JP2014193792A - 珪素微粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光特性を有する珪素微粒子の量子収率を向上させることが可能な珪素微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る珪素微粒子の製造方法は、酸エッチング液を用いて前記珪素粒子の粒径を小さくすることによって、珪素微粒子を得る工程(ステップS102)と、前記珪素微粒子をフッ酸に浸漬させて、前記珪素微粒子の表面に水素終端を形成させる工程(ステップS103)と、酸化剤水溶液を用いて前記珪素微粒子の表面に酸化膜を形成する工程(ステップS104)とを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、珪素微粒子の製造方法に関する。
近年、20nm以下のナノ粒子(微粒子)は、電子状態の変化に伴う特異な電磁的効果の発現や表面原子が占める割合の増大などにより、バルク素材にない優れた特性を持つことが知られている。このようなナノ粒子として、無機微粒子に対する研究が進められ、特に珪素微粒子は発光素子への適用が期待されている。
数nm程度の粒子径に形成された珪素微粒子は、近赤外〜可視領域 (例えば、緑色〜黄色〜赤色)の蛍光(フォトルミネセンスと称させる)を放出する発光特性を有しており、発光物質としての応用が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
発光特性を有する珪素微粒子の製造方法としては、酸性エッチング液を用いて粒径を調整するとともに、珪素微粒子の表面を終端する終端処理を行う方法が知られている。また、珪素微粒子の表面を終端する終端処理としては、酸化膜(SiOxの膜)を形成する処理(無機終端処理とも称される)を施す方法が知られている。
このように、珪素微粒子の表面に酸化膜を形成すると、珪素微粒子が水中であっても分散安定化し、発光特性を有する珪素微粒子の収率及び寿命を高めることも可能になる。
ここで、珪素微粒子の表面に酸化膜を形成する手法としては、自然酸化による方法が考えられるが、自然酸化によって形成される酸化膜には多くの欠陥が発生することが知られている。そのため、RTO(Rapid Thermal Oxidation)法などの熱処理を用いた方法、或いは、HWA(high−pressure water vapor annealing)法などの方法によって、強制的に酸化膜を形成する技術が適用されている。
特開2004−296781号公報
しかしながら、RTO法又はHWA法などによって、珪素微粒子の表面に酸化膜を形成する場合、酸化膜の厚みが大きくなり易いため、珪素微粒子の粒径を制御することが困難であった。特に、発光特性を有する珪素微粒子は、小さい粒子径(例えば、1.5〜2.5nm程度)によって形成されていることから、かかる方法によって珪素微粒子の表面に酸化膜を形成すると、珪素微粒子を全て酸化してしまう場合もある。このような場合、珪素微粒子が発光特性を発揮しなくなるものもあり、その結果、珪素微粒子の量子収率、或いは、発光特性が低下するという問題があった。
更に、RTO法又はHWA法などによって強制的に酸化膜を形成する場合、成長した酸化膜によって、珪素微粒子同士が凝集するという副作用が生じてしまい、発光特性を有する珪素微粒子の量子収率が一層低下するという問題も生じる。
本発明は、上述した状況に鑑みなされたものであり、発光特性を有する珪素微粒子の量子収率を向上させることが可能な珪素微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は次の特徴を有する。本発明の第1の特徴に係る珪素微粒子の製造方法は、酸エッチング液を用いて前記珪素粒子の粒径を小さくすることによって、珪素微粒子を得る工程(ステップS102)と、前記珪素微粒子をフッ酸に浸漬させて、前記珪素微粒子の表面に水素終端を形成させる工程(ステップS103)と、酸化剤水溶液を用いて前記珪素微粒子の表面に酸化膜を形成する工程(ステップS104)とを含むことを要旨とする。
本発明の特徴に係る製造方法によれば、フッ酸を用いて珪素微粒子の表面に水素原子を終端させた上で、酸化剤水溶液を用いて珪素微粒子の表面に酸化膜を形成するため、珪素微粒子をフッ酸に浸漬させることによって、水素原子で終端された珪素微粒子の量子収率を高めることができる。このように、水素原子を終端させた珪素微粒子の量子収率を高めた上で、酸化剤水溶液を用いて珪素微粒子の表面に酸化膜を形成すると、RTO法又はHWA法によって強制的に酸化膜を形成する場合に比べて、酸化膜の厚みが厚くなりすぎず、薄くすることができる。更には、それぞれの珪素微粒子を分散化した状態のまま、それぞれの珪素微粒子に酸化膜を形成することが可能になる。
すなわち、かかる製造方法によれば、発光特性を有する珪素微粒子の量子収率を向上させることが可能になる。
本発明の他の特徴は、上記特徴に係り、前記酸化剤水溶液に含まれる酸化剤は、珪素微粒子に終端された水素を酸化する酸素原子を含むことを要旨とする。
本発明の他の特徴は、上記特徴に係り、前記酸化剤水溶液に含まれる酸化剤は、過酸化水素水であることを要旨とする。
本発明によれば、発光特性を有する珪素微粒子の量子収率を向上させることが可能な珪素微粒子の製造方法を提供できる。
図1は、本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図2は、本実施形態に係る製造方法によって得られた珪素微粒子の比較評価結果を示すグラフである。
本発明に係る珪素微粒子の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
[第1実施形態]
まず、本発明の実施形態に係る珪素微粒子について説明する。本発明の実施形態に係る珪素微粒子は、可視領域の光(フォトルミネセンス)を放出する。
ここで、可視領域とは、可視光線の波長領域を示し、波長が380nm〜750nmの範囲内を示す。また、波長領域内の波長によって、人間に認識される光色が異なり、例えば、青色であれば、450〜495nm程度、緑色であれば、495〜570nm程度、黄色であれば、570〜590nm程度、橙色であれば、590nm〜620nm程度、赤色であれば、620〜750nm程度とされている。
本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図1に示すように、ステップS101において、珪素粒子を準備する。また、本実施形態に係る珪素粒子は、様々な製造方法を適用して生成することが可能である。例えば、珪素粒子は、特開2010−195637号公報に開示されている製造方法によって生成することができる。具体的に、かかる製造方法は、珪素源及び炭素源を合成し、珪素源及び炭素源を含む混合物を、不活性雰囲気下において加熱焼成する工程と、不活性雰囲気から生成ガスを抜き出し、この生成ガスを急冷固化することによって、珪素粒子を含む複合粉体を取得する急冷工程とを含むものである。なお、複合粉体には、珪素粒子の他、例えば、酸化珪素も含まれる。
ステップS102において、酸エッチング液を用いて珪素粒子の粒径を小さくすることによって、珪素微粒子を得る。すなわち、珪素粒子を酸エッチング液に混入し、珪素粒子にエッチング処理を行うことによって、粒径サイズを調整する。
具体的に、珪素粒子を含む複合紛体を、メタノールとフッ酸と硝酸とを含む酸エッチング液(体積比2:10:1)に混入して、エッチング処理を所定期間行って、複合粉体に含まれる副物質(例えば、酸化珪素など)を溶解させるとともに、珪素粒子の表面を溶解させる。かかるエッチング処理の期間(所定期間)を調整することによって、珪素粒子の粒径を調整することができる。また、エッチング処理をストップさせるストップ液としては、純水とメタノールとの混合液(体積比3:1)を用いることができる。なお、上述したエッチング処理では、超音波を照射してもいし、常温よりも温度を加熱してもよい。
ここで、緑色に発光する珪素微粒子を生成するのであれば、珪素微粒子の平均粒径を約1.4〜2.0nmとし、黄色に発光する珪素微粒子を生成するのであれば、珪素微粒子の平均粒径を2.0〜2.5nmとし、赤色に発光する珪素微粒子を生成するのであれば、珪素微粒子の平均粒径を2.5〜3.5nmとして生成することが好ましい。
ステップS103において、珪素微粒子をフッ酸に浸漬させて、珪素微粒子の表面に水素終端を形成させる。具体的には、エッチング処理を施して粒径が調整された珪素微粒子を、濾紙(フィルター)を用いた濾過処理によって得る。そして、得られた珪素微粒子にフッ酸を用いたリンス処理を施す。詳細には、濾紙に残留した珪素微粒子に、濾紙の上からフッ酸を流すことによって、珪素微粒子の表面にリンス処理を施す。なお、フッ酸を用いたリンス処理とは、珪素微粒子の表面を、フッ酸を用いて洗い流す処理とも言える。すなわち、ステップS103において、珪素微粒子をフッ酸に浸漬させる処理は、フッ酸を用いたリンス処理など、珪素微粒子を一時的にフッ酸に浸す処理であればどのような方法を用いてもよい。なお、フッ酸(HFaq)におけるフッ化水素(HF)の濃度は、1%〜24%の範囲内であってもよい。
このように、珪素微粒子をフッ酸に浸漬させることによって、珪素微粒子の表面では、酸素原子を有する終端基(例えば、Si−O及びS−OR)が、水素原子によって終端化(すなわち、Si−Hに置換)される。なお、珪素微粒子の不要な酸化を防止する観点から、上述のフッ酸を用いたリンス処理は、脱酸素雰囲気下で実施されることが好ましい。脱酸素雰囲気下としては、窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下などが挙げられる。
ステップS104において、酸化剤水溶液を用いて珪素微粒子の表面に酸化膜を形成する。具体的に、フッ酸を用いたリンス処理が施された珪素微粒子を、酸化剤水溶液に浸漬させるケミカル酸化終端処理を実施することによって、珪素微粒子の表面に酸化膜(SiOx:x=1〜2)を形成する。すなわち、珪素微粒子の表面に無機終端処理を施す。詳細には、ステップS103において、濾紙の上からフッ酸を流すリンス処理を施した後、ステップS104において、濾紙に残留した珪素微粒子に対して、更に酸化剤水溶液を流すリンス処理を施す。なお、酸化剤水溶液を用いたリンス処理は、珪素微粒子の表面を、酸化剤水溶液を用いて洗い流す処理とも言える。すなわち、ステップS104において、珪素微粒子を酸化剤水溶液に浸漬させる処理は、酸化剤水溶液を用いたリンス処理など、珪素微粒子を一時的に酸化剤水溶液に浸す処理であればよい。
本実施形態では、酸化剤水溶液に含まれる酸化剤は、珪素微粒子に終端された水素を酸化する酸素原子を含む。具体的に、本実施形態において、酸化剤水溶液に含まれる酸化剤は、過酸化水素水である。なお、酸化剤水溶液としては、硝酸(HNO)又はオゾン水などを適用してもよく、珪素微粒子に終端された水素原子を酸化するものであれば、どのようなものを用いてもよい。
また、上述したステップS101乃至S104の処理によって得られた珪素微粒子は、保存溶媒に展開してもよい。保存溶媒としては、凍結脱気処理などの脱酸素処理が施された純水を用いることもできる。ここで、従来技術であれば、保存溶媒として純水を用いると、珪素微粒子の表面において、酸化が促進されてしまうため、珪素微粒子を保存溶媒に展開するとすぐに発光特性を失ってしまっていた。しかし、本実施形態に係る製造方法によって得られた珪素微粒子は、珪素微粒子の表面において酸化膜が密に形成されているため、保存溶媒として純水を用いても、発光特性を保持することが可能になる。すなわち、本実施形態に係る製造方法によって得られた珪素微粒子は、発光特性をより長期に亘って維持することが可能になる。
(作用・効果)
本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法では、フッ酸を用いて珪素微粒子の表面に水素原子を終端させる工程と、酸化剤水溶液を用いて珪素微粒子の表面に酸化膜を形成する工程とを含む。
すなわち、珪素微粒子をフッ酸に浸漬させることによって、水素原子がより密に終端された珪素微粒子を得ることができる。このように、水素原子がより密に終端させた珪素微粒子の量子収率を高めた上で、酸化剤水溶液を用いて珪素微粒子の表面に酸化膜(ケミカル酸化膜)を形成すると、RTO法又はHWA法によって強制的に酸化膜を形成する場合に比べて、酸化膜の厚みを厚くし過ぎないように制御できるだけでなく、分散化した状態のまま珪素微粒子に酸化膜を確実に形成することが可能になる。
以上のように、本実施形態に係る製造方法によれば、発光特性を有する珪素微粒子の量子収率を向上させることが可能になる。更には、珪素微粒子の発光特性の低下を抑制できるので、珪素微粒子の発光特性をより長期に亘って維持することができる。
また、本実施形態では、酸化剤水溶液として、過酸化水素水を用いているので、排水処理が容易になり、処理作業の簡略化及び処理コストの低減を図ることができる。
[比較評価]
次に、本発明の効果を更に明確にするために、実施例に係る製造方法を用いて製造した珪素微粒子と、比較例に係る製造方法を用いて製造した珪素微粒子との発光強度を比較した。なお、本発明は、これら実施例に何ら制限されない。
まず、上述した実施形態におけるステップS101〜104によって得られた珪素微粒子を純水に展開した溶液を得た。この溶液を実施例として、発光強度を測定した。なお、発光強度の測定には、株式会社日立製作所製分光蛍光光度計F−7000を用いた。
また、比較のため、上述した実施形態におけるステップS101〜S103によって得られた珪素微粒子を純水に展開した溶液を得た。すなわち、酸化剤水溶液に浸漬させて酸化膜を形成していない珪素微粒子を純水に展開した溶液を得た。この溶液を比較例として、実施例と同量の比較例の発光強度を測定した。実施例と比較例との測定結果を図2に示す。
図2に示すように、発光強度を測定した結果、実施例の方が比較例に比べて、飛躍的に高いことが確認された。発光強度は、溶液中において、発光特性を有する珪素微粒子の含有量(粒子数)に依存するため、実施例の方が、発光特性を有する珪素微粒子の含有量(粒子数)が多いことが証明された。これは、実施例では、酸化剤水溶液に浸漬させることによって、1〜2層の酸化膜を形成しているため、ダングリングボンドなどによる表面欠陥が生じにくい。したがって、実施例では、発光特性の低下した珪素微粒子が抑制され、発光特性を有する珪素微粒子の量子収率が高められている。すなわち、本発明に係る製造方法は、発光特性を有する珪素微粒子の量子収率を向上できることが証明された。
特に、比較例では、保存溶媒として純水を用いると、珪素微粒子の表面において、酸化が促進されてしまうため、珪素微粒子を保存溶媒に展開するとすぐに発光特性を失ってしまうことを示している。しかし、実施例では、珪素微粒子の表面において、1〜2層の酸化膜が密に形成されているため、保存溶媒として純水を用いても、発光特性の劣化を抑制することが可能になる。すなわち、本実施形態に係る製造方法によって得られた珪素微粒子は、発光特性をより長期に亘って維持することが証明された。
なお、実施例1に紫外線(UV365)を照射して、発光色を目視によって確認したところ、緑色に発光することが確認された。一方、比較例に紫外線(UV365)を照射しても、発光色を確認できなかった。つまり、比較例は、発光特性が劣化していることが確認された。
[その他実施形態]
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、本実施形態に係る珪素微粒子の製造方法では、準備工程S101によって珪素粒子を準備したが、必ずしもこれに限られない。市販の珪素粒子を購入することにより準備しても良い。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
S101〜S104…ステップ

Claims (3)

  1. 酸エッチング液を用いて前記珪素粒子の粒径を小さくすることによって、珪素微粒子を得る工程と、
    前記珪素微粒子をフッ酸に浸漬させて、前記珪素微粒子の表面に水素終端を形成させる工程と、
    酸化剤水溶液を用いて前記珪素微粒子の表面に酸化膜を形成する工程とを含む
    ことを特徴とする珪素微粒子の製造方法。
  2. 前記酸化剤水溶液に含まれる酸化剤は、珪素微粒子に終端された水素を酸化する酸素原子を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の珪素微粒子の製造方法。
  3. 前記酸化剤水溶液に含まれる酸化剤は、過酸化水素水である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の珪素微粒子の製造方法。
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