JP7133896B2 - 座席部材 - Google Patents

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この発明は、座席部材に関するものであって、更に詳しくは、空調用空気を座席内部と着座面や背凭れ面との間で流通させることにより、着座者に快適な冷房感覚や暖房感覚を付与し得る座席部材に関する。
例えば、乗用車等の車両に設けたエアコンディショナー(以下エアコンという)は、車内の温度を外気温に対して調節することにより、乗員に快適な温度環境(冷房や暖房)を与えるようになっている。このエアコンにおける冷風や温風の吹出口(ルーバー)は、一般にインストルメントパネルに設けられ、乗員は間接的に冷房温度や暖房温度を体感するものである。
しかし高級な車種等によっては、温度調節された空気を座席部材の着座面や背凭れ面から吹き出させることで、着座者に冷房(または暖房)温度を直接感じさせるようにしたものがある。例えば、特開2005-95343号公報の図2および図3には、配風通路41を持つ成形体6をクッションパッド本体5に埋設した空調シートが開示されている。なお、前述した温度調節された空気を座席から吹き出すのではなく、逆に該空気を座席に吸い込むことで着座者に冷涼感を与えるようにした座席部材も存在する。また、本明細書に云う座席部材は、着座部となるシートクッションおよび背凭れ部となるシートバックの何れか、または着座部と背凭れ部との両方を指すものとする。
特開2005-95343号公報
前述した温度調節された空気を着座部や背凭れ部に吹き出す(吸い込む場合もある)機能を備えた座席部材(所謂空調シート)は、エアコンから送り出される調温空気を座席部材の着座面や背凭れ面へ案内する溝状のダクトを該座席部材の内部に設ける必要がある。このダクトは、前記の特開2005-95343号公報の段落〔0023〕に開示されている如く、弾性変形可能な樹脂シートを吹き込み成形法などで袋状の成形体6とし、内部に配風通路41を設けるようにしたものである。しかし、前記ダクトは、着座者の体重およびその変動を受けても変形しないように剛性を持たせる必要があり、必然的に該ダクトが組み込まれる座席部材の重量も増大する。そこで最近は、別体として成形した前記ダクトを組み込むのではなく、所謂ダクト機能を果たす通風用の溝部をシートクッションに一体発泡で形成したり、配風溝を別部材で蓋をしたりすることで、軽量化とコストの低減とを図った座席部材が普及している。
例えば、図9はポリウレタン等を原料とする発泡軟質部材からなる座席シート11を意匠面側から横断して示す斜視図であり、図6は図9のA-A線断面図である。前記シート11の内部には調温された空気を通過させるダクト溝13が一体発泡成形してあり、このダクト溝13の裏側は裏面材(蓋体)15により蓋がなされている。また図7は、座席シート11を発泡成形する際に、該シート11の裏側に大きく配風溝(ダクト溝)13を形成すると共に、着座面側に開口する吐出孔17を前記配風溝13に連通させたものである。この場合も、前記配風溝13の裏側に開口する部位はフェルト等の裏面材15で覆ってある。更に図8は、座席シート11の内部に配風溝13を一体成形すると共に、該配風溝13を着座面の側において発泡軟質部材やスラブからなる裏面材15で覆うようにしたものである。この場合は、裏面材15に前記配風溝13と連通する吐出孔17を開設することで、調温空気を該吐出孔17から着座面側へ吹き出させる。
ところで、座席部材の軽量化とコストの低減とを図るために、ウレタンフォームの如き発泡軟質部材の肉厚を、座席に要求される諸性能を担保しながら、なるべく薄くする試みがなされている。この場合は、座席部材の嵩上げ材として機能するインサート材を使用し、該インサート材と前記発泡軟質部材とを一体に成形した座席部材を製造している。このインサート材(嵩上げ材)としては、発泡ポリプロピレン(EPP)や発泡ポリスチレン(EPS)、その他ポリプロピレンとポリオレフィンとをブレンドした複合樹脂等の発泡硬質部材が選択的に使用され、前記発泡軟質部材と金型内で一体発泡されて前記座席部材が得られる。しかし、図6~図8に述べたような配風溝をシートクッションに一体的に発泡成形すると、クッション部を形成する発泡軟質部材を薄肉化して、該シートクッションを軽量化することができない。
本発明の目的は、例えばウレタンフォームのような発泡軟質部材をシートクッションとする座席部材において、軽量化のため該シートクッションを薄肉化する要請の下で、別体として形成したダクトをクッション内に埋め込む必要がなく、しかもクッションに配風溝を一体成形した際に、使用者の体重により該配風溝が潰れて変形して所期の通過風量が得られなくなることのない座席部材(空調シート)を提供することにある。
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため第1の発明は、
着座面側に設けられる発泡軟質部材と、該発泡軟質部材の裏面に設けられる発泡硬質部材とを一体成形してなる座席部材において、
前記発泡硬質部材は、内部に空調用空気の通路を備えると共に、該空調用空気の通路に連通して該発泡硬質部材の一方に開口する第1通孔および該空調用空気の通路に連通して該発泡硬質部材の他方に開口する第2通孔を備え、
前記発泡軟質部材は、前記空調用空気の通路に前記第2通孔を介して連通すると共に、前記着座面側に開口する第3通孔を備えていることを要旨とする。
この構成によれば、インサート材としての発泡硬質部材と発泡軟質部材とを一体成形した座席部材には、該発泡硬質部材の内部に配風溝が形成されているために、全体としての軽量化およびコスト低減が図られながらも、ダクトとして機能する前記配風溝が着座者の体重により変形したり潰れたりすることがなく、従って円滑に調温空気を供給することができる。
第2の発明では、前記発泡硬質部材は、前記座席部材の裏面側になる第1半体および前記発泡軟質部材の側になる第2半体からなり、前記第1半体に前記第1通孔が設けられると共に、前記第2半体に前記第2通孔が設けられ、前記空調用空気の通路は少なくとも前記第1半体または第2半体の何れかに設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、前記配風溝が形成される発泡硬質部材は予め2つの半体に分割されていて、これら半体の一方または双方に溝を形成した上で両半体を重ね合わせることで前記配風溝が簡単に得られる。
第3の発明では、前記発泡硬質部材は、発泡ポリプロピレンまたは発泡ポリスチレン乃至ポリスチレン・ポリオレフィン複合発泡材料を材質とし、前記発泡軟質部材は前記発泡硬質部材に一体成形される発泡ポリウレタンであることを要旨とする。
第4の発明では、前記座席部材の前記着座面側は通気性のある表皮材で被覆され、前記発泡軟質部材に設けた第3通孔が前記表皮材の通気性部分と連通して空調用空気が流通することを要旨とする。
この構成によれば、前記座席部材の着座面側には第3通孔が開いているので、配風溝(ダクト)からの調温空気が通気性を有する表皮材を介して着座部へ供給される。
第5の発明では、前記発泡硬質部材が備える前記第1通孔は、外部の空調用空気の吸排気源に接続されていることを要旨とする。
本発明によれば、別体としてのダクトを使用する必要がなく、しかも内部に形成した配風溝は着座者の体重によって容易に変形したり潰れたりすることがない座席部材が得られ、かつ軽量化および製造コストの低減が併せて図られる。
本発明の実施例に係る座席部材の一部横断面図である。 図1に示す座席部材を各部材別に分離状態で示す一部横断面図である。 (a)~(g)は、本発明に係る座席部材における発泡硬質部材の変更例を示す一部横断面図である。 本発明に係る座席部材を製造するのに使用する金型の横断面図であって、上型を開放させた状態で示している。 図4に示す金型の横断面図であって、上型を下型に対して閉成した状態を示している。 図9をA-A線で切断したものであって、配風溝を一体発泡成形した従来技術に係るクッションシートの概略横断面図である。 配風溝が裏側に一体形成されると共に、該配風溝を裏側から蓋材で蓋をした従来のクッションシートの概略横断面図である。 配風溝が表側に一体形成されると共に、該配風溝を表側から蓋材で蓋をした従来のクッションシートの概略横断面図である。 本発明の実施例に係る座席部材の意匠面を横断面で示す斜視図である。
次に、本発明に係る座席部材の好適な実施例を、図面を参照して説明する。実施例の座席部材は、先に述べたインサート材としての発泡硬質部材に配風溝としての通路を形成して剛性を確保し、かつ該インサート材にシートクッションとなる発泡軟質部材を一体的に発泡成形して得たものである。
例えば、図1および図2に示すように、座席部材10におけるインサート材としての発泡硬質部材14には、配風溝としての通路18が形成されており、該座席部材10に加わる使用者の体重は主として該発泡硬質部材14が受けるようになっている。また、前記発泡硬質部材14は、ウレタンフォームのような発泡軟質部材12により上から包み込むようにして一体発泡されることで、前記座席部材10が成形されている。そして、前記発泡硬質部材14に形成した第1通孔20は前述した空調用空気を送り出すエアコンの送気口に接続されて、該空気が該第1通孔20を介して前記通路18に供給される。また前記発泡硬質部材14の着座面に指向する側には適宜数の第2通孔22が開設されており、前記発泡軟質部材12を発泡成形する際に同時に該発泡軟質部材12に成形される適宜数の第3通孔24は、前記第2通孔22と対応的に連通接続するようになっている。従って、エアコンから送り出された調温空気は前記第1通孔20を介して前記発泡硬質部材14に画成した通路18へ流入し、夫々の前記第2通孔22および前記第3通孔24を介して前記座席部材10の着座面の側へ送り出される。なお、図1に示すように、前記座席部材10の着座面は通気性を有する表皮材23により覆われているので、前記発泡軟質部材12の第3通孔24から吹き出される調温空気は、該表皮材23の通気孔を介して着座者に接触する。なお、前記表皮材23としては、例えば、通気性のある織物、立体織物、立体編物あるいは不織布等が使用される。この表皮材23の裏面には、裏打ち材として通気性パッドが積層されて、シートクッションを覆うトリムカバーになる。
ここで前記発泡硬質部材14は、ビーズ発泡成形体である。具体的には、発泡ポリプロピレン(EPP)または発泡ポリスチレン(EPS)もしくは、ポリスチレンとポリオレフィンとをブレンドした複合樹脂を材質としてもよい。前記発泡ポリプロピレン(EPP)には、(株)カネカ製の商品名:エペラン-PPがある。また、発泡ポリスチレン(EPS)には、(株)カネカ製の商品名:カネパール、発泡ポリエチレンには、(株)カネカ製の商品名:エペラン等が市販されている。前記複合樹脂には、発泡ポリエチレン共重合ポリスチレン樹脂(積水化成品工業(株)製の商品名:ピオセラン)がある。
また前記発泡軟質部材12は、前記発泡硬質部材14と一体に発泡成形される発泡ポリウレタンを使用することが推奨される。
図1に示す座席部材10を、図2に分解状態で示す。ここで前記発泡硬質部材14は、上下に分割される第1半体26および第2半体28からなる。すなわち前記発泡硬質部材14の下部を構成する前記第1半体26は適宜の個所に前記第1通孔20が形成されており、この第1通孔20は前記エアコンの調温空気の吹出口(図示せず)に接続される。また、前記発泡硬質部材14の上部を構成する前記第2半体28には、前述した配風溝としての通路18が所要の長さで形成されていて、前記第1半体26と合体することで、該通路18は閉成されるようになっている。なお、前記第1半体26に形成した前記第1通孔20は、前記第2半体28に第1半体26を重ねて前記通路18の開放部を閉成したときに、該通路18に相互に連通するよう予め位置設定がなされている。
前記第2半体28の上面(前記第1半体26により塞がれない側の面)には適宜数の前記第2通孔22が形成されて、夫々の第2通孔22は前記通路18に連通している。従って、第1半体26と第2半体28とを合体させた後の前記発泡硬質部材14には、その内部に前記通路18が画設されていると共に、該発泡硬質部材14の下面には前記第1通孔20が開口し、また上面には前記第2通孔22が開口していることになる。そして図1および図2に示すように、前記発泡硬質部材14に一体発泡成形される前記発泡軟質部材12には、該発泡硬質部材14に形成した前記第2通孔22と対応的に連通する第3通孔24が形成されている。従って、前記発泡硬質部材14と発泡軟質部材12とを一体発泡成形して製造される前記座席部材10の着座面には、前記第3通孔24が多数存在していることになる。そして、前記座席部材10は通気性を有する前記表皮材23により被覆されるため、着座者に前記エアコンからの調温された空気が供給される。
前述した図1および図2に示した第1半体26および第2半体28を合体させた前記発泡硬質部材14は、前記通路18が第2半体28の底面に形成される例であった。しかし、前記通路18は第1半体26にも併設するようにしてもよい。例えば、図3(a)~(g)に示すように、第1半体26および第2半体28の夫々に対応的に通路18の半体部分を形成し、両半体26,28を重ね合わせることにより完成した前記通路18を最終的に形成するようにしてもよい。また、第1半体26および第2半体28の重ね合わせ面は必ずしも平坦でなくても良く、図3(c)に示すように、密着的に重ね合わされるのであれば、分割面が平坦でなく段部になっていてもよい。なお、図3(a)~(g)では、前記第1通孔20は省略してある。
図1において前記発泡軟質部材12は、所定形状に形成済みの前記発泡硬質部材14に金型内で一体的に発泡成形されるものであって、前記第3通孔24は該金型での発泡時に同時に成形される。この第3通孔24を成形する工程を、図4および図5を参照して説明する。図4および図5に示す金型35は、下型34と、該下型34に対し開閉自在にヒンジ部29で軸支した上型30とからなる。前記上型30の内側に設けたキャビティ32には前記発泡硬質部材14がセットされて、前記第2通孔22を斜め下方の下型34に指向させている。また、前記下型34のキャビティ36は、図1に示す座席部材10における発泡軟質部材12に倣った形状に形成されている。そして前記下型34のキャビティ36には、前記発泡硬質部材14の第2通孔22に対応する位置に該第2通孔22の内側寸法と略一致する外側寸法の閉塞部材38が突出して設けられている。なお、前記発泡軟質部材12の原料Uは、上下型30,34を開放した状態で注入してもよいし、上下型30,34を閉じた状態で、前記上型30に別途設けた注入孔(図示せず)を利用して注入してもよい。
次いで図4に示すように、前記下型34に対し前記上型30を閉じると、前記閉塞部材38は前記発泡硬質部材14における各対応の第2通孔22に挿入される。この状態で前記発泡軟質部材12の原料Uを発泡させると、前記金型35の内部で前記発泡硬質部材14に発泡軟質部材12が一体成形される。このとき、前記閉塞部材38は発泡硬質部材14の第2通孔22に挿入されているので、前記キャビティ32を開放して成形済みの前記座席部材10を取り出すと、該座席部材10の発泡軟質部材12には前記閉塞部材38の抜け跡として前記第3通孔24が形成されている。
10 座席部材,12 発泡軟質部材,14 発泡硬質部材,18 通路,
20 第1通孔,22 第2通孔,23 表皮材,24 第3通孔,26 第1半体,
28 第2半体

Claims (4)

  1. 着座面側に設けられ肉厚の異なる部位を有する発泡軟質部材と、該発泡軟質部材において肉厚が薄く形成されている部位の裏面に設けられるインサート部材とを一体成形してなる座席部材において、
    前記インサート部材は、発泡硬質部材として第1半体と第2半体とを重ね合わせるようにして形成されており、少なくとも何れかの発泡硬質部材の重ね合わせ面側に形成した配風溝としての通路の開放部を、重ね合わせた発泡硬質部材で閉じることで内部に空調用空気の通路を備えるよう構成されていると共に、
    前記インサート部材の下部を構成する発泡硬質部材に、前記空調用空気の通路に連通する第1通孔が重ね合わせ面と反対側に設けられると共に、当該インサート部材の上部を構成する発泡硬質部材に、前記空調用空気の通路に連通する第2通孔が重ね合わせ面と反対側に設けられており、
    前記発泡軟質部材は、前記空調用空気の通路に前記第2通孔を介して連通すると共に前記着座面側に開口する第3通孔を備えている
    ことを特徴とする座席部材。
  2. 前記発泡硬質部材は、発泡ポリプロピレンまたは発泡ポリスチレン乃至ポリスチレン・ポリオレフィン複合発泡材料を材質とし、前記発泡軟質部材は前記発泡硬質部材に一体成形される発泡ポリウレタンである請求項1記載の座席部材。
  3. 前記座席部材の前記着座面側は通気性のある表皮材で被覆され、前記発泡軟質部材に設けた第3通孔が前記表皮材の通気性部分と連通して空調用空気が流通する請求項1または2記載の座席部材。
  4. 前記発泡硬質部材が備える前記第1通孔は、外部の空調用空気の吸排気源に接続されている請求項1乃至の何れか一項に記載の座席部材。
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