原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法(以下、ALD法と記載する場合がある)とは、原子層(分子層)を構成する元素が含まれる原料ガス(前駆体とも称される)を真空装置内に交互に導入し、真空装置内に配置された被成膜体の最表面に吸着された分子と、次に導入される原料ガスとの反応により単原子(単分子)層ずつ堆積させる方法で、被覆膜の膜厚を原子層レベルで制御できる方法である(非特許文献1参照)。
そして、ALD法は、被成膜体側から単原子(単分子)層ずつ堆積しながら成膜が始まる方法であるため、被成膜体(例えば耐熱性樹脂フィルム)に対しピンホールのない金属膜を形成することが可能となる。更に、ALD法においては原料がガスであるため、スパッタリング法や真空蒸着法で多発するスプラッシュ現象(膜原料が固まりのまま被成膜体に飛来する現象)の発生もない。従って、スプラッシュが成膜中の膜に付着し、それが脱落してピンホールになるような現象もない。一方、真空成膜法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等)においては、金属クラスターが被成膜体上に飛来して被成膜体表面に付着し、金属クラスターが結合して膜を形成していくため、潜在的に金属クラスター間にピンホールを作ってしまう可能性があり、ALD法とは大きく異なっている。
また、直進性が高いスパッタリング法や真空蒸着法においては均一な成膜が困難である表面に凹凸を有する被成膜体面上にも、ALD法では均一な成膜が可能であり、高アスペクト比の形状構成においても均一な成膜が可能である。また、ALD法で用いられる真空装置においては、PVD法やCVD法で用いられる真空装置に必要であった高価な電源ユニット等を必要としないため、従来の成膜方法と比較して成膜コストの低減も図れる。更に、ALD法においては、一般的な平行平板型プラズマCVD法等で得られる膜と比較して、低温でも緻密な膜が得られることが分かってきている。
これ等の特徴に着目して、ALD法は、有機ELの硫化亜鉛薄膜や化合物半導体であるガリウムヒ素薄膜の形成手法として研究開発がなされており、最近では、ALD法により形成されたHfO2/Al2O3膜がDRAMキャパシタ膜として提案されている(特許文献1参照)。
このALD法においては、上記原子層(分子層)を構成する元素のそれぞれが含まれる第1反応ガス(原料ガス)と第2反応ガス(原料ガス)を、真空装置(反応室)内に交互に導入する下記A~H工程で1サイクルが構成され、サイクル数により膜厚の調整が行なわれる。
A:真空装置(反応室)に第1反応ガス(原料ガス)を導入する工程、
B:被成膜体の最表面に第1反応ガスが化学吸着する工程、
C:被成膜体の最表面が第1反応ガスで飽和する工程、
D:真空装置(反応室)から過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する工程、
E:真空装置(反応室)に第2反応ガス(原料ガス)を導入する工程、
F:被成膜体の最表面に吸着している第1反応ガスと第2反応ガスが反応する工程、
G:被成膜体の最表面が第2反応ガスで飽和する工程、
H:真空装置(反応室)から過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する工程。
そして、ALD法では、第1反応ガスと第2反応ガスを選択することにより、SiO2、Al2O5、ZrO2、HfO2、Ta2O5、TiO2等の酸化物膜、AlN、TaN、TiN、TaSiN、TiSiN等の窒化物膜、Cu、Ru、Ir、Ni、Pt等の金属膜、CaF2、SrF2、MgF2等のフッ化物膜、GaAs、InP、GaP等の化合物膜の成膜が可能である。
例えば、ALD法で最も多く成膜が行われているAl2O3の単原子(単分子)層を形成する場合、下記4工程で1サイクルが完成する。
(i)第1反応ガスである水分子を導入して被成膜体の最表面にOH基を吸着させる。
(最初の反応)
H
2O → 被成膜体表面:O-H + (1/2)H
2
(1層目以降の反応)
:O-Al(CH
3)
2 +2H
2O → :O-Al(OH)
2+2CH
4
(ii)過剰水分子と副生成物CH
4をパージ排気する。
(iii)Al
2O
3膜の原料ガスとなる第2反応ガスTMA[Trimethyl Aluminum:Al(CH
3)
3]ガスを導入する。TMA分子がOH基と反応してCH
4ガスが発生する。
(1層目の反応)
:O-H + Al(CH
3)
3 → :O-Al(CH
3)
2 +CH
4
(iv)過剰なTMAガスと副生成物CH
4ガスをパージ排気する。
この4工程で約0.1nmのAl2O3膜が形成されるので、要求する膜厚に到達するまで上記4工程のサイクルを繰り返して膜厚を増加させる。
尚、上記(iii)工程における(1層目の反応)の後、(iv)工程を経て、2サイクル目の(i)工程に入った場合は(1層目以降の反応)となる。また、上述したA~H工程において、A~C工程は上記(i)工程に対応し、D工程は上記(ii)工程に対応し、また、E~G工程は上記(iii)工程に対応し、H工程は上記(iv)工程に対応している。
また、反応を促進させるため、ALD法は、被成膜体を加熱(100~300℃)し、あるいは、第1反応ガスと第2反応ガスとの反応の際に直接プラズマを印加する方式や、反応室外でプラズマを使用し活性化された反応基を反応室に導入する方式等のプラズマALD法を行うことができる。
ALD法は、例示したAl2O3層以外の膜種においても、反応ガスが異なるだけで、基本的には、「第1反応ガスの導入」、「パージ」、「第2反応ガスの導入」、「パージ」の4工程で1層の成膜が可能である。また、ALD法による成膜は不純物が取り込まれることが少なく、精製作用があるため、純度の低い反応ガスを使用しても高純度の膜を得ることができる。
ところで、ALD法を実施するためのALD装置は、真空成膜装置としては比較的簡単な構造で、多くの装置メーカから市販されている。基本的には、真空チャンバに反応ガス導入機構が付属した装置である。
以下、従来のALD装置について簡単に説明すると、図1は、基板(ウエハW)上に成膜がなされるバッチ方式のALD装置1を示したものである(特許文献2参照)。
図1のALD装置1は、プロセス反応器チャンバ10、第一の分配弁2、第二の分配弁4、隔離弁5、排出前方ライン11、排出ポンプ20、および、分配前方ライン12を備えており、上記プロセス反応器チャンバ10は、第一の前駆体入口6、第二の前駆体入口7、第一のチャンバ出口8を有している。また、上記第一の分配弁2は、第一の前駆体入口6に結合され、上記第二の分配弁4は、第二の前駆体入口7に結合され、上記隔離弁5は、プロセス反応器チャンバ10の第一のチャンバ出口8に直結され、また、上記排出ポンプ20は、排出経路を画成する排出前方ライン11により隔離弁5に結合されている。上記分配前方ライン12は、第一の端部13および第二の端部14を備えており、第一の端部13は、第一の分配弁2に結合され、第二の端部14は、排出ポンプ20に結合されている。
上記第一の分配弁2は、第一の前駆体入口6を通って第一の前駆体(すなわち第1反応ガス)g1がプロセス反応器チャンバ10内に導入されるようにし、当該第一の前駆体g1の連続的な流れを維持するため、上記第一の分配弁2は、第一の前駆体g1の方向をプロセス反応器チャンバ10の第一の前駆体入口6に選択的に偏向させるようになっている。尚、第一の前駆体g1がプロセス反応器チャンバ10内に偏向されないとき、第一の前駆体g1は、分配前方ライン12を介して排出ポンプ20に送られる。第一の前駆体g1がプロセス反応器チャンバ10の第一の前駆体入口6に偏向されないとき、第一の前駆体g1を廃棄するため上記分配前方ライン12が使用される。第一の前駆体g1と混合すると、第一の排出前方ライン11を詰まらせる可能性があるその他の化学剤、前駆体および排出物から、第一の前駆体g1を隔離するため分配前方ライン12が使用される。このように分配動作されることで、排出前方ライン11は、清浄なままであり、かつ、流れは安定的で一定である。
上記プロセス反応器チャンバ10は、上述した第一の前駆体入口6と第二の前駆体入口7、および、ヒータ15、ウエハW、シャワーヘッド装置17を備えており、上記第一の前駆体入口6と第二の前駆体入口7は共通の開口部16を共用するか、またはこれと代替的に別個の開口部を有するようにしてもよい。第一の前駆体入口6を通じて、第一の前駆体g1をシャワーヘッド装置17に導くことができ、シャワーヘッド装置17は、第一の前駆体g1をプロセス反応器チャンバ10内に分配する。第一の前駆体g1は、プロセス反応器チャンバ10内に導入されると、ヒータ15上に配置されているウエハWの表面に吸着される。第一の前駆体g1がウエハWに吸着されたとき、吸着に使われなかった第一の前駆体g1は、パージ弁3を介してプロセス反応器チャンバ10内に導入されたパージガスと共にチャンバ出口8に導かれ、隔離弁5内に直接流れ、排出前方ライン11を介して排出ポンプ20に運ばれ、プロセス反応器チャンバ10外に排出される。
上記第一の前駆体g1と第二の前駆体(すなわち第2反応ガス)g2は、別個の間隔にて導入される。反応しない第一の前駆体g1がパージ弁3を用いてプロセス反応器チャンバ10外に排出されたとき、第二の分配弁4は、第二の前駆体入口7を通って第二の前駆体g2がプロセス反応器チャンバ10内に導入されるようにし、第二の前駆体入口7を通じて第二の前駆体g2をシャワーヘッド装置17に導くことができ、シャワーヘッド装置17は、第二の前駆体g2をプロセス反応器チャンバ10内に分配する。
そして、第二の前駆体(すなわち第2反応ガス)g2は、ウエハW上に形成された第一の前駆体(すなわち第1反応ガス)g1が吸着して形成された層と反応し、ウエハW上に単一層の膜を形成する。反応しない第二の前駆体g2は、パージ弁3を介しプロセス反応器チャンバ10内に導入されたパージガスと共にチャンバ出口8に導かれ、隔離弁5内に直接流れ、排出前方ライン11を介して排出ポンプ20に運ばれ、プロセス反応器チャンバ10外に排出される。
このように図1に示すバッチ方式のALD装置1においては、第一の前駆体g1と第二の前駆体g2を交互にプロセス反応器チャンバ10内に導入し、二つの前駆体(第一の前駆体g1と第二の前駆体g2)が反応して膜が形成され、成膜に寄与しなかった前駆体をパージ(排気)する過程は連続的に高速度で行われる。
原子層堆積(ALD)法は、上述したように原子層(分子層)を構成する元素が含まれる原料ガスを真空装置内に交互に導入し、真空装置内に配置された被成膜体の最表面に吸着された分子と、次に導入される原料ガスとの反応により単原子(単分子)層ずつ堆積させることができ、形成される層の膜厚を原子層レベルで制御できることを特徴とする。そして、被成膜体としては、半導体ウエハや樹脂フィルム等の板状、フィルム状基材だけでなく、粉末表面へ被覆膜を形成する方法として適用することも検討されている。
例えば、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられているリチウム遷移金属複合酸化物粒子の粒子表面状態を改質する技術として、特許文献3は、正極活物質粒子の表面に、原子層堆積(ALD)法を用いて無機酸化物の単原子層を繰り返し堆積することにより無機酸化物層を形成することが提案されている。そして、ALD法は高い膜厚制御性を有しているので、正極活物質粒子の表面に必要な分だけ均一な無機酸化物層を形成することができ、正極活物質粒子の表面に無機酸化物層を設けたことによる電池のエネルギー密度の低下を抑制することができ、無機酸化物層によるLiイオン反応抵抗の増大を抑制できるとしている。また、正極活物質粒子の表面に無機酸化物層を設けたことによる粒度分布変化を抑制することができ、被覆膜としての無機酸化物層絶対量を低減できるとしている。更に、ALD法では、真空容器内に収容した粉体に、前駆体ガスを供給する工程と、パージにより余剰分子を取り除く工程とを交互に繰返すことにより、原子層を一層ずつ積み上げることができる。成膜過程において、表面化学反応の自己停止機構が作用するため、一原子層レベルの均一なレイヤーコントロールが可能になり、優れた膜質の無機酸化物層を形成できるとしている。
また、特許文献4は、図2に示すようにUV-A(320~400nm)波長域における紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO2(3.2eV:バンドギャップの数値を示す。以下同様)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO2(3.1eV)から選択された平均粒径10~500nmの微粒子基材30と、二酸化ケイ素SiO2、酸化アルミニウムAl2O3から選択されかつ微粒子基材30を覆う被覆処理膜31から成り、被覆処理膜31がALD法により成膜された1層以上の原子層で構成されている紫外線遮蔽性粒子、および、図3に示すようにUV-B(280~320nm)波長域における紫外線に対し効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO2(3.6eV)から選択された平均粒径10~500nmの微粒子基材40と、UV-A(320~400nm)波長域における紫外線遮蔽効果の高い上記二酸化チタンTiO2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO2(3.1eV)から選択されかつ微粒子基材40を覆う被覆膜41と、二酸化ケイ素SiO2、酸化アルミニウムAl2O3から選択されかつ被覆膜41を覆う被覆処理膜42から成り、被覆膜41と被覆処理膜42がALD法によりそれぞれ成膜された1層以上の原子層で構成されている紫外線遮蔽性粒子を提案している。
また、特許文献5は、図4に示すように炭素の同素体であるフラーレンにより構成された粉末基材50と、UV-B(280~320nm)波長域における紫外線に対し効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO2(3.6eV)から選択されかつ粉末基材50を覆う第一被覆膜51と、UV-A(320~400nm)波長域における紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO2(3.1eV)から選択されかつ第一被覆膜51を覆う第二被覆膜52と、二酸化ケイ素SiO2、酸化アルミニウムAl2O3から選択されかつ第二被覆膜52を覆う被覆処理膜53から成り、第一被覆膜51と第二被覆膜52および被覆処理膜53がALD法によりそれぞれ成膜された1層以上の原子層で構成されている紫外線遮蔽性粒子を提案している。
尚、特許文献4~5では、微粒子表面への成膜に適した代表的なバッチ式ALD装置として、図5および図6に示すALD装置が開示されている。すなわち、図5に示すALD装置は、薄く敷き詰めた微粒子表面にALD法を用いて被覆膜を成膜する装置である。真空チャンバ100の内部には、微粒子102が薄く敷き詰められたパウダー(微粒子)トレイ101が配置され、このパウダートレイ101は微粒子102が移動できるように振動を与えてもよいとしている。真空チャンバ100にはメインバルブ103を経由して真空ポンプ(ドライポンプ)104が接続され、かつ、複数の反応ガスを導入するバルブ107、109、111、113と流量計108、110、112、114が取り付けられており、バルブ107、109、111、113には、ガスを加熱する機構が付随したものもある。成膜を促進するため、加熱ヒータ105やプラズマ源106を備えていることが好ましいとしている。
また、図6に示すALD装置も、微粒子202表面にALD法を用いて被膜膜を成膜する装置である。真空チャンバ200の内部には、微粒子202が詰め込まれたパウダー(微粒子)キャン201が配置され、かつ、真空チャンバ200にはメインバルブ203を経由して真空ポンプ(ドライポンプ)204が接続されていると共に、パウダーキャン201の底部には微粒子202が真空ポンプに排気されないようにフィルタ215を備えている。但し、このフィルタ215にも、反応ガスにより成膜が進行して目詰まりを起こすので定期的な交換が必要となる。更に、複数の反応ガスを導入するバルブ207、209、211、213と上記各ガス導入バルブにはそれぞれ流量計208、210、212、214が取り付けられており、各ガス導入バルブには、ガスを加熱する機構が付随したものもある。また、成膜を促進するため、加熱ヒータ205、206を備えることが好ましいとしている。
このように原子層堆積(ALD)法は、原子層(分子層)を構成する元素が含まれる原料ガスを真空装置内に交互に導入し、真空装置内に配置された被成膜体の最表面に吸着された分子と次に導入される原料ガスとの反応により単原子(単分子)層ずつ堆積させる方法で、形成される層の膜厚を原子層レベルで制御できることを特徴としている。そして、上述した半導体ウエハや樹脂フィルム等の板状、フィルム状基材だけでなく、粉体を構成する粒子表面へ被覆膜を形成する方法として適用範囲が拡大されてきている。
しかし、ALD法は、原子層(分子層)を構成する元素のそれぞれが含まれる第1反応ガス(原料ガス)と第2反応ガス(原料ガス)を真空装置(反応室)内に交互に導入する上述のA~H工程で1サイクルを構成し、サイクル数により膜厚の調整がなされるため、上述したD工程(真空装置から過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する工程)とH工程(真空装置から過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する工程)が必要となり、被覆膜や被覆処理膜を形成する反応時間以外の「排気工程」に時間を要していた。また、上記原子層(分子層)を種類が異なる複数の被覆膜で構成する場合、それぞれの被覆膜が形成される際の吸着、反応を妨げる副生成物が発生しないように真空装置内の排気を十分に行う必要があるため、その分、「排気工程」の時間割合を長くする必要があった。
尚、「排気工程」に要する時間を短縮させるには、被覆膜の種類数に対応させてALD装置を増やし、被覆膜が形成される際に吸着、反応を妨げる副生成物の発生を防止すればよいが、ALD装置の増加や装置の増加に伴い操作が煩雑化する等の問題が残される。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は、第1反応ガス吸着工程と排気工程および第2反応ガス反応工程と排気工程を繰り返して粉体を構成する粒子表面に被覆膜を形成する原子層堆積(ALD)装置において、排気機構を有する複数の真空チャンバが粒子の移動を制御する粒子移動用開閉バルブを介して鉛直方向に連通して配置され、かつ、第1反応ガス吸着工程と第2反応ガス反応工程を行う少なくとも一対の真空チャンバに反応ガス導入機構が設けられていることを前提とするものである。
そして、参考例の第一実施形態に係る原子層堆積(ALD)装置は、
上記複数の真空チャンバが、一定量の粉体が導入される第1真空チャンバと、粒子移動用開閉バルブを介し第1真空チャンバから導入される粒子の表面に第1反応ガスを化学吸着させる第2真空チャンバと、粒子移動用開閉バルブを介し第2真空チャンバから第1反応ガスを化学吸着した粒子が導入されかつ第2真空チャンバから流れ込んだ過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する第3真空チャンバと、粒子移動用開閉バルブを介し第3真空チャンバから導入される粒子の該表面に化学吸着された第1反応ガスと第2反応ガスを反応させて原子層を形成する第4真空チャンバと、粒子移動用開閉バルブを介し第4真空チャンバから原子層を形成した粒子が導入されかつ第4真空チャンバから流れ込んだ過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する第5真空チャンバとで構成され、かつ、
最上部の第1真空チャンバには一定量の粉体を導入する粒子導入用開閉バルブが設けられると共に、最下部の第5真空チャンバには原子層が形成された粒子を排出する粒子排出用開閉バルブが設けられており、
各真空チャンバの上記排気機構が、排気メインバルブを介し真空ポンプに接続された共通排気管と、各真空チャンバに付設された排気バルブを介し上記共通排気管に接続された個別排気管とで構成され、個別排気管の真空チャンバ側には粒子の吸い込みを防止する吸い込み防止フィルタがそれぞれ設けられていると共に、
上記第1反応ガスの吸着工程を行う第2真空チャンバと第2反応ガスの反応工程を行う第4真空チャンバに設けられる反応ガス導入機構が、反応ガスの供給源に接続された反応ガス導入管と、各反応ガス導入管に付設されたガス導入バルブとで構成され、かつ、
上記第1反応ガスの吸着工程中と第2反応ガスの反応工程中、全ての粒子移動用開閉バルブが閉止されていることを特徴とし、
本発明の第二実施形態に係る原子層堆積(ALD)装置は、
上記複数の真空チャンバが、一定量の粉体が導入される第1真空チャンバと、粒子移動用開閉バルブを介し第1真空チャンバから導入される粒子の表面に第1反応ガスを化学吸着させかつ過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する第2真空チャンバと、粒子移動用開閉バルブを介し第2真空チャンバから導入される粒子の該表面に化学吸着された第1反応ガスと第2反応ガスを反応させて原子層を形成しかつ過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する第3真空チャンバと、粒子移動用開閉バルブを介し第3真空チャンバから原子層を形成した粒子が導入される第4真空チャンバとで構成され、かつ、
最上部の第1真空チャンバには一定量の粉体を導入する粒子導入用開閉バルブが設けられると共に、最下部の第4真空チャンバには原子層が形成された粒子を排出する粒子排出用開閉バルブが設けられており、
各真空チャンバの上記排気機構が、排気メインバルブを介し真空ポンプに接続された共通排気管と、各真空チャンバに付設された排気バルブを介し上記共通排気管に接続された個別排気管とで構成され、個別排気管の真空チャンバ側には粒子の吸い込みを防止する吸い込み防止フィルタがそれぞれ設けられていると共に、
上記第1反応ガスの吸着工程を行う第2真空チャンバと第2反応ガスの反応工程を行う第3真空チャンバに設けられる反応ガス導入機構が、反応ガスの供給源に接続された反応ガス導入管と、各反応ガス導入管に付設されたガス導入バルブとで構成され、かつ、
上記第1反応ガスの吸着工程中と第2反応ガスの反応工程中、全ての粒子移動用開閉バルブが閉止されていることを特徴とするものである。
以下、1.被成膜体となる粒子材料、2.原子層堆積法で得られる被覆膜(膜種)とその膜材料(反応ガス)、3.被覆膜の構造、4.原子層堆積装置(1)第一実施形態に係る原子層堆積装置、(2)第一実施形態に係る原子層堆積装置を用いた被覆膜形成粒子の製造方法、(3)第二実施形態に係る原子層堆積装置、(4)第二実施形態に係る原子層堆積装置を用いた被覆膜形成粒子の製造方法、および、5.原子層堆積法により被覆膜が形成された近赤外線遮蔽被覆粒子について順に説明する。
1.被成膜体となる粒子材料
本発明に係る原子層堆積装置は、排気機構を有する複数の真空チャンバが粒子の移動を制御する粒子移動用開閉バルブを介し鉛直方向に連通して配置された構造を有しており、この装置を用いて粒子表面に被覆膜が形成された被覆膜形成粒子を半連続的に製造することを目的としている。また、被覆膜が形成される固体粒子(粒子と略記する場合がある)は凝集等がなく単一に分散しており、上記粒子が多数集合した状態で真空チャンバ間を移動して粒子表面に被覆膜が形成される。尚、本明細書においては、真空チャンバ間を移動する上記粒子が多数集合した状態を「粉体」と表記することとする。
優れた機能を有する粒子が、該粒子の存在している環境雰囲気や外部からの光学的、熱的、物理的原因により保有する機能が劣化してしまう場合、当該粒子表面に被覆膜を形成して機能劣化を抑制することは各種の粒子でよく行われていることである。
原子層堆積(ALD)法は、上述したように原子層(分子層)を構成する元素が含まれる原料ガスを真空装置内に交互に導入し、真空装置内に配置された被成膜体の最表面に吸着された分子と、次に導入される原料ガスとの反応により単原子(単分子)層ずつ堆積させる方法で、形成される層の膜厚を原子層レベルで制御できることを特徴としている。
そして、被成膜体表面から単原子(単分子)層ずつ堆積しながら成膜が始まる方法であるため、被成膜体に対しピンホールのない膜を形成することが可能で、かつ、原料がガスであるためスパッタリング法や真空蒸着法で多発するスプラッシュの発生もなく、スプラッシュが成膜中の膜に付着しそれが脱落してピンホールになるような現象もない。
更に、直進性が高いスパッタリング法や真空蒸着法においては均一な成膜が困難である、表面に凹凸を有する被成膜体面上でも、あるいは、粒子が集合した粉体であってもALD法では均一な成膜が可能であり、高アスペクト比の粒子形状の被成膜体であっても均一な成膜が可能となる点において優れている。
これ等の特徴を活かし、ALD法を用いて粒子表面に被覆膜が形成された被覆膜形成粒子を製造する場合、適用する粒子の種類について特に制約はない。また、粒子の平均粒径についても特段の制約は無く、例えば、平均粒径10nm~100μmの粒子等を用いることができる。また、粒子は凝集が無く単分散していることが好ましく、当該粒子の移動、搬送時に固着してしまう等の問題発生のないものが好ましい。
例えば、微粒子基材として、上述した特許文献4には、UV-B(280~320nm)波長域における紫外線に対して効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO2(3.6eV)から選択された平均粒径10~500nmの紫外線吸収微粒子を適用し、UV-A(320~400nm)波長域における紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO2(3.1eV)から選ばれた被覆膜により微粒子基材を被覆する構造が開示されている。
また、粉末基材として、上述した特許文献5には、炭素の同素体である「フラーレン」を使用し、当該粉末基材を覆う第一被覆膜に、UV-B波長域における紫外線に対して効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO2(3.6eV)から選ばれた材料を適用し、かつ、第一被覆膜を覆う第二被覆膜に、UV-A波長域における紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO2(3.1eV)から選ばれた材料を用い、更に、第二被覆膜を覆う被覆処理膜に、二酸化ケイ素SiO2、酸化アルミニウムAl2O3から選択した材料を適用する紫外線遮蔽性粉末が開示されている。
2.原子層堆積法で得られる被覆膜(膜種)とその膜材料(反応ガス)
ALD法で被覆膜を形成する反応ガスは各社から販売されている。本発明で採用した被覆膜の代表的な反応ガスを以下の表1に示す。
これ等の代表的な膜材料(反応ガス)を表1にまとめるが、ここに示した膜材料(反応ガス)に限定されるものではない。また、これ等の膜材料から成る酸化膜に加え、類似する炭化膜、窒化膜あるいはこれ等の合成膜であってもよい。
3.被覆膜の構造
本発明に係る原子層堆積装置を用いて形成される被覆膜の構造としては、例えば表1に記載された第1反応ガスと第2反応ガスを選択した場合、原子層堆積法によりAl2O3またはSiO2から成る原子層が少なくとも1層以上形成されていればよく、被覆膜の総数、膜の順番、組合せ、膜厚等が限定されるものではない。
1層の原子層(分子層)が形成される1サイクルの工程(第1反応ガスの導入、パージ、第2反応ガスの導入、パージ)を繰り返して被覆膜形成のサイクル数を増やすことにより被覆膜の膜厚を調整でき、また、上記原子層堆積装置を鉛直方向に複数接続することにより複数種類の被覆膜から成る積層構造を有する被覆膜形成粒子とすることも可能であり、更に、第1反応ガスと第2反応ガスを選択することにより、SiO2、Al2O5、ZrO2、HfO2、Ta2O5、TiO2等の酸化物膜、AlN、TaN、TiN、TaSiN、TiSiN等の窒化物膜、Cu、Ru、Ir、Ni、Pt等の金属膜、CaF2、SrF2、MgF2等のフッ化物膜、GaAs、InP、GaP等の化合物膜を成膜することも可能である。
そして、本発明に係る原子層堆積装置を用いて形成される被覆膜の構造としては、図2~図4に示した紫外線遮蔽性粉末の構造が例示される。
4.原子層堆積装置
(1)第一実施形態に係る原子層堆積装置
第一実施形態に係る原子層堆積装置は、排気機構を有する5基の真空チャンバで構成されている。
すなわち、この原子層堆積装置は、図7に示すように一定量の粉体が導入される第1真空チャンバ331と、粒子移動用開閉バルブ312を介し第1真空チャンバ331から導入される粒子336の表面に第1反応ガスを化学吸着させる第2真空チャンバ332と、粒子移動用開閉バルブ313を介し第2真空チャンバ332から第1反応ガスを化学吸着した粒子337が導入されかつ第2真空チャンバ332から流れ込んだ過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する第3真空チャンバ333と、粒子移動用開閉バルブ314を介し第3真空チャンバ333から導入される粒子337の該表面に化学吸着された第1反応ガスと第2反応ガスを反応させて原子層を形成する第4真空チャンバ334と、粒子移動用開閉バルブ315を介し第4真空チャンバ334から原子層を形成した粒子338が導入されかつ第4真空チャンバ334から流れ込んだ過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する第5真空チャンバ335とで構成され、
最上部の第1真空チャンバ331には一定量の粉体を導入する粒子導入用開閉バルブ311が設けられると共に、最下部の第5真空チャンバ335には原子層が形成された粒子338を排出する粒子排出用開閉バルブ316が設けられており、
各真空チャンバの上記排気機構が、排気メインバルブ302を介し真空ポンプ301に接続された共通排気管303と、各真空チャンバに付設された排気バルブ304、305、306、307、308を介し上記共通排気管303に接続された個別排気管とで構成され、個別排気管の真空チャンバ側には粒子の吸い込みを防止する吸い込み防止フィルタ324、325、326、327、328がそれぞれ設けられていると共に、
上記第1反応ガスの吸着工程を行う第2真空チャンバ332と第2反応ガスの反応工程を行う第4真空チャンバ334に設けられる反応ガス導入機構が、反応ガスの供給源(図示せず)に接続されかつガス流量計(MFC:マスフローコントローラ)317、318が付設された反応ガス導入管と、各反応ガス導入管に付設されたガス導入バルブ309、310とで構成されている。
尚、粒子の導入、移動、排出に係る各バルブの開閉制御、真空チャンバの上記排気機構に係る制御、および、真空チャンバの上記反応ガス導入機構に係る制御は、原子層堆積装置に付設された一般的な制御手段(図示せず)によりなされる。
以下、第一実施形態に係る原子層堆積装置について具体的に説明する。
5基の真空チャンバ(第1真空チャンバ331、第2真空チャンバ332、第3真空チャンバ333、第4真空チャンバ334、および、第5真空チャンバ335)の機能を以下に記載するが、第1真空チャンバ331~第5真空チャンバ335がALD法で1層の原子層(分子層)が形成される1サイクルの4工程に相当する。
第1真空チャンバ331:排気室
第2真空チャンバ332:粒子の最表面に成膜するための第1反応ガスが供給される化学吸着室
第3真空チャンバ333:過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する排気室
第4真空チャンバ334:粒子の最表面に成膜するための第2反応ガスが供給される化学反応室
第5真空チャンバ335:過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する排気室
第一実施形態に係る原子層堆積装置において、第1真空チャンバ331(排気室)、第2真空チャンバ332(化学吸着室)、第3真空チャンバ333(排気室)、第4真空チャンバ334(化学反応室)、および、第5真空チャンバ335(排気室)には、上述したように排気バルブ304、305、306、307、308がそれぞれ付設されており、各排気バルブを経由して共通排気管303に接続されている。
上記共通排気管303には、排気メインバルブ302を経由して真空ポンプ(ドライポンプ)301が接続されており、各真空チャンバの個別排気管には粉体を吸い込まないように上述の吸い込み防止フィルタ324、325、326、327、328が取り付けられている。
また、第一実施形態に係る原子層堆積装置においては、ガス流量計(MFC:マスフローコントローラ)317、318により第1反応ガスと第2反応ガスの流量が制御され、化学吸着室と化学反応室である各真空チャンバ(第2真空チャンバ332と第4真空チャンバ334)に設けられた吹き込みパイプから各真空チャンバ内に第1反応ガスと第2反応ガスが導入される。尚、符号329と330は、吹き込みパイプの先端に設けられたフィルタを示している。
また、第一実施形態に係る原子層堆積装置においては、反応を促進させるため、各真空チャンバの外周面に加熱用線状部材319、320、321、322、323を巻回することができる。
また、第一実施形態に係る原子層堆積装置において、最上部の真空チャンバ331における上流側と最下部の真空チャンバ335における下流側が、真空槽(図示せず)に接続されている場合、真空が確保されることを条件に真空チャンバ331(排気室)と真空チャンバ335(排気室)を省略して上記真空槽に機能を兼ねさせることも可能である。
また、第一実施形態に係る原子層堆積装置においては、粒子表面に被覆膜として1層の原子層(分子層)を形成する1サイクルの工程が第1真空チャンバ331~第5真空チャンバ335で半連続的になされ、1層の原子層(分子層)が形成された粒子から成る粉体を最下部の真空チャンバ335に設けられた粒子排出用開閉バルブ316を開閉して排出させることができる。
また、1サイクルの工程を実施して1層の原子層(分子層)が形成された被覆膜形成粒子に対し、更に1サイクル工程を繰り返して被覆膜形成のサイクル数を増やすことにより膜厚を増加させることができる。
尚、1サイクル工程を追加するには、最下部の第5真空チャンバ335に原子層(分子層)が形成された粒子を排出する粒子排出用開閉バルブ316を介し搬送用真空チャンバ(図示せず)を連通して設け、かつ、この搬送用真空チャンバを、最上部の第1真空チャンバ331にその粒子導入用開閉バルブ311を介し連通して設けると共に、搬送用真空チャンバ内に設けられた図示外の搬送機構により上記原子層(分子層)が形成された粒子から成る粉体を搬送して第1真空チャンバ331内に導入することで可能となる。
(2)第一実施形態に係る原子層堆積装置を用いた被覆膜形成粒子の製造方法
(a)1つの真空チャンバのみに粉体が配置される場合
まず、5基の真空チャンバの内、1つの真空チャンバのみに粉体が配置される場合について、粉体の移動を基準にして説明する。
(a-1)図7(a)に示す粒子導入用開閉バルブ311、粒子移動用開閉バルブ312、313、314、315、および、粒子排出用開閉バルブ316の全てを閉止する。
(a-2)真空ポンプ(ドライポンプ)301を起動させてから排気メインバルブ302を開放し、かつ、第1真空チャンバ331(排気室)の排気バルブ304、第2真空チャンバ332(化学吸着室)の排気バルブ305、第3真空チャンバ333(排気室)の排気バルブ306、第4真空チャンバ334(化学反応室)の排気バルブ307、および、第5真空チャンバ335(排気室)の排気バルブ308を開放して排気する。
(a-3)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止した後、第1真空チャンバ331(排気室)の粒子導入用開閉バルブ311のみを開放し、第1真空チャンバ331(排気室)内に一定量の粉体336を落下導入させ、然る後、上記粒子導入用開閉バルブ311を閉止する。次いで、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を開放して排気する。
(a-4)排気した後、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止し、然る後、第1真空チャンバ331と第2真空チャンバ332間の粒子移動用開閉バルブ312を開放し、第2真空チャンバ332(化学吸着室)内に上記粉体336を落下導入させた後、粒子移動用開閉バルブ312を閉止する。次いで、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を開放して排気する。
(a-5)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308が開放された状態で第2真空チャンバ332(化学吸着室)のガス導入バルブ309を開放し、かつ、ガス流量計(MFC)317によりガス流量を設定した後、フィルタ329が先端に設けられた吹き込みパイプから、設定した導入時間、第1反応ガスを第2真空チャンバ332(化学吸着室)内に導入し、その後、ガス導入バルブ309を閉止する。
(a-6)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止した後、第2真空チャンバ332と第3真空チャンバ333間の粒子移動用開閉バルブ313を開放し、第1反応ガスが表面に化学吸着された粉体337を第3真空チャンバ333(排気室)内に落下導入させ、かつ、上記粒子移動用開閉バルブ313を閉止した後、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を開放して排気し、更に、排気バルブ306より第2真空チャンバ332から第3真空チャンバ333内に流れ込んだ過剰な第1反応ガスと副生成物も排気する。
(a-7)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止した後、第3真空チャンバ333と第4真空チャンバ334間の粒子移動用開閉バルブ314を開放し、第1反応ガスが表面に化学吸着された粉体337を第4真空チャンバ334(化学反応室)内に落下導入させ、然る後、上記粒子移動用開閉バルブ314を閉止する。次いで、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を開放して排気する。
(a-8)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308が開放された状態で第4真空チャンバ334(化学反応室)のガス導入バルブ310を開放し、かつ、ガス流量計(MFC)318によりガス流量を設定した後、フィルタ330が先端に設けられた吹き込みパイプから、設定した導入時間、第2反応ガスを第4真空チャンバ334(化学反応室)内に導入し、その後、ガス導入バルブ310を閉止する。
(a-9)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止した後、第4真空チャンバ334(化学反応室)と第5真空チャンバ335(排気室)間の粒子移動用開閉バルブ315を開放し、第1反応ガスと第2反応ガスとの反応により1層の原子層(分子層)が形成された粉体338を第5真空チャンバ335(排気室)内に落下導入させ、かつ、上記粒子移動用開閉バルブ315を閉止した後、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を開放して排気し、更に、排気バルブ308より第4真空チャンバ334から第5真空チャンバ335内に流れ込んだ過剰な第2反応ガスと副生成物も排気する。
(a-10)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止した後、第5真空チャンバ335(排気室)の粒子排出用開閉バルブ316を開放し、上記粉体338を落下排出させた後、上記粒子排出用開閉バルブ316を閉止する。
上記操作(a-1)~操作(a-10)により粒子表面に1層の原子層(分子層)が形成された被覆膜形成粒子を製造することができる。
尚、1サイクル工程を追加するため、最下部の第5真空チャンバ335(排気室)の粒子排出用開閉バルブ316と最上部の第1真空チャンバ331(排気室)の粒子導入用開閉バルブ311間に、搬送機構を内部に有する上記搬送用真空チャンバ(図示せず)が連通して設けられている場合には、以下の操作(a-11)が追加される。
(a-11)上記粒子排出用開閉バルブ316を介し図示外の搬送用真空チャンバ内に落下導入された粉体338を、当該搬送用真空チャンバ内の搬送機構により最上部に位置する第1真空チャンバ331(排気室)の粒子導入用開閉バルブ311前部に搬送し、1サイクル工程を追加するための上記操作(a-1)~操作(a-10)が繰り返される。
(b)全ての真空チャンバ内に粉体が配置される場合
次に、5基の全真空チャンバ内に粉体が配置される場合について、粉体の移動を基準にして説明する。
尚、5基の全真空チャンバ内に粉体が配置される場合とは、第1真空チャンバ331(排気室)内に未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体が導入され、この粉体が第2真空チャンバ332内に落下導入された後、上記「1つの真空チャンバのみに粉体が配置される場合」と異なり、上記粉体が排出されて空状態の第1真空チャンバ331(排気室)内に、再度、未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体が落下導入される。そして、最初に導入された粉体に対し第2真空チャンバ332内において第1反応ガスの化学吸着が終了した後、第1反応ガスが表面に化学吸着された粉体を第3真空チャンバ333内に落下導入すると共に、第1真空チャンバ331(排気室)内に2番目に導入された粉体を第2真空チャンバ332内に落下導入し、2番目に導入された粉体が排出されて空状態の第1真空チャンバ331(排気室)内に、再度、3番目の粉体が落下導入される。これ等の工程が半連続的に行われることで全ての真空チャンバ内に粉体が配置されることになる場合を意味する。
(b-1)上記工程を経て、第1~第5の各真空チャンバでそれぞれの処理操作が行われ、第1真空チャンバ331、第2真空チャンバ332、第3真空チャンバ333、第4真空チャンバ334、および、第5真空チャンバ335の全真空チャンバ内に定量の粉体が配置された状態となる。
(b-2)各真空チャンバにおける処理操作が終了した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止し、然る後、第5真空チャンバ335の粒子排出用開閉バルブ316のみを開放して原子層が形成された粒子338を排出する。
(b-3)上記粒子排出用開閉バルブ316を閉止した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気し、然る後、第1~5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止する。次いで、第5真空チャンバ335と第4真空チャンバ334間の粒子移動用開閉バルブ315のみを開放して第4真空チャンバ334から処理済の粉体を第5真空チャンバ335内に導入する。
(b-4)第5真空チャンバ335と第4真空チャンバ334間の上記粒子移動用開閉バルブ315を閉止した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気し、然る後、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止する。次いで、第4真空チャンバ334と第3真空チャンバ333間の粒子移動用開閉バルブ314のみを開放して第3真空チャンバ333から処理済の粉体337を第4真空チャンバ334内に導入する。
(b-5)第4真空チャンバ334と第3真空チャンバ333間の上記粒子移動用開閉バルブ314を閉止した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気し、然る後、第1~5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止する。次いで、第3真空チャンバ333と第2真空チャンバ332間の粒子移動用開閉バルブ313のみを開放して第2真空チャンバ332から処理済の粉体を第3真空チャンバ333内に導入する。
(b-6)第3真空チャンバ333と第2真空チャンバ332間の上記粒子移動用開閉バルブ313を閉止した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気し、然る後、第1~5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止する。次いで、第2真空チャンバ332と第1真空チャンバ331間の粒子移動用開閉バルブ312のみを開放して第1真空チャンバから処理済の粉体336を第2真空チャンバ332内に導入する。
(b-7)第2真空チャンバ332と第1真空チャンバ331間の上記粒子移動用開閉バルブ312を閉止した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気し、然る後、第1~5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止する。次いで、第1真空チャンバ331の粒子導入用開閉バルブ311のみを開放して第1真空チャンバ331内に未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体を導入し、粉体の導入が完了してから粒子導入用開閉バルブ311を閉止する。
上記操作(b-7)が終了すると、5基の各真空チャンバにおいて、上段側から下段側の真空チャンバ内に粉体が移動配置された状態となるため、各真空チャンバにおける処理操作を行う。そして、各真空チャンバにおける処理操作が終了した後、上記操作(b-1)~操作(b-7)を行うことにより上段側から下段側の真空チャンバ内に粉体が移動配置された状態となるため、各真空チャンバにおける処理操作を行う。
この工程を繰り返し行うことにより、粒子表面に被覆膜が形成された被覆膜形成粒子を半連続的に製造することができる。
このように全ての真空チャンバ(排気室、化学吸着室、化学反応室)に粉体が存在していても、下流側の真空チャンバから順番に粒子排出用開閉バルブ316、粒子移動用開閉バルブ315、314、313、312、および、粒子導入用開閉バルブ311を操作することで、粒子移動用開閉バルブを開放したときに反応ガスが混合されることはない。
(c)真空チャンバの隔室(チャンバ一つおき)に粉体が配置される場合
次に、真空チャンバ5基の内、空の真空チャンバを介しチャンバ一つおきに粉体が配置される場合について、粉体の移動を基準にして説明する。
尚、チャンバ一つおきに粉体が配置される場合とは、第1真空チャンバ331(排気室)内に未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体が導入され、この粉体が第2真空チャンバ332内に落下導入された後、上記「全ての真空チャンバ内に粉体が配置される場合」と異なり、第1真空チャンバ331(排気室)内に粉体を導入せずに空状態のままとする。そして、第2真空チャンバ332内に導入された粉体に対し第1反応ガスの化学吸着が終了した後、第1反応ガスが表面に化学吸着された粉体を第3真空チャンバ333内に落下導入し、かつ、第1真空チャンバ331(排気室)内に2番目の粉体を導入することで第2真空チャンバ332内が空状態となる。次いで、第2真空チャンバ332から第3真空チャンバ333内に流れ込んだ過剰な第1反応ガスと副生成物を排気した後、第1反応ガスが表面に化学吸着された粉体を第3真空チャンバ333から第4真空チャンバ334内に落下導入し、かつ、第1真空チャンバ331から2番目の粉体も第2真空チャンバ332内に落下導入するが、第1真空チャンバ331(排気室)内に粉体を導入せずに空状態のままとする。これ等の工程が半連続的に行われることでチャンバ一つおきに粉体が配置されることになる場合を意味する。
(c-1)上記工程を経て、第1~第5の各真空チャンバでそれぞれの処理操作が行われて、図7(a)に示すように第1真空チャンバ331、第3真空チャンバ333および第5真空チャンバ335内に定量の粉体が配置された状態となる。
(c-2)各真空チャンバにおける処理操作が終了した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止する。その後、第1真空チャンバ331と第2真空チャンバ332間、第3真空チャンバ333と第4真空チャンバ334間の各粒子移動用開閉バルブ312、314を開放し、図7(b)に示すように上段側真空チャンバから処理済の粉体を第2真空チャンバ332と第4真空チャンバ334内にそれぞれ導入し、かつ、第5真空チャンバ335の粒子排出用開閉バルブ316も開放して原子層が形成された粒子338を排出する。
(c-3)第1真空チャンバ331と第2真空チャンバ332間、第3真空チャンバ333と第4真空チャンバ334間の各粒子移動用開閉バルブ312、314、および、上記粒子排出用開閉バルブ316を閉止した後、第2真空チャンバ332および第4真空チャンバ334内に定量の粉体が存在する状態で、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気する。
(c-4)第2真空チャンバ332と第4真空チャンバ334の各真空チャンバにおける排気処理操作が終了した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止する。次いで、第2真空チャンバ332と第3真空チャンバ333間、第4真空チャンバ334と第5真空チャンバ335間の各粒子移動用開閉バルブ313、315を開放して上段側真空チャンバから処理済の粉体を第3真空チャンバ333と第5真空チャンバ335内にそれぞれ導入すると共に、第1真空チャンバ331の粒子導入用開閉バルブ311を開放して第1真空チャンバ331内に未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体を導入し、第1真空チャンバ331内への粉体導入が完了してから第2真空チャンバ332と第3真空チャンバ333間、第4真空チャンバ334と第5真空チャンバ335間の各粒子移動用開閉バルブ313、315、および、上記粒子導入用開閉バルブ311を閉止する。その後、第1~5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気する。
上記操作(c-4)が終了すると、図7(a)に示す第1真空チャンバ331、第3真空チャンバ333および第5真空チャンバ335内に定量の粉体が移動配置された状態となるため、各真空チャンバにおける処理操作を行う。各真空チャンバにおける処理操作が終了した後、操作(c-1)~操作(c-4)を行って上段側から下段側の真空チャンバに粉体を移動配置し、各真空チャンバにおける処理操作を行う。この工程を繰り返して粒子表面に被覆膜が形成された被覆膜形成粒子を半連続的に製造することができる。
上記(c-1)~(c-4)のように操作することで、粒子移動用開閉バルブ312、314と粒子排出用開閉バルブ316を同時に開放[すなわち、操作(c-2)]しても第1反応ガスと第2反応ガスが混合されることはなく、また、粒子移動用開閉バルブ313、315と粒子導入用開閉バルブ311を同時に開放[すなわち、操作(c-4)]しても第1反応ガスと第2反応ガスが混合されることはない。
(3)第二実施形態に係る原子層堆積装置
第二実施形態に係る原子層堆積装置は、排気機構を有する4基の真空チャンバで構成されている。
すなわち、この原子層堆積装置は、図8に示すように一定量の粉体が導入される第1真空チャンバ431と、粒子移動用開閉バルブ412を介し第1真空チャンバ431から導入される粒子436の表面に第1反応ガスを化学吸着させ、かつ過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する第2真空チャンバ432と、粒子移動用開閉バルブ413を介し第2真空チャンバ432から導入される粒子438の該表面に化学吸着された第1反応ガスと第2反応ガスを反応させて原子層を形成し、かつ過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する第3真空チャンバ434と、粒子移動用開閉バルブ415を介し第3真空チャンバ434から原子層を形成した粒子が導入される第4真空チャンバ435とで構成され、
最上部の第1真空チャンバ431には一定量の粉体を導入する粒子導入用開閉バルブ411が設けられると共に、最下部の第4真空チャンバ435には原子層が形成された粒子を排出する粒子排出用開閉バルブ416が設けられており、
各真空チャンバの上記排気機構が、排気メインバルブ402を介し真空ポンプ401に接続された共通排気管403と、各真空チャンバに付設された排気バルブ404、405、407、408を介し上記共通排気管403に接続された個別排気管とで構成され、個別排気管の真空チャンバ側には粒子の吸い込みを防止する吸い込み防止フィルタ424、425、427、428がそれぞれ設けられていると共に、
上記第1反応ガスの吸着工程を行う第2真空チャンバ432と第2反応ガスの反応工程を行う第3真空チャンバ434に設けられる反応ガス導入機構が、反応ガスの供給源(図示せず)に接続されかつガス流量計(MFC:マスフローコントローラ)417、418が付設された反応ガス導入管と、各反応ガス導入管に付設されたガス導入バルブ409、410とで構成されている。
尚、第一実施形態に係る原子層堆積装置と同様、粒子の導入、移動、排出に係る各バルブの開閉制御、真空チャンバの上記排気機構に係る制御、および、真空チャンバの上記反応ガス導入機構に係る制御は、図示外の制御手段によりなされる。
以下、第二実施形態に係る原子層堆積装置について具体的に説明する。
4基の真空チャンバ(第1真空チャンバ431、第2真空チャンバ432、第3真空チャンバ434、および、第4真空チャンバ435)の機能を以下に記載するが、第1真空チャンバ431~第4真空チャンバ435がALD法で1層の原子層(分子層)が形成される1サイクルの4工程に相当する。
第1真空チャンバ431:排気室
第2真空チャンバ432:粒子の最表面に成膜するための第1反応ガスが供給されると共に、第1反応ガスが吸着された後、過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する化学吸着兼排気室
第3真空チャンバ434:粒子の最表面に成膜するための第2反応ガスが供給されると共に、第1反応ガスと第2反応ガスの反応により1層の原子層(分子層)が形成された後、過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する化学反応兼排気室
第4真空チャンバ435:排気室
第二実施形態に係る原子層堆積装置において、第1真空チャンバ431(排気室)、第2真空チャンバ432(化学吸着兼排気室)、第3真空チャンバ434(化学反応兼排気室)、および、第4真空チャンバ435(排気室)には、上述したように排気バルブ404、405、407、408がそれぞれ付設されており、各排気バルブを経由して共通排気管403に接続されている。
上記共通排気管403には、排気メインバルブ402を経由して真空ポンプ(ドライポンプ)401が接続されており、各真空チャンバの個別排気管には粉体を吸い込まないように上述の吸い込み防止フィルタ424、425、427、428が取り付けられている。
また、第二実施形態に係る原子層堆積装置においては、ガス流量計(MFC:マスフローコントローラ)417、418により第1反応ガスと第2反応ガスの流量が制御され、化学吸着兼排気室と化学反応兼排気室である各真空チャンバ(第2真空チャンバ432と第3真空チャンバ434)に設けられた吹き込みパイプから各真空チャンバ内に第1反応ガスと第2反応ガスが導入される。尚、符号429と430は、吹き込みパイプの先端に設けられたフィルタを示している。
また、第二実施形態に係る原子層堆積装置においては、反応を促進させるため、各真空チャンバの外周面に加熱用線状部材419、420、422、423を巻回することができる。
また、第二実施形態に係る原子層堆積装置において、最上部の真空チャンバ431における上流側と最下部の真空チャンバ435における下流側が、真空槽(図示せず)に接続されている場合、真空が確保されることを条件に真空チャンバ431(排気室)と真空チャンバ435(排気室)を省略して上記真空槽に機能を兼ねさせることも可能である。
また、第二実施形態に係る原子層堆積装置においては、粒子表面に被覆膜として1層の原子層(分子層)を形成する1サイクルの工程が第1真空チャンバ431~第4真空チャンバ435で半連続的になされ、1層の原子層(分子層)が形成された粒子から成る粉体を最下部の真空チャンバ435に設けられた粒子排出用開閉バルブ416を開閉して排出させることができる。
また、1サイクルの工程を実施して1層の原子層(分子層)が形成された被覆膜形成粒子に対し、更に1サイクル工程を繰り返して被覆膜形成のサイクル数を増やすことにより膜厚を増加させることができる。
尚、1サイクル工程を追加するには、最下部の第4真空チャンバ435に原子層(分子層)が形成された粒子を排出する粒子排出用開閉バルブ416を介し搬送用真空チャンバ(図示せず)を連通して設け、かつ、この搬送用真空チャンバを、最上部の第1真空チャンバ431にその粒子導入用開閉バルブ411を介し連通して設けると共に、搬送用真空チャンバ内に設けられた図示外の搬送機構により上記原子層(分子層)が形成された粒子から成る粉体を搬送して第1真空チャンバ431内に導入することで可能となる。
(4)第二実施形態に係る原子層堆積装置を用いた被覆膜形成粒子の製造方法
(a)1つの真空チャンバのみに粉体が配置される場合
まず、4基の真空チャンバの内、1つの真空チャンバのみに粉体が配置される場合について、粉体の移動を基準にして説明する。
(a-1)図8に示す粒子導入用開閉バルブ411、粒子移動用開閉バルブ412、413、415、および、粒子排出用開閉バルブ416の全てを閉止する。
(a-2)真空ポンプ(ドライポンプ)401を起動させてから排気メインバルブ402を開放し、かつ、第1真空チャンバ431(排気室)の排気バルブ404、第2真空チャンバ432(化学吸着兼排気室)の排気バルブ405、第3真空チャンバ434(化学反応兼排気室)の排気バルブ407、および、第4真空チャンバ435(排気室)の排気バルブ408を開放して排気する。
(a-3)第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止した後、第1真空チャンバ431の粒子導入用開閉バルブ411のみを開放し、第1真空チャンバ431(排気室)内に一定量の粉体436を落下導入させ、然る後、上記粒子導入用開閉バルブ411を閉止する。次いで、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気する。
(a-4)排気した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止し、然る後、第1真空チャンバ431と第2真空チャンバ432間の粒子移動用開閉バルブ412を開放し、第2真空チャンバ432(化学吸着兼排気室)内に上記粉体336を落下導入させた後、粒子移動用開閉バルブ412を閉止する。次いで、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気する。
(a-5)第1~第4真空チャンバの上記排気バルブ404、405、407、408が開放された状態で第2真空チャンバ432(化学吸着兼排気室)のガス導入バルブ409を開放し、かつ、ガス流量計(MFC)417によりガス流量を設定した後、フィルタ429が先端に設けられた吹き込みパイプから、設定した導入時間、第1反応ガスを第2真空チャンバ432(化学吸着兼排気室)内に導入し、その後、上記ガス導入バルブ409を閉止する。引き続き、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気し、該排気バルブ405より第2真空チャンバ432(化学吸着兼排気室)から過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する。
(a-6)排気した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止し、然る後、第2真空チャンバ432(化学吸着兼排気室)と第3真空チャンバ434間の粒子移動用開閉バルブ413を開放して第1反応ガスが表面に化学吸着された粉体436を第3真空チャンバ434(化学反応兼排気室)内に落下導入させ、かつ、上記粒子移動用開閉バルブ413を閉止した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気し、該排気バルブ407より第2真空チャンバ432から第3真空チャンバ434内に流れ込んだ過剰な第1反応ガスと副生成物を排気する。
(a-7)第1~第4真空チャンバの上記排気バルブ404、405、407、408が開放された状態で第3真空チャンバ434(化学反応兼排気室)のガス導入バルブ410を開放し、かつ、ガス流量計(MFC)418によりガス流量を設定した後、フィルタ430が先端に設けられた吹き込みパイプから、設定した導入時間、第2反応ガスを第3真空チャンバ434(化学反応兼排気室)内に導入し、その後、ガス導入バルブ410を閉止する。引き続き、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気、該排気バルブ407より第3真空チャンバ434(化学反応兼排気室)から過剰な第2反応ガスと副生成物を排気する。
(a-8)排気した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止し、然る後、第3真空チャンバ434(化学反応兼排気室)と第4真空チャンバ435(排気室)間の粒子移動用開閉バルブ415を開放し、第1反応ガスと第2反応ガスとの反応により1層の原子層(分子層)が形成された粉体438を第4真空チャンバ435(排気室)内に落下導入させ、上記粒子移動用開閉バルブ415を閉止する。次いで、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気する。
(a-9)排気した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止し、然る後、第4真空チャンバ435(排気室)の粒子排出用開閉バルブ416を開放し、上記粉体438を落下排出させた後、上記粒子排出用開閉バルブ416を閉止する。
上記操作(a-1)~操作(a-9)により粒子表面に1層の原子層(分子層)が形成された被覆膜形成粒子を製造することができる。
尚、1サイクル工程を追加するため、最下部の第4真空チャンバ435(排気室)の粒子排出用開閉バルブ416と最上部の第1真空チャンバ431(排気室)の粒子導入用開閉バルブ411間に、搬送機構を内部に有する上記搬送用真空チャンバ(図示せず)が連通して設けられている場合には、以下の操作(a-10)が追加される。
(a-10)上記粒子排出用開閉バルブ416を介し図示外の搬送用真空チャンバ内に落下導入された粉体438を、当該搬送用真空チャンバ内の搬送機構により最上部に位置する第1真空チャンバ431(排気室)の粒子導入用開閉バルブ411前部に搬送し、1サイクル工程を追加するための上記操作(a-1)~操作(a-9)が繰り返される。
(b)全ての真空チャンバ内に粉体が配置される場合
次に、4基の全真空チャンバ内に粉体が配置される場合について、粉体の移動を基準にして説明する。
尚、4基の全真空チャンバ内に粉体が配置される場合とは、第1真空チャンバ431(排気室)内に未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体が導入され、この粉体が第2真空チャンバ432内に落下導入された後、上記「(a)1つの真空チャンバのみに粉体が配置される場合」と異なり、上記粉体が排出されて空状態の第1真空チャンバ431(排気室)内に、再度、未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体が落下導入される。そして、最初に導入された粉体に対し第2真空チャンバ432内において第1反応ガスの化学吸着が終了した後、第1反応ガスが表面に化学吸着された粉体を第3真空チャンバ434内に落下導入すると共に、第1真空チャンバ431(排気室)内に2番目に導入された粉体を第2真空チャンバ432内に落下導入し、2番目に導入された粉体が排出されて空状態の第1真空チャンバ431(排気室)内に、再度、3番目の粉体が落下導入される。これ等の工程が半連続的に行われることで全ての真空チャンバ内に粉体が配置されることになる場合を意味する。
(b-1)上記工程を経て、第1~第4の各真空チャンバでそれぞれの処理操作が行われ、第1真空チャンバ431、第2真空チャンバ432、第3真空チャンバ434、および、第4真空チャンバ435の全真空チャンバ内に定量の粉体が配置された状態となる。
(b-2)各真空チャンバにおける処理操作が終了した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止し、然る後、第4真空チャンバ435の粒子排出用開閉バルブ416のみを開放して原子層が形成された粒子438を排出する。
(b-3)上記粒子排出用開閉バルブ416を閉止した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気し、然る後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止し、次いで、第4真空チャンバ435と第3真空チャンバ434間の粒子移動用開閉バルブ415のみを開放して第3真空チャンバ434から処理済の粉体を第4真空チャンバ435内に導入する。
(b-4)第4真空チャンバ435と第3真空チャンバ434間の上記粒子移動用開閉バルブ415を閉止した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気し、然る後、第1~4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止する。次いで、第3真空チャンバ434と第2真空チャンバ432間の粒子移動用開閉バルブ413のみを開放して第2真空チャンバ432から処理済の粉体436を第3真空チャンバ434内に導入する。
(b-5)第3真空チャンバ434と第2真空チャンバ432間の粒子移動用開閉バルブ413を閉止した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気し、然る後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止する。次いで、第2真空チャンバ432と第1真空チャンバ431間の粒子移動用開閉バルブ412のみを開放して第1真空チャンバ431から処理済の粉体を第2真空チャンバ432内に導入する。
(b-6)第2真空チャンバ432と第1真空チャンバ431間の粒子移動用開閉バルブ412を閉止した後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を開放して排気し、然る後、第1~第4真空チャンバの排気バルブ404、405、407、408を閉止する。次いで、第1真空チャンバ431の粒子導入用開閉バルブ411のみを開放して第1真空チャンバ431内に未処理の粉体若しくは原子層が形成された粒子から成る粉体を導入し、粉体の導入が完了してから粒子導入用開閉バルブ411を閉止する。
上記操作(b-6)が終了すると、4基の各真空チャンバにおいて、上段側から下段側の真空チャンバ内に粉体が移動配置された状態となるため、各真空チャンバにおける処理操作を行う。そして、各真空チャンバにおける処理操作が終了した後、上記操作(b-1)~操作(b-6)を行うことにより上段側から下段側の真空チャンバ内に粉体が移動配置された状態となるため、各真空チャンバにおける処理操作を行う。
この工程を繰り返し行うことにより粒子表面に被覆膜が形成された被覆膜形成粒子を半連続的に製造することができる。
このように全真空チャンバ(排気室、化学吸着兼排気室、化学反応兼排気室)に粉体が存在していても、下流側の真空チャンバから順番に粒子排出用開閉バルブ416、粒子移動用開閉バルブ415、413、412、および、粒子導入用開閉バルブ411を操作することで、粒子移動用開閉バルブを開放したときに反応ガスが混合されることはない。
5.原子層堆積法により被覆膜が形成された近赤外線遮蔽被覆粒子
本発明に係る原子層堆積装置を用いて製造される被覆膜形成粒子(表面に被覆膜が形成された粒子)について、近赤外線遮蔽粒子を例に挙げて説明する。
近年、赤外線遮蔽体の需要が急増しており、赤外線遮蔽体に関する出願が多くなされている。機能的観点からは、各種建築物や車両の窓材等の分野において可視光線を十分に取り入れながら近赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたもの、プラズマディスプレイパネルから前方に放射される近赤外線がコードレスフォンや家電機器のリモコンに誤動作を引き起こしたり、伝送系光通信に悪影響を及ぼしたりすることを防止することを目的としたもの等が提案されている。
上記目的のために用いられる代表的な赤外線遮蔽材料として、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる(特許文献6参照)。
特許文献6には、上記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子(赤外線遮蔽材料微粒子)を樹脂やガラス等の媒体中に分散してなる「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」が開示されている。そして、「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」は、可視光透過率を高く保ったまま赤外線の透過率を低くできるという優れた機能を発揮することから各種建築物や車両の窓材等に用いることが検討されている。
ところで、可視光領域においては透明で、近赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を樹脂やガラス等の媒体中に分散させた上記「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」においては、長期間に亘って紫外線を受けると、色調の変化、透過率の低下が起きることが確認されており、この現象のため、上記「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」を窓材等に用いた場合、色調が暗くなる傾向が見られた。
そこで、上記現象について調査した特許文献7においてその原因が提示されている。すなわち、上記タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を媒体となる高分子材料に分散した「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」に紫外線が照射されると、紫外線のエネルギーによって上記高分子材料の高分子鎖が切断され、活性な有害ラジカルが次々に発生すること、当該有害ラジカルの発生により高分子材料の劣化が連鎖的に進むだけでなく、当該連鎖的な反応により生成した有害ラジカルが「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」または当該分散体中の上記タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子に作用すること、すなわち当該有害ラジカルがタングステン酸化物や複合タングステン酸化物中のタングステン原子を還元する作用を発揮することで、新たに5価のタングステン(有色)が生成増加し、当該5価のタングステンの生成増加に伴って着色濃度が高くなっているとの原因が提示されている。
このような技術的背景の下、本発明者は、長期間に亘って紫外線を受けても色調の変化、透過率の低下が起こらず、窓材等に用いても色調が暗くならない「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」の完成を目指して鋭意研究を行った結果、上記タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子の表面に、本発明に係る原子層堆積装置を用いて被覆膜を形成することにより達成されることを見出すに至った。
そして、本発明に係る原子層堆積装置を用いてタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子の表面に被覆膜が形成された近赤外線遮蔽被覆粒子を固体媒体に分散させて「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」を製造し、該「赤外線遮蔽材料微粒子分散体」をシート状、ボード状またはフィルム状に加工した場合、可視光領域に透明性があり、優れた近赤外線遮蔽特性を有し、長期間に亘って紫外線を受けても色調の変化、透過率の低下が起こらず、窓材等に用いても色調が暗くならないことが確認された。
尚、これ等の結果は、参考例に係る原子層堆積装置を用いた被覆膜形成粒子の製造方法と共に示すこととする。
以下、参考例について具体的に説明する。
[参考例1]
図7に示した第一実施形態に係る原子層堆積装置を適用し、かつ、この装置を用いて近赤外線遮蔽微粒子である平均粒径50nmの複合タングステン酸化物微粒子Cs0.33WO3(住友金属鉱山株式会社製、以下、CWO微粒子と略記する場合がある)の表面に被覆膜としてAl2O3膜を形成した。
尚、上記原子層堆積装置では、最下部の第5真空チャンバ335に、その粒子排出用開閉バルブ316を介して搬送用真空チャンバ(図示せず)が連通して設けられ、かつ、最上部の第1真空チャンバ331に、その粒子導入用開閉バルブ311を介して上記搬送用真空チャンバが連通して設けられており、搬送用真空チャンバ内に設けられた図示外の搬送機構により原子層が形成された粒子から成る粉体を搬送して第1真空チャンバ331内に導入できるようになっている。このため、1サイクルの工程を実施して1層の原子層が形成された被覆膜形成粒子に対し、更に1サイクル工程を繰り返して被覆膜形成のサイクル数が増やせるようになっている。
以下、CWO微粒子表面に被覆膜としてAl2O3膜が形成された被覆膜形成粒子の製造手順について説明する。
(1-1)図7(a)に示す粒子導入用開閉バルブ311、粒子移動用開閉バルブ312、313、314、315、および、粒子排出用開閉バルブ316を全て閉止した。
(1-2)真空ポンプ(ドライポンプ)301を起動させてから排気メインバルブ302を開放し、第1真空チャンバ331(排気室)の排気バルブ304、第2真空チャンバ332(化学吸着室)の排気バルブ305、第3真空チャンバ333(排気室)の排気バルブ306、第4真空チャンバ334(化学反応室)の排気バルブ307、および、第5真空チャンバ335(排気室)の排気バルブ308を開放して排気した。
(1-3)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第1真空チャンバ331(排気室)の粒子導入用開閉バルブ311のみを開放し、第1真空チャンバ331(排気室)内に5gのCWO微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)336を落下導入させ、然る後、上記粒子導入用開閉バルブ311を閉止した。次いで、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気した。
(1-4)排気した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止し、然る後、第1真空チャンバ331と第2真空チャンバ332間の粒子移動用開閉バルブ312を開放し、第2真空チャンバ332(化学吸着室)内に上記CWO微粒子336を落下導入させた後、粒子移動用開閉バルブ312を閉止した。次いで、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気した。
(1-5)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308が開放された状態で第2真空チャンバ332(化学吸着室)のガス導入バルブ309を開放し、ガス流量計(MFC)317により第1反応ガスである水蒸気の流量を30sccmに設定し、かつ、導入時間を5分間に設定して吹き込みパイプ(パイプ先端にフィルタ329を有する)から第2真空チャンバ332(化学吸着室)内に第1反応ガスを5分間導入し、その後、ガス導入バルブ309を閉止した。
(1-6)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止した後、第2真空チャンバ332と第3真空チャンバ333間の粒子移動用開閉バルブ313を開放し、第1反応ガス(水蒸気)が表面に化学吸着されたCWO微粒子337を第3真空チャンバ333(排気室)内に落下導入させ、かつ、粒子移動用開閉バルブ313を閉止した後、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を開放して排気し、更に、排気バルブ306より第2真空チャンバ332から第3真空チャンバ333内に流れ込んだ過剰な第1反応ガスと副生成物を5分間排気した。
(1-7)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第3真空チャンバ333と第4真空チャンバ334間の粒子移動用開閉バルブ314を開放し、第1反応ガスが表面に化学吸着されたCWO微粒子337を第4真空チャンバ334(化学反応室)内に落下導入させ、然る後、上記粒子移動用開閉バルブ314を閉止した。次いで、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気した。
(1-8)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308が開放された状態で第4真空チャンバ334(化学反応室)のガス導入バルブ310を開放し、ガス流量計(MFC)318により第2反応ガスであるTMA(Trimethyl Aluminum)の流量を30sccmに設定し、かつ、導入時間を5分間に設定して吹き込みパイプ(パイプ先端にフィルタ330を有する)から第4真空チャンバ334(化学反応室)内に第2反応ガスを5分間導入し、その後、ガス導入バルブ310を閉止した。
(1-9)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第4真空チャンバ334(化学反応室)と第5真空チャンバ335(排気室)間の粒子移動用開閉バルブ315を開放して第1反応ガスと第2反応ガスとの反応により1層の原子層が形成されたCWO微粒子338を第5真空チャンバ335(排気室)内に落下導入させ、次いで、上記粒子移動用開閉バルブ315を閉止した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気し、該排気バルブ308より第4真空チャンバ334から第5真空チャンバ335内に流れ込んだ過剰な第2反応ガスと副生成物を5分間排気した。
(1-10)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第5真空チャンバ335(排気室)の粒子排出用開閉バルブ316を開放し、上記1層の原子層が形成されたCWO微粒子338を落下排出させた後、上記粒子排出用開閉バルブ316を閉止した。
上記操作(1-1)~操作(1-10)によりCWO微粒子の表面にAl2O3膜が1層形成された被覆膜形成粒子を製造した。
[参考例2]
参考例1において、1サイクル工程でAl2O3膜を1層形成した後、最下部の第5真空チャンバ335(排気室)から、上述した搬送用真空チャンバを経て、最上部の第1真空チャンバ331(排気室)へ粉体を搬送する搬送機構を用いて被覆膜形成の1サイクル工程を繰り返し、Al2O3膜の形成を複数回(被覆膜層数2~16層)行った。
[参考例3]
図7に示した第一実施形態に係る原子層堆積装置を適用し、かつ、この装置を用いて近赤外線遮蔽微粒子である平均粒径50nmの複合タングステン酸化物微粒子Cs0.33WO3(CWO微粒子と略記する場合がある)の表面に被覆膜としてSiO2膜を形成した。
以下、CWO微粒子表面に被覆膜としてSiO2膜が形成された被覆膜形成粒子の製造手順について説明する。
(3-1)図7(a)に示す粒子導入用開閉バルブ311、粒子移動用開閉バルブ312、313、314、315、および、粒子排出用開閉バルブ316を全て閉止した。
(3-2)真空ポンプ(ドライポンプ)301を起動させてから排気メインバルブ302を開放し、第1真空チャンバ331(排気室)の排気バルブ304、第2真空チャンバ332(化学吸着室)の排気バルブ305、第3真空チャンバ333(排気室)の排気バルブ306、第4真空チャンバ334(化学反応室)の排気バルブ307、および、第5真空チャンバ335(排気室)の排気バルブ308を開放して排気した。
(3-3)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第1真空チャンバ331(排気室)の粒子導入用開閉バルブ311のみを開放し、第1真空チャンバ331(排気室)内に5gのCWO微粒子(複合タングステン酸化物微粒子)336を落下導入させ、然る後、上記粒子導入用開閉バルブ311を閉止した。次いで、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気した。
(3-4)排気した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止し、然る後、第1真空チャンバ331と第2真空チャンバ332間の粒子移動用開閉バルブ312を開放し、第2真空チャンバ332(化学吸着室)内に上記CWO微粒子336を落下導入させた後、粒子移動用開閉バルブ312を閉止した。次いで、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気した。
(3-5)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308が開放された状態で第2真空チャンバ332(化学吸着室)のガス導入バルブ309を開放し、ガス流量計(MFC)317により第1反応ガスである水蒸気の流量を30sccmに設定し、かつ、導入時間を5分間に設定して吹き込みパイプ(パイプ先端にフィルタ329を有する)から第2真空チャンバ332(化学吸着室)内に第1反応ガスを5分間導入し、その後、ガス導入バルブ309を閉止した。
(3-6)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を閉止した後、第2真空チャンバ332と第3真空チャンバ333間の粒子移動用開閉バルブ313を開放し、第1反応ガス(水蒸気)が表面に化学吸着されたCWO微粒子337を第3真空チャンバ333(排気室)内に落下導入させ、かつ、粒子移動用開閉バルブ313を閉止した後、第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308を開放して排気し、更に、排気バルブ306より第2真空チャンバ332から第3真空チャンバ333内に流れ込んだ過剰な第1反応ガスと副生成物を5分間排気した。
(3-7)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第3真空チャンバ333と第4真空チャンバ334間の粒子移動用開閉バルブ314を開放し、第1反応ガスが表面に化学吸着されたCWO微粒子337を第4真空チャンバ334(化学反応室)内に落下導入させ、然る後、上記粒子移動用開閉バルブ314を閉止した。次いで、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気した。
(3-8)第1~第5真空チャンバの上記排気バルブ304~308が開放された状態で第4真空チャンバ334(化学反応室)のガス導入バルブ310を開放し、ガス流量計(MFC)318により第2反応ガスであるTDMASの流量を30sccmに設定し、かつ、導入時間を5分間に設定して吹き込みパイプ(パイプ先端にフィルタ330を有する)から第4真空チャンバ334(化学反応室)内に第2反応ガスを5分間導入し、その後、ガス導入バルブ310を閉止した。
(3-9)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第4真空チャンバ334(化学反応室)と第5真空チャンバ335(排気室)間の粒子移動用開閉バルブ315を開放して第1反応ガスと第2反応ガスとの反応により1層の原子層が形成されたCWO微粒子338を第5真空チャンバ335(排気室)内に落下導入させ、次いで、上記粒子移動用開閉バルブ315を閉止した後、第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を開放して排気し、該排気バルブ308より第4真空チャンバ334から第5真空チャンバ335内に流れ込んだ過剰な第2反応ガスと副生成物を5分間排気した。
(3-10)第1~第5真空チャンバの排気バルブ304~308を閉止した後、第5真空チャンバ335(排気室)の粒子排出用開閉バルブ316を開放し、上記1層の原子層が形成されたCWO微粒子338を落下排出させた後、上記粒子排出用開閉バルブ316を閉止した。
上記操作(3-1)~操作(3-10)によりCWO微粒子の表面にSiO2膜が1層形成された被覆膜形成粒子を製造した。
[参考例4]
参考例3おいて、1サイクル工程でSiO2膜を1層形成した後、最下部の第5真空チャンバ335(排気室)から、上述した搬送用真空チャンバを経て、最上部の第1真空チャンバ331(排気室)へ粉体を搬送する搬送機構を用いて被覆膜形成の1サイクル工程を繰り返し、SiO2膜の形成を複数回(被覆膜層数2~16層)行った。
[耐環境、耐湿熱性試験]
参考例1~4で得られた被覆膜形成複合タングステン酸化物粉末(被覆膜形成粒子)を8重量部、トルエン84重量部、分散剤8重量部を混合し、ビーズミルにより分散処理を行い、分散液を作製した。
得られた分散液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)5重量部とを混合して遮蔽膜形成用塗液を調製し、バーコーターを用いて石英ガラス基板上に塗布して被膜を形成した。
形成された被膜を60℃で30秒間乾燥し、溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプの光で硬化させて近赤外線遮蔽膜を得た。
得られた近赤外線遮蔽膜に対し、下記「紫外線照射テスト」を実施し、分光光度計により可視波長領域(500nm付近)の最大透過率の変化を測定した。
また、下記「高温高湿環境テスト」を実施し、分光光度計により赤外線波長領域(820nm付近)の透過率の変化を測定した。
<1>紫外線照射テスト
アイUVテスター(岩崎電気製)を用いて「紫外線照射テスト」を行った。
暴露条件として、メタルハライドランプ強度は100mW/cm2で、暴露時間は1時間、暴露面は試料の膜面から行った。
<2>高温高湿環境テスト
得られた近赤外線遮蔽膜試験サンプルを、85℃、95%RH環境下に3日間暴露し、当該高温高湿環境試験前後における赤外線域最大透過率の変化を測定した。
<3>得られた試験結果を表2に示す。
尚、比較例として、被覆膜が形成されていない(すなわち原子層数が0)複合タングステン酸化物粉末を用いて得られた試験サンプルの結果を表2に示した。
[評価]
ALD法による複合タングステン酸化物微粒子CWOへの被覆膜形成により、被覆膜層数(原子層数)が2層以上で効果が現れ、被覆膜層数(原子層数)が4層以上の場合、紫外線照射によっても、高温高湿環境によっても、複合タングステン酸化物微粒子CWOにおける赤外線遮蔽性能の劣化は認められないことが確認された。