JP7125685B1 - スリーブ付き磁石式義歯アタッチメントとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、磁石は垂直方向には大きな力を提供できるが、水平方向には力は生じない。さらに義歯が水平方向の力を受けると回転力に変化し、磁石は回転力で傾斜して、簡単に外れてしまうという欠点がある。
しかし、磁石構造体の直径が4mmのものが6mmと大きくなりすぎるという欠点があること、構造が複雑で組立・溶接作業が難しいことによる品質を安定させることが難しいこと、非磁性ガイドリングの精密部品の製作が高価であることなどの問題があり、実用化に至っていない。それゆえに小型で安価で品質が安定した勘合タイプの磁石式義歯アタッチメントの開発が求められている。
特許文献3では、図13に示すように、インプラントの人工歯(補綴冠)とインプラント先端芯部
との精密篏合と磁石の吸着力を併用して十分な維持力を有する可撤性インプラントが開示されている。
しかし、臨床の現場で、人工歯(補綴冠)内面のテーパとインプラント先端のテーパおよび磁石埋設用穴の芯部の精密加工が難しいうえ、磁石とキーパーの2部品を人工歯内奥部とインプラント先端に接着剤で精密よく固定することが困難で実用化されていない。工場で出荷される際に、製品として精密度を確保した勘合タイプの磁石式義歯アタッチメントの開発が求められている。
デジタルデンチャーの維持装置として、自動調心機能を有し、かつ小型で強力な吸着力を有する磁石式義歯アタッチメントの開発が求められている。
磁石構造体の大きさは、直径4.0mm、高さ1.3mmで、内蔵されている永久磁石は50MGOeのNdFeB磁石(以下、Nd磁石という。)にて、その直径は3.2mm、高さ0.9mmとする。
シールドプレートは、非磁性の18Cr-8Ni系ステンレス鋼ワイヤを常温で60%以上伸線加工して直径は3.2mmとした。この加工でマルテンサイト変態を誘起して、マルテンサイト量を50%以上とし、550℃の張力熱処理を施して半硬質磁性材料とした。それを切断加工により0.1mm厚さの円形プレートとしてその外周のリング幅0.3mm部を非磁性改質して磁石構造体に溶接組付けした後、Nd磁石と一緒に着磁磁界は30,000Gで飽和着磁して、保磁力80OeのCr-Ni系ステンレス磁石としてプレート素材とした。キーパーは軟磁性18Cr系ステンレス鋼とした。
シールドプレートの構成について、軟磁性材料よりなるシールド板と非磁性材料よりなるリングとの2部品から、Cr-Ni系ステンレス磁石からなるシールドプレートの1部品に変更する。
シールドプレートの製造方法は、先ずCr-Ni系ステンレス鋼ワイヤを冷間伸線加工にて50%以上のマルテンサイト変態を生ぜしめ、長さ方向に繊維組織を形成し、張力を0~30kg/mm2負荷した状態で450℃~570℃の温度で張力熱処理を施したのちに、そのワイヤから円形のシールド板を切り出す。
次に、このマルテンサイト変態状態のシールド板の外縁部をレーザー加熱または高周波加熱してオーステナイト相に戻す非磁性改質を行う。これにより、外縁部(リング部)は非磁性材料で外縁部以外(円板部)は磁性材料からなる複合シールド板を作製できる。本発明においてシールド板のリング部の非磁性改質の方法は上記方法に限らない。
キーパーの材質は、Cr系軟磁性ステンレス鋼からなる。そのキーパーの被吸着面の材質としては、優れた軟磁性が求められている。さらに優れた耐酸化性と耐摩耗性を有することが好ましい。
まず非磁性ガイドリングを見直すために、まずガイドリング素材を磁気特性の影響を検討し、非磁性素材から磁性素材への変更の可否を検討した。そのために、磁石構造体とキーパーを吸着した時の吸着力に及ぼすスリーブ素材(特許文献2のガイドリングに対応する。)について磁場解析プログラムを使って調査した。
そこで、キャップとキーパーは磁性材料で、スリーブには非磁性素材が使用されていた。本実験の結果、従来のようにスリーブ内面とキーパー傾斜面とを使った篏合の場合には、スリーブ素材には磁性素材を使用すると吸着力が低下するが、両者の間に0.1mm程度の隙間を設けて、両者の篏合は、斜面で篏合する代わりに、スリーブの先端部で主に篏合させることにすると、キャップとスリーブが同じCr系磁性ステンレス鋼であっても、吸着力に影響しないことを見出した。この結果を踏まえて、キャップとスリーブを同じCr系磁性ステンレス鋼として一体成形して製作し、しかもスリーブとキーパーとの篏合はスリーブ内面端であるスリーブ先端部のみとすることにした。
スリーブの端部内面113が、キーパー斜面212に接触した際に、磁石構造体10の吸着面131とキーパー20の被吸着面211との間に隙間が生じないことが重要である。キーパー20の被吸着面211の直径を磁石構造体10の吸着面131の直径よりの0.1~0.5mm大きくし、かつスリーブ端部内面113の直径がキーパー斜面212の接触点の直径より0.1mm程度大きくなるように調整をすることが好ましい。調整の仕方は吸着面に隙間が生じないように篏合する方法ならば、上記方法にこだわるものではない。
スリーブ111は、円筒素形材を冷間加工によりつば上に水平方向に張り出した形で取り付けられている。
このスリーブ付きキャップ素材を必要に応じて熱処理し、キャップ内に永久磁石を内蔵(装入)し、キャップの開口部を複合シールド板にて蓋をし、キャップの開口部と複合シールド板との境界部を溶接により接合した後に、溶接部と複合シールド板の吸着面およびスリーブ張り出し面を研磨により平滑化する。
この平滑化した磁石構造体素体10の面をダイ32の上に載せ、円筒形パンチ31を降下させてスリーブの曲げ加工を行なう。
円筒形状よりなるパンチ31の下部内面の傾斜面の勾配は、円錐台形状よりなるダイ32の上部外周面の傾斜面の勾配と同じである。パンチ31の下部端部の内面の直径とダイ32の上面の直径と同じである。
パンチ31およびダイ32の傾斜面の勾配はキーパー20の上部の傾斜面の勾配より大きく、ダイ32の上面の直径はキーパー20の上面の直径より大きい。
パンチ31を上昇させ、ダイ32から降ろしてスリーブが曲げ加工された磁石構造体10をキーパー20と組み合わせると、上図2のとおりである。
第1に、スリーブ付キャップ、キーパーはCr系軟磁性ステンレス素材を冷間プレス加工して作製後に、熱処理により軟磁気特性を回復させる。この段階ではスリーブはキャップからつば上に取り付けられている。
第2に、プレートはCr-Ni系ステンレスワイヤを50%以上の冷間伸線加工して、マルテンサイト量を50%以上として、450570℃の張力熱処理を施し、8,000~12,000Gの飽和磁化、100~200Oeの保磁力、800G以上の異方性磁界かつ6,000~10,000Gの残留磁気を有する磁石の素材とした後、ワイヤからプレートを切り出し、外周部を加熱して非磁性組織に改質する
第3に、キャップの開口部に磁石を配置し、プレートで蓋をしたのち、キャップとプレートの境界部をレーザー溶接する。レーザー溶接された吸着面を平面研磨する。
第4に、キャップからつば上に張り出していたスリーブを曲げ加工して所定の形状にする。
義歯床に配設されるスリーブ付の磁石構造体と支台歯の上に配設されるCr系軟磁性ステンレス鋼からなる凸形状のキーパーとからなり、前記磁石構造体に設けられた吸着面と前記キーパーに設けられた被吸着面とを当接させることにより両者が磁気吸引力によって互いに吸着するように構成された磁石式義歯アタッチメントにおいて、
前記磁石構造体は、永久磁石と該永久磁石を内蔵するCr系軟磁性ステンレス鋼製のキャップと該キャップの開口部に蓋をするシールドプレートとからなっている。
前記キャップは、その開口部の先端から径方向外方に延在する前記スリーブと一体成形されたもので、Cr系軟磁性ステンレス鋼よりなっている。
前記シールドプレートは、非磁性のCr-Ni系ステンレス鋼よりなる外縁部とCr-Ni系ステンレス磁石よりなる外縁部以外とからなり、
かつ、前記キャップと前記シールドプレートとの境界部は溶接によって接合されており、その溶接部は平滑化された吸着面を形成している。
前記キーパーは、Cr系軟磁性ステンレス鋼よりなり、凸形状にて外周側に斜面よりなる凸部を有するもので、凸部外周部と前記スリーブの内周端部の両者で嵌め合い状態を形成している。
前記磁石構造体の前記吸着面の全面が前記キーパーの被吸着面に吸着するように両者の吸着面・被吸着面の直径が関係づけられている。
磁石式義歯アタッチメント1は、スリーブ付の磁石構造体10とキーパー20とから構成されている。磁石構造体10は義歯床(図示なし)に配設されて磁気吸引力を発揮している。一方、キーパー20は支台(図示なし)に配設される磁性材料のCr系軟磁性ステンレス鋼からなる。
両者の関係は、一方は磁石構造体10に吸着面131が設けられ、他方はキーパー20に被吸着面211が設けられており、吸着面131と被吸着面211とは当接されることにより両者が磁気吸引力によって互いに吸着し、吸着されるように構成されている。
磁石構造体10は、永久磁石12と永久磁石を収納するキャップ11とキャップ11の開口部の蓋をするシールドプレート13から構成されている。
永久磁石12は、Nd-Fe-B系磁石(Nd磁石という。)など希土類磁石が好ましい。Nd磁石では、最大エネルギー積(BHmaxという。)は大きいほど好ましく、BHmaxは40~55MGOeとする。BHmax40MGOe未満のBHmaxでは十分な磁気吸引力を得ることができない。上限は汎用的なNd磁石の上限であるBHmax55MGOeとする。
スリーブ111の内側の傾斜面は、キーパー20の凸部の傾斜面と嵌め合い状態を形成し、内側の最小径はキーパー凸部の上面(被吸着面)の外径より0.1~0.5mm大きくしている。これにより両者の間に小さな隙間を設けて篏合が容易となる。
材質は、キャップと同一である。磁気特性については、曲げ加工により透磁率は2000から200程度に低下し、スリーブを介して漏洩する磁束量を小さくすることができる。
外縁部以外(円板状)134MはCr-Ni系ステンレス磁石よりなる磁石材料と外縁部(リング状)135はCr-Ni系ステンレス鋼よりなる非磁性材料(非磁性部)からなる。これは、外縁部以外(円板状)134は、半硬質磁性材料を飽和着磁して磁石材料とし、磁石の性能は、8,000~12,000Gの飽和磁化、100~200Oeの保磁力、800G以上の異方性磁界かつ6,000~10,000Gの残留磁気とした。外縁部135を非磁性にすることで、キャップ11とシールドプレート13の間を磁気的遮断して、磁石構造体10とキーパー20と磁気回路を形成して吸着力を大きくするものである。
先ず、シールド板に用いるCr-Ni系ステンレス磁石の製造方法は、図5に示すように、オーステナイト相からなるCr-Ni系ステンレス鋼ワイヤを60%以上の伸線加工をして、これにより50%以上のマルテンサイト変態を生ぜしめた伸線ワイヤを作製し、そこから図(b1)のシールド板132を切り出す。
次に、このマルテンサイト変態状態のシールド板132の外縁部を高周波加熱して、オーステナイト相に逆変態させて非磁性改質を行なう。そのリング状の幅は0.15~0.3mm、厚みは0.05~0.10mmが好ましい。これにより、中央部の外縁部以外(円板状)134は磁性材料からなるとともにリング部の外縁部135は非磁性材料(非磁性部)からなる図(b2)の複合シールド板133を作製する。
なお、伸線ワイヤの外周部を高周波加熱して、オーステナイト相に逆変態させて非磁性改質を行ない、次に複合シールド板133を切り出してもよい。
板133のリング状のCr-Ni系ステンレス鋼135との境界部(接合部)の表面側をレーザー
溶接する。レーザー溶接により形成される溶接部135は、Cr系軟磁性ステンレス鋼11とCr
-Ni系ステンレス鋼135を溶け込ませた合金にてδフェライト相が析出はしているが、Cr-
Ni系ステンレス鋼134の半硬質磁性部にまで至らないので磁気的遮断は完全にすることができ
る。
なお、溶接部136のサイズは、幅0.10mm、深さ0.08mm、その公差は0.01mmが
好ましい。
または、Cr系軟磁性ステンレス鋼板から直接凸部21の外周側傾斜面212を有する凸形状よりなるキーパー20を打ち抜き、プレス加工により作製してもよい。なお、下部22は円板状である。
上記の磁石構造体10は、直径は1.5mm~5mm、高さ0.8mm~2mmの円柱形状からなり、スリーブ111は深さ0.1mm~0.3mm、直径は1.7mm~6mm、キーパー20は凸形状にて凸部21の高さは高さ0.15mm~0.4mm、キーパー20の底面の直径は1.7mm~7mmである。
磁石構造体10の直径と高さは装着する歯に合わせて極力小さいことが好ましいが、吸着力は断面積や高さに比例して大きくなるので、円柱形状として、直径は1.5mm~5mm、高さ0.8mm~2mmの範囲が好ましい。
スリーブ111とキーパー20の凸部21との篏合については、水平方向と回転方向の移動を抑制するために、スリーブ111は深さ0.1mm~0.3mm、直径は1.7mm~6mm、凸部21の高さは0.15mm~0.4mmとすることが好ましい。
Cr系軟磁性ステンレス鋼の透磁率は、1000以上を有するものである。
Cr-Ni系ステンレス磁石は、8,000~12,000Gの飽和磁化、100~200Oeの保磁力、800G以上の異方性磁界かつ6,000~10,000Gの残留磁気を有する。
これにより、磁石構造体のNd磁石の磁力を加重することができる。
キーパー20の被吸着面211は、Cr拡散層を有していることを特徴とするものである。
磁石式義歯アタッチメントを長期に使用した場合、吸着面が摩耗するトラブルが発生するので、キーパー20にCr拡散層を付与して、表面の硬さを硬くしておくことが好ましい。
その製造方法は、図8、9を用いて説明する。
(1)Cr-Ni系ステンレス鋼ワイヤを冷間伸線加工にて50%以上のマルテンサイト変態を生ぜしめ、長さ方向に繊維組織を形成し、張力を0~30kg/mm2負荷した状態で450℃~570℃の温度で張力熱処理を施したのちに、そのワイヤから円板を切り出し、次に、このマルテンサイト変態状態の円板の外縁部(外周部)を加熱してオーステナイト相に戻す非磁性改質を行ない、外縁部は非磁性材料で外縁部以外(外周部以外)は半硬質磁性材料からなる複合シールド板を作製する工程と、
(2)Cr系軟磁性ステンレス鋼の鋼板を打ち抜いて円筒素形材を形成し、該円筒素形材を冷間加工によりスリーブ付きキャップ素形材(d1)を作製する工程と、
(3)前記スリーブ付きキャップ素材を温度700℃~850℃にて熱処理する工程と、
(4)熱処理された前記スリーブ付きキャップ素材Aのキャップ内に永久磁石を内蔵した後、前記キャップの開口部を複合シールド板により蓋をして磁石構造体(d2)を組み立てる工程と、
(5)前記キャップの開口部と前記複合シールド板との境界部を溶接により接合(d3)する工程と、
(6)前記磁石構造体素体の溶接部と前記複合シールド板の吸着面とを研磨により平滑化(d4)する工程と、
(7)前記スリーブ付きキャップ素材Aのスリーブを内周側に曲げ加工(d5)する工程と、
(8)工程(1)から(7)で作製した磁石構造体を高さ方向に着磁装置により着磁する工程と、
からなる。
その製造方法は、図9、10を用いて説明する。
(9)Cr系軟磁性ステンレス鋼の鋼板を凸型形状にて凸部の外周側に傾斜面(d6)を有するように冷間プレス加工により作成する工程と、
(10)上記(1)から(8)の工程で作製された磁石構造体と上記(9)の工程で作製されたキーパーとを組み合わせる(d7)工程と、
からなる。
磁石式義歯アタッチメント用の磁石構造体を構成するシールドプレートの製造方法であって、
(1)Cr-Ni系ステンレス鋼ワイヤを長手方向に冷間延伸加工し、50%以上のマルテンサイト変態を生じせしめる工程、
(2)前記マルテンサイト変態した半硬質磁性材料を切断加工、または打ち抜き加工により円板状のシールド板に加工する工程と、
(3)前記シールド板の外縁部のみを非磁性改質する工程と、
(4)前記外縁部の非磁性材料と外縁部以外の半硬質磁性材料とよりなる複合シールド板を作製する工程と、
(5)磁石構造体を構成するキャップに永久磁石を内蔵し、前記複合シールド板でもって蓋をし、前記キャップと前記複合シールド板との境界部を溶接により接合した後に接合部を研磨・平滑
化して、前記永久磁石と前記複合シールド板を重ねて電磁石により印可する工程と、
からなるシールドプレートの製造方法である。
その製造方法は、
(1)Cr-Ni系ステンレス鋼板を冷間圧延加工により20%以上のマルテンサイト変態を生じせしめる工程と、
(2)打ち抜き加工により円板状のシールド板を作製する工程と、
からなる製造方法である。
本発明にかかるスリーブ付き磁石式義歯アタッチメントおよびその製造方法について、図4~10を用いて説明する。
本例のスリーブ付き磁石式義歯アタッチメント1は、図4に示すように、磁石構造体10は永久磁石12と、永久磁石12を収納する容器であるキャップ11と、キャップ11の凹所開口部の蓋となるシールドプレート13およびスリーブ111とからなり、凸形状のキーパー20とともに構成されている。
永久磁石12は、組成はNd磁石にて、そのBHmaxは50MGOe、Msは1.33Tである。サイズは直径3.0mm、高さ0.8mmの円柱状からなり、上下面のコーナーにはR部が形成されている。
その製造方法は、厚さ0.3mmの18Cr-2Moステンレス鋼板を直径6.4mmの円板状
に打ち抜いて、次いでプレス加工法により直径3.8mm、高さ1.3mmの容器にして、熱処理を
行い、透磁率2000の磁性材料とした。
その製造方法は、18Cr-8Ni系ステンレス鋼ワイヤを直径2.4mmに引抜し、冷間加工度
60%によりマルテンサイト量85%のマルテンサイト組織とし、そのワイヤから厚み0.1mmのシールド板132を切り出した。その外縁部の幅0.3mmからなるリングを高周波加熱して、18Cr-8Ni系ステンレス鋼のオーステナイト相とするリング状の外縁部135を形成した。
外縁部以外(円板状)134である中央部は、マルテンサイト組織の状態を維持し、両者からなる複合シールド板133が得られる。
次いで、磁石構造体に組付けた後で、外縁部以外(円板状)134である中央部はNd磁石と一緒
に30,000Gの磁界を印可して飽和着磁を行ない、18Cr-8Ni系ステンレス磁石134M
とした。
キーパー20は、軟磁性材料の18Cr-2Mo系ステンレス鋼にて、その透磁率は2000、飽和磁束密度Bsは1.6Tである。厚さ1mmの18Cr-2Mo系ステンレス鋼板を上面の直径3.8mm、凸部21の高さ0.3mm、底面の直径は4.2mmとして凸形状のキーパー20を冷間プレス加工により製作し、温度750℃にて熱処理をして磁気特性を改善した。
両者ともにサイズおよび永久磁石等は同じで、プレートがCr―Ni系ステンレス磁石式かCr系軟磁性ステンレス鋼式かの相違のみである。
その結果、垂直方向の吸着力は、従来の義歯アタッチメントは600gに対して、磁石式義歯アタッチメントは950gと磁気吸引力は50%の向上が得られた。さらに、患者の使用時においては、吸着力が磁石構造体の2度程度の傾きによって急減し、義歯が外れるトラブルが発生していたが、スリーブ先端部とキーパーの傾斜面との略線接触による篏合で解決できることを確認した。これにより、自動調心機能を発揮することができる。
実施例1において、キーパー20の被吸着面211に厚み5μmのCr拡散層を形成した。その結果、表面の硬さHv500を得て、対摩耗性を改善することができた。
実施例1の製造方法で、工程は次のとおりである。
工程は、順に第1に、スリーブ付キャップ、キーパーは18Cr-2Mo系軟磁性ステンレス素材
を冷間プレス加工して作製後に、温度750℃にて熱処理を施して軟磁気特性を回復させる。この段階では、スリーブはキャップからつば上に取り付けられている。キーパーは凸型形状に冷間加工され、凸型上部は外周側に傾斜面を有している。
第2に、複合シールド板はCr―Ni系ステンレスワイヤを50%以上の冷間伸線加工して、マルテンサイト量を60%以上として、張力を25kg/mm2の張力を負荷して温度550℃の張力熱処理を施し、ワイヤからプレートを切り出し、外周部を高周波加熱して非磁性組織に改質する。
第3に、キャップの開口部に磁石を装置し、複合シールド板で蓋をしたのち、キャップと複合シールド板の境界部をレーザー溶接する。レーザー溶接された吸着面を平面研磨する。
第4に、キャップからつば上に張りだしていたスリーブを曲げ加工して所定の形状にする。次いで、この磁石構造体に30,000Gの磁界を印可して飽和着磁して、磁石体とした。
これにより、永久磁石12からの磁気回路が一層強まることにより、吸着力を950gとさらに高めることができた。
10:磁石構造体
11:キャップ
111:スリーブ
112:スリーブの内周側斜面
12:永久磁石
13:シールドプレート
131:吸着面(磁石構造体10)
132:シールド板
133:複合シールド板
134:外縁部以外(円板状からなる中央部にて半硬質磁性材料)
134M:外縁部以外(円板状からなる中央部にてCr―Ni系ステンレス磁石)
135:外縁部(リング状にてCr-Ni系ステンレス鋼の非磁性部)
136:溶接部
20:キーパー
21:凸部
211:被吸着面(キーパ20)
212:凸部の外周側斜面
22:円板部
31:パンチ
32:ダイ
Claims (7)
- 義歯床に配設されるスリーブ付きの磁石構造体と支台歯の上に配設される軟磁性材料からなる凸形状のキーパーとからなり、前記磁石構造体に設けられた吸着面と前記キーパーに設けられた被吸着面とを当接させることにより両者が磁気吸引力によって互いに吸着するように構成されたスリーブ付き磁石式義歯アタッチメントにおいて、
前記磁石構造体は、永久磁石と該永久磁石を内蔵するキャップと、該キャップの開口部に蓋をするシールドプレートと、該キャップの開口部の先端から径方向外方に延在するスリーブとを備え、
前記キャップと前記スリーブは、同じCr系軟磁性ステンレス鋼よりなり、両者は一体的に形成されており、
前記シールドプレートは、非磁性のCr-Ni系ステンレス鋼よりなる外縁部とCr-Ni系ステンレス磁石よりなる外縁部以外とからなり、
かつ、前記キャップと前記シールドプレートとの境界部は、溶接によって接合されており、その溶接部は平滑化された吸着面を形成しており、
前記凸形状のキーパーは、Cr系軟磁性ステンレス鋼よりなり、下部は円板状にて上部は外周側に傾斜面を有して前記スリーブの凹部との両者で嵌め合い状態を形成し、
かつ、前記磁石構造体の前記吸着面の全面が前記キーパーの被吸着面に吸着するように両者の吸着面・被吸着面の直径が関係づけられていることを特徴とするスリーブ付き磁石式義歯アタッチメント。 - 請求項1において、
前記磁石構造体は、直径1.5mm~5mm、高さ0.6mm~2mmからなり、
前記スリーブは、深さ0.1mm~0.3mm、最大内径1.7mm~7mmからなり、
前記キーパーは、前記凸部の上面の直径は1.55mm~5.20mm、高さは0.1mm~1.5mmにて、底面の直径は1.7mm~7mmからなることを特徴とするスリーブ付き磁石式義歯アタッチメント。 - 請求項1または2において、
前記Cr-Ni系ステンレス磁石は、8,000~12,000Gの飽和磁化、100~200Oeの保磁力、800G以上の異方性磁界かつ6,000~10,000Gの残留磁気を有することを特徴とするスリーブ付き磁石式義歯アタッチメント。 - 請求項1~3のいずれか1項において、
前記キーパーの被吸着面は、Cr拡散層を有していることを特徴とするスリーブ付き磁石式義歯アタッチメント。 - 永久磁石とCr系軟磁性ステンレス鋼製のスリーブ付きキャップ素材、Cr-Ni系ステンレス磁石とその外縁部は非磁性のCr-Ni系ステンレス鋼とからなるシールドプレートとから構成される磁石式義歯アタッチメント用のスリーブ付き磁石構造体の製造方法であって、
(1)Cr-Ni系ステンレス鋼ワイヤを冷間伸線加工にて50%以上のマルテンサイト変態を生ぜしめ、長さ方向に繊維組織を形成し、張力を0~30kg/mm2負荷した状態で450℃~570℃の温度で張力熱処理を施したのちに、そのワイヤから円板を切り出し、次に、このマルテンサイト変態状態の円板の外縁部(外周部)を加熱してオーステナイト相に戻す非磁性改質を行ない、外縁部は非磁性材料で外縁部以外(外周部以外)は半硬質磁性材料からなる複合シールド板を作製する工程と、
(2)Cr系軟磁性ステンレス鋼の鋼板を打ち抜いて円筒素形材を形成し、前記円筒素形材を冷間加工によりスリーブ付きキャップ素形材を作製する工程と、
(3)前記スリーブ付きキャップ素形材を温度700℃~850℃にて熱処理する工程と、
(4)熱処理された前記スリーブ付きキャップ素形材Aのキャップ内に永久磁石を内蔵した後、前記キャップの開口部を複合シールド板により蓋をして磁石構造体を組み立てる工程と、
(5)前記キャップの開口部と前記複合シールド板との境界部を溶接により接合する工程と、
(6)前記磁石構造体素体の溶接部と前記複合シールド板の吸着面とを研磨により平滑化する工程と、
(7)前記スリーブ付きキャップ素形材Aのスリーブを内周側に曲げ加工する工程と、
(8)工程(1)から(7)で作製した磁石構造体を高さ方向に着磁装置により着磁する工程と、
からなり、工程(3)については省略することも可能であることを特徴とするスリーブ付き磁石構造体の製造方法。 - 磁石式義歯アタッチメント用の磁石構造体を構成するシールドプレートの製造方法であって、
(1)Cr-Ni系ステンレス鋼ワイヤを長手方向に冷間延伸加工し、50%以上のマルテンサイト変態を生じせしめる工程、
(2)前記マルテンサイト変態した半硬質磁性材料を切断加工、または打ち抜き加工により円板状のシールド板に加工する工程と、
(3)前記シールド板の外縁部のみを非磁性改質する工程と、
(4)前記外縁部の非磁性材料と外縁部以外の半硬質磁性材料とよりなる複合シールド板を作製する工程と、
(5)磁石構造体を構成するキャップに永久磁石を内蔵し、前記複合シールド板でもって蓋をし、前記キャップと前記複合シールド板との境界部を溶接により接合した後に接合部を研磨・平滑化して、前記永久磁石と前記複合シールド板を重ねて電磁石により印可する工程と、
からなることを特徴とするシールドプレートの製造方法。 - 請求項6において、
(1)Cr-Ni系ステンレス鋼板を冷間圧延加工により20%以上のマルテンサイト変態を生じせしめる工程と、
(2)打ち抜き加工により円板状のシールド板を作製する工程と、
からなることを特徴とするシールドプレートの製造方法。
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