JP7139800B2 - スラストフォイル軸受 - Google Patents

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Description

本開示は、スラストフォイル軸受に関するものである。
従来、高速回転体用の軸受として、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されるスラストフォイル軸受が知られている。スラストフォイル軸受は、振動や衝撃によって発生する回転軸の動き(スラストカラーの軸方向変位と傾き)を吸収できるように、軸受面が柔軟なフォイル(金属製薄板)によって形成されており、軸受面の下に軸受面を柔軟に支持するためのフォイル構造を有している。
スラストフォイル軸受には、周方向に複数のトップフォイル片とバックフォイル片が配列された形態がある。トップフォイル片は、バックフォイル片に支持されており、スラストカラーの回転により、トップフォイル片とスラストカラーとの間に空気が導入される。この空気がトップフォイル片とスラストカラーとの間に楔状の流体潤滑膜を形成し、スラストフォイル軸受の負荷能力が発揮される。
国際公開第2014/061698号 米国特許第5833369号明細書
ところで、上記スラストフォイル軸受では、流体潤滑膜の圧力がトップフォイルに作用すると、当該圧力はトップフォイルの下流端側で最も高くなる。そのため、トップフォイルの下流端側において径方向への曲げ(撓み)が大きくなる。すなわち、トップフォイルの下流端側において、径方向外側の部位が径方向内側の部位よりベースプレートに近づくことになり、対向するスラストカラーとの間隔が広くなる。そうすると、同部位において流体潤滑膜の圧力が立ち難くなり、軸受としての負荷能力が低下することになる。
なお、トップフォイルを厚くすれば、上記曲げは小さくできる。しかし、トップフォイルが厚くなれば、周方向への傾斜変形が阻害されることになる。周方向への傾斜変形が阻害されると、適切なテーパー角が形成され難くなり、軸受負荷能力が低下する。このように、トップフォイルには、径方向の曲げに強く、周方向に柔軟な剛性(異方剛性)が求められている。
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、トップフォイルの下流端側における径方向への曲げを抑制することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本開示のスラストフォイル軸受は、シャフトが挿通される挿通孔を有するベースプレートと、前記挿通孔の周囲に配置され、前記ベースプレートに支持された波型のバンプフォイルと、前記バンプフォイルに支持されると共に、前記挿通孔の周方向一方側が前記ベースプレートに取り付けられ、前記挿通孔の周方向他方側が自由端となっているトップフォイルと、を備え、前記トップフォイルの前記周方向他方側には、前記ベースプレートに向かって曲がる曲げ部が形成されている。
また、本開示においては、前記曲げ部は、前記トップフォイルの内外周の下流端から前記ベースプレート側に存在する単一のピークに向かって延びる山なり形状を有してもよい。
また、本開示においては、前記ピークが、前記挿通孔の径方向において、前記トップフォイルの外周側に存在していてもよい。
また、本開示においては、前記曲げ部には、複数の曲げが形成されていてもよい。
また、本開示においては、前記曲げ部は、円弧状に湾曲していてもよい。
本開示によれば、トップフォイルの下流端側における径方向への曲げを抑制することができる。
本開示のスラストフォイル軸受3が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。 本開示のスラストフォイル軸受3を示す側面図である。 本開示のスラストフォイル軸受3を示す平面図である。 本開示のバンプフォイル片21及びトップフォイル片11を示す構成図である。 一実施例に係るトップフォイル片(曲げ部無し)に作用する流体潤滑膜の圧力分布を示す解析図である。 本開示の曲げ部13を有するトップフォイル片11の作用を説明する図である。 本開示の一変形例に係るトップフォイル片11Aを示す構成図である。 本開示の一変形例に係るトップフォイル片11Bを示す構成図である。 本開示の一変形例に係るトップフォイル片11C,11Dを示す側面図である。 本開示の一変形例に係るトップフォイル片11Fを示す構成図である。 本開示の一変形例に係るスラストフォイル軸受3Gを示す平面図である。
以下、図面を参照して本発明のスラストフォイル軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本開示のスラストフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。
図1中、符号1は回転軸(シャフト)、符号2は回転軸の先端部に設けられたインペラ、符号3は本開示に係るスラストフォイル軸受である。
回転軸1には、円板状のスラストカラー4が固定されている。スラストカラー4は、一対のスラストフォイル軸受3に挟まれている。インペラ2は、静止側となるハウジング5内に配置されており、ハウジング5との間にチップクリアランス6を有している。回転軸1は、ラジアルフォイル軸受7に支持されている。
図2は、本開示のスラストフォイル軸受3を示す側面図である。図3は、本開示のスラストフォイル軸受3を示す平面図である。図4は、本開示のバンプフォイル片21及びトップフォイル片11を示す構成図である。なお、図4(a)は、平面図を示し、図4(b)は、図4(a)における矢視A図を示す。すなわち、図4(b)は、バンプフォイル片21及びトップフォイル片11を径方向外側から視た図である。図4(c)は、図4(a)における矢視B図を示す。つまり、トップフォイル片11の周方向の端縁の内、自由端となっている側を視た図である。
スラストフォイル軸受3は、図2に示すように、スラストカラー4を挟んで両側に一対で設けられている。これら一対のスラストフォイル軸受3は、共に同じ構成となっている。スラストフォイル軸受3は、トップフォイル10と、バンプフォイル20と、ベースプレート30と、を備える。ベースプレート30は、図3に示すように、回転軸1が挿通される挿通孔30aを有する。
なお、以下の説明においては、挿通孔30aを基準に各部材の位置関係を説明することがある。具体的に、「軸方向」とは、挿通孔30aが延びる方向(回転軸1が挿通される方向)を言う。また、「径方向」とは、挿通孔30aの径方向を言う。また、「周方向」とは、挿通孔30aの内周面に沿った周方向を言う。あるいは、挿通孔30aに挿通された回転軸1の軸心を基準に、当該軸心から視た「径方向」及び「周方向」ともいえる。
ベースプレート30は、軸方向におけるスラストフォイル軸受3の最外部(反スラストカラー側)を構成する円板状の部材である。ベースプレート30には、挿通孔30aが形成されている。すなわち、本開示のベースプレート30は、円環状の部材である。ベースプレート30は、スラストカラー4と対向して配置される平坦面を備える。ベースプレート30の平坦面の挿通孔30a(開口)の周囲には、バンプフォイル20、トップフォイル10が配置されている。具体的に、バンプフォイル20は、ベースプレート30に支持され、トップフォイル10は、バンプフォイル20に支持されている。なお、本開示のベースプレート30は、挿通孔30aを備える円板状の部材である。しかし、挿通孔30aを有すれば、ベースプレート30は、円板状以外の部材(例えば矩形板状)であってもよい。また、挿通孔30aについても、必ずしも厳密な円筒形状である必要はない。
図2に示すように、一対のスラストフォイル軸受3のそれぞれのベースプレート30の間には、二点鎖線で示す円筒状の軸受スペーサ40が挟持されている。そして、これらベースプレート30は、締結ボルト41によって軸受スペーサ40を介して連結されている。なお、これらベースプレート30のうちの一方は、締結ボルト41によってハウジング5に固定されている。
ベースプレート30は、例えば、厚さ数mm程度の金属板から形成されている。ベースプレート30の外周部には、図3に示すように、締結ボルト41を挿通するための貫通孔42が複数形成されている。ベースプレート30は、スラストカラー4に対向する側の面に、バンプフォイル20、トップフォイル10を支持している。本開示では、後述するようにバンプフォイル20、トップフォイル10がいずれも複数枚(6枚)のバンプフォイル片21、トップフォイル片11によって形成されている。本開示のベースプレート30は、スラストカラー4に対向する側の面の周方向において等間隔に6つに分けた領域のそれぞれに、バンプフォイル片21、トップフォイル片11を支持している。
図3に示すように、バンプフォイル20は、周方向に配列された6枚のバンプフォイル片21によって形成されている。本開示では、これらバンプフォイル片21は、図3に示す平面視で、後述するトップフォイル片11よりも小さく形成されている。したがって、バンプフォイル片21は、軸方向から視て、図3に示すように、ベースプレート30上で、トップフォイル片11に覆われている。また、本開示において、各トップフォイル片11は、周方向に離隔している。また、周方向に隣接するトップフォイル片11の周方向の間隔は、内周側から外周側に向かい広くなっている。
これらバンプフォイル片21は、波型のフォイル(薄板)である。各バンプフォイル片21は、トップフォイル片11を弾性的に支持している。バンプフォイル片21は、図3に示すように、全体が扇形の頂点側を切り欠いて、内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、バンプフォイル片21は、周方向に離隔し、内周側から外周側に延びる2つの端縁と、2つの端縁を内周側で接続する内周側の端縁と、2つの端縁を外周側で接続する2つの端縁を備えている。本開示のバンプフォイル片21は、周方向一方側の端縁である第一の側端と、周方向他方側の端縁である第二の側端と、第一、第二の側端それぞれの外周側の端部を繋ぐ円弧状の外周端と、第一、第二の側端それぞれの内周側の端部を繋ぐ円弧状の内周端とを備える。ここで、スラストカラー4は、周方向他方側に回転している。
バンプフォイル片21の第一の側端は、内周側から外周側に分離した複数の端縁で形成される。すなわち、バンプフォイル片21には、第一の側端から第二の側端に向かい延伸する複数のスリット24が形成されている。バンプフォイル片21は、図4(b)に示すように、谷部22と山部23とが交互に配置されて形成されている。すなわち、バンプフォイル片21のスリット24により分岐した各部位には、周方向一方側から周方向他方側に向かい谷部22と山部23が連なっている。谷部22と山部23は、スリット24を介し直線状に延伸している。本開示の谷部22は、平坦面を備えベースプレート30に対向している。また、山部24は、隣接する谷部22を繋ぐアーチ状の部位となっている。バンプフォイル片21は、ベースプレート30に支持されている。そのため、谷部22は、ベースプレート30と当接可能である。
本開示のバンプフォイル片21において、谷部22は、内周端もしくは外周端のいずれかまで延伸している。バンプフォイル片21の周方向他方側の位置は、ベースプレート30に対してスポット溶接(点付溶接)されている。つまり、この溶接位置が、ベースプレート30に対するバンプフォイル片21の取付位置となっている。また、バンプフォイル片21の取付位置は、谷部22となっている。本開示において、バンプフォイル片21の取付位置は、最も周方向他方側に位置する谷部22となっている。また、バンプフォイル片21の周方向一方側は、自由端となっている。すなわち、バンプフォイル片21に荷重が作用すると、周方向一方側の端縁が、周方向一方側に向かって移動することが可能である。なお、ベースプレート30に対するバンプフォイル片21の取り付けについては、スポット溶接以外にも、例えばネジ止めなどによっても行うことができる。
谷部22及び山部23は、バンプフォイル片21の周方向他方側の端辺21a(固定端)と直交する方向(交差する方向)に交互に配列されている。すなわち、谷部22、山部23は、上記固定端と平行に延びている。これら谷部22及び山部23は、それぞれほぼ等ピッチで形成されている。また、山部23の高さは、端辺21aと反対側から端辺21a側に向かって、すなわち図3中に矢印で示す回転軸1(スラストカラー4)の回転方向の下流側(周方向一方側から他方側)に向かうに連れて、図4(b)に示すように順に高くなるように形成されている。
このため、バンプフォイル片21に支持されるトップフォイル片11は、谷部22、山部23の配列方向に沿って、その固定端12(固定辺)側からバンプフォイル片21の端辺21a側に向かうに連れて、ベースプレート30から漸次遠ざかるように初期傾斜角で傾斜して配置されている。ここで、初期傾斜角とは、荷重がゼロのときのベースプレート30に対するトップフォイル片11の傾斜角を意味する。
バンプフォイル片21は、図4(a)に示すように、周方向における一方側(回転方向の上流側)が、径方向において複数(本開示では4つ)の端辺25に分割されている。4つの端辺25は、それぞれ周方向において変位可能となっている。4つの端辺25の間には、スリット24が形成されている。本開示のスリット24は、挿通孔30aと同心円の一部を形成する円弧状に形成されている。また、本開示のスリット24は、ベースプレート30に対するバンプフォイル片21の取付位置と隣接する山部23まで延伸している。つまり、バンプフォイル片21の取付位置と、当該取付位置の周方向一方側に隣接する谷部22との間の位置までスリット24が延伸している。
トップフォイル10も、図3に示すように、周方向に配列された6枚のトップフォイル片11によって形成されている。これらトップフォイル片11は、金属製の薄板(フォイル)により、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、トップフォイル片11は、周方向に離隔し、内周側から外周側に延びる2つの端縁と、2つの端縁を内周側で接続する内周側の端縁と、2つの端縁を外周側で接続する2つの端縁を備えている。本開示のトップフォイル片11は、周方向一方側の端縁である第一の側端と、周方向他方側の端縁である第二の側端と、第一、第二の側端それぞれの外周側の端部を繋ぐ円弧状の外周端と、第一、第二の側端それぞれの内周側の端部を繋ぐ円弧状の内周端とを備える。このトップフォイル片11は、周方向における他方側(回転方向の下流側)に曲げ部13を有している。このような形状のトップフォイル片11は、ベースプレート30上にてバンプフォイル片21を覆って全体として略円環板状に配置されて、トップフォイル10を形成している。
トップフォイル片11の周方向一方側の位置は、ベースプレート30に対してスポット溶接(点付溶接)されている。本開示においては、同一直線上の複数の点がスポット溶接されており、挿通孔30aの軸心から径方向に延伸する直線上でベースプレート30にスポット溶接されている。つまり、この溶接位置が、ベースプレート30に対するトップフォイル片11の取付位置(固定端12)となっている。また、トップフォイル片11の取付位置は、バンプフォイル片21よりも周方向一方側に離間して配置されている。また、トップフォイル片11の周方向他方側は、自由端となっている。すなわち、トップフォイル片11に荷重が作用すると、周方向他方側の端縁が、周方向他方側に向かって移動することが可能である。なお、ベースプレート30に対するトップフォイル片11の取り付けについては、スポット溶接以外にも、例えばネジ止めなどによっても行うことができる。
トップフォイル片11は、図4(b)に示すように、固定端12側が曲げ加工されており、固定端12側の曲げ部より周方向他方側に、バンプフォイル片21に形成された山部23の配列に沿って周方向他方側に向かい高さが漸増する部位を備える。本開示の固定端12側の曲げ部は、第1の屈曲と、第1の屈曲の周方向他方側に位置する第2の屈曲とで構成される。第1の屈曲は、トップフォイル片11のベースプレート30に対向する面の背面側に屈曲している。第2の屈曲は、トップフォイル片11のベースプレート30に対向する面側に屈曲している。つまり、固定端12側の曲げ部は、階段状となっている。なお、第1の屈曲、第2の屈曲とも鈍角となっている。この固定端12よりも周方向他方側(曲げ部13側)が山部23上に載せられている。一方、曲げ部13(トレーリングエッジ)は、固定されることなく自由端となっている。
トップフォイル片11は、図4(a)に示すように、内周側の端辺11cと、外周側の端辺11dと、を有する。本開示の内周側の端辺11cは、挿通孔30aと同心円の一部を形成する円弧状に形成されている。また、外周側の端辺11dは、挿通孔30aと同心円(端辺11cが形成する同心円よりも径が大きい同心円)の一部を形成する円弧状に形成されている。
曲げ部13は、回転軸1の回転方向におけるトップフォイル片11の下流端側に形成されている。すなわち、曲げ部13は、バックフォイル片21の最も周方向他方側に位置する山部23に支持される仮想直線Xよりも周方向他方側に位置する。ここで、仮想直線Xとは、回転軸1の回転方向の最も下流側で、バックフォイル片21がトップフォイル片11に接する接線である。曲げ部13は、図4(b)に示すように、ベースプレート30側に略直角に折り曲げられている。曲げ部13の折り曲げ線は、図4(a)に示すように、径方向に直線状に延びている。すなわち、曲げ部13の折り曲げ線は、バンプフォイル片21の端辺21aと平行に延びている。この曲げ部13は、図4(b)に示すように、バンプフォイル片21の端辺21aに隣接する山部23よりも回転方向の下流側に配置されている。このような曲げ部13は、例えば、トップフォイル片11のプレス加工により形成することができる。
曲げ部13は、図4(c)に示すように、トップフォイル片11の内外周の下流端11c1,11d1からベースプレート30側に存在する単一のピークPに向かって延びる山なり形状を有している。すなわち、曲げ部13は、ベースプレート30側への単一のピークPを備える。曲げ部13のピークPとは、ベースプレート30側に最も近づく部分のことで、頂点だけでなく、ある程度の幅を有した辺(線状ピーク)であってもよい。すなわち、頂点や辺となるトップフォイル片11の自由端側は、自由端に向かい径方向幅Wが縮小している。つまり、本開示では、曲げ部13の折り曲げ線から、ピークPに向かい径方向幅Wが縮小している。本開示の曲げ部13のピークPは、図4(a)に示すように、トップフォイル片11の外周側に存在している。ここで、トップフォイル片11の外周側とは、トップフォイル片11を径方向において3分割したときの最も径方向外側の領域を意味する。また、曲げ部13は、曲げ部13以外のトップフォイル片11の部位と同一の厚みを有する。本開示の曲げ部13の端縁は、ベースプレート30側に向いている。すなわち、トップフォイル片11の周方向他方側の端縁は、ベースプレート30側に向いている。また、本開示の曲げ部13の折り曲げ線は、トップフォイル片11と軸方向に重なるバンプフォイル片21の周方向のうち、最も周方向他方側に位置する山部23の頂部より、周方向他方側に位置する。
次に、このような構成からなるスラストフォイル軸受3の作用について説明する。
スラストフォイル軸受3は、図2に示すように、スラストカラー4を挟んだ両側に設けている。そのため、回転軸1のスラスト方向両側の移動を抑制できる。
このような状態で回転軸1が回転し、スラストカラー4が回転を始めると、スラストカラー4とトップフォイル片11は擦れ合いつつ、両者の間に形成されたくさび形の空間に周囲流体が押し込まれる。そして、スラストカラー4が一定の回転速度に達すると、両者の間に流体潤滑膜が形成される。この流体潤滑膜の圧力によってトップフォイル片11(トップフォイル10)はバンプフォイル片21(バンプフォイル20)側へ押し付けられ、スラストカラー4はトップフォイル片11との接触状態を脱し、非接触で回転するようになる。
このとき、バンプフォイル片21は、ベースプレート30側へ押し付けられ、トップフォイル片11の傾斜角は、初期傾斜角よりも浅く(小さく)なる。バンプフォイル片21は、回転軸1の回転方向の上流側を径方向にて4つ(複数)に分割しているので、それぞれの端辺25(分割片)が独立に動くことができる。すなわち、それぞれの端辺25がそれぞれ異なる変形量となりうる。これにより、バンプフォイル片21の周方向における変形が滑らかになる。
図5は、一実施例に係るトップフォイル片(曲げ部無し)に作用する流体潤滑膜の圧力分布を示す解析図である。図5においては、圧力の高低を、ドットの濃淡で示している。
トップフォイル片の下流端側は、上記くさび形の空間の最も狭まった部分になるため、図5に示すように、流体潤滑膜による高い圧力が作用することになる。なお、流体潤滑膜による高い圧力は、図5では、トップフォイル片の外周側に作用しているが、バンプフォイル片の支持剛性によっては、その位置は径方向に変化し得る。しかし、トップフォイル片の外周側では、その内周側よりもスラストカラーの周速が速いので、トップフォイル片の外周側に、流体潤滑膜による高い圧力が作用しやすい傾向がある。
図6は、本開示の曲げ部13を有するトップフォイル片11の作用を説明する図である。なお、図6(a)は、平面図を示し、図6(b)は、図6(a)における矢視C図を示す。
上述したように、トップフォイル片11の下流端側は、流体潤滑膜による高い圧力が作用するため、径方向に湾曲(撓む)するような力を受けることになる。ここで、本開示のトップフォイル片11は、回転軸1の回転方向における下流端側に、曲げ部13を有する。
この構成によれば、トップフォイル片11の下流端側が、曲げ部13によって折り曲げられているので、トップフォイル片11の径方向における曲げに対する剛性(断面二次モーメント)を高めることができる。このため、トップフォイル片11の下流端側において、流体潤滑膜による高い圧力が作用しても、トップフォイル片11の下流端側がベースプレート30側に落ち込むことが抑制される。これにより、トップフォイル片11上では、強い流体潤滑膜が形成され、高負荷時においてもスラストカラー4との非接触状態が維持されることとなる。
さらに、トップフォイル片11の上流側から圧縮されて発熱した潤滑流体がトップフォイル片11の下流端側から放出されるとき、曲げ部13によって流れの軌道が捻じ曲げられ、周囲の(冷却された)潤滑流体との攪拌が起こり易くなる。これにより、回転方向の下流側に配置された隣のトップフォイル片11に流れ込む潤滑流体の温度が下がるため、スラストフォイル軸受3の冷却効果が高まる。
また、本開示では、曲げ部13は、図6(b)に示すように、トップフォイル片11の内外周の下流端11c1,11d1からベースプレート30側に存在する単一のピークPに向かって延びる山なり形状を有している。この構成によれば、流体潤滑膜による圧力が図5の解析図のトップフォイル片11の下流端の外周側より比較的小さい部位(トップフォイル片の内周側の端辺、及び外周側の端辺の近傍)において、トップフォイル片11の曲げ剛性を余分に高めなくて済む。また、トップフォイル片11の裏側を流通する流体は、曲げ部13の脇を通り抜ける。すなわち、トップフォイル片11の周方向他方側の端縁がベースプレート30に接触していないため、ベースプレート30に触れて冷却された潤滑流体が、回転方向の下流側のトップフォイル片11に流れ込み、スラストフォイル軸受3を効率よく冷却することができる。
また、本開示では、曲げ部13のピークPが、図6(b)に示すように、トップフォイル片11の外周側に存在しているため、上述した図5に示すように、流体潤滑膜による高い圧力が作用しやすく、径方向の撓みが最大になりやすい箇所において、トップフォイル片11の径方向の曲げ剛性を高めることができる。このため、トップフォイル10の下流端側における径方向への曲げを効果的に抑制することができる。
以上、図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、本開示のスラストフォイル軸受3は、図7~図11に示すような形態を採用し得る。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図7は、本開示の一変形例に係るトップフォイル片11Aを示す構成図である。なお、図7(a)は、平面図を示し、図7(b)は、図7(a)における矢視D図を示す。
トップフォイル片11A(トップフォイル10A)は、図7(b)に示すように、トップフォイル片11Aの径方向の中間部に、曲げ部13のピークPを有している。ここで、トップフォイル片11Aの径方向の中間部とは、トップフォイル片11Aを径方向において3分割したときの真ん中の領域を意味する。この構成によれば、バンプフォイル片21の支持剛性によって、トップフォイル片11Aの下流端側の径方向の曲げが、当該中間部で最大になる場合に、その曲げを効果的に抑制することができる。
図8は、本開示の一変形例に係るトップフォイル片11Bを示す構成図である。なお、図8(a)は、平面図を示し、図8(b)は、図8(a)における矢視E図を示す。
トップフォイル片11B(トップフォイル10B)は、図8(b)に示すように、トップフォイル片11Bの内周側に、曲げ部13のピークPを有している。ここで、トップフォイル片11Bの内周側とは、トップフォイル片11Bを径方向において3分割したときの最も径方向内側の領域を意味する。この構成によれば、バンプフォイル片21の支持剛性によって、トップフォイル片11Bの下流端側の径方向の曲げが、当該内周側で最大になる場合に、その曲げを効果的に抑制することができる。
このように、曲げ部13のピークPの径方向位置を変化させることで、バンプフォイル片21の設計自由度が向上する。
図9は、本開示の一変形例に係るトップフォイル片11C,11Dを示す側面図である。
図9(a)に示すトップフォイル片11C(トップフォイル10C)は、複数の曲げが形成された曲げ部13Cを有する。この曲げ部13Cは、トップフォイル片11Cの下流端側からベースプレート30に略直角に折り曲げられた第1の曲げ部13c1と、第1の曲げ部13c1の下端からベースプレート30の平面に沿って回転方向の下流側に略直角に折り曲げられた第2の曲げ部13c2と、を有する。つまり、トップフォイル片11Cのベースプレート30に対向する側の面に向かい曲がる曲げ部13c1と、トップフォイル片11Cのベースプレート30に対向する側の面の背面側に向かい曲がる曲げ部13c2とを備えている。この構成によれば、トップフォイル片11の径方向における曲げに対する剛性(断面二次モーメント)を高めることができる。また、トップフォイル片11の裏側の流体の流れも阻害し難くなる。なお、曲げ部13Cの曲げは、さらに複数形成されていてもよい。
また、図9(b)に示すトップフォイル片11D(トップフォイル10D)のように、円弧状に湾曲した曲げ部13Dを有してもよい。本開示では、周方向に見たときに曲げ部13Dの端縁が傾斜して終端している。この構成によれば、トップフォイル片11の上流側から圧縮されて発熱した潤滑流体がトップフォイル片11の下流端側から放出されるとき、曲げ部13の湾曲形状によって流体の渦が生じ難くなるため、発熱した潤滑流体を温度が低いベースプレート30側に導きやすくなる。これにより、回転方向の下流側に配置された隣のトップフォイル片11に流れ込む潤滑流体の温度が下がるため、スラストフォイル軸受3の冷却効果が高まる。
図10は、本開示の一変形例に係るトップフォイル片11Fを示す構成図である。なお、図10(a)は、平面図を示し、図10(b)は、図10(a)における矢視F図を示す。
また、図10(a)に示すトップフォイル片11F(トップフォイル10F)のように、トップフォイル片11Fの下流端側の一部に曲げ部13Fを備えてもよい。この曲げ部13Fは、トップフォイル片11Fの下流端側の径方向の圧力が最大になる場所に形成するとよい。
図11は、本開示の一変形例に係るスラストフォイル軸受3Gを示す平面図である。
図11に示すスラストフォイル軸受3Gは、特開2014-145388号公報に開示されているように、トップフォイル片11の固定端12Gが、その内周側から外周側に向かうに連れて回転軸1の回転方向の下流側に近づくように、回転軸1を中心としてその半径方向に延びる直線に対して傾斜して形成されている。この構成によれば、回転方向の下流側のトップフォイル片11と干渉しないで(重ならないで)、曲げ部13を形成しやすくなるので、スラストフォイル軸受3の軸受負荷能力を向上させることができる。
また、例えば、上記実施形態では、トップフォイル10を複数のトップフォイル片11から形成し、バンプフォイル20を複数のバンプフォイル片21から形成したが、トップフォイル10及びバンプフォイル20は、それぞれ周方向に連なって単一のフォイルから形成されていてもよい。
1 回転軸(シャフト)
3 スラストフォイル軸受
10 トップフォイル
11 トップフォイル片
11c1 下流端
11d1 下流端
13 曲げ部
20 バンプフォイル
21 バンプフォイル片
30 ベースプレート
30a 挿通孔
P ピーク

Claims (4)

  1. シャフトが挿通される挿通孔を有するベースプレートと、
    前記挿通孔の周囲に配置され、前記ベースプレートに支持された波型のバンプフォイルと、
    前記バンプフォイルに支持されると共に、前記挿通孔の周方向一方側が前記ベースプレートに取り付けられ、前記挿通孔の周方向他方側が自由端となっているトップフォイルと、を備え、
    前記トップフォイルの前記周方向他方側には、前記ベースプレートに向かって曲がる曲げ部が形成されており、
    前記曲げ部は、前記トップフォイルの内外周の下流端から前記ベースプレート側に存在する単一のピークに向かって延びる山なり形状を有する、スラストフォイル軸受。
  2. 前記ピークが、前記挿通孔の径方向において、前記トップフォイルの外周側に存在する、請求項1に記載のスラストフォイル軸受。
  3. 前記曲げ部には、複数の曲げが形成されている、請求項1または2に記載のスラストフォイル軸受。
  4. 前記曲げ部は、円弧状に湾曲している、請求項1~3のいずれか一項に記載のスラストフォイル軸受。
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