JP7148645B2 - 電極付きアルカリ水電解用隔膜、その製造方法、及び水電解装置 - Google Patents

電極付きアルカリ水電解用隔膜、その製造方法、及び水電解装置 Download PDF

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Description

本発明は、電極付きアルカリ水電解用隔膜に関する。より詳しくは、ガスバリアや電解効率に優れた、電極付きアルカリ水電解用隔膜、その製造方法及び水電解装置に関する。
水の電気分解(「電解」ともいう。)は、水素の工業的な製造方法の一つとして知られており、一般的に、導電性を高めるために水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を電解質として添加した水に電流を印加することにより行われる。このような水の電気分解には、陽極(アノード)と陰極(カソード)がそれぞれ配置された陽極室と陰極室を有し、これらが隔膜により仕切られた電解槽が使用される。
水の電気分解は、電子(又はイオン)の移動により行われる。そのため、上記隔膜には、電気分解を効率良く行うために、高いイオン透過性が必要とされる。また、陽極室で発生する酸素と、陰極室で発生する水素とを遮断し得るガスバリア性が必要とされる。更に、水の電気分解は、30%程度の高濃度のアルカリ水を使用して、80~100℃、場合によっては1MPaの圧力下で行われるので、耐高温性や耐アルカリ性、機械的な強度も必要とされる。
水の電気分解に使用される隔膜としては、これまでに種々知られている。例えば、特許文献1には、イオン透過膜と、上記イオン透過膜の片側または両側に配置された多孔性補強体とを備え、上記イオン透過膜がイオン交換基を有するポリマーから構成され、上記多孔性補強体が金属酸化物を含むアルカリ水電解用隔膜が開示されている。また、例えば、特許文献2には、特定範囲の平均孔径と空隙率を有し、ポリフェニレン共重合体を含む微多孔膜と支持基材を構成要素として含むアルカリ水電解用隔膜等が開示されている。
一方、水の電気分解に使用される電極には、高い電解効率や耐久性が必要とされる。
上記電極としては、例えば、基材上にNi-W-S合金膜が設けられたアルカリ水電解用電極(特許文献3)や、表面がニッケル又はニッケル基合金よりなる導電性基体と、該基体表面に形成されるリチウム含有ニッケル酸化物触媒層とからなるアルカリ水電解用陽極(特許文献4)や、基材と、上記基材上に設けられたFe-Ni-W合金膜とを有するアルカリ水電解用電極(特許文献5)等が知られ、これまでに数多く検討されている。
また、電解槽における上記隔膜と電極の配置方法や構造についても検討されており、例えば、特許文献6には、イオン透過性隔膜を一対の電極間で挟持した構造を有するアルカリ水電解装置の電極が開示されている。また、例えば、特許文献7には、イオン透過性の隔膜を介して対向配置された1対の電解室と、原水供給手段と、上記隔膜を挟んで各電解室に設けられた1対の電極と、電解水取出手段とを備えた電解槽が記載され、上記隔膜は陽イオン交換膜であり、上記電極は上記陽イオン交換膜の両表面に密着して陽イオンが透過できる膜-電極構造体を形成している電解槽が開示されている。
特開2013-249510号公報 特開2017-66184号公報 特開2012-153958号公報 特開2015-86420号公報 特開2018-127664号公報 特開2009-242922号公報 特開2005-144329号公報
このように、水の電気分解に使用される隔膜や電極について、電解効率や、ガスバリア性、耐久性等の必要とされる特性を向上させるべく様々な検討が行われている。
しかしながら、従来の隔膜や電極では、未だ電解効率が不十分であり、改善の余地があった。また、近年のエネルギー技術の進歩により、電極や隔膜に要求される性能が高まりつつあり、その上、水電解装置の小型化の要求もある。そのため、電解効率が従来よりも更に一層優れる隔膜や電極の開発が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電解効率に優れたアルカリ水電解用隔膜を提供することを目的とする。
本発明者は、アルカリ水電解に使用する隔膜や電極について種々検討したところ、特定の成分を含む隔膜と電極とを一体化した構造とすることにより、電極間の電気抵抗を小さくすることができ、かつ、優れたイオン透過性やガスバリア性を有することで、電解効率に優れた隔膜-電極構造体とすることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、水酸化マグネシウム及び有機高分子樹脂を含むイオン透過膜に、電極が一体化してなることを特徴とする電極付きアルカリ水電解用隔膜である。
上記水酸化マグネシウムは、平均粒子径が0.05~2.0μmであることが好ましい。
上記有機高分子樹脂は、芳香族炭化水素系樹脂を含むことが好ましい。
上記イオン透過膜は、上記水酸化マグネシウム100質量部に対して有機高分子樹脂を10~40質量部含むことが好ましい。
上記イオン透過膜は、更に、多孔性支持体を含むことが好ましい。
また、上記イオン透過膜は、多孔性支持体を含まないことが好ましい。
上記多孔性支持体は、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、不織布、織布、又はメッシュであることが好ましい。
本発明はまた、上述の電極付きアルカリ水電解用隔膜を備えることを特徴とする水電解装置でもある。
本発明はまた、水酸化マグネシウム及び有機高分子樹脂を含むイオン透過膜に、電極が一体化してなる電極付きアルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、上記水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂を含むイオン透過膜形成用組成物を調製する工程(1)と、上記イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させる工程(2)と、上記イオン透過膜を形成する工程(3)を含むことを特徴とする電極付きアルカリ水電解用隔膜の製造方法でもある。
上記工程(2)は、電極に水を含浸させる工程(2-1)、及び、上記電極にイオン透過膜形成用組成物を塗布する工程(2-2)を含むことが好ましい。
上記工程(2)において、上記イオン透過膜形成用組成物を接触させる電極の水の充填率は、電極の空隙100体積%に対して、10~80体積%であることが好ましい。
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、優れた電解効率を有するものである。本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜を用いれば、水の電気分解を極めて効率良く行うことができ、電解効率に優れた水電解装置を提供することができる。
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜の構成の一例を示す概略断面図である。 本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜の構成の一例を示す概略断面図である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
1.電極付きアルカリ水電解用隔膜
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜(以下、「本発明のアルカリ水電解用隔膜」とも称する。)は、水酸化マグネシウム及び有機高分子樹脂を含むイオン透過膜に、電極が一体化してなることを特徴とする。
本発明のアルカリ水電解用隔膜が電解効率に優れるのは、電極とイオン透過膜を一体化することにより、イオン透過膜は自立膜としての厚みを必要とせず、薄くすることができるため、イオン透過膜を介して設置される一対の電極間の距離を短くし、電気抵抗を小さくすることができるとともに、上記イオン透過膜が水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂を含むため、薄くても優れたイオン透過性及びガスバリア性を実現できることによると推測される。
また、本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、上記イオン透過膜が水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂を含むため、耐アルカリ性や耐高温性にも優れ、耐久性にも優れる。
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、イオン透過膜と電極を含む。
上記イオン透過膜は、多孔質の膜であり、多孔部分に水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等を電解質として添加した水、すなわち電解液が満たされることにより、イオンを透過させることができる性質を有する膜である。
本発明において、上記イオン透過膜と電極が一体化してなるとは、イオン透過膜と電極が単に接するだけや、バネやネジ等の他の部材によりイオン透過膜と電極が接するよう保持されるような状態ではなく、イオン透過膜と電極との少なくとも一部が、イオン透過膜を構成する水酸化マグネシウムや有機高分子樹脂により接合等されて、イオン透過膜と電極が一体となった状態をいう。
本明細書において、一体化してなる、又は、一体化されているとは、イオン透過膜と電極に対し機械的な作用力を施さない状態で、一体となっている形態を保持できることを意味する。この状態は、例えばイオン透過膜(の表面)と電極(の表面)との間に、接合、固着、接着、圧着、塗着等によるか、共有結合、イオン結合、金属結合等の原子間の結合、水素結合、ファンデアワールス力等が作用する結果によるか、又は、一方が他方の表面層に組み込まれている形態、埋設している形態等により、達成される。例えば、接合による一体化の形態は、イオン透過膜と電極とが、その少なくとも一部において、イオン透過膜を構成する水酸化マグネシウムや有機高分子樹脂により接合され、一体となった状態である。
上記アルカリ水電解用隔膜は、イオン透過膜に、カソード電極又はアノード電極のいずれか一方が一体化したものであってもよいし、イオン透過膜に両電極が一体化したものであってもよい。なお、イオン透過膜に両電極を一体化させる場合は、イオン透過膜の一方の面にカソード電極を接合させ、他方の面にアノード電極を接合させて一体化したものであることが好ましい。
図1及び2に、本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜の好ましい形態の一例を示す。
図1は、イオン透過膜2の片面に、電極3が一体化した電極付きアルカリ水電解用隔膜1の構成の一例を表す概略断面図である。上記電極3は、カソード電極又はアノード電極であってもよい。また、上記電極3は、図1(a)に示すように1つであってもよいし、図1(b)に示すように同種の電極が複数あってもよい。また、図1(b)に示すように、電極3はイオン透過膜2の表面でイオン透過膜2と一体化されていてもよいし、図1(c)に示すように、電極3の一部がイオン透過膜2中に埋設された状態で一体化されていてもよい。
また、図には示されていないが、イオン透過膜2の一部が電極3に埋設された状態で一体化されていてもよい。
図2は、イオン透過膜2の両面に、カソード電極4とアノード電極5の2つの電極が一体化した電極付きアルカリ水電解用隔膜1の構成の一例を表す概略断面図である。上記カソード電極4及びアノード電極5は、それぞれ、図2(a)に示すように1つであってもよいし、図2(b)に示すように複数あってもよい。また、カソード電極4とアノード電極5は、上述のように、イオン透過膜2の表面でイオン透過膜2と一体化されていてもよいし、一部がイオン透過膜2中に埋設された状態で一体化されていてもよい。また、図には示されていないが、イオン透過膜2の一部がカソード電極4とアノード電極5に埋設された状態で一体化されていてもよい。
上記図1及び2に示されるように、上記電極付きアルカリ水電解用隔膜のイオン透過膜と電極とが一体化されている面において、電極側の全面が、イオン透過膜側の面の一部に一体化されていることが好ましい。上記アルカリ水電解用隔膜を電解槽に設置した際に、電極間をイオン透過膜で隔てた電極室を容易に形成することができる。
また、上記電極付きアルカリ水電解用隔膜のイオン透過膜と電極とが一体化されている面において、イオン透過膜側の全面が、電極側の面の一部に一体化されていてもよい。このようにすることで、隔膜の強度を向上させることができ、電解槽の製造時の取り扱いが容易となる。しかし、この場合、電解槽の構造が複雑になるため、電極側の全面が、イオン透過膜側の面の一部に一体化されていることが好ましい。
以下に、本発明のアルカリ水電解用隔膜を構成するイオン透過膜と電極、その他の任意の<他の層>について、説明する。
<イオン透過膜>
上記イオン透過膜は、水酸化マグネシウム、及び、有機高分子樹脂を含む。
上記イオン透過膜は、多孔質の膜であり、水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂との空隙に電解液が満たされることで、イオン透過性を発揮することができる。また、上記イオン透過膜は、水酸化マグネシウムを含むため、耐アルカリ性に優れる。また、水酸化マグネシウムを含むことにより、イオン透過膜が親水化し、水の電気分解において発生する酸素ガスや水素ガスが隔膜に付着して電気分解の妨げになることを抑制することができる。
(水酸化マグネシウム)
上記水酸化マグネシウムとしては、特に限定されず、天然物であっても合成物であってもよい。また、表面が未処理のものであってもよく、シランカップリング剤、ステアリン酸、オレイン酸、リン酸エステル等により表面処理したものであってもよい。
上記水酸化マグネシウムの形状は、特に限定されず、不定形;粒状;顆粒状;薄片状、六角板状等の板状;繊維状等のいずれの形状であってもよいが、なかでも、イオン透過膜を形成する際に、水酸化マグネシウムを溶液に分散させ塗布液を調製しやすい点で、粒状、板状、繊維状であることが好ましく、樹脂との密着性とイオン透過性の観点から、粒状、板状であることがより好ましく、板状であることが更に好ましく、薄片状であることが特に好ましい。
上記水酸化マグネシウムは、アスペクト比が1.2~8.0であることが好ましい。アスペクト比が上述の範囲であると、イオン透過性がより一層優れ、均一性に優れた膜とすることができる。上記アスペクト比は、1.5~7.0であることがより好ましく、2.0~6.0であることが更に好ましい。
本明細書中、アスペクト比とは、最長径(a)と最短径(b)との比[(a)/(b)]を意味し、水酸化マグネシウムの粒子をSEMで観察し、得られた画像の任意の10粒子において、解析ソフト等を使用して、各粒子の最長径(a)と最短径(b)との比[(a)/(b)]を測定し、それらの比の単純平均値をその粒子のアスペクト比として求めることができる。
通常、最長径(a)の中点を通って最長径と直交する径のうちの最も短い径を最短径(b)とすることが好ましい。
上記最長径(a)としては、例えば、粒子の形状が薄片状や六角板状等の板状の場合、粒子の板面の長径を採用し、繊維状である場合は、繊維の長さを採用する。
上記最短径(b)としては、例えば、粒子の形状が薄片状や六角板状等の板状の場合は、粒子の厚みを採用し、繊維状である場合は、繊維の太さを採用する。粒子の厚み及び繊維の太さとしては、最長径(a)の中点における厚み、太さをそれぞれ採用することが好ましい。
上記水酸化マグネシウムは、平均粒子径が0.05~2.0μmであることが好ましい。上記平均粒子径が上述の範囲であると、イオン透過性、ガスバリア性により優れた膜とすることができる。上記水酸化マグネシウムの平均粒子径は、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが更に好ましく、また、1.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。
上記平均粒子径は、レーザー回折法による粒度分布測定から求められる体積平均粒子径(D50)である。具体的には、平均粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「型番LA-920」)を用いて粒度分布を測定し、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)を平均粒子径とする。なお、粒子をエタノールに混合し超音波照射して分散させたものを測定試料とする。
上記水酸化マグネシウムは、X線回折により測定される(110)面に垂直な方向の結晶子径が35nm以上であることが好ましい。上記(110)面に垂直な方向の結晶子径が上述の範囲であると、隔膜のイオン透過性や隔膜の均一性がより一層優れる。
上記(110)面に垂直な方向の結晶子径は、40nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることが更に好ましく、65nm以上であることが特に好ましい。
上記(110)面に垂直な方向の結晶子径は、その上限値は特に限定されないが、通常は例えば400nm以下であり、好ましくは350nm以下、更に好ましくは300nm以下である。
上記水酸化マグネシウムは、X線回折により測定される(001)面に垂直な方向の結晶子径が15nm以上であることが好ましい。
上記(001)面に垂直な方向の結晶子径は、18nm以上であることがより好ましく、21nm以上であることが更に好ましく、24nm以上であることが特に好ましい。
上記(001)面に垂直な方向の結晶子径は、その上限値は特に限定されないが、通常は例えば300nm以下であり、好ましくは250nm以下、更に好ましくは200nm以下である。
上記結晶子径は、粉末X線回折法により水酸化マグネシウム粒子のX線回折パターンを測定し、対象の格子面に帰属される回折線の広がり(半値幅)から、Scherrerの式を用いて結晶子径(上記格子面に垂直方向の結晶子径)を算出して求めることができる。
上述した特定の結晶子径範囲の水酸化マグネシウムを得るための方法は、例えば、以下の通りである。
マグネシウム塩(塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等)の水溶液、又は、従来公知の方法で得られた酸化マグネシウムの水分散液を原料とし、アルカリ性物性(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水等)の添加により、水和反応を行うことで水酸化マグネシウムを調製する。この際に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、硝酸、硫酸等の多塩基酸、又は、これらの混合物の添加により、生成した水酸化マグネシウムの溶解度を調整したり、水熱反応の温度(例えば150℃から270℃)や時間(例えば30分~10時間)を適宜調整したりすることにより、結晶子径の異なる粒子を調製できる。酸の添加量が多い方が結晶成長は進み、結晶子径が大きくなる。また、水熱反応の温度は高い方が、時間は長い方が、結晶成長が進み、結晶子径は大きくなる。
本発明においては、水酸化マグネシウムとして、一般的な市販品を使用することもできる。本発明において使用することができる水酸化マグネシウムの市販品としては、例えば、協和化学工業社製の200-06H、宇部マテリアル社製UP650-1、タテホ化学工業社製MAGSTAR♯20、神島化学工業社製♯200等が挙げられる。
上記水酸化マグネシウムの含有量は、イオン透過膜100質量%中30~95質量%であることが好ましい。上記水酸化マグネシウムの含有量が上述の範囲であると、アルカリ溶液中での無機成分の溶出がより一層抑制され、イオン透過性、ガスバリア性、耐熱性及び耐アルカリ性に優れた隔膜とすることができる。上記水酸化マグネシウムの含有量は、イオン透過膜100質量%中、32~85質量%であることがより好ましく、35~80質量%であることが更に好ましい。
上記水酸化マグネシウムの含有量は、上記イオン透過膜が後述する多孔性支持体を含まない場合は、イオン透過膜100質量%中60~95質量%であることが好ましく、65~93質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることが更に好ましい。
上記イオン透過膜が後述する多孔性支持体を含む場合は、上記水酸化マグネシウムの含有量は、イオン透過膜100質量%中30~85質量%であることが好ましく、32~80質量%であることがより好ましく、35~75質量%であることが更に好ましい。
(有機高分子樹脂)
上記有機高分子樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;又は、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等の芳香族炭化水素系樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、更に耐熱性、耐アルカリ性に優れる点で、芳香族炭化水素系樹脂が好ましい。
上記芳香族炭化水素系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。なかでも、より一層優れた耐アルカリ性を付与することができる点で、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、製造上の観点で、ポリスルホンがより好ましい。
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニルスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることで、得られるアルカリ水電解用隔膜の抵抗値が更に低くなり、また、耐アルカリ性が更に高くなることで、アルカリ溶液中で長時間使用した場合の寸法や質量、抵抗値の安定性や空孔の発生抑制効果により優れたものとなる。
上記有機高分子樹脂の含有量としては、イオン透過膜100質量%中3~50質量%であることが好ましい。上記有機高分子樹脂の含有量が上述の範囲であると、アルカリ溶液中でのイオン透過膜からの無機成分の溶出が抑制され、また、イオン透過性、ガスバリア性、耐熱性及び耐アルカリ性にも優れる。上記有機高分子樹脂の含有量は、イオン透過膜100質量%中、4~35質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが更に好ましい。
上記有機高分子樹脂の含有量は、上記イオン透過膜が後述する多孔性支持体を含まない場合は、イオン透過膜100質量%中5~50質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることが更に好ましい。なお、この場合、上記水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂の合計含有量の最大値は、イオン透過膜100質量%中100質量%である。
上記イオン透過膜が後述する多孔性支持体を含む場合は、上記有機高分子樹脂の含有量は、アルカリ水電解用隔膜100質量%中3~50質量%であることが好ましく、4~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが更に好ましい。
上記イオン透過膜は、上記水酸化マグネシウム100質量部に対して上記有機高分子樹脂を10~40質量部含むことが好ましく、12~38質量部含むことがより好ましく、15~35質量部含むことが更に好ましい。水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂の含有割合が上述した範囲であると、アルカリ溶液中での上記イオン透過膜からの無機成分の溶出が抑制され、またイオン透過性、ガスバリア性、耐熱性及び耐アルカリ性にも優れる。
(多孔性支持体)
上記イオン透過膜は、更に多孔性支持体を含んでいてもよい。多孔性支持体を含むことにより、上記イオン透過膜の強度が向上し、本発明のアルカリ水電解用隔膜の強度を向上させることができ、電気分解中のイオン透過膜の破損等を抑制することができる。
上記多孔性支持体は、多孔質であり、イオン透過膜の支持体となり得る部材である。上記多孔性支持体は、シート状の部材であることが好ましい。
上記多孔性支持体の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、優れた耐熱性及び耐アルカリ性を発揮できる点で、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、ポリプロピレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことがより好ましい。
上記多孔性支持体の形態としては、例えば、不織布、織布、メッシュ、多孔質膜、又は不織布と織布の混合布等が挙げられるが、好ましくは、不織布、織布、又はメッシュが挙げられ、より好ましくは、不織布、メッシュが挙げられ、更に好ましくは不織布が挙げられる。
上記多孔性支持体としては、なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、不織布、織布、又はメッシュであることが好ましく、ポリフェニレンサルファイドを含む、不織布又はメッシュであることがより好ましい。
上記多孔性支持体がシート状である場合、上記多孔性支持体の厚みは、本発明のアルカリ水電解用隔膜が本発明の効果を発揮できる限り特に限定されないが、例えば、好ましくは30~500μm、より好ましくは50~400μm、更に好ましくは80~300μmである。
上記イオン透過膜において、上述した水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂を含む膜は、上記多孔性支持体の片面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよいし、上記多孔性支持体と一体化して複合体となったものであってもよい。多孔性支持体との複合体とすることにより、本発明のアルカリ水電解用隔膜の強度と靱性を単膜の場合よりも向上させることができる。
また、上記イオン透過膜が上記多孔性支持体を含まないことも好ましい形態の一つである。上記イオン透過膜が、水酸化マグネシウム及び有機高分子樹脂を含む膜からなり、上記多孔性支持体を含まないものであると、上記アルカリ水電解用隔膜の厚みをより薄くすることができ、電解効率をより一層向上させることができる。
上記イオン透過膜の気孔率は、20~80体積%であることが好ましく、25~75体積%であることがより好ましく、30~70体積%であることが更に好ましい。気孔率が上述の範囲であると、膜中の気孔に電解液が連続的に満たされるためイオン透過性に優れ、かつガスバリア性に優れた層とすることができる。
上記気孔率は、上記イオン透過膜のみの部分を取り出し、それを終夜で電解液に浸漬させ、吸液前後の質量変化によって求めることができる。具体的には、下記の式によって求めることができる。
気孔率(体積%)=(浸漬後のイオン透過膜の質量-浸漬前のイオン透過膜の質量)/電解液の密度/イオン透過膜の体積×100
上記イオン透過膜の空孔の大きさは、0.01~1μmであることが好ましく、0.05~0.9μmであることがより好ましく、0.1~0.8μmであることが更に好ましい。空孔の大きさが上述の範囲であると、イオン透過性がより一層優れる。
上記空孔の大きさは、イオン透過膜のFE-SEM測定による表面観察画像(倍率×25000)から測定して求めることができる。具体的には、上記イオン透過膜のFE-SEM画像における任意の空隙10点について、解析ソフト(Image-Pro Premier、日本ローパー社製)を使用して、選択した各空隙の重心を通るような直径を空孔の大きさとして測定し、平均値を算出して求める。
上記イオン透過膜の厚みは、特に限定されず、本発明のアルカリ水電解用隔膜を使用する設備の大きさや取り扱い性等に応じて適宜設定すればよいが、ガスバリア性やイオン透過性、強度の観点から、50~1000μmであることが好ましく、100~500μmであることがより好ましく、200~400μmであることが更に好ましい。
また、上述した多孔性支持体を含む場合、上記イオン透過膜の厚みは、50~1000μmであることが好ましく、100~500μmであることがより好ましく、200~400μmであることが更に好ましい。
<電極>
上記電極としては、公知のカソード電極又はアノード電極が挙げられる。
上記電極の基材としては、特に限定されず、銅、鉛、ニッケル、クロム、チタン、金、白金、鉄、これらの金属化合物、金属酸化物、及びこれらの金属の2種以上を含む合金等の公知の導電性材料等が挙げられる。これらは、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。なかでも、汎用性が高く、アルカリ溶液中で耐食性が高いことから、上記電極は、ニッケル化合物、ニッケル酸化物又はニッケル合金等のニッケル系材料、鉄化合物又は鉄合金等の鉄系材料を含むことが好ましい。
上記電極がカソード電極である場合、電極の基材は、白金系材料、ニッケル系材料、鉄系材料、チタン系材料を含むことが好ましく、ニッケル系材料、鉄系材料を含むことがより好ましい。
上記電極がアノード電極である場合、電極の基材は、白金系材料、ニッケル系材料、鉄系材料、チタン系材料を含むことが好ましく、ニッケル系材料、鉄系材料を含むことが好ましい。
上記電極は、上述した導電性材料からなる電極基材上に、触媒層が形成されたものであってもよい。
上記触媒層の材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属化合物、金属酸化物、これらの合金等が挙げられ、具体的な例としては、ラネーニッケル等のニッケル;Ni-Co、Ni-Fe、Ni-P、Ni-P-W、Ni-W-S等のニッケル合金;Co、NiCo等のスピネル系;LaCoO、La0.6Sr0.4CoO等のベロブスカイト系;鉄、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、スズ、モリブデン、及びビスマスからなる群より選択される第1の金属と、ニッケル、コバルト、銀、及び白金からなる群より選択される第2金属との合金等が挙げられる。
なかでも、上記カソード電極の触媒層は、ニッケル含む金属化合物、金属酸化物、合金等を含むことが好ましい。
上記アノード電極の触媒層は、コバルト、パラジウム、イリジウム又は白金を含む金属化合物、金属酸化物、あるいは合金等を含むことが好ましい。
上記電極の形状は、特に限定されず、シート状、棒状、角柱状等、公知の形状が挙げられるが、上記イオン透過膜との接触面積が大きく、電解効率をより一層向上することができる点で、シート状であることが好ましい。
また、上記電極の好ましい形態の一例として、電子伝導性の高い多孔性基材を含む形態も挙げられる。
上記多孔性基材としては、例えば、通常、集電体又は給電体として機能するものであることが好ましく、上記多孔性基材としては、白金系材料やニッケル系材料等の、公知の集電体又は給電体を構成する材料と同様の材料からなるものが挙げられる。
上記多孔性基材の形態としては、ウェブ、メッシュや、発泡金属、焼結金属等の多孔質金属体等が好ましく挙げられる。
上記多孔性基材は、それ自体が電極反応触媒成分を含み、電極反応触媒機能を有するものであってもよいし、上記多孔性基材の表面上に電極反応触媒成分からなる層が設けられていてもよい。なかでも、上記電極としては、上記多孔性基材と、その表面に設けられた電極反応触媒成分からなる層とを有する形態が好ましい。
上記電極反応触媒成分としては、電極の触媒成分として一般に公知の成分であれば特に限定されず、例えば、上述した触媒層の材料と同様の成分等が挙げられる。
上記電極反応触媒成分からなる層は、特に限定されず、公知の形態であればよく、例えば、上記多孔性基材の表面に、上記電極反応触媒成分が膜状又は粒子状で固着した形態であってもよいし、上記電極反応触媒成分の粒子を樹脂(バインダー)に分散させた複合体として膜状又は粒子状で固着した形態であってもよい。
上記電極の厚みは、電解効率が良好であれば特に限定されず、使用する電解装置や電解槽の設計に応じて適宜設計すればよいが、例えば、電極は効率よく電極反応を行いつつも、発生するガスを排出しやすくする必要があるため、50μm以上であることが好ましく、75μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがより好ましい。一方で電極が必要以上に厚過ぎると、電解槽も厚くなり、システム全体が必要以上に大型になってしまう。そのため、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。
上記電極は、公知の方法により適宜作製することができる。また、本発明においては、上記電極として、市販品を用いることもできる。
<他の層>
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、更に、上記イオン透過膜と電極との間に、接着剤層や第2の触媒層を有していてもよく、これらの層を介して、イオン透過膜と電極が一体化されていてもよい。
上記接着剤層は、樹脂成分と溶媒を含む接着剤組成物を用いて形成される。
上記樹脂成分としては、例えば、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)等のアニオン伝導性樹脂等が挙げられる。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の低級アルコール;テトラヒドロフラン等の極性有機溶媒;又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
上記接着剤層は、上記接着剤組成物を上記イオン透過膜又は電極に塗布して、乾燥することにより形成することができる。
上記接着剤層の厚みとしては、好ましくは10~100μm、より好ましくは10~50μmが挙げられる。
上記第2の触媒層は、触媒成分、樹脂成分、及び溶媒を含む触媒層用組成物を用いて形成される。なお、上述した電極に含まれる触媒層(「第1の触媒層」とも称する。)と上記第2の触媒層とが同じ一つの触媒層であってもよい。
上記触媒成分としては、電極の触媒成分として一般に公知の成分であれば特に限定されず、例えば、上述した電極において使用される触媒層の材料の他、白金担持カーボン(Pt/C)、等を挙げることができる。
上記第2の触媒層に使用される樹脂成分としては、例えば、上述した接着剤組成物に使用される樹脂成分と同様のものを挙げることができる。
上記溶媒としては、例えば、上述した接着剤組成物に使用される溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。
上記第2の触媒層は、上記触媒層用組成物を上記イオン透過膜又は電極に塗布して、乾燥することにより形成することができる。上記第2の触媒層の厚みとしては、好ましくは10~100μm、より好ましくは10~50μmが挙げられる。
2.電極付きアルカリ水電解用隔膜の製造方法
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜を製造する方法としては、上述の構成を有する隔膜を製造することができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法から適宜選択して行えばよく、例えば、電極及びイオン透過膜をそれぞれ作製し、接着剤組成物を用いてそれらを接合したり、あらかじめ加熱した電極とイオン透過膜とを接触させることでイオン透過膜を構成する樹脂を溶融し、電極表面層に固着(一部埋設)させて一体化させる方法や、イオン透過膜の片面に触媒成分を含む層を形成し、これに(好ましくは触媒層が形成された面側に)電極用の多孔性基材をホットプレスする方法、好ましくは更に高温で加圧する(高温圧縮)方法等の、加熱によりイオン透過膜と電極を一体化させる方法、あるいは、イオン透過膜形成用組成物を使用して電極表面に塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥又は凝固させることにより電極とイオン透過膜とが一体化した隔膜を製造する方法等が挙げられる。
後者の方法において、上記塗膜を形成する方法としては、イオン透過膜形成用組成物を電極表面に直接塗布して塗膜を形成する方法、イオン透過膜形成用組成物を電極とは異なる支持体に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を電極に転写する方法等が挙げられる。
本発明のアルカリ水電解用隔膜を製造する方法としては、具体的には、下記の工程(1)~(3)を含む方法が好ましく挙げられる。
(1)水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂を含むイオン透過膜形成用組成物を調製する工程
(2)上記イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させる工程
(3)イオン透過膜を形成する工程
以下に、各工程について説明する。
工程(1)
本発明のアルカリ水電解用隔膜を製造する方法においては、まず、イオン透過膜を形成するためのイオン透過膜形成用組成物を調製する。上記イオン透過膜形成用組成物は、上述した水酸化マグネシウム、有機高分子樹脂、及び必要に応じて溶媒を混合することにより調製される。水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂を混合する場合、水酸化マグネシウムは固形のまま混合してもよいし、溶媒に分散させた分散液(スラリー)を調製してから混合してもよいが、溶媒に分散させた分散液(スラリー)を調製してから混合することが好ましい。上記分散液(スラリー)を調製してから有機高分子樹脂と混合することで、水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂をより均一に混合することができる。これにより水酸化マグネシウムが均一に分散したイオン透過膜を作製することができるため、膜が均質となることから、膜の一部分のみが高抵抗になることを防ぐことができ、電解効率が良好なイオン透過膜を得ることができる。
上記溶媒としては、上記有機高分子樹脂を溶解し得る性質を有するものが好ましく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、水酸化マグネシウムの分散性が良好となる点で、N-メチル-2-ピロリドンが好ましい。
上記分散液中の水酸化マグネシウムの含有量は、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが更に好ましい。
水酸化マグネシウムを溶媒に分散させる方法としては、特に限定されず、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、ディスパー、サンドミル、ロールミル、ポットミル、ペイントシェーカー等を用いる方法等、公知の混合分散の手段を用いることができる。
また、上記有機高分子樹脂は、上記分散液にそのまま混合してもよいし、予め有機高分子樹脂を溶媒に溶解させて樹脂溶液を作製し、上記分散液と上記樹脂溶液を混合してもよい。なかでも、上記水酸化マグネシウムと上記有機高分子樹脂をより均一に分散・混合できる点で、上記樹脂溶液と上記分散液とを混合する方法が好ましい。これにより水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂が均一に分散したイオン透過膜を作製することができるため、膜が均質となることから、膜の一部分のみが高抵抗になることを防ぐことができ、電解効率が良好なイオン透過膜を得ることができる。
上記樹脂溶液を調製する場合に使用する溶媒としては、上記有機高分子樹脂を溶解し得る性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。なかでも、上記水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂がより均一に分散・混合できる点で、上記分散液の調製に使用した溶媒と同じ溶媒が好ましい。これにより有機高分子樹脂が均一に分散したイオン透過膜を作製することができるため、膜が均質となることから、膜の一部分のみが高抵抗になることを防ぐことができ、電解効率が良好なイオン透過膜となる。
上記樹脂溶液中の有機高分子樹脂の含有量は、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが更に好ましい。
上記混合する方法としては、上述した水酸化マグネシウムの混合分散の手段と同様の手段が挙げられる。
上記分散液と有機高分子樹脂とは、好ましくは、水酸化マグネシウム100質量部に対して、有機高分子樹脂が10~40質量部、より好ましくは12~38質量部、更に好ましくは15~35質量部になるように混合することが好ましい。
上記水酸化マグネシウムの分散液と有機高分子樹脂溶液とを混合する場合、水酸化マグネシウムの分散液中の溶媒と有機高分子樹脂溶液中の溶媒との合計含有量は、水酸化マグネシウムの分散液と有機高分子樹脂溶液の合計質量100質量%に対して、35~75質量%であることが好ましい。より好ましくは、40~70質量%であり、更に好ましくは、45~65質量%である。上記アルカリ水電解用隔膜の気孔率を好ましい範囲に調整するためにはこのような割合で溶媒を用いることが好ましい。
工程(2)
次いで、工程(1)で調製されたイオン透過膜形成用組成物と電極を接触させる。
上記イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させる方法としては、例えば、電極の表面の少なくとも一部に上記イオン透過膜形成用組成物を塗布する方法や、基材上に上記イオン透過膜形成用組成物を塗布し、塗布物上に電極を配置する方法等が挙げられる。また、上記イオン透過膜が上記多孔性支持体を含む場合は、電極の表面の少なくとも一部に上記イオン透過膜形成用組成物を塗布し、塗布物上に多孔性支持体を配置して塗布物を含浸させる方法、電極上に多孔性支持体を配置し、上記多孔性支持体の上から上記イオン透過膜形成用組成物を塗布して塗布物を含浸させる方法、基材上にイオン透過膜形成用組成物を塗布し、塗布物上に多孔性支持体を配置して塗布物を含浸させた後、当該多孔性支持体上に電極を配置する方法等が挙げられる。
なかでも、イオン透過膜と電極が十分に結合されて一体化し、耐久性に優れ、高い電解効率を有するアルカリ水電解用隔膜が得られる点で、基材上に上記イオン透過膜形成用組成物を塗布し、塗布物上に多孔性支持体を配置して塗布物を含浸させた後、当該多孔性支持体上に電極を配置する方法が好ましい。上記多孔性支持体上に電極を配置した際、上記イオン透過膜形成用組成物中に電極の一部が浸漬していてもよい。
上記イオン透過膜形成用組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、ダイコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スプレー、アプリケーター、コーター等を用いる方法等の公知の塗布手段を適用することができる。
上記基材としては、上記イオン透過膜形成用組成物を塗布して塗膜を形成することができるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等の樹脂からなるフィルム又はシート、ガラス板等が挙げられる。なかでも、原料コストが低減できる点で、ポリエチレンテレフタレートのフィルム又はシートが好ましい。
上記イオン透過膜形成用組成物の塗布量としては、特に限定されず、所望の厚みのイオン透過膜を形成できるよう適宜設定すればよい。
また、上記イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させる方法として、電極の表面の少なくとも一部に上記イオン透過膜形成用組成物を塗布する方法も好ましい。上記電極の表面の少なくとも一部に上記イオン透過膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、予め水を含浸させた電極に、上記イオン透過膜形成用組成物を塗布する方法が好ましく挙げられる。上記イオン透過膜形成用組成物は水に接触すると固化する。そのため、予め水を含ませた電極に上から上記イオン透過膜形成用組成物を塗布すると、上記イオン透過膜形成用組成物は、水が存在する電極の下部までは浸透せず、固化して電極の表面上部に留まる。この状態で、後述のように、上記イオン透過膜形成用組成物を乾燥又は凝固させることにより、電極が一部埋設したイオン透過膜を好適に形成することができる。このように、上記工程(2)が、電極に水を含浸させる工程(2-1)、及び、イオン透過膜形成用組成物を電極に塗布する工程(2-2)を含むことも好ましい実施形態の一つである。
電極に水を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、静置した電極の上から水を公知の手段で塗布する方法や、電極を水中に浸漬する方法等が挙げられる。上記水としては、特に限定されず、水道水、蒸留水、イオン交換水等のいずれも用いることができるが、イオン交換水が好ましい。
電極に水を含浸させた後、例えば後述する電極の水の充填率を調整する等のために、余剰の水を除去してもよい。すなわち、上記電極に水を含浸させる工程の後、電極に含浸した水の一部を除去する工程を有していてもよい。
電極に含浸した水の一部を除去する方法としては、特に限定されず、例えば、水を含む電極の上面を、紙等の吸水しやすい素材に接触させて吸水させる方法、圧縮空気を吹き付けて水を除去する方法、ヒーター等で加熱することによって水分を蒸発させる方法等が挙げられる。
除去する水の量が多いと、後に塗布するイオン透過膜形成用組成物が電極下部にまで浸透してしまい、電極付きアルカリ水電解用隔膜を好適に作製することができないおそれがある。
上記工程(2)において、上記イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させる際、上記電極は、水の充填率が電極の空隙100体積%に対して、10~80体積%であることが好ましく、20~60体積%であることがより好ましい。電極の水の充填率が上述した範囲であると、電極とイオン透過膜の接着状態が良好になるため、電解効率がより一層優れた上記アルカリ水電解用隔膜を得ることができる。
上記工程(2)が、例えば上述した工程(2-1)及び(2-2)を含む場合は、上記工程(2-2)において上記イオン透過膜形成用組成物を電極に塗布する際に、当該電極が上述した範囲の水の充填率を有することが好ましい。
上記水の充填率は、電極の空隙100体積%に対してどれだけの空隙(体積%)が水に置換されているかを表す。上記水の充填率は、下記式により算出することができる。
水の充填率(%)={(水含浸後の電極重量,g)-(電極の乾燥重量,g)}÷(水の比重,1g/cm)÷{(電極の体積,cm)×(電極の空隙率,%)}
なお、上記電極の空隙率は、下記式により算出できる。
電極の空隙率(%)=1-{(電極の嵩密度,g/cm)÷(電極の真密度,g/cm)}
工程(3)
上記工程(2)において上記イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させた後、次いで、イオン透過膜を形成する。上記イオン透過膜を形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、工程(2)において上記イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させた状態のものを乾燥又は水等の非溶媒に接触させて凝固させることにより、イオン透過膜を形成する方法が挙げられる。
なかでも、イオン透過性やガスバリア性に優れ、電解効率に優れた隔膜を得ることができる点で、上記イオン透過膜形成用組成物を、水等の非溶媒に接触させることにより凝固させてイオン透過膜を形成する方法(非溶媒誘起相分離法)によりイオン透過膜を形成することが好ましい。
上記イオン透過膜形成用組成物の塗布物を非溶媒に接触させることにより、塗布物中に非溶媒が拡散し、非溶媒に溶解しない有機高分子樹脂が凝固する。一方、非溶媒に溶解することができる塗布物中の溶媒は、塗布物から溶出する。このように相分離が生じることにより、有機高分子樹脂が凝固し、孔を有する膜が形成される。上記塗布物と非溶媒とを接触させる方法としては、上記塗布物を上記非溶媒中に浸漬させる方法(凝固浴)等が挙げられる。
上記非溶媒としては、上記有機高分子樹脂を実質的に溶解しない性質を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、水(蒸留水、イオン交換水);メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の低級アルコール;又はこれらの混合溶媒等が挙げられ、なかでも経済性と排液処理の観点から水が好ましく、イオン交換水がより好ましい。また上記非溶媒には、上述した成分以外に、塗膜中に含まれる溶媒と同様の溶媒を少量含んでいてもよい。
上記非溶媒の使用量は、イオン透過膜の質量100質量%、すなわち、イオン透過膜の形成に用いられるイオン透過膜形成用組成物の固形分100質量%に対して、50~10000質量%であることが好ましい。より好ましくは、100~5000質量%であり、更に好ましくは、200~1000質量%である。得られるイオン透過膜の気孔率を好ましい範囲に調整するためには、非溶媒をこのような割合で使用することが好ましい。
上記工程(3)の後、更に、凝固した膜を乾燥させて非溶媒を除去する工程を有することが好ましい。
上記乾燥条件は、特に限定されず、得られるイオン透過膜の大きさ等に応じて適宜設計すればよいが、例えば、60~80℃で、2~120分間が好ましく、5~60分間がより好ましく、10~30分間が更に好ましい。
また、予めイオン透過膜と電極をそれぞれ作製した後、これらを一体化して上記隔膜を製造する方法において、上記イオン透過膜を製造する方法としては、上記工程(2)において電極を使用しないこと以外は上述した工程(1)~(3)を含む製造方法と同様の方法が好ましく挙げられる。例えば、上記イオン透過膜形成用組成物を基材上に塗布したもの、又は、上記多孔性支持体に上記イオン透過膜形成用組成物を含浸させたものを乾燥又は上記非溶媒と接触させて凝固させることにより、上記イオン透過膜を形成することができる。
電極を加熱して、イオン透過膜と接触させて一体化させる場合、電極の加熱温度は、上記イオン透過膜に含まれる樹脂成分の融点以上であることが好ましく、例えば、200℃以上、より好ましくは200~300℃である。
接着剤組成物を用いてイオン透過膜と電極とを接着させる場合は、イオン透過膜又は電極の片面に接着剤組成物を塗布して、塗布物に電極又はイオン透過膜を接触させて乾燥させることにより、電極とイオン透過膜を一体化させることができる。上記接着剤組成物としては、上述した接着剤組成物が挙げられる。上記接着剤組成物の塗布量は、適宜設定すればよい。乾燥条件は特に限定されないが、温度は50~100℃であることが好ましく、80~100℃であることがより好ましい。乾燥時間は1~10分間であることが好ましく、1~5分間であることがより好ましい。
イオン透過膜又は電極に触媒層を形成した後、形成された触媒層に電極又はイオン透過膜を接触させてホットプレスして一体化する場合、温度は200~300℃であることが好ましく、220~280℃であることがより好ましい。また圧力は0.01~3MPaであることが好ましく、0.05~2MPaであることがより好ましい。
以上の方法により、本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜を容易に製造することができる。
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、電極間の距離を小さくして電気抵抗を小さくすることができ、また、イオン透過性、ガスバリア性に優れた隔膜を有するので、優れた電解効率を有する。また、耐高温性や耐アルカリ性を有し、耐久性にも優れる。そのため、本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、イオン透過性、ガスバリア性、耐久性、高い電解効率等を必要とする用途に用いることができ、特にアルカリ水電解用の隔膜として好適に用いることができる。
3.水電解装置
本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、水電解装置に使用することができる。上述した電極付きアルカリ水電解用隔膜を備える水電解装置もまた、本発明の一つである。
本発明の水電解装置は、上述した電極付きアルカリ水電解用隔膜を含む限りは、当該技術分野において公知の必要とされる他の部材を含んでもよく、それらは適宜配置される。本発明の水電解装置は、上述した電極付きアルカリ水電解用隔膜、及び、電解槽を含むことが好ましい。
上記電極付きアルカリ水電解用隔膜が、カソード電極又はアノード電極のいずれか一方を含むものである場合は、上記水電解装置は、更に、その対となる電極を含むことが好ましい。
上記水電解装置の具体的な構成の例としては、例えば、上記アルカリ水電解用隔膜が、カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜である場合、上記水電解装置は、電解槽内に、上記アルカリ水電解用隔膜を配置し、上記隔膜のカソード電極が付着した側の面とは反対側の面側又は面上に、アノード電極を配置した構成が挙げられる。上記アルカリ水電解用隔膜は、当該隔膜を介してカソード電極室とアノード電極室が隔離されて形成されるように電解槽内に設置することが好ましい。
また、上記水電解装置は、水(電解液)を注入するための注入口や、発生した酸素や水素ガスを放出する放出口等を備えていてもよい。
(電解方法)
本発明の水電解装置を用いて行う水の電気分解の方法としては、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、本発明の水電解装置において、電極の少なくとも一部が浸漬するように電解槽内に電解液を充填し、電解液中で電流を印加することにより行うことができる。
上記電解液としては、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等の電解質を溶解したアルカリ性水溶液が好ましく用いられる。上記電解液における電解質の濃度は、特に限定されないが、電解効率がより一層向上し得る点で、20~40質量%であることが好ましい。
また、電気分解を行う場合の温度としては、電解液のイオン電導性がより向上し、電解効率がより一層向上し得る点で、40~120℃が好ましく、50~120℃がより好ましく、80~100℃が更に好ましい。電流の印加条件は、公知の条件・方法で行うことができ、通常0.2A/cm以上、好ましくは0.3A/cm以上である。印可する電流密度が高い方が、短時間に多くの水素、酸素を得ることができるため効率的に水素を生産できる。しかし、電流密度が高すぎる場合、発生する水素、酸素がイオン透過膜や電極に付着して反応を阻害したり、電極反応抵抗により、過電圧が高くなるため、電解電圧が高くなり、電気分解をするのに必要な電力量が大きくなり、電解効率が悪くなる。このため、電解電圧が約2Vとなるように、例えば1.5~2.5Vを超えない範囲で、電流密度が高くなるように調整されることが好ましい。
以上のとおり、本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、電解効率に優れるものである。本発明の電極付きアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ水電解用の隔膜として、特に好適に使用される。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例において、電気特性の評価を下記方法により行った。
(電気特性の評価)
得られたカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜のアルカリ水電解評価を以下のように行った。アノード電極には3cm×3cmに切り出した白金メッシュ(ニラコ社製、品番PT-358056/55メッシュ)を使用した。上記白金メッシュを、得られたカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜において、カソード電極が設けられた面とは反対側の面に、イオン透過膜に接するように当て、電解槽を組み立てる際にずれないように、白金メッシュの四隅とイオン透過膜を、アルカリ水溶液中で溶解するノリ(トンボ鉛筆社製、消えいろPIT)で固定した。上記隔膜によってカソード電極室とアノード電極室が仕切られるように、電解槽を組み立てた。電解液として、濃度30重量%の水酸化カリウム水溶液を用いた。
まず、電解液で電解槽を満たした後、循環と加温を行って、電解槽に流入する直前に設置した温度計による液温が40℃になるように調整を行った。電解液が40℃に達し、30分以上経過した後に電流密度を0.3A/cm、定電流密度にて10分間連続して印加した。その後、電流密度を0.5A/cmに増加させ、1分ごとの電圧を記録し、収集した連続する5点の電圧が、5点の平均値の±3%以内に安定するまで保持した。電圧の安定が確認できた後、1分ごとに10点の電圧測定を行い、測定値10点の平均値を算出した。
また、得られたアノード電極付きアルカリ水電解用隔膜のアルカリ水電解評価については、カソード電極としてニッケルメッシュを使用したこと以外は、上記と同様の方法で、電気特性の評価を行った。
<実施例1>
(水酸化マグネシウム分散液の調製)
水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、品番200-06H、平均粒子径0.54μm、アスペクト比3.52、(110)面に垂直な方向の結晶子径70.7nm)とN-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)を質量比1:1となるよう混合し、ジルコニアメディアボールを入れたポットミルにて、室温で6時間分散処理を行うことにより水酸化マグネシウム分散液を調製した。
(ポリスルホン樹脂溶解液の調製)
ポリスルホン樹脂(PSU)(BASF社製、品番ウルトラゾーンS3010)とN-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬社製)を質量比3:7となるように混合し、ポリスルホン樹脂溶解液を調製した。具体的には、セパラフラスコの中に目的の量となるように計量したN-メチル-2-ピロリドンを入れ、撹拌翼により撹拌を行いながら液温が80℃になるように加温した。液温が80℃に到達した後、樹脂を目的量の1/4投入して溶解させた。目視によりポリスルホン樹脂の溶解が確認出来たら、再度1/4投入して溶解し、この操作を繰り返して、目的量溶解させた。目視により目的量のポリスルホン樹脂の、溶解が確認出来た後、1時間にわたって80℃を保持しつつ撹拌をし続け、その後の常温まで冷却を行い、ポリスルホン樹脂溶解液を調製した。
(イオン透過膜形成用組成物の調製)
上記で得られた水酸化マグネシウム分散液とポリスルホン樹脂溶解液とを、水酸化マグネシウムの量100質量部に対してポリスルホン樹脂が33質量部になるように計量し、自転公転ミキサー(シンキー社製、品番あわとり練太郎ARE-500)にて室温で1000rpmで約10分間混合した。得られた混合液をSUSの200メッシュで濾過することで、イオン透過膜形成用組成物の塗液を得た。
(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)
カソード電極として、ニッケルメッシュ(ニラコ社製、品番NI-318040/40メッシュ、線径約150μm)を使用し、電極と隔膜を複合化(一体化)した隔膜を下記の方法で作製した。まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、アプリケーターにて上記で得られたイオン透過膜形成用組成物の塗液を、乾燥後の塗液の秤量値が約12.0mg/cmとなるよう塗布し、塗布物の上にポリプロピレン不織布(日本バイリーン社製、品番OA16728F、厚み160μm、大きさ6×6cmに切り出したもの)を接触させ、上記不織布の上に更に3cm×3cmに切り出したニッケルメッシュを接触させ、上記不織布は完全に含浸し、ニッケルメッシュの一部は表面に露出した状態となるよう塗液を含浸させた。その後、塗液を含浸させた不織布・ニッケルメッシュ複合体を、PETフィルムごと室温にて10分間水浴させて、塗液を凝固させて膜を形成し、次いで、水中でPETフィルムから、不織布・ニッケルメッシュ複合体を剥離した。水浴後、得られた不織布・ニッケルメッシュ複合体を、乾燥機にて80℃で、30分間乾燥させ水分を除去した。乾燥後、複合化されているニッケルメッシュ(3cm×3cm)と中心が同じになるように5cm×5cmに切り出し、不織布、水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含むイオン透過膜と、ニッケルメッシュの電極との複合体からなる電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みを、マイクロメータ(ミツトヨ社製、型式:MDC-25MX)で計測したところ、300μmであった。
得られた電極付きアルカリ水電解用隔膜について、上記の方法で電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1の(ポリスルホン樹脂溶解液の調製)において、ポリスルホン樹脂の代わりに、ポリエーテルスルホン(PESU)(BASF社製、ウルトラゾーンE3010)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、実施例1と同様の方法により、電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1の(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)において、ポリプロピレン不織布の代わりに、ポリフェニレンサルファイド不織布(東レ社製、製品名トルコンペーパー#100、厚み200μm、秤量100g/m)を使用した以外は実施例1と同様の方法でカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、実施例1と同様の方法により、電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1の(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)において、ニッケルメッシュの代わりにニッケルエキスパンドメタル(網目寸法:SW=1mm、LW=2mm、t=0.2mm)を使用した以外は実施例1と同様の方法でカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、実施例1と同様の方法により、電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例1の(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)を以下の方法で行った。
まず、PETフィルム上に3cm×3cmに切り出したニッケルメッシュを重ねた。その上にポリプロピレン不織布(日本バイリーン社製、品番OA16728F、厚み160μm、大きさ6×6cmに切り出したもの)を重ね、その上から、アプリケーターにて塗液を、乾燥後の塗液の秤量値が約12.0mg/cmとなるよう塗布し、塗液を含浸させた。その後、塗液を含浸させた不織布・ニッケルメッシュ複合体を、PETフィルムごと、室温にて10分間水浴させることによって、塗液を凝固させて膜を形成し、水中でPETフィルムから作製した膜を剥離した。水浴後、得られた膜を、乾燥機にて80℃で、30分間乾燥させて、不織布、水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含むイオン透過膜と、ニッケルメッシュの電極との複合体からなる、カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、実施例1と同様の方法により、電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例6>
(アノード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)
ニッケルメッシュをアノード電極として使用した以外は、実施例1と同様の方法により、イオン透過膜とニッケルメッシュの電極との複合体からなる、アノード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により、電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例7>
(アノード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)
ニッケルメッシュをアノード電極として使用した以外は、実施例3と同様の方法により、イオン透過膜とニッケルメッシュの電極との複合体からなる、アノード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例8>
実施例1の(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)において、ポリプロピレン不織布の代わりに、ポリフェニレンサルファイド不織布(東レ社製、製品名トルコンペーパー#40、厚み87μm、秤量40g/m)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは240μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例9>
以下の方法により、不織布を含まないイオン透過膜と、電極との複合体からなるカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。
すなわち、まず、実施例1と同様の方法で、イオン透過膜形成用組成物を調製した。
次いで、平滑なガラス基板上に静置したニッケルメッシュ(10cm×10cm)の上面に、水を10gスポイトで滴下して塗布し含浸させた。次いで、紙製ウェス(日本製紙クレシア社製、キムワイプS-200、12cm×21.5cm)を、上記ニッケルメッシュの上面に接触させた状態で、ゴム製ローラーで押さえて吸水させることにより、上記ニッケルメッシュ上面の余分な水を除去した。この吸水操作を、その都度新しい紙製ウェスを用いて5回行った。その結果、ニッケルメッシュの水の充填率は、ニッケルメッシュの空隙100体積%に対して40体積%であった。
その後、上記ニッケルメッシュの上面に、イオン透過膜形成用組成物を、アプリケーターにて、乾燥後の塗液の秤量値が約12.0mg/cmとなるよう塗布した。そして、水と塗液を含浸させたニッケルメッシュを、室温にて10分間水浴させることにより、塗液を凝固させて膜を形成した。膜が形成されたニッケルメッシュを、乾燥機にて80℃で30分間乾燥させて水分を除去した後、3cm×3cmに切出し、イオン透過膜と、電極との複合体からなるカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは190μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例10>
(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)において、乾燥後の塗液の秤量値が約6.0mg/cmとなるように塗布したこと以外は、実施例3と同様の方法により、カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは200μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例11>
以下の方法により、不織布を含むイオン透過膜と、電極との複合体からなるカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。
まず、実施例1と同様の方法で、イオン透過膜形成用組成物を調製した。
次いで、ポリフェニレンサルファイド不織布(東レ社製、製品名トルコンペーパー#100、厚み200μm、秤量100g/m)に、イオン透過膜形成用組成物の塗液を、乾燥後の塗液の秤量値が約12.0mg/cmとなるようアプリケーターで直接塗布した後、塗液が含浸した不織布を室温にて10分間水浴させ、塗液を凝固させて膜を形成した。水浴後、上記膜が形成された不織布を、乾燥機にて80℃で、30分間乾燥させて水分を除去し、6cm×6cmに切出して、上記不織布、水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含むイオン透過膜を得た。そして、カソード電極としてニッケルメッシュ(3cm×3cm)を200℃に加熱し、これを中心が同じになるように上記イオン透過膜に接触させて、ニッケルメッシュを融着させることにより、イオン透過膜と電極との複合体からなるカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例12>
実施例11と同様の方法により、イオン透過膜(6cm×6cm)を作製した。また、白金担持カーボン(TEC10E50E、田中貴金属工業社製)40部、アニオン伝導性樹脂(ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド))2部、及び、溶媒(1-プロパノール:テトラヒドロフラン=1:1(質量比))94部を混合して、触媒層形成用組成物を調製した。
そして、上記触媒層形成用組成物を、上記イオン透過膜の片面の中心3cm×3cmに、乾燥後の秤量値が0.5mg/cmとなるようアプリケーターで塗布し、80℃、10分間で乾燥させることにより、触媒層を形成した。そして、カソード電極としてニッケルメッシュ(3cm×3cm)を250℃に加熱し、これをイオン透過膜上に形成された触媒層の表面に、中心が同じになるように接触させて、ホットプレス機を用いて0.5MPaで加圧して接着させることにより、イオン透過膜と電極との複合体からなるカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例13>
実施例11と同様の方法により、イオン透過膜(6cm×6cm)を作製した。また、アニオン伝導性樹脂(ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド))2部と溶剤(1-プロパノール:テトラヒドロフラン=1:1(質量比))98部を混合して接着剤組成物を得た。上記イオン透過膜の片面の中心3cm×3cmに、上記接着剤組成物を、乾燥後の秤量値が0.5mg/cmとなるようアプリケーターにて塗布し、塗布物上に、カソード電極としてニッケルメッシュ(3cm×3cm)を、イオン透過膜と中心が同じになるように配置した後、100℃で1分間乾燥させてニッケルメッシュを接着させることにより、カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例14>
水酸化マグネシウム(平均粒径0.2μm)を使用したこと以外は、実施例10と同様の方法によりカソード電極付きアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜のイオン透過膜の厚みは300μmであった。得られた隔膜について、上記の方法により電気特性の評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1の(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)において、ニッケルメッシュを使用せず、アルカリ水電解用隔膜の作製を以下の方法で行った。
PETフィルム上に、アプリケーターにて塗液を、乾燥後の塗液の秤量値が約12.0mg/cmとなるよう塗布し、その上にポリプロピレン不織布(日本バイリーン社製、品番OA16728F、厚み160μm、大きさ6×6cmに切り出したもの)を接触させ、塗液を含浸させた。その後、塗液を含浸させた不織布を、PETフィルムごと、室温にて10分間水浴させることによって、塗液を凝固させて膜を形成し、水中でPETフィルムから作製した膜を剥離した。水浴後、得られた膜を、乾燥機にて80℃で、30分間乾燥し、不織布と水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含む膜との複合体からなるアルカリ水電解用隔膜を得た。すなわちニッケルメッシュとの複合化を行わずに、イオン透過膜のみからなるアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜の厚みは300μmであった。
また、(電気特性の評価)において、上記で得られたアルカリ水電解用隔膜の片面に、カソードとして3cm×3cmに切り出したニッケルメッシュを、反対の面にアノード電極として3cm×3cmに切り出した白金メッシュをそれぞれ当て、電解槽を組み立てる際にずれないように、ニッケルメッシュ、白金メッシュのそれぞれの四隅とイオン透過膜を、アルカリ水溶液中で溶解するノリ(トンボ鉛筆社製、消えいろPIT)で固定し、電解槽を組み立て、アルカリ水電解評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例3の(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)において、ニッケルメッシュを使用せず、アルカリ水電解用隔膜の作製を以下の方法で行った。
PETフィルム上に、アプリケーターにて塗液を、乾燥後の塗液の秤量値が約12.0mg/cmとなるよう塗布し、その上にポリフェニレンサルファイド不織布(東レ社製、製品名トルコンペーパー#100、厚み200μm、秤量100g/m)を接触させ、塗液を含浸させた。次いで、塗液を含浸させた不織布を、PETフィルムごと、室温にて10分間水浴させることによって、塗液を凝固させて膜を形成し、水中でPETフィルムから作製した膜を剥離した。水浴後、得られた膜を、乾燥機にて80℃で、30分間乾燥し、不織布と水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含む膜との複合体からなるアルカリ水電解用隔膜を得た。すなわちニッケルメッシュとの複合化を行わずに、イオン透過膜のみからなるアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜の厚みは300μmであった。
また、(電気特性の評価)において、上記で得られたアルカリ水電解用隔膜の片面に、カソード電極として3cm×3cmに切り出したニッケルメッシュを、反対の面にアノード電極として3cm×3cmに切り出した白金メッシュをそれぞれ当て、電解槽を組み立てる際にずれないように、ニッケルメッシュ、白金メッシュのそれぞれの四隅とイオン透過膜を、アルカリ水溶解液中で溶解するノリ(トンボ鉛筆社製、消えいろPIT)で固定して、電解槽を組み立て、アルカリ水電解評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例3>
実施例1の(カソード電極付きアルカリ水電解用隔膜の作製)において、ニッケルメッシュを使用せず、アルカリ水電解用隔膜の作製を以下の方法で行った。
PETフィルム上に、アプリケーターにて塗液を、乾燥後の塗液の秤量値が約12.0mg/cmとなるよう塗布し、その上にポリプロピレン不織布(日本バイリーン社製、品番OA16728F、厚み160μm、大きさ6×6cmに切り出したもの)を接触させ、塗液を含浸させた。その後、塗液を含浸させた不織布を、PETフィルムごと、室温にて10分間水浴させることによって、塗液を凝固させて膜を形成し、水中でPETフィルムから作製した膜を剥離した。水浴後、得られた膜を、乾燥機にて80℃で、30分間乾燥し、不織布と水酸化マグネシウム及びポリスルホン樹脂を含む膜との複合体からなるアルカリ水電解用隔膜を得た。すなわちニッケルメッシュとの複合化を行わずに、イオン透過膜のみからなるアルカリ水電解用隔膜を得た。得られた隔膜の厚みは300μmであった。
また、(電気特性の評価)において、上記で得られたアルカリ水電解用隔膜の片面に、カソード電極として3cm×3cmに切り出したニッケルメッシュを、反対の面にアノード電極として3cm×3cmに切り出したニッケルメッシュをそれぞれ当て、電解槽を組み立てる際にずれないように、カソード電極、アノード電極としてのそれぞれのニッケルメッシュの四隅とイオン透過膜を、アルカリ水溶液中で溶解するノリ(トンボ鉛筆社製、消えいろPIT)で固定し、電解槽を組み立て、アルカリ水電解評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例及び比較例において電極として使用したニッケルメッシュ、白金メッシュは、いずれも下記のとおりである。
ニッケルメッシュ:ニラコ社製、品番NI-318040/40メッシュ、線径約150μm
白金メッシュ:ニラコ社製、品番PT-358056/55メッシュ
Figure 0007148645000001
表1より、実施例のイオン透過膜とカソード電極が複合化(一体化)した隔膜を用いた場合の方が、比較例の複合化(一体化)していない隔膜を用いた場合より、電極の一部がイオン透過膜に埋設されているため電極間の距離が小さくなり、セル電圧の値が小さくなることから、電気抵抗が小さく、電解効率に優れることが確認された。
1 電極付きアルカリ水電解用隔膜
2 イオン透過膜
3 電極
4 カソード電極
5 アノード電極

Claims (11)

  1. 水酸化マグネシウム及び有機高分子樹脂を含むイオン透過膜に、電極が一体化してなり、
    該一体化とは、イオン透過膜と電極に対し機械的な作用力を施さない状態で、一体となっている形態を保持できる状態である
    ことを特徴とする電極付きアルカリ水電解用隔膜。
  2. 前記水酸化マグネシウムは、平均粒子径が0.05~2.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜。
  3. 前記有機高分子樹脂は、芳香族炭化水素系樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜。
  4. 前記イオン透過膜は、前記水酸化マグネシウム100質量部に対して有機高分子樹脂を10~40質量部含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜。
  5. 前記イオン透過膜は、更に、多孔性支持体を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜。
  6. 前記イオン透過膜は、多孔性支持体を含まないことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜。
  7. 前記多孔性支持体は、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む、不織布、織布、又はメッシュであることを特徴とする請求項5又は6に記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜を備えることを特徴とする水電解装置。
  9. 水酸化マグネシウム及び有機高分子樹脂を含むイオン透過膜に、電極が一体化してなる電極付きアルカリ水電解用隔膜の製造方法であって、
    該一体化してなるとは、イオン透過膜と電極に対し機械的な作用力を施さない状態で、一体となっている形態を保持できる状態であり、
    該水酸化マグネシウムと有機高分子樹脂を含むイオン透過膜形成用組成物を調製する工程(1)と、
    該イオン透過膜形成用組成物と電極を接触させる工程(2)と、
    該イオン透過膜を形成する工程(3)を含む
    ことを特徴とする電極付きアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  10. 前記工程(2)は、
    電極に水を含浸させる工程(2-1)、及び、
    該電極にイオン透過膜形成用組成物を塗布する工程(2-2)
    を含むことを特徴とする請求項9に記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
  11. 前記工程(2)において、前記イオン透過膜形成用組成物を接触させる電極の水の充填率は、電極の空隙100体積%に対して、10~80体積%であることを特徴とする請求項9又は10に記載の電極付きアルカリ水電解用隔膜の製造方法。
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