JP7137107B2 - ボールエンドミル - Google Patents
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Description
本発明の実施形態は、軸線回りにエンドミル回転方向に回転させられるエンドミル本体の先端部外周に、エンドミル本体の先端逃げ面に開口して後端側に延びる2つの切屑排出溝が軸線に関して回転対称に形成され、これらの切屑排出溝のエンドミル回転方向を向く壁面と、エンドミル本体の先端逃げ面との交差稜線部に、軸線回りの回転軌跡が該軸線上に中心を有する凸半球面状の切刃が形成されたボールエンドミルに関するものである。
本願は、2020年1月9日に、日本に出願された特願2020-002442号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
チゼル部の幅W(mm)の上記直径D(mm)に対する比W/Dが0.020を下回ると、チゼル部が幅狭となりすぎて硬質皮膜を十分な厚さで被覆することができなくなる。切削負荷によるチッピングが生じるおそれがある。また、比W/Dが0.060を上回ると、チゼル部において硬質皮膜が厚くなりすぎて回転軌跡が軸線上に中心を有する凸半球面から突出してしまい、被削材の加工面精度の低下を招くおそれがある。切屑排出溝の容量が小さくなるために切屑排出性が損なわれてしまうおそれがある。
チゼル部の長さとなる切屑排出溝同士の行き違い量L(mm)の上記直径D(mm)に対する比L/Dが0.014を下回っても、切屑排出溝の容量が小さくなるために切屑排出性を損なうおそれがある。また、比L/Dが0.090を上回ると、行き違った2つの切屑排出溝同士の間に残されて薄肉となるチゼル部が長くなる。硬質皮膜が被覆されていてもエンドミル本体の母材部分の強度が低下して欠損等を生じ易くなる。
上記構成のボールエンドミルでは、チゼル部においてチゼルエッジが形成された範囲における底刃のすくい角が-15°~-30°の範囲内と負角側に大きく設定されている。これにより、チゼル部周辺を含めた底刃の刃物角を大きくすることができる。切屑排出溝のエンドミル回転方向を向く壁面(すくい面)と先端逃げ面との交差稜線部である底刃の上にも十分な厚さの硬質皮膜を被覆することが可能となる。底刃自体の強度を向上させてチッピングや欠損等が発生するのを防止することができる。
チゼル部10の幅W(mm)の直径D(mm)に対する比W/Dが0.020を下回ると、チゼル部10が幅狭となりすぎて硬質皮膜を十分な厚さで被覆することができなくなる。エンドミル本体1の母材が早期に露出して切削負荷によるチッピングが生じるおそれがある。一方、比W/Dが0.060を上回ると、チゼル部10において硬質皮膜が厚くなりすぎる。軸線O回りの回転軌跡が軸線O上に中心を有する半凸球面から突出してしまい、被削材の加工面精度の低下を招くおそれがある。また、切屑排出溝7の容量が小さくなるので、切屑排出性が損なわれて切屑詰まりが発生するおそれも生じる。
チゼル部10の長さである切屑排出溝7のギャッシュ8同士の行き違い量L(mm)の直径D(mm)に対する比L/Dが0.014を下回っても、切屑排出溝の容量が小さくなるために切屑排出性を損なうおそれがある。一方、比L/Dが0.090を上回ると、行き違った2つの切屑排出溝7のギャッシュ8同士の間に残されて薄肉となるチゼル部10が長くなる。硬質皮膜が被覆されていてもエンドミル本体1の母材部分の強度が低下して欠損等を生じ易くなる。
また、上記構成のボールエンドミルにおいては、チゼル部10においてチゼルエッジ10aが形成された範囲における底刃5aのすくい角(真のすくい角)が-15°~-30°の範囲内と負角側に大きく設定されている。このため、チゼル部10における底刃5aの刃物角を大きく確保することができる。チゼル部10は、切屑排出溝7のギャッシュ8のエンドミル回転方向を向く壁面8a(すくい面)と先端逃げ面6との交差稜線部である。チゼル部10においてチゼルエッジ10aが形成された範囲における底刃5aの上にも十分な厚さの硬質皮膜を被覆することが可能となるとともに、底刃5a自体の強度を向上させることができる。底刃5aにチッピングや欠損等が発生するのを防止すること可能となる。
(実施例1,2)
次に、本発明の実施例を挙げて、特に本発明におけるチゼル部10の幅W(mm)の直径D(mm)に対する比W/Dと、切屑排出溝7(ギャッシュ8)同士の行き違い量L(mm)の直径D(mm)に対する比L/Dの効果について実証する。本実施例では、上述した実施形態に基づいた底刃5aの直径D(mm)が0.6mm、チゼル部10においてチゼルエッジ10aが形成された範囲における底刃5aのすくい角が-20°のボールエンドミルにおいて、比W/Dを0.023、比L/Dを0.075としたボールエンドミルと、比W/Dを0.045、比L/Dを0.077としたボールエンドミルとを製造した。これらを順に実施例1、2とする。
また、上述した実施形態に基づいた底刃5aの直径D(mm)が0.6mmのボールエンドミルにおいて、チゼル部10においてチゼルエッジ10aが形成された範囲における底刃5aのすくい角が-25°であり、比W/Dを0.040、比L/Dを0.052としたボールエンドミルと、チゼル部10においてチゼルエッジ10aが形成された範囲における底刃5aのすくい角が-15°であり、比W/Dを0.040、比L/Dを0.052としたボールエンドミルとを製造した。これらを順に実施例3、4とする。なお、これら実施例1~4のボールエンドミルでは、第1逃げ面部6aの逃げ角は6°、第2逃げ面部6bの逃げ角は14°であった。
一方、これら実施例1~4に対する比較例として、実施例1、2と同じく底刃の直径D(mm)が0.6mm、チゼル部においてチゼルエッジが形成された範囲における底刃のすくい角が-20°のボールエンドミルを6本製造した。比較例のボールエンドミルは、比W/Dを0.020よりも小さい0.007として比L/Dは0.067としたボールエンドミルと、比W/Dを0.060よりも大きい0.070として比L/Dは0.052としたボールエンドミルと、比W/Dは0.040として比L/Dを0.014よりも小さい0.010としたボールエンドミルと、比W/Dは0.040として比L/Dを0.090よりも大きい0.100としたボールエンドミルと、比W/Dを0.020よりも小さい0.012として比L/Dは0.048としたボールエンドミルと、比W/Dを0.020よりも小さい0.008として比L/Dは0.022としたボールエンドミルである。これらを順に比較例1~6とする。
さらに、実施例1~4に対する比較例として、実施例1~4および比較例1~6と同じく底刃の直径D(mm)が0.6mmのボールエンドミルにおいて、チゼル部においてチゼルエッジが形成された範囲における底刃のすくい角が-5°であり、比W/Dを0.040として比L/Dは0.052としたボールエンドミルも製造した。これを比較例7とする。なお、これら比較例1~7のボールエンドミルにおいても、第1逃げ面部6aの逃げ角は6°、第2逃げ面部6bの逃げ角は14°であった。
実施例1~4および比較例1~7のボールエンドミルにより、硬度64HRCのASP23よりなる被削材に8mm×8mmの正方形の底面を有する凹部を切削する切削加工を30分間行い、その際のボールエンドミルの切削状況と損傷状況を観察した。切削条件は、エンドミル本体1の回転数40000min-1、回転速度75m/min、切削速度800mm/min、1刃当たりの送り量0.01mm/t、軸方向切り込み深さ0.005mm、半径方向切り込み深さ0.01mmで、クーラントとしてミストをブローして切削加工を行った。
次に、実施例1のボールエンドミルを基本として、第1逃げ面部6aの逃げ角を3°としたボールエンドミルと、第1逃げ面部6aの逃げ角を9°としたボールエンドミルとを製造した。これらを順に実施例5、6とする。実施例5、6のボールエンドミルと実施例1のボールエンドミルとにより、仕上げ加工における加工面粗さの評価として、上述した切削条件と同じ条件で切削加工を60分行い、その際の被削材の凹部の底面の加工面粗さを測定した。
(市販品との比較)
さらに、実際の金型の加工を想定して、市場で流通している底刃の直径D(mm)が0.6mm、チゼル部においてチゼルエッジが形成された範囲における底刃のすくい角が-18°であり、比W/Dが0.035、比L/Dが0.070とされたCBNボールエンドミルと、実施例1のボールエンドミルとを用いた切削試験と、摩耗量測定を行った。切削試験は、硬度64HRCのASP23よりなる被削材に縦4mm、横73mm、深さ1.5mmで底面の隅部に半径0.5mmの凹曲面を有するポケット形状の凹部を2つ仕上げ加工する切削加工を行い、その際の被削材の加工精度を1つ目と2つ目の凹部で比較する評価を行った。摩耗量測定は、切削加工後のボールエンドミルの逃げ面摩耗を測定した。
2 シャンク部
3 切刃部
4 テーパーネック部
5 切刃
5a 底刃
5b 外周刃
6 先端逃げ面
6a 第1逃げ面部
6b 第2逃げ面部
7 切屑排出溝
8 ギャッシュ
8a 切屑排出溝7(ギャッシュ8)のエンドミル回転方向Tを向く壁面(底刃5aの
すくい面)
9 外周逃げ面
10 チゼル部
10a チゼルエッジ
O エンドミル本体1の軸線
T エンドミル回転方向
D 軸線O回りの回転軌跡において底刃5aがなす凸半球面の直径
W チゼル部10の幅
L 切屑排出溝7(ギャッシュ8)同士の行き違い量
Claims (3)
- 軸線回りにエンドミル回転方向に回転させられるエンドミル本体と、前記エンドミル本体の少なくとも先端部の表面に被覆される硬質皮膜とを備えるボールエンドミルであって、
前記エンドミル本体の先端部外周に、前記エンドミル本体の先端逃げ面に開口して後端側に延びる2つの切屑排出溝が前記軸線に関して回転対称に形成され、
前記2つの切屑排出溝のエンドミル回転方向を向く壁面と、前記先端逃げ面とのそれぞれの交差稜線部に、前記軸線回りの回転軌跡が該軸線上に中心を有する凸半球面状の底刃が形成されており、
前記軸線回りの回転軌跡において前記底刃がなす凸半球面の直径D(mm)が2mm以下であり、
前記切屑排出溝は、前記軸線方向先端側から見て、該軸線を間にして互いに重なり合うことなく反対側に行き違っていて、行き違った前記切屑排出溝同士の間に残されたチゼル部の幅W(mm)の前記直径D(mm)に対する比W/Dが0.020~0.060の範囲内とされるとともに、前記切屑排出溝同士の行き違い量L(mm)の前記直径D(mm)に対する比L/Dが0.014~0.090の範囲内とされ、
前記チゼル部においてチゼルエッジが形成された範囲における前記底刃のすくい角が-15°~-30°の範囲内とされていることを特徴とするボールエンドミル。 - 前記先端逃げ面は、前記底刃からエンドミル回転方向の反対側に向かうに従い逃げ角が大きくなる複数の逃げ面部によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボールエンドミル。
- 前記先端逃げ面は、前記底刃からエンドミル回転方向の反対側に向かって並ぶ第1逃げ面部と第2逃げ面部とを有し、
前記第1逃げ面部の逃げ角は、5°以上10°以下であることを特徴とする請求項2に記載のボールエンドミル。
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