1.概要
図1~図5は、本実施形態に係る入力装置用ケース1を示す。入力装置用ケース1は、金属部材2と、樹脂ケース3と、を備える。樹脂ケース3は、収容部30を有する。金属部材2は、接点部21と、端子部23と、中間部22と、を有する。接点部21は、収容部30に露出する。端子部23は、樹脂ケース3の外部に露出する。中間部22は、接点部21と端子部23とをつなぎ、樹脂ケース3に埋設されている。中間部22は、凹凸構造7を含む。凹凸構造7は、凹部8及び凸部9を有する。凹凸構造7は、第1凹凸部701と、第1凹凸部701とつながり、中間部22の縁に沿って並ぶ第2凹凸部702と、を含む。第1凹凸部701は、接点部21と端子部23との間を横切る。第2凹凸部702は、第1凹凸部701とつながり、中間部22の縁に沿って並ぶ。
入力装置用ケース1では、中間部22の凹凸構造7によって、樹脂ケース3と中間部22との間にアンカー効果が生じ、樹脂ケース3と中間部22との密着性が高められる。また凹凸構造7の第1凹凸部701によって、端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。さらに凹凸構造7の第2凹凸部702によって、端子部23から中間部22の縁に回り込んで接点部21へ塩水等が浸入することも抑制できる。したがって、入力装置用ケース1は、従来よりも高い防水性を有する。
2.詳細
以下、入力装置用ケース1及び入力装置10について、図1~図10を参照して更に詳細に説明する。
まず入力装置用ケース1について説明する。入力装置用ケース1は、金属部材2と、樹脂ケース3と、を備える。入力装置用ケース1は、インサート成形品である。すなわち、インサート成形により、金属部材2に樹脂ケース3が成形される。
樹脂ケース3は、例えば、直方体状のケースである。樹脂ケース3は、第1面31と、第2面32とを有する。第2面32は、第1面31と反対側にある面である。樹脂ケース3は、収容部30を有する。収容部30は、ほぼ楕円柱状の空洞である。収容部30は、第1面31において開口している。収容部30は、内周面30a及び底面30bで囲まれている。
図5に示すように、樹脂ケース3には、少なくとも1つのピン穴33(本実施形態では7つ)が第2面32に形成されていてもよい。ピン穴33は、第2面32において開口している。ピン穴33は、入力装置用ケース1の製造工程において、樹脂ケース3から支えピン(図示なし)を抜くことにより、抜いた跡として形成される。支えピンは、樹脂ケース3と金属部材2とをインサート成形により成形する際に、金属部材2の位置を固定する。したがって、図5に示すように、ピン穴33から、金属部材2の一部である露出部24が露出している。
ピン穴33は、塞がれていてもよい。ピン穴33が塞がれると、ピン穴33から接点部21へ塩水等が浸入することを更に抑制できる。ピン穴33を塞ぐ具体的な方法として、樹脂ケース3をインサート成形により成形した後に、再度別にインサート成形により成形することが挙げられる。つまり、2回成形などの方法を用いることにより、露出部24が形成されない入力装置用ケース1を製造できる。
金属部材2の材質としては、特に限定されないが、銅合金が挙げられる。銅合金の中でもリン青銅が好ましい。金属部材2には、第1金属部材2aと、第2金属部材2bとが含まれる。以下では、特に断らない限り、第1金属部材2a及び第2金属部材2bに共通する事項については、両者をまとめて金属部材2として説明する場合がある。
金属部材2は、接点部21と、端子部23と、中間部22と、を有する。金属部材2は、例えば、金属板(母材)に切断加工及び曲げ加工を適宜行うことにより形成される。金属部材2の厚さは、特に限定されないが、例えば30μm以上100μm以下の範囲内である。
接点部21は、収容部30に露出する。具体的には、図4に示すように、第1金属部材2aの接点部21aは、樹脂ケース3の収容部30の底面30bにおいて、内周面30aに隣接して配置されている。第2金属部材2bの接点部21bは、樹脂ケース3の収容部30の底面30bのほぼ中央に配置されている。
端子部23は、樹脂ケース3の外部に露出する。具体的には、第1金属部材2aは、2つの端子部23aを有し、これらの端子部23aは、樹脂ケース3の両側から外方へ向かって突出している。第2金属部材2bは、2つの端子部23bを有し、これらの端子部23bは、樹脂ケース3の両側から外方へ向かって突出している。1つの端子部23aと1つの端子部23bとは、横並びで突出している。
中間部22は、接点部21と端子部23とをつないでいる。具体的には、第1金属部材2aの中間部22aは、接点部21aと2つの端子部23aとを機械的かつ電気的につないでいる。第2金属部材2bの中間部22bは、接点部21bと2つの端子部23bとを機械的かつ電気的につないでいる。
中間部22は、樹脂ケース3に埋設されている。具体的には、第1金属部材2aの中間部22a、及び第2金属部材2bの中間部22bが、樹脂ケース3に埋設されている。
中間部22は、第1面201と、第2面202と、を有する。第2面202は、第1面201と反対側にある面である。さらに中間部22は、第1側面211と、第2側面212と、を有する。第2側面212は、第1側面211と反対側にある側面である。第1側面211及び第2側面212の各々は、第1面201と第2面202との間に存在する。
中間部22は、凹凸構造7を含む。本実施形態では、凹凸構造7はレーザ加工により形成される。このレーザ加工は、インサート成形前に行われる。凹凸構造7は、第1面201及び第2面202のうちの少なくともいずれかの面に存在する。入力装置用ケース1では、凹凸構造7によって、樹脂ケース3と中間部22との間にアンカー効果が生じ、樹脂ケース3と中間部22との密着性が高められる。
図2Aに示すように、凹凸構造7は、凹部8及び凸部9を有する。中間部22にレーザ光を照射すると、ほぼ円形の凹部8が形成され、この凹部8の周囲に凸部9が形成される。凹部8はクレーター状である。本実施形態では、レーザ光を線状に走査させることで、複数の凹部8が数珠つなぎになり、1つの溝となって、凹凸構造7が形成されている。凹凸構造7は、複数の凹部8が1本の線に沿って飛び飛びに存在することにより形成されていてもよい。凹凸構造7は、レーザ光による加工跡又は照射跡である。なお、凹部8の内面、又は凸部9の表面に更に微細な凹凸が形成される場合がある。
凹凸構造7は、第1凹凸部701と、第2凹凸部702と、を含む。本実施形態では、凹凸構造7は、略I字又は略H字状に形成されている。
第1凹凸部701は、接点部21と端子部23との間を横切る。言い換えると、塩水等が金属部材2に接触しながら、端子部23から接点部21に向かって浸入すると想定される経路を遮断するように、第1凹凸部701は、中間部22に設けられている。本実施形態では、第1凹凸部701は直線状であるが、曲線状でもよく、途中で屈曲していてもよい。第1凹凸部701によって、端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。
第2凹凸部702は、第1凹凸部701とつながっている。第1凹凸部701と第2凹凸部702とがつながっていることで、これらの間を通って端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。
第2凹凸部702は、中間部22の縁に沿って並んでいる。ここで、縁とは、第1面201と第1側面211との境界、第1面201と第2側面212との境界、第2面202と第1側面211との境界、及び第2面202と第2側面212との境界を意味する。第2凹凸部702によって、端子部23から中間部22の縁に回り込んで接点部21へ塩水等が浸入することも抑制できる。
第2凹凸部702は、円の一部が欠けた形状を含む。より詳細には、ほぼ円形の凹部8の一部が、中間部22の縁で欠けて、非円形(例えば半円など)の凹部8となって、第2凹凸部702に存在している。このような非円形の凹部8は、第1側面211及び第2側面212において開口しているので、アンカー効果が強められる。
凹凸構造7の深さDは、好ましくは3μm以上15μm以下の範囲内である。凹凸構造7の深さDが3μm以上であることで、十分なアンカー効果が得られる。凹凸構造7の深さDが15μm以下であることで、金属部材2の強度を確保し得る。なお、凹凸構造7の深さDは、主として凹部8の深さである(図8A及び図8B参照)。
凹凸構造7の幅Wは、好ましくは40μm以上75μm以下の範囲内である。凹凸構造7の幅Wが40μm以上であることで、はんだ付けの工程でフラックスが凹凸構造7を横切って端子部23から接点部21へ浸入することを抑制できる。凹凸構造7の幅Wが75μm以下であることで、ドロスによる接点部21の汚染を抑制できる。なお、ドロスとは、レーザ加工工程において飛散する加工屑が再付着した金属酸化物膜のことである。凹凸構造7の幅Wは、主として凹部8の幅である(図8A及び図8B参照)。
中間部22は、凹凸構造7を複数含んでもよい。複数の凹凸構造7は、中間部22の第1面201のみに設けられていてもよいし(図2B参照)、第2面202のみに設けられていてもよいし、第1面201及び第2面202の両方に設けられていてもよい(図6及び図7参照)。複数の凹凸構造7によって、複数の箇所でアンカー効果が生じる。したがって、樹脂ケース3と中間部22との密着性が更に高められる。
図6及び図7に示すように、複数の凹凸構造7は、第1凹凸構造71と、第2凹凸構造72と、を含んでもよい。凹凸構造7と同様に、第1凹凸構造71及び第2凹凸構造72の各々は、第1凹凸部701と、第2凹凸部702と、を含む。第1凹凸構造71は、中間部22の第1面201に存在する。第2凹凸構造72は、中間部22の第2面202に存在する。
ここで、図6は、中間部22の厚さ方向において、第1凹凸構造71と第2凹凸構造72とが重複している場合の要部の断面を図示している。一方、図7は、中間部22の厚さ方向において、第1凹凸構造71と第2凹凸構造72とが重複していない場合の要部の断面を図示している。
第1凹凸構造71と第2凹凸構造72との間の距離は、図6の場合の方が短く、図7の場合の方が長い。図6及び図7では図示されていないが、第1凹凸構造71の第2凹凸部702と、第2凹凸構造72の第2凹凸部702との間の距離も、図6の場合の方が短く、図7の場合の方が長い。そのため、図6の場合では、第1面201の第2凹凸部702と第2面202の第2凹凸部702との間の第1側面211及び第2側面212を塩水等が伝わりにくくなるため、端子部23から接点部21への塩水等の浸入が更に抑制される。したがって、第1凹凸構造71の少なくとも第2凹凸部702と、第2凹凸構造72の少なくとも第2凹凸部702とは、中間部22の厚さ方向において重複していることが好ましい。第1凹凸部701同士は、重複していても重複していなくてもよい。
凹凸構造7は、第3凹凸部703を更に含んでもよい(図3、図6及び図7参照)。第3凹凸部703は、露出部24の周囲に形成される。つまり、第3凹凸部703は、略円形に形成される。この場合、ピン穴33が塞がれていなくても、第3凹凸部703によって、ピン穴33から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。
金属部材2は、めっき膜(図示なし)を有してもよい。樹脂ケース3と中間部22との密着性の観点から、めっき膜は、接点部21及び端子部23に形成されていることが好ましい。めっき膜により、防錆効果が得られ、はんだ付け性も向上する。
次に樹脂材料300について説明する。樹脂材料300は、電気絶縁性を有し、樹脂ケース3を形成する材料である。樹脂材料300は、樹脂310と、フィラー320と、を含有する。
樹脂310は、例えば、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリフタルアミド(PPA)及びポリフェニレンサルファイド(PPS)が挙げられる。
フィラー320は、鱗片状フィラー321を含む。鱗片状フィラー321としては、特に限定されないが、例えば、タルク、シリカ、マイカ、クレー、酸化チタン、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。フィラー320が鱗片状フィラー321を含むことで、樹脂材料300の熱膨張の異方性を小さくすることができる。より詳細には、樹脂材料300のMD方向の線膨張率(αMD)及びTD方向の線膨張率(αTD)を小さくすることができる。ここで、MD方向は、樹脂流動方向であり、成形時に樹脂材料300が流動する方向である。TD方向は、流動直角方向であり、MD方向に直交する方向である。なお、鱗片状フィラー321は、板状フィラーとも呼ばれる。
フィラー320は、針状フィラー322を更に含む。針状フィラー322としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、炭化ケイ素(SiC)ウィスカー、酸化亜鉛(ZnO)ウィスカー、ワラストナイト、及びミルドファイバーが挙げられる。フィラー320が針状フィラー322を更に含むことで、鱗片状フィラー321に比べて、針状フィラー322を凹凸構造7の凹部8内に存在させやすくなる。
なお、鱗片状フィラー321と針状フィラー322とは、アスペクト比によって区別される。アスペクト比は、長径と短径との比率(長径/短径)である。鱗片状フィラー321は、アスペクト比が2未満である。針状フィラー322は、アスペクト比が2以上である。
針状フィラー322の平均径(短径)は、好ましくは0.5μm以上1μm以下の範囲内である。針状フィラー322の平均径が0.5μm以上であることで、インサート成形時の樹脂材料300の増粘を抑制できる。針状フィラー322の平均径が1μm以下であることで、凹凸構造7の凹部8の内部に存在しやすくなる。
針状フィラー322の平均長さ(長径)は、好ましくは10μm以上40μm以下の範囲内である。針状フィラー322の平均長さが10μm以上であることで、インサート成形時の樹脂材料300の増粘を抑制できる。針状フィラー322の平均長さが40μm以下であることで、凹凸構造7の凹部8の内部に存在しやすくなる。
フィラー320が鱗片状フィラー321及び針状フィラー322の両方を含む場合には、針状フィラー322と鱗片状フィラー321との質量比率(針状フィラー:鱗片状フィラー)は、1:3~3:1であることが好ましい。
フィラー320の含有量は、樹脂材料300の全質量に対して、好ましくは15質量%以上60質量%以下の範囲内である。フィラー320の含有量が15質量%以上であることで、樹脂材料300の熱収縮を低減し、樹脂ケース3と金属部材2との剥離を抑制することができる。フィラー320の含有量が60質量%以下であることで、インサート成形時の樹脂材料300の流動性を確保できる。
樹脂材料300は、フィラー320が針状フィラー322のみを含む場合に比べて、熱膨張の異方性が小さい。このように、樹脂材料300の熱膨張の異方性が小さいと、樹脂ケース3と中間部22との剥離が抑制される。樹脂ケース3と中間部22との間に隙間が生じにくくなるので、端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。
樹脂材料300のMD方向の線膨張率(αMD)及びTD方向の線膨張率(αTD)は、好ましくは40ppm/℃以下である。好ましくはαTD/αMD≦1.3である。フィラー320に鱗片状フィラー321を含ませることで、αMD及びαTDを上記の数値に調整しやすくなる。αMD及びαTDが上記の数値に調整されると、樹脂ケース3と中間部22との剥離が抑制される。樹脂ケース3と中間部22との間に隙間が生じにくくなるので、端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。
入力装置用ケース1では、フィラー320は凹部8の内部に存在する。凹部8内には樹脂310が存在するが、さらにフィラー320が存在することにより、凹部8内の樹脂材料300の収縮が抑制される。このように、樹脂材料300の収縮が抑制されることで、樹脂ケース3と金属部材2との凹部8内における剥離が抑制され、隙間が生じにくくなる。
ここで、図8Aは、フィラー320が鱗片状フィラー321及び針状フィラー322の両方を含む場合の凹部8内の様子を模式的に示している。この場合の針状フィラー322の平均径は0.5μm以上1μm以下の範囲内であり、平均長さは10μm以上40μm以下の範囲内である。一方、図8Bは、フィラー320が鱗片状フィラー321を含まず、針状フィラー322のみを含む場合の凹部8内の様子を模式的に示している。この場合の針状フィラー322の平均径は1μm超、又は平均長さは40μm超の少なくともいずれかである。
図8Aでは、図8Bに比べて、針状フィラー322の大きさが小さいため、より多くのフィラー320(特に針状フィラー322)が凹部8内に存在している。したがって、凹部8内の樹脂材料300の収縮が抑制される。このように、樹脂材料300の収縮が抑制されることで、樹脂ケース3と金属部材2との凹部8内における剥離が抑制される。さらに図8Aでは、フィラー320に鱗片状フィラー321が含まれているので、樹脂材料300の熱膨張の異方性が小さい。これにより樹脂ケース3と中間部22との凹部8外での剥離も抑制される。以上より、図8Aでは、図8Bに比べて、樹脂ケース3と中間部22との間に隙間が更に生じにくくなるので、端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを更に抑制できる。
上記のように構成された入力装置用ケース1は、従来よりも高い防水性を有する。すなわち、入力装置用ケース1では、中間部22の凹凸構造7によって、樹脂ケース3と中間部22との間にアンカー効果が生じ、樹脂ケース3と中間部22との密着性が高められる。また凹凸構造7の第1凹凸部701によって、端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。さらに凹凸構造7の第2凹凸部702によって、端子部23から中間部22の縁に回り込んで接点部21へ塩水等が浸入することも抑制できる。したがって、入力装置用ケース1は、従来よりも高い防水性を有する。
次に、入力装置10について説明する。入力装置10は、入力装置用ケース1と、少なくとも1つの可動部材4(本実施形態では3つ)と、を備える。入力装置10は、押圧体5及び保護シート6を更に備え得る。
可動部材4は、収容部30内に収容され、接点部21と電気的に接続可能である。具体的には、可動部材4は、ほぼ中央が突出したドーム状に形成されている。可動部材4は、例えば、弾性を有する金属薄板で構成されている。本実施形態では、3つの可動部材4a,4b,4cの向きを揃えて重ね、可動部材4cの外周端が接点部21に接触した状態で、可動部材4は収容部30内に収容されている。可動部材4cの底面30b側の面における中央部は、間隔をあけた状態で、接点部21bと対向している。
保護シート6は、電気絶縁性を有するシートである。保護シート6は、収容部30の開口を覆うように、樹脂ケース3の第1面31に配置されている。保護シート6の周縁部は、第1面31に固着されている。つまり、保護シート6によって収容部30を塞ぐことにより、収容部30を密閉状態にしている。保護シート6は、例えば、レーザ照射によって樹脂ケース3に溶着されている。粘着材などを用いて保護シート6を樹脂ケース3に貼り合わせてもよい。
保護シート6の収容部30側の面は、押圧体5と固着している。保護シート6は、例えば、レーザ照射によって押圧体5に溶着されている。押圧体5は、電気絶縁性を有する樹脂で構成されている。押圧体5の可動部材4a側の面は、可動部材4aの押圧体5側の面における略中央に配置されている。
上記のように構成された入力装置10は、次のように動作する。
まず保護シート6を押圧すると、押圧体5が押圧され、押圧体5によって可動部材4の中央部が押圧される。この押圧により、可動部材4は反転する。反転した可動部材4の収容部30の底面30b側の面が接点部21と接触することにより、端子部23aと端子部23bとの間が導通状態(オン状態)になる。
一方、保護シート6への押圧を解除すると、可動部材4は、自身の復元力により反転して元の状態に戻る(図10参照)。そして、端子部23aと端子部23bとの間が非導通状態(オフ状態)になる。このように、可動部材4は、可動接点として機能している。
上記のように構成された入力装置10は、従来よりも高い防水性を有する。すなわち、入力装置10では、中間部22の凹凸構造7によって、樹脂ケース3と中間部22との間にアンカー効果が生じ、樹脂ケース3と中間部22との密着性が高められる。また凹凸構造7の第1凹凸部701によって、端子部23から接点部21へ塩水等が浸入することを抑制できる。さらに凹凸構造7の第2凹凸部702によって、端子部23から中間部22の縁に回り込んで接点部21へ塩水等が浸入することも抑制できる。したがって、入力装置10は、従来よりも高い防水性を有する。
3.変形例
上記実施形態では、樹脂ケース3の形状は直方体であるが、直方体以外の形状でもよい。
上記実施形態では、収容部30の形状は楕円柱であるが、楕円柱以外の形状でもよい。
上記実施形態では、凹凸構造7をレーザ加工により形成しているが、同様の構造が形成できれば、レーザ加工以外の方法を使用してもよい。
4.まとめ
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
第1の態様に係る入力装置用ケース(1)は、金属部材(2)と、収容部(30)を有する樹脂ケース(3)と、を備える。前記金属部材(2)は、前記収容部(30)に露出する接点部(21)と、前記樹脂ケース(3)の外部に露出する端子部(23)と、前記接点部(21)と前記端子部(23)とをつなぎ、前記樹脂ケース(3)に埋設された中間部(22)と、を有する。前記中間部(22)は、凹部(8)及び凸部(9)を有する凹凸構造(7)を含む。前記凹凸構造(7)は、前記接点部(21)と前記端子部(23)との間を横切る第1凹凸部(701)と、前記第1凹凸部(701)とつながり、前記中間部(22)の縁に沿って並ぶ第2凹凸部(702)と、を含む。
この態様によれば、入力装置用ケース(1)は、従来よりも高い防水性を有する。
第2の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第1の態様において、前記中間部(22)は、前記凹凸構造(7)を複数含む。
この態様によれば、複数の凹凸構造(7)によって、複数の箇所でアンカー効果が生じる。したがって、樹脂ケース(3)と中間部(22)との密着性が更に高められる。
第3の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第2の態様において、前記中間部(22)は、第1面(201)と、前記第1面(201)と反対側にある第2面(202)と、を有する。前記複数の凹凸構造(7)は、前記中間部(22)の前記第1面(201)に存在する第1凹凸構造(71)と、前記中間部(22)の前記第2面(202)に存在する第2凹凸構造(72)と、を含む。前記第1凹凸構造(71)の少なくとも第2凹凸部(702)と、前記第2凹凸構造(72)の少なくとも第2凹凸部(702)とは、前記中間部(22)の厚さ方向において重複している。
この態様によれば、第1面(201)の第2凹凸部(702)と第2面(202)の第2凹凸部(702)との間の第1側面(211)及び第2側面(212)を塩水等が伝わりにくくなるため、端子部(23)から接点部(21)への塩水等の浸入が更に抑制される。
第4の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第1~3のいずれかの態様において、前記第2凹凸部(702)は、円の一部が欠けた形状を含む。
この態様によれば、アンカー効果が強められる。
第5の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第1~4のいずれかの態様において、前記凹凸構造(7)の深さ(D)は、3μm以上15μm以下の範囲内である。前記凹凸構造(7)の幅(W)は、40μm以上75μm以下の範囲内である。
この態様によれば、凹凸構造(7)の深さ(D)が3μm以上であることで、十分なアンカー効果が得られる。凹凸構造(7)の深さ(D)が15μm以下であることで、金属部材(2)の強度を確保し得る。凹凸構造(7)の幅(W)が40μm以上であることで、はんだ付けの工程でフラックスが凹凸構造(7)を横切って端子部(23)から接点部(21)へ浸入することを抑制できる。凹凸構造(7)の幅(W)が75μm以下であることで、金属部材(2)の強度を確保し得る。
第6の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第1~5のいずれかの態様において、前記樹脂ケース(3)は、樹脂(310)と、フィラー(320)と、を含有する樹脂材料(300)で形成される。前記フィラー(320)が前記凹部(8)の内部に存在する。
この態様によれば、凹部(8)内の樹脂材料(300)の収縮が抑制される。このように、樹脂材料(300)の収縮が抑制されることで、樹脂ケース(3)と金属部材(2)との凹部(8)内における剥離が抑制され、隙間が生じにくくなる。
第7の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第6の態様において、前記樹脂材料(300)は、前記フィラー(320)が針状フィラー(322)のみを含む場合に比べて、熱膨張の異方性が小さい。
この態様によれば、樹脂ケース(3)と中間部(22)との剥離が抑制される。樹脂ケース(3)と中間部(22)との間に隙間が生じにくくなるので、端子部(23)から接点部(21)へ塩水等が浸入することを抑制できる。
第8の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第6又は7の態様において、前記フィラー(320)は、鱗片状フィラー(321)を含む。
この態様によれば、樹脂材料(300)の熱膨張の異方性を小さくすることができる。
第9の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第8の態様において、前記フィラー(320)は、針状フィラー(322)を更に含む。
この態様によれば、鱗片状フィラー(321)に比べて、針状フィラー(322)を凹凸構造(7)の凹部(8)内に存在させやすくなる。
第10の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第9の態様において、前記針状フィラー(322)の平均径は、0.5μm以上1μm以下の範囲内である。前記針状フィラー(322)の平均長さは、10μm以上40μm以下の範囲内である。
この態様によれば、針状フィラー(322)の平均径が0.5μm以上であることで、インサート成形時の樹脂材料(300)の増粘を抑制できる。針状フィラー322の平均径が1μm以下であることで、凹凸構造7の凹部8の内部に存在しやすくなる。針状フィラー(322)の平均長さが10μm以上であることで、インサート成形時の樹脂材料(300)の増粘を抑制できる。針状フィラー(322)の平均長さが40μm以下であることで、凹凸構造(7)の凹部(8)の内部に存在しやすくなる。
第11の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第6~10のいずれかの態様において、前記フィラー(320)の含有量は、前記樹脂材料(300)の全質量に対して、15質量%以上60質量%以下の範囲内である。
この態様によれば、フィラー(320)の含有量が15質量%以上であることで、樹脂材料(300)の熱収縮を低減し、樹脂ケース(3)と金属部材(2)との剥離を抑制することができる。フィラー(320)の含有量が60質量%以下であることで、インサート成形時の樹脂材料(300)の流動性を確保できる。
第12の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第6~11のいずれかの態様において、前記樹脂材料(300)のMD方向の線膨張率(αMD)及びTD方向の線膨張率(αTD)が40ppm/℃以下である。αTD/αMD≦1.3である。
この態様によれば、樹脂ケース(3)と中間部(22)との剥離が抑制される。樹脂ケース(3)と中間部(22)との間に隙間が生じにくくなるので、端子部(23)から接点部(21)へ塩水等が浸入することを抑制できる。
第13の態様に係る入力装置用ケース(1)では、第1~12のいずれかの態様において、前記金属部材(2)は、めっき膜を有する。
この態様によれば、めっき膜により、防錆効果が得られ、はんだ付け性も向上する。
第14の態様に係る入力装置(10)は、第1~13のいずれかの態様に係る入力装置用ケース(1)と、前記収容部(30)内に収容され、前記接点部(21)と電気的に接続可能な可動部材(4)と、を備える。
この態様によれば、入力装置(10)は、従来よりも高い防水性を有する。
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。ただし、本開示は、実施例に限定されない。
(樹脂材料A)
樹脂としてポリフタルアミド(PPA)を用い、針状フィラーとして炭酸カルシウムウィスカーを用い、鱗片状フィラーとしてタルクを用いて、表1に示す樹脂材料Aを製造した。
(樹脂材料B)
樹脂としてポリフタルアミド(PPA)を用い、針状フィラーとしてワラストナイトを用いて、表1に示す樹脂材料Bを製造した。
(入力装置)
レーザ加工により凹凸構造が形成された金属部材と、凹凸構造が形成されていない金属部材とを用意した。
上記の2種類の金属部材の各々と樹脂材料Aとを用いて、図6~図10に示すような入力装置を製造した。同様に、上記の2種類の金属部材の各々と樹脂材料Bとを用いて、入力装置を製造した。なお、各入力装置のサンプル数は20個である。
上記のようにして製造された入力装置について、防水試験を行った。防水試験は、入力装置を塩水中に48時間沈めた後、浸入の有無を目視により確認して行った。全サンプル数に対する未浸入サンプル数の割合(百分率)を未浸入率として算出した。その結果を表2に示す。
表2のレーザ加工の有無から、凹凸構造が、塩水の浸入抑制に有効であることが分かる。さらに針状フィラーのみを使用した樹脂材料Bよりも、針状フィラー及び鱗片状フィラーを併用した樹脂材料Aの方が、塩水の浸入抑制に有効であることが分かる。