JP7129823B2 - 土留め掘削の周辺地盤補強方法 - Google Patents
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Description
ところで、土留め掘削では、鋼矢板の周辺地盤の不安定化を招くヒービングやボイリングなどが発生する虞がある。土留め掘削において、ヒービングやボイリングなどが発生すると、鋼矢板の崩壊などが起き、その後の掘削作業が困難になるという問題がある。
即ち、地盤中に、鋼矢板を打設して、掘削する場所の周囲を鋼矢板で囲む。続いて、鋼矢板で囲んだ内側に、施工装置でロッドを地盤中に貫入する。このときのロッドの貫入深さは掘削底面より下の位置である。貫入後、ロッドの先端から薬剤を地盤中に注入しつつ、ロッドを掘削底面の位置まで引き抜く。これにより、鋼矢板の内側の掘削底面付近の地盤中に固結改良体を造成する。固結改良体の造成を、鋼矢板の内側に沿って複数の箇所で行うことで、鋼矢板の内側の掘削底面付近の地盤を補強する。このように鋼矢板の内側の掘削底面付近の地盤を補強することにより、掘削時のヒービングの発生を防止する。
即ち、鋼矢板の外側にも、施工装置でロッドを地盤中に貫入する。このときのロッドの貫入深さは鋼矢板の下端より下の位置である。貫入後、前述と同様、ロッドの先端から薬剤を地盤中に注入しつつ、ロッドを掘削底面の位置まで引き抜く。これにより、鋼矢板の下端付近の地盤中にも固結改良体を造成する。固結改良体の造成を、鋼矢板に沿って複数の箇所で行うことで、鋼矢板の下端付近の地盤を補強し、これによっても、掘削時のヒービングの発生を防止する。
即ち、地盤中に、鋼矢板を打設して、掘削する場所の周囲を鋼矢板で囲む。続いて、鋼矢板で囲んだ外側に、先端に水を流入するウェルポイントを取り付けた吸水パイプを、鋼矢板に沿って所定の間隔を空けて複数打ち込む。複数の吸水パイプを地上に配置した集水パイプを介して集水装置に連結する。集水装置は、地下水を吸引する真空ポンプやタンクなどを有する。これにより、集水装置の真空ポンプで吸水パイプの先端のウェルポイントより地下水を吸引すると、鋼矢板の外側の地下水位が下がる。鋼矢板の外側の地下水位を下げることで、鋼矢板の外側の地盤を補強する。このように鋼矢板の外側の地盤を補強することにより、掘削時のボイリングの発生を防止する。
第一実施形態に係る土留め掘削の周辺地盤補強方法(以下、単に本周辺地盤補強方法という)は、概略的には、土留め壁に地盤埋設ボード1を、その長手方向を土留め壁の長手方向に合わせて取り付けて、地盤埋設ボード1を土留め壁とともに地盤中に打設し、地盤埋設ボード1を用いて、土留め壁の周辺地盤を補強する方法である。これにより、土留め掘削において、土留め壁の崩壊などの掘削作業に支障を来すような問題が起きないようにする。
ここでは、土留め壁は、凸状のウェブ10aを有するU形の鋼矢板10である。ただし、土留め壁は、前記鋼矢板10に限らない。
図1は、本周辺地盤補強方法において用いる地盤埋設ボード1の斜視図である。図2Aは、地下水採取ボード1の正面図、図2Bは、地下水採取ボード1の側面図である。図3Aは、図2AのA-A断面図、図3Bは、図3AのB部の拡大図である。図4Aは、ガイド部材7の斜視図、図4Bは、別のガイド部材7の斜視図である。
地盤埋設ボード1は、図1に示すように、非通水性でかつ剛性が低い材料で形成されているとともに全体が細長い板状であり、その長手方向に延在する複数のホース状の長い孔2を備える。ここで、非通水性でかつ剛性が低い材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。ただし、これに限らない。
地盤埋設ボード1は、横幅方向の寸法(図2Aにおいて左右方向に示す)が3~30cm程度、板厚の寸法(図2Bにおいて左右方向に示す)が0.5~3cm程度である。ただし、寸法は、これに限らない。
また、地盤埋設ボード1は、その下端において折り返して、そこにアンカー5を取り付けている。
開口部6は、地盤埋設ボード1を構成する断面が凹凸状になる芯材3の凹状部ではシート材4に、または、芯材3の凸状部ではその凸状部とシート材4の両方に穴を空けることで形成される。開口部6は、図3Bに示すように、芯材3及びシート材4からなる地盤埋設ボード1の表裏面側のいずれか一方の面に設けて、長い孔2に連通する。ただし、開口部6は、これに限らず、芯材3及びシート材4からなる地盤埋設ボード1の表裏面側の両方の面に設けてもよい。なお、開口部6を設ける箇所は、地盤埋設ボード1を用いて行う作業に応じて決定される。
図5は、鋼矢板10に地盤埋設ボード1を取り付けた状態の平面図である。図6は、鋼矢板10に地盤埋設ボード1を取り付けた状態の内側から見た斜視図である。図7は、鋼矢板10に地盤埋設ボード1を取り付けた状態の外側から見た斜視図である。図8Aは、鋼矢板10を打設した状態の図、図8Bは、地盤中に薬剤Sを注入した状態の図、図8Cは、鋼矢板10で囲まれた内側を掘削した状態の図である。図9Aは、埋め戻し後に鋼矢板10を引き抜いた状態の図、図9Bは、空洞Cに薬剤Sを注入する状態の図、図9Cは、薬剤Sを注入して空洞Cを埋めた状態の図である。
なお、図8A、図8B、図8C、図9A、図9B、図9Cでは、鋼矢板10や地盤埋設ボード1などを概略的に示している。
本周辺地盤補強方法は、地盤埋設ボード1を、その長手方向を鋼矢板10の長手方向に合わせて鋼矢板10に取り付ける工程(以下、第1工程という)と、地盤埋設ボード1を取り付けた鋼矢板10を地盤中に打設する工程(以下、第2工程という)と、鋼矢板10に取り付けた地盤埋設ボード1を用いて周辺地盤を補強する工程(以下、第3工程という)と、を有する。
第1工程は、鋼矢板10を地盤中に打設する前に、地上において、鋼矢板10に地盤埋設ボード1を、その長手方向を鋼矢板10の長手方向に合わせて取り付ける工程である。地盤埋設ボード1の鋼矢板10への取り付けは、図5、図6、図7に示すように、鋼矢板10の中央部のウェブ10aの両面に、その長手方向に沿って地盤埋設ボード1を取り付ける。ただし、地盤埋設ボード1の取り付け箇所は、鋼矢板10のウェブ10aの両面に限らず、他の箇所に取り付けてもよい。
第2工程は、第1工程の後に、地盤埋設ボード1を取り付けた鋼矢板10を地盤中に打設する工程である。鋼矢板10は、土留め掘削において、掘削する場所を囲むように、その周囲に打設する。
即ち、第1工程で作製した地盤埋設ボード1を取り付けた鋼矢板10を複数用意し、図8Aに示すように、複数の鋼矢板10を地盤中に順次打設する。地盤埋設ボード1を取り付けた鋼矢板10の打設は、通常のバイブロハンマによる振動打ち込み工法あるいは油圧圧入機による圧入工法などで行う。なお、鋼矢板10の打設は、これらに限らず、その他の工法で行ってもよい。
第3工程は、第2工程の後に、鋼矢板10に取り付けた地盤埋設ボード1を用いて鋼矢板10の周辺地盤を補強する工程である。鋼矢板10の周辺地盤の補強は、地盤中に打設した鋼矢板10に取り付けた地盤埋設ボード1から地盤中に薬剤Sを注入し、注入した薬剤Sにより固結改良体Tを地盤中に造成して、地盤を補強する。
即ち、図8Bに示すように、鋼矢板10に取り付けた地盤埋設ボード1の各長い孔2に、薬剤供給装置(図示せず)から薬剤Sを流入する。流入した薬剤Sを、各長い孔2内に通して、長い孔2内から開口部6に流し、開口部6から地盤中に注入する。このとき、鋼矢板10の内側(掘削する側)に取り付けた地盤埋設ボード1では、鋼矢板10の内側の掘削底面B付近の地盤中に薬剤Sを注入して、ここに固結改良体Tを造成する。また、鋼矢板10の外側(掘削しない側)に取り付けた地盤埋設ボード1では、鋼矢板10の下端付近の地盤中に薬剤Sを注入して、ここに固結改良体Tを造成する。
第4工程は、地盤中から鋼矢板10を引き抜いた後に、鋼矢板10から取り外されて地盤中に残置している地盤埋設ボード1を用いて周辺地盤の安定化を行う工程である。すなわち、地盤中から鋼矢板10を引き抜いた後には、そこに空洞C(鋼矢板10の分)が生じる。空洞Cをそのままにしておくと、周辺の土砂が流れ込み地盤の変動が発生して、地盤沈下を招くという問題が生じる。そこで、地盤中から鋼矢板10を引き抜いた後の空洞Cに、地盤中に残置している地盤埋設ボード1から薬剤Sを注入し、注入した薬剤Sにより固結改良体Tを造成して、周辺地盤の安定化を行う。
即ち、第3工程で行った地盤中への薬剤Sの注入と同様、図9Bに示すように、地盤中に残置している地盤埋設ボード1の各長い孔2に、薬剤供給装置(図示せず)から薬剤Sを流入し、流入した薬剤Sを各長い孔2内に通して、長い孔2内から開口部6に流し、開口部6から地盤中の前記空洞Cに注入して、ここに固結改良体Tを造成する。これにより、図9Cに示すように、空洞Cに固結改良体Tを造成して(空洞Cを埋めて)地盤の安定化を行うことで、地盤沈下を招くなどの問題をなくす。
第二実施形態に係る土留め掘削の周辺地盤補強方法(以下、単に本周辺地盤補強方法という)も、第一実施形態と同様、鋼矢板10(土留め壁)に地盤埋設ボード1を、その長手方向を鋼矢板10の長手方向に合わせて取り付けて、地盤埋設ボード1を鋼矢板10とともに地盤中に打設し、地盤埋設ボード1を用いて、鋼矢板10の周辺地盤を補強する方法である。また、本周辺地盤補強方法において用いる地盤埋設ボード1も、第一実施形態と同様である。
なお、図12A、図12B、図12C、図12D、図13A、図13B、図13Cでは、鋼矢板10や地盤埋設ボード1などを概略的に示している。
本周辺地盤補強方法も、第一実施形態と同様、地盤埋設ボード1を鋼矢板10に取り付ける工程(第1工程)と、地盤埋設ボード1を取り付けた鋼矢板10を地盤中に打設する工程(第2工程)と、鋼矢板10に取り付けた地盤埋設ボード1を用いて周辺地盤を補強する工程(第3工程)と、を有する。
第1工程は、鋼矢板10を地盤中に打設する前に、地上において、鋼矢板10に地盤埋設ボード1を取り付ける工程である。地盤埋設ボード1の鋼矢板10への取り付け箇所は、図10に示すように、鋼矢板10の外側(掘削しない側)で、その取り付けは、第一実施形態と同様である。地盤埋設ボード1は、第一実施形態と同様、鋼矢板10に対して取り外し可能にする。また、地盤埋設ボード1に設ける複数の開口部6は、図11に示すように、地盤埋設ボード1の長手方向に所定の間隔を空けて設ける。
第2工程は、第1工程の後に、地盤埋設ボード1を取り付けた鋼矢板10を地盤中に打設する工程である。鋼矢板10は、土留め掘削において、掘削する場所を囲むように、その周囲に打設し、鋼矢板10の打設は、第一実施形態と同様、図12Aに示すように、複数の鋼矢板10を地盤中に順次打設する。
第3工程は、第2工程の後に、鋼矢板10に取り付けた地盤埋設ボード1を用いて、鋼矢板10の周辺地盤を補強する工程である。鋼矢板10の周辺地盤の補強は、地盤中に打設した鋼矢板10の外側に取り付けた地盤埋設ボード1により鋼矢板10の外側の地下水Wを吸引し、鋼矢板10の外側の地下水位を下げて、鋼矢板10の外側の地盤を補強する。
即ち、図12Bに示すように、鋼矢板10に取り付けた地盤埋設ボード1において、各長い孔2に連通した開口部6から鋼矢板10の外側の地下水Wを各長い孔2内に流入する。次に、地上に設置した真空ポンプ(図示せず)を用いて、各長い孔2内に流入した地下水Wを長い孔2を通して上方に吸引し、地上に排出する。これにより、鋼矢板10の外側の地下水位が下がる。
即ち、地盤埋設ボード1の取り付けは、図12Dに示すように、掘削されてその表面がでている鋼矢板10の内側で、中央部のウェブ10aの面に、その長手方向に沿って、第1の実施形態と同様に、つまり鋼矢板10のウェブ10aの面(地盤埋設ボード1の取り付け箇所)に、その長手方向に所定の間隔で複数固着した一対のL字形のフック11によって、地盤埋設ボード1を取り付ける。なお、地盤埋設ボード1の取り付け箇所は、鋼矢板10のウェブ10aに限らない。また、地盤埋設ボード1は、鋼矢板10に対して取り外し可能である。このように鋼矢板10の内側に地盤埋設ボード1を取り付けた後に、土砂の埋め戻しを行う。
(第4工程)
第4工程は、地盤中から鋼矢板10を引き抜いた後に、鋼矢板10から取り外されて地盤中に残置している地盤埋設ボード1を用いて周辺地盤の安定化を行う工程であり、第一実施形態と同様、地盤中から鋼矢板10を引き抜いた後の空洞Cに、地盤中に残置している地盤埋設ボード1から薬剤Sを注入し、注入した薬剤Sにより固結改良体Tを造成して、周辺地盤の安定化を行う。
即ち、図13Bに示すように、地盤中に残置している地盤埋設ボード1の各長い孔2に、薬剤供給装置(図示せず)から薬剤Sを流入し、流入した薬剤Sを各長い孔2内に通して、長い孔2内から開口部6に流し、開口部6から地盤中の空洞Cに注入して、ここに固結改良体Tを造成する。これにより、図13Cに示すように、空洞Cに固結改良体Tを造成して(空洞Cを埋めて)地盤の安定化を行うことで、地盤沈下を招くなどの問題をなくす。
図14Aは、外側に地盤埋設ボード1を取り付けた鋼矢板10を打設した状態の図、図14Bは、地盤中に薬剤Sを注入した状態の図、図14Cは、鋼矢板10にシールド掘進機20の発進用の開口部21を形成した状態の図である。
なお、図14A、図14B、図14Cでは、鋼矢板10や地盤埋設ボード1などを概略的に示している。
以上のように、本発明の土留め掘削の周辺地盤補強方法は、種々の土留め掘削の現場に適用することができる。
Claims (2)
- 土留め掘削において、土留め壁の周辺地盤を補強する土留め掘削の周辺地盤補強方法であって、
長手方向に延在する複数のホース状の長い孔を備え、複数の長い孔それぞれに連通する複数の開口部を設けるとともに、非通水性の材料で形成された板状の地盤埋設ボードを、その長手方向を土留め壁の長手方向に合わせて土留め壁に取り付ける工程と、
地盤埋設ボードを取り付けた土留め壁を地盤中に打設する工程と、
地盤埋設ボードの長い孔に連通した開口部から地盤中に薬剤又は硬化剤を注入して、固結改良体を地盤中に造成することにより周辺地盤を補強する、土留め壁に取り付けた地盤埋設ボードを用いて周辺地盤を補強する工程と、を有し、
地盤埋設ボードは、その長手方向の一端の下端に土留め壁の下端に下方より引っ掛かるアンカーを取り付け、土留め壁に対して下方に外れるようにし、土留め壁を地盤中に打設するときに、地盤埋設ボードを土留め壁とともに地盤中に打設し、地盤中から土留め壁を引き抜くときに、土留め壁から地盤埋設ボードが下方に外れて、地盤中に地盤埋設ボードを残置することを特徴とする土留め掘削の周辺地盤補強方法。 - 請求項1に記載された土留め掘削の周辺地盤補強方法において、
地盤中から土留め壁を引き抜いた後の空洞に、地盤埋設ボードの長い孔に連通した開口部から地盤中に薬剤又は硬化剤を注入して、固結改良体を造成して空洞を埋めることにより周辺地盤の安定化を行う、地盤中に残置した地盤埋設ボードを用いて周辺地盤の安定化を行う工程を有したことを特徴とする土留め掘削の周辺地盤補強方法。
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