JP7144153B2 - 硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
[1]不飽和ポリエステル樹脂(A)と、下記要件(b-1)~(b-3)を満たすα-オレフィン(共)重合体(B)を含有する硬化性樹脂組成物。
(b-1)1H-NMRから測定されるメチル基指標が25~60%である(ここで、当該メチル基指標とは、前記α-オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H-NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピークをリファレンス(7.24ppm)としたときにおける、0.50~2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50~1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)
(b-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~14,000である。
(b-3)-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が観測されない。
[2]前記不飽和ポリエステル樹脂(A)が、不飽和ポリエステルと重合性単量体を含む、前記[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]前記α-オレフィン(共)重合体(B)の添加量が、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部当たり、0.001~20質量部である前記[1]、[2]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記α-オレフィン(共)重合体(B)が、メチル基指標が25~40%であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[5]前記α-オレフィン(共)重合体(B)が、メチル基指標が40~60%であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物から形成された成形体。
[7]前記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物から形成された防水材。
[8]前記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物から形成された床材。
[9]前記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を含む塗料。
[10]前記[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物から形成された塗膜。
本発明の硬化性樹脂組成物は、成形体、塗料、弾性塗装材、防水材等の各種用途に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下に示す不飽和ポリエステル樹脂(A)とα-オレフィン(共)重合体(B)とを含む。
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる成分の一つである不飽和ポリエステル樹脂(A)は、下記不飽和ポリエステルを含み、好ましくは下記不飽和ポリエステルと下記重合性単量体を含むことを特徴とする。
本発明に係わる不飽和ポリエステルは、酸成分(多塩基酸成分)と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とを縮合反応してなるポリエステルである。なお、酸成分と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分との反応モル比としては特に限定されず、例えば、酸成分:グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分とした場合に、10:8~10:12であることが好適である。また、多塩基酸成分やアルコール分(グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分)を縮合させる方法も特に限定されず、例えば、反応温度や反応時間等の反応条件も適宜設定すればよい。
本発明に係わる不飽和ポリエステルを構成する酸成分としては、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分に含まれる水酸基及び/又はエポキシ基と反応してエステル結合を生成することができる置換基を2つ以上有する化合物であればよく、不飽和多塩基酸を必須とし、その一部を飽和多塩基酸に置き換えて使用してもよい。
本発明に係わる不飽和ポリエステルを構成するグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-1,4-ブタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、3-メチルペンタン-1,4-ジオール、2,2-ジエチルブタン-1,3-ジオール、4,5-ノナンジオール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明に係わる不飽和ポリエステルを構成するエポキシ化合物成分としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、3,4-エポキシ-1-ブテン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明に係わる不飽和ポリエステルは、上記酸成分(多塩基酸成分)と、グリコール成分及び/又はエポキシ化合物成分に加え、下記重合性単量体を含んでいてもよい。
前記重合性単量体としてはまた、25℃における粘度が100mPa・s以下のものであることが好適である。これにより、樹脂組成物の粘度を充分に低減することができ、作業性を充分に向上させることが可能となる。
本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる成分の一つであるα-オレフィン(共)重合体(B)は後述する要件(b-1)~(b-3)を満たす。
本発明においてα-オレフィン(共)重合体(B)は、具体的には炭素原子数2~20のα-オレフィンの単独重合体あるいは二種以上のα-オレフィンの共重合体である。
本発明に係るα-オレフィン(共)重合体(B)は、1H-NMRから測定されるメチル基指標が25~60%である(ここで、当該メチル基指標とは、上記α-オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H-NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピークをリファレンス(7.24ppm)としたときにおける、0.50~2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50~1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)。
本発明に係るα-オレフィン(共)重合体(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~14,000である。
本発明に係るα-オレフィン(共)重合体(B)は20~25℃で液状であることが好ましい。常温で液状であると、液状であることが多い硬化性樹脂との混合性が優れ、少量で消泡・表面平滑効果を発現しやすい点で好ましい。
本発明に係るα-オレフィン(共)重合体(B)は、-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が観測されない。
本発明に係るα-オレフィン(共)重合体(B)は示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が-100℃~150℃の温度範囲において観測されないことが好ましい。ここで、融点(Tm)が観測されないとは、示差走査型熱量測定(DSC)で測定される融解熱量(ΔH)(単位:J/g)が上記温度範囲で、実質的に計測されないことをいう。融解熱量(ΔH)が実質的に計測されないとは、示差走査熱量計(DSC)測定においてピークが観測されないか、あるいは観測された融解熱量が1J/g以下であることである。
本発明に係るα-オレフィン(共)重合体(B)の好ましい態様の一つは、α-オレフィン(共)重合体(B)を構成する上記炭素原子数2~20のα-オレフィンが1種類の炭素原子数6~20のα-オレフィンからなる単独重合体、あるいは2種類以上の炭素原子数6~20のα-オレフィンからなる共重合体である。本明細書において、このようなα-オレフィン(共)重合体を、便宜上「高級α-オレフィン(共)重合体」と呼ぶ場合がある。更に、このようなα-オレフィン(共)重合体には、必要に応じて50モル%を超えない範囲で、エチレン及び/または炭素原子数3~5のα-オレフィンを共重合成分として導入することもできる。このような高級α-オレフィン(共)重合体は一般的にPAOと総称される。
高級α-オレフィン(共)重合体(PAO)は、低規則性構造を有すると分子内にわずかな組成分布を有し、硬化性樹脂組成物との相容性を適切に制御しやすくなるため、好ましい。
本発明に係るα-オレフィン(共)重合体(B)の好ましい別の一態様はエチレン・炭素原子数3以上のα-オレフィン共重合体(以下、「エチレン・α-オレフィン共重合体」とも呼ぶ。)である。
本発明にかかるα-オレフィン(共)重合体(B)は、そのままの形であってもよいし、あるいは、グラフト変性によって何らかの極性基を付与されたものであってもよい。変性に利用される極性基を有するビニル化合物には、酸、酸無水物、エステル、アルコール、エポキシ、エーテル等の酸素含有基を有するビニル化合物、イソシアネート、アミド等の窒素含有基を有するビニル化合物、ビニルシラン等のケイ素含有基を有するビニル化合物などを使用することができる。
なお、上記の極性基を有するビニル化合物又はその誘導体が、α-オレフィン(共)重合体(B)にグラフトする位置は特に制限されず、このα-オレフィン(共)重合体の任意の炭素原子に不飽和カルボン酸又はその誘導体が結合していればよい。
(1)上記α-オレフィン(共)重合体(B)を押出機、バッチ式反応機などで混合させて、極性基を有するビニル化合物又はその誘導体などを添加してグラフト共重合させる方法。
上記いずれの方法も、上記極性基を有するビニル化合物又はその誘導体のグラフトモノマーを効率よくグラフト共重合させるために、ラジカル開始剤の存在下でグラフト反応を行うことが好ましい。
溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n-酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコール
モノメチルエーテル、等のエステル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素を好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物全体におけるα-オレフィン(共)重合体(B)の含量は、好ましくは0.0005~12質量%、より好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.001~2質量%、さらに好ましくは0.005~1質量%であることが望ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)および上記α-オレフィン(共)重合体(B)のほか、その他の構成成分として、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、空気乾燥性付与剤、硬化促進助剤、溶剤、可塑剤、充填剤、不活性粉体、揺変剤、繊維強化材(補強繊維材)、重合禁止剤、増粘剤、内部離型剤、着色剤、柄剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、ブルーイング剤、老化防止剤、難燃剤、安定剤等の添加剤を含むことができる。また、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)は、これら「その他の構成成分」を予め含有していてもよい。
前記硬化剤としては、通常使用されるものを用いることができ、例えば、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、ジエチルケトンパーオキサイド、メチルプロピルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、エチルアセトアセテートパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、キュメンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート、1,1-ジブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、アミルパーオキシ-p-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-へキシルパーオキシベンゾエート等の1種又は2種以上を使用することができる。使用量としては特に限定されないが、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上、5質量部以下であることが好適である。
前記硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤として金属石鹸を含有してもよい。金属石鹸としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等のコバルト塩や、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸カリウム、オクチル酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸カルシウム等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、コバルト塩を必須とすることが好適であり、全金属石鹸を100%とすると、コバルト塩が金属石鹸量として50%以上であることが好ましく、これにより、硬化性をより充分に高めることが可能となる。より好ましくは、60%以上である。
前記硬化性樹脂組成物としてはまた、空気乾燥性付与剤を含有してもよく、これにより、樹脂表面の乾燥性を向上させられる。なお、空気乾燥性付与剤とは、樹脂が硬化する際に樹脂から形成される被膜や成形物の表面に析出し、空気との遮断層を該表面に形成することにより、空気中の酸素が樹脂のラジカル重合を阻害することを防止して樹脂の乾燥性を向上させる作用を有するものである。
(1)天然ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の植物系ワックス; 密蝋、ラノリン、鯨蝋等の動物系ワックス; モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス; パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス等が挙げられる。
また前記ワックス類に、他の成分を含んでもよい。
これらの中でも、パラフィンワックスを用いることが好ましい。
前記硬化性樹脂組成物としてはまた、必要に応じ、硬化促進助剤を含んでもよい。硬化促進助剤としては、例えば、ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジ(ヒドロキシ)-4-メチルアニリン等の第三級アミン類等のβ-ケトエステル、β-ケトアミド類等の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶剤が含有されていてもよい。溶剤としては、特に限定されないが、たとえば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n-酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコール
モノメチルエーテル、等のエステル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素を好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて可塑剤が含有されていてもよい。可塑剤としては、特に限定されないが、たとえば、フタル酸ジブチル(略称:DBP)、フタル酸ジオクチル(別称:フタル酸ビス2-エチルヘキシル、略称:DEHP、DOP、DEHA)、フタル酸ジイソノニル(略称:DINP)、等の無水フタル酸とアルコールのエステル、アジピン酸ジオクチル(別称:アジピン酸ビス2-エチルヘキシル、略称:DEHA、DOA)等のアジピン酸とアルコールのエステル 、燐酸トリクレジル、燐酸トリオクチル、エポキシ化大豆油、変性ひまし油が挙げられる。これらの中で、フタル酸系可塑剤がブリードアウトを生じにくく、好適に用いることができる。本発明における可塑剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる不飽和ポリエステル樹脂(A100質量部に対して100質量部以下、好ましくは1~80質量部、さらに好ましくは5~50質量部程度であることが望ましい。一方、硬化性樹脂組成物全体における含量は、50質量%以下、好ましくは1~40質量%、1~30質量%が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて充填剤が含有されていてもよい。充填剤としては、無機充填材が好ましく、マイカ、珪砂、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、グラファイト、ステンレス、アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華などの粉末充填剤;ガラス繊維や金属繊維などの繊維状充填剤などを挙げることができる。本発明における充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して300質量部以下、好ましくは50~250質量部、さらに好ましくは70~200質量部程度であることが望ましい。一方、硬化性樹脂組成物全体における含量は、70質量%以下、好ましくは20~70質量%、30~60質量%が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて揺変剤が含有されていてもよい。揺変剤としては、例えば、ヒュームドシリカ等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。なお、前記樹脂組成物としては、これらの揺変剤を用いることにより、防水ライニングや塗料、ゲルコート等の用途により好適に使用することが可能となる。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて繊維強化材が含有されていてもよい。繊維強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維; アラミド、ポリエステル、ビニロン、フェノール、ポリテトラフルオロエチレン等の有機繊維;天然繊維等が挙げられ、中でも、ガラス繊維が好適である。繊維強化材の使用量としては特に限定されないが、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以上、70質量部以下であることが好ましい。なお、前記樹脂組成物としては、繊維強化材を用いることにより、FRP材料や防水ライニング等の用途により好適に使用することが可能となる。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて重合禁止剤が含有されていてもよい。重合禁止剤は、可使時間、硬化反応の立ち上がりを調整するために用いられ、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン等のベンゾキノン類;t-ブチルカテコール等のカテコール類;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4-メトキシフェノール等のフェノール類; フェノチアジン、ナフテン酸銅等が好適である。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて増粘剤が含有されていてもよい。増粘剤としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の多価金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の多価金属水酸化物;多官能イソシアネート等が好適である。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて内部離型剤が含有されていてもよい。内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸及びステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられ、使用量としては特に限定されないが、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、1質量部以上、10質量部以下であることが好適である。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤が含有されていてもよい。着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、フタロシアニンブルー等の通常用いられる顔料が挙げられ、使用量としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、上限が30質量部であることが好ましい。より好ましい上限は20質量部である。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて柄剤が含有されていてもよい。柄剤としては、例えば、酸化アルミニウム、PETフィルム、マイカ、セラミック及びそれらを着色剤、表面処理剤等でコーティングしたもの、メッキ処理したもの、不飽和ポリエステル樹脂(A)と無機フィラーと着色剤等とを熱硬化させて粉砕したもの等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記不飽和ポリエステル樹脂(A)と前記α-オレフィン(共)重合体(B)を必須成分として含有する組成物である。
また本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の作製手段(成形手段)は問われず、公知の手法を用いることができる。例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を塗布または注型し、そのまま硬化させることによって所望の形状を有する硬化物を得ることができる。すなわち、本発明では、本発明の硬化性樹脂組成物から形成された成形体も提供される。
以下の実施例および比較例において、α-オレフィン(共)重合体などの重合体、硬化性樹脂組成物など各物性は、以下の方法により測定あるいは評価した。
α-オレフィン(共)重合体のメチル基指標は日本電子(株)製EX270型核磁気共鳴装置を用い、溶媒として重クロロホルム,試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として室温、観測核として1H(270MHz)、シーケンスとしてシングルパルス、パルス幅として6.5μ秒(45°パルス)、繰り返し時間として5.5秒、積算回数としては16回、ケミカルシフトの基準値として重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピークの7.24ppmを用いて測定した。
α-オレフィン(共)重合体のエチレン含量は、日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度として55mg/0.6mL、測定温度として120℃、観測核として13C(125MHz)、シーケンスとしてシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅として4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間として5.5秒、積算回数としては1万回以上、ケミカルシフトの基準値として27.50ppmを用いて測定した。
α-オレフィン(共)重合体の分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の高速GPC測定装置により決定した。
高速GPC測定装置:東ソー社製HLC8320GPC
移動相:THF(和光純薬工業社製、安定剤不含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiporeHZ-M 2本を直列連結
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:0.35mL/分
測定温度:40℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製PStQuick MP-M
α-オレフィン(共)重合体の融点は、いずれもセイコーインスツルメント社製X-DSC-7000を用いて測定した。簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mgのサンプルを入れてDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から、150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを-100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、-100℃で5分間保持した後、10℃/分で15℃まで昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線が極大値を示す温度を融点(Tm)とし、融解に伴う吸熱量の総和を融解熱量(ΔH)とした。ピークが観測されないか、融解熱量(ΔH)の値が1J/g以下の場合、融点(Tm)は観測されないとみなした。融点(Tm)、および融解熱量(ΔH)の求め方はJIS K7121に基づいて行った。
硬化性樹脂組成物の消泡性は、硬化して得られた硬化物を目視にて観察し、表面に残った気泡の数の多少により下記の通り評価を行った。
○:気泡が観察されない
△:わずかに気泡が観察される
×:一面が気泡に覆われている
硬化性樹脂組成物の表面平滑性は、硬化して得られた硬化物を目視にて観察し、断面での凹凸の大小および表面のしわ、割れにより下記の通り評価を行った。
〇:凹凸、しわ、割れが全く観察されない
△:わずかに凹凸、しわ、割れが観察される
×:顕著に凹凸、しわ、割れが観察される
充分に窒素置換した容量2リットルの攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1リットルを張り、96mmol/Lに調整した、エチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500mL/hの量で連続的に1時間供給した後、更に触媒として16mmol/Lに調整したVO(OC2H5)Cl2のヘキサン溶液を500mL/hの量で、ヘキサンを500mL/hの量で連続的に供給した。一方重合器上部から、重合液器内の重合液が常に1リットルになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンガスを35L/hの量で、プロピレンガスを35L/hの量で、水素ガスを80L/hの量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で行った。
製造例1において、エチレンガスの供給量、プロピレンガスの供給量、水素ガスの供給量を適宜調整することにより、表1に記載のエチレン・プロピレン共重合体(B-1)、(B-3)および(B-4)を得た。得られた各エチレン・プロピレン共重合体の分析結果を表1に示す。
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製重合器にヘプタン250mLを装入し、系内の温度を50℃に昇温した後、エチレンを35L/hr、プロピレンを65L/hr、水素を100L/hrの流量で連続的に重合器内に供給し、撹拌回転数600rpmで撹拌した。次にトリイソブチルアルミニウム0.2mmolを重合器に装入し、次いでMMAO 0.868mmolと[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00288mmolをトルエン中で15分以上予備混合したものを重合器に装入することにより重合を開始した。その後、エチレン、プロピレン、水素の連続的供給を継続し、50℃で15分間重合を行った。少量のイソブチルアルコールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のモノマーをパージした。得られたポリマー溶液を、0.2mol/Lの塩酸100mLで3回、次いで蒸留水100mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを80℃の減圧下で一晩乾燥した。その結果、エチレン・プロピレン共重合体(B-5)2.31gを得た。得られた各エチレン・プロピレン共重合体の分析結果を表1に示す。
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブにヘプタン850mLおよびプロピレン75gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素1.56MPa、エチレン0.11MPaを供給することにより全圧を3MPaGとした。次にトリイソブチルアルミニウム0.4mmol、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.00015mmolおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0015mmolを窒素で圧入し、攪拌回転数を400rpmにすることにより重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPaGに保ち、110℃で8分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することにより重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られたポリマー溶液を、0.2mol/Lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られたポリマーを80℃の減圧下で一晩乾燥した。その結果、エチレン・プロピレン共重合体(B-6)25.1gを得た。得られた各エチレン・プロピレン共重合体の分析結果を表1に示す。
高級ポリ-α-オレフィン(B-7)、(B-8)、液状ポリブテン(B-9)~(B-11)として、以下の市販品を使用した。
B-7:高級α-オレフィン(共)重合体、酸触媒品(エクソンモービルケミカル製、Spectra Syn(商標)40)
B-8:高級α-オレフィン(共)重合体、酸触媒品(エクソンモービルケミカル製、Spectra Syn(商標)100)
B-9:液状ポリブテン(JXTGエネルギー(株)製、日石ポリブテン(商標)HV-35)
B-10:液状ポリブテン(JXTGエネルギー(株)製、日石ポリブテン(商標)HV-100)
B-11:液状ポリブテン(JXTGエネルギー(株)製、日石ポリブテン(商標)HV-300)
前記高級α-オレフィン(共)重合体および液状ポリブテンの物性を表2に示す。
温度計、撹拌機、不活性ガス吹込管及び還流冷却管を備えた四ツ口フラスコに、トリエチレングリコール8.0mol、プロピレングリコール2.3mol、イソフタル酸4.5mol及びアジピン酸3molを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら210℃で酸価10まで縮合反応した。150℃まで冷却し無水マレイン酸2。5molを仕込み、210℃まで昇温し、15時間、縮合反応させ、数平均分子量4300の不飽和ポリエステルを得た。得られた不飽和ポリエステル65部に、スチレン35部、ヒドロキノン0.01部を加え、不飽和ポリエステル樹脂(A-1)を得た。
不飽和ポリエステル樹脂(A-1)100gに対して、エチレン・プロピレン共重合体(B-1)0.25g、硬化剤としてカヤエステルCND-C70(化薬アクゾ株式会社製)1gとカヤエステルTMPO-70(化薬アクゾ株式会社製)0.5gを添加して攪拌混合してから、あらかじめエポキシ系プライマーを塗布しておいたスレート板(100mm×50mm)に100g/m2の塗布量で塗布した。室温で16時間放置した後、40℃のエアーオーブンに48時間入れ後硬化させ、評価用試験片を作成した。
不飽和ポリエステル樹脂(A-1)100gに対して、(B-1)~(B-11)のうち1つを、表3に記載の量だけ使用し、実施例1に記載と同様の方法で評価用試験片を作成した。
Claims (9)
- 不飽和ポリエステル樹脂(A)と、下記要件(b-1)~(b-3)を満たすα-オレフィン(共)重合体(B)を、不飽和ポリエステル樹脂(A)100質量部当たり、0.001~20質量部含有する硬化性樹脂組成物。
(b-1)1H-NMRから測定されるメチル基指標が25~60%である(ここで、当該メチル基指標とは、前記α-オレフィン(共)重合体を重クロロホルム中に溶解させて1H-NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピークをリファレンス(7.24ppm)としたときにおける、0.50~2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50~1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をいう。)。
(b-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が1,500~14,000である。
(b-3)-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融点が観測されない。 - 前記不飽和ポリエステル樹脂(A)が、不飽和ポリエステルと重合性単量体を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記α-オレフィン(共)重合体(B)が、メチル基指標が25~40%であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記α-オレフィン(共)重合体(B)が、メチル基指標が40~60%であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された成形体。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された防水材。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された床材。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含む塗料。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成された塗膜。
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