JP7136666B2 - 難燃性ポリエステル樹脂組成物およびそれからの成形体 - Google Patents
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Description
(ア)有機純度が98%以上
(イ)全含有ハロゲン成分が1000ppm以下
(ウ)全揮発性有機物含有量が800ppm以下
増粘度の評価方法;120℃の熱風乾燥機にて12時間乾燥したポリエステル組成物を、粘度測定装置としてTA Instruments社製Rheometer ARES-G2を用い、測定温度300℃、せん断速度1Hz、上側冶具25mmφ cone plate(0.1rad)、下側冶具25φ parallel plate、GAP0.50mmの条件で測定した。測定開始後1分後の樹脂粘度(測定値をμ1とする)と測定開始後30分後の樹脂粘度(測定値をμ2とする)の差(下記式(II)により算出される)を増粘度とした。
増粘度=|μ2-μ1| …(II)
<5>前項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物からなるマスターバッチ。
<6>前項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体。
<7>前項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物を紡糸して得られる繊維。
<8>前項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られるシート又はフィルム。
本発明の難燃性ポリエステル繊維製造に用いるポリエステル樹脂としては、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールおよびそのエステル形成性誘導体とを主たる出発原料として得られるポリエステルを主とするものである。ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体として、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、5-テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体などをあげることができる。エステル形成性誘導体としては、上記のジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジペンチルエステル、ジヘキシルエステル、ジフェニルエステル、ジカルボン酸の酸ハロゲン化物をあげることができる。これらの化合物の1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体を用いることが好ましく、より好ましくは、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体を得られるポリエステルにおける全ジカルボン酸成分に対して80モル%以上を用いることが耐熱性の点から好ましい。
(ペンタエリスリトールジホスホネート化合物)
本発明における難燃ポリエステル樹脂組成物に用いるリン系難燃剤として、下記式(1)で示されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物が使用される。
式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物の(i)有機純度は98%以上であり、好ましくは98.5%以上、より好ましくは99.0%以上の純度である。有機純度がこの範囲の前記ペンタエリスリトールジホスホネート化合物を使用することにより、高度な難燃性と良好な物性を両立するポリエステル樹脂組成物を得ることが可能となる。特に有機純度は得られたポリエステル樹脂組成物の難燃性に影響し、有機純度が低い場合、高度な難燃性が得られない。さらに、有機純度の低い前記ペンタエリスリトールジホスホネート化合物は、不純物の影響により得られたポリエステル樹脂組成物の色相悪化や物性の低下、特に耐熱性の低下が発現する。
式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物の(ii)全含有ハロゲン成分は1000ppm以下であり、好ましくは800ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。かかる(ii)全含有ハロゲン成分は、JIS K 7229に準拠した方法で測定する。
式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物の(iii)全揮発性有機物含有量は、800ppm以下であり、好ましくは600ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下である。
式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物の(iv)△pH値は、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。△pHがこの範囲の前記ペンタエリスリトールジホスホネート化合物を用いることにより、pHが変動するような微量の不純物の含有量が少ないために、熱安定性の良好なポリエステル繊維が得られ、かつ色相に優れたポリエステル樹脂組成物が得られる。△pHがこの範囲を超える場合、ポリエステル樹脂組成物の熱安定性が低下し、高温成形時のヤケ発生による色相の低下が発現することがある。
式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物の(v)酸価は好ましくは0.7mgKOH/gであり、より好ましくは0.5mgKOH/g、さらに好ましくは0.4mgKOH/gである。酸価がこの範囲の前記ペンタエリスリトールジホスホネート化合物を使用することにより、高度な難燃性および色相に優れた成形品が得られ、かつポリエステル樹脂の分解がおこり難く、熱安定性の良好な成形体が得られる。ここで酸価とは、サンプル1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
本発明で使用されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物は、以下の方法で合成した後、洗浄し、所望により粉砕することにより製造することができる。
式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物は以下の方法で合成することができる。
(I)ペンタエリスリトールジホスホネート化合物中の式(2)で表される化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とベンジルアルコールの反応生成物に、ベンジルブロマイドを添加し、高温でArbuzov転移反応を行うことにより得られる。
(II)ペンタエリスリトールジホスホネート化合物中の式(3)で表される化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、1-フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(III)ペンタエリスリトールジホスホネート化合物中の式(4)で表される化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、2-フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(IV)ペンタエリスリトールジホスホネート化合物中の式(5)で表される化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物に触媒を添加し、高温でArbuzov転移反応を行うことにより得られる。
洗浄工程は、合成したペンタエリスリトールジホスホネート化合物を、溶剤で洗浄し不純物を除去する工程である。洗浄工程は、洗浄工程1および2を含む。
乾燥工程は、洗浄されたペンタエリスリトールジホスホネート化合物を乾燥する工程である。ペンタエリスリトールジホスホネート化合物は、粉砕工程の前に、乾燥することが好ましい。
粉砕工程は、得られた洗浄されたペンタエリスリトールジホスホネート化合物を粉砕し、最大粒径、体積基準メジアン径などの紛体特性を調整する工程である。
粉砕は、高速回転する回転部背面に生じる高速渦流、並びに高周波圧力振動により原料を粉砕する気流粉砕機で行うことが好ましい。洗浄されたペンタエリスリトールジホスホネート化合物を、空気と共に気流粉砕機へ供給し、旋回流を与え、ディストリビューターによって加速・分散させ、粉砕室へ均等に分配され、粉砕室内で、ブレードとライナーの間で生じる衝撃及び高速渦流によって粉砕することが好ましい。気流粉砕機としてフロイントターボ社製ターボミルが挙げられる。回転体の回転数は、3,000~7,000rpmであることが好ましい。
本発明における難燃性ポリエステル樹脂組成物中に酸性化合物を含有する。酸性化合物としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸などに代表される無機酸または、カルボン酸、スルホン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、アミノ酸、コハク酸、有機リン化合物、フタル酸に代表される有機酸が挙げられる。その中でも本発明に用いる酸性化合物は有機酸が望ましく、その中でも特に有機リン化合物が望ましい。
有機リン化合物としては、例えば、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が挙げられる。
本発明における難燃性ポリエステル樹脂組成物の分子量は、通常成形品として使用しうる固有粘度を有していればよく、35℃、オルトクロロフェノール中で測定した固有粘度が好ましくは0.4~1.5dL/gであり、好ましくは0.45~1.4dL/gであり、より好ましくは0.5~1.3dL/gであり、さらに好ましくは0.52~1.2dL/gである。
増粘度=|μ2-μ1| …(II)
本発明における難燃性ポリエステル樹脂組成物の難燃性は、実質的にハロゲンを含有せず、非常に高い難燃性能を有する。本発明の難燃性樹脂組成物は、厚さ1/32インチ(0.8mm)におけるUL-94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV-2を達成することができる。
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂(ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、並びにフェノキシまたはエポキシ樹脂など)、酸化防止剤(ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、ヒンダートフェノール系化合物およびチオエーテル系化合物など)、難燃助剤(シリコーンオイルなど)、無機充填剤(ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素フレーク、タルク、ワラストナイトなど)、有機充填剤(アラミド繊維、ケナフ繊維など)、衝撃改質剤(コアシェル型アクリルゴム、コアシェル型ブタジエンゴムなど)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系など)、光安定剤(HALSなど)、離型剤(飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、パラフィンワックス、蜜蝋など)、流動改質剤(ポリカプロラクトンなど)、着色剤(カーボンブラック、二酸チタン、各種の有機染料、メタリック顔料など)、末端封鎖剤(エポキシ化合物やカルボジイミド化合物など)、帯電防止剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの第4級アンモニウム塩系、ポリエーテルエステルアミドなど)、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛など)、赤外線吸収剤、相溶化剤、並びにフォトクロミック剤紫外線吸収剤などを配合してもよい。これら各種の添加剤は、周知の配合量で利用することができる。
本発明の上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物を配合したポリエステル組成物は、上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物の濃度が濃い難燃性ポリエステル樹脂マスターバッチを作成し、そのマスターバッチと任意の種類のポリエステル樹脂と所定量ブレンドすることにより、全体としての(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物濃度を所定量となるようにして難燃性ポリエステル樹脂組成物を得る方法も好適に用いられる。この方法であれば、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物含有量の調整が容易に行えると言う利点がある。また、顔料や機能性剤などの添加剤によって当初想定していた含有割合よりも減ってしまうという事態が回避できるので、ハンドリング性が高いという利点も有する。
本発明難燃性ポリエステル樹脂組成物は、実質的にハロゲンを含有せず、非常に高い難燃性能を有しており、ポリエステル繊維として有用である。ポリエステル繊維を製造するに際しては溶融紡糸法を行い、次いで延伸操作を行う方法にて製造することが好ましい。本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、溶融紡糸工程に導入することができる。紡糸後、未延伸糸を巻き取り別途延伸する方法、未延伸糸をいったん巻き取ることなく連続して延伸を行う方法、溶融紡糸後、凝固浴中で未延伸糸を冷却固化させた後、加熱媒体中又は加熱ローラー等の接触加熱下、あるいは非接触型ヒーターで延伸する方法などが採用される。
また、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、その優れた難燃性能から、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形体を成形する材料としても有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
さらに、本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、その優れた難燃性能からシートまたはフィルムの材料としても有用である。
HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV-264nm)、カラムとして東ソー(株)製TSKgel ODS-120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃で0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにて測定した。測定は、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定した。測定結果より、面積比をもって有機純度とした。
ペンタエリスリトールジホスホネート化合物の全含有ハロゲン成分はJIS K 7229に準拠した方法で測定した。
HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV-264nm)および示差屈折検出器、カラムとして東ソー(株)製TSKgel ODS-120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃で0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにて測定した。測定は、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定した。当該化合物製造時に使用する揮発性有機物に関して、あらかじめ検量線を作成し、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物中の揮発性有機物の残存量を求めた。
市販のpH測定装置を使用し、次に示す方法により測定した。測定に使用する蒸留水99gに1gの分散剤を加え撹拌し、得られた水溶液のpHを測定した(測定値をpH1とする)。当該水溶液に本発明のペンタエリスリトールジホスホネート化合物(1)を1g加え1分間撹拌した後に、ペンタエリスリトールジホスホネート化合物(1)を濾過する。得られた濾液のpHを測定した(測定値をpH2とする)。本発明の△pH値は下記式(I)により算出される。
△pH値=|pH1-pH2| …(I)
ペンタエリスリトールジホスホネート化合物の酸価はJIS-K-3504に準拠した方法で測定した。
固有粘度数は、サンプルを一定量計量し、o-クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
難燃性は厚さ1/32インチ(0.8mm)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL-94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。どの試験片も有炎又は赤熱燃焼が保持クランプまで達することなく、炎を取り去った後の燃焼が10秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV-0、燃焼が30秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV-2であり、この評価基準以下のものをnotVとした。
テストピースの成形は各実施例、比較例で得られたペレットを120℃の熱風乾機にて12時間乾燥を行い、乾燥したペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製 J75-ELII)を用いて、シリンダ温度240~320℃の条件にて成形した。
酸素指数はJIS-K-7201に準拠した方法で測定した。数値が高いほど難燃性に優れる。
ポリエステル組成物は120℃の熱風乾燥機にて12時間乾燥したものを測定に用いた。粘度測定装置としてTA Instruments社製Rheometer ARES-G2を使用し、測定温度300℃、せん断速度1Hz、上側冶具25mmφ cone plate(0.1rad)、下側冶具25φ parallel plate、GAP0.50mmの条件で測定した。測定開始後1分後の樹脂粘度(測定値をμ1とする)と測定開始後30分後の樹脂粘度(測定値をμ2とする)の差を増粘度とした。
本発明の増粘度は下記式(II)により算出される。
増粘度=|μ2-μ1| …(II)
2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド(式(2)で表される化合物、FR-1)の調製
<合成工程>
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9-ジベンジロキシ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(130~140℃)で4時間加熱、攪拌した。
加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、30分攪拌し結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により分離し、ろ取した結晶を、撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン20mLを添加しスラリーとし、撹拌した。その後スラリーを再度ろ過し、ろ取した結晶を、再度撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン20mLを添加しスラリーとし、撹拌した。最後にスラリーをろ過し粗精製物を得た。
得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、6時間還流した(内温63℃)。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した。
その後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶20.60g(0.050モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイドであることを確認した。
得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミルT400)により、5,000rpmの条件で粉砕した。
本文記載の方法で測定した(A)有機純度は99.5%、(B)全含有ハロゲン成分は100ppm、(C)全揮発性有機物含有量は200ppm、(D)△pH値は0.5、(E)酸価は0.06mgKOH/gであった。
2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジα-メチルベンジル-3,9-ジオキサイド(式(3)で表される化合物、FR-2)の調製
<合成工程>
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×102Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析により2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジヒドロ-3,9-ジオキサイドである事を確認した。
室温まで放冷し、キシレン2Lを加え、30分攪拌し結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により分離し、ろ取した結晶を、撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン2Lを添加しスラリーとし、撹拌した。その後スラリーを再度ろ過し、ろ取した結晶を、再度撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン2Lを添加しスラリーとし、撹拌した。最後にスラリーをろ過し粗精製物を得た。
得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、6時間還流した(内温63℃)。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した。
その後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1845.9g(4.23モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ジα-メチルベンジル-3,9-ジオキサイドであることを確認した。
得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミルT400)により、5,000rpmの条件で粉砕した。
本文記載の方法で測定した(A)有機純度は99.0%、(B)全含有ハロゲン成分は150ppm、(C)全揮発性有機物含有量は220ppm、(D)△pH値は0.6、(E)酸価は0.08mgKOH/gであった。
2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジ(2-フェニルエチル)-3,9-ジオキサイド(式(4)で表される化合物、FR-3)の調製
<合成工程>
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×102Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析により2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジヒドロ-3,9-ジオキサイドである事を確認した。
室温まで放冷し、キシレン2Lを加え、30分攪拌し結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により分離し、ろ取した結晶を、撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン2Lを添加しスラリーとし、撹拌した。その後スラリーを再度ろ過し、ろ取した結晶を、再度撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン2Lを添加しスラリーとし、撹拌した。
最後にスラリーをろ過し粗精製物を得た。
得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、6時間還流した(内温63℃)。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した。
その後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色鱗片状結晶1924.4g(4.41モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ジ(2-フェニルエチル)-3,9-ジオキサイドであることを確認した。
得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミルT400)により、5,000rpmの条件で粉砕した。
本文記載の方法で測定した(A)有機純度は99.1%、(B)全含有ハロゲン成分は120ppm、(C)全揮発性有機物含有量は250ppm、(D)△pH値は0.3、(E)酸価は0.07mgKOH/gであった。
2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ビス(ジフェニルメチル)-3,9-ジオキサイド(式(5)で表される化合物、FR-4)の調製
<合成工程>
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌した。
室温まで放冷し、キシレン2Lを加え、30分攪拌し結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により分離し、ろ取した結晶を、撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン2Lを添加しスラリーとし、撹拌した。その後スラリーを再度ろ過し、ろ取した結晶を、再度撹拌装置を具備したビーカーに移し、キシレン2Lを添加しスラリーとし、撹拌した。最後にスラリーをろ過し粗精製物を得た。
得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、6時間還流した(内温63℃)。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した。
その後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで19時間乾燥し、白色鱗片状結晶1156.2g(2.06モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ビス(ジフェニルメチル)-3,9-ジオキサイドであることを確認した。
得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミルT400)により、5,000rpmの条件で粉砕した。
本文記載の方法で測定した(A)有機純度は98.9%、(B)全含有ハロゲン成分は200ppm、(C)全揮発性有機物含有量は250ppm、(D)△pH値は0.7、(E)酸価は0.10mgKOH/gであった。
2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド(式(2)で表される化合物、FR-5)の調製
<合成工程>
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9-ジベンジロキシ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、
<洗浄工程>
キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで1回洗浄し、白色結晶をろ取した。
120℃、1.33×102Paで24時間乾燥し、白色の結晶21.22g(0.052モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、1H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイドであることを確認した。
得られた白色結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミル)にて粉砕した。
本文記載の方法で測定した(A)有機純度は96.0%、(B)全含有ハロゲン成分は1300ppm、(C)全揮発性有機物含有量は1100ppm、(D)△pH値は1.3、(E)酸価は2.52mgKOH/gであった。
表2記載の各成分を表2記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、15φ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にて220~280℃の温度条件下でペレット化した。得られたポリエステル樹脂組成物の各種評価結果を表3に示した。
実施例3記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物(マスターペレット)と表2記載の芳香族ポリエステル樹脂を表2記載の量(重量部)でドライブレンドし、15φ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にて240~260℃の温度条件下でペレット化し、難燃性ポリエステル樹脂組成物を得た。得られたポリエステル樹脂組成物の各種評価結果を表3に示した。
(I)ポリエステル樹脂(A成分)
Pest-1;固有粘度0.80dL/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製TR-BB)
Pest-2;固有粘度0.75dL/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製TRN-8855)
Pest-3;固有粘度0.65dL/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製TRN-RT JC)
Pest-4;固有粘度1.22dL/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製TRN-8890AD)
(II)ペンタエリスリトールジホスホネート化合物(B成分)
FR-1;製造例1で合成した2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド
FR-2;製造例2で合成した2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジα-メチルベンジル-3,9-ジオキサイド
FR-3;製造例3で合成した2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジ(2-フェニルエチル)-3,9-ジオキサイド
FR-4;製造例4で合成した2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9-ビス(ジフェニルメチル)-3,9-ジオキサイド
FR-5;製造例5で合成した2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9-ジベンジル-3,9-ジオキサイド
(III)酸性化合物(C成分)
P-1;オクタデシルホスフェート(ADEKA(株)社製:アデカスタブAX-71(商品名))
P-2;3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA(株)社製;アデカスタブPEP-8(商品名))
実施例1で得られた難燃性ポリエステル樹脂組成物を雰囲気温度250~280℃中に口金より紡出せしめ、引取り速度1000m/分で引き取った。引き続き1段、または2段で4.0±0.5倍になるように延伸し、80~88デシテックスのフィラメントを得た。このフィラメントのLOI値は25.5であった。得られたポリエステル繊維(フィラメント)を下記操作に沿って各種の繊維構造体を製造し、LOI評価を行った。結果を表4に示した。
(織物)
実施例14で得られたポリエステル繊維を経糸および緯糸に全量を配し、通常の製織方法により平組織の織物を得た。
(編物)
実施例14で得られたポリエステル繊維を、フロント筬、ミドル筬、バック筬に用い、通常の経編機を使用して編物を得た。
(不織布)
実施例14で得られた難燃ポリエステル組成物を240~280℃で溶融紡糸し、エジェクターで高速で引き取った長繊維を、移動するネットコンベア上に連続的に供給して搬送し、エンボスローラで熱圧着(100~200℃)し、長繊維不織布を得た。
Claims (8)
- (A)固有粘度が0.5~1.6dL/gである芳香族ポリエステル樹脂100重量部に対し、(B)各物性が以下(ア)~(ウ)の条件を満たす下記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物0.1~40重量部、および(C)酸性化合物0.03~10重量部を含有し、(C)酸性化合物が、下記式(6)および/または下記式(7)で示される化合物であることを特徴とする難燃性ポリエステル樹脂組成物。
(ア)有機純度が98%以上
(イ)全含有ハロゲン成分が1000ppm以下
(ウ)全揮発性有機物含有量が800ppm以下
- 下記の方法で評価した増粘度が200Pa・s以下である請求項1記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
増粘度の評価方法;120℃の熱風乾燥機にて12時間乾燥したポリエステル組成物を、粘度測定装置としてTA Instruments社製Rheometer ARES-G2を用い、測定温度300℃、せん断速度1Hz、上側冶具25mmφ cone plate(0.1rad)、下側冶具25φ parallel plate、GAP0.50mmの条件で測定した。測定開始後1分後の樹脂粘度(測定値をμ1とする)と測定開始後30分後の樹脂粘度(測定値をμ2とする)の差(下記式(II)により算出される)を増粘度とした。
増粘度=|μ2-μ1| …(II) - 前記(A)芳香族ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびポリトリメチレンナフタレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物からなるマスターバッチ。
- 請求項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体。
- 請求項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物を紡糸して得られる繊維。
- 請求項1~4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られるシートまたはフィルム。
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