JP7146988B1 - GaAsウエハの製造方法およびGaAsウエハ群 - Google Patents
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Abstract
Description
まず、任意の方法で作製されたGaAsインゴットの周面を研削して凹凸を整えると同時に、GaAsインゴットの周面に、例えば結晶方位を示す仮のオリエンテーションフラットを形成する。研削方法は特に限定されないが、周面の研削には円筒研削盤を用いた円筒研削等の手法を用いることができ、仮のオリエンテーションフラットの形成には円筒研削盤を用いたトラバース研削等の手法を用いることができる。
GaAsウエハを得るためのGaAsインゴットとしては、引き上げ(LEC)法、横型ボート(HB)法、縦型温度傾斜(VGF)法および縦型ブリッジマン法(VB)法等の任意の製造方法により得られた単結晶GaAsインゴットを用いることができる。GaAsインゴットの径は限定されないが、本発明では、素材ウエハの周面から一定の間隔を隔ててオリエンテーションフラットを形成するため、最終的に得られる所望のGaAsウエハの直径に対して10mm以上大きいことが好ましい。
仮のオリエンテーションフラットは、オリエンテーションフラットの設定方位に対して、相対的な位置の指標となればよい。従って、方位は特に限定されないが、オリエンテーションフラットの設定方位に対して平行または垂直の方位に形成することが好ましい。
上記研削工程で仮のオリエンテーションフラットを形成したGaAsインゴットに対して、ワイヤーソー等のスライサーによって複数の素材ウエハを切り出す。このとき、単結晶の成長方向に対して、一定のオフ角を有し、かつ、切り出すウエハ間においては同一のオフ角を有するようにスライスを行う。なお、オフ角は、ウエハの半導体部品への用途などに応じて、任意に設定することができる。また、ここで言う「同一のオフ角」とは、製造工程上不可避な誤差をはじめ、本発明の作用効果を奏する範囲で許容される誤差を含むものとする。
上述のとおり、オフ角の角度は特に限定されないが、例えばGaAsウエハを積層基板の下地として用いる場合に、その上部に成長させる層の結晶性を良好にするためには、オフ角は0.2°以上が好ましく、1°以上がより好ましく、また15°以下が好ましい。ここでオフ角の向きは、オリエンテーションフラットと水平以外の向きに形成する(ウエハの主面とOF面との成す角度が90°にならない向きにする)ものであれば特に限定されない。例えば、図2に示すようにOF面が(0-1-1)面の場合、(100)面を(011)に向けて傾斜(すなわち(100)面に直交する垂線<100>を<011>方向に向かって傾斜)させたオフ角を有しても良く、(0-1-1)面に向けて傾斜(すなわち(100)面に直交する垂線<100>を<0-1-1>方向に向かって傾斜)させたオフ角を有しても良い。そして図2において、OF面が(0-1-1)面の場合に、例えば(100)面を(0-11)や(01-1)に向けて傾斜させたオフ角を有した場合、オフ角に関わらずウエハの主面とOF面との成す角度は90°のままであるため、オフ角の向きをオリエンテーションフラットと水平の向きとすることは除外する。OF面が(0-1-1)面以外の面の場合も同様である。ちなみに、一定のオフ角を有するようにスライスされた素材ウエハは、切り出す前のGaAsインゴットにおける水平面での断面の形状とは異なり、厳密には楕円形状となる。しかし、通常用いられるウエハサイズおよびオフ角においては、オフ角を有しないで切り出した素材ウエハと比較しても、規格に影響する程のサイズ差は生じない。
GaAsウエハの主面とオリエンテーションフラットを形成する面(以下、OF面とも示す)との成す角度とは、図2に示すように、GaAsウエハの主面をxy平面とし、主面鉛直方向をz軸としたとき、OF面をy軸と平行に取った場合のxz断面におけるのGaAsウエハの主面とOF面との成す角度である。例えば、OF面が(0-1-1)面の場合に上記オフ角が(100)面から(011)に向けて0.2°の角度である場合に、この角度は89.8°となり、オフ角を(0-1-1)面に向けて傾斜させた場合は90.2°となる。この角度はオフ角に起因して形成される角度であり、90°以外の角度であり、75.0°以上89.8°以下であることが好ましく、また90.2°以上105.0°以下であることが好ましい。さらに、75.0°以上89.0°以下または91.0°以上105.0°以下であることがより好ましい。図2(A)はオフ角がない場合(justとも記載する)にウエハの主面とOF面とが成す角度が90°となることを示し、図2(B)は(011)に向けて3°のオフ角がある場合にウエハの主面とOF面とが成す角度が87°(オフ角を(0-1-1)面に向けて傾斜させた場合は93°)となることを示す。そして、このウエハ主面とOF面との成す角度が90°から離れるほど、オリエンテーションフラットの方位安定性が悪くなるのがこれまでの技術常識であったところ、本発明の製造方法を用いることで優れた方位安定性を有するオリエンテーションフラットを形成することができるようになる。OF面が(0-1-1)面以外の面の場合も同様である。
次に、上記の素材ウエハにオリエンテーションフラットを形成する。すなわち、図3に示すように、素材ウエハ100に仮のオリエンテーションフラット110を基準にして劈開を誘導する罫書き150を施し、その罫書き150を起点として素材ウエハ100を劈開させることによりオリエンテーションフラット120を形成する。ここで、罫書き150を形成する方位は仮のオリエンテーションフラット110との相対的な位置関係をもとに決定すればよく、(0-1-1)、(0-11)、(01-1)、(011)等いずれの方位でもよく、またその他の方位であってもよい。具体的には、罫書き150を形成した後、罫書き150の線を広げる向きに力を加えることで、罫書き150を起点として劈開が伝播して劈開面が形成され、オリエンテーションフラット120が形成される。このとき、劈開の中点から素材ウエハ100の半径方向外側に向かって前記素材ウエハ100の周面まで垂直に延ばした線分の長さが9mm以上となるように罫書き150を形成する。実際の作業工程においては、図4(A)に示す、仮のオリエンテーションフラット110とオリエンテーションフラット120が並行である方が作業者にとって分かりやすい。一方、図4(B)に示す、仮のオリエンテーションフラット110とオリエンテーションフラット120が90°の位置関係にある場合には、べべリングにより研削する領域を小さくすることができる。なお、劈開工程における罫書きの形成および劈開は任意の器具または製造装置を用いて実施することができる。
本発明における間隔Aについて、図4(A)および図4(B)を例示して説明する。まず、図4(A)のように、仮のオリエンテーションフラット110に対して平行な方位にオリエンテーションフラット120を形成する場合には、劈開の中点から前記素材ウエハ100の半径方向外側に向かって素材ウエハ100の周面まで垂直に延ばした線分の長さは、仮のオリエンテーションフラット110からオリエンテーションフラット120に下した垂線の長さとなる。また、図4(B)のように仮のオリエンテーションフラット110に対して垂直な方位にオリエンテーションフラット120を形成する場合には、劈開を弦としたときの矢高が、劈開の中点から素材ウエハ100の半径方向外側に向かって素材ウエハ100の周面まで垂直に延ばした線分の長さとなる。
オリエンテーションフラットを形成された素材ウエハは、その周面に回転砥石を用いるべべリングを施して、ウエハエッジを研削してエッジを整形してもよい。べべリングすることにより、ウエハの周面に面取り加工を施して、以後のプロセスでの割れを防止するとともに、ウエハの直径を所定の大きさに成形することができる。また、本発明において劈開により形成するオリエンテーションフラットは、所期した結晶面が精度よく露出しているため、べべリングは避ける必要がある。
本明細書におけるOF方位精度とは、オリエンテーションフラットを形成する予定だった結晶面からのズレをX線回折手法により角度(°)として表したものである。このとき、1つのウエハにおいては、後述の実施例および図5で示す通り、オリエンテーションフラットの所定の3か所(オリエンテーションフラットの中央部と、中央部からOF全長の30%~46%程度離れた位置)でOF方位精度を測定した。さらに、複数のウエハにおける全ての測定値について標準偏差を求めた。以下の実施例ではインゴットから均等間隔に抜き出した代表する複数のウエハについて測定しているが、GaAsウエハ群のOF方位精度の測定では同一のGaAsインゴットにおいてオリエンテーションフラットの劈開工程を経ている全てのGaAsウエハについて測定することが好ましい。GaAsウエハ群におけるOF方位精度の測定は50枚以上のウエハにおいて実施することが好ましい。以上のOF方位精度およびその標準偏差は、上記した本発明の製造方法に従って作製されるGaAsウエハ群において、OF方位精度(全ての測定値)の平均値が±0.010°以内およびOF方位精度の標準偏差が0.009°以下である。OF方位精度の標準偏差は0.005°以下であることがより好ましい。OF方位精度の標準偏差が小さいほど、インゴット内でのウエハ相互間におけるOF方位精度のバラつきが小さく、OF方位精度が±0.020°を超える測定箇所が発生する可能性は低くなる。
直径164.0mmの単結晶GaAsインゴットを用意して、内周刃スライサーによりコーン部とテール部をカットし、円筒研削によりGaAsインゴットの直径が161.5mmとなるように研削した。
そして、X線装置(円筒研削機:(株)東京精機工作所のCSN-7015型NC円筒研削盤(NC3軸)に搭載された株式会社リガクの「GaAsインゴットオリフラ面測定装置 GaAs-GOX(TSKK Ver.)」)を用いて円筒研削したGaAsインゴットの(0-1-1)の方位を確定し、トラバース研削することにより、長さ15mmとなる仮のオリエンテーションフラットを形成した。
実施例1におけるOF方位精度の評価は以下のようにして行った。得られたGaAsウエハに対して、予定されたOF結晶面(0-1-1)に対するOF方位精度(°)をX線回折測定(株式会社リガク製 2991F2)により求めた。具体的には、図5に示すように、OF面にX線を照射しながら、OF面を基準としてウエハを黒矢印方向へと任意に回転させた。そして、予定されるOF面の結晶面に対してBragg回折が起こる回転角度を比較することにより、物理面からの結晶面のずれ量を算出し、これをOF方位精度とした。例えば、OF面の面方位が(0-1-1)であった場合、θ=22.5゜、2θ=45゜であることから、この角度からのずれ量がOF方位精度となる。実施例1におけるOF全長は約50mmであり、OFの中央部(図5のb)と、OFの中央部からそれぞれ20mm離れた点(図5のa、c)の計3か所をOF方位精度の測定位置とした。
間隔Aが10mmとなるように罫書きを形成した以外は、実施例1と同様にしてGaAsウエハを作製し、得られたオリエンテーションフラットのOF方位精度を代表する5枚のウエハについて測定した。
間隔Aが9mmとなるように罫書きを形成した以外は、実施例1と同様にしてGaAsウエハを作製し、得られたオリエンテーションフラットのOF方位精度を代表する5枚のウエハについて測定した。
得られたGaAsウエハ群102枚から50枚毎に等間隔となる1枚を選択し、合計3枚のウエハを代表させて測定と行った。間隔Aが8mmとなるように罫書きを形成した以外は、実施例1と同様にしてGaAsウエハを作製し、得られたオリエンテーションフラットのOF方位精度を測定した。
得られたGaAsウエハ群102枚から50枚毎に等間隔となる1枚を選択し、合計3枚のウエハを代表させて測定を行った。間隔Aが6mmとなるように罫書きを形成した以外は、実施例1と同様にしてGaAsウエハを作製し、得られたオリエンテーションフラットのOF方位精度を測定した。
110 仮のオリエンテーションフラット
120 オリエンテーションフラット
150 罫書き
Claims (13)
- GaAsインゴットの周面に、仮のオリエンテーションフラットの形成を含む研削を行う研削工程と、
前記研削工程を経たGaAsインゴットにスライス加工を施してオフ角を有する素材ウエハを切り出すスライス工程と、
前記素材ウエハに、前記仮のオリエンテーションフラットを基準にして定めるオリエンテーションフラットの向きに従って罫書きを施し、該罫書きを起点として前記素材ウエハの周面まで延びる劈開を行って、オリエンテーションフラットを形成する劈開工程と、を含み、
前記劈開工程は、前記劈開の中点から前記素材ウエハの半径方向外側に向かって前記素材ウエハの周面まで垂直に延ばした線分の長さ(間隔A)が9mm以上である位置に劈開を行う工程である、
GaAsウエハの製造方法。 - 前記間隔Aが12mm以上である、
請求項1に記載のGaAsウエハの製造方法。 - 前記オフ角が0.2°以上である、
請求項1または2に記載のGaAsウエハの製造方法。 - 前記GaAsウエハの主面と前記オリエンテーションフラットを形成する面との成す角度が89.8°以下または90.2°以上である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のGaAsウエハの製造方法。 - 前記GaAsウエハの直径が100mm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のGaAsウエハの製造方法。
- 前記GaAsウエハの直径が150mm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のGaAsウエハの製造方法。
- 前記劈開工程の後に、さらに前記オリエンテーションフラット以外の前記GaAsウエハの周面をべべリングするべべリング工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のGaAsウエハの製造方法。
- 同一のGaAsインゴットから得られる同一のオフ角を有する複数のGaAsウエハによって構成され、オリエンテーションフラットの劈開工程を経た全ての、劈開面からなるオリエンテーションフラットを有するGaAsウエハによって構成されるGaAsウエハ群であって、
前記GaAsウエハ群のオリエンテーションフラット方位精度の平均値が±0.010°以内および前記GaAsウエハ群のオリエンテーションフラット方位精度の標準偏差が0.009°以下であり、
前記GaAsウエハの主面と前記オリエンテーションフラットを形成する面との成す角度が89.8°以下または90.2°以上である、
GaAsウエハ群。 - 前記オフ角が0.2°以上である、請求項8に記載のGaAsウエハ群。
- 前記GaAsウエハ群のオリエンテーションフラット方位精度の平均値が±0.010°以内および前記GaAsウエハ群のオリエンテーションフラット方位精度の標準偏差が0.005°以下である、
請求項8または9のいずれか1項に記載のGaAsウエハ群。 - 前記GaAsウエハ群のオリエンテーションフラット方位精度が±0.020°以内である、
請求項8~10のいずれか1項に記載のGaAsウエハ群。 - 前記GaAsウエハの直径が、全て100mm以上である、
請求項8~11のいずれか1項に記載のGaAsウエハ群。 - 前記GaAsウエハの直径が、全て150mm以上である、
請求項8~11のいずれか1項に記載のGaAsウエハ群。
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