JP5248054B2 - 球状アルミナ粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は球状アルミナ粒子の製造方法に関する。
球状のアルミナ粒子の製造方法の第1の従来例は、物理気相合成(Physical Vapor Synthesis)法と称される方法である(非特許文献1参照)。物理気相合成法では、金属固体原料にアークエネルギーが与えられて生成した高温蒸気に反応ガスが作用し、その後冷却されることによりナノ粒子となる。物理気相合成法により生成される粒子は平均粒径が8〜75nmと非常に小さい。この方法により製造されたアルミナ粒子としては米国Nanophase Technologies 社から市販されている商品がある。そのアルミナ粒子は、後で比較例として詳細に示すように、粒子表面は平滑である。
球状のアルミナ粒子の製造方法の第2の従来例は、金属アルコキシドを加水分解して得られた超微粒子が懸濁する水溶液を原料溶液として用い、その原料溶液を超音波噴霧して微細ミストとし、その微細ミストを加熱炉で乾燥及び熱分解して単分散の酸化物,窒化物又はフッ化物のセラミック微粉末を得る方法である(特許文献1参照。)。
第2の従来例の製造方法では、原料としてのアルミニウムセカンダリーブトキシドをエタノールに溶解し水で加水分解してゲル化させた溶液に硝酸を添加して解膠し、得られた超微粒子を水で希釈して原料溶液とする。その原料溶液を超音波振動子で霧化し、空気で乾燥炉に送り、さらに900℃の熱分解炉を通過させることにより、アルミナ微粒子を得ている。このアルミナ微粒子は、走査型顕微鏡による観察により、表面に凹凸の微細構造をもつ多孔質体であることが確かめられている。
特許第2769290号公報 米国Nanophase Technologies 社のホームページ、[online]、[平成19年5月22日検索]、インターネット〈URL:http://nanophase.com/technology/capabilities.asp〉
第1の従来例の製造方法では表面構造が平滑な球状アルミナ粒子しか製造することができない。
第2の従来例の製造方法は表面微細構造を有する球状アルミナ粒子を製造することができるが、原料として高価なアルミニウムアルコキシドを使用しなければならないだけでなく、霧化するための原料溶液とするためにアルコールへの溶解、加水分解によるゲル化及び酸添加による解膠を経てやっと水で希釈して原料溶液とするというように、原料溶液の調製にも多くの工程を必要とする。その結果、製造コストが高くなることは否めない。
本発明は、表面構造が平滑な球状アルミナ粒子だけでなく、表面微細構造を有する球状アルミナ粒子も製造することができ、しかも第2の従来例の製造方法に比べて低い製造コストで実現することのできるアルミナ粒子製造方法を提供することを目的とするものである。
一般に粒子の製造方法としては、固相反応法、液相法、気相法などが知られている。その中の液相法の1つが噴霧熱分解法であり、第2の従来例も噴霧熱分解法である。噴霧熱分解法は、原料溶液を噴霧して微小液滴を作り、高温の反応雰囲気中に導入することによって液滴から水分を蒸発させるとともに、液滴中の原料成分を周囲ガスと反応させるか熱分解させることによって種々の化合物等の粒子を得る。
本発明者らは、第2の従来例以外の原料を用いて噴霧熱分解法によって球状のアルミナ粒子を製造することを検討した結果、特定の原料、特定の反応条件によって球状のアルミナ粒子を製造できることを見出した。そのアルミナ粒子は原料の選択と処理温度の設定によっては表面微細構造を有するアルミナ粒子を製造できることが明らかになった。
本発明のアルミナ粒子製造方法は、アンモニウムミョウバンを含むアルミニウム塩含有水溶液に超音波振動を与えてその溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で加熱処理して球状体の粒子とする造粒工程と、生成した粒子を捕集する捕集工程とを含んでいる。
酸化性雰囲気は、空気、酸素、酸素含有ガスなどによる酸化性ガスによる雰囲気を意味する。
造粒工程では液滴の水分が除去されて球状の粒子になる。造粒工程での設定温度とアルミニウム塩の種類によって、乾燥粒子の熱分解と固相反応まで進行してアルミナ粒子となるものもあるし、アルミニウム塩の状態を維持したままで粒子となるものもある。
捕集された粒子に対し、さらに酸化性雰囲気中で800℃以上で追加の加熱処理を施すことがある。この追加の加熱処理は、造粒工程でアルミニウム塩の状態を維持したままで粒子となったものに対してはアルミナ粒子とするために必須である。また、この追加の加熱処理は、アルミニウム塩の種類によっては非晶質をγ−アルミナに変換するために必要な場合もある。
アルミニウム塩含有水溶液がアンモニウムミョウバンを含む場合には、表面微細構造をもったアルミナ粒子を製造する上で好都合である。アルミニウム塩含有水溶液がアンモニウムミョウバンを単独で含んでいてもよく、他のアルミニウム塩、例えば硝酸アルミニウムとの混合状態として含んでいてもよい。
本発明により製造されるアルミナ粒子は球状体であり、原料を変えることにより、細孔又は凹凸を有したり平滑となるなど、表面構造を変化させることが可能である。
表面微細構造をもつアルミナ粒子の場合、表面微細構造としては、多孔質体であることによって球状体の内部に通じる細孔となったものや、主として表面上の皺のような凹凸となったものなどがある。細孔又は凹凸からなる表面微細構造をもっているアルミナ粒子は、同径の粒子と比較して比表面積値が大きくなっているので、触媒担体、薬剤担体、高断熱フィラー、吸着剤などとして優れた特性を備えている。平滑な表面をもつアルミナ粒子は、顔料、研磨剤、潤滑剤などの用途をもっている。
アルミナ粒子は結晶としてγ−アルミナを含んでいることが好ましい。触媒担体として使用する場合には、一般的に緻密なα−アルミナよりも比表面積値の大きいγ−アルミナの方が有効である。さらに、本発明により得られる表面微細構造をもつアルミナ粒子は通常のγ−アルミナよりもさらに大きな比表面積をもつので有効性が高い。しかし、α−アルミナも用途によっては有効である。
本発明では、サブミクロン〜ミクロンオーダー、すなわち0.1μm〜2μm程度の粒径をもつアルミナ粒子を得ることができる。そのような大きさは、さらに微小な大きさの粒子に比べると扱いが容易である。
本発明の噴霧熱分解法によるアルミナ粒子製造方法は、第1の従来例と比べると、原料の選択によって表面微細構造をもつアルミナ粒子を製造することができるという利点を備えている。
また、本発明の噴霧熱分解法によるアルミナ粒子製造方法は、第2の従来例と比べると、原料溶液を調製するために、アルコールへの溶解、ゲル化及び解膠というような第2の従来例で必要とされる複数の工程による処理を必要とせず、単に水に溶解して水溶液とするだけでよい。また、原料として高価なアルミニウムアルコキシドを使用せず、安価なアンモニウムミョウバンを含む水溶性アルミニウム塩を使用する。そのため、本発明のアルミナ粒子製造方法は第2の従来例の製造方法に比べると安価で工程数の少ない方法であるという利点を備えている。
本発明ではアルミナ粒子の製造に水溶性アルミニウム塩水溶液を原料溶液とする噴霧熱分解法を用いることで、球形のアルミナ粒子を製造する。得られるアルミナ粒子は、表面微細構造をもち、γ−アルミナとなった最も好ましい形態となる。
本発明の製造方法は噴霧熱分解法であり、原料溶液を霧状にし、これを酸化性雰囲気中で熱処理することでアルミナ粒子を製造する。本発明の製造方法を適用するのに用いたアルミナ粒子製造装置を図1に示す。図1に示したのは実験装置の段階のものであり、工業的な製造装置として実現する場合には製造規模や量産性を考慮して変更されることになるのは明らかである。
噴霧装置2は底部に圧電セラミックスからなる超音波振動子4(振動周波数は例えば1.7MHz)が装着されている。噴霧装置2内にアルミニウム塩含有水溶液6を収容した状態で超音波振動子4を作動させるとアルミニウム塩含有水溶液4の液滴からなる霧が発生する。噴霧装置2の上部には酸化性雰囲気を作るキャリアーガスとして空気を噴霧装置2内に供給するキャリアーガス入口8が設けられ、噴霧装置2の側方にはアルミニウム塩含有水溶液4の液滴からなる霧をキャリアーガスによって反応管12に噴霧する噴霧口10が設けられている。
反応管12は石英製で円筒状をなしており、反応管12の周面には軸方向に沿って加熱炉14−1〜14−4が設けられている。加熱炉14−1〜14−4は噴霧装置2から噴霧された液滴の流れの上流側から下流側に向かって温度が順次高くなるように4段階に分割されている。それらの加熱炉14−1〜14−4の最適設定温度は、原料のアルミニウム塩の種類によって異なるが、一例を挙げると200℃、400℃、600℃及び800℃である。
反応管12の最下流の出口には生成した粒子を捕集するためにフィルター16を備えた粒子捕集器18が設けられている。粒子はフィルター16に捕集され、フィルター16を通過したガスはコールドトラップに導かれて、原料のアルミニウム塩から発生したガス成分が捕集される。
反応管12の形状は特に円筒状でなくてもよく、角筒状でもよい。図示のように横型でなくてもよく、縦型であってもよい。加熱炉14−1〜14−4は赤外線加熱炉、マイクロ波加熱炉、抵抗加熱炉など、いずれのものであってもよい。
この実験装置におけるアルミナ粒子の生成過程は、図1の下部に概略的に示されているように進行する。噴霧装置2内に収容された原料溶液であるアルミニウム塩含有水溶液4は超音波振動子4によって直径が数μm程度、例えば直径約3μmの液滴20からなる霧になる。その液滴20からなる霧はキャリアーガスにて反応管12内に噴霧される。噴霧された液滴20から水分が蒸発して除去され、アルミニウム成分が焼結されて球状の粒子となる。この段階では、アルミニウム塩によってはアルミニウム塩が加熱分解され酸化されることによってアルミナにまで反応が進むものもあるし、原料のアルミニウム塩の状態を維持したままのものもある。
捕集された粒子は、さらに酸化性雰囲気中で900℃以上にて追加焼成されることがある。原料のアルミニウム塩の状態を維持したままの粒子もこの追加焼成によりアルミナとなる。また、反応管12中で生成した粒子がアルミナになっていても非晶質である場合には、この追加焼成によりγ−アルミナに変換されるものもある。
得られるアルミナ粒子は、原料のアルミニウム塩によっては表面微細構造を有するものもあるし、明瞭な表面微細構造をもたないものもある。
反応管12中で生成した粒子がγ−アルミナとなっている場合には、あえて追加焼成を施す必要はない。
さらに、合成されたアルミナ粒子をイオン交換水−超音波破砕分散、メタノール分散等の処理を施すことにより、分散性の高い粒子とすることができることが確認された。
本発明を実施例、参考例、比較例によりさらに詳細に説明する。なお、実施例と参考例を合わせて連番になっている。
実施例と参考例におけるアルミナ粒子生成条件及び得られたアルミナ粒子の性状を図24の表1にまとめて示す。表1において、「原料」はアルミニウム塩水溶液を調製するのに使用した原料アルミニウム塩の種類を表し、「濃度」は調製したアルミニウム塩水溶液の濃度を表している。「噴霧条件」は図1に示した加熱炉14−1〜14−4の設定温度であり、「焼成条件」は追加焼成を行った場合の温度と時間である。
「比表面積値測定」はBET比表面積測定法により測定した値である。
(実施例1)
実施例1は、原料のアルミニウム塩としてアンモニウムミョウバンを単独で用いた。
(実施例1−1)
実施例1−1はアンモニウムミョウバン水溶液濃度を0.15mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を200℃、400℃、600℃及び800℃とした。反応管12での反応を経て捕集された粒子に対して1000℃で2時間の追加焼成を行った。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダー(粒径0.1〜2μm程度)であり、粒子の表面に微細構造をもっていることが確認できる。
このアルミナ粒子の比表面積値は199.6m2/gである。一方、このアルミナ粒子の粒径範囲に含まれる粒径のものとして粒径が1μmで表面が完全に平滑な球状アルミナ粒子を仮定し、その比表面積値をアルミナ密度4.0(g/m3)を用いて計算すると、1.50(m2/g)となる。したがって、この実施例で得られたアルミナ粒子の比表面積値は表面構造が平滑なアルミナ粒子の100倍以上である。比表面積値からもこのアルミナ粒子の表面は平滑ではなく、表面微細構造をもっていることが首肯される。
さらに、図3にこのアルミナ粒子の細孔分布測定結果を参考例2−1、7−1のものとともに示す。細孔分布測定は窒素ガス吸着法により行った。図3中の(1−1)として示したのがこの実施例の細孔分布測定結果である。この結果によれば、3nm付近の孔径が形成されていることから、粒子が多孔質となっていることが窺われ、このアルミナ粒子の表面微細構造は多孔質構造に起因するものであるということができる。
この実施例のアルミナ粒子のX線粉末回折測定の結果を、参考例2−1、7−1のものとともに図4に示す。図4中に(1−1)として示された回折パターンがこの実施例のものであり、他の参考例(2−1),(7−1)のものと同様に、結晶はγ−アルミナのみからなる好ましい状態であることがわかる。
この実施例によって製造されたアルミナ粒子を担体として、これにニッケルを担持させたところ、表面構造が平滑なアルミナ粒子に担持したものに比べ、より微細なニッケルを担持させることができた。表面構造が平滑な球状アルミナ粒子にニッケル粒子を担持させると、図5のHAADF(High-Angle-Annular-Dark-Field)−STEM像により示されるようにニッケル粒子(白く輝いている部分)の大きさが約20nmであったが、この実施例の球状アルミナ粒子に担持させると、図6のHAADF−STEM像により示されるようにニッケル粒子(白く輝いている部分)の大きさは約5nmとなった。したがって、この実施例の球状アルミナ粒子を担体として用いれば、活性金属が高分散された触媒を得ることができ、工業的に有用である。また、微粒子内の孔中に、薬剤や触媒等を含浸させることで、遅延効果性の薬剤の担体として、また長期効果性の触媒担体としても利用できる。さらに、内部の多孔性を利用して高断熱のフィラーにも応用可能である。
(実施例1−2):
実施例1−2は実施例1−1に比べてアンモニウムミョウバン水溶液濃度を下げて、0.10mol/Lとした。他の条件は実施例1−1と同様にしてアルミナ粒子を作成した。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図7に示す。粒子の大きさも表面微細構造も実施例1−1のものと同様である。
この実施例のアルミナ粒子のX線粉末回折測定の結果を図8に示す。図8の下部の回折パターンは1000℃での追加焼成を施す前のものであり、アンモニウムミョウバンを原料にした場合は、反応管での800℃までの熱処理では球状の粒子はできるが、原料のアンモニウムミョウバンの状態を維持しており、アルミナにはなっていない。1000℃での追加焼成を施すことによりγ−アルミナに変わることがわかる。
(参考例2)
参考例2は、原料のアルミニウム塩として硫酸アルミニウムを単独で用いた。
参考例2−1)
参考例2−1は硫酸アルミニウム水溶液濃度を0.25mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を300℃、650℃、1000℃及び1000℃として、実施例1のアンモニウムミョウバンを原料にした場合よりも高めに設定した。さらに、反応管12での反応を経て捕集された粒子に対して1000℃で2時間の追加焼成を行った。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図9に示す。この場合も粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであり、粒子の表面に微細構造をもっていることが窺われる。
この参考例のアルミナ粒子の比表面積値は30.8m2/gである。一方、このアルミナ粒子の粒径範囲に含まれる粒径のものとして粒径が1μmで表面が完全に平滑な球状アルミナ粒子を仮定した場合はその比表面積値は1.50(m2/g)であるので、この参考例で得られたアルミナ粒子の比表面積値は表面構造が平滑なアルミナ粒子の約20倍である。比表面積値からもこのアルミナ粒子の表面は平滑ではなく、表面微細構造をもっていることが首肯される。
この参考例のアルミナ粒子の細孔分布測定結果を図3中に(2−1)として示す。この結果によれば、4nm以上の孔径があいており、凹凸のある表面構造となっていることが窺われる。
この参考例のアルミナ粒子のX線粉末回折測定の結果を図4中に(2−1)として示す。結晶はγ−アルミナのみからなる好ましい状態であることがわかる。
この参考例によって製造されたアルミナ粒子についても、これを担体としてニッケルを担持させたところ、表面構造が平滑なアルミナ粒子に担持したものに比べ、より微細なニッケルを担持させることができた。この場合も、図10のHAADF−STEM像により示されるようにニッケル粒子(白く輝いている部分)の大きさは約5〜10nmとなり、表面構造が平滑な球状アルミナ粒子にニッケル粒子を担持させた場合のニッケル粒子径約20nmと比べると小さくなった。その結果、この参考例の球状アルミナ粒子を担体として用いても、活性金属が高分散された触媒を得ることができ、工業的に有用である。
参考例2−2)
参考例2−2は参考例2−1と同様に硫酸アルミニウム水溶液濃度を0.25mol/Lとし、参考例2−1に比べて反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を低くし、実施例1と同じく200℃、400℃、600℃及び800℃とした。反応管12での反応を経て捕集された粒子に対しては、参考例2−1と同様に1000℃で2時間の追加焼成を行った。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図11に示す。この場合も粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであり、粒子の表面に微細構造をもっていることが窺われる。
参考例2−3)
実施例2−3は実施例2−2において追加焼成を行う前のものである。参考例2−2と同程度の大きさの粒子は生成している。その粒子のX線粉末回折測定の結果を図12中に(2−3)として示すが、硫酸アルミニウムの状態を維持しており、まだアルミナにはなっていないことがわかる。
(参考例3)
参考例3は、原料のアルミニウム塩として硝酸アルミニウムを単独で用いた。
硝酸アルミニウム水溶液濃度を0.25mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を250℃、500℃、800℃及び950℃とした。さらに、反応管12での反応を経て捕集された粒子に対して800℃で2時間の追加焼成を行った。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図13に示す。粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであるが、粒子の表面には最大拡大率の画像によっても明瞭な構造は認められない。
その粒子のX線粉末回折測定の結果を図14中に(3)として示すが、800℃で2時間の追加焼成では粒子は非晶質であり、追加焼成を1000℃に上げると結晶化してγ−アルミナが生成されることがわかる。
(参考例4)
参考例4は、原料のアルミニウム塩として酢酸アルミニウムを単独で用いた。
酢酸アルミニウム水溶液濃度を0.20mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を200℃、400℃、600℃及び800℃とした。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図15〜図17に示す。図15は反応管12での反応のみのもの、図16は反応管12での反応を経て捕集された粒子に対して追加焼成を800℃で3時間行ったもの、図17は追加焼成を1000℃で3時間行ったものである。粒子の大きさはいずれもサブミクロン〜ミクロンオーダーであるが、粒子の表面には最大拡大率の画像によっても明瞭な構造は認められない。
その粒子のX線粉末回折測定の結果を図14中に(4−1),(4−2),(4−3)として示す。(4−1)は追加焼成を施していないもの、(4−2)は追加焼成を800℃で3時間行ったものである。これらの粒子に含まれる結晶はγ−アルミナのみからなる好ましいものであるが、追加焼成温度を高めて1000℃で3時間行うとα−アルミナが生成してくることがわかる。したがって、酢酸アルミニウムを単独で原料にする場合には熱処理温度は800℃程度が適当であるということができる。
(参考例5)
参考例5は、原料のアルミニウム塩として塩化アルミニウムを単独で用いた。
硝酸アルミニウム水溶液濃度を0.20mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を200℃、400℃、600℃及び800℃とした。追加焼成は行っていない。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図18に示す。粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであるが、粒子の表面には最大拡大率の画像によっても明瞭な構造は認められない。
その粒子のX線粉末回折測定の結果を図14中に(5)として示す。明瞭な結晶ピークはみられず、粒子は非晶質である。
(実施例6)
実施例6は、原料のアルミニウム塩としてアンモニウムミョウバンと硝酸アルミニウムを混合して用いた。
(実施例6−1)
実施例6−1はアンモニウムミョウバンと硝酸アルミニウムを50:50(モル比)の割合で混合してアルミニウム塩水溶液を作成し、それを原料水溶液とした。そのアルミニウム塩水溶液濃度を0.25mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を200℃、400℃、600℃及び800℃とし、さらに、反応管12での反応を経て捕集された粒子に対して1000℃で2時間の追加焼成を行った。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図19に示す。粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであり、粒子の表面に微細構造をもっていることがわかる。
この実施例のアルミナ粒子の比表面積値は129.5m2/gである。このアルミナ粒子の粒径範囲に含まれる粒径のものとして粒径が1μmで表面が完全に平滑な球状アルミナ粒子を仮定した場合はその比表面積値は1.50m2/gであるので、この実施例で得られたアルミナ粒子の比表面積値は表面構造が平滑なアルミナ粒子の80倍以上である。比表面積値からもこのアルミナ粒子の表面は平滑ではなく、表面微細構造をもっていることが首肯される。
(実施例6−2)
実施例6−2はアンモニウムミョウバンと硝酸アルミニウムを75:25(モル比)の割合で混合してアルミニウム塩水溶液を作成し、それを原料水溶液とした。その他の条件は実施例6−1と同じとした。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図20に示す。粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであり、粒子の表面に微細構造をもっていることがわかる。
この実施例のアルミナ粒子の比表面積値は167.5m2/gであり、実施例6−1のものよりも大きくなっている。このことから、原料であるアルミニウム塩水溶液中でのアンモニウムミョウバンの割合が増すと比表面積値の増加傾向が強くなると考えられる。
この実施例6−2のアルミナ粒子をイオン交換水中で超音波で分散させ、その後メタノールで分散させて乾燥させた。その乾燥後の状態の走査型電子顕微鏡写真を図21に示す。このような分散処理を施す前の図20のものと比べると分散性が高まっており、工業的に有用なアルミナ粒子となっていることがわかる。
(参考例7)
参考例7は、原料のアルミニウム塩として硝酸アルミニウムと硫酸アルミニウムを混合して用いた。
参考例7−1)
参考例7−1は硝酸アルミニウムと硫酸アルミニウムを80:20(モル比)の割合で混合してアルミニウム塩水溶液を作成し、それを原料水溶液とした。そのアルミニウム塩水溶液濃度を0.25mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を300℃、650℃、1000℃及び1000℃とし、さらに、反応管12での反応を経て捕集された粒子に対して1000℃で2時間の追加焼成を行った。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図22に示す。粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであり、粒子の表面に微細構造をもっていることがわかる。
この参考例のアルミナ粒子の比表面積値は85.0m2/gである。このアルミナ粒子の粒径範囲に含まれる粒径のものとして粒径が1μmで表面が完全に平滑な球状アルミナ粒子を仮定した場合はその比表面積値は1.50(m2/g)であるので、この実施例で得られたアルミナ粒子の比表面積値は表面構造が平滑なアルミナ粒子の50倍以上である。比表面積値からもこのアルミナ粒子の表面は平滑ではなく、表面微細構造をもっていることが首肯される。
この参考例のアルミナ粒子の細孔分布測定結果を図3中に(7−1)として示す。この結果によれば、7〜20nmの孔径の穴があいており、凹凸のある表面構造となっていることが窺われる。
この参考例のアルミナ粒子のX線粉末回折測定の結果を図4中に(7−1)として示す。結晶はγ−アルミナのみからなる好ましい状態であることがわかる。
この参考例のアルミナ粒子をイオン交換水中で超音波で破砕して分散させ、その後メタノールで分散させて乾燥させた。その分散処理により分散性が高まった。
参考例7−2)
参考例7−2は硝酸アルミニウムと硫酸アルミニウムを50:50(モル比)の割合で混合してアルミニウム塩水溶液を作成し、それを原料水溶液とした。そのアルミニウム塩水溶液濃度を0.2mol/Lとし、反応管12を加熱する加熱炉14−1〜14−4の温度設定を参考例7−1よりも下げて200℃、400℃、600℃及び800℃とし、さらに、反応管12での反応を経て捕集された粒子に対して参考例7−1と同様に1000℃で2時間の追加焼成を行った。
得られたアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡写真を図23に示す。粒子の大きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーであり、粒子の表面に微細構造をもっていることがわかる。
この参考例のアルミナ粒子のX線粉末回折測定の結果を図12中に(7−2)として示す。結晶はγ−アルミナのみからなる好ましい状態であることがわかる。図12中に(7−2a)として示してある回折パターンは、この参考例のアルミナ粒子ではあるが、追加焼成を行う前のものである。この結果から、硝酸アルミニウムと硫酸アルミニウムの混合物を原料にした場合は、800℃までの反応管での反応ではほぼ非晶質であるが、1000℃での追加焼成により結晶化してγ−アルミナになることがわかる。
比較例
米国Nanophase Technologiesによって市販されているアルミナ粒子は物理気相合成法によって製造される。アークエネルギーを加えることで、原料が高温で蒸気になる。その蒸気に反応ガスを加えると分子の固まりが形成され、さらに冷却することで球状のアルミナ粒子が得られる。そのアルミナ粒子は球状で、平均粒径は数十ナノオーダー(8〜75nm程度)であると報告されている(非特許文献1参照。)。そのアルミナ粒子を入手して比表面積を測定したところ45m2/gであった。粒径が8nmの球状アルミナ粒子の表面が完全に平滑であると仮定するとその比表面積値は188m2/gとなり、また粒径が75nmの球状アルミナ粒子の表面が完全に平滑であると仮定するとその比表面積値は20m2/gとなる。この比較例のアルミナ粒子は、その比表面積測定値が45m2/gであることから判断して、表面構造が平滑な球状粒子であるということができる。
本発明のアルミナ粒子は触媒担体、薬剤担体、高断熱フィラー、吸着剤などに利用することができる。
本発明の製造方法を実施するための噴霧熱分解装置を示す概略構成図である。 実施例1−1のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 実施例1−1、参考例2−1及び参考例7−1のアルミナ粒子の細孔分布測定結果を示すグラフである。 実施例1−1、参考例2−1及び参考例7−1のアルミナ粒子のX線粉末回折測定結果を示す回折パターンである。 表面構造が平滑な球状アルミナ粒子にニッケル粒子を担持させた状態を示す電界放射型電子顕微鏡による画像である。 実施例1−1のアルミナ粒子にニッケル粒子を担持させた状態を示す電界放射型電子顕微鏡による画像である。 実施例1−2のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 実施例1−2のアルミナ粒子のX線粉末回折測定結果を示す回折パターンである。 参考例2−1のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例2−1のアルミナ粒子にニッケル粒子を担持させた状態を示す電界放射型電子顕微鏡による画像である。 参考例2−2のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例2−3、参考例7−2のアルミナ粒子のX線粉末回折測定結果を示す回折パターンである。 参考例3のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例3、参考例4−1、参考例4−2、参考例4−3及び参考例5のアルミナ粒子のX線粉末回折測定結果を示す回折パターンである。 参考例4のアルミナ粒子で反応管での反応のみで追加焼成を施していないものの走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例4のアルミナ粒子で800℃での追加焼成を施したものの走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例4のアルミナ粒子で1000℃での追加焼成を施したものの走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例5のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 実施例6−1のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 実施例6−2のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 実施例6−2のアルミナ粒子で分散処理後のものの走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例7−1のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 参考例7−2のアルミナ粒子の走査型電子顕微鏡による画像である。 実施例と参考例のアルミナ粒子生成条件と得られたアルミナ粒子の性状をまとめて示す図表である。
2 噴霧装置
4 超音波振動子
8 キャリアーガス入口
10 噴霧口
12 反応管
14−1〜14−4 加熱炉
16 フィルター
18 粒子捕集器

Claims (2)

  1. アンモニウムミョウバンを含むアルミニウム塩含有水溶液に超音波振動を与えて該溶液の液滴からなる霧を発生させる霧化工程と、
    発生した前記液滴を酸化性雰囲気中で、温度が順次高くなるように複数段階に設定された温度条件下で加熱処理して球状体の粒子とする造粒工程と、
    生成した粒子を捕集する捕集工程と、
    捕集された粒子に対し、さらに酸化性雰囲気中で800℃以上での加熱処理を施す焼成工程と、
    を含むアルミナ粒子製造方法。
  2. 前記アルミニウム塩含有水溶液はアンモニウムミョウバンと硝酸アルミニウムを含む請求項に記載のアルミナ粒子製造方法。
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