JP7131592B2 - 自動車用構造部材及び自動車用中空部材の補強方法 - Google Patents
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ここで、衝突の形態としては、軸圧壊する衝突形態と、曲げ変形する衝突形態とがある。軸圧壊する衝突形態では、自動車前面から入力される衝突荷重を受けるクラッシュボックスやフロントサイドメンバのように、部材の長手方向が衝突方向と一致して軸圧壊が発生する。曲げ変形する衝突形態では、側面衝突におけるBピラーやサイドシルのように、構造部材の側面に衝突荷重が負荷されて部材が曲げ変形する。両方の形態は、いずれも、部材が座屈変形することで衝突エネルギーを吸収し、耐衝突性能を発揮する。
またこのような方法では、特に、広い領域を補強部材で補強するにつれて、重量増加が顕著となる。また耐衝突性能の観点から、構造部材や補強部材には高強度鋼板が適用される傾向にあるため、寸法精度の確保や溶接性の低下など、生産性やコスト面に課題がある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、補強による重量の増加を抑えつつ、簡便に耐衝突性能を向上させることが可能な自動車用構造部材を提供することを目的とする。
課題解決のために、本発明の一態様は、天板部の両側にそれぞれ側壁部及びフランジ部が連続する断面ハット形状からなる2つのハット断面部材における、フランジ部同士を接合して閉断面形状を構成する中空部材と、上記2つのハット断面部材のうちの少なくとも一方のハット断面部材における、対向する2つの側壁部の各外壁面にそれぞれ直接に当接する一対の板材と、上記一対の板材を連結して上記一対の板材間の距離が広がることを拘束する連結部材と、を備え、上記板材は、他の構造部材と非連結状態である、を備えることを要旨とする。
すなわち、本発明の態様によれば、構造部材の対向する2つの側壁部を挟むように、側壁部の両外側に当接する一対の板材を連結部材で連結させる。これによって、本発明の態様によれば、衝突時の部材断面変形を抑制し、特に曲げ変形における最大荷重を向上させることが可能となる。
また、本発明の態様によれば、例えば、高強度化による溶接性の低下を懸念し、溶接による接合手法を回避しつつ、簡便な手法で衝突性能を向上させることが可能となる。更に、本発明の態様によれば、プレスや曲げなどの加工によって得られる補強部材を用いないため、部品点数の増加による重量増加や、金型増加によるコスト増加を避けるという効果もある。
本実施形態では、図1及び図2に示すような天板部10A、11Aの両側にそれぞれ側壁部10B、11B及びフランジ部10C、11Cが連続する断面ハット形状からなる2つのハット断面部材10、11について、フランジ部10C、11C同士を接合して閉断面形状を作成して中空部材とする。その中空部材を、補強すべき自動車用構造部材1(以下、単に構造部材1とも記載する。)とする。フランジ部10C、11C同士の接合は、例えば、スポット溶接にて行われる。
各ハット断面部材10、11はそれぞれ、天板部10A、11Aの幅方向で2つの側壁部10B、11Bが対向配置している。
本明細書では、図1及び図2に示すように、2つのハット断面部材10、11の天板部10A、11A同士が上下で対向配置させた状態の姿勢で説明する。本実施形態では、上側のハット断面部材10、11側の天板部10A、11Aに対し構造部材1側方からの衝撃が入力しやすい場合とする。
また、図1その他の図面には、実施例における部材の寸法を併記しているが、この寸法は、本発明を何ら限定するものではない。
本実施形態では、上記のような形状の構造部材1に対し補強部材を設けることで、特に、曲げ変形する衝突形態について、構造部材1の耐衝突性能を向上させる。
一対の板材22は、対向する2つの側壁部10B、11Bの各外壁面にそれぞれ直接に当接する。すなわち、一対の板材22は、対向する2つの側壁部10B、11Bを挟んで対向配置している。図3では、下側のハット断面部材11を構成する2つの側壁部11Bの外壁面に各板材22が当接した場合の例である。
ここで、各板材22は、他の構造部材と非連結状態である。すなわち、各板材22は、本実施形態の自動車用構造部材1だけに連結しており、当該自動車用構造部材1を他の構造部材に連結する役割を有しない。すなわち、各板材22は、自動車用構造部材1以外の構造部材との関係ではフリーな状態となっている。軸部材20及びナット部材21も、同様である。
軸部材20は、対向する2つ側壁部11B間の距離よりも長く、軸方向両端部にそれぞれ雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、例えば側壁部10B、11Bよりも内側の位置から先端20aに向けて形成されている。
ここで、板材22は、側壁部11Bの外面に当接する面積が、板材22に当接するナット部材21の面積よりも大きい方が好ましい。また、ナット部材21の面が大きい場合には、ナット部材21自体を板材22の代わりとしても良い。
また、対向する2つ側壁部11Bに、軸部材20を貫通可能な貫通穴が同軸に開口している。
そして、各側壁部11Bから外方に突出した各軸部材20の端部(雄ねじ部)に対し、ワッシャ部材が取り付けられていると共に、ナット部材21が螺合している。そして、ナット部材21を締め付けることで、各板材22を構成するワッシャ部材は側壁部11Bの外面に当接する。ナット部材21からはみ出す軸部材20の端部の部分は、予め切断、若しくはナット部材21を締め込んだ後に切断してもよい。
例えば、軸部材20を長軸のボルトから構成して、ボルトの頭を、一方のナット部材21(又は板材22)の代わりとしても良い。
また、図5に示すように、軸部材20の一端部に片方のワッシャ部材と同形状の板材22が予め固定されている軸部材20を使用しても良い。また、左右のナット部材21のうちの一方のナット部材21が、ワッシャ部材に固定又は一体に形成されていても良い。
また、図3では、構造部材1の長手方向(延在方向)の一カ所だけに上記構成の補強部材を設ける場合が例示されているが、これに限定されない。構造部材1の長手方向や高さ方向に沿って、側壁部10B、11Bにおける複数の箇所に、上記構成の補強部材を取り付けても良い。
また、ハット断面部材10、11の高さに関係なく、一対の板材22(ワッシャ部材)を設ける位置は、側壁部10B、11Bにおけるフランジ部10C、11Cとの境界位置から天板部10A、11Aの方向に向けて20mm以内の側壁部10B、11B領域に、板材22の少なくとも一部が入るように当該板材22を配置することが好ましい。
後述のように、2つのハット断面部材10、11の合わせ部側に補強部材を設けた方が、より効果的に補強できるからである。
ハット断面部材10、11の高さが高い場合には、20mmよりも広い領域に側壁部10B、11B領域を設定しても、補強部材を設けることによる補強が効果的に奏するからである。
又は、一対の板材22を設ける位置は、例えば、2つの天板部10A、11Aの対向方向に向かう衝突荷重が負荷される可能性が高いと推定される天板部10A、11Aにおける面位置に、予め設定した衝突荷重を負荷した際に側壁部10B、11Bが変形する変形領域に、板材22の中心位置(軸部材20の位置)が位置するように配置する。
また、変形領域の特定は、例えば、FEM解析によって、部材の変形位置を解析して求める。予め設定した衝突荷重は、構造部材1を使用する位置で耐衝突性能として要求される許容の衝突荷重を採用する。
すなわち、軸部材20は引張力を受ける部材であるので、その分、補強部材の軽量化が可能である。
例えば、構造部材1を作製後に、簡易に、補強部材で補強を行うことが可能となる。
なお、軸部材20の端部に対し各板材22を溶接にて固定しても良いが、螺合による取付けの方が簡易な構造となる。
更に、本実施形態によれば、プレスや曲げなどの加工によって補強部材を設けないため、部品点数の増加による重量増加や、金型の増加によるコスト増加を避けるという効果もある。
例えば、ハット断面部材10に変形を誘起する凹凸形状を付与する、あるいはハット断面部材10に対して、ハット断面部材11の板厚を厚くする、材料強度を高める、断面を大きくするなどのように設定をしても良い。
上下のハット断面部材10、11には、厚さ1.2mm、引張強度1180MPaの鋼板を使用した。
このときの荷重とストロークの関係は、図8示すような関係であり、ストローク量:38mm前後で最大荷重となっていた。
また、荷重が入力される上側のハット断面部材10、11では、荷重が負荷された部分が凹みながら潰れるように変形し、下側のハット断面部材10、11では、対向する側壁の上部が開くように変形していた。
[実施例1]
実施例1では、荷重位置の下方位置における、下側のハット断面部材10、11に対して、図3のように補強部材を設けた、補強部材を構成するネジ棒及びナット部材21には、M6のSS400からなる鋼材を使用した。板材22には、SS400からなる鋼材をした。板材22の寸法は、図4のように、側壁部10B、11Bよりも厚い板材22とした。板材22は、側壁部10B、11Bよりも曲げ剛性が高くなるように設定することが好ましい。
そして、補強部材を設けた本発明例(No.1)と、補強部材を設けない比較例(No.2)について、荷重-ストロークの関係を求めた。その結果を、表1及び図10に示す。
表1から分かるように、本発明に基づく補強部材を設けない場合には、最大荷重は28.9[kN]であったが、本発明に基づく補強部材を設けた場合には、最大荷重が38.5[kN]と向上していることが分かった。また、実施例1の方が、荷重がピークとなるストローク量も増加したことが分かった。すなわち、吸収エネルギーが増大することが分かった。
次に、パンチ30による荷重負荷位置と板材22の取付け位置(板材22の中心位置(軸部材20の軸位置))を、表2のように変更して、最大荷重を求めてみた。求めた最大荷重についても表1に併せて示す。
表1中、No.1が上記の実施例1に対応する。
表2から分かるように、側面視で、荷重負荷の近傍に板材22を設けることで、比較例に比べ最大荷重が向上していることが分かる。また、No.1~No.5から分かるように、上下のハット断面部材10、11の合わせ面位置近傍(両フランジ部近傍)の方が、最大荷重が高かった。また、No.6、7のように、荷重が負荷された位置から100mm長手方向に変位した位置に補強部材を設けても、No.1と同等の補強がなされていることが分かった。
これから、合わせ面中央から、上下左右用に20mm以内の側壁部10B、11B領域、好ましくは15mm以内の側壁部10B、11B領域に板材22の一部が位置するように設定することで、補強部材による補強が有意に有効であることが分かった。
なお、このことは、ハット断面部材の高さを100mmにした場合であっても有効であったことを確認している。
更に、図12のように補強部材を2つ設けた場合(No.3、4)、及びボルトと板材22の大きさを変更した場合(No.5)について、最大荷重を求めてみた。No.7は、各ハット断面部材において、左右の側壁部10B、11B間の高さの差が10mmとした場合である。また、No.6は、板材22の幅(図11のx軸方向)をNo.1よりも広くした場合である。
板材22の条件及び最大荷重を表3に示す。
また、No.5の板材22を図13に示す。
なお、表3中のNo.1、2は表2のNo.1,2と対応する。
特にパンチにより衝撃が加えられる箇所の近傍の断面変形を拘束するNo.3、5、7は衝突時の荷重が増加することが分かった。
10、11 ハット断面部材
10A、11A天板部
10B、11B側壁部
10C、11Cフランジ部
20 軸部材(連結部材)
21 ナット部材(連結部材)
22 板材
Claims (7)
- 天板部の両側にそれぞれ側壁部及びフランジ部が連続する断面ハット形状からなる2つのハット断面部材における、フランジ部同士を接合して一つの閉断面形状を構成する中空部材と、
上記2つのハット断面部材のうちの少なくとも一方のハット断面部材における、対向する2つの側壁部の各外壁面にそれぞれ直接に当接する一対の板材と、
上記一対の板材を連結して上記一対の板材間の距離が広がることを拘束する連結部材と、
を備え、
上記板材は、他の構造部材と非連結状態である、
ことを特徴とする自動車用構造部材。 - 上記2つのハット断面部材は、他方のハット断面部材の高さが、一方のハット断面部材の高さよりも低く、且つ一方のハット断面部材の高さの0.5倍以上の高さである、請求項1に記載した自動車用構造部材。
- 上記一対の板材は、少なくとも上記他方のハット断面部材の対向する2つの側壁部の外面に設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載した自動車用構造部材。
- 上記連結部材は、上記天板部の幅方向に延在して上記対向する2つの側壁部及び上記一対の板材を貫通すると共に軸方向端部に雄ねじ部が形成された軸部材と、上記軸部材の雄ねじ部に螺合し上記側壁部の外壁面に上記板材を挟んで対向するナット部材と、からなり、上記板材は、ワッシャ部材である、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した自動車用構造部材。 - 上記連結部材は、一端部が上記一対の板材のうちの一方の板材と一体に構成され、上記天板部の幅方向に延在して上記対向する2つの側壁部及び上記一対の板材のうちの他方の板材を貫通すると共に上記他方の板材側の軸方向端部に雄ねじ部が形成された軸部材と、上記軸部材の雄ねじ部に螺合し上記側壁部に外壁面に上記他方の板材を挟んで対向するナット部材と、からなり、上記板材はワッシャ部材である、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した自動車用構造部材。 - 上記側壁部における上記フランジ部との境界位置から、上記フランジ部との境界位置から上記天板部との境界位置までの長さの50%以内の範囲の側壁部領域に、上記板材の少なくとも一部が入るように当該板材を配置することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した自動車用構造部材。
- 天板部の両側にそれぞれ側壁部及びフランジ部が連続する断面ハット形状からなる2つのハット断面部材におけるフランジ部同士を接合して一つの閉断面形状を構成した自動車用中空部材の補強方法であって、
軸方向両端部の少なくとも一方の端部に雄ねじ部が形成された軸部材と、上記軸部材の雄ねじ部に螺合可能なナット部材を用意し、対応する2つの側壁部に上記軸部材が貫通可能な貫通穴を開口し、その対をなす貫通穴に上記軸部材を貫通させ、側壁部から突出した上記軸部材の端部に対し、板材としてのワッシャ部材を取り付けると共に、ナット部材を螺合し締め付けることを特徴とする自動車用中空部材の補強方法。
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