JP7137503B2 - 研磨パッド - Google Patents
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Description
ウレタンシートは、ポリウレタン樹脂のハードセグメントで形成される結晶相と、ソフトセグメントで形成される非晶相と、結晶相および非晶相の間の界面相とを有している。すなわち、ウレタンシートは結晶相および非晶相で形成される相分離構造を有している。ハードセグメントでは、ウレタン結合間に形成される水素結合により分子間凝集力が強くなり、高結晶性となるため、上述したように結晶相を形成する。これに対して、ソフトセグメントでは、水素結合が形成されにくく分子間凝集力が弱くなり、低結晶性のため、非晶相を形成する。また、結晶相では分子間凝集力が強くなることで分子の運動性が小さくなり、非晶相では分子間凝集力が弱くなることで分子の運動性が大きくなる。結晶相と非晶相との中間に形成される界面相は、結晶相、非晶相のいずれとも異なり、結晶相および非晶相の相分離構造を乱すように形成される。
以下、図面を参照して、本発明の研磨パッドの製造方法について説明する。
図1に本発明の研磨パッドの一例の断面図を示す。本発明の研磨パッド1は湿式成膜法により製造された軟質プラスチックフォームとしてのポリウレタンシート2を有している。ポリウレタンシート2は、研磨面P側が、ポリウレタンシート2の厚さ(図1の縦方向の長さ)がほぼ一様となるようにバフ処理されている(詳細後述)。
被研磨物の研磨加工を行うときは、例えば、図3に示すように、片面研磨機70を使用する。片面研磨機70は、上側に被研磨物を押圧する加圧定盤72、下側に回転可能な回転定盤71を有している。加圧定盤72の下面及び回転定盤71の上面は、いずれも平坦に形成されている。加圧定盤72の下面にはバックパッド75が貼付されており、回転定盤71の上面には被研磨物を研磨する研磨パッド1が貼付されている。バックパッド75に適量の水を含ませて被研磨物78を押し付けることで、被研磨物78が水の表面張力及びポリウレタン樹脂の粘着性でバックパッド75に保持される。加圧定盤72で被研磨物78を加圧しながら回転定盤71を回転させることで、被研磨物78の下面(加工表面)が研磨パッド1で研磨加工される。
本発明の研磨パッドのポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール、ポリアミンなどの硬化剤を反応させて得られる。結晶相(ハードセグメント)はイソシアネート化合物及び鎖延長剤に由来する構造単位から構成され、非晶相(ソフトセグメント)は比較的自由度が高い脂肪族有機基を有するポリオールやジアミンに由来する構造単位から構成される。
ポリウレタン樹脂は、上述したポリウレタン樹脂組成物を重合させることにより製造できる。得られたポリウレタン樹脂は、DMFなどの溶媒に混合してから、図2に示すような成膜装置に供給され、ポリウレタンシートに成形される。
パルスNMRでは、パルスに対する応答信号を検出することで定量性に優れるFID信号を得ることができる。このため、ポリウレタン樹脂の相分離構造を解析することができる。FID信号の初期値は測定試料中のプロトンの数に比例しており、測定試料に複数の成分があれば、FID信号は各成分の応答信号の和となる。各成分の運動性に差があると、応答信号の減衰の速さが異なりスピン-スピン緩和時間T2が異なるため、これらを分離して各成分の緩和時間T2と成分割合Rとを求めることができる。成分の運動性が小さくなるほど緩和時間T2が短くなり、運動性が大きくなるほど緩和時間T2が長くなる。換言すれば、緩和時間T2が短くなるほど結晶性が大きくなり、緩和時間T2が長くなるほど非晶性が大きくなる。
100%樹脂モジュラスが7.0MPa、重量平均分子量104300のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF31.8部、水5部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、エチレングリコール及びプロピレングリコールとアジピン酸とを脱水縮合して得られたポリエステルポリオールと、1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、低分子ジオールとを縮合して得られたものを用いた。次に、成膜用基材として、PETフィルムを用意し、そこに、上記樹脂溶液を、ナイフコータを用いて塗布し、凝固浴(凝固液は水)に浸漬し、該樹脂含有溶液を凝固させた後、洗浄・乾燥させて、樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの表面に形成されたスキン層側に研削処理を施した(研削量:200μm)。その後、樹脂フィルムの一部を格子状の金型でエンボス加工を行い研磨パッドを得た。得られた研磨パッドの断面写真を図5に示す。
100%樹脂モジュラスが7.0MPa、重量平均分子量103100のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF32部、ポリエーテル変性シリコーン2部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とトルエンジイソシアネート(TDI)を2:5の質量比で混合させたものを使用した。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
100%樹脂モジュラスが7.5MPa、重量平均分子量120000のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF31.8部、ポリエーテル変性シリコーン1部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオールの鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
100%樹脂モジュラスが6.0MPa、重量平均分子量が137900のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF56部、ポリエーテル変性シリコーン2部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
100%樹脂モジュラスが4.0MPa、重量平均分子量が132800のポリエステル系ポリウレタン樹脂の濃度を30質量%とするDMF溶液(100部)に、DMF52部、ポリエーテル変性シリコーン2部、セルロースエステル1部を混合することにより、樹脂含有溶液を得た。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、アジピン酸と1,4-ブタンジオールを構成単位とするポリオールとを反応させて得られるポリエステルジオールと、1,4-ブタンジオール/エチレングリコール=9/1モル比の鎖延長剤と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを縮合して得られたものを用いた。得られたポリウレタン樹脂溶液から、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
ポリウレタン樹脂の100%樹脂モジュラスは、樹脂の硬さを表す指標であり、無発泡の樹脂シートを100%伸ばしたとき(元の長さの2倍に伸ばしたとき)に掛かる荷重を断面積で割った値である。具体的には、100%樹脂モジュラスは、樹脂溶液を薄く引き延ばし熱風乾燥し、200μm程度の厚みの乾式フィルムを作製後、しばらく養生したのち、全長90mm、両端部幅20mm、つかみ具間距離50mm、平行部幅10mm、厚さ200μmのダンベル状に試料を打ち抜き、測定試料を万能材料試験機テンシロン(株式会社エイ・アンド・デイ製テンシロン万能試験機「RTC-1210」)の上下エアチャックにはさみ、20℃(±2℃)、湿度65%(±5%)の雰囲気下で、引っ張り速度100mm/分で引っ張り、100%伸長時(2倍延伸時)の張力を試料の初期断面積で割ることにより求めた。
実施例及び比較例で得られた研磨パッドから、研磨層のポリウレタン樹脂を0.05g切り取り、DMF4.95gに溶解し1%ポリウレタンDMF溶液を調製し、静置後、試験管ミキサーにより50℃で14時間振とうした。振とう後、上澄み0.5gを測り取りDMF2gと混合し、0.2%ポリウレタンDMF溶液とした後、0.45μmフィルターにて濾過し、測定試料とした。得られた測定試料を以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定し、重量平均分子量を求めた。標準試料にポリエチレングリコールオキシド(アジレント・テクノロジー株式会社製 EasiVial PEG/PEO)を用いて検量線を作成した。
<測定条件>
カラム:Ohpak KB-805HQ(排除限界2000000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.75ml/min(21kg/cm2)
オーブン:60℃
検出器:RI
試料量:30μl
実施例及び比較例で得られた研磨パッドは、以下の条件でパルスNMRにより構造解析を行った。
実施例および比較例の各研磨パッドを用い、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜付きシリコンウェハ、及び、Cu膜付きシリコンウェハの50枚に対して、以下の条件にて研磨加工を繰り返し行い、研磨レートおよびスクラッチ性を評価した。
研磨試験前後のウエハ上のTEOS膜、或いはCu膜について、121箇所の厚さ測定結果から平均値を求めて、その平均値から各点において研磨された厚さを研磨時間で除することにより研磨レート(Å/分)を求めた。なお、厚さ測定は、光学式膜厚膜質測定器(KLAテンコール社製、型番「ASET-F5x」)のDBSモードにて測定した。結果を表4に示す。
スクラッチについては、研磨処理枚数が10枚目、25枚目、50枚目のTEOS膜付きウェハ、及びCu膜付きウェハを表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードにて測定し、基板表面における研磨欠陥数を観察した。結果を表5に示す。
研磨パッドの中心を0地点としてX軸直線、Y軸直線を設定し、パッド中心から±150mm~±230mmの範囲において、研磨する前の研磨パッドの厚み及びウェハを50枚研磨後の研磨パッドの厚みを10mm間隔で測定した。各地点における50枚研磨後の研磨パッドの摩耗量より各地点における研磨前後の厚み差を求め、全測定地点における該厚み差の平均値を平均摩耗量とした。数値が小さいほど耐摩耗性が高く、製品寿命が向上する。結果を表6に示す。
Claims (6)
- ポリウレタン樹脂を研磨層として有し、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであることを特徴とする研磨パッド。
- 前記パルスNMR測定において、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下である、請求項1に記載の研磨パッド。
- 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、請求項1又は2に記載の研磨パッドを使用することを特徴とする方法。
- 請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法であって、湿式成膜法を使用することを特徴とする方法。
- ポリウレタン樹脂を研磨層として有する研磨パッドの評価方法であって、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に当該ポリウレタン樹脂の非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合において、20℃及び40℃における非晶相成分の存在比が50~90%であり、かつ、20℃及び40℃における非晶相成分の緩和時間が200~600μsであるか否かを確認する工程を含むことを特徴とする研磨パッドの評価方法。
- 前記パルスNMR測定において、40℃における前記界面相成分の存在比が10%以下であるか否かをさらに確認する、請求項5に記載の研磨パッドの評価方法。
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