(実施形態1)
(1)概要
以下、本実施形態に係る電極装置3、放電装置10、及び静電霧化システム100の概要について、図1A、図1B、及び図2を参照して説明する。
本実施形態に係る電極装置3は、図1A及び図1Bに示すように、放電電極1と、対向電極2と、を備えている。この電極装置3は、放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されることにより放電を生じさせるように構成されている。
また、電極装置3は、図2に示すように、電圧印加回路4と共に放電装置10を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る放電装置10は、電極装置3と、電圧印加回路4と、を備えている。電圧印加回路4は、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加することにより、放電を生じさせる。
また、放電装置10は、図2に示すように、液体供給部5と共に静電霧化システム100を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る静電霧化システム100は、放電装置10と、液体供給部5と、を備えている。液体供給部5は、放電電極に液体50(図6A参照)を供給する。この静電霧化システム100では、放電装置10で生じる放電によって液体50を静電霧化する。すなわち、放電装置10は、例えば、液体供給部5から供給される液体50が放電電極1の表面に付着することで放電電極1に液体50が保持されている状態において、放電電極1と対向電極2との間に電圧印加回路4から電圧を印加する。これにより、放電電極1と対向電極2との間で放電が生じると、放電電極1に保持されている液体50が、放電によって静電霧化される。本開示において、放電電極1に保持されている液体50、つまり静電霧化の対象となる液体50を、単に「液体50」とも呼ぶ。
特に、本実施形態では、電圧印加回路4は、印加電圧V1の大きさが周期的に変動することにより、放電を間欠的に生じさせる。印加電圧V1が周期的に変動することで、液体50には機械的な振動が生じる。本開示でいう「印加電圧」は、放電を生じさせるために、電圧印加回路4が放電電極1と対向電極2との間に印加する電圧を意味する。
詳しくは後述するが、放電電極1と対向電極2との間に電圧(印加電圧V1)が印加されることにより、放電電極1に保持されている液体50は、電界による力を受けてテイラーコーン(Taylor cone)と呼ばれる円錐状の形状を成す(図6A参照)。そして、テイラーコーンの先端部(頂点部)に電界が集中することで、放電が発生する。このとき、テイラーコーンの先端部が尖っている程、つまり円錐の頂角が小さく(鋭角に)なる程に、絶縁破壊に必要な電界強度が小さくなり、放電が生じやすくなる。放電電極1に保持されている液体50は、機械的な振動に伴って、放電電極1の中心軸P1(図1B参照)に沿って伸縮し、これにより、第1形状と第2形状とに交互に変形する。第1形状は、放電電極1の中心軸P1に沿って液体50が伸びた状態、つまりテイラーコーンの形状である(図6A参照)。第2形状は、液体50が縮んだ状態、つまりテイラーコーンの先端部がつぶれた形状である(図6B参照)。その結果、上述したようなテイラーコーンが周期的に形成されるため、テイラーコーンが形成されるタイミングに合わせて、放電が間欠的に発生することになる。
ところで、本実施形態に係る電極装置3は、上述したように放電電極1と、対向電極2と、を備えている。図1A及び図1Bに示すように、放電電極1は、先端部に放電部11を有する柱状の電極である。対向電極2は、放電部11と対向する。この電極装置3は、放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されることにより放電を生じさせる。ここで、対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有している。周辺電極部21は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、放電電極1の中心軸P1を囲むように配置されている(図5A参照)。突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する(図5A参照)。周辺電極部21から放電部11までの距離D1は、突出電極部22から放電部11までの距離D2よりも短い(D1<D2)。
上述した構成によれば、電極装置3は、放電電極1と対向電極2との間に電圧(印加電圧V1)が印加されると、放電部11と対向する対向電極2のうち、周辺電極部21と突出電極部22とのいずれにも、電界が集中し得る。ただし、突出電極部22は周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出するので、放電部11との対向面積は、突出電極部22よりも周辺電極部21の方が大きい。そのため、電界集中の度合いは、周辺電極部21に比べて、放電部11との対向面積が小さい突出電極部22の方が高くなる。一方で、周辺電極部21から放電部11までの距離D1は、突出電極部22から放電部11までの距離D2よりも短いので、放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されると、まずは周辺電極部21と放電部11との間に作用する電界が支配的となる。そのため、電界集中の度合いが比較的に低い状態で放電が生じることになり、コロナ放電が生じやすくなる。したがって、絶縁破壊が継続的に発生するようなグロー放電又はアーク放電は生じにくく、グロー放電又はアーク放電が生じて有効成分(酸性成分、空気イオン、ラジカル及びこれを含む帯電微粒子液等)の生成効率の低下が生じにくくなる。
また、放電電極1に保持されている液体50が電界による力を受けてテイラーコーンを形成すると、例えば、テイラーコーンの先端部(頂点部)と突出電極部22との間に電界が集中しやすくなる。したがって、液体50と突出電極部22との間においては、比較的に高いエネルギーの放電が生じ、放電電極1に保持された液体50に生じたコロナ放電を、更に高エネルギーの放電にまで進展させることができる。その結果、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1(図8A参照)を断続的に形成することが可能となる。
(2)詳細
以下、本実施形態に係る電極装置3、放電装置10、及び静電霧化システム100の詳細について、図1A~図8Cを参照して説明する。
以下では一例として、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を設定し、特に、放電電極1の中心軸P1に沿った軸を「Z軸」とし、突出電極部22が突出する方向に沿った軸を「X軸」とする。「Y軸」は、これらX軸及びZ軸のいずれとも直交する。さらに、放電電極1から見た対向電極2側を、Z軸の正の向きと規定する。X軸、Y軸、及びZ軸は、いずれも仮想的な軸であり、図面中の「X」、「Y」、「Z」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。また、これらの方向は電極装置3の使用時の方向を限定する趣旨ではない。
(2.1)全体構成
上述した通り、本実施形態に係る静電霧化システム100は、図2に示すように、放電装置10と、液体供給部5と、を備えている。本実施形態に係る放電装置10は、電極装置3と、電圧印加回路4と、を備えている。
電極装置3は、放電電極1と、対向電極2と、を備えている。図2では、放電電極1及び対向電極2の形状を模式的に表している。電極装置3は、上述したように、これら放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されることにより、放電を生じさせる。
放電電極1は、図1A及び図1Bに示すように、Z軸に沿って延びる柱状の電極である。放電電極1は、長手方向(Z軸方向)の一端部(先端部)に放電部11を有し、長手方向の他端部(先端部とは反対側の端部)に基端部12(図4参照)を有している。放電電極1は、少なくとも放電部11が先細り形状に形成された針電極である。ここでいう「先細り形状」とは、先端が鋭く尖っている形状に限らず、図1A等に示すように、先端が丸みを帯びた形状を含む。
対向電極2は、放電電極1の放電部11に対向するように配置されている。そして、上述したように、対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有している。周辺電極部21は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、放電電極1の中心軸P1を囲むように配置されている。突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する。
本実施形態では、対向電極2は、図3及び図4に示すように、X軸方向に長い板状の平板部24を有している。そして、図4に示すように、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、放電電極1と対向電極2とは離間している。言い換えれば、図4に示すように、放電電極1と対向電極2とは、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、互いに離れた位置関係にある。
ここで、平板部24の一部には、平板部24を平板部24の厚み方向(Z軸方向)に貫通する開口部23が形成されている。対向電極2において、この開口部23の周辺に位置する部分が、周辺電極部21となる。そして、周辺電極部21から開口部23内に突出した部分が、突出電極部22となる。
放電電極1及び対向電極2は、電気絶縁性を有する合成樹脂製のハウジング6に保持されている。平板部24は、一例として、ハウジング6に設けられた一対のかしめ突起61(図3参照)にて、熱かしめ等により、ハウジング6にかしめ結合される。これにより、対向電極2は、ハウジング6に保持される。
ここで、対向電極2の厚み方向(開口部23の貫通方向)が放電電極1の長手方向(Z軸方向)に一致し、かつ放電電極1の放電部11が対向電極2の開口部23の中心付近に位置するように、対向電極2と放電電極1との位置関係が決められている。つまり、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、開口部23の中心は、放電電極1の中心軸P1上に位置する。つまり、対向電極2と放電電極1との間には、少なくとも対向電極2の開口部23によって隙間(空間)が確保される。言い換えれば、対向電極2は、放電電極1に対して隙間を介して対向するように配置され、放電電極1とは電気的に絶縁されている。
電極装置3における放電電極1及び対向電極2のより詳細な形状については、「(2.3)電極装置」の欄で説明する。
液体供給部5は、放電電極1に対して静電霧化用の液体50を供給する。液体供給部5は、一例として、放電電極1を冷却して、放電電極1に結露水を発生させる冷却装置51を用いて実現される。具体的には、冷却装置51は、一例として、図4に示すように、複数(図示例では4つ)のペルチェ素子511と、放熱板512と、を有している。複数のペルチェ素子511は、例えば、半田にて、放熱板512に対して機械的かつ電気的に接続され、放熱板512に保持されている。複数のペルチェ素子511の各々は、一端部(放熱板512側)を放熱端とし、他端部(放熱板512とは反対側)を吸熱端とする。
また、複数のペルチェ素子511は、絶縁板513を介して放電電極1に機械的に接続されている。言い換えれば、放電電極1は、基端部12にて絶縁板513に機械的に接続され、複数のペルチェ素子511は、吸熱端にて絶縁板513に機械的に接続されている。つまり、放電電極1と複数のペルチェ素子511とは、絶縁板513にて電気的に絶縁された状態で、熱的に結合されている。
この冷却装置51では、複数のペルチェ素子511に通電することによって、ペルチェ素子511と熱的に結合されている放電電極1を冷却することができる。このとき、冷却装置51は、基端部12を通じて放電電極1の全体を冷却する。これにより、空気中の水分が凝結して放電電極1の表面に結露水として付着する。すなわち、液体供給部5は、放電電極1を冷却して放電電極1の表面に液体50としての結露水を生成するように構成されている。この構成では、液体供給部5は、空気中の水分を利用して、放電電極1に液体50(結露水)を供給できるため、静電霧化システム100への液体の供給、及び補給が不要になる。
電圧印加回路4は、電極装置3と共に放電装置10を構成し、上述したように、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加することにより、放電を生じさせる回路である。
電圧印加回路4は、図2に示すように、電圧発生回路41と、駆動回路42と、制御回路43と、を有している。また、電圧印加回路4は、制限抵抗R1を更に有している。電圧発生回路41は、電源から電力供給を受けて、電極装置3に印加する電圧(印加電圧V1)を生成する回路である。ここでいう「電源」は、電圧発生回路41等に動作用の電力を供給する電源であって、一例として、数V~十数V程度の直流電圧を発生する電源回路である。駆動回路42は、電圧発生回路41を駆動する回路である。制御回路43は、例えば、監視対象に基づいて駆動回路42を制御する。ここでいう「監視対象」は、電圧印加回路4の出力電流及び出力電圧の少なくとも一方からなる。
電圧発生回路41は、例えば、絶縁型のDC/DCコンバータであって、電源からの入力電圧を昇圧し、昇圧後の電圧を印加電圧V1として出力する。電圧発生回路41の出力電圧は、印加電圧V1として電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に印加される。
電圧発生回路41は、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に対して電気的に接続されている。電圧発生回路41は、電極装置3に対して高電圧を印加する。ここでは、電圧発生回路41は、放電電極1を正極(プラス)、対向電極2を負極(グランド)として、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加するように構成されている。言い換えれば、電圧印加回路4から電極装置3に高電圧が印加された状態では、放電電極1と対向電極2との間に、放電電極1側を高電位、対向電極2側を低電位とする電位差が生じることになる。ここでいう「高電圧」とは、電極装置3において、後述する全路破壊放電又は部分破壊放電が生じるように設定される電圧であればよく、一例として、ピークが6.0kV程度となる電圧である。全路破壊放電及び部分破壊放電について詳しくは「(2.4)放電の態様」の欄で説明する。ただし、電圧印加回路4から電極装置3に印加される高電圧は、6.0kV程度に限らず、例えば、放電電極1及び対向電極2の形状、又は放電電極1及び対向電極2間の距離等に応じて適宜設定される。
また、制限抵抗R1は、電圧発生回路41と電極装置3との間に挿入されている。言い換えれば、電圧印加回路4は、印加電圧V1を発生する電圧発生回路41と、電圧発生回路41の一方の出力端と電極装置3との間に挿入された制限抵抗R1と、を有している。制限抵抗R1は、絶縁破壊後に流れる放電電流のピーク値を制限するための抵抗器である。つまり、制限抵抗R1は、放電時に電極装置3に流れる電流を制限することで、電極装置3及び電圧印加回路4を過電流から保護する機能を有している。
本実施形態では、制限抵抗R1は、電圧発生回路41と対向電極2との間に挿入されている。上述したように、対向電極2は負極(グランド)となるので、制限抵抗R1は、電圧発生回路41の低電位側の出力端と電極装置3との間に挿入されることになる。
ここで、電圧印加回路4の動作モードには、第1モードと、第2モードとの2つのモードが含まれている。第1モードは、印加電圧V1を時間経過に伴って上昇させ、コロナ放電から進展して、放電電極1と対向電極2との間に、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1を形成して放電電流を生じさせるためのモードである。第2モードは、電極装置3を過電流状態として、制御回路43等により放電電流を遮断するためのモードである。本開示でいう「放電電流」は、放電経路L1を通して流れる比較的大きな電流を意味しており、放電経路L1が形成される前のコロナ放電において生じる数μA程度の微小電流を含まない。本開示でいう「過電流状態」とは、放電により負荷が低下し、想定値以上の電流が電極装置3に流れる状態を意味する。
本実施形態では、制御回路43は、駆動回路42の制御を行うことで、電圧印加回路4の制御を行う。制御回路43は、電圧印加回路4が駆動される駆動期間において、電圧印加回路4が第1モードと第2モードとを交互に繰り返すように、駆動回路42を制御する。ここで、制御回路43は、電圧印加回路4から電極装置3に印加される印加電圧V1の大きさを、駆動周波数にて周期的に変動させるように、駆動周波数にて第1モードと第2モードとの切り替えを行う。本開示でいう「駆動期間」は、電極装置3に放電を生じさせるように電圧印加回路4が駆動される期間である。
すなわち、電圧印加回路4は、放電電極1を含む電極装置3に印加する電圧の大きさを一定値に保つのではなく、所定範囲内の駆動周波数にて、周期的に変動させる。電圧印加回路4は、印加電圧V1の大きさを周期的に変動させることにより、放電を間欠的に生じさせる。つまり、印加電圧V1の変動周期に合わせて、放電経路L1が周期的に形成され、放電が周期的に発生する。以下では、放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が生じる周期を「放電周期」ともいう。これにより、放電電極1に保持されている液体50に作用する電気エネルギーの大きさが駆動周波数にて周期的に変動することになり、結果的に、放電電極1に保持されている液体50が駆動周波数にて機械的に振動する。
ここで、液体50の変形量を大きくするには、印加電圧V1の変動の周波数である駆動周波数は、放電電極1に保持されている液体50の共振周波数(固有振動数)を含む所定範囲内、つまり液体50の共振周波数付近の値に設定されることが好ましい。本開示でいう「所定範囲」は、その周波数で液体50に加わる力(エネルギー)を振動させたときに、液体50の機械的な振動が増幅されるような周波数の範囲であって、液体50の共振周波数を基準として下限値及び上限値が規定された範囲である。つまり、駆動周波数は、液体50の共振周波数付近の値に設定される。この場合、印加電圧V1の大きさが変動することに伴う液体50の機械的な振動の振幅は、比較的大きくなり、結果的に、液体50の機械的な振動に伴う液体50の変形量が大きくなる。液体50の共振周波数は、例えば、液体50の体積(量)、表面張力及び粘度等に依存する。
すなわち、本実施形態に係る静電霧化システム100では、液体50は、その共振周波数付近の駆動周波数で機械的に振動することにより比較的大きな振幅で振動する。そのため、液体50は、電界が作用した際に生じるテイラーコーンの先端部(頂点部)がより尖った(鋭角な)形状となる。したがって、液体50が、その共振周波数から離れた周波数で機械的に振動する場合に比べて、テイラーコーンが形成された状態において絶縁破壊に必要な電界強度が小さくなり、放電が生じやすくなる。よって、例えば、電圧印加回路4から電極装置3に印加される電圧(印加電圧V1)の大きさのばらつき、放電電極1の形状のばらつき、又は放電電極1に供給される液体50の量(体積)のばらつき等があっても、放電が安定的に発生可能となる。また、電圧印加回路4は、放電電極1を含む電極装置3に印加する電圧の大きさを比較的低く抑えることができる。そのため、電極装置3周辺における絶縁対策のための構造を簡略化したり、電圧印加回路4等に用いる部品の耐圧を下げたりすることができる。
(2.2)動作
以上説明した構成の静電霧化システム100は、電圧印加回路4が以下のように動作することで、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に放電を生じさせる。
すなわち、制御回路43は、放電経路L1が形成されるまでの期間においては、電圧印加回路4の出力電圧を監視対象とし、監視対象(出力電圧)が最大値α以上になると、電圧発生回路41から出力されるエネルギーを減少させる。一方、放電経路L1の形成後においては、制御回路43は、電圧印加回路4の出力電流を監視対象とし、監視対象(出力電流)が閾値以上になると、電圧発生回路41から出力されるエネルギーを減少させる。これにより、電極装置3に印加される電圧を低下させ、電極装置3を過電流状態として放電電流を遮断する第2モードにて、電圧印加回路4が動作する。つまり、電圧印加回路4の動作モードが、第1モードから第2モードに切り替わることになる。
このとき、電圧印加回路4の出力電圧及び出力電流が共に低下するため、制御回路43は、駆動回路42の動作を再開させる。これにより、電極装置3に印加される電圧が時間経過に伴って上昇し、コロナ放電から進展して、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1が形成される。
駆動期間においては、制御回路43が上述した動作を繰り返すことにより、電圧印加回路4は、第1モードと、第2モードと、を交互に繰り返すように動作する。これにより、放電電極1に保持されている液体50に作用する電気エネルギーの大きさが駆動周波数にて周期的に変動することになり、液体50は駆動周波数にて機械的に振動する。
要するに、電圧印加回路4から、放電電極1を含む電極装置3に電圧が印加されることにより、放電電極1に保持されている液体50には、電界による力が作用して液体50が変形する。このとき、放電電極1に保持されている液体50に作用する力F1は、液体50に含まれる電荷量q1と電界E1との積によって表される(F1=q1×E1)。特に、本実施形態では、放電電極1の放電部11と対向する対向電極2と放電電極1との間に電圧が印加されるので、液体50には、電界によって対向電極2側に引っ張られる向きの力が作用する。その結果、図6Aに示すように、放電電極1の放電部11に保持されている液体50は、電界による力を受けて、放電電極1の中心軸P1に沿って(つまりZ軸方向において)対向電極2側に伸び、テイラーコーンと呼ばれる円錐状の形状を成す。図6Aに示す状態から、電極装置3に印加される電圧が小さくなれば、電界の影響によって液体50に作用する力も小さくなり、液体50が変形する。その結果、図6Bに示すように、放電電極1の放電部11に保持されている液体50は、縮むことになる。
そして、電極装置3に印加される電圧の大きさが駆動周波数にて周期的に変動することにより、放電電極1に保持されている液体50は、図6Aに示す形状と図6Bに示す形状とに、交互に変形する。すなわち、本実施形態では、放電電極1は放電部11を覆うように液体50を保持している。液体50は、放電によって放電電極1の中心軸P1に沿って(つまりZ軸方向において)伸縮する。テイラーコーンの先端部(頂点部)に電界が集中することで放電が発生するので、図6Aに示すようにテイラーコーンの先端部が尖っている状態で絶縁破壊が生じる。したがって、駆動周波数に合わせて放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が間欠的に発生する。
これにより、放電電極1に保持されている液体50が、放電によって静電霧化される。その結果、静電霧化システム100では、ラジカルを含有するナノメータサイズの帯電微粒子液が生成される。生成された帯電微粒子液は、例えば、対向電極2の開口部23を通して、放電装置10の周囲に放出される。
(2.3)電極装置
次に、本実施形態に係る放電装置10で用いている電極装置3(放電電極1及び対向電極2)のより詳細な形状について、図1A、図1B、図5A~図7を参照して説明する。図1A、図1B、図6A~図7では、電極装置3を構成する放電電極1及び対向電極2の要部を模式的に示しており、放電電極1及び対向電極2以外の構成については適宜図示を省略する。図5A~図5Cは、対向電極2のみを示す図である。
すなわち、本実施形態では、上述したように、対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有している。周辺電極部21は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て(つまりZ軸の一方から見て)、放電電極1の中心軸P1を囲むように配置されている(図5A参照)。突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て(つまりZ軸の一方から見て)、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する(図5A参照)。
放電電極1は、一例として、銅タングステン合金(Cu-W合金)等の導電性の金属材からなる。放電電極1は、図1A及び図1Bに示すように、Z軸に沿って延びる円柱状の電極である。放電電極1は、長手方向(Z軸方向)の一端部(先端部)に放電部11を有している。
本実施形態では、放電電極1は、その先端部(放電部11側の端部)が、全体として略半球状に形成されている。言い換えれば、放電電極1の先端面、つまりZ軸方向において対向電極2側に向いた面は、曲面を含んでいる。さらに、放電部11は、放電電極1の中心軸P1上に位置し、放電部11自体も略半球状に形成されている。言い換えれば、放電部11の表面、つまりZ軸方向において対向電極2側に向いた面は、曲面を含んでいる。ただし、放電部11の曲率半径は、放電電極1の先端部全体の曲率半径に比較して、十分に小さい。液体供給部5により放電電極1に液体50が供給されると、液体50は、少なくとも放電部11を覆うように放電電極1に保持される(図6A及び図6B参照)。
一方、対向電極2は、一例として、銅タングステン合金(Cu-W合金)等の導電性の金属材からなる。本実施形態では、対向電極2は、上述したように、板状の平板部24を有している。そして、平板部24の一部には、図5A~図5Cに示すように、平板部24を平板部24の厚み方向(Z軸方向)に貫通する開口部23が形成されている。対向電極2において、この開口部23の周辺に位置する部分が、周辺電極部21となる。そして、周辺電極部21から開口部23内に突出した部分が、突出電極部22となる。
より詳細には、平板部24の一部には、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、放電電極1から離れる向き(Z軸の正の向き)に突出する、ドーム状の周辺電極部21が形成されている。周辺電極部21は、一例として、絞り加工によって、平板部24の一部を凹ませることで、Z軸方向に扁平な半球殻状(ドーム状)に形成されている。周辺電極部21は、図5B及び図5Cに示すように、放電電極1とは反対側に凹む内面212を有している。内面212は、Z軸方向における放電電極1側の端縁の内径が、放電電極1とは反対側の端縁の内径よりも小さくなるように、放電電極1の中心軸P1に対して傾斜するテーパ面である。
また、周辺電極部21の中央部には、開口部23が形成されている。開口部23は、円形状に開口し、対向電極2を対向電極2の厚み方向(Z軸方向)に貫通する。つまり、周辺電極部21は、円形状に開口する開口部23を有している。図5Aでは、周辺電極部21の内周縁(つまり開口部23の周縁)及び外周縁を、それぞれ想像線(二点鎖線)で示している。言い換えれば、図5Aにおいて、同心円となる2つの想像線(二点鎖線)の間の領域が、周辺電極部21である。開口部23の中心は、放電電極1の中心軸P1上に位置する。
また、突出電極部22は、周辺電極部21の内周縁(つまり開口部23の周縁)から、開口部23の中心に向けて突出する。本実施形態では、突出電極部22は複数(ここでは2つ)設けられている。つまり、本実施形態では、対向電極2は、突出電極部22を複数有している。複数の突出電極部22の各々は、周辺電極部21の周方向の一部から、放電電極1の中心軸P1に向けて突出する。
ここで、複数(ここでは2つ)の突出電極部22は、周辺電極部21の周方向において等間隔に配置されている。つまり、複数の突出電極部22は、開口部23の周方向において等間隔に配置されている。本実施形態では、対向電極2は、2つの突出電極部22を有するので、これら2つの突出電極部22は、周辺電極部21の周方向(開口部23の周方向)において180度回転対称となる位置に設けられている。つまり、複数の突出電極部22は、開口部23の中心を対称点(対称中心)とする点対称な位置に設けられている。このような開口部23及び複数の突出電極部22は、一例として、打ち抜き加工によって形成される。
ところで、本実施形態に係る電極装置3は、酸性成分の生成量を増加させることを目的として、放電電極1の放電部11と対向電極2の突出電極部22との間に、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1を断続的に形成されるように構成されている。この場合において、オゾンの発生量を低減するためには、突出電極部22の先端部分に電界を集中させることが好ましい。そのため、図5Aに示すように、突出電極部22は平面視において、三角形状であることが好ましい。言い換えれば、放電電極1の中心軸P1の一方から見て(つまりZ軸の一方から見て)、突出電極部22は三角形状であることが好ましい。本開示でいう「三角形状」とは、3つの頂点を有する三角形に限らず、図5Aに示す、突出電極部22のように、先端がR面(曲面)であるような形状も含む。
さらに、平面視において、三角形状に形成された突出電極部22の先端部(頂点部)に電界を集中させるためには、突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)の角度が鋭角であることが好ましい。ただし、突出電極部22は、例えば、打ち抜き加工によって形成されるため、突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)の角度が小さすぎると、金型が破損する可能性が高くなる。そのため、金型の破損を抑えながらも突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)に電界を集中させるためには、突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)の角度は60度以上であることが好ましい。言い換えれば、上記三角形の頂角は60度以上であることが好ましい。より好ましくは、上記三角形の頂角は90度であるのがよい。さらに、上記三角形は、二等辺三角形であることが好ましい。
この場合、上記三角形の底辺の長さを「W1」、底辺と対向する頂点から底辺への垂線の長さを「W2」とすると、長さW1は長さW2よりも長くなる。また、上記三角形の垂線の長さW2は、図5Aに示すように、開口部23の半径r1の1/2以下であることが好ましい。突出電極部22が上述のような三角形状であれば、金型の破損を抑えながらも突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)に電界を集中させることができる。その結果、放電部11と突出電極部22との間の放電が安定するという利点がある。一例として、底辺の長さW1は1mm以下である。
また、突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)が尖っている場合には、この部分に電界が集中することで電食が生じやすく、放電状態が経時的に変化する可能性がある。そのため、放電状態が経時的に変化しないように、突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)が曲面を含んでいることが好ましい。本実施形態では、突出電極部22は、図5Aに示すように、平面視における先端部(頂点部)が曲面を含んでいる。本実施形態では一例として、突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)の曲率半径は0.1mm程度である。この構成によれば、突出電極部22の平面視における先端部(頂点部)が尖っている場合と比較して、電食の発生を抑えることができ、その結果、放電状態が経時的に変化しにくくなる。
また、複数(ここでは2つ)の突出電極部22は、共通の形状を有している。言い換えれば、複数の突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1に対して180度回転対称となる形状を有している。そのため、放電電極1の中心軸P1上に位置する放電部11から突出電極部22までの距離は、複数の突出電極部22において略均一となる。
また、本実施形態では、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、放電部11と突出電極部22との間に周辺電極部21の少なくとも一部が位置する。すなわち、本実施形態では、上述したように周辺電極部21は、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において、放電電極1から離れる向き(Z軸の正の向き)に突出する、ドーム状に形成されている。そして、突出電極部22は、このドーム状の周辺電極部21の内周縁(つまり開口部23の周縁)から、開口部23の中心に向けて突出している。そのため、突出電極部22から見ると、図5Bに示すように、放電部11側(つまりZ軸の負の向き)に、周辺電極部21の少なくとも一部が位置する。よって、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)においては、突出電極部22の方が、周辺電極部21よりも放電部11から離れることになる。
ところで、周辺電極部21は、図5B及び図5Cに示すように、放電部11に向けて凸となる第1縁部211を含んでいる。また、突出電極部22は、放電部11に向けて凸となる第2縁部221を含んでいる。
第1縁部211は、周辺電極部21のうち、放電部11に最も近い位置にある角部からなる。本実施形態では、第1縁部211は、ドーム状に形成された周辺電極部21の内面212のうち、Z軸方向における放電電極1側の縁部である。言い換えれば、第1縁部211は、周辺電極部21のうち、放電電極1の中心軸P1側を向いた面(内面212)と、Z軸の負の向きを向いた面との間の角部である。第1縁部211は、周辺電極部21の周方向の全周にわたって形成されている。そのため、第1縁部211は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、中心軸P1を中心とする円形状となる。これにより、放電電極1の中心軸P1上に位置する放電部11から、第1縁部211までの距離は、第1縁部211の全周にわたって略均一となる。
第2縁部221は、突出電極部22のうち、放電部11に最も近い位置にある角部からなる。本実施形態では、第2縁部221は、平面視において、三角形状に形成された突出電極部22の先端部(頂点部)のうち、Z軸方向における放電電極1側の縁部である。言い換えれば、第2縁部221は、突出電極部22のうち、放電電極1の中心軸P1側を向いた面と、Z軸の負の向きを向いた面との間の角部である。ここで、放電電極1の中心軸P1上に位置する放電部11から、第2縁部221までの距離は、複数(ここでは2つ)の突出電極部22で略均一となる。
ところで、周辺電極部21から放電部11までの距離D1は、図1A及び図1Bに示すように、突出電極部22から放電部11までの距離D2よりも短い(D1<D2)。
本開示でいう「距離D1」は、周辺電極部21から放電部11までの最短距離を意味し、本実施形態では、周辺電極部21の第1縁部211の一点と、放電部11の一点とを結ぶ線分の長さである。また、本開示でいう「距離D2」は、突出電極部22から放電部11までの最短距離を意味し、本実施形態では、突出電極部22の第2縁部221の一点と、放電部11の一点とを結ぶ線分の長さである。つまり、周辺電極部21から放電部11までの距離D1は、第1縁部211から放電部11までの距離である。突出電極部22から放電部11までの距離D2は、第2縁部221から放電部11までの距離である。
また、本実施形態では、上述した通り、放電電極1は放電部11を覆うように液体50を保持し、液体50は、放電によって放電電極1の中心軸P1に沿って(つまりZ軸方向において)伸縮する。ここで、放電電極1の中心軸P1に沿って液体50が伸びた状態では、図6Aに示すように、液体50がテイラーコーンの形状(第1形状)となる。一方、液体50が縮んだ状態では、図6Bに示すように、液体50はテイラーコーンの先端部がつぶれた形状(第2形状)となる。
そして、図6Aに示すように、液体50が伸びた状態(第1形状)にあれば、周辺電極部21及び突出電極部22からの距離は、放電部11に代えて液体50を基準として以下のように規定されることが好ましい。すなわち、図6Aに示すように、液体50が伸びた状態における、液体50から周辺電極部21までの距離D3は、液体50から突出電極部22までの距離D4よりも長い(D3>D4)。
本開示でいう「距離D3」は、伸びた状態にある液体50から周辺電極部21までの最短距離を意味し、本実施形態では、周辺電極部21の第1縁部211の一点と、第1形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。また、本開示でいう「距離D4」は、伸びた状態にある液体50から突出電極部22までの最短距離を意味し、本実施形態では、突出電極部22の第2縁部221の一点と、第1形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。つまり、液体50から周辺電極部21までの距離D3は、第1縁部211から、第1形状(テイラーコーン)の液体50までの距離である。液体50から突出電極部22までの距離D4は、第2縁部221から、第1形状(テイラーコーン)の液体50までの距離である。
さらに、図6Bに示すように、液体50が縮んだ状態(第2形状)にあれば、周辺電極部21及び突出電極部22からの距離は、放電部11に代えて液体50を基準として以下のように規定されることが好ましい。すなわち、図6Bに示すように、液体50が縮んだ状態における、液体50から周辺電極部21までの距離D5は、液体50から突出電極部22までの距離D6よりも短い(D5<D6)。
本開示でいう「距離D5」は、縮んだ状態にある液体50から周辺電極部21までの最短距離を意味し、本実施形態では、周辺電極部21の第1縁部211の一点と、第2形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。また、本開示でいう「距離D6」は、縮んだ状態にある液体50から突出電極部22までの最短距離を意味し、本実施形態では、突出電極部22の第2縁部221の一点と、第2形状の液体50の頂点とを結ぶ線分の長さである。つまり、液体50から周辺電極部21までの距離D5は、第1縁部211から、第2形状(テイラーコーンの先端部がつぶれた形状)の液体50までの距離である。液体50から突出電極部22までの距離D6は、第2縁部221から、第2形状(テイラーコーンの先端部がつぶれた形状)の液体50までの距離である。
本実施形態に係る電極装置3は、上述したような距離D1~D6の関係を採用することにより、以下のような利点がある。すなわち、周辺電極部21から放電部11までの距離D1は、突出電極部22から放電部11までの距離D2よりも短いので、放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されると、まずは周辺電極部21と放電部11との間に作用する電界が支配的となる。そのため、電界集中の度合いが比較的に低い状態で放電が生じることになり、コロナ放電が生じやすくなる。したがって、絶縁破壊が継続的に発生するようなグロー放電又はアーク放電は生じにくく、グロー放電又はアーク放電による有効成分(酸性成分、空気イオン、ラジカル及びこれを含む帯電微粒子液等)の生成効率の低下が生じにくくなる。
また、放電電極1に保持されている液体50が電界による力を受けてテイラーコーンを形成すると、このときの(伸びた状態の)液体50から周辺電極部21までの距離D3は、液体50から突出電極部22までの距離D4よりも長くなる。そのため、テイラーコーンの先端部(頂点部)と突出電極部22との間に電界が集中しやすくなる。したがって、液体50と突出電極部22との間においては、比較的に高いエネルギーの放電が生じ、放電電極1に保持された液体50に生じたコロナ放電を、更に高エネルギーの放電にまで進展させることができる。その結果、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1が形成される。
また、電界の影響によって液体50に作用する力が小さくなると、このときの(縮んだ状態の)液体50から周辺電極部21までの距離D5は、液体50から突出電極部22までの距離D6よりも短くなる。そのため、液体50と周辺電極部21との間に電界が集中しやすくなる。したがって、液体50と周辺電極部21との間においては、比較的に低いエネルギーの放電が生じ、放電電極1と対向電極2との間の放電経路L1が消失する。その結果、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1を断続的に形成することが可能となる。
以下に、本実施形態に係る電極装置3の形状を、図7を参照して、幾何学的に説明する。図7は、電極装置3を構成する放電電極1及び対向電極2の要部を模式的に示しており、放電電極1及び対向電極2以外の構成については適宜図示を省略する。図7は、放電電極1の中心軸P1及び突出電極部22の先端を含む仮想平面VP1で切った断面図である。図7中の、仮想平面VP1、仮想線VL1、仮想基準線VL2及び仮想平行線VL3は、いずれも仮想的な面又は線であり、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。
すなわち、本実施形態に係る電極装置3は、図7に示すように、放電電極1と、対向電極2と、を備えている。放電電極1は、先端部に放電部11を有する柱状の電極である。対向電極2は、放電部11と対向する。この電極装置3は、放電電極1と対向電極2との間に電圧が印加されることにより放電を生じさせる。ここで、対向電極2は、周辺電極部21と、突出電極部22と、を有している。周辺電極部21は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、放電電極1の中心軸P1を囲むように配置されている。突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する。ここで、仮想平面VP1内において、仮想線VL1の垂直二等分線である仮想基準線VL2を規定した場合に、放電部11は、仮想基準線VL2から見て、第1縁部211と同じ側に位置する。仮想平面VP1は、放電電極1の中心軸P1及び突出電極部22の先端を含む仮想的な面(平面)である。仮想線VL1は、周辺電極部21のうち放電部11までの距離が最短となる第1縁部211と、突出電極部22のうち放電部11までの距離が最短となる第2縁部221と、を結ぶ仮想的な線(直線)である。
要するに、図7に示すような、仮想平面VP1を含む断面において、仮想線VL1の垂直二等分線である仮想基準線VL2から見て、放電部11は第1縁部211と同じ側に位置する。図7の例では、放電部11及び第1縁部211は、いずれも仮想基準線VL2から見ると、第2縁部221とは反対側、つまりZ軸の負の側に位置する。仮想基準線VL2は、仮想線VL1の垂直二等分線であるので、第1縁部211及び第2縁部221の両方に対して等距離となる点の集合からなる。そのため、放電部11は、第2縁部221よりも第1縁部211に近い位置に存在することになる。このような形状を採用することで、周辺電極部21から放電部11までの距離D1(図1B参照)は、突出電極部22から放電部11までの距離D2(図1B参照)よりも短くなる(D1<D2)。
さらに、本実施形態では、仮想平面VP1内において、放電部11は、仮想基準線VL2と仮想平行線VL3との間に位置する。仮想平行線VL3は、第1縁部211を通り、仮想基準線VL2と平行な仮想的な線(直線)である。
要するに、図7に示すような、仮想平面VP1を含む断面において、放電部11は、仮想基準線VL2と、仮想平行線VL3との間に位置する。仮想基準線VL2は、仮想線VL1の垂直二等分線であるので、第1縁部211及び第2縁部221の両方に対して等距離となる点の集合からなる。仮想平行線VL3は、第1縁部211を通り、仮想基準線VL2と平行な線(直線)である。
さらに、本実施形態では、放電電極1に保持されている液体50が伸びた状態(第1形状)にあれば、第1形状(テイラーコーン)の液体50の頂点は、仮想平面VP1内において、仮想基準線VL2から見て、第2縁部221と同じ側に位置する。
要するに、図7に示すような、仮想平面VP1を含む断面において、仮想線VL1の垂直二等分線である仮想基準線VL2から見て、伸びた状態の液体50の頂点は、第2縁部221と同じ側に位置する。図7の例では、液体50の頂点及び第2縁部221は、いずれも仮想基準線VL2から見ると、第1縁部211とは反対側、つまりZ軸の正の側に位置する。仮想基準線VL2は、仮想線VL1の垂直二等分線であるので、第1縁部211及び第2縁部221の両方に対して等距離となる点の集合からなる。そのため、伸びた状態の液体50の頂点は、第1縁部211よりも第2縁部221に近い位置に存在することになる。このような形状を採用することで、液体50が伸びた状態における、液体50から周辺電極部21までの距離D3(図6A参照)は、液体50から突出電極部22までの距離D4(図6A参照)よりも長くなる(D3>D4)。
(2.4)放電の態様
以下、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加した場合に発生する放電形態の詳細について、図8A~図8Cを参照して説明する。図8A~図8Cは、放電形態を説明するための概念図であって、図8A~図8Cでは、放電電極1及び対向電極2を模式的に表している。また、本実施形態に係る放電装置10では、実際には、放電電極1には液体50が保持されており、この液体50と対向電極2との間で放電が生じるが、図8A~図8Cでは、液体50の図示を省略する。また、以下では、放電電極1の放電部11に液体50が無い場合を想定して説明するが、液体50が有る場合には、放電の発生箇所等について「放電電極1の放電部11」を「放電電極1に保持された液体50」に読み替えればよい。
ここではまず、コロナ放電について、図8Aを参照して説明する。
一般的には、一対の電極間にエネルギーを投入して放電を生じさせると、投入したエネルギーの量に応じて、放電形態がコロナ放電から、グロー放電、又はアーク放電へと進展する。
グロー放電及びアーク放電は、一対の電極間での絶縁破壊を伴う放電である。グロー放電及びアーク放電においては、一対の電極間にエネルギーが投入されている間は、絶縁破壊によって形成される放電経路が維持され、一対の電極間に放電電流が継続的に発生する。これに対して、コロナ放電は、図8Aに示すように、一方の電極(放電電極1)で局所的に発生する放電であり、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間の絶縁破壊を伴わない放電である。要するに、放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1が印加されることで、放電電極1の放電部11で局所的なコロナ放電が発生する。ここで、放電電極1は負極(グランド)側であるから、放電電極1の放電部11に生じるコロナ放電は負極性コロナである。このとき、放電電極1の放電部11の周囲には、局所的に絶縁破壊された領域A1が生じ得る。この領域A1は、後述する部分破壊放電における第1絶縁破壊領域A3及び第2絶縁破壊領域A4の各々のように、特定の方向に長く延びた形状ではなく、点状(又は球状)となる。
ここで、電源(電圧印加回路4)から一対の電極間に対して単位時間当たりに放出可能な電流容量が十分に大きければ、一度形成された放電経路は途切れることなく維持され、上述のようにコロナ放電から、グロー放電又はアーク放電へと進展する。
次に、全路破壊放電について、図8Bを参照して説明する。
全路破壊放電は、図8Bに示すように、コロナ放電から進展して一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間の全路破壊に至る、という現象が間欠的に繰り返される放電形態である。つまり、全路破壊放電においては、放電電極1と対向電極2との間には、放電電極1と対向電極2との間において、全体的に絶縁破壊された放電経路L1が生じる。このとき、放電電極1の放電部11と、対向電極2(いずれかの突出電極部22の第2縁部221)との間には、全体的に絶縁破壊された領域A2が生じ得る。この領域A2は、後述する部分破壊放電における第1絶縁破壊領域A3及び第2絶縁破壊領域A4の各々のように、部分的に生じるのではなく、放電電極1の放電部11と対向電極2との間をつなぐように生じる。
本開示でいう「絶縁破壊」は、導体間を隔離している絶縁体(気体を含む)の電気絶縁性が破壊され、絶縁状態が保てなくなることを意味する。気体の絶縁破壊は、例えば、イオン化された分子が電場により加速されて他の気体分子に衝突してイオン化し、イオン濃度が急増して気体放電を起こすために生じる。
また、全路破壊放電は、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間での絶縁破壊(全路破壊)を伴うものの、絶縁破壊が継続的に生じるのではなく、絶縁破壊が間欠的に発生する放電である。そのため、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間に生じる放電電流についても、間欠的に発生する。すなわち、上述したように放電経路L1を維持するのに必要な電流容量を電源(電圧印加回路4)が有さない場合等においては、コロナ放電から全路破壊に進展した途端に一対の電極間に印加される電圧が低下し、放電経路L1が途切れて放電が停止する。ここでいう「電流容量」は、単位時間に放出可能な電流の容量である。このような放電の発生、及び停止が繰り返されることにより、放電電流が間欠的に流れることになる。このように、全路破壊放電は、放電エネルギーの高い状態と放電エネルギーの低い状態とを繰り返す点において、絶縁破壊が継続的に発生する(つまり放電電流が継続的に発生する)グロー放電及びアーク放電とは相違する。
次に、部分破壊放電について、図8Cを参照して説明する。
部分破壊放電に際して、放電装置10は、まず放電電極1の放電部11で局所的なコロナ放電を生じさせる。本実施形態では、放電電極1は正極(プラス)側であるから、放電電極1の放電部11に生じるコロナ放電は正極性コロナである。放電装置10は、放電電極1の放電部11に生じたコロナ放電を、更に高エネルギーの放電にまで進展させる。この高エネルギーの放電により、放電電極1と対向電極2との間には、部分的に絶縁破壊された放電経路L1が形成される。
また、部分破壊放電は、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間での部分的な絶縁破壊を伴うものの、絶縁破壊が継続的に生じるのではなく、絶縁破壊が間欠的に発生する放電である。そのため、一対の電極(放電電極1及び対向電極2)間に生じる放電電流についても、間欠的に発生する。すなわち、放電経路L1を維持するのに必要な電流容量を電源(電圧印加回路4)が有さない場合等においては、コロナ放電から部分破壊放電に進展した途端に一対の電極間に印加される電圧が低下し、放電経路L1が途切れて放電が停止する。このような放電の発生、及び停止が繰り返されることにより、放電電流が間欠的に流れることになる。このように、部分破壊放電は、放電エネルギーの高い状態と放電エネルギーの低い状態とを繰り返す点において、絶縁破壊が継続的に発生する(つまり放電電流が継続的に発生する)グロー放電及びアーク放電とは相違する。
より詳細には、放電装置10は、互いに隙間を介して対向するように配置される放電電極1及び対向電極2間に印加電圧V1を印加することにより、放電電極1と対向電極2との間に放電を生じさせる。そして、放電の発生時には、放電電極1と対向電極2との間には、部分的に絶縁破壊された放電経路L1が形成される。このとき形成される放電経路L1には、図8Cに示すように、放電電極1の周囲に生成される第1絶縁破壊領域A3と、対向電極2の周囲に生成される第2絶縁破壊領域A4と、が含まれている。
すなわち、放電電極1と対向電極2との間には、全体的にではなく部分的(局所的)に、絶縁破壊された放電経路L1が形成される。このように、部分破壊放電においては、放電電極1と対向電極2との間に形成される放電経路L1は、全路破壊には至らず、部分的に絶縁破壊された経路である。
ここで、第1絶縁破壊領域A3及び第2絶縁破壊領域A4は、互いに接触しないように離れて存在している。言い換えれば、放電経路L1は、少なくとも第1絶縁破壊領域A3と第2絶縁破壊領域A4との間において、絶縁破壊されていない領域(絶縁領域)を含んでいる。そのため、部分破壊放電においては、放電電極1と対向電極2との間の空間について、全路破壊には至らず、部分的に絶縁破壊された状態で、放電経路L1を通して放電電流が流れることになる。要するに、部分的な絶縁破壊が生じた放電経路L1、言い換えれば、一部は絶縁破壊されていない放電経路L1であっても、放電電極1と対向電極2との間には、放電経路L1を通して放電電流が流れ、放電が生じる。
ここにおいて、第2絶縁破壊領域A4は、基本的には、対向電極2のうち、放電部11までの距離(空間距離)が最短となる部位の周囲に生じる。本実施形態では、対向電極2は、突出電極部22の第2縁部221において、放電部11までの距離D2(図1B参照)が最短となるので、第2絶縁破壊領域A4は第2縁部221の周囲に生成される。つまり、図8Cに示す突出電極部22は、実際には第2縁部221に相当する。
そして、全路破壊放電(図8B参照)又は部分破壊放電(図8C参照)においては、コロナ放電(図8A参照)と比較して大きなエネルギーでラジカルが生成され、コロナ放電と比較して2~10倍程度の大量のラジカルが生成される。このようにして生成されるラジカルは、除菌、脱臭、保湿、保鮮、ウイルスの不活化にとどまらず、様々な場面で有用な効果を奏する基となる。ここで、全路破壊放電又は部分破壊放電によってラジカルが生成される際には、オゾンも発生する。ただし、全路破壊放電又は部分破壊放電では、コロナ放電と比較して2~10倍程度のラジカルが生成されるのに対して、オゾンの発生量はコロナ放電の場合と同程度に抑えられる。
また、部分破壊放電(図8C参照)においては、全路破壊放電(図8B参照)と比較しても、過大なエネルギーによるラジカルの消失を抑制でき、全路破壊放電と比較してもラジカルの生成効率の向上を図ることができる。すなわち、全路破壊放電では、その放電に係るエネルギーが高すぎるが故に、生成されたラジカルの一部が消失して、有効成分の生成効率の低下につながる可能性がある。これに対して、部分破壊放電では、全路破壊放電と比較して放電に係るエネルギーが小さく抑えられるため、過大なエネルギーに晒されることによるラジカルの消失量を低減し、ラジカルの生成効率の向上を図ることができる。
さらに、部分破壊放電では、全路破壊放電に比較して電界の集中が緩められる。そのため、全路破壊放電では、全路破壊された放電経路を通じて放電電極1及び対向電極2間には、瞬間的に大きな放電電流が流れ、その際の電気抵抗は非常に小さくなっている。これに対して、部分破壊放電では、電界の集中が緩められることで、部分的に絶縁破壊された放電経路L1の形成時に、放電電極1及び対向電極2間に瞬間的に流れる電流の最大値が、全路破壊放電に比べて小さく抑えられる。これにより、部分破壊放電では、全路破壊放電に比較して、窒化酸化物(NOx)の発生が抑制され、さらに電気ノイズが小さく抑えられる。
また、本実施形態では、上述したように、対向電極2は、複数(ここでは2つ)の突出電極部22を有しており、各突出電極部22から放電電極1までの距離D2(図1B参照)は、複数の突出電極部22において均等である。そのため、絶縁破壊された領域A2又は第2絶縁破壊領域A4は、複数の突出電極部22のうち、いずれか1つの突出電極部22の第2縁部221の周囲に生成されることになる。ここで、絶縁破壊された領域A2又は第2絶縁破壊領域A4が生成される突出電極部22は、特定の突出電極部22には限定されず、複数の突出電極部22の中でランダムに決まることになる。
(3)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
図9A~図9Dは、実施形態1の変形例に係る電極装置3A~3Dを示す模式的な端面図である。
図9Aに示す電極装置3Aは、対向電極2Aにおける各突出電極部22の断面形状が実施形態1とは異なり、先細り形状となっている。この突出電極部22においては、三角形の頂点が放電電極1の中心軸P1に向けられている。これにより、突出電極部22の先端部は尖った(鋭角な)形状となる。
図9Bに示す電極装置3Bは、対向電極2Bにおける各角部が、R面(曲面)からなる点で、電極装置3Aとは相違する。図9Bの例では、第1縁部211及び第2縁部221についても、R面(曲面)を含んでいる。
図9Cに示す電極装置3Cでは、対向電極2Cは、平板状の周辺電極部21と、周辺電極部21から斜めに突出する複数(ここでは2つ)の突出電極部22と、を有している。対向電極2Cの周辺電極部21は、平面視において円環状(リング状)に形成されている。各突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1に近づくほどに、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において放電部11から離れるように、Z軸の正の向きに向けて斜めに突出している。
図9Dに示す電極装置3Dでは、対向電極2Dは、平板状の周辺電極部21と、複数(ここでは2つ)の突出電極部22と、周辺電極部21及び各突出電極部22間を連結する連結部25と、を有している。対向電極2Dの周辺電極部21は、平面視において円環状(リング状)に形成されている。連結部25は、放電電極1の中心軸P1を中心とする円筒状に形成されている。連結部25のうち、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)における放電部11側の端部は周辺電極部21につながり、放電部11とは反対側の端部は突出電極部22につながる。図9Dの例では、各突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1に近づくほどに、放電電極1の中心軸P1に沿う方向(Z軸方向)において放電部11に近づくように、Z軸の負の向きに向けて斜めに突出している。
また、図10A~図10Dは、実施形態1の他の変形例に係る対向電極2E~2Hを示す模式的な平面図である。
図10Aに示す対向電極2Eは、複数(ここでは2つ)の突出電極部22がY軸方向に並ぶように配置されている。図10Bに示す対向電極2Fは、突出電極部22を4つ有している。図10Bにおいて、X軸の正の方向(右方)を「0度」、Y軸の正の方向(上方)を「90度」と規定した場合、4つの突出電極部22は、0度、90度、180度、270度の位置にそれぞれ設けられている。
図10Cに示す対向電極2Gは、突出電極部22を4つ有している。図10Cにおいて、X軸の正の方向(右方)を「0度」、Y軸の正の方向(上方)を「90度」と規定した場合、4つの突出電極部22は、45度、135度、225度、315度の位置にそれぞれ設けられている。
図10Dに示す対向電極2Hでは、周辺電極部21と突出電極部22とは別体である。この場合でも、突出電極部22は、放電電極1の中心軸P1の一方から見て、周辺電極部21の周方向の一部から放電電極1の中心軸P1に向けて突出する。この場合、突出電極部22は、適宜の接合方法(溶着、ねじ固定、かしめ固定等)によって周辺電極部21に固定される。
さらに、図9A~図10Dの例に限らず、電極装置3における放電電極1及び対向電極2は、適宜の形状を採用可能である。一例として、対向電極2における周辺電極部21は、平面視において、円形状、楕円形状、三角形状、四角形状、又はその他の多角形状等の適宜の形状を採用し得る。周辺電極部21の外径、内径及び厚みは、任意の数値を採用し得る。同様に、対向電極2における突出電極部22は、平面視において、針状、三角形、四角形状、又はその他の多角形状等の適宜の形状を採用し得る。突出電極部22の突出量、幅及び厚さは、任意の数値を採用し得る。
また、対向電極2は、2つ又は4つに限らず、適当な個数の突出電極部22を有していてもよい。例えば、対向電極2は、奇数個の突出電極部22を有していてもよい。対向電極2が有する突出電極部22の個数は2つ又は4つに限らず、例えば、1つ、3つ、又は5つ以上であってもよい。さらに、複数の突出電極部22が開口部23の周方向において等間隔で配置されることは必須の構成ではなく、複数の突出電極部22は開口部23の周方向において適宜の間隔で配置されてもよい。
また、放電装置10は、帯電微粒子液を生成するための液体供給部5が省略されていてもよい。この場合、放電装置10は、放電電極1、及び対向電極2間に生じる放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)によって、空気イオンを生成する。
また、液体供給部5は、実施形態1のように放電電極1を冷却して放電電極1に結露水を発生させる構成に限らない。液体供給部5は、例えば、毛細管現象、又はポンプ等の供給機構を用いて、タンクから放電電極1に液体50を供給する構成であってもよい。さらに、液体50は、水(結露水を含む)に限らず、水以外の液体であってもよい。
また、電圧印加回路4は、放電電極1を負極(グランド)、対向電極2を正極(プラス)として、放電電極1と対向電極2との間に高電圧を印加するように構成されていてもよい。さらに、放電電極1と対向電極2との間に電位差(電圧)が生じればよいので、電圧印加回路4は、高電位側の電極(正極)をグランドとし、低電位側の電極(負極)をマイナス電位とすることで、電極装置3にマイナスの電圧を印加してもよい。すなわち、電圧印加回路4は、放電電極1をグランドとし、対向電極2をマイナス電位としてもよいし、又は放電電極1をマイナス電位とし、対向電極2をグランドとしてもよい。
また、制限抵抗R1は、電圧発生回路41と放電電極1との間に挿入されていてもよい。この場合、放電電極1は正極(プラス)となるので、制限抵抗R1は、電圧発生回路41の高電位側の出力端と電極装置3との間に挿入されることになる。あるいは、放電電極1を負極(グランド)、対向電極2を正極(プラス)とする場合において、制限抵抗R1は、電圧発生回路41の低電位側又は高電位側の出力端と電極装置3との間に挿入されてもよい。
また、実施形態1に係る電圧印加回路4と同様の機能は、電圧印加回路4の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。すなわち、制御回路43に対応する機能を、電圧印加回路4の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化してもよい。
また、二値間の比較において、「以上」としているところは、二値が等しい場合、及び二値の一方が他方を超えている場合との両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、二値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、二値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」においても「以下」と同義であってもよい。
(実施形態2)
本実施形態に係る静電霧化システム100Aは、図11に示すように、放電装置10Aにおける電圧印加回路4Aの構成が、実施形態1に係る静電霧化システム100とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態では、電圧印加回路4Aは、図11に示すように、制限抵抗R1と電気的に並列に接続されるコンデンサC1を更に有している。言い換えれば、コンデンサC1は、制限抵抗R1と共に、電圧発生回路41と電極装置3との間に挿入されている。コンデンサC1は、制限抵抗R1による電圧降下を生じにくくすることで、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に印加される電圧V3を一定以上の水準に保つ機能を有している。
すなわち、コンデンサC1が無ければ、電圧発生回路41が印加電圧V1を発生して放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が生じた際に、放電経路L1を流れる放電電流によって、制限抵抗R1で電圧降下が生じる。そのため、制限抵抗R1の両端間には電圧V2が発生し、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に印加される電圧V3は、印加電圧V1から電圧V2を差し引いた大きさとなる。よって、制限抵抗R1で生じる電圧降下が比較的大きければ、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に印加される電圧V3が比較的小さくなる。
これに対し、本実施形態では、電圧印加回路4Aが、制限抵抗R1と電気的に並列に接続されたコンデンサC1を有しているため、制限抵抗R1での電圧降下が生じにくい。つまり、電圧発生回路41が印加電圧V1を発生して放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が生じた際に、放電経路L1を流れる放電電流は、少なくともその立ち上がり時にはコンデンサC1を通ることになる。したがって、制限抵抗R1を流れる放電電流が小さくなり、制限抵抗R1での電圧降下が生じにくくなる。よって、本実施形態に係る放電装置10Aでは、制限抵抗R1で生じる電圧降下を比較的小さく抑えることができ、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に印加される電圧V3を比較的大きく確保できる。
図12A~図12Cは、本実施形態に係る放電装置10Aの動作を説明するための説明図である。図12A~図12Cの各々は、横軸を時間軸として、対向電極2の電位と、放電電流と、をそれぞれ表す2つのグラフを並べた模式図である。上段のグラフが対向電極2の電位を表し、下段のグラフが放電電流を表している。
図12Aは、制限抵抗R1及びコンデンサC1のいずれも省略されている構成、つまり電圧発生回路41が直接的に電極装置3に接続されている構成を想定したグラフである。この構成においては、制限抵抗R1での電圧降下が生じないため、負極(グランド)側となる対向電極2の電位は「0」で略一定である。この場合、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)には、印加電圧V1と略同等の大きさの電圧V3が印加される。そのため、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1が断続的に発生し、図12Aに示すように、比較的大きな放電電流が断続的に流れる。
図12Bは、制限抵抗R1が挿入され、コンデンサC1は省略されている構成、つまり電圧発生回路41が制限抵抗R1のみを介して電極装置3に接続されている構成(実施形態1相当)を想定したグラフである。この構成においては、制限抵抗R1での電圧降下が生じるため、負極(グランド)側となる対向電極2の電位は、放電電流の発生に合わせて上昇する。この場合、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)に印加される電圧V3は、印加電圧V1に比べて小さくなる。そのため、放電電極1と対向電極2との間においては、放電経路L1を維持できずに、図12Bに示すように、十分な放電電流を断続的に流すことができない。その結果、放電電極1と対向電極2との間では、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1を断続的に形成するような放電(全路破壊放電又は部分破壊放電)が生じにくくなる。
一方、図12Cは、本実施形態の構成、つまり電圧発生回路41が制限抵抗R1及びコンデンサC1の並列回路を介して電極装置3に接続されている構成を想定したグラフである。この構成においては、制限抵抗R1での電圧降下が生じにくいため、負極(グランド)側となる対向電極2の電位は「0」で略一定である。この場合、電極装置3(放電電極1及び対向電極2)には、印加電圧V1と略同等の大きさの電圧V3が印加される。そのため、放電電極1と対向電極2との間には、少なくとも一部において絶縁破壊された放電経路L1が断続的に発生し、図12Cに示すように、比較的大きな放電電流が断続的に流れる。
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る電極装置(3,3A~3D)は、放電電極(1)と、対向電極(2,2A~2H)と、を備え、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されることにより放電を生じさせる装置である。放電電極(1)は、先端部に放電部(11)を有する柱状の電極である。対向電極(2,2A~2H)は、放電部(11)と対向する。対向電極(2,2A~2H)は、周辺電極部(21)と、突出電極部(22)と、を有する。周辺電極部(21)は、放電電極(1)の中心軸(P1)の一方から見て、放電電極(1)の中心軸(P1)を囲むように配置されている。突出電極部(22)は、放電電極(1)の中心軸(P1)の一方から見て、周辺電極部(21)の周方向の一部から放電電極(1)の中心軸(P1)に向けて突出する。周辺電極部(21)から放電部(11)までの距離(D1)は、突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)よりも短い。
この態様によれば、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、放電部(11)と対向する対向電極(2,2A~2H)のうち、周辺電極部(21)と突出電極部(22)とのいずれにも、電界が集中し得る。ただし、突出電極部(22)は周辺電極部(21)の周方向の一部から放電電極(1)の中心軸(P1)に向けて突出するので、放電部(11)との対向面積は、突出電極部(22)よりも周辺電極部(21)の方が大きい。そのため、電界集中の度合いは、周辺電極部(21)に比べて、放電部(11)との対向面積が小さい突出電極部(22)の方が高くなる。一方で、周辺電極部(21)から放電部(11)までの距離(D1)は、突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)よりも短い。よって、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、まずは周辺電極部(21)と放電部(11)との間に作用する電界が支配的となる。そのため、電界集中の度合いが比較的に低い状態で放電が生じることになり、コロナ放電が生じやすくなる。したがって、絶縁破壊が継続的に発生するようなグロー放電又はアーク放電は生じにくく、グロー放電又はアーク放電が生じて有効成分の生成効率の低下が生じにくくなる。
第2の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第1の態様において、放電電極(1)は放電部(11)を覆うように液体(50)を保持する。液体(50)は、放電によって放電電極(1)の中心軸(P1)に沿って伸縮する。液体(50)が伸びた状態における、液体(50)から周辺電極部(21)までの距離(D3)は、液体(50)から突出電極部(22)までの距離(D4)よりも長い。
この態様によれば、液体(50)が伸びた状態においては、液体(50)と突出電極部(22)との間に電界が集中しやすくなり、液体(50)と対向電極(2,2A~2H)との間で絶縁破壊を伴う放電が生じやすくなる。
第3の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第2の態様において、液体(50)が縮んだ状態における、液体(50)から周辺電極部(21)までの距離(D5)は、液体(50)から突出電極部(22)までの距離(D6)よりも短い。
この態様によれば、液体(50)が縮んだ状態においては、液体(50)と周辺電極部(21)との間に電界が集中しやすくなり、コロナ放電が生じやすくなる。
第4の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第1~3のいずれかの態様において、周辺電極部(21)は、円形状に開口する開口部(23)を有する。放電電極(1)の中心軸(P1)の一方から見て、開口部(23)の中心は、放電電極(1)の中心軸(P1)上に位置する。
この態様によれば、周辺電極部(21)における開口部(23)の周縁から放電部(11)までの距離が略均一になる。
第5の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第1~4のいずれかの態様において、対向電極(2,2A~2H)は、突出電極部(22)を複数有する。
この態様によれば、複数の突出電極部(22)で分散的に放電を生じさせることができる。
第6の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第5の態様において、複数の突出電極部(22)は、周辺電極部(21)の周方向において等間隔に配置されている。
この態様によれば、複数の突出電極部(22)で略均等に放電を生じさせることができる。
第7の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第1~6のいずれかの態様において、放電電極(1)の中心軸(P1)に沿う方向において、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)とは離間している。放電電極(1)の中心軸(P1)に沿う方向において、放電部(11)と突出電極部(22)との間に周辺電極部(21)の少なくとも一部が位置する。
この態様によれば、放電電極(1)の中心軸(P1)に沿う方向において、突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)を稼ぐことが可能である。
第8の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第1~7のいずれかの態様において、周辺電極部(21)は、放電部(11)に向けて凸となる第1縁部(211)を含む。突出電極部(22)は、放電部(11)に向けて凸となる第2縁部(221)を含む。周辺電極部(21)から放電部(11)までの距離(D1)は、第1縁部(211)から放電部(11)までの距離である。突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)は、第2縁部(221)から放電部(11)までの距離である。
この態様によれば、放電部(11)に向けて凸となる第1縁部(211)及び第2縁部(221)にて、電界の集中が生じやすくなる。
第9の態様に係る電極装置(3,3A~3D)は、放電電極(1)と、対向電極(2,2A~2H)と、を備え、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されることにより放電を生じさせる装置である。放電電極(1)は、先端部に放電部(11)を有する柱状の電極である。対向電極(2,2A~2H)は、放電部(11)と対向する。対向電極(2,2A~2H)は、周辺電極部(21)と、突出電極部(22)と、を有する。周辺電極部(21)は、放電電極(1)の中心軸(P1)の一方から見て、放電電極(1)の中心軸(P1)を囲むように配置されている。突出電極部(22)は、放電電極(1)の中心軸(P1)の一方から見て、周辺電極部(21)の周方向の一部から放電電極(1)の中心軸(P1)に向けて突出する。仮想平面(VP1)内において、仮想基準線(VL2)を規定した場合に、放電部(11)は、仮想基準線(VL2)から見て、第1縁部(211)と同じ側に位置する。仮想平面(VP1)は、放電電極(1)の中心軸(P1)及び突出電極部(22)の先端を含む面である。仮想基準線(VL2)は、仮想線(VL1)の垂直二等分線である。仮想線(VL1)は、第1縁部(211)と、第2縁部(221)と、を結ぶ線である。第1縁部(211)は、周辺電極部(21)のうち放電部(11)までの距離(D1)が最短となる部位である。第2縁部(221)は、突出電極部(22)のうち放電部(11)までの距離(D2)が最短となる部位である。
この態様によれば、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、放電部(11)と対向する対向電極(2,2A~2H)のうち、周辺電極部(21)と突出電極部(22)とのいずれにも、電界が集中し得る。ただし、突出電極部(22)は周辺電極部(21)の周方向の一部から放電電極(1)の中心軸(P1)に向けて突出するので、放電部(11)との対向面積は、突出電極部(22)よりも周辺電極部(21)の方が大きい。そのため、電界集中の度合いは、周辺電極部(21)に比べて、放電部(11)との対向面積が小さい突出電極部(22)の方が高くなる。一方で、周辺電極部(21)から放電部(11)までの距離(D1)は、突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)よりも短い。よって、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、まずは周辺電極部(21)と放電部(11)との間に作用する電界が支配的となる。そのため、電界集中の度合いが比較的に低い状態で放電が生じることになり、コロナ放電が生じやすくなる。したがって、絶縁破壊が継続的に発生するようなグロー放電又はアーク放電は生じにくく、グロー放電又はアーク放電が生じて有効成分の生成効率の低下が生じにくくなる。
第10の態様に係る電極装置(3,3A~3D)では、第9の態様において、仮想平面(VP1)内において、仮想平行線(VL3)を規定した場合に、放電部(11)は、仮想基準線(VL2)と仮想平行線(VL3)との間に位置する。仮想平行線(VL3)は、第1縁部(211)を通り、仮想基準線(VL2)と平行な線である。
この態様によれば、突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)を比較的短く抑えることで、突出電極部(22)と放電部(11)との間で放電が生じる場合に必要な電気エネルギーを小さく抑えることができる。
第11の態様に係る放電装置(10,10A)は、第1~10のいずれかの態様に係る電極装置(3,3A~3D)と、電圧印加回路(4,4A)と、を備える。電圧印加回路(4,4A)は、放電電極(1)及び対向電極(2,2A~2H)間に印加電圧(V1)を印加することにより、放電を生じさせる。
この態様によれば、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、放電部(11)と対向する対向電極(2,2A~2H)のうち、周辺電極部(21)と突出電極部(22)とのいずれにも、電界が集中し得る。ただし、突出電極部(22)は周辺電極部(21)の周方向の一部から放電電極(1)の中心軸(P1)に向けて突出するので、放電部(11)との対向面積は、突出電極部(22)よりも周辺電極部(21)の方が大きい。そのため、電界集中の度合いは、周辺電極部(21)に比べて、放電部(11)との対向面積が小さい突出電極部(22)の方が高くなる。一方で、周辺電極部(21)から放電部(11)までの距離(D1)は、突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)よりも短い。よって、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、まずは周辺電極部(21)と放電部(11)との間に作用する電界が支配的となる。そのため、電界集中の度合いが比較的に低い状態で放電が生じることになり、コロナ放電が生じやすくなる。したがって、絶縁破壊が継続的に発生するようなグロー放電又はアーク放電は生じにくく、グロー放電又はアーク放電が生じて有効成分の生成効率の低下が生じにくくなる。
第12の態様に係る放電装置(10,10A)では、第11の態様において、電圧印加回路(4,4A)は、電圧発生回路(41)と、制限抵抗(R1)と、を有する。電圧発生回路(41)は、印加電圧(V1)を発生する。制限抵抗(R1)は、電圧発生回路(41)の一方の出力端と電極装置(3,3A~3D)との間に挿入されている。
この態様によれば、電極装置(3,3A~3D)等を過電流から保護できる。
第13の態様に係る放電装置(10,10A)では、第12の態様において、制限抵抗(R1)は、電圧発生回路(41)の低電位側の出力端と電極装置(3,3A~3D)との間に挿入されている。
この態様によれば、電極装置(3,3A~3D)等を過電流から保護できる。
第14の態様に係る放電装置(10,10A)では、第12又は13の態様において、電圧印加回路(4,4A)は、制限抵抗(R1)と電気的に並列に接続されるコンデンサ(C1)を更に有する。
この態様によれば、制限抵抗(R1)にて生じる電圧降下を比較的小さく抑えることができる。
第15の態様に係る静電霧化システム(100,100A)は、第11~14のいずれかの態様に係る放電装置(10,10A)と、液体供給部(5)と、を備え、放電装置(10,10A)で生じる放電によって液体(50)を静電霧化する。液体供給部(5)は、放電電極(1)に液体(50)を供給する。
この態様によれば、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、放電部(11)と対向する対向電極(2,2A~2H)のうち、周辺電極部(21)と突出電極部(22)とのいずれにも、電界が集中し得る。ただし、突出電極部(22)は周辺電極部(21)の周方向の一部から放電電極(1)の中心軸(P1)に向けて突出するので、放電部(11)との対向面積は、突出電極部(22)よりも周辺電極部(21)の方が大きい。そのため、電界集中の度合いは、周辺電極部(21)に比べて、放電部(11)との対向面積が小さい突出電極部(22)の方が高くなる。一方で、周辺電極部(21)から放電部(11)までの距離(D1)は、突出電極部(22)から放電部(11)までの距離(D2)よりも短い。よって、放電電極(1)と対向電極(2,2A~2H)との間に電圧が印加されると、まずは周辺電極部(21)と放電部(11)との間に作用する電界が支配的となる。そのため、電界集中の度合いが比較的に低い状態で放電が生じることになり、コロナ放電が生じやすくなる。したがって、絶縁破壊が継続的に発生するようなグロー放電又はアーク放電は生じにくく、グロー放電又はアーク放電が生じて有効成分の生成効率の低下が生じにくくなる。