まず、図1は、本発明の第1形態例における施工管理装置を備えた杭打機の作業時の状態を示している。この杭打機11は、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ用の起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するフロントブラケット17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、油圧配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧ユニットを収納した機器室20がそれぞれ設けられている。
リーダ15は、前記フロントブラケット17に設けられたベースマシン幅方向の支軸21に回動可能に取り付けられた下部リーダ22と、該下部リーダ22の上部に連結される中間リーダ23と、該中間リーダ23の上部に連結される上部リーダ24とに分割形成され、さらに、中間リーダ23は、中間第1部材23aと中間第2部材23bとに分割形成され、上部リーダ24は、上部第1部材24aと上部第2部材24bとに分割形成されている。これらの各リーダ部材は、それぞれボルト・ナットを使用したフランジ部材によって着脱可能に連結されている。
起伏シリンダ16のシリンダロッド16aの先端部と中間リーダ23とは、中間第2部材23bの後面に設けられたシリンダブラケット23cに接続ピンを介して回動可能に連結されている。また、上部リーダ24の上端部にはトップシーブブロック25が、下部リーダ22の下端部に設けられた駆動スプロケット用カバー26には下部ガイド27がそれぞれ装着されており、リーダ15の前面にはオーガ28が昇降可能に装着されるとともに、該オーガ28を昇降させるためのチェーン式の昇降装置29が設けられている。
オーガ28は、リーダ15の両側に設けられた一対のガイドパイプ30をオーガ28の後部側に設けた左右一対の上部ガイドギブ31及び下部ガイドギブ32で把持した状態でリーダ15に沿って昇降するもので、オーガ28の上下には、下部リーダ22の下端部に設けられた駆動スプロケット33と、前記上部リーダ24の上端部に設けられた従動スプロケット34との間に架け渡された昇降チェーン35の両端がそれぞれ取り付けられている。チェーン式の昇降装置29は、駆動スプロケット33をオーガ昇降用油圧モータによって駆動し、該駆動スプロケット33と従動スプロケット34とに掛け回された昇降チェーン35を上下方向に移動させることにより、リーダ15に沿ってオーガ28を昇降させるもので、上部リーダ24の上端部には、従動スプロケット34から昇降チェーン35が外れることを防止するためのチェーンカバー36が取り付けられている。
また、オーガ28は、ドライブロッド37を回転可能かつ軸方向に移動可能に挿通し、ドライブロッド37の角軸部をオーガ28の下側に設けられたチャック装置38に係合させてドライブロッド37の軸方向の移動を規制した状態で、出力機構39をオーガ駆動用油圧モータで駆動させることによってドライブロッド37を回転させる。
この杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、施工部材に鋼管杭が使用される。鋼管杭は、ドライブロッド37の下端に設けられたキャップロッド40を介して連結され、ドライブロッド37を回転させながらオーガ28を降下させることによって地中に圧入される。また、杭打機11を地盤改良を目的として使用する場合には、施工部材に中空ロッドが使用される。中空ロッドは、上端がオーガ28の上方でスイベル(図示せず)と連結されるとともに下端が撹拌ロッド(図示せず)と連結される。この中空ロッドを回転させながら、中空ロッドを通じて撹拌ロッドの先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。
また、杭打機11は、リーダ15をベースマシン上方に倒伏させて、輸送姿勢とすることができるが、輸送トラックなどの荷台寸法や積載質量の制限により、リーダ15を分解したり、オーガ28を取り外したりする必要がある場合や、建屋内などの高さ制限のある場所で杭打ち作業を行うために、リーダ15を標準の長尺仕様(図1)から短尺仕様に組み換えて使用する場合がある。このとき、リーダ15及びオーガ28の取り外しについては周知の方法が用いられる。
次に、杭打機11に適用した本発明の施工管理装置を図1及び図2を参照しながら説明する。図2は施工管理装置の構成全体を示したブロック図である。この施工管理装置41は、大きく分けて、ベースマシン14、リーダ15及びオーガ28にそれぞれ設けられ杭打機11の作業状態を監視する複数の検出手段42と、運転室19内に設けられ各検出手段42からの検出信号やオペレータによって入力された情報に基づいて、既製杭工法、場所打ち杭工法又は地盤改良工法の施工や後述するキャリブレーション作業のための施工管理プログラムを実行する制御装置43と、オペレータが施工管理プログラムの処理結果を確認したり、データ入力などを行うタッチパネル式のディスプレイ44とから構成されている。
また、各検出手段42と制御装置43との間には、ネットワークを用いた通信手段が設けられている。この通信手段は、上位ネットワークの母線をなし産業用イーサネット(登録商標、以下同じ)として周知の通信方式、例えば、PROFINET(登録商標、以下同じ)による通信方式とする通信を行うための上位通信線45と、該上位通信線45に接続された複数の中継装置である第1中継装置46、第2中継装置47、第3中継装置48及びスイッチングハブ49と、各中継装置46~48と検出手段42との間を後述するIO-Linkによる通信で接続するためのデバイス通信線50とから構成されている。
制御装置43は、各種演算処理を行うCPUと、各種施工データや施工管理プログラムを記憶するRAMやFRASH ROMなどの記憶手段と、一端がスイッチングハブ49の上位通信ポート49aに接続されたスイッチ上位通信線45aの他端が接続されるハブ側インターフェース43aとを備えている。CPUの演算処理によって施工管理プログラムを実行すると施工データやキャリブレーション作業による作業データが作成され、スイッチングハブ49の上位通信ポート49bに接続されたディスプレイ44に表示される。また、制御装置43は、印刷手段であるプリンタ51や記憶手段であるUSBメモリ52などによって各種データを印字、記憶するための通信機が接続されるUSBインターフェース43b,43cも備えている。
各中継装置46~48は、制御装置43を含む上位ネットワークと検出手段42との間でデータの中継が可能な複数の通信ポートを備えた箱形状のハブであり、第1中継装置46はリーダ15の中間部に、具体的には上部第1部材24aの下部側面に、第2中継装置47はオーガ28の側面に、第3中継装置48は上部旋回体13の機器室20内に取付座(図示せず)を介してそれぞれ螺着されている。そして、スイッチングハブ49及び第1中継装置46の各上位通信ポート49c,46aに第1上位通信線45bが、第1中継装置46及び第2中継装置47の各上位通信ポート46b,47aに第2上位通信線45cが、スイッチングハブ49及び第3中継装置48の各上位通信ポート49d,48aに第3上位通信線45dが、スイッチングハブ49と制御装置43との間にスイッチ上位通信線45aがそれぞれ接続されることによって上位ネットワークが構成され、各中継装置46~48は制御装置43のスレーブとして動作する。
また、各中継装置46~48は、対応する各上位通信線45a,45b,45c,45dとの接続を行った状態で、検出手段42の状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視し、警報すべき状態であるときはその状態に対応した監視出力を出力するデバイス監視部46c,47b,48bをそれぞれ備えている。警報すべき状態とは、検出手段42の故障や、デバイス通信線50の断線、短絡、通信ポートに対する離脱及び接続間違いなどによって施工管理プログラムを正常に実行することができず、検出手段42の機能や通信の回復を必要とする状態である。例えば、デバイス通信線50が断線した場合には、対応する中継装置46~48のデバイス監視部46c,47b,48bから断線状態である信号が制御装置43を経由してディスプレイ44に出力される。この出力結果に基づいて、オペレータはディスプレイ44に表示されたメッセージによって故障個所や故障原因を特定する。
検出手段42は、制御装置43の制御対象となるデバイスである。検出手段42としては、出力系のデバイス及び入力系のデバイスを適用できる。入力系のデバイスとしては、近接センサや操作スイッチなどが挙げられ、出力系のデバイスとしては、アクチュエータやモータなどが挙げられる。また、アクチュエータやモータなどの駆動電流を制御するための変換手段53などもデバイスとすることができる。検出手段42及び変換手段53は、測定部位であるリーダ15、オーガ28及びベースマシン14に取り付けられているため、これらの近傍に配置した各中継装置46~48の対応するデバイス通信ポートにデバイス通信線50を介してそれぞれ接続され、IO-Linkによる通信が行われる。
IO-Linkは、IEC61131-9において「Single-drop digital communication interface for small sensors and actuators」(SDCI)という名称で規格化された比較的に新しいセンサ・インターフェース(デバイス通信プロトコル)である。小型のセンサ(本発明の検出手段42)などをケーブル(本発明のデバイス通信線50)1本で接続でき、これらの情報をハブ機能をなすIO-Linkマスタ(本発明の各中継装置46~48)を経由してプログラマブルコントローラ(本発明の制御装置43)に集約できる。また、同一ケーブルで電源が供給できるので、省配線化を図ることもできる。
IO-Linkを利用することにより、オン/オフ信号(1ビット)以外の情報、例えば、32バイト(256ビット)の数値データを取得することができるので、デバイスのID、リビジョン、シリアルNoといった識別情報や、検出余裕度や内部温度などの診断情報を取得することができる。したがって、IO-Linkマスタの制御部(本発明のデバイス監視部46c,47b,48b)でこれらの情報を取り扱うことができるようになり、不具合原因の究明に役立つほか、製品寿命の診断、経年劣化に応じたしきい値の変更などが可能になる。そこで、以下では、各中継装置46~48にIO-Linkで接続される検出手段42及び変換手段53の構成とその機能について具体的に説明する。
第1中継装置46は、複数のデバイス通信ポート46d,46eを備えており、オーガ28の昇降による深度を測定する深度センサ54が深度センサ通信線50aを介してデバイス通信ポート46dに接続されている。深度センサ54は、従動スプロケット34の回転角度をエンコーダで検出するものである。検出された信号は第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、回転角度及びスプロケット径に基づいて深度及び昇降速度が算出される。
また、リーダ15の前後左右の傾斜角度を測定する傾斜センサ55が傾斜センサ通信線50bを介してデバイス通信ポート46eに接続されている。傾斜センサ55は、周知の振り子式又はフロート式の傾斜センサをリーダ15の側面に設けたものである。傾斜センサ55によって検出された信号はリーダ傾斜角度として第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達される。
第2中継装置47は、複数のデバイス通信ポート47c,47d,47eを備えており、施工部材の回転数を測定する回転センサ56が回転センサ通信線50cを介してデバイス通信ポート47cに接続されている。回転センサ56は、出力機構39の歯車の歯を近接センサで検出し、そのパルス信号をカウントするものである。回転センサ56によって検出された信号は第2中継装置47、第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、累計カウントに基づいて積算回転数及び回転速度が算出される。
また、施工部材のトルクを測定するトルクセンサ57がトルクセンサ通信線50dを介してデバイス通信ポート47dに接続されている。トルクセンサ57は、オーガ駆動用油圧モータの油圧回路の供給側と電磁比例弁58の油圧回路の二次側とにそれぞれ圧力センサを設け、各圧力センサによってオーガ駆動用油圧モータの作動圧力及び制御圧力を検出するものである。トルクセンサ57によって検出された信号は第2中継装置47、第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、圧力及びオーガ駆動用油圧モータの容量に基づいて施工トルクが算出される。さらに、電磁比例弁58の駆動電流を制御する変換器59が変換器通信線50eを介してデバイス通信ポート47eに接続されている。これにより、オーガ駆動用油圧モータの制御圧力が調節される。
第3中継装置48は、複数のデバイス通信ポート48c,48d,48e,48fを備えており、オーガ28の昇降による施工部材の圧入、引抜きに要する力を測定する昇降力センサ60が昇降力センサ通信線50fを介してデバイス通信ポート48cに接続されている。昇降力センサ60は、オーガ昇降用油圧モータの油圧回路の上昇側と下降側とにそれぞれ圧力センサを設け、各圧力センサによってオーガ昇降用油圧モータの作動圧力を検出するものである。昇降力センサ60によって検出された信号は第3中継装置48及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、圧力に基づいて昇降力(圧入・引抜)が算出される。
また、セメントミルクの注入量を測定する流量センサ61が流量センサ通信線50gを介してデバイス通信ポート48dに接続されている。流量センサ61は、バッチャープラント(図示せず)から供給されるセメントミルクの流量を測定するものである。流量センサ61によって検出された信号は瞬間的な流量(瞬時流量)及び通過流量(積算流量)として第3中継装置48及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達される。さらに、電磁比例弁62の駆動電流を制御する変換器63が変換器通信線50hを介してデバイス通信ポート48eに接続されている。これにより、オーガ昇降用油圧モータへの作動油供給量が調節される。
また、運転室19内には、アナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログハブ64が設けられており、アナログハブ64の出力ポート64aに一端が接続されたアナログハブ通信線50iの他端が第3中継装置48のデバイス通信ポート48fに接続されている。アナログハブ64は、複数の入力ポート64b,64cを備えており、オーガ28の昇降速度やトルクの大きさなどを切り替える切替スイッチ65がスイッチ通信線50jを介して入力ポート64bに接続され、ダイヤルの回転状態によって調整を行う調整ダイヤル66がダイヤル通信線50kを介して入力ポート64cに接続されている。そして、オペレータの操作によって第3中継装置48に伝送された切替スイッチ65及び調整ダイヤル66の信号は、スイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、設定状態に基づいてオーガ昇降用油圧モータやオーガ駆動用油圧モータなどが駆動される。
このように形成された施工管理装置41を備えた杭打機11は、輸送に適した質量と長さ寸法にするためにオーガ28をリーダ15から取り外すとともに、リーダ15を分割して、例えば、上部リーダ24を中間リーダ23から分離して、別々に輸送する場合がある。このとき、第2中継装置47は、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aから取り外した状態で、つまり第1中継装置46と第2中継装置47とのネットワーク接続を解除した状態で、リーダ15からオーガ28と一体で取り外され、オーガ28と共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。また、第1中継装置46は、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aから取り外した状態で、つまりスイッチングハブ49と第1中継装置46とのネットワーク接続を解除した状態で、中間第2部材23bと上部第1部材24aとの連結を解くことにより、中間リーダ23から上部リーダ24と一体で取り外され、上部リーダ24と共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。
取り外された第1上位通信線45b及び第2上位通信線45cは、収納ケースに入れて持ち運ぶことができるが、例えば、第1上位通信線45bであれば、スイッチングハブ49側を取り外さずに、輪状に束ねた状態で、結束バンドなどを用いて上部旋回体13に固定して輸送することもできる。
現場でリーダ15やオーガ28などの各種部品を組み立てた後に、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aに接続するとともに、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aに接続することにより、輸送時に一旦接続を解除したネットワークが復元され、施工管理装置41の電源を起動することができる状態になる。
施工管理装置41の電源を起動させると、各中継装置46~48はネットワーク接続や検出手段42などの状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視するデバイス監視モードになる。上述のように、リーダ15やオーガ28の分解、組立時にデバイス通信線50の配線作業が省略されるので、デバイス通信線50の配線作業に起因するトラブルの防止が図られている一方で、リーダ15の分解、組立時の振動によって検出手段42が、例えば、深度センサ54が故障する場合もある。このような場合には、第1中継装置46のデバイス監視部46cから深度センサ54が故障状態である信号が出力され、この出力結果に基づいて、制御装置43は、ディスプレイ44に深度センサ54が故障状態であるメッセージを表示させる。
このように、施工管理装置41に検出手段42を含むネットワークの状態監視を行う動作モードであるデバイス監視モードを備えているので、オペレータは故障個所や故障原因を容易に特定することが可能となり、施工管理装置41のメンテナンス性を向上させることができる。また、IO-Link通信によって検出手段42の識別情報や診断情報に基づいて施工管理装置41の状態監視が行われるので、杭打機11の現場移動のたびにネットワーク接続の解除と復元が繰り返されても、安定した状態でキャリブレーション作業や本施工を行うことができる。
次に、キャリブレーション作業の手順を図3乃至図8に示す表示画面を参照しながら説明する。まず、所定の位置に杭打機11を移動させ、施工管理装置41を起動状態とし、ディスプレイ44に表示されたメニュー画面からキャリブレーションモードを選択することにより、図3に示すキャリブレーション表示画面を表示させる。ここで、キャリブレーション作業の対象となる項目には、「深度」、「速度」、「回転数」、「積算回転数」、「施工トルク」、「昇降力」、「瞬時流量」、「積算流量」、「傾斜角」、「トルク調整」、「速度調整」が挙げられ、各項目の選択はタッチパネルの押圧操作によって行われる。そして、後述する項目ごとの表示画面にて表示した測定値(本発明の検出手段測定値データ)と実測値(本発明の計測器具実測値データ)とをそれぞれ読み込んで表やグラフで互いに関連付けられた状態、つまり目視によって比較可能な状態で表示させる。
さらに、「キャプチャ」を選択することによってキャリブレーション表示画面を画像データとして保存することができる。画像データは、制御装置43の記憶手段に保存され、必要に応じてUSBメモリ52に移動させて帳票の作成などに利用することができる。さらに、「印刷出力」を選択することにより、図4(A)に示す出力項目選択画面が表示される。出力項目選択画面では、プリンタ51によってキャリブレーション作業の結果を項目ごとに印字することができる。そこで、以下では、項目ごとの作業手順について具体的に説明する。
キャリブレーション表示画面の「深度」を選択すると、図4(B)に示す深度表示画面が表示される。まず、「リセット」を選択して、深度をゼロにリセットした状態で、「測定開始」を選択することにより深度の測定が開始され、表示が「測定開始」から「測定終了」に切り換わる。続いて、オーガ28の昇降操作を行った後に、「測定終了」を選択することにより深度の測定が終了し、例えば、5.00mが表示される。ここで、「実測値入力」を選択して、テンキーなどの入力画面で実測値を入力する。これにより、例えば、5.02mが表示される。実測は、巻尺などの測定器具を用いてオーガ28の移動量を測定することにより行われる。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。さらに、「補正」を選択することにより、測定値と実測値との誤差が許容範囲内であれば測定値の補正を行うことができ、許容範囲外であれば異常メッセージなどの表示によって注意喚起がなされる。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
キャリブレーション表示画面の「速度」を選択すると、図5(A)に示す速度表示画面が表示される。まず、オーガ28の昇降操作を行い、表示ランプ67の色によって速度が安定した状態にあることを確認した後に、「測定開始」を選択することにより速度の測定が開始される。所定時間が経過すると測定が終了し、例えば、2.00m/minが表示される。ここで、「実測値入力」を選択して実測値を入力することにより、例えば、2.00m/minが表示される。実測は、オーガ28を任意の距離だけ移動させることにより行われ、その移動に要した時間に基づいて速度が算出される。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
キャリブレーション表示画面の「回転数」又は「積算回転数」を選択すると、図5(B)に示す回転数表示画面が表示される。まず、オーガ28の回転操作を行い、表示ランプ68の色によって回転が安定した状態にあることを確認した後に、「測定開始」を選択することにより回転数(回転速度)及び積算回転数の測定が開始される。所定時間が経過すると測定が終了し、例えば、回転数に42.1min-1が、積算回転数に42.1回がそれぞれ表示される。ここで、「実測値入力」を選択して実測値を入力することにより、例えば、回転数に42.0min-1が、積算回転数に42.0回がそれぞれ表示される。実測は、オーガ28に装着した施工部材の回転数を目視でカウントすることにより行われ、その回転に要した時間に基づいて回転速度が算出される。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
キャリブレーション表示画面の「施工トルク」を選択すると、図6(A)に示す施工トルク表示画面が表示される。まず、「測定開始」を選択することにより施工トルクの測定が開始され、表示が「測定開始」から「測定終了」に切り換わる。続いて、オーガ28の回転操作を行った後に、「測定終了」を選択することにより施工トルクの測定が終了し、例えば、150.19kN・mが表示される。ここで、「実測値入力」を選択して実測値を入力することにより、例えば、149.97kN・mが表示される。実測は、トルク測定用の冶具を用いて実測することにより行われる。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
キャリブレーション表示画面の「昇降力」を選択すると、図6(B)に示す昇降力表示画面が表示される。昇降力は、圧入及び引抜のそれぞれを対象としている。まず、「測定開始」を選択することにより昇降力の測定が開始され、表示が「測定開始」から「測定終了」に切り換わる。続いて、オーガ28の昇降操作を行った後に、「測定終了」を選択することにより昇降力の測定が終了し、例えば、圧入に100.21kNが、引抜に-99.85kNがそれぞれ表示される。ここで、「実測値入力」を選択して実測値を入力することにより、例えば、圧入に100.18kNが、引抜に-100.02kNがそれぞれ表示される。実測は、ウエイトなどを用いてオーガ28に負荷を与え、そのときの測定値と比較することにより行われる。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
キャリブレーション表示画面の「瞬時流量」又は「積算流量」を選択すると、図7(A)に示すセメント流量表示画面が表示される。まず、セメントミルクの圧送操作を行い、表示ランプ69の色によって流量が安定した状態にあることを確認し、「測定開始」を選択することにより瞬時流量及び積算流量の測定が開始される。所定時間が経過すると測定が終了し、例えば、瞬時流量に180L/minが、積算流量に180Lがそれぞれ表示される。ここで、実測値入力の「瞬時流量」又は「積算流量」を選択して実測値を入力することにより、例えば、瞬時流量に180L/minが、積算流量に180Lがそれぞれ表示される。実測は、計量の升が用いられ、瞬時流量は升を満杯にするまでに要した時間に基づいて算出され、積算流量はそのときの測定値と比較することにより行われる。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
キャリブレーション表示画面の「傾斜角」を選択すると、図7(B)に示すリーダ傾斜角表示画面が表示される。リーダ傾斜角は、前後(Y軸)及び左右(X軸)のそれぞれを対象としている。まず、「測定」を選択することによりリーダ傾斜角の測定が行われ、例えば、前後に0.0°が、左右に0.0°がそれぞれ表示される。ここで、「実測値入力」を選択して実測値を入力することにより、例えば、前後に0.0°が、左右に0.0°がそれぞれ表示される。実測は、水準器などを用いてリーダ傾斜角を測定することにより行われる。また、「0点調整」を選択することにより、測定値と実測値との誤差が許容範囲内であれば、その状態を原点としてゼロに調整することができ、許容範囲外であれば、異常メッセージなどの表示によって注意喚起がなされる。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
キャリブレーション表示画面の「トルク調整」を選択すると、図8(A)に示すトルク調整画面が表示される。まず、オーガ28の回転操作を行い、「測定開始」を選択することにより指令電圧を0Vから10Vの範囲でスイープさせながら検出信号をサンプリングするとともに、指令電圧の変化に対する設定最大トルク及び回転数をそれぞれ算出して表やグラフに表示させる。また、「キャプチャ」を選択することによって画面を画像データとして保存することができ、「印刷出力」を選択することによって表やグラフを印字することができる。最後に、「完了」を選択して、トルク調整の結果をキャリブレーション表示画面に反映させる。
キャリブレーション表示画面の「速度調整」を選択すると、図8(B)に示す速度調整画面が表示される。まず、オーガ28の昇降操作を行い、「測定開始」を選択することにより指令電圧を0Vから10Vの範囲でスイープさせながら検出信号をサンプリングするとともに、指令電圧の変化に対する速度を算出して表やグラフに表示させる。また、「キャプチャ」を選択することによって画面を画像データとして保存することができ、「印刷出力」を選択することによって表やグラフを印字することができる。最後に、「完了」を選択して、速度調整の結果をキャリブレーション表示画面に反映させる。
このように、施工管理装置41にキャリブレーション作業を補助する動作モードであるキャリブレーションモードを備えているので、検出手段42による測定をタッチパネルの簡単な操作で行える上に、測定器具を用いて測定した実測値を手入力することによって測定値と実測値との比較も容易に行え、キャリブレーション作業における作業者の負担を軽減させることができる。また、項目ごとの比較をキャリブレーション表示画面に集約して表示し、これを印字したり画像データとして保存したりすることが可能となり、トレーサビリティを向上させることができる。
図9は、本発明の第2形態例における施工管理装置を備えたアースドリルの作業時の状態を示すものである。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
アースドリル71は、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられるとともに、上部ブーム72a、中間ブーム72b及び下部ブーム72cを互いに連結してなるブーム72と、上部ブーム72aの先端部に装着されたポイントシーブ72dから垂下した主巻ロープ73にスイベル74を介して回転可能に吊持されたケリーバ75と、下部ブーム72cに基端部が取り付けられたフロントフレーム76や保持シリンダ77などによって支持されたケリードライブ78と、ケリーバ75の下端部に装着された拡底バケット79とを備えている。
上部旋回体13の前部上方には、ケリードライブ78や拡底バケット79などを作動させるための複数の油圧配管80がフロントフレーム76に沿って設けられている。また、上部旋回体13の後部にはガントリ81が立設され、起伏ウインチ82からの起伏ロープ83が、ペンダントロープ84を介して上部ブーム72aの先端部に設けられたブラケット72eに連結されている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19や機器室20が、左側部にエンジンや油圧ポンプを収納したエンジン室(図示せず)が設けられている。
アースドリル71による杭孔の形成は、起伏ウインチ82で起伏ロープ83を操作してブーム72を所定角度に立ち上げるとともに、ケリードライブ78を所定位置に配置した状態で、ケリードライブ78でケリーバ75を回転させることによって掘削バケットや拡底バケット79を回転させながら地中に押し込んで掘削する工程と、掘削バケットや拡底バケット79を引上げて掘削した土砂を排出する工程とを交互に繰り返すことによって行われる。
次に、アースドリル71に適用した本発明の施工管理装置を図2及び図9を参照しながら説明する。この施工管理装置は、図2のブロック図に示すように、杭打機11の施工管理装置41と共通に構成され、制御装置43では、アースドリル工法を施工するための施工管理プログラムが実行される。また、アースドリル71の形態に対応させるため、各検出手段42や各中継装置46~48の取付位置が杭打機11における取付位置に対して異なっているが、制御装置43による動作原理は同じであり、キャリブレーション作業も同様の手順で実施可能である。
各中継装置46~48について、図9に示すように、第1中継装置46は下部ブーム72cの側面に、具体的にはフロントフレーム76の基端部に、第2中継装置47はケリードライブ78の側面に、第3中継装置48は上部旋回体13の機器室20内に取付座を介してそれぞれ螺着されている。
検出手段42の一例として、第2中継装置47には、ケリーバ75の回転数を測定する回転センサ56が回転センサ通信線50cを介してデバイス通信ポート47cに接続されている。回転センサ56は、出力機構85の歯車の歯を近接センサで検出し、そのパルス信号をカウントするものである。回転センサ56によって検出された信号は第2中継装置47、第1中継装置46及びスイッチングハブ49を経由して制御装置43に伝達され、累計カウントに基づいて積算回転数及び回転速度が算出される。
このように形成された施工管理装置41を備えたアースドリル71は、輸送に適した質量と長さ寸法にするために、ケリードライブ78、ケリーバ75及び拡底バケット79をベースマシン14前部に組み立てられた状態から分解するとともに、ブーム72を複数に分割して、別々に輸送する場合がある。このとき、第2中継装置47は、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aから取り外した状態で、つまり第1中継装置46と第2中継装置47とのネットワーク接続を解除した状態で、フロントフレーム76及び保持シリンダ77からケリードライブ78と一体で取り外され、ケリードライブ78と共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。また、第1中継装置46は、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aから取り外した状態で、つまりスイッチングハブ49と第1中継装置46とのネットワーク接続を解除した状態で、上部ブーム72a、中間ブーム72b及び下部ブーム72cの互いの連結を解くとともに、上部旋回体13と下部ブーム72cとの連結を解くことにより、上部旋回体13から下部ブーム72cと一体で取り外され、下部ブーム72cと共に輸送トラックの荷台に積載して輸送される。
現場でブーム72やケリードライブ78などの各種部品を組み立てた後に、第1上位通信線45bを各上位通信ポート49c,46aに接続するとともに、第2上位通信線45cを各上位通信ポート46b,47aに接続することにより、輸送時に一旦接続を解除したネットワークが復元され、施工管理装置41の電源を起動することができる状態になる。
施工管理装置41の電源を起動させると、各中継装置46~48はネットワーク接続や検出手段42などの状態に基づいて警報すべき状態であるか否かを監視するデバイス監視モードになる。上述のように、ブーム72やケリードライブ78の分解、組立時にデバイス通信線50の配線作業が省略されるので、デバイス通信線50の配線作業に起因するトラブルの防止が図られている一方で、ケリードライブ78の分解、組立時の振動によって検出手段42が、例えば、回転センサ56が故障する場合もある。このような場合には、第2中継装置47のデバイス監視部47bから回転センサ56が故障状態である信号が出力され、この出力結果に基づいて、制御装置43は、ディスプレイ44に回転センサ56が故障状態であるメッセージを表示させる。
このように、施工管理装置41に検出手段42を含むネットワークの状態監視を行う動作モードであるデバイス監視モードを備えているので、オペレータは故障個所や故障原因を容易に特定することが可能となり、施工管理装置41のメンテナンス性を向上させることができる。また、IO-Link通信によって検出手段42の識別情報や診断情報に基づいて施工管理装置41の状態監視が行われるので、アースドリル71の現場移動のたびにネットワーク接続の解除と復元が繰り返されても、安定した状態でキャリブレーション作業や本施工を行うことができる。
キャリブレーション作業の手順の一例として、ディスプレイ44に表示されたキャリブレーション表示画面の「回転数」又は「積算回転数」を選択すると、図5(B)に示す回転数表示画面が表示される。まず、ケリードライブ78の回転操作を行い、表示ランプ68の色によって回転が安定した状態にあることを確認した後に、「測定開始」を選択することにより回転数(回転速度)及び積算回転数の測定が開始される。所定時間が経過すると測定が終了し、例えば、回転数に42.1min-1が、積算回転数に42.1回がそれぞれ表示される。ここで、「実測値入力」を選択して実測値を入力することにより、例えば、回転数に42.0min-1が、積算回転数に42.0回がそれぞれ表示される。実測は、ケリーバ75に装着した拡底バケット79の回転数を目視でカウントすることにより行われ、その回転に要した時間に基づいて回転速度が算出される。また、入力された実測値は、制御装置43の記憶手段に保存される。最後に、「完了」を選択して、測定値及び実測値をキャリブレーション表示画面にそれぞれ反映させる。
このように、施工管理装置41にキャリブレーション作業を補助する動作モードであるキャリブレーションモードを備えているので、検出手段42による測定をタッチパネルの簡単な操作で行える上に、測定器具を用いて測定した実測値を手入力することによって測定値と実測値との比較も容易に行え、キャリブレーション作業における作業者の負担を軽減させることができる。また、項目ごとの比較をキャリブレーション表示画面に集約して表示し、これを印字したり画像データとして保存したりすることが可能となり、トレーサビリティを向上させることができる。
なお、本発明は、既製杭工法、場所打ち杭工法又は地盤改良工法あるいはアースドリル工法に限らず、各種杭工法や各種地盤改良工法において、施工することができる。また、キャリブレーション作業の項目は施工管理の目的に応じてさまざまであり、キャリブレーションモードの画面設計も適宜に変更することができる。さらに、測定する物理量としては、圧力や角度などに限定されず、温度や磁界なども挙げられ、例えば、オーガ駆動用モータやケリードライブ駆動用モータの駆動源に電気モータを適用する場合には、電流センサが用いられ、この電流センサで検出した電流に基づいて施工トルクが算出される。また、ネットワークに産業用イーサネットとしてPROFINETを採用したが、これに限るものではなく、例えば、EtherCAT(登録商標)などが採用できる。さらに、CAN通信などと組み合わせてネットワークを構成することもできる。