JP7144105B1 - 中空多孔質アルミナ粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は生産性良く、中空多孔質であってかつ貫通孔を有するアルミナ粒子を提供することができる、アルミナ粒子の製造方法を提供する。【解決手段】本発明は、カルボン酸のアルミニウム塩を水性溶媒に溶解する第1工程と、得られたカルボン酸のアルミニウム塩の溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で40~280℃の温度で乾燥造粒して乾燥造粒物を形成する第2工程と、得られた乾燥造粒物を0.3~10℃/分で昇温し、700~1300℃の温度範囲内の焼成温度にて0.5~7時間焼成し、0.3~10℃で降温する第3工程とからなることを特徴とする、粒度分布測定において、D50が4~50μmであり且つD90が300μm以下であり、内部が中空且つ中空内部と外部に貫通孔を保有し、比表面積が30m2/g以上である中空多孔質アルミナ粒子の製造方法を提供する。【選択図】図3

Description

本発明は、中空多孔質アルミナ粒子の製造方法、特に中空でかつ多孔質であり、貫通孔が存在するアルミナ粒子の製造方法に関する。
多孔質のアルミナ粒子は各種方法で作製されている。例えば、特許文献1(WO01/56951A1)には、(A)水酸化アルミニウムまたはアルミナに一塩基酸またはその塩の共存かに加熱して得られた酸含有水酸化アルミニウム、(B)活性アルミナを一塩基酸またはその塩の共存下で処理して得られた酸含有アルミナ、(C)バイヤライトまたは(D)γ-アルミナ、から選ばれた一つないしは複数の水酸化アルミニウム及び/またはアルミナに水及び必要に応じて一塩基酸またはその塩を加えて調製した調製液を、250℃以下の温度で水熱合成、湿式粉砕をおこなうことにより、アルミナゾル及び/またはアルミナゲルを得、それらを中和、水熱処理、乾燥、焼成することにより、多孔質のアルミナを得る方法が記載されている。
特許文献2(特許第6961428号)には、硝酸アルミニウム水溶液に、クエン酸、乳酸及びリンゴ酸からなる群から選択される1種又は2種以上のαヒドロキシカルボン酸を加えた後、アンモニア又はアミンを添加するか、又は、硝酸アルミニウム水溶液にアンモニア又はアミンを加えた後、前記αヒドロキシカルボン酸を加えることにより、水酸化アルミニウム含有コロイドである原料液を調製する原料液調製工程と、前記原料液の液滴を加熱して粒子化して多孔質アルミナ粒子を取得する粒子化工程と、前記多孔質アルミナ粒子を含む成形材料を焼結して多孔質アルミナ焼結体を取得する焼成工程と、を有し、前記アルミナの少なくとも一部をγ-アルミナ相とし、相対密度が60%以上80%以下、比表面積が5m/g以上80m/g以下であり、平均孔径が0.2μm以上1.0μm以下であり、孔径累積分布においてD10/D90が2.0以下で全気孔率が50%以上且つ開気孔率が50%以上である多孔質アルミナ焼結体及びその製造方法が開示されている。
特許文献3(特許第6803176号)には、アルミニウム塩を溶解した液体のpHを調整してゲル状の水酸化アルミニウムを析出させて第1の原料液を調製する工程と、前記第1の原料液に対してα-ヒドロキシトリカルボン酸(特にクエン酸)を前記第一の原料液中のアルミニウムに対して、モル比1以上2以下で加えてアルミニウム含有コロイドである第2の原料液を調製する工程と、前記第2の原料液の液滴を噴霧熱分解法により加熱して多孔質又は中空状の粒子を製造する粒子化工程と、前記粒子化工程で得られた前記粒子を、γ-アルミナ又はα-アルミナを含有する多孔質アルミナ粒子を得るように焼成工程と、を備える製造方法が開示されている。この特許文献3の製造方法において、焼成工程でγ-アルミナを含有し、相対密度が60%以上80%以下、比表面積が60m2/g以上である多孔質アルミナ粒子を含む材料を提供する方法、あるいはα-アルミナを含有し、相対密度が60%以上80%以下、比表面積が20m2/g以上である多孔質アルミナ粒子を含む材料であることを示す方法、が開示されている。
特許文献4(特許第3581879号)には、高気孔率、高比表面積で機械的特性に優れているα(+θ)アルミナ多孔体を製造する方法であって、原料粉末として、アルミナ粉末と化学式Al(OH)で表される2.0μm以下の所定の平均粒径を有する水酸化アルミニウムの異なった比率での混合粉末を用い、その成形体を大気中において800~1000℃に加熱して、水酸化アルミニウムを分解し、更に1000~1600℃の温度範囲で焼成処理することにより、α相とθ相が共存している相組成を持つアルミナ多孔体を製造することを特徴とするアルミナ多孔体の製造方法であり、ジルコニアを1~20重量%添加し、アルミナのα相とθ相が共存している相組成を持ち、細孔の気孔率が40体積%を超え、かつその比表面積が8~40m2/gであり、10~1000nmの範囲に少なくとも一つの細孔分布のピークを持つ細孔構造を有することを特徴とするアルミナ多孔体を製造する方法が示されている。
特許文献5(特開平11-240777号公報)には、細孔の気孔率が50体積%を超え、かつ累積細孔容積対細孔直径分布の大径側から累積10%径、累積90%径に相当する細孔直径をそれぞれ、D10、D90としたときD10/D90比が4以下の細孔直径分布を有するα-アルミナ多孔質凝集焼結体であり、BET比表面積が0.1m/g以上、30m/g以下のα-アルミナ粉末を0.01重量%以上40重量%以下の範囲含有する密度0.2g/cm以上2.0g/cm未満の水酸化アルミニウム若しくは遷移アルミナの成形体または造粒体を、1000℃以上1300℃以下の温度範囲で空気中または不活性ガス雰囲気中で1次加熱し、密度を1.3g/cm以上2.0g/cm未満とした後、800℃以上1300℃以下の温度範囲で、ハロゲンガスまたはハロゲン含有ガスを1体積%以上含有する雰囲気中で2次加熱して作製されるα-アルミナ多孔質凝集焼結体の製造方法が示されている。
特許文献6(特開2011-102226号公報)には、粒子状生体材料と粒子状金属酸化物との懸濁液を二流体ノズルスプレードライヤーで噴霧乾燥処理をし、得られた粒子状生体材料をコア、粒子状金属酸化物層をシェルとする粉体を500~900℃で加熱処理することによってビーズ状中空粒子を得る方法が記載され、中空粒子の金属酸化物はシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、イットリア、酸化銅、酸化コバルト、ジルコニアから選ばれる、平均粒子径が1~100μmである(特許文献6の請求項1、24および6参照)。
特許文献7(特開昭54-019485号公報)は金属酸化物スラリーをスプレードライすることで、中空球を作製し、そこに結合剤や潤滑剤を添加し、プレス成形等を行い、650℃または700℃で低温焼結を行うことで多孔質な触媒担体を製造する方法が記載されている(特許文献7請求項1および実施例参照)。
特許文献8(国際公開第2020/039649号)には、触媒活性物質として粒子径の小さなCeO-ZrOを用い、触媒活性物質のバインダーとして粒子径の小さなアルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル等を用い乾燥後350℃~550℃で焼成することによって、排ガス浄化用触媒を作製する方法が記載されている(特許文献8請求項および[0072]段落参照)。
特許文献9(特表2012-507402号公報)には、ウォールフロー型フィルター基板の流入通路内に高融点を有する酸化物より製造されるコーティングを有していて、そのコーティングに使用する酸化物のD50が5μmと同じかこれより大きいものとD90が20μmと同じか又はこれより大きい粒度分布を示す酸化アルミニウム、希土類等で安定化された酸化アルミニウム、希土類金属三二酸化物、酸化チタン等のセラミック粒子を含むものであるディーゼル粒子フィルターの製造方法が記載されている(特許文献9請求項参照)。
特許文献10(特開2015-083532号公報)には、噴霧熱分解装置のタンクに投入された硝酸アルミニウム水溶液をポンプにより、2流体ノズルを介してミスト状に噴霧し、乾燥ゾーン(約450℃)、次いで熱分解ゾーン(約900℃)を通過させ、冷却後、アルミナ中空粒子(γ-アルミナ)を得、さらに約1130℃で焼成し、平均粒径6.7μmの微小アルミナ中空粒子(α-アルミナ)を得たことが記載されている(特許文献10実施例1および図5参照)。
WO01/56951A1 特許第6961428号 特許第6803176号 特許第3581879号 特開平11-240777号公報 特開2011-102226号公報 特開昭54-019485号公報 国際公開第2020/039649号 特表2012-507402号公報 特開2015-083532号公報
特許文献1記載の多孔質アルミナの製造方法では、アルミナを出発源にしているため、多孔質かもしれないが、貫通孔をもつ中空の粒子を得ることができない。
特許文献2記載の方法では、水酸化アルミニウムコロイドを噴霧熱分解するため、形状を制御することが難しく、中空体が得られにくい。また、急速に熱がかかるため凝集しやすい傾向がある。更に、噴霧熱分解法は炉内に噴出して出口温度が800℃等の高温造粒するため製造設備が大型化する。
特許文献3に記載されている、水酸化アルミニウム含有コロイドを噴霧熱分解法で造粒し、更に必要に応じて900℃、1100℃等で焼成して多孔質アルミナ焼結体を得る方法では、水酸化アルミニウムコロイドを噴霧熱分解するため、形状を制御することが難しく、中空体が得られにくい。また、急速に熱がかかるため凝集しやすい。更に噴霧熱分解法は炉内に噴出して出口温度が800℃等の高温造粒するため製造設備が大型化する。
特許文献4に記載されている、粒子径2.0μm以下の水酸化アルミニウムに1~20wt%ジルコニアを添加し、1000~1600℃で焼成することでアルミナのα相とθ相が混合したアルミナ多孔体を得る方法では、ジルコニアを加えることが前提になっているため、中空体が得られないこと、アルミナ純度面で劣ること、焼成温度が1000~1600℃と高温であるため比表面積が小さいものしか得られない等の課題がある。
特許文献5に記載の方法は、αアルミナを使用するものであり、凝集体であるため中空粒子が得られにくいこと、800℃以上の焼成を2回必要とすること、ハロゲンガス又はハロゲンを含有するガスを入れて焼成するプロセスが必要であるため設備が特殊になること及び生産性が悪くなる等の課題がある。
特許文献6には、粒子状生体材料と粒子状金属酸化物との懸濁液を二流体ノズルスプレードライヤーで噴霧乾燥処理をし、得られた粒子状生体材料をコア、粒子状金属酸化物層をシェルとする粉体を加熱処理することによってビーズ状中空粒子を得る方法が記載されている。通常、中空かつ貫通孔を有する無機粒子を製造する場合、有機物(粒子状生体材料に相当)を無機粒子に混入して、有機物を焼成する方法が一般的であり、特許文献6の方法もその部類に属する。しかし、安定した中空且つ貫通孔を有する粒子を得るためには、混入有機物の大きさを揃える必要があり、微細な有機物の入手が困難になる傾向にある。また、有機物の焼成は資源の無駄遣いであり、省資源的に有効ではない。更に内部に有機物を含有するため、焼成時に内部の熱分解が不十分になり、残炭を発生させやすくなり、純度の高い中空粒子を得る事が難しい課題がある。
特許文献7においても所望の粒子径の粒子を得るためには、微粒な粒子状金属酸化物を使用せざるをえなくなり、原料の入手が困難であり、特許文献7に記載の方法はプレス成形により成形することが目的のため、均質な中空粒子をつくることが狙いであり、貫通孔を有することは成形をする際には、欠陥発生要因になるため好ましくなく、本願の目的とは相違する。更に成形性が目的であるために引用文献7の実施例1や実施例3には一次結合剤や潤滑剤を含むことが記載されており、これは残炭発生要因になる事から、本願の主旨とは相違する。また特許文献7の製造方法では温度制御や焼成時間の制御がされていない。
特許文献8においては、触媒(CeO-ZrO)と、アルミナゾルと、ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子とを混合したスラリーを所定形状に成形した後、焼成して触媒層を形成するが、この方法も有機物の焼成を必要とし、特許文献6と同様に、省資源的に有効でなく、焼成時に残炭が生じことがある。また、使用するアルミナゾルとして粒子径の小さなものを用いているが、これらは入手が困難である。また使用するアルミナゾルは触媒粉末(CeO-ZrO)の結着剤として使用されており、触媒としての役割を果たしている物ではない。低温での保形性をあげるために加えられているため、アルミナゾル部分が中空多孔質粒子状態でないことが重要であり、本願の主旨とは大きく異なっている。
特許文献9においては、セラミック製のウォールフロー型フィルター基板の流路にD50が5μmと同じかこれより大きく、D90が20μmと同じかそれより大きい粒度分布を持つ酸化アルミニウム、希土類金属で安定化された酸化アルミニウム、希土類金属三二酸化物を含有し、コーティング膜厚が10~150μmのディーゼル粒子フィルターの製造方法を示しており、当該粒子径金属酸化物該ゾルは非常に高価である課題がある事。また目的がコーティングであるため、本発明の趣旨とは全く異なるものである。
特許文献10の製造方法では、1つの装置内でアルミニウム塩を噴霧熱分解するため、形状の制御を行うことが難しく、中空体を作製するには350~500℃の乾燥ゾーンを長くし、なだらかに昇温させていく必要があることや噴霧熱分解法は炉内に噴出して出口温度が800℃等の高温造粒になるため設備が大型化する。
以上の問題点を鑑みて、本発明は生産性良く、省資源に適合した、中空多孔質かつ貫通孔を有するアルミナ粒子を提供することができる製造方法を開発することを目的とし、鋭意検討した結果、原料としてカルボン酸のアルミニウム塩の溶液を用い、それを造粒および焼成してアルミナを製造するに際し、造粒条件および焼成条件を制御して所望の中空多孔質かつ貫通孔を有するアルミナ粒子を得ることが可能になった。
即ち、本発明は以下の態様の発明を提供する:
[1] カルボン酸のアルミニウム塩を水性溶媒に溶解する第1工程と、
得られたカルボン酸のアルミニウム塩の溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で40~280℃の温度で乾燥造粒して乾燥造粒物を形成する第2工程と、
得られた乾燥造粒物を0.3~10℃/分で昇温し、700~1300℃の温度範囲内の焼成温度にて0.5~7時間焼成し、0.3~10℃/分で降温する第3工程と
からなることを特徴とする、
粒度分布測定において、D50が4~50μmであり且つD90が300μm以下であり、内部が中空且つ中空内部と外部に貫通孔を保有し、比表面積が30m/g以上である中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
[2] 前記中空多孔質アルミナ粒子が、精製あまに油法による吸油性試験において、30ml/100g以上の吸油性を有する、[1]記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
[3] 前記カルボン酸のアルミニウム塩が、ギ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、ヒドロキシ酢酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、グルコン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムまたはそれらの混合物である、[1]または[2]記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
[4] 前記第1工程の水性溶媒が、水、沸点が30℃以上200℃以下の有機溶媒またはそれらの混合物である、[1]~[3]のいずれに記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
[5] 前記第2工程の乾燥造粒が、噴霧乾燥法または流動層造粒法のいずれかの方法で行われることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
[6] 前記第2工程で使用するガスが、空気、窒素、ヘリウム、アルゴンまたはそれらの混合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
[7] 前記第3工程での焼成は、大気中、窒素中、真空中、不活性ガス中で行われることを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
本発明の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法は、コア材として燃焼により焼失する材料を使用せずに、入手が容易なカルボン酸のアルミニウム塩からなる原料の液体から直接乾燥造粒物を中空多孔質になるように形成し、それを焼成することにより、中空多孔質アルミナ粒子を製造することができ、材料の無駄が省け、しかも安定して中空で貫通孔を有する多孔質アルミナ粒子が製造できる。
本発明で得られる中空多孔質アルミナ粒子は、中空で多孔質であり、かつ貫通孔を有している。通常、アルミナ粒子は中空で多孔質のものが多く使用されてきた。中空で多孔質であることは、微細粒子であって表面積を大きくかつ軽量にできるので、微細な粒子の表面を最大限に活用するために良いものとされてきた。しかし、貫通孔を形成することは必ずしも目的とはされてこなかった。貫通孔の存在は、アルミナ粒子を脆く潰れやすくしてしまい、球状で形状保持性が高いアルミナ粒子が求められていたこれまでのアルミナ粒子とは異なっている。本発明では、アルミナ粒子に敢えて貫通孔を存在させるように製造して、脆く適度に潰れるものにより、スクラブ効果が貫通孔により脆く潰れることによる新たな表面の露出効果などを期待する。
アルミナ粒子のような微細粒子中に貫通孔が存在することは、数値などの表現では表すことが難しく、具体的にはSEM(走査電子顕微鏡)により、その存在を確認することで確認できる程度であるが、アルミナ粒子の油の吸収性や断熱性が向上し、脆く潰れることで新しい表面が新たに露出することから、研磨材などで使用する場合に、研磨性が向上する。その他、化粧料での使用でも、使用時に潰れてスクラブ効果が大きくなることも期待できる。また、貫通孔の存在は、液体を内部にまで容易に侵入させたり、排出させたりすることが可能になり、これまでの多孔質アルミナ粒子では液体の内部までの浸透が難しかったのを、容易にする。
本発明のアルミナ粒子は、三つの工程から製造され、最初にカルボン酸のアルミニウム塩を水性溶媒に溶解する第1工程と、それを特定の温度と気圧下に乾燥造粒して、中空多孔質の乾燥造粒物を形成し、次にその造粒物を所定の条件で焼成することを特徴とする。その工程により、安定で高い中空性および貫通孔を有するアルミナ粒子が得られる。
本発明の実施例1で測定した粒度分布を表すグラフである。 本発明の実施例1で得られたアルミナ粒子の100倍の走査電子顕微鏡(SEM)像である。 本発明の実施例1で得られたアルミナ粒子の5000倍のSEM像である。 本発明の実施例1のアルミナ粒子のX線回折のグラフである。 本発明の実施例2のアルミナ粒子のX線回折のグラフである。 本発明の比較例2のアルミナ粒子の5000倍の走査電子顕微鏡(SEM)像である。
本発明によれば、カルボン酸のアルミニウム塩を水性溶媒に溶解する第1工程と、
得られたカルボン酸のアルミニウム塩の溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で40~280℃の温度で乾燥造粒して乾燥造粒物を形成する第2工程と、
得られた乾燥造粒物を0.3~10℃/分で昇温し、700~1300℃の温度範囲内の焼成温度にて0.5~7時間焼成し、0.3~10℃/分で降温する第3工程と
からなることを特徴とする、
粒度分布測定において、D50が4~50μmであり且つD90が300μm以下であり、内部が中空且つ中空内部と外部に貫通孔を保有し、比表面積が30m/g以上である中空多孔質アルミナ粒子の製造方法を提供する。
本発明の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法を説明する。尚、本明細書中において、「ある数値~別の数値」の表現は「ある数値以上別の数値以下」と同じ意味を表す。また、重量と質量は同じ意味で用いる。
<第1工程>
本発明の中空多孔質アルミナ粒子は主要原料として、カルボン酸のアルミニウム塩を使用する。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、ヒドロキシ酢酸、グルコン酸、サリチル酸などのモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマール酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸などのジカルボン酸;クエン酸、アコニット酸などのトリカルボン酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸などのα-ヒドロキシカルボン酸;などが挙げられる。より具体的には、使用し得るカルボン酸は、ギ酸、乳酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、グルコン酸、サリチル酸アルミニウムまたはそれらの混合物が好ましい。本発明で使用し得るカルボン酸は、好ましくはカルボキシル基の炭素を除いた部分の炭素数が0~7であるのが好ましい。また、カルボン酸は水、沸点が30℃以上200℃以下の有機溶媒またはそれらの混合物に溶解し、焼成キープ温度までに熱分解してしまうものであればよく、カルボン酸は脂肪酸のような長鎖カルボン酸は用いられない。カルボン酸のアルミニウム塩は、通常の方法(例えば溶融法、スラリー法、固相法、溶媒法といった直接法又は水溶媒系、アルコール溶媒系の複分解法)で製造される。アルミニウムと結合するカルボキシル基に含まれる炭素を除いた炭素数が7を超えるカルボン酸のアルミニウム塩は水、沸点が30℃以上200℃以下の有機溶媒またはそれらの混合物に溶解が難しくなる傾向にあり、使用しづらくなり、第2工程で利用が難しい。更に炭素数の多いカルボン酸の使用により、炭素数が増えるため、第3工程において熱分解性が悪くなり、残炭を発生させる原因になる課題がある。
本発明で使用し得るカルボン酸のアルミニウム塩の例は、これらに必ずしも限定されないが、ギ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、ヒドロキシ酢酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、グルコン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムまたはそれらの混合物等が挙げられる。
次に、カルボン酸のアルミニウム塩を水性溶媒に溶解するのが第1工程である。水性溶媒は、水または沸点が30℃以上200℃以下の有機溶媒またはそれらの混合物である。沸点が30℃以上で200℃以下の有機溶媒は、メタノールやエタノール等の低級アルコール;アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類;DMSO(ジメチルスルホキシド)等のスルホキシド類が挙げられる。水性溶媒は、好ましくは水または低級アルコールであり、より好ましくは水である。水性溶媒の沸点が30℃未満になると室温域で揮発が発生し、溶液濃度が安定しなくなり、安定して所望の中空多孔質アルミナ粒子を得ることができなくなる。一方で水性溶媒の沸点が200℃を超えると第2工程での乾燥が不十分になり、乾燥造粒体が得られなくなる可能性がある。
カルボン酸のアルミニウム塩を水性溶媒に溶解する。溶解は通常の方法で行われる。具体的には、水性溶媒中にカルボン酸のアルミニウム塩を25~100℃の温度で、0.5~3時間加熱攪拌し、溶解させる。もちろん、この方法に限定されず、カルボン酸のアルミニウム塩が水性溶媒に溶解すればよい。
<第2工程>
第2工程では、得られたアルミニウム塩の溶液をガス圧0.01~1MPaで大気(空気)または不活性ガス中で40~280℃の温度で乾燥造粒する。乾燥造粒は、噴霧乾燥法、流動層造粒法、噴霧凍結乾燥造粒法のいずれかの方法を選定し、40℃~280℃の温度設定、より好ましくは40~270℃の温度設定であり、且つ水性溶媒の沸点よりも高い温度設定で造粒することで、内部から急速に溶媒が揮発すると同時に造粒が進むため、内部と外部に貫通孔を有した中空多孔質アルミナ前駆体を得ることが可能になる。具体的には、水性溶媒として水を用いると、温度は100℃~280℃、好ましくは120℃~260℃の温度で、大気中で乾燥造粒するのが好ましい。
本発明では中空多孔体アルミナ粒子前駆体を得るために噴霧乾燥法、流動層造粒法、噴
霧凍結乾燥造粒法の温度設定が40~280℃、ガス圧力を0.01~1MPaの範囲のガス雰囲気に設定することが必要となる。温度が280℃を超えると有機アルミニウムの有機部分の分解が乾燥造粒中に開始し、中空多孔質アルミナ前駆体の変色や凝集が発生しやすくなる。本明細書中で「ガス圧」は、使用するガスに付加する圧力であり、0.01~1MPaであるので、陰圧または加圧の両方で使用できるが、ガスが空気であれば大気圧0.1MPaで使用できる。
本発明では中空多孔体アルミナ粒子前駆体を得るために噴霧乾燥法、流動層造粒法、噴霧凍結乾燥造粒、気流乾燥機のガス圧力の設定が0.01MPa未満になると液滴にかかる圧力が低すぎて、内部と外部の貫通孔があかず、且つ噴霧がうまく進まないため、凝集塊が多数発生する。一方でガス圧力が1MPaを超えると圧力が強すぎて、造粒物が扁平状になり、所望の貫通孔をもつ中空多孔質アルミナ前駆体が得られなくなる。ここで使用し得るガスは空気、窒素、不活性ガス(具体的には、ヘリウム、アルゴン)またはそれらの混合物等)が考えられ、特に空気が好ましい。
<第3工程>
第3工程では、第二工程で作製した乾燥造粒物を焼成炉に投入し、0.3~10℃/分で昇温し、700~1300℃の範囲の内、所望の焼成温度にて0.5~7時間保持して焼成し、0.3~10℃/分で降温することで中空多孔質アルミナを得る。
第3工程で使用する焼成炉は、温度制御及びガス制御ができるバッチ炉、昇降炉、プッシャー炉、シャトル炉、真空炉等のいずれでもよく、より好ましくはバッチ炉、昇降炉、プッシャー炉である。
第3工程では、造粒した粒子をアルミナ、ジルコニア等の坩堝や匣鉢等の耐熱容器、より好ましくはアルミナの坩堝や匣鉢等の耐熱容器にいれて焼成することにより、内部と外部に貫通孔を残し、コンタミの少ない中空多孔質アルミナ粒子を得られる。
第3工程における焼成において、焼成温度は700~1300℃、より好ましくは800~1200℃で所望の結晶相や比表面積に応じて設定される。700℃未満であると焼成時に結晶化が不十分になり、所望の結晶相をつくることができなくなる。一方で1300℃を超えてしまうと、α‐アルミナ結晶相ができ、焼結が更にすすんでしまい、比表面積が30m/gを達成できなくなる。
焼成時間は所望の温度で0.5~7時間が好ましく、より好ましくは2~6時間である。焼成時間は所望の結晶相や比表面積に応じて設定される。焼成時間が0.5時間未満であると焼成が十分でないため、所望の結晶相がでないため、アルミナとしての機能を果たさなくなる。一方、焼成時間が7時間を超えると所望のアルミナ結晶相は出るが、生産性が悪くなる。
昇温速度は0.3~10℃/分が好ましく、好ましくは0.5~8℃/分である。昇温速度が0.3℃/分未満になると焼成温度まで到達するまでに時間を要しすぎ、生産性が悪化する課題がある。一方で昇温速度が10℃/分を超えると昇温速度が速すぎて、中空多孔質アルミナ前駆体が形状を保持できなくなり、所望の中空多孔質アルミナが得られなくなる。
降温速度は0.3~10℃/分が好ましく、好ましくは0.5~8℃/分である。降温速度が0.3℃/分未満になると焼成温度から室温に到達するまでに時間を要しすぎ、生産性が悪化する課題がある。一方で降温速度が10℃/分を超えると降温速度が速すぎて、中空多孔質アルミナが急冷されてクラックや変形が発生したり、坩堝や匣鉢が急速な降温に耐えられなくなり、破損してしまうため焼成が成立せず、所望の中空多孔質アルミナが得られなくなる。
本発明における焼成における雰囲気は、所定の焼成設定温度、設定時間で焼成を実施
した際に有機分が消失することや所望のアルミナ結晶相が適切に形成されるのであれば、大気中、窒素中、真空中、不活性ガス中等のいずれのガス雰囲気を選定しても問題ない。雰囲気が不適であると焼成中に有機分が十分に気化せず、残留炭素として粒子に残り、欠陥となることや結晶相を所望のように形成できなくなる。
本発明で使用する原料、各種設備の接液や接粉部には、Fe、Si、Ca、Mgなどの不純物の含有量の低いものを使用することが好ましい。従って、各種設備の接液や接粉部はFRP(繊維強化プラスチック)、ステンレス材料(例えば、SUS316、SUS316L)、ニッケル合金(例えば、ハステロイ)、耐熱塩化ビニル、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフルオロテトラエチレン等から選定することが望まれる。また、原料(例えば、カルボン酸のアルミニウム塩)においても、具体的には、Fe含有量を70ppm以下(好ましくは30ppm以下)、Ca含有量を70ppm以下(好ましくは30ppm以下)、Mg含有量を70ppm以下(好ましくは30ppm以下)、Si含有量を70ppm以下(好ましくは30ppm以下)に制御したものを用いて合成することで、得られた中空多孔質アルミナ粒子の不純物含有量も少なくなり、好ましい。
本発明の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法では、焼成時に使用する坩堝(るつぼ)や匣鉢(こうばち)にSiCや金属容器等を用いると焼成時にコンタミネーション源となることや、焼成時に融解して容器としての役割を果たさなくなり、中空多孔質アルミナ粒子に異なる結晶相や着色を発生させ、所望の中空多孔質アルミナ粒子が得られなくなることがあるので、これらの坩堝や匣鉢にも、特定の材料を使用し、しかもFe、Si、Ca、Mgなどの不純物含有量の少ないものを使用することが必要である。
<アルミナ粒子>
本発明の製造方法で得られたアルミナ粒子は、最終的に粒度分布測定において、D50が4~50μmであり、且つD90が300μm以下であり、内部が中空且つ中空内部と外部に貫通孔を保有し、比表面積が30m/g以上であることを特徴とする。通常は、第2工程の造粒時に粒子が形成され、ほぼ最終の粒度分布が得られ、中空多孔質で貫通孔を有しているが、第3工程でそれらが多少引き締まって最終のアルミナ粒子になる。
粒度分布は、本発明の実施例ではレーザー回折式粒度分布計(マルバーン株式会社製、マスターサイザー3000)で測定することにより、得られる。D50は、平均粒子径であり、4~50μm、好ましくは6~40μm、より好ましくは8~35μmである。D50が4μmより小さいものは、粉体の流動性が悪くなって、取り扱いが難しくなる。50μmを超えると粒径が大きいので使用用途が減少する。D90は粒子の90%の取り得る粒子径を意味し、D90は具体的には、300μm以下であり、好ましくは60μm以上300μm以下であり、具体的には70μm以上250μm以下、より具体的には80μm以上200μm以下である。D90が60μm未満になると粒子の流動性が悪くなり、取扱いが難しくなり、作業性が悪化する課題がある。一方で300μmを超えると、粒径が大きいので使用用途が減少する。
本発明のアルミナ粒子は、内部が中空で多孔質である。そのような性能を表すのに比表面積がある。比表面積はある物体について単位質量あたりの表面積のことである。本発明の実施例では比表面積は、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(マイクロトラックベル(株)製、BELSORPMAX2)にてNで測定した。比表面積は、多い程、中空度や多孔質度が高まるが、本発明のアルミナ粒子は、30m/g以上、好ましくは50m/g以上、より好ましくは60m/g以上であり、上限は高い方が良いが600m/gを超えることは少ない。30m/gより少ないと、表面積の多さで使用する用途、例えば触媒などの用途に使用できなくなる。
比表面積と同じく表面積の多さを測定する方法に、吸油量がある。本発明では、吸油量はJISH5101-13-1の精製あまに油法の吸油性試験に準拠して測定され、吸油量が多い程表面積が多くなる。本発明のアルミナ粒子は、給油量30ml/100g以上、好ましくは50ml/100g以上、より好ましくは70ml/100g以上であり、上限は高い方が良いが400ml/100gを超えることは少ない。30ml/100gより少ないと、表面積の多さで使用する用途、例えば触媒などの用途に使用できなくなる。
本発明のアルミナ粒子は、貫通孔が存在する。貫通孔が存在することにより、今までのアルミナ粒子には見られない特性が得られる。具体的には、アルミナ粒子の油の吸収性や断熱性が向上し、貫通孔の存在で脆く潰れ易くなり、潰れることで表面が新たに露出することから、研磨材などで使用する場合に、研磨性が向上する。その他、化粧料での使用でも、使用時に潰れてスクラブ効果が大きくなることも期待できる。また、貫通孔の存在は、液体を内部にまで容易に侵入させたり、排出させたりすることが可能になり、これまでの多孔質アルミナ粒子では液体の内部までの浸透が難しかったのを、容易にする。
アルミナ粒子中の貫通孔の存在は、数値的な解析が難しく、走査電子顕微鏡(SEM)などで微細構造を確認することにより存在を確認できる。本発明の実施例でも、図3では貫通孔の存在がある程度確認できる。
本発明の中空多孔質アルミナ粒子は、焼成温度を制御することにより、γアルミナ、θアルミナ、ηアルミナ、αアルミナに設計した中空多孔質アルミナ粉体を得ることができる。それらの結晶相の存在は、X線回折測定により確認することができる。本明細書の実施例でも、図4および図5にX線回折測定により得られたグラフが記載されている。
本発明の中空多孔質アルミナ粒子は、前述のように原料、各種設備の接液や接粉部には、Fe、Si、Ca、Mgなどの不純物の含有量の低いものを使用すると、得られたアルミナ粒子も、Fe、Si、Ca、Mgなどの不純物の含有量の低いものが得られる。本発明では、Fe含有量、Ca含有量、Mg含有量、Si含有量を低く制御した中空多孔質アルミナ粒子が得られる。
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定するものと解してはならない。
(実施例1)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、1.6℃/分で昇温し、ピーク焼成条件900℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施し、中空多孔質のγ-アルミナ粒子を得た。
得られたγ-アルミナ粒子について、粒度分布を下記のように測定してD50およびD90を表1に記載する。また、アルミナ粒子について、比表面積、吸油量を以下に記載のように行った。結果を表1に示す。表には、結晶相、貫通孔有無と外観色も記載した。
粒度分布はレーザー回折式粒度分布計(スペクトリス株式会社製、マスターサイザー3000)で乾式測定した。D50のデータを示す。図1に実施例1のγ-アルミナ粒子の粒度分布結果を示す曲線であり、縦軸は体積比率(%)であり、横軸は粒度分布(μm)である。
比表面積は高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(マイクロトラックベル(株)製、BELSORPMAX2)にてNで測定した。
吸油量はJISH5101-13-1の精製あまに油法に準拠して測定した。
得られたアルミナ粒子中の貫通孔の有無はSEM画像(×5000倍)にて、破砕した粒子断面を確認し、貫通孔有無を判断した。
表1に記載の結晶相はX線回折((株)リガク製:SmartLab 9kW)の結果を基に記載した。
また、外観色は目視した結果を記載する。
SEM(日立ハイテクノロジーズ(株)製:TM3030plus)を用いて図2、図3は実施例1、図6は比較例2の測定を実施したもので、図2は実施例1のSEM画像(×100倍)であり、図3は実施例1のSEM画像(×5000倍)を示す。図3では、貫通孔が空いていることが理解できる。一方で図6に比較例2のSEM画像(×5000倍)を示す。貫通孔が空いていない粒子であることが確認される。
図4は実施例1のX線回折測定を実施した結果を示すグラフであり、縦軸はIntensity(a.u.)であり、横軸は2θ(°)-Cu-Kαである。
(実施例2)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、1.6℃/分で昇温し、ピーク焼成条件1100℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施し、中空多孔質のα-アルミナ粒子を得た。
得られたα-アルミナ粒子のD50、D90、比表面積、吸油量、結晶相、貫通孔有無および外観色を表1に記載した。
図5は実施例2のα-アルミナ粒子のX線回折測定を実施した結果を示すグラフであり、縦軸はIntensity(a.u.)であり、横軸は2θ(°)-Cu-Kαである。
(実施例3)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度190℃、出口温度110℃、圧力0.35MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、1.6℃/分で昇温し、ピーク焼成条件800℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施し、中空多孔質のγ-アルミナ粒子を得た。
得られたγ-アルミナ粒子のD50、D90、比表面積、吸油量、結晶相、貫通孔有無および外観色を表1に記載した。
(実施例4)
ギ酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.0%:溶媒は水)をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、3.3℃/分で昇温し、ピーク焼成条件900℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施し、中空多孔質のγ-アルミナ粒子を得た。
得られたγ-アルミナ粒子のD50、D90、比表面積、吸油量、結晶相、貫通孔有無および外観色を表1に記載した。
(実施例5)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液23kg(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)にエタノール1kgを混合したものをスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、1.6℃/分で昇温し、ピーク焼成条件900℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施し、中空多孔質のγ-アルミナ粒子を得た。
得られたγ-アルミナ粒子のD50、D90、比表面積、吸油量、結晶相、貫通孔有無および外観色を表1に記載した。
(実施例6)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)とギ酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.0%:溶媒は水)を2:1で予備混合した水溶液をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度190℃、出口温度110℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、1.6℃/分で昇温し、ピーク焼成条件900℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施し、中空多孔質のγ-アルミナ粒子を得た。
得られたγ-アルミナ粒子のD50、D90、比表面積、吸油量、結晶相、貫通孔有無および外観色を表1に記載した。
(比較例1)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度30℃、出口温度31℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施したが、造粒できなかった。粒度分布、比表面積、給油量、結晶相、貫通孔の有無および外観色は特定できなかった。表2には、造粒できないことを記載した。
(比較例2)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、3.3℃/分で昇温し、ピーク焼成条件1600℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施し、中空多孔質のα-アルミナ粒子を得た。
得られたα-アルミナ粒子のD50、D90、比表面積、吸油量、結晶相、貫通孔有無および外観色を表2に記載した。表2には、比較例1の結果(造粒できない。)も記載した。
(比較例3)
塩基性乳酸アルミニウム水溶液(浅田化学工業(株)製 Al換算で8.4%:溶媒は水)をスプレードライヤー(プリス(株)製TR-160)で入り口温度250℃、出口温度110℃、圧力0.2MPa設定において二流体ノズルで乾燥造粒を実施し、次いで乾燥造粒物を大気中でバッチ炉においてアルミナ坩堝に入れ、1.6℃/分で昇温し、ピーク焼成条件400℃で3時間キープした後、3.3℃/分で降温することによって焼成を実施したが、残炭が残り、アルミナになっていなかった。
表2には、比較例3の結果(残炭が残り、アルミナになっていない。)も記載した。
Figure 0007144105000002
Figure 0007144105000003
表1に示すように、実施例1、実施例3、実施例4、実施例5はいずれもγ-アルミナを示し、実施例2はα‐アルミナを示すことが確認された。実施例1~5ともに比表面積で30m/g以上を示し、吸油量も30ml/100g以上であることが確認でき、実施例1~5はいずれも白色を示しており、残炭はないことが確認された。
また、図1に示すように実施例1の粒度分布はD50が30μmでD90が100μm未満であることが確認できる。図2の×100倍のSEM像より、中空多孔体アルミナ粒子は凝集していないことが確認される。また、図3の×5000倍のSEM画像より、中空多孔体アルミナ粒子の表面は滑らかで内部と外部の貫通孔が複数空いており、中空であることが確認された。
さらに、図4に示すように実施例1のX線回折はγ-アルミナができていることを示唆しており、図5は実施例2のX線回折を示しており、α‐アルミナになっており、焼成温度の上昇とともに結晶系の変化が発生していることが確認された。以上より、実施例1~実施例5は中空多孔質アルミナ粒子ができていることが確認できた。
表2に示すように、比較例1はスプレードライヤー内で乾燥せず、壁面に液体が塗布される状態になり、造粒できなかった。比較例2は造粒でき、1600℃で焼成しているので、多孔質部分が焼結することで緻密になってしまい、比表面積は極めて小さくなり、吸油量も小さくなってしまうことが確認された。比較例3は低温焼成のため、アルミの配位子の熱分解が不十分であり、残炭となって粉にまだ残っているため、外観が灰黒色をしており、狙いのアルミナの構造になっていないことが確認された。

Claims (6)

  1. カルボン酸のアルミニウム塩を水性溶媒に溶解する第1工程と、
    得られたカルボン酸のアルミニウム塩の溶液をガス圧0.01~1MPaで大気または不活性ガス中で40~280℃の温度で乾燥造粒して乾燥造粒物を形成する第2工程と、
    得られた乾燥造粒物を0.3~10℃/分で昇温し、700~1300℃の温度範囲内の焼成温度にて0.5~7時間焼成し、0.3~10℃/分で降温する第3工程と
    からなり、
    前記カルボン酸が、カルボキシル基の炭素を除いた部分の炭素数0~7のカルボン酸であり、
    前記第1工程の水性溶媒が、水、沸点が30℃以上200℃以下の有機溶媒またはそれらの混合物であり、
    前記第2工程の乾燥造粒が、前記水性溶媒の沸点よりも高い温度である、
    ことを特徴とする、
    粒度分布測定において、D50が4~50μmであり且つD90が300μm以下であり、内部が中空且つ中空内部と外部に貫通孔を保有し、比表面積が30m/g以上である中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
  2. 前記中空多孔質アルミナ粒子が、精製あまに油法による吸油性試験において、30ml/100g以上の吸油性を有する、請求項1記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
  3. 前記カルボン酸のアルミニウム塩が、ギ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、ヒドロキシ酢酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、グルコン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムまたはそれらの混合物である、請求項1または2記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
  4. 前記第2工程の乾燥造粒が、噴霧乾燥法または流動層造粒法のいずれかの方法で行われることを特徴とする請求項1または2記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
  5. 前記第2工程で使用するガスが、空気、窒素、ヘリウム、アルゴンまたはそれらの混合物である、請求項1または2記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
  6. 前記第3工程での焼成は、大気中、窒素中、真空中、不活性ガス中で行われることを特徴とする、請求項1または2記載の中空多孔質アルミナ粒子の製造方法。
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