JP7135276B2 - シーラントフィルム及びパウチ - Google Patents

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本発明は、シーラントフィルム及びパウチに関する。
液体状の食品、医薬品等を収納する容器としては、例えば、延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムや延伸ナイロンフィルム等で形成された基材層と、ヒートシール性を有するシーラントフィルムで形成されたシーラント層とを含む積層フィルムを、シーラント層を内側にして融着させて製袋したパウチが知られている。このようなパウチにおいては、はさみやカッター等を使用しなくても容易に開封できること、特に容易に直線的に引き裂いて開封できることが求められる。パウチに用いられるシーラントフィルムは一般に積層フィルム中の他のフィルムに比べて肉厚であるため、パウチの引き裂き性においてはシーラントフィルムが支配的である。
ところで、押出フィルムのMD方向の直線カット性を高める方法としては、例えば、押出フィルムにMD方向に延伸し、フィルムの樹脂成分をMD方向に配向させて結晶化させることが知られている。しかし、延伸を経てシーラントフィルムを製造すると、低温シール性が低下し、充分なヒートシール性を確保することが困難である。
また、シーラントフィルムの易開封性を高めるために、ベース樹脂となるポリエチレンやポリプロピレンに、それらと相溶性が悪い環状オレフィンコポリマーを添加し、ベース樹脂と環状ポリオレフィンのマトリックス構造(海島構造)を形成することが提案されている(特許文献1)。しかし、このシーラントフィルムもマトリックス構造によりシール強度が弱くなる傾向があるため、特に内容量が多く重い用途や、液体用途のパウチには不向きである。
特開2008-115294号公報
本発明は、充分なシール強度を確保しつつ、直線カット性に優れたシーラントフィルム、及び該シーラントフィルムを用いたパウチを提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]熱可塑性樹脂と、セルロースナノファイバーとを含有する押出フィルムからなるシーラントフィルム。
[2]前記熱可塑性樹脂の融点が200℃以下である、[1]に記載のシーラントフィルム。
[3][1]又は[2]に記載のシーラントフィルムからなるシーラント層を備えるパウチ。
本発明のシーラントフィルムは、充分なシール強度を確保しつつ、優れた直線カット性を得ることができる。
本発明のシーラントフィルムは、充分なシール強度を有し、かつ直線カット性にも優れている。
本発明のパウチの一例を示した正面図である。 図1のA-A断面図である。 図1のパウチにおける積層フィルムを示した断面図である。
[シーラントフィルム]
本発明のシーラントフィルムは、熱可塑性樹脂と、セルロースナノファイバーとを含有する押出フィルムからなる。
熱可塑性樹脂としては、シーラントフィルムに通常用いられる熱可塑性樹脂であればよく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等のエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等のプロピレン系樹脂;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のエチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体;エチレン-アクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸エチル、エチレン-メタクリル酸メチル、エチレン-メタクリル酸エチル等のエチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物;カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオン等で架橋したエチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物;エチレン-無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン;エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体等のエポキシ化合物変性ポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の融点が200℃以下の樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の融点が200℃以下であれば、熱可塑性樹脂とセルロースナノファイバーとの溶融混練の際や、押出成形による製膜の際にセルロースナノファイバーが分解したり、炭化したりして直線カット性や外観が悪化することを抑制しやすい。
熱可塑性樹脂の融点は、200℃以下が好ましく、80~180℃がより好ましい。
セルロースナノファイバーの平均直径は、5~200nmが好ましく、10~150nmがより好ましく、20~100nmがさらに好ましい。セルロースナノファイバーの平均直径が下限値以上であれば、優れた直線カット性が得られやすい。セルロースナノファイバーの平均直径が上限値以下であれば、熱可塑性樹脂との相溶性が低下したり、透明性が低下したりすることを抑制しやすい。
なお、セルロースナノファイバーの平均直径は、フィルム内のセルロースナノファイバーの透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定される。具体的には、作製したフィルムを樹脂で包埋し、ミクロトームにて切片化した後、金属酸化物により蒸気染色を施し、TEM観察を行う。1視野辺りから5個の任意のセルロースナノファイバーを観察し、合計10視野でトータル50個の直径の平均値を平均直径とする。
セルロースナノファイバーの平均長さは、1~100μmが好ましく、5~70μmがより好ましく、10~50μmがさらに好ましい。セルロースナノファイバーの平均長さが下限値以上であれば、優れた直線カット性が得られやすい。セルロースナノファイバーの平均長さが上限値以下であれば、熱可塑性樹脂との相溶性が低下したり、透明性が低下したりすることを抑制しやすい。
なお、セルロースナノファイバーの平均長さは、フィルム内のセルロースナノファイバーの透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定される。具体的には、作製したフィルムを樹脂で包埋し、ミクロトームにて切片化した後、金属酸化物により蒸気染色を施し、TEM観察を行う。1視野辺りから5個の任意のセルロースナノファイバーを観察し、合計10視野でトータル50個の長さの平均値を平均長さとする。
セルロースナノファイバーの原料としては、特に限定されず、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、微生物産生セルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、レーヨン等の再生セルロース等が挙げられる。パルプ化の方法や、精製方法、漂白方法等も特に限定されない。セルロースナノファイバーの原料としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
セルロースナノファイバーの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、パルプ等の原料をリファイナーで極小に叩解する、パルプ等の原料をホモジナイザーでホモジナイズする等の機械的製法や、パルプ等の原料を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル(TEMPO)等のN-オキシル化合物(オキソアンモニウム塩)により処理する化学的製法等が挙げられる。なかでも、セルロースナノファイバーのサイズや生産性の点から、パルプ等の原料をTEMPOにより処理する方法が好ましい。
セルロースナノファイバーは、水分率が1%以下となるように充分に乾燥させることが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂との混練時に水蒸気による発泡が生じることを抑制することができる。
シーラントフィルム中のセルロースナノファイバーの含有量は、熱可塑性樹脂とセルロースナノファイバーの総質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が下限値未満であれば、優れた直線カット性が得られにくい。セルロースナノファイバーの含有量が上限値超であれば、熱可塑性樹脂中への分散性が悪くなったり、フィルムが脆くなるおそれがある。
本発明のシーラントフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、熱可塑性樹脂及びセルロースナノファイバーに加えて、熱可塑性樹脂及びセルロースナノファイバー以外の他の成分が含まれていてもよい。
他の成分としては、例えば、スリップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、フィラー等の各種添加剤が挙げられる。他の成分としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シーラントフィルムの厚さとしては、10~500μmが好ましく、15~300μmがより好ましく、20~200μmがさらに好ましい。シーラントフィルムの厚さが下限値未満であれば、製膜加工がしにくく、直線カット性の効果も少ない。シーラントフィルムの厚さが上限値超であれば、引裂くことが困難となるおそれがある。
シーラントフィルムの製造方法としては、特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂とセルロースナノファイバーとを溶融混練してマスターバッチ化し、得られたマスターバッチに必要に応じて他の成分を添加し、インフレーション法、Tダイ法、キャスト法等によりフィルム製膜を行う方法が挙げられる。溶融混練は、セルロースナノファイバーの分解や炭化を抑制するために、長時間200℃を超える温度に曝されないように行うことが好ましい。
フィルム製膜においては、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて一軸又は二軸延伸を行ってもよい。
以上説明した本発明のシーラントフィルムは、セルロースナノファイバーを含むことで、押出によるフィルム製膜時のMD方向において優れた直線カット性が得られる。また、直線カット性を得るために過度に延伸をかける必要もないため、充分なシール性も確保することができる。
セルロースナノファイバーを含むことで、押出によるフィルム製膜時のMD方向において優れた直線カット性が得られる要因としては、必ずしも明らかではないが、セルロースナノファイバーの微細な繊維がフィルム内でMD方向に配向する(並ぶこと)ことによりTD方向にズレにくくなり、MD方向にまっすぐ切れると考えられる。
[パウチ]
本発明のパウチは、本発明のシーラントフィルムからなるシーラント層を備えるパウチである。本発明のパウチは、本発明のシーラントフィルムからなるシーラント層を備える以外は、公知の態様を採用することができる。
以下、本発明のパウチの一例を示して説明する。
本実施例のパウチ1は、図1及び図2に示すように、積層フィルム2によって形成されたピローパウチである。パウチ1においては、積層フィルム2が筒状にされ、それらの側端部同士が最内層のシーラント層14が接した状態でヒートシールされて背貼り部3が形成されている。また、筒状にされた積層フィルム2の上部と下部がそれぞれヒートシールされて上部シール部4と下部シール部5が形成されている。
積層フィルム2は、図3に示すように、基材層10と、接着層12と、シーラント層14がこの順に積層されている。
基材層10としては、例えば、ナイロンフィルム;ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)等のポリエステルフィルム等が挙げられる。基材層10は、単層フィルムからなる層であってもよく、多層フィルムや2種以上のフィルムを接着剤等でラミネートしてなる層であってもよい。
基材層10の厚さは、特に限定されず、例えば、5~200μmとすることができる。
接着層12は、基材層10とシーラント層14とを接着する層である。接着層12を形成する接着成分としては、特に限定されず、基材層10及びシーラント層14の材質に応じて選択すればよい。接着成分の具体例としては、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。
シーラント層14は、本発明のシーラントフィルムからなる層である。
本実施形態においては、シーラント層14を形成するシーラントフィルムは、押出によるフィルム製膜時のTD方向がパウチ1の上下方向と一致し、MD方向が横方向と一致するようにする。これにより、例えばパウチ1の上部シール部4寄りの部分を横方向に直線的に引き裂いてパウチ1を開封することが容易になる。
積層フィルム2の製造方法は、特に限定されない。例えば、接着層12を形成する接着剤を用いたドライラミネートにより、基材層10とシーラント層14とを接着層12を介して積層することで、積層フィルム2が得られる。
以上説明したように、本発明のパウチにおいては、シーラント層に本発明のシーラントフィルムを用いているため、該シーラントフィルムのMD方向に沿って直線的に引き裂いて容易に開封することができる。また、シーラントフィルムには直線カット性を確保するための過度の延伸を施す必要がないため、充分なシール性を確保でき、密封性に優れているため、内容量が多く重い用途や、液体用途のパウチとして特に有用である。
なお、本発明のパウチは、前記したパウチ1には限定されない。
例えば、本発明のパウチは、基材層、接着層及びシーラント層以外の層を備える積層フィルムを用いて製袋されたパウチであってもよい。具体的には、例えば、基材層のシーラント層側にバリア層を有する積層フィルムを用いて製袋したパウチであってもよい。バリア層としては、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔等の金属箔層や、原子層堆積法(ALD(Atomic Layer Deposition)法)で成膜された、金属酸化物、金属窒化物または金属炭化物等の透明セラミック膜からなるガスバリア層等が挙げられる。
また、本発明のパウチは、ピローパウチには限定されず、例えば、2枚の積層フィルムをシーラント層が向かい合うように重ね合せて四方シールして製袋したパウチであってもよく、1枚の積層フィルムを二つ折りにして三方シールして製袋したパウチであってもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
(シーラントフィルムの製造)
パルプを2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル(TEMPO)により処理し、平均直径10nm、平均長さ10μmのサイズにしたセルロースナノファイバー(CNF)を乾燥し、乾燥CNF試料(水分率0.5%)とした。二軸押出機を用いて、乾燥CNF試料を濃度が5質量%となるように直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、プライムポリマー社製、SP2530S)と190℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。前記樹脂組成物を用い、Tダイ法により200℃で厚み50μmのシーラントフィルムを製膜した。
(パウチの製造)
次いで、ドライラミネート用接着剤(三井化学社製、商品名「A626/A5」)を用いたドライラミネートにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、厚さ12μm)とナイロンフィルム(NY、厚さ15μm)の多層フィルムのNY側にシーラントフィルムを積層し、PET(12μm)/NY(15μm)/シーラントフィルム(50μm)の積層フィルムを得た。該積層フィルム2枚を、シーラントフィルムを内側にして重ね、下部及び両側の側部の三方をヒートシールして横100mm×縦150mmサイズのパウチを作製した。ヒートシール条件は、シール温度を180℃、シール時間を3秒、シール圧力を0.3MPaとした。
[実施例2]
低密度ポリエチレンの代わりにポリプロピレン(ランダムポリプロピレン、プライムポリマー社製、商品名「F329R」)を用いた以外は、実施例1と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、該シーラントフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製した。
[実施例3]
星光PMC社製「T-NC」(セルロースナノファイバーとLLDPEが混練されたマスターバッチ(セルロースナノファイバー濃度40質量%))」を直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、プライムポリマー社製、SP2530S)と190℃で溶融混練して、セルロースナノファイバー濃度5質量%濃度の樹脂組成物を得た。前記樹脂組成物を用い、Tダイ法により200℃で厚み50μmのシーラントフィルムを製膜した。また、該シーラントフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製した。
[実施例4]
セルロースナノファイバーの濃度を10質量%に変更した以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物を調製してシーラントフィルムを製膜した。また、該シーラントフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製した。
[比較例1]
直鎖状低密度ポリエチレンに乾燥CNF試料を混練しなかった以外は、実施例1と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、該シーラントフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製した。
[比較例2]
ポリプロピレンに乾燥CNF試料を混練しなかった以外は、実施例1と同様にしてシーラントフィルムを得た。また、該シーラントフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてパウチを作製した。
[シーラントフィルムの直線カット性]
各例のシーラントフィルムのMD方向の端部にノッチを形成し、手でMD方向に長さ100mm切り裂き、100mm切り裂く間における前記ノッチからMD方向に沿った直線からのカットラインのずれ(mm)を測定した。
[シーラントフィルムの直線カット性評価(トラウザー法:JIS K7129)]
JIS K7129に準拠し、各例のシーラントフィルムの直線カット性を測定した。
[パウチの直線カット性]
各例のパウチにおけるシーラントフィルムのMD方向の端部にノッチを形成し、手でMD方向に長さ100mm切り裂き、MD方向に沿った直線からのカットラインのずれ(mm)を測定した。
[パウチのシール強度]
各例のシーラントフィルムから幅15mmの試験片を切り出し、該試験片を用いてJIS Z0238に準拠し、引張速度300mm/分の条件でシール強度(N/15mm)を測定した。
各例のシーラントフィルムの組成と評価結果を表1に示す。
Figure 0007135276000001
表1に示すように、シーラントフィルムにセルロースナノファイバーを含有させた実施例1~4では、シーラントフィルム及びパウチのいずれについても直線カット性に優れており、またシール強度も高く充分なシール性も確保されていた。
一方、セルロールナノファイバーを用いていない比較例1、2では、直線カット性が劣っていた。
1・・・パウチ
2・・・積層フィルム
3・・・背貼り部
4・・・上部シール部
5・・・下部シール部
10・・・基材層
12・・・接着層
14・・・シーラント層

Claims (3)

  1. 熱可塑性樹脂と、セルロースナノファイバーとを含有する押出フィルムからなるシーラントフィルム。
  2. 前記熱可塑性樹脂の融点が200℃以下である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
  3. 請求項1又は2に記載のシーラントフィルムからなるシーラント層を備えるパウチ。
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