JP7137503B2 - 研磨パッド - Google Patents

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Description

本発明は軟質研磨パッドに関する。本発明の軟質研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等の研磨に用いられ、特にこれら材料の表面を仕上げ研磨するのに好適に用いられる。
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカ等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化物や、金属等からなる配線、プラグなどである。
CMP工程において半導体基板表面上には、不純物が多量に発生する。不純物としては、CMPで使用された研磨用組成物由来の砥粒、金属、防食剤、界面活性剤等の有機物、研磨対象物であるシリコン含有材料、金属配線やプラグ等を研磨することによって生じたシリコン含有材料や金属、更には各種パッド等から生じるパッド屑等の有機物などが含まれ、無機物パーティクルや有機残渣として残存する。半導体基板表面がこれらの不純物により汚染されると、半導体の電気特性に悪影響を与え、デバイスの信頼性が低下する可能性がある。特に、研磨対象である低誘電率の層間絶縁膜は疎水性が高く、疎水性相互作用により不純物が吸着されやすい。したがって、CMPで使用される研磨パッドは、半導体基板表面に残存する無機物パーティクルや有機残渣を研磨により低減させることが求められている。
デバイス表面の仕上げ用研磨パッドとして、スクラッチ等のキズを与えにくい軟質なスウェードパッドが好適に使用されている(特許文献1)。
特開2010-149259号公報
仕上げ研磨では被研磨物に研磨傷をつけないことが強く求められている。パッドの物性として、軟質であればあるほど研磨傷は発生しにくいが、反面、研磨レートや耐摩耗性が劣り研磨効率が低下する。本発明では、研磨レート向上とスクラッチ抑制の両立が可能な研磨パッドを提供することを目的とする。
本発明は以下のものを提供する。
[1]ポリウレタン樹脂を研磨層として有し、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであることを特徴とする研磨パッド。
[2]前記パルスNMR測定において、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下である、[1]に記載の研磨パッド。
[3]光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、[1]又は[2]に記載の研磨パッドを使用することを特徴とする方法。
[4][1]又は[2]に記載の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用することを特徴とする方法。
[5]ポリウレタン樹脂を研磨層として有する研磨パッドの評価方法であって、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであるか否かを確認する工程を含むことを特徴とする研磨パッドの評価方法。
[6]前記パルスNMR測定において、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下であるか否かをさらに確認する、[5]に記載の研磨パッドの評価方法。
本発明の研磨パッドは、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であるため、非晶相成分を多く含み、スクラッチが抑制される。また、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであるため、その運動性が抑えられ、研磨レートを向上させることができる。さらに、本発明の研磨パッドの好ましい態様において、40℃における界面相成分の存在比が10%以下であるため、ゴム弾性を発揮でき応答性が良くなるため耐摩耗性が向上する。
本発明の研磨パッドの一例を示す断面図である。 本発明の研磨パッドの製造に用いられる成膜装置の一例を示す模式図である。 本発明の研磨方法に用いられる片面研磨機の一例を示す模式図である。 本発明のポリウレタン樹脂のパルスNMRで得られるFID信号とその解析の一例を示す図である。 実施例1で得られた研磨パッドの断面写真を示す図である。 各実施例、比較例においてパルスNMRの測定及び解析により得られた20℃、40℃における結晶相、界面相及び非晶相の割合を示すグラフである。 各実施例、比較例においてパルスNMRの測定及び解析により得られた20℃、40℃における結晶相、界面相及び非晶相の緩和時間を示すグラフである。
(作用)
ウレタンシートは、ポリウレタン樹脂のハードセグメントで形成される結晶相と、ソフトセグメントで形成される非晶相と、結晶相および非晶相の間の界面相とを有している。すなわち、ウレタンシートは結晶相および非晶相で形成される相分離構造を有している。ハードセグメントでは、ウレタン結合間に形成される水素結合により分子間凝集力が強くなり、高結晶性となるため、上述したように結晶相を形成する。これに対して、ソフトセグメントでは、水素結合が形成されにくく分子間凝集力が弱くなり、低結晶性のため、非晶相を形成する。また、結晶相では分子間凝集力が強くなることで分子の運動性が小さくなり、非晶相では分子間凝集力が弱くなることで分子の運動性が大きくなる。結晶相と非晶相との中間に形成される界面相は、結晶相、非晶相のいずれとも異なり、結晶相および非晶相の相分離構造を乱すように形成される。
本発明では、20℃及び40℃において非晶相成分の存在比が50~90%であり、半分以上が非晶相領域を占め、且つ、その緩和時間が200~600μsの範囲にある。非晶相領域が半分以上を占めるため、ソフトセグメントの割合が高く、スクラッチが抑制される。一方、緩和時間は分子の運動性を表すため、本発明ではソフトセグメントの分子運動性が比較的低い。このため、ソフトセグメントの弾性を向上させることができ、研磨レートを向上させることができる。20℃及び40℃における非晶相成分の存在比は55~85%であることが好ましい。また、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間は250~500μsであることが好ましい。
なお、非晶相成分の存在比及び緩和時間は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の組成、即ち、高分子ポリオールの種類や分子量、ジイソシアネートの種類、鎖延長剤の種類、あるいはこれら高分子ジオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤の配合モル比を調整することや、熱処理を行うことにより適切な範囲とすることができる。非晶相成分の存在比は、例えば、ポリイソシアネートの配合比を低くすることにより大きくすることができる。緩和時間の調整は、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントの極性の差を調整することにより行うことができる。ポリオールとしてジオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオールを用いる場合であれば、前記ジオールが長鎖である程(水酸基間の炭素数が多い程)ソフトセグメント成分の極性が下がり、ポリイソシアネート由来の極性の高いハードセグメントとの相分離が進行し緩和時間を調整できる。また、加熱処理することにより、ポリウレタン分子の流動性を高め、主にウレタン基とウレア基から形成されるハードセグメントと主にポリオールから形成されるソフトセグメントからなる分子構造において、それぞれの相の凝集をより高め、ミクロ相分離構造を明瞭化することができ、緩和時間を調整できる。
本発明で使用するポリウレタン樹脂の特徴的な化学構造は、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであることによって規定される。特に、前記パルスNMR測定において、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下である研磨パッドを採用した場合には、研磨温度付近において界面相成分が少ないので、結晶相領域と非晶相領域が明確に相分離しており、ゴム弾性を発揮できることから、耐摩耗性が向上し製品寿命が向上する。40℃における前記界面相成分の存在比は1~10%がより好ましい。
界面相とは、ハードセグメントとソフトセグメントの界面であり、界面相の分率が少ないことは、ハードセグメントとソフトセグメントの界面が明確であること、およびハードセグメントとソフトセグメントの界面の数が少ないことを示している。20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であって、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下である場合、40℃の時にソフトセグメントが十分な大きさで形成され、ハードセグメントとの界面数が少ない。また、同時にソフトセグメントの緩和時間が200~600μsであり、サイズの小さなハードセグメントが分散していることが考えられる。これにより伸びの大きいソフトセグメントを引き戻すハードセグメントが点在し、破断されることなく戻ることができるため、靱性が向上し耐摩耗性向上に寄与すると考えられる。
20℃及び40℃におけるパルスNMR測定において、測定される非晶相成分のプロトンのスピン-スピン緩和時間T2は200~600μsの間にあり、好ましくは250~500μsの間にある。スピン-スピン緩和時間の逆数とハードセグメントからなる疑似架橋密度(分子運動の拘束の度合い)とは正の直線相関を示すため、スピン-スピン緩和時間T2はポリウレタン樹脂を構成する成分の疑似架橋密度の指標となり得る。具体的には、ポリウレタン樹脂をパルスNMR測定すると、1以上の(例えば、2または3の)スピン-スピン緩和時間T2が得られ、スピン-スピン緩和時間T2の大小は、ポリウレタン樹脂を構成するポリマー成分の疑似架橋密度の高低に対応する。すなわち、分子運動が拘束された疑似架橋密度の高いポリマー成分は、小さいスピン-スピン緩和時間T2を示す。一方、疑似架橋密度の低いポリマー成分は、大きいスピン-スピン緩和時間T2を示す。本発明においては、20℃及び40℃における非晶相成分の割合と非晶相成分のスピン-スピン緩和時間T2が上記範囲内にあるポリウレタン樹脂を用いることによって、スクラッチを抑制しつつ、研磨レートを向上させることができる。
(研磨パッドの製造方法)
以下、図面を参照して、本発明の研磨パッドの製造方法について説明する。
図1に本発明の研磨パッドの一例の断面図を示す。本発明の研磨パッド1は湿式成膜法により製造された軟質プラスチックフォームとしてのポリウレタンシート2を有している。ポリウレタンシート2は、研磨面P側が、ポリウレタンシート2の厚さ(図1の縦方向の長さ)がほぼ一様となるようにバフ処理されている(詳細後述)。
ポリウレタンシート2は、湿式成膜法で表面側に形成されたスキン層がバフ処理により除去されている。バフ処理により、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pが構成されている。ポリウレタンシート2の内部には、ポリウレタンシート2の厚さ方向に沿って丸みを帯びた断面略三角状の発泡3が形成されている。発泡3の空間体積は、研磨面P側の大きさが、研磨面Pの裏面側より小さく形成されている。発泡3同士の間のポリウレタン樹脂中には、発泡3より小さな空間体積を有する微発泡が形成されている。発泡3及び微発泡は、連通孔で立体網目状につながっている。
また、研磨パッド1は、アクリル系接着剤を用いて基材8(厚み188μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シート)とバフ処理済のポリウレタンシート2のバフ処理した面とは反対側の面とが貼り合わされている。基材8のポリウレタン樹脂シートと貼り合わされている面とは反対側の面に、研磨機に研磨パッド1を装着するための両面テープが貼り合わされている。両面テープは、他面側(基材8と反対側)の接着剤層が剥離紙で覆われている。
研磨パッド1の製造では、湿式成膜法によりポリウレタンシート2を作製し、基材8を貼り合わせる。すなわち、湿式成膜法では、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に溶解させたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂をフィルム状に凝固再生させ、洗浄後乾燥させて帯状(長尺状)のポリウレタンシート2を作製する。以下、工程順に説明する。
準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)及び添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。例えば、ポリウレタン樹脂が30質量%の濃度となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、発泡3の大きさや量(個数)を制御するため、発泡を促進させる親水性活性剤及びポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を濾過することで凝集塊等を除去した後、真空下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を得る。
塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程では、準備工程で得られたポリウレタン樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液に浸漬することでポリウレタン樹脂を凝固再生させ、洗浄後乾燥させてポリウレタンシート2を得る。塗布工程、凝固再生工程及び洗浄・乾燥工程は、例えば、図2に示す成膜装置で連続して実行される。
図2に示すように、成膜装置60は、成膜基材の不織布や織布を前処理する、水又はDMF水溶液(DMFと水との混合液)等の前処理液15が満たされた前処理槽10、ポリウレタン樹脂を凝固再生させるための、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液25が満たされた凝固槽20、凝固再生後のポリウレタン樹脂を洗浄する水等の洗浄液35が満たされた洗浄槽30及びポリウレタン樹脂を乾燥させるためのシリンダ乾燥機50を連続して備えている。
前処理槽10の上流側には、成膜基材43を供給する基材供給ローラ41が配置されている。前処理槽10は、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向の略中央部の内側下部に一対のガイドローラ13を有している。前処理槽10の上方で、基材供給ローラ41側にはガイドローラ11、12が配設されており、凝固槽20側には前処理した成膜基材43に含まれる過剰な前処理液15を除去するマングルローラ18が配置されている。マングルローラ18の下流側には、成膜基材43にポリウレタン樹脂溶液45を略均一に塗布するナイフコータ46が配置されている。ナイフコータ46の下流側で凝固槽20の上方にはガイドローラ21が配置されている。
凝固槽20には、洗浄槽30側の内側下部にガイドローラ23が配置されている。凝固槽20の上方で洗浄槽30側には凝固再生後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ28が配置されている。マングルローラ28の下流側で洗浄槽30の上方にはガイドローラ31が配置されている。洗浄槽30には、成膜基材43の搬送方向と同じ長手方向で上部に4本、下部に5本のガイドローラ33が上下交互となるように配設されている。洗浄槽30の上方でシリンダ乾燥機50側には、洗浄後のポリウレタン樹脂を脱水処理するマングルローラ38が配置されている。シリンダ乾燥機50には、内部に熱源を有する4本のシリンダが上下4段に配設されている。シリンダ乾燥機50の下流側には、乾燥後のポリウレタン樹脂を(成膜基材43と共に)巻き取る巻取ローラ42が配置されている。なお、マングルローラ18、28、38、シリンダ乾燥機50及び巻取ローラ42は、図示を省略した回転駆動モータに接続されており、これらの回転駆動力により成膜基材43が基材供給ローラ41から巻取ローラ42まで搬送される。成膜基材43の搬送速度は、例えば、2.5m/minに設定されており、1.0~5.0m/minの範囲で設定されることが好ましい。
成膜基材43に不織布又は織布を用いる場合は、成膜基材43が基材供給ローラ41から引き出され、ガイドローラ11、12を介して前処理液15中に連続的に導入される。前処理液15中で一対のガイドローラ13間に成膜基材43を通過させて前処理(目止め)を行うことにより、ポリウレタン樹脂溶液45を塗布するときに、成膜基材43内部へのポリウレタン樹脂溶液45の浸透が抑制される。成膜基材43は、前処理液15から引き上げられた後、マングルローラ18で加圧されて余分な前処理液15が絞り落とされる。前処理後の成膜基材43は、凝固槽20方向に搬送される。なお、成膜基材43としてPET製等の可撓性フィルムを用いる場合は、前処理が不要のため、ガイドローラ12から直接マングルローラ18に送り込むようにするか、又は、前処理槽10に前処理液15を入れないようにしてもよい。以下、本例では、成膜基材43をPET製フィルムとして説明する。
塗布工程では、準備工程で調製したポリウレタン樹脂溶液45が常温下でナイフコータ46により成膜基材43に略均一に塗布される。このとき、ナイフコータ46と成膜基材43の上面との間隙(クリアランス)を調整することで、ポリウレタン樹脂溶液45の塗布厚さ(塗布量)を調整する。
凝固再生工程では、ナイフコータ46でポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が、ガイドローラ21からガイドローラ23へ向けて凝固液25中に導入される。凝固液25中では、まず、塗布されたポリウレタン樹脂溶液45の表面に厚さ数μmのスキン層が形成される。その後、ポリウレタン樹脂溶液45中のDMFと凝固液25との置換の進行によりポリウレタン樹脂が成膜基材43の片面に凝固再生する。このポリウレタン樹脂の凝固再生は、ポリウレタン樹脂溶液45が塗布された成膜基材43が凝固液25中に進入してからガイドローラ23に到る間に完了する。DMFがポリウレタン樹脂溶液45から脱溶媒するときに、ポリウレタン樹脂中に発泡3が形成される。このとき、PET製フィルムの成膜基材43が水を浸透させないため、ポリウレタン樹脂溶液45の表面側で脱溶媒が生じて成膜基材43側が表面側より大きな発泡3が形成される。凝固再生したポリウレタン樹脂は、凝固液25から引き上げられ、マングルローラ28で余分な凝固液25が絞り落とされた後、ガイドローラ31を介して洗浄槽30に搬送され洗浄液35中に導入される。
洗浄・乾燥工程では、洗浄液35中に導入されたポリウレタン樹脂をガイドローラ33に上下交互に通過させることによりポリウレタン樹脂が洗浄される。洗浄後、ポリウレタン樹脂は洗浄液35から引き上げられ、マングルローラ38で余分な洗浄液35が絞り落とされる。その後、ポリウレタン樹脂を、シリンダ乾燥機50の4本のシリンダ間を交互(図2の矢印方向)に、シリンダの周面に沿って通過させることで乾燥させる。乾燥後のポリウレタン樹脂(ポリウレタンシート2)は、成膜基材43と共に巻取ローラ42に巻き取られる。
バフ処理工程では、厚みが一様となるよう成膜樹脂のスキン層側にバフ処理が施される。巻取ローラ42に巻き取られたポリウレタンシート2は成膜基材43のPET製フィルム上に形成されている。成膜時にはポリウレタンシート2の厚さにバラツキが生じるため、研磨面Pには凹凸が形成されている。成膜基材43を剥離した後、成膜樹脂のスキン層と反対側の面に、表面が略平坦な圧接用治具の表面を圧接することで、スキン層側に凹凸が出現する。スキン層側に出現した凹凸をバフ処理で除去される。本例では、連続的に製造されたポリウレタンシート2が帯状のため、研磨面Pに圧接用治具を圧接しながら、スキン層側を連続的にバフ処理する。これにより、スキン層が除去されて平坦な研磨面が形成されたポリウレタンシート2は、厚さのバラツキが解消され、開口が形成される。
貼り合わせ工程では、アクリル系接着剤を用いて基材(厚み188μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シート)とバフ処理済みのポリウレタンシート2のバフ処理した面とは反対側の面とを貼り合わせる。
ラミネート加工工程では、基材8のポリウレタン樹脂シートと貼り合わされている面とは反対側の面に両面テープを貼り合わせる。研磨面Pにエンボス加工を施した後、裁断・検査工程で円形等の所望の形状に裁断する。エンボス加工のパターンには特に制限はなく、研磨加工時のスラリの移動が円滑になればよい。そして、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、研磨パッド1を完成させる。
(研磨方法)
被研磨物の研磨加工を行うときは、例えば、図3に示すように、片面研磨機70を使用する。片面研磨機70は、上側に被研磨物を押圧する加圧定盤72、下側に回転可能な回転定盤71を有している。加圧定盤72の下面及び回転定盤71の上面は、いずれも平坦に形成されている。加圧定盤72の下面にはバックパッド75が貼付されており、回転定盤71の上面には被研磨物を研磨する研磨パッド1が貼付されている。バックパッド75に適量の水を含ませて被研磨物78を押し付けることで、被研磨物78が水の表面張力及びポリウレタン樹脂の粘着性でバックパッド75に保持される。加圧定盤72で被研磨物78を加圧しながら回転定盤71を回転させることで、被研磨物78の下面(加工表面)が研磨パッド1で研磨加工される。
(ポリウレタン樹脂組成物)
本発明の研磨パッドのポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール、ポリアミンなどの硬化剤を反応させて得られる。結晶相(ハードセグメント)はイソシアネート化合物及び鎖延長剤に由来する構造単位から構成され、非晶相(ソフトセグメント)は比較的自由度が高い脂肪族有機基を有するポリオールやジアミンに由来する構造単位から構成される。
ポリウレタン樹脂における非晶相成分の存在比及び緩和時間は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の組成、即ち、高分子ポリオールの種類や分子量、ジイソシアネートの種類、鎖延長剤の種類、あるいはこれら高分子ジオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤の配合モル比を調整することにより適切な範囲とすることができる。
ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とポリオールをあらかじめ反応させて高分子量化したプレポリマーの形で使用することができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
高分子ジオールとしては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。これらの高分子ジオールは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などが挙げられる。これらのポリエーテルジオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルジオールとしては、例えば、ジカルボン酸またはそのエステル、無水物等のエステル形成性誘導体と低分子ジオールとを直接エステル化反応またはエステル交換反応させることにより製造できる。
ポリエステルジオールを構成するジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸等の炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルジオールを構成する低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;等が挙げられる。これらの低分子ジオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。低分子ジオールの炭素数としては、例えば、6以上12以下が挙げられる。
鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物、水などを用いることができる。これらの鎖延長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(ポリウレタン樹脂組成物の重合反応)
ポリウレタン樹脂は、上述したポリウレタン樹脂組成物を重合させることにより製造できる。得られたポリウレタン樹脂は、DMFなどの溶媒に混合してから、図2に示すような成膜装置に供給され、ポリウレタンシートに成形される。
(パルスNMRによる構造解析)
パルスNMRでは、パルスに対する応答信号を検出することで定量性に優れるFID信号を得ることができる。このため、ポリウレタン樹脂の相分離構造を解析することができる。FID信号の初期値は測定試料中のプロトンの数に比例しており、測定試料に複数の成分があれば、FID信号は各成分の応答信号の和となる。各成分の運動性に差があると、応答信号の減衰の速さが異なりスピン-スピン緩和時間T2が異なるため、これらを分離して各成分の緩和時間T2と成分割合Rとを求めることができる。成分の運動性が小さくなるほど緩和時間T2が短くなり、運動性が大きくなるほど緩和時間T2が長くなる。換言すれば、緩和時間T2が短くなるほど結晶性が大きくなり、緩和時間T2が長くなるほど非晶性が大きくなる。
図4に示すように、ポリウレタン樹脂のパルスNMRで得られるFID信号は、曲線Dで示される。曲線Dから、最小二乗法により緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することで、曲線H、曲線S、曲線Iで示される3つの成分に分けることができる。曲線Sで示される緩和時間T2の長い成分が非晶相に相当し、曲線Hで示される緩和時間T2の短い成分が結晶相に相当する。曲線Sと曲線Hとの間の曲線Iで示される成分が界面相に相当する。ポリウレタン樹脂では、運動性の大きなソフトセグメントで形成される非晶相の成分割合が圧縮弾性率と相関し、運動性の小さなハードセグメントで形成される結晶相の成分割合がA硬度と相関する。このため、非晶相の成分割合を大きくすれば圧縮弾性率を大きくすることができ、結晶相の成分割合を大きくすればA硬度を大きくすることができる。本発明では、非晶相の成分割合が大きくなるように研磨パッドを調製しているので、相対的に結晶相の成分割合および界面相の成分割合が小さく、軟質であるため、スクラッチが抑制される。一方、非晶相の緩和時間が200~600μsであると、非晶相成分の運動性が比較的小さく、適度な弾性が得られるため、スクラッチを抑制しつつ高い研磨レートを達成できる。
スピン-スピン緩和時間の逆数とポリマーの架橋密度(分子運動の拘束の度合い)とは正の直線相関を示すため、スピン-スピン緩和時間T2はポリマーPを構成するポリマー成分の架橋密度の指標となり得る。具体的には、ポリマーPをパルスNMR測定すると、1以上の(例えば、2または3の)スピン-スピン緩和時間T2が得られ、スピン-スピン緩和時間T2の大小は、ポリマーPを構成するポリマー成分の架橋密度の高低に対応する。すなわち、分子運動が拘束された架橋密度の高いポリマー成分は、小さいスピン-スピン緩和時間T2を示す。一方、架橋密度の低いポリマー成分は、大きいスピン-スピン緩和時間T2を示す。本発明においては、20℃及び40℃における非晶相成分の割合と非晶相成分のスピン-スピン緩和時間T2が所定の範囲内にあるポリウレタン樹脂を用いることによって、スクラッチを抑制しつつ、研磨レートを向上させることができる。ポリマーPのスピン-スピン緩和時間T2(すなわち、ポリマー成分の架橋密度および架橋密度分布)は、例えば、ポリマーP架橋時の架橋剤(後述)の種類および含有量を調整することにより、制御することができる。なお、本明細書において、スピン-スピン緩和時間T2はソリッドエコー法(90°x-τ-90°y)により測定される。
本発明を以下の例により説明するが、本発明の範囲は以下の例により限定されるものではない。
(実施例1)
100%樹脂モジュラスが7.0MPa、重量平均分子量104300のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF31.8部、水5部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、エチレングリコール及びプロピレングリコールとアジピン酸とを脱水縮合して得られたポリエステルポリオールと、1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、低分子ジオールとを縮合して得られたものを用いた。次に、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記樹脂溶液を、ナイフコータを用いて塗布し、凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、該樹脂含有溶液を凝固させた後、洗浄・乾燥させて、樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの表面に形成されたスキン層側に研削処理を施した(研削量:200μm)。その後、樹脂フィルムの一部を格子状の金型でエンボス加工を行い研磨パッドを得た。得られた研磨パッドの断面写真を図5に示す。
(実施例2)
100%樹脂モジュラスが7.0MPa、重量平均分子量103100のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF32部、ポリエーテル変性シリコーン2部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とトルエンジイソシアネート(TDI)を2:5の質量比で混合させたものを使用した。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(比較例1)
100%樹脂モジュラスが7.5MPa、重量平均分子量120000のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF31.8部、ポリエーテル変性シリコーン1部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオールの鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(比較例2)
100%樹脂モジュラスが6.0MPa、重量平均分子量が137900のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF56部、ポリエーテル変性シリコーン2部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(比較例3)
100%樹脂モジュラスが4.0MPa、重量平均分子量が132800のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF52部、ポリエーテル変性シリコーン2部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオール/エチレングリコール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(100%樹脂モジュラス測定)
ポリウレタン樹脂の100%樹脂モジュラスは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を断面積で割った値である。具体的には、100%樹脂モジュラスは、樹脂溶液を薄く引き延ばし熱風乾燥し、200μm程度の厚みの乾式フィルムを作製後、しばらく養生したのち、全長90mm、両端部幅20mm、つかみ具間距離50mm、平行部幅10mm、厚さ200μmのダンベル状に試料を打ち抜き、測定試料を万能材料試験機テンシロン(株式会社エイ・アンド・デイ製テンシロン万能試験機「RTC-1210」)の上下エアチャックにはさみ、20℃(±2℃)、湿度65%(±5%)の雰囲気下で、引っ張り速度100mm/分で引っ張り、100%伸長時(2倍延伸時)の張力を試料の初期断面積で割ることにより求めた。
(GPC測定)
実施例及び比較例で得られた研磨パッドから、研磨層のポリウレタン樹脂を0.05g切り取り、DMF4.95gに溶解し1%ポリウレタンDMF溶液を調製し、静置後、試験管ミキサーにより50℃で14時間振とうした。振とう後、上澄み0.5gを測り取りDMF2gと混合し、0.2%ポリウレタンDMF溶液とした後、0.45μmフィルターにて濾過し、測定試料とした。得られた測定試料を以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定し、重量平均分子量を求めた。標準試料にポリエチレングリコールオキシド(アジレント・テクノロジー株式会社製 EasiVial PEG/PEO)を用いて検量線を作成した。
<測定条件>
カラム:Ohpak KB-805HQ(排除限界2000000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.75ml/min(21kg/cm
オーブン:60℃
検出器:RI
試料量:30μl
(パルスNMR測定)
実施例及び比較例で得られた研磨パッドは、以下の条件でパルスNMRにより構造解析を行った。
Figure 0007137503000001
上記の装置、条件にて、得られたエンボス加工済みの研磨パッドのランド部をカッターで切り出し、1~3mm角程度のサンプル片を10mmφの試料管に1~2cmの高さまで充填し、パルスNMRの測定を行うことにより、減衰曲線を得た。得られた減衰曲線とフィッティング曲線が一致するよう、ローレンツ関数(直線部分)、ガウス関数(曲線部分)を用いて最小二乗法により解析し、研磨層中の結晶相、界面相及び非結晶相の割合、並びに、緩和時間を得た。なお、フィッティング及び解析は、上記測定装置に付属のソフトウェアを用いた。結果を表2、並びに図6及び7に示す。
Figure 0007137503000002
実施例1及び2の研磨パッドでは、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%の範囲内であるため、非晶相成分を多く含み、スクラッチが抑制されることが予測される。また、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsの範囲内であるため、非晶相成分の運動性が抑えられており、研磨レートが高いことが予測される。さらに、40℃における界面相成分の存在比が10%以下であるため、結晶相領域と非晶相領域とが明確に相分離しており、ゴム弾性を発揮できるため、高い耐摩耗性を示すことが予測される。
一方、比較例1の研磨パッドでは、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比がそれぞれ31.5%、38%と低く、非晶相成分の含有量が少ないため、スクラッチが発生しやすいことが予測される。また、40℃における界面相成分の存在比が44.4%と高いため、結晶相領域と非晶相領域との相分離が明確でなく、耐摩耗性が低いことが予測される。
比較例2の研磨パッドでは、特に20℃における非晶相成分の存在比が34%と低く、非晶相成分の含有量が少ないため、研磨初期においてスクラッチが発生しやすいことが予測される。
比較例3の研磨パッドでは、特に20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間がそれぞれ1100μs、712μsと長く、非晶相成分の運動性が高いため、研磨レートが低いことが予測される。
(研磨試験の試験条件)
実施例および比較例の各研磨パッドを用い、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜付きシリコンウェハ、及び、Cu膜付きシリコンウェハの50枚に対して、以下の条件にて研磨加工を繰り返し行い、研磨レートおよびスクラッチ性を評価した。
Figure 0007137503000003
(研磨レートの測定)
研磨試験前後のウエハ上のTEOS膜、或いはCu膜について、121箇所の厚さ測定結果から平均値を求めて、その平均値から各点において研磨された厚さを研磨時間で除することにより研磨レート(Å/分)を求めた。なお、厚さ測定は、光学式膜厚膜質測定器(KLAテンコール社製、型番「ASET-F5x」)のDBSモードにて測定した。結果を表4に示す。
(研磨欠陥の評価)
スクラッチについては、研磨処理枚数が10枚目、25枚目、50枚目のTEOS膜付きウェハ、及びCu膜付きウェハを表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードにて測定し、基板表面における研磨欠陥数を観察した。結果を表5に示す。
(耐摩耗性の評価)
研磨パッドの中心を0地点としてX軸直線、Y軸直線を設定し、パッド中心から±150mm~±230mmの範囲において、研磨する前の研磨パッドの厚み及びウェハを50枚研磨後の研磨パッドの厚みを10mm間隔で測定した。各地点における50枚研磨後の研磨パッドの摩耗量より各地点における研磨前後の厚み差を求め、全測定地点における該厚み差の平均値を平均摩耗量とした。数値が小さいほど耐摩耗性が高く、製品寿命が向上する。結果を表6に示す。
Figure 0007137503000004
Figure 0007137503000005
Figure 0007137503000006
実施例1及び2では、研磨レートが高く、研磨欠陥は低く、耐摩耗性も良好なことから製品寿命の向上が可能である。
比較例1では、非晶相成分の存在比が20℃、40℃において低く、ソフトセグメント成分の少なさに起因して研磨欠陥が多発した。また40℃において界面相成分が多いことで耐摩耗性が悪化した。
比較例2では、20℃での非晶相成分の存在比が低いため、研磨初期に研磨欠陥が比較的多く発生した。
比較例3では、非晶相成分の存在比が比較的高く、40℃では非晶相成分の存在比が最も高いが、非晶相成分の緩和時間が20℃、40℃ともに非常に長い。非晶相成分の分子鎖の運動性が高く、結晶相と結晶相の間が離れていることがうかがえ、全体としてソフト性が高く、研磨欠陥が良い反面、研磨レートが低く、最も耐摩耗性が悪かった。
以上説明したように、本発明によれば、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであるか否かを確認することにより、研磨パッドの性能を評価することができることがわかった。具体的には、対象の研磨パッドが、研磨レート向上とスクラッチ抑制の両立が可能な研磨パッドであるか否かの評価を行うことができた。また、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下であるか否かをさらに確認することにより、耐摩耗性に関する研磨パッドの評価も行うことができた。

Claims (6)

  1. ポリウレタン樹脂を研磨層として有し、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであることを特徴とする研磨パッド。
  2. 前記パルスNMR測定において、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、請求項1又は2に記載の研磨パッドを使用することを特徴とする方法。
  4. 請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用することを特徴とする方法。
  5. ポリウレタン樹脂を研磨層として有する研磨パッドの評価方法であって、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであるか否かを確認する工程を含むことを特徴とする研磨パッドの評価方法。
  6. 前記パルスNMR測定において、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下であるか否かをさらに確認する、請求項5に記載の研磨パッドの評価方法。
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