子が細粒化されることは既に述べた通りである。
酸化剤としては、シリコン粒子の表面を酸化させることのできるものであればよく、硝酸、硫酸、過酸化水素等が例示できるが、これに限定されない。これらの酸化剤の中で、硝酸が好ましく例示される。
反応混合物への酸化剤の添加量は、後述するエッチング工程の終了後に得られるシリコンナノ粒子の粒径を見ながら、適宜決定すればよい。酸化剤として硝酸を選択した場合を例とすれば、市販の硝酸(60wt%)と上記第一投入工程で添加したフッ化水素酸との体積比として、硝酸:フッ化水素酸=1:15~1:8程度を好ましく挙げることができ、硝酸:フッ化水素酸=1:12~1:10程度をより好ましく挙げることができる。
本工程を経た反応混合物は、エッチング工程に付される。
[エッチング工程]
エッチング工程は、上記第二投入工程を経た反応混合物に対して、当該反応混合物を混合させるための外力を加えながらフッ化水素酸と酸化剤との作用によりシリコン粒子を細粒化させる工程である。すなわち、第二添加工程を経た反応混合物にはフッ化水素酸と酸化剤との両方が含まれており、これら両者の作用によりシリコン粒子を細粒化させるのが本工程である。なお、フッ化水素酸と酸化剤との作用によりシリコン粒子が細粒化されることについては既に説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。
既に述べたように、本工程は、n型不純物となる元素からなる単体又はn型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源を反応混合物中に含む状態で実行される。エッチング工程を行っている間は、酸化剤によって形成された表面酸化皮膜が、系内に存在するフッ化水素酸により速やかに除去されるので、シリコン粒子は、常に酸化皮膜の除去されたシリコンの表面が現れた状態になっている。そのため、このときの反応溶液中にn型の不純物元素となる不純物源を共存させておくと、酸化皮膜の除去されたシリコン粒子表面へ直接不純物源を付着させこれらを複合化させることができる。不純物源については、既に説明した通りである。なお、不純物源は、本工程を実行する時点で反応混合物中に含まれていればよく、本工程で添加されてもよいし、本実施態様のように、それよりも前の時点で添加されてもよい。
本工程では、反応混合物に対して、当該反応混合物を混合させるための外力が加えられる。ここでいう外力とは上記前分散工程で説明したものと同じであり、要するに、エッチング工程を行っている最中に反応混合物に対して撹拌や超音波振動等を加えればよい。既に述べたように上記第一添加工程でもこうした外力を加えることが好ましいので、上記前分散工程から本工程に至るまで一貫してこうした外力を加え続けることが好ましい。
エッチング工程における反応時間としては、30秒~60秒程度を挙げることができる。エッチング工程を経た反応混合物にはシリコンナノ粒子が含まれる。このシリコンナノ粒子は、その表面に不純物源が付着し複合化された状態となっている。得られたシリコンナノ粒子は、反応混合物のまま、又はメンブランフィルタ等を用いて反応混合物から分離された状態で拡散工程に付される。
[拡散工程]
拡散工程は、上記エッチング工程を経ることにより不純物源の付着したシリコン粒子を加熱して、このシリコン粒子の内部へn型不純物を拡散させる工程である。
この工程では、上記エッチング工程を経たシリコン粒子が熱処理される。前工程を終了したシリコン粒子はナノサイズの粒子であり、その表面には不純物源が付着している。表面に付着した不純物源は、熱処理によりn型の不純物元素を生成し、この不純物元素はシリコン粒子の内部へと拡散してドーピングが行われる。
シリコン粒子は、反応混合物のまま、又はメンブランフィルタ等を用いて反応混合物から分離された状態で耐熱基板の表面に蒔かれる。好ましくは、シリコン粒子は、反応混合物のまま耐熱基板の表面に蒔かれる。反応混合物のまま耐熱基板の表面に蒔いたとしても、熱処理の際の熱により水系溶媒や過剰なフッ化水素酸や硝酸は蒸発する。耐熱基板としては、シリコン基板を好ましく例示できる。
熱処理は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。熱処理の温度としては、900℃~1100℃程度が例示され、熱処理の時間としては30分~60分程度を挙げることができる。
熱処理後の耐熱基板の表面には、n型不純物がドープされたシリコンナノ粒子が残るので、この粒子を表面から掻き取り、エタノール等の溶媒で洗浄する。その後、濾過することによりn型不純物含有シリコンナノ粒子が得られる。
得られたシリコンナノ粒子はn型不純物を含むので、キャリア密度が大きい。このため、不純物を含まないシリコンナノ粒子よりも抵抗値が小さく、太陽電池や半導体デバイスにおける量子ドットとして好適に用いられる。
以上の各工程を経ることにより、n型不純物含有シリコンナノ粒子が調製される。本発明で得られるシリコンナノ粒子は、その径が3nm~20nm程度であり量子ドットとしての性質を示すほか、キャリア密度が高く抵抗値が低いので、太陽電池素子や半導体デバイス等の分野で好適に使用できる。本発明のシリコンナノ粒子の製造方法によれば、粒径がほぼ均一で、電気伝導性の高いn型シリコンナノ粒子が得られる。また、本発明のシリコンナノ粒子の製造方法によれば、赤リン等のように、毒性が小さく、安価な材料を不純物源として用いることができ、またCVD法等のような従来法に比べて短時間で大量にn型不純物含有シリコンナノ粒子を製造することが可能になる。
<太陽電池素子の製造方法>
上記本発明のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法により得られたシリコンナノ粒子を用いた太陽電池素子の製造方法もまた、本発明の一つである。本発明の太陽電池の製造方法は、太陽電池素子における活性層に含まれる量子ドットとして上記のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を用いる点に特徴を有する。
近年、太陽電池素子の活性層の少なくとも一部として量子ドットを用いたものが注目されている。このような太陽電池は、従来の太陽電池素子に比べて著しく変換効率が優れるとされる。こうした太陽電池素子において、本発明のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を量子ドットとして用いることにより、キャリア密度の上昇に伴う更なる高効率化が見込まれる。
量子ドットを用いた太陽電池素子は各種のものが提案されており、その製造方法は公知である。本発明の太陽電池素子の製造方法は、こうした公知の製造方法における量子ドットを本発明におけるp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子に置き換えたものである。このような太陽電池素子の一例としては、n型シリコンとp型シリコンとで本発明のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子で挟み、n型シリコン表面に負極集電体を、p型シリコン表面に正極集電体をそれぞれ設けたものや、シリコン基板とPEDOT:PSSのような導電性ポリマーとで本発明のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を挟み、シリコン基板表面と導電性ポリマー表面のそれぞれに集電体を設けたもの等が挙げられる。
本発明の太陽電池素子の製造方法では、基板表面にシリコンナノ粒子を固定するために、基板表面に凹凸を有するテクスチャ構造を設けておくことが好ましい。これにより、上記p型又はn型不純物含有ナノシリコンを含む溶液をスピンコートで基板に塗布することで、基板上の所望の位置に本発明のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を固定することができる。
<半導体デバイスの製造方法>
上記本発明のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法により得られたシリコンナノ粒子を用いた半導体デバイスの製造方法もまた、本発明の一つである。本発明の半導体素子の製造方法は、半導体素子における活性層の少なくとも一部として上記のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を用いることを特徴とする。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の各実施例において、実施例1~3は、p型不純物含有シリコンナノ粒子に関し、実施例4~6は、n型不純物含有シリコンナノ粒子に関するものである。
[実施例1]
エタノール20mLに市販のシリコン粉末100mg(粒径100nm、シリコン純度98%以上)及びホウ素粉末30mgを加え混合物とした。得られた混合物を市販のハイシェアミキサへ15分間循環通過させた。ハイシェアミキサの回転数は14000rpm、撹拌槽温度を10℃とした。混合物の全量をシリコン基板の表面に蒔き、その基板をアルゴン雰囲気下、1100℃で60分間加熱した。シリコン基板の表面に付着しているシリコン粒子を掻き取って回収した。回収したシリコン粒子にメタノール1.5mLと蒸留水13.5mLとの混合溶液を加えて混合物とした。これをハイシェアミキサへ5分間循環通過させて混合物に含まれるシリコン粉末を微分散させた。ハイシェアミキサの回転数は22400rpm、撹拌槽温度を20℃とした。次いで、循環通過を継続させながら、混合物へフッ化水素酸(46wt%)15mLを2分間かけて加え、さらに7分30秒間循環通過させた。その後、循環通過を継続させながら、混合物へ硝酸(60wt%)1.3mLを30秒間かけて加え、さらに30秒間循環通過させた。得られた反応混合物から固形物をメンブランフィルタで濾別し、エタノールで洗浄して実施例1のp型不純物含有シリコンナノ粒子を得た。
[実施例2]
ホウ素粉末の量を50mgに変更したこと以外は実施例1と同様の手順にて、実施例2のp型不純物含有シリコンナノ粒子を得た。
[実施例3]
ホウ素粉末の量を100mgに変更したこと以外は実施例1と同様の手順にて、実施例3のp型不純物含有シリコンナノ粒子を得た。
[比較例1]
市販のシリコン粉末100mg(粒径100nm、シリコン純度98%以上)にメタノール1.5mLと蒸留水13.5mLとの混合溶液を加えて混合物とした。これをハイシェアミキサへ5分間循環通過させて混合物に含まれるシリコン粉末を微分散させた。ハイシェアミキサの回転数は22400rpm、撹拌槽温度を20℃とした。次いで、循環通過を継続させながら、混合物へフッ化水素酸(46wt%)15mLを2分間かけて加え、さらに7分30秒間循環通過させた。その後、循環通過を継続させながら、混合物へ硝酸(60wt%)1.3mLを30秒間かけて加え、さらに30秒間循環通過させた。得られた反応混合物から固形物をメンブランフィルタで濾別し、エタノールで洗浄して比較例1のシリコンナノ粒子を得た。
実施例1~3及び比較例1のシリコンナノ粒子のそれぞれについて、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)で観察した結果、粒径3nm~5nmの粒子が観察された。
実施例3及び比較例1のシリコンナノ粒子のそれぞれについて、励起光を310nmとして蛍光スペクトルを観察した。その結果を図1に示す。図1は、実施例3及び比較例1のシリコンナノ粒子のそれぞれについての蛍光スペクトルである。図1を参照すると、比較例1のシリコンナノ粒子では強い蛍光が観察されたのに対して、実施例3のシリコンナノ粒子では蛍光が消失していることがわかる。この現象は、価電子帯よりも少し上の準位に不純物準位(アクセプタ準位)が生成され、当該不純物準位の存在によって電子と正孔との再結合が阻害されるオージェ効果によるものと推察される。すなわち、実施例3のシリコンナノ粒子が蛍光を示さなかったのは、ホウ素がシリコンナノ粒子にドープされた結果と言うことができる。
実施例3のシリコンナノ粒子について、X線光電子分光(XPS)測定を行った。その結果を図2に示す。図2は、実施例3のシリコンナノ粒子についてのXPSスペクトルである。図2を参照すると、B-B結合を示す187eV付近のピークに加えて、B-Si結合を示す188eV付近のピークが観察された。B-Si結合は、シリコンナノ粒子内部にドープされたホウ素の存在を示唆するものである。
また、実施例3のシリコンナノ粒子について、ラマン散乱を測定した。その結果を図3に示す。図3は、実施例3のシリコンナノ粒子についてのラマン散乱スペクトルである。図3を参照すると、実施例3では、520cm-1付近のピークが比較例1よりもややブロードになっていることから正孔の影響が示唆され、620cm-1及び640cm-1付近にSi-B結合を示すピークが観察された。この結果もまた、シリコンナノ粒子内部にドープされたホウ素の存在を示唆するものである。
以上の結果から、本発明に係るシリコンナノ粒子にホウ素がドープされているという事実が、発光と組成という異なる二つの測定結果から支持された。また、実施例3のシリコンナノ粒子と、比較例1のシリコンナノ粒子のコンダクタンスをそれぞれ調べた結果、比較例1のシリコンナノ粒子(アンドープ)のコンダクタンスが6.44×10-2mSだったのに対して、実施例3のシリコンナノ粒子(ボロンドープ)のコンダクタンスは1.48mSであり、比較例1に比べて2桁大きな電気伝導率を有することがわかった。
[実施例4]
メタノール1.5mLと蒸留水13.5mLとの混合溶液に市販のシリコン粉末50mg(粒径100nm、シリコン純度98%以上)及び赤リン粉末5mgを加え混合物とした。得られた混合物を市販のハイシェアミキサへ5分間循環通過させて混合物に含まれるシリコン粉末及び赤リンを微分散させた。ハイシェアミキサの回転数は22400rpm、撹拌槽温度を20℃とした。次いで、循環通過を継続させながら、混合物へフッ化水素酸(46wt%)15mLを2分間かけて加え、さらに7分30秒間循環通過させた。その後、循環通過を継続させながら、混合物へ硝酸(60wt%)1.3mLを30秒間かけて加え、さらに30秒間循環通過させた。得られた反応混合物の全量をシリコン基板の表面に蒔き、その基板をアルゴン雰囲気下、1100℃で30分間加熱した。シリコン基板の表面に付着している粒子を掻き取って回収し、アセトンで洗浄してから濾別することで実施例4のn型不純物含有シリコンナノ粒子を得た。
[実施例5]
赤リン粉末の量を25mgに変更したこと以外は実施例4と同様の手順にて、実施例5のn型不純物含有シリコンナノ粒子を得た。
[実施例6]
赤リン粉末の量を50mgに変更したこと以外は実施例4と同様の手順にて、実施例6のn型不純物含有シリコンナノ粒子を得た。
[比較例2]
赤リン粉末を添加しなかった(赤リン粉末0mg)こと以外は実施例4と同様の手順にて、比較例2のシリコンナノ粒子を得た。
実施例4~6及び比較例2のシリコンナノ粒子のそれぞれについて、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)で観察した結果、粒径3nm~5nmの粒子が観察された。
実施例4~6、及び比較例2のシリコンナノ粒子のそれぞれについて、励起光を310nmとして蛍光スペクトルを観察した。その結果を図4に示す。図4は、実施例4~6及び比較例2のシリコンナノ粒子のそれぞれについての蛍光スペクトルである。図4を参照すると、比較例2のシリコンナノ粒子では強い蛍光が観察されたのに対して、実施例4~6のシリコンナノ粒子では蛍光が消失していることがわかる。この現象は、伝導帯よりも少し下の準位に不純物準位(ドナー準位)が生成され、当該不純物準位の存在によって電子と正孔との再結合が阻害されるオージェ効果によるものと推察される。すなわち、実施例4~6のシリコンナノ粒子が蛍光を示さなかったのは、リンがシリコンナノ粒子にドープされた結果と言うことができる。
次に、実施例4~6のシリコンナノ粒子のそれぞれについて、X線光電子分光(XPS)測定を行った。その結果を図5に示す。図5は、実施例4~6のシリコンナノ粒子のそれぞれについてのXPSスペクトルである。図5を参照すると、実施例4~6のシリコンナノ粒子のいずれもP-O結合を示す135eV付近のピークに加えて、P-Si結合を示す126eV付近のピークが観察された。そしてこれらのピークは、実施例6が最も大きく、実施例5、実施例4の順に小さくなることがわかる。P-O結合は、シリコンナノ粒子表面近傍に存在するリンと酸化皮膜の酸素との結合に由来しており、P-Si結合は、シリコンナノ粒子内部にドープされたリンの存在を示唆するものである。
以上の結果から、本発明に係る実施例4~6のシリコンナノ粒子にリンがドープされているという事実が、発光と組成という異なる二つの測定結果から支持された。また、実施例6のシリコンナノ粒子と、比較例2のシリコンナノ粒子のコンダクタンスをそれぞれ調べた結果、比較例2のシリコンナノ粒子(アンドープ)のコンダクタンスが6.44×10-2mSだったのに対して、実施例6のシリコンナノ粒子(リンドープ)のコンダクタンスは2.27mSであり、比較例2に比べて2桁大きな電気伝導率を有することがわかった。
[太陽電池素子の作製]
実施例3及び比較例1のシリコンナノ粒子、並びに実施例5、実施例6及び比較例2のシリコンナノ粒子のそれぞれを用いて、図6に示す構造の太陽電池素子を作製した。図6に示す太陽電池素子は、ピラミッド型の表面テクスチャを備えたシリコン基板の表面に上記のシリコンナノ粒子を層厚が35nm程度になるように蒔き、さらにその表面に導電性ポリマー層を設け、導電性ポリマー層の表面、及びシリコン基板の裏面に電極を設けたものである。すなわち、それぞれのシリコンナノ粒子は、シリコン基板と導電性ポリマーとの間に挟まれて、太陽電池素子における活性層として機能する。ここで用いたシリコン基板は、いずれもn型のシリコン基板である。また、用いた導電性ポリマーは、p型の共役導電性ポリマーのPEDOT:PSSである。
上記のようにして得られた各太陽電池素子の電流密度-電圧特性を調べた。その結果を図7及び8に示す。図7は、実施例3又は比較例1のシリコンナノ粒子を用いて太陽電池素子を作製したときの電流密度-電圧特性を示すプロットであり、図8は、実施例5、実施例6又は比較例2のシリコンナノ粒子を用いて太陽電池素子を作製したときの電流密度-電圧特性を示すプロットである。また、この電流密度-電圧特性をもとに、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Vcc)、曲線因子(FF)、及び変換効率(PCE)の各セルパラメータを求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0007151974000001
表1に示すように、本発明のドープシリコンナノ粒子は、太陽電池素子における活性層として機能し、アンドープのシリコンナノ粒子よりも良好な変換効率を有する太陽電池素子を与えることがわかる。

Claims (7)

  1. p型又はn型の不純物を含有するシリコンナノ粒子の製造方法であって、
    分散されたシリコン粉末を含む水系溶媒にフッ化水素酸を添加して反応混合物を調製し、これらを反応させることでその反応混合物に含まれる前記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子表面の酸化皮膜を除去する第一投入工程と、前記第一投入工程を経た前記反応混合物に、前記第一投入工程で添加したフッ化水素酸を存在させたまま、シリコン粒子の表面を酸化させる作用を備えた酸化剤を添加する第二投入工程と、前記第二投入工程を経た前記反応混合物に対して、前記反応混合物を混合させるための外力を加えながら前記フッ化水素酸と前記酸化剤との作用により前記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を細粒化させるエッチング工程と、からなる細粒化三工程の前又は後に前記不純物をシリコン粒子の内部へ拡散させる拡散工程を備え、
    前記不純物がp型の場合、シリコン粉末と、p型不純物となる元素からなる単体又はp型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源の粉末と、を混合することでシリコン粒子の表面に不純物源を付着させる複合化工程と、前記複合化工程を経たシリコン粉末を加熱して、シリコン粒子の内部へp型不純物を拡散させる前記拡散工程と、が前記細粒化三工程の前に実行され、
    前記不純物がn型の場合、前記エッチング工程がn型不純物となる元素からなる単体又はn型不純物となる元素を含む化合物からなる不純物源を前記反応混合物中に含む状態で実行され、さらに、前記エッチング工程を経ることにより前記不純物源の付着したシリコン粒子を加熱して、このシリコン粒子の内部へn型不純物を拡散させる前記拡散工程が前記細粒化三工程の後に実行されることを特徴とするp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法。
  2. 前記第一投入工程を行う前処理として、シリコン粉末を投入された前記水系溶媒に外力を加えることにより前記シリコン粉末に含まれるシリコン粒子を予め微分散させる前分散工程を備える請求項1記載のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法。
  3. 前記不純物がp型の場合、当該不純物がホウ素であり、前記不純物がn型の場合、当該不純物がリンである請求項1又は2記載のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法。
  4. 前記酸化剤が硝酸である請求項1~3のいずれか1項記載のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法。
  5. 前記水系溶媒が水とアルコールとの混合溶媒である請求項1~4のいずれか1項記載のp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子の製造方法。
  6. 太陽電池素子における活性層に含まれる量子ドットとして、請求項1~5のいずれか1項記載の製造方法で得られたp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を用いることを特徴とする太陽電池素子の製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれか1項記載の製造方法で得られたp型又はn型不純物含有シリコンナノ粒子を活性層の少なくとも一部として用いることを特徴とした半導体デバイスの製造方法。
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