JP7127527B2 - ダイカストマシンの射出装置および鋳造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、真空ポンプを用いてスリーブの内側を吸引するダイカストマシンが記載されている。
かかるダイカストマシンは、スリーブの内側および金型のキャビティを吸引するために第1~第4の吸引装置を備えている。スリーブの内側の吸引には第1吸引装置および第2吸引装置が用いられる。第1吸引装置は、アルミニウム合金等の溶湯が注入される注湯口の近傍でかつ注湯口よりも前方に位置する孔を通じてスリーブ内を吸引する。第2吸引装置は、プランジャのチップとプランジャロッドのフランジとの間のくびれ部とスリーブの内周面との間に形成される閉空間を吸引することにより、チップのくびれ部とスリーブの内周面との間の隙間を介してスリーブ内を吸引する。くびれ部により形成された閉空間の吸引は、プランジャロッドのフランジに軸方向に沿って形成された貫通孔を通じて行われる。
次いで、注湯口の近傍の孔がチップにより閉鎖される位置までプランジャが前進すると、第2吸引装置による吸引に移行する。第2吸引装置は、プランジャのくびれ部とスリーブの内周面との間に区画された閉空間をプランジャロッドのフランジの軸方向の貫通孔を通じて吸引することで、スリーブ内のチップよりも前方の空間を吸引する。
第2吸引装置による吸引を開始した後、第3吸引装置によりキャビティ内の吸引を開始する。
特許文献1の記載によれば、第1吸引装置によりキャビティ内がスリーブを介して吸引されるため、キャビティ内の真空度がスリーブ内の真空度よりも高くなることが防止され、これにより先湯の発生が抑制される。
「溶湯が暴れる」は、例えばスリーブの後端からプランジャとスリーブとの径方向の隙間を通じてチップよりも前方に外気が吹き込むことで、溶湯が泡立ち飛散したり、湯面が激しく揺れ動いたりすることを言う。こうした溶湯の暴れに起因して吸引用の経路が閉塞したり、吸引効率が低下したりすることなく、スリーブ内の気体を安定して吸引したい。
特許文献1に記載されたダイカストマシンについても、スリーブ内の吸引時に溶湯が暴れることで吸引用の孔や配管が閉塞するリスクがある。
「吸引用凹部の内側」は、チップとスリーブとの間に区画された空間を意味するものとする。
(ダイカストマシンの概略構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る射出装置1を備えたダイカストマシン100の概略側面図(一部に断面図を含む)である。
ダイカストマシン100は、可動金型22が設置された可動盤4と、固定金型21が設置された固定盤5と、可動盤4および固定盤5を支持するマシンベース8と、キャビティ23に向けて溶湯18を射出する射出装置1と、ダイカストマシン100の各部の動作を制御する制御装置3とを備えている。
可動盤4は、押出ピン42が取り付けられた押出板41を備えている。
スリーブ11の前端部は、固定盤5を貫通し、固定金型21に設けられた孔10と嵌合している。スリーブ11の後端側は、固定盤5の外側に突出し、後方に向けて水平方向に延びている。スリーブ11の後端側には、溶湯18が注入される注湯口13が設けられている。
スリーブ11の内側と、固定金型21の孔10とを含んで貯湯室が形成されている。この貯湯室は、ランナー24およびゲート25を介してキャビティ23に連通している。
溶湯18を射出する際にプランジャ12は前方に向けて移動し、射出後は、後方に向けて移動する。プランジャ12が前進および後退する方向(前後方向)のことを進退方向D1と定義するものとする。
プランジャ12の位置の検知は、一例として、油圧シリンダのストロークに対応してピストンロッドに設けられたマークを、非接触センサで検知することで行われる。
本実施形態のスリーブ11には、真空吸引系統2によりスリーブ11の内側の気体を吸引可能とするため、スリーブ11の内側と外側とに亘り貫通した2つの貫通部(吸引口)14,15がスリーブ11の軸方向(D1)に並んで配置されている。これらの貫通部14,15は、スリーブ11の内側に供給される溶湯18の湯面よりも上方に位置するように、スリーブ11の上部に形成されている。
貫通部14は、第1箇所C1から後方に離れた第2箇所C2でスリーブ11の周壁を厚さ方向に貫通している。
かかる真空吸引系統は、例えば、固定金型21と可動金型22との境界部に備えられたチルベント27(Chill‐Vent)に設けられている1以上の連結口28を通じて、キャビティ23から空気等の気体を直接的に吸引する。吸引される気体には、空気の他、溶湯や金型離型剤の蒸気等が含まれうる。
図2を参照し、スリーブ11の内側を吸引可能な真空吸引系統2の構成の一例を説明する。真空吸引系統2は、真空ポンプ37と、真空タンク36と、合流・分配部34と、スリーブ11の貫通部14,15に個別に対応する吸引経路51とを備えている。
各吸引経路51は、スリーブ11内から吸引される気体の流れの上流から下流に向けて、真空引き用の真空フィルタ31と、吸引経路51内の圧力を検出する圧力計、連成計、圧力センサ等である圧力検出部32と、貫通部14,15を選択的に真空タンク36に連通させる選択バルブ33とをこの順序で備えている。
貫通部14,15は、プランジャ12の進退方向D1における位置や、貫通部14,15からの吸引の状態等に応じて、真空タンク36と選択的に連通されることが好ましい。貫通部14,15にそれぞれ対応する選択バルブ33は、圧力検出部32により検出された吸引経路51内の圧力や、進退方向D1におけるプランジャ12の位置等に応じて開閉されるように、制御することができる。
貫通部14,15と、貫通部14,15のそれぞれの吸引経路51を、加圧された空気をスリーブ11の内側に噴出させるエアブロウを実施するための経路としても使用することができる。エアブロウにより、吸引経路51や貫通部14,15から溶湯カスを除去することができる。
エアブロウを行う加圧空気供給系統9(図2)は、加圧空気の供給源である圧縮空気源39と、圧縮空気源39により空気が送り込まれることで内部に圧力を蓄える加圧タンク38とを備えている。
本実施形態の真空吸引系統2および加圧空気供給系統9は、合流・分配部34よりも下流(真空吸引時の下流)に設置される真空/エアブロウ切換弁35を含んで構成されている。真空/エアブロウ切換弁35は、合流・分配部34の接続先を真空引きの配管55とエアブロウの配管56とに切り換えることで、真空吸引の実施とエアブロウの実施とを切り換える。
合流・分配部34よりも上流(真空吸引時の上流)の吸引経路51は、真空引き時とエアブロウ時とにおいて共通である。したがって、貫通部14,15への配管の付け替えにより鋳造品の生産が中断することなく、エアブロウと真空引きとを連続して行うことができる。
一部の選択バルブ33を閉めると、開いている選択バルブ33に対応する貫通部や吸引経路51におけるエアの流量が増加するので清掃効果が高まる。
したがって、以下に述べるように、プランジャ12の前進に伴い、貫通部14,15のそれぞれについて、プランジャチップ20の第2大径部202により閉鎖される位置にプランジャ12が到達した時点で、当該貫通部に対応する選択バルブ33を順次、閉めている。
つまり、プランジャ12の前進に伴い、貫通部14,15に対応する選択バルブ33が順次閉められる。
ステップS102では、注湯後、プランジャ12が前進して、注湯口13を閉鎖する位置を超えた後に、真空吸引系統2によりスリーブ11を真空に引く動作を開始する。プランジャ12の進退方向D1における所定の位置を、真空吸引が開始される真空開始位置として定めることができる。設定された真空開始位置へのプランジャ12の到達の検知は、プランジャ12を駆動する油圧シリンダのストロークを、非接触センサ等で検知することにより行う。以下のステップにおける各設定位置へのプランジャ12の到達についても、同様にして検知する。
ステップS104では、プランジャ12が、貫通部14(吸引口)を閉にする設定位置(図2/後方貫通部閉塞位置)に到達する。
ステップS105では、貫通部14に対応した選択バルブ33を閉にする。
ステップS107では、貫通部15に対応した選択バルブ33を閉にする。
ステップS108では、真空/エアブロウ切換弁35を、切(中立位置)にする。
ステップS109では、各貫通部14,15の選択バルブ33を、全て開にする。
ステップS110では、真空/エアブロウ切換弁35を、エアブロウに切り換える。
ステップS111では、真空吸引系統2と配管の一部が共通である加圧空気供給系統9により、加圧タンク38を使用し、貫通部を通じてスリーブ11内にエアを噴出させる処理であるエアブロウを行う。この際、各貫通部14,15の選択バルブ33が、全て開の状態でも良いし、選択バルブ33を、順に1個ずつ開にしても良い。エアブロウを終えたならば、真空/エアブロウ切換弁35を、切(中立位置)にする(S114)。
ステップS112では、エアブロウを実施している間に、圧力検出部32により貫通部14,15の各吸引経路51の圧力を測定し、その圧力に基づいて配管内や真空フィルタ31の目詰まりの有無について判定を行う。目詰まりが発生した場合は、ランプやブザーなどにより、警報を出す(ステップS113)。
真空吸引系統2(図2)により吸引されたスリーブ11内は、大気圧に対して負圧となる。そのため、スリーブ11の外側の大気である外気とスリーブ11内の気体との圧力差に基づいて、スリーブ11の後端のプランジャロッド19の周りの空間88の外気が、プランジャチップ20とスリーブ11との間の隙間を通じて、スリーブ11内の溶湯18が貯留された空間75に流入したならば、溶湯18が泡立ち飛散したり、湯面が激しく揺れ動いたりする。このように溶湯18が暴れたならば、それに伴い、スリーブ11内の溶湯18に由来する溶湯カスの量が増大する。また、溶湯18が暴れると、溶湯18に気体が巻き込まれ易い。
溶湯18の暴れを抑えることで溶湯18への気体の巻き込みが抑えられるため、巻き込み巣の発生が防止される。
プランジャロッド19は、チップジョイント20Dによりプランジャチップ20と締結されている。
この吸引用凹部120は、プランジャチップ20の全周に亘り連続しているため、スリーブ11の内周部11Aと、吸引用凹部120に対応する小径部203の外周部203Aとの間には、環状の横断面を呈する空隙が形成される。
そのため、前方空間75および吸引用凹部120に個別に真空吸引系統を備える場合と比べて、真空ポンプ37や真空タンク36等の装置コストを低減することができる。また、真空吸引系統の数が少ないことで、気体の漏れ(リーク)の点検箇所が少ないため、点検作業効率が良い。
さて、本実施形態の射出装置1は、進退方向D1におけるスリーブ11の第1箇所C1と第2箇所C2とにおいて、スリーブ11をそれぞれ貫通した貫通部14,15を通じてスリーブ11の内側を吸引可能であって、第1箇所C1における貫通部15の開口面積が、第2箇所C2における貫通部14の開口面積と比べて大きいことを主要な特徴とする。
前方貫通部15は、チップ20の前端20Aよりも前方の空間75の吸引に用いられる。後方貫通部14は、吸引用凹部120の内側の吸引に用いられる。
その他、前方貫通部15は、後方貫通部14に対してスリーブ11の軸方向(進退方向D1)に長い長円であってもよい。
例えば、1つの円形の孔からなる後方貫通部14に対して、後方貫通部14の孔と径が同じ2以上の円形の孔から前方貫通部15を構成することが可能である。この場合は、2以上の孔の集合が、前方貫通部15に相当し、前方貫通部15に、後方貫通部14の開口面積の2倍以上の開口面積を得ることができる。
前方貫通部15を構成する1以上の孔の合計の開口面積が、後方貫通部14を構成する1以上の孔の合計の開口面積よりも大きいならば、前方貫通部15および後方貫通部14のそれぞれに、適宜な数の孔を与えることができる。
そうすると、後方貫通部14を通じた吸引用凹部120の内側の吸引により前方空間75への外気の流入を抑えて溶湯18の暴れを防ぎ、それによって溶湯カスに起因する貫通部14,15や吸引経路51の閉塞や吸引効率の低下を避けながら、前方空間75の圧力を所望の真空度にまで減圧させて巻き込み巣の発生を抑えることができる。
図6を参照し、2つの貫通部14,15を用いて、前方空間75と吸引用凹部120の内側とを吸引しつつ行われるスリーブ真空吸引の過程の一例を説明する。
本実施形態では、スリーブ11に対してプランジャ12が前進する際に、第1箇所C1の前方貫通部15と第2箇所C2の後方貫通部14とを用いて、前端20Aよりも前方の(キャビティ23側の)空間75と、それよりも後方の吸引用凹部120の内側とから継続的に吸引する。
但し、本実施形態において、プランジャ12の前進を一旦停止した状態で前方空間75および吸引用凹部120の内側の双方を真空吸引するようにしてもよい。
そのため、図6(a)に実線の矢印で示すように、前方空間75からは前方貫通部15を通じて真空吸引系統2(図2)により吸引可能であり、図6(a)に破線の矢印で示すように、吸引用凹部120の内側からは後方貫通部14を通じて真空吸引系統2により吸引可能である。
つまり、外気流入を抑えてスリーブ真空吸引が安定して成立する限りにおいて、スリーブ真空吸引の開始から終了までの間の一部において、前方空間75および吸引用凹部120の内側のいずれか一方あるいは両方の吸引が中断されたり、前方空間75と吸引用凹部120の内側とのスリーブ真空吸引の開始や終了のタイミングが異なっていたりすることが許容される。
A1,A2 開口面積
C1 第1箇所
C2 第2箇所
D1 進退方向
D2 径方向
D3 周方向
P0 大気圧
P1,P2 圧力
1 射出装置
2 真空吸引系統
3 制御装置
4 可動盤
5 固定盤
7 タイバー
8 マシンベース
9 加圧空気供給系統
10 孔
11 スリーブ
11A 内周部
12 プランジャ
13 注湯口
14 後方貫通部(第2箇所の貫通部)
15 前方貫通部(第1箇所の貫通部)
18 溶湯
19 プランジャロッド
20 プランジャチップ
20A 前端
20C 外周部
20D チップジョイント
21 固定金型
22 可動金型
23 キャビティ
24 ランナー
25 ゲート
27 チルベント
28 連結口
31 真空フィルタ
32 圧力検出部
33 選択バルブ
34 合流・分配部
35 真空/エアブロウ切換弁
36 真空タンク
37 真空ポンプ
38 加圧タンク
39 圧縮空気源
41 押出板
42 押出ピン
51 吸引経路
55,56 配管
75 前方空間
88 空間
89,90 隙間
100 ダイカストマシン
120 吸引用凹部
201 第1大径部
202 第2大径部
203 小径部
203A 外周部
203B 二面幅
Claims (2)
- 溶湯が内側に供給されるスリーブと、前記スリーブの内側で進退可能なプランジャと、を備え、前記プランジャによりダイカストマシンのキャビティに向けて前記溶湯を射出する射出装置であって、
前記プランジャのチップには、前記スリーブの内周部に対して径方向の内側に退避し、周方向に連続する吸引用凹部が区画され、
前記チップの前端よりも前方の空間と、前記吸引用凹部の内側とを吸引可能に構成され、
前記プランジャの進退方向における前記スリーブの所定の第1箇所と、前記第1箇所から後方に離れた第2箇所とにおいて、前記スリーブを内側と外側とに亘りそれぞれ貫通した貫通部を通じて前記スリーブの内側を吸引可能であり、
前記第1箇所における前記貫通部の開口面積が、前記第2箇所における前記貫通部の開口面積と比べて大きく、
前記スリーブに前記溶湯が供給された後に、前記前方の空間と連通する前記第1箇所の前記貫通部を通じて前記前方の空間を吸引により減圧させながら、前記吸引用凹部の内側と連通する前記第2箇所の前記貫通部を通じて前記吸引用凹部の内側を吸引により減圧させつつも、前記前方の空間および前記吸引用凹部の内側のいずれか一方または両方の吸引の一時的中断と、前記前方の空間および前記吸引用凹部の内側のそれぞれの吸引の開始のタイミングの相違と、前記前方の空間および前記吸引用凹部の内側のそれぞれの吸引の終了のタイミングの相違とが許容される、
ことを特徴とするダイカストマシンの射出装置。 - 溶湯が内側に供給されるスリーブの内側で進退可能なプランジャによりダイカストマシンのキャビティに向けて前記溶湯を射出する射出装置を用いた鋳造方法であって、
前記プランジャのチップには、前記スリーブの内周部に対して径方向の内側に退避し、周方向に連続する吸引用凹部が区画され、
前記プランジャの進退方向における前記スリーブの所定の第1箇所と、前記第1箇所よりも後方の第2箇所とにおいて、前記スリーブを内側と外側とに亘りそれぞれ貫通した貫通部を通じて前記スリーブの内側を吸引可能であり、
前記第1箇所における前記貫通部の開口面積が、前記第2箇所における前記貫通部の開口面積と比べて大きく、
前記スリーブに前記溶湯が供給された後に、前記チップの前端よりも前方の空間と連通する前記第1箇所の前記貫通部を通じて前記前方の空間を吸引により減圧させながら、前記吸引用凹部の内側と連通する前記第2箇所の前記貫通部を通じて前記吸引用凹部の内側を吸引により減圧させつつも、前記前方の空間および前記吸引用凹部の内側のいずれか一方または両方の吸引の一時的中断と、前記前方の空間および前記吸引用凹部の内側のそれぞれの吸引の開始のタイミングの相違と、前記前方の空間および前記吸引用凹部の内側のそれぞれの吸引の終了のタイミングの相違とが許容される、
ことを特徴とする鋳造方法。
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