本発明者は、「背景技術」の欄において記載した情報の利用例に関し、上述のような問題が生じることを見出した。
このような問題を解決するために、本発明の一態様に係る情報提示システムは、実店舗における買物中の顧客による時系列的な商品の保持に関するデータである時系列買物データを取得するデータ取得部と、時系列買物データに基づいて顧客又は商品についての分類を示す分類情報を取得し、取得された前記分類情報と、時系列買物データにおいて顧客が保持又は返却した商品を示す保持商品情報とに基づく店舗分析情報を生成する情報生成部と、店舗分析情報を、実店舗の運営者が利用可能なデータとして出力するデータ出力部とを備える。
これにより、各商品に関する情報として、購入したか、又は購入を検討した顧客の行動の分析に基づく顧客又は商品についての分類を示す情報が利用可能になる。
このような分類には、行動から読み取れる顧客の心理等の状態等が反映される。したがって、例えば店舗運営者は、売場に反映させたい自店の顧客の状態をよりよく把握するための情報を取得することができる。このような情報を利用して作られた売場は、顧客には例えば利便性の高い買物経験を提供し、店舗運営者には売上の向上をもたらし得る。
例えば店舗分析情報は、顧客の急ぎの程度に関する当該顧客についての分類を示す分類情報を含んでもよい。なお、このような分類は、時間幅毎の定量的な分類でもよいし、統計的に得られた知見等に基づいて区切られる定性的な分類、例えば急ぎの程度に関しての「急いでいる顧客」、「時間に余裕のある顧客」、「中間的な顧客」のような分類であってもよい。
例えば情報生成部は、時系列買物データから顧客が実店舗で買物にかけた時間である買物時間を取得し、買物時間に基づき分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、買物時間と第一閾値との大小関係に基づいて当該顧客についての分類を決定することで分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、時系列買物データから顧客による複数品目の商品それぞれの保持を開始した保持開始間隔を取得し、保持開始間隔に基づき分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、保持開始間隔と第二閾値との大小関係に基づいて当該顧客についての分類を決定することで分類情報を取得してもよい。
顧客が買物にかける時間又は商品を手に取る間隔は、急いでいる顧客とそうでない顧客とで変化する。このような顧客の分類毎に購入される商品の傾向が店舗運営者によって把握され、店舗運営者が商品の配置又は案内表示に反映することで、例えば急いでいる顧客にとって買物がスムーズにできる売場作りが実現される。
また例えば、店舗分析情報は、顧客が商品を保持するか否かで迷った商品に関する分類、又は顧客が商品の場所の特定に時間がかかった商品についての分類を示す分類情報を含んでもよい。
例えば情報生成部は、時系列買物データから、顧客による所定の行動から商品の保持の開始までの時間である保持前経過時間を取得し、保持された商品の売行を取得し、保持前経過時間と取得した売行とに基づき商品についての分類を示す前記分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、保持前経過時間が第三閾値を超えるとき、売行が第四閾値との大小関係に基づいて当該商品についての分類を決定することで、分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、売行が第四閾値を超える場合、当該商品についての分類を、顧客が保持するか否かで迷った商品と決定することで分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、売行が第四閾値以下の場合、当該商品についての分類を、場所の特定に時間がかかった商品と決定することで分類情報を取得してもよい。
顧客がある商品を買物かごに入れる前にかかる時間は顧客の状態で変化し得る。例えば、その商品の購入の意思決定の前に迷いがある場合、その時間は長くなる。または、商品を買う意思はあるが、その商品がなかなか売場で見つからない場合も同様である。このような場合に、各商品を顧客の状態に基づいて分類して店舗運営者に提示され、店舗運営者が商品の配置又はPOP(Point Of Purchase)等に反映することで、顧客にとって商品の選択に必要な情報が得られる又は商品の探しやすい売場作りが実現される。また、店舗にとっては、販売機会の逸失が低減される。
また例えば、店舗分析情報は、前記顧客が保持の開始後に購入するか返却するかで迷った商品についての前記分類を示す前記分類情報を含んでもよい。
例えば情報生成部は、時系列買物データから、顧客による商品の返却の発生及び当該商品を示す保持商品情報を取得し、保持商品情報に基づき当該商品についての分類を示す分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、保持商品情報に基づいて商品についての返却率を算出し、返却率に基づいて、購入するか否かについての顧客の迷いやすさの程度に関する当該商品についての分類を決定することで分類情報を取得してもよい。
買物中の顧客による商品の保持の解除(商品の売場への返却)の発生は、従来は店舗運営者では把握されない情報であった。本開示における情報提示システムはこのような情報を店舗運営者に提示することが可能であり、店舗運営者は、品揃え及び価格設定等を含む販売戦略の立案にこの情報を活かし、売上の向上を図ることができる。その一方で顧客にとっては、品揃え又は価格の点でより魅力のある商品の並ぶ店舗が実現される。
また例えば、店舗分析情報は、二つ以上の商品の相互の競合の程度に関する当該商品についての分類を示す分類情報を含んでもよい。
例えば情報生成部は、時系列買物データから顧客による第一商品の保持の発生と、当該商品と異なる第二商品の返却の発生との時間間隔、及び第一商品及び第二商品をそれぞれ示す保持商品情報を取得し、保持商品情報に基づき分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、時間間隔と第六閾値との大小関係、及び保持商品情報に基づいて、第一商品と第二商品とについての相互の競合の程度に関する分類を決定することで分類情報を取得してもよい。
例えば情報生成部は、第一商品及び第二商品をそれぞれ示す商品特定情報と、実店舗で扱われる商品の部門を示す情報とを用いて第一商品の部門及び第二商品の部門を取得し、時間間隔と第六閾値との大小関係、及び第一商品の部門及び第二商品の部門の類似関係に基づいて、第一商品と第二商品とについての相互の競合の程度に関する分類を決定してもよい。
店舗運営者にとっては、競合関係にあるとわかっている商品同士であっても、売場で顧客がどのように競合商品間で検討を行っているかこれまでは把握が難しかった。本開示における情報提示システムは、顧客が保持する商品の入れ替わりからこのような情報を取得し、店舗運営者に提示することができる。店舗運営者はこのような情報を、商品間の未知の競合関係、1対1ではない商品間での競合関係の発見に利用することができる。このような商品の競合関係の情報を、店舗運営者は、品揃え、商品配置、又は顧客それぞれにカスタマイズされた広告の提示に利用することができる。顧客は、新しい商品を知る機会を店頭でより多く持つことができ、商品選択の幅が広がる。
また例えば、店舗分析情報は、グループ客であるか否かに関する顧客についての分類を示す分類情報を含んでもよい。
例えば情報生成部は、時系列買物データから、顧客による第一商品の保持の発生と、当該商品と異なる第二商品の保持の発生との時間間隔、及び第一商品及び第二商品をそれぞれ示す保持商品情報を取得し、第一商品及び第二商品をそれぞれ示す保持商品情報と、実店舗における第一商品の売場と第二商品の売場との間の移動所要時間を算出し、時間間隔が移動所要時間以下である場合、当該顧客についてグループ客であると分類を決定することで分類情報を取得してもよい。
これにより、店舗は、従来は把握が難しかったグループ客に購入される頻度の高い商品を特定するための情報を得ることができる。このような商品の情報を、店舗運営者は、品揃え、商品配置、又は店頭での顧客それぞれにカスタマイズされた広告の提示に利用することができる。
なお、本開示における情報提示システムが提供する情報は、店舗運営者のみならず、商品のメーカーによって利用されてもよい。例えば迷われる頻度の高い商品は、競合商品との差別化を図るパッケージのリニューアル、販促手法の展開、又は新商品の開発にこのような情報を利用することができる。
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。以下の実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態)
[1.構成例]
図1から図2Cを用いて実施の形態における情報提示システムを説明する。
図1は、実施の形態における情報提示システムの構成を示すブロック図である。
実施の形態における情報提示システム10は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の小売業におけるセルフサービス方式の実店舗(以下、単に店舗ともいう)において、買物中のある顧客の行動に関する情報に基づいて、例えば当該店舗の運営者に、顧客の行動又は心理等の状態を反映した売場作りに利用が可能な情報を提示する。
ここでのセルフサービス方式とは、上記のような小売業の店舗で広く採用されているものであって、基本的には次のような条件を満たすものと理解されたい。ひとつは、各商品の値段を、値札又は全品均一等の所定の価格設定によって顧客が知ることができることである。またひとつは、陳列されている商品の中から購入する商品を顧客が自由に選択することができ、選択した商品を店舗が貸し出すかご、カート、又はトレイ等に載置して保持したり、売場に戻して選択をキャンセルしたりできることである。さらにひとつは、購入する商品の精算は、保持した商品を顧客が出口付近等にあるキャッシュレジスターを備える精算所に持ち込んで行われることである。
ただし、これらの条件が厳密には満たされない店舗であっても本発明の思想は適用することができる。これらの条件を示したのは、本発明の情報提示システムが用いられる状況の具体例を提示する目的であり、本発明を限定する趣旨ではない。例えば、購入する商品の保持は顧客が持ち込むバッグ等を用いて行われてもよいし、単に手で保持されてもよい。また、精算はキャッシュレジスターを備える精算所を用いない手法で行われてもよい。また、上記のいずれの条件についても、店舗の店員による補助又は管理が介在する場合も、本開示におけるセルフサービス方式の概念に含まれる。
情報提示システム10は、読取機100及び店舗分析サーバ200を備える。
読取機100は、買物中に顧客が保持する商品を示す商品特定情報を取得する。
読取機100は、センサ110及び送信部120を備える。
センサ110は、店舗内で買物中の顧客が保持する商品から、当該商品を示す商品特定情報を取得する。
送信部120は、読取機100が取得した商品特定情報を、後述する店舗分析サーバ200に送信する。
このような読取機100は、例えば買物中の顧客によって携帯又は着用されて顧客と共に店舗内を移動する。より具体的には、図2Aに示されるような店内用の買物かご若しくは図2Bに示されるようなカート等の、顧客が商品を載置して保持するための器具(以下、商品保持器という)に備えられる機器として、又は図2Cに示されるような、顧客が手に持って使う、商品保持器とは別体のスマートフォン又はタブレット型コンピュータ等の情報端末上で実現される。ただし、図2Bでは、カートの下方のフレームの一部及び車輪を含む部分の図示が省略されている。商品保持器の例としては、他にトレイが挙げられる。
読取機100は、商品保持器に備えられることで、買物中の顧客にとってより自然に、且つ、より高い確実性で商品を識別するための情報を取得することができる。
図2Aに示される買物かごに備えられる読取機100は、センサ110の例としてセンサ111を備える。図2Bに示されるカートに備えられる読取機100は、センサ110の例として、商品を載置する場所に向けられたセンサ112を備える。図2Cに示される情報端末上で実現される読取機100は、センサ110の例として、内蔵カメラを構成するセンサ(イメージセンサ)113を備える。
センサ110は、例えば商品に付されたバーコードを読み取るための光学センサである。またはセンサ110は、例えば商品に付されたRF(Radio Frequency)タグからRFID(Radio Frequency IDentiifcation)を読み取るためのRFリーダであってもよい。バーコード又はRFIDは、例えばJAN(Japan Article Number)コード等の商品識別コードを示す。またはセンサ110は、商品の外観画像を取得するためのイメージセンサであってもよい。バーコード又はRFIDが示す情報、及び商品の外観画像が示す情報は、それぞれ本実施の形態における、商品特定情報の例である。
例えば顧客は、売場で商品を選び取る度に商品に付されたバーコードをセンサ110に向けて読取機100に読み取らせてから、買物かごの中に載置する(商品の保持の開始)。つまり、読取機100は、顧客が保持する商品を示す商品特定情報を、顧客の操作に応じて逐次読み取る。
また、顧客はいったん買物かごに入れた商品を売場に戻すときも、バーコードを読取機100に読み取らせる。この場合、顧客は返却する商品のバーコードを読み取らせることを読取機100に認識させるための操作、例えば読取機100のボタン(図示なし)を押す等してから、バーコードを読取機100に読み取らせる。
読取機100のセンサ110がRFリーダであれば、商品保持器に載置された商品を周期的にスキャンして、直前のスキャンによって得られた結果との比較で商品の保持と返却が認識されてもよい。
このように読取機100が読み取った商品特定情報は、商品代金の精算にも用いられ得る。例えば店舗内の精算所で読取機100から商品特定情報がキャッシュレジスターに送信され、キャッシュレジスターはこの商品特定情報が示す商品の合計金額を顧客に提示する。従来の精算所に見られる、店員がスキャナーで各商品のバーコードをPOS(Point Of Sales、日本語では販売時点情報管理ともいう)レジスターに取り込む作業は不要である。あるいは、商品特定情報は店舗を出る際に確定されて店舗の販売管理システムに送信され、精算はその後にクレジットカードその他の各種決済手段で行われてもよい。
従来のPOSシステムでも、精算のためにPOSレジスターを介して得られる販売情報から、時間帯別の店舗の売上、商品動向、及び商品と購入者の性別及び年代との関連付け等が把握され、店舗運営に役立てられている。本開示における情報提示システムでは、商品特定情報が精算以外の用途にも用いられる。詳細は後述する。
取得された商品特定情報は、買物かご等の商品保持器が備える、図2Aから図2Cには図示されない送信部120によって店舗分析サーバ200に向けて無線で送信される。
このような商品特定情報の読み取りから送信までの一連の処理は、読取機100が備えるプロセッサ(図示なし)が、記憶装置(図示なし)に保存されている所定のプログラムを読み出して実行することで行われる。図2Cに示される情報端末がユーザの所有物である場合、商品特定情報を店舗分析サーバ200に送信させるために店舗から提供されるプログラム(アプリ)をユーザが情報端末にインストールし、起動して店舗内で利用してもよい。
上記のような読取機100は、商品保持器又は情報端末のように、買物の行動を通して各々の顧客が使用するものによって実現され、読取機100が送信する商品特定情報は、各顧客の商品の保持に関する時系列的な情報を示すものである。
店舗分析サーバ200は、読取機100から取得した商品特定情報に基づいて、顧客による時系列的な商品の保持に関するデータである時系列データを取得する。このような情報の処理を行う店舗分析サーバ200の実現は、例えば、店舗内に設置されるサーバコンピュータ、店舗外のクラウドサーバ、若しくは店舗がチェーンストアの1つである場合には当該チェーンストアの本部が利用するホストコンピュータ、又はこれらの組み合わせ(以下、サーバコンピュータ等という)を用いてなされる。
店舗分析サーバ200は、上記のサーバコンピュータ等でプロセッサが記憶装置からプログラムを読み出し実行することで実現される機能的な構成要素として、受信部210、データ取得部220、情報生成部230、店舗マスタ240、及びデータ出力部250を備える。
店舗分析サーバ200は、読取機100から送信される商品特定情報を、受信部210を介して取得する。
データ取得部220は、受信部210によって取得された商品特定情報に基づいて、商品の保持に関するデータを取得する。上述のとおり、商品特定情報は各顧客の商品の保持に関する情報を時系列で示すものであり、商品の保持に関するデータは、各顧客の時系列的な商品の保持に関するデータである。図3は、情報提示システム10における商品特定情報の読み取りから時系列買物データの取得までの概念を説明するための図である。
読取機100が取得した商品特定情報は、店舗分析サーバ200に向けて送信される。図3で左の吹き出しにある文字列は、読取機100が取得して送信する一連の商品特定情報を含むログデータを示す。データ取得部220は、取得した商品特定情報に示される、顧客が保持を開始又は返却した商品を時系列順に示す、図3の右の吹き出しに例示されるような時系列買物データを取得する。
この例における時系列買物データには、商品特定情報に含まれていた各商品の商品識別コード、データ取得部220が当該商品識別コードをデータベース(店舗マスタ240に含まれる商品マスタ)で照合して取得した商品名、各商品の状態及びその状態の発生の時間差が相互に関連付けられたレコードとして含まれる。この商品識別コード又は商品名は、本実施の形態における保持商品情報の例である。
なお、商品特定情報が商品の外観画像である場合、例えばデータ取得部220はこの画像に対して文字認識を実行して、または機械学習によって得たモデルを用いて画像認識を実行して商品名を取得してもよい。
また、時系列買物データ中の各商品の状態とは、顧客によって各レコードの商品の保持が開始されたのか解除されたのかを示す。この例では、「保持」が保持の開始を示し、「返却」が保持の解除を示す。
時間差は、例えば売場で顧客が最初にいずれかの商品の保持を開始した時刻からその後に各商品の保持を開始又は解除するまでに経過した時間を示す。この時間の計算は、例えば商品特定情報に基づいて行われる。例えば読取機100では、店舗分析サーバ200に送信する商品特定情報に、当該商品特定情報を読み取った時刻のタイムスタンプを付する。受信部210を介して商品特定情報を受け取ったデータ取得部220は、このタイムスタンプに基づいてこの時間差を取得する。この時間差が、商品の保持に関するデータの時系列的な情報として時系列買物データの「時系列」の項目に含められる。
なお、時系列的な情報の形式は、図示のような時間差に限定されない。例えば時間差の起点は直前のレコードで示される商品の保持の開始又は解除の時刻からの時間差であってもよいし、商品の保持の開始又は解除が発生した実際の時刻であってもよい。また、時間差の場合には、顧客が最初にいずれかの商品を手にするよりも早い時間、例えば商品保持具の保持の開始の時点又は読取機100の起動の時点であってもよい。この場合、読取機100には、このような時点を時間差の起点に使うためのスイッチ又はセンサが設けられる。また、商品保持器とは別体の情報端末が読取機100として用いられる場合には、情報端末を読取機100として機能させるアプリの起動の時点、又はユーザがこのアプリでする店舗へのチェックインのタイミング等が時間差の起点であってもよい。
このようにして取得された時系列買物データは、次に情報生成部230による処理の対象となる。
情報生成部230は、時系列買物データに基づいて顧客又は商品についての分類を示す分類情報を取得し、取得した分類情報と、時系列買物データにおいて顧客が保持又は返却した商品を示す保持商品情報とに基づく店舗分析情報を生成する。
時系列買物データに基づく顧客又は商品についての分類とは、実店舗で買物中の顧客の行動、又は行動に表れる心理状態等に関する分類である。このような分類は、キャッシュレジスターでの販売実績の登録時の情報に依存するPOSシステムでは得られない。また、特許文献1で示される時系列的な情報からさらに踏み込んだものであり、店舗にとっては顧客の満足度、利便性等の向上を通じた、店舗の売上、効率等のさらなる改善に有用である。このような分類及び店舗分析情報の生成のための処理手順の詳細については、後述する情報提示システム10の動作の説明において例示する。
情報生成部230が生成した店舗分析情報は、データ出力部250によって、店舗運営者が利用可能なデータとして出力される。店舗運営者が利用可能なデータとは、例えば上記の分類と商品との相関を示すデータであり、店舗運営者は品揃え、商品の配置及び陳列、表示案内、又は販促施策の変更及び効果測定に利用することができる。
なお、出力されるデータの表現形式は限定されず、データテーブル、リスト、グラフ、マップ等、各種の形式が利用可能であり、情報提示システム10に接続されるモニタ又は携帯端末での表示、また、必要に応じて印刷が可能なデータファイルとして出力される。このデータファイルは、例えば情報提示システム10を実現するサーバコンピュータ等が備える記憶装置に保存される。店舗運営者は随時そのデータファイルにアクセスして利用することができる。
店舗マスタ240は、情報提示システム10を利用する実店舗に関する基本的な情報の集合であり、情報提示システム10を実現するサーバコンピュータ等が備える記憶装置に保存される。また、店舗マスタ240は商品マスタ及び売場マスタを含む。
商品マスタは実店舗で取り扱われる商品の情報の集合であり、例えば各商品の商品コード、商品名、及び部門(カテゴリ)等がその情報に含まれる。売場マスタは、例えば実店舗の商品配置、棚割等の情報を含む。
店舗マスタ240は、情報提示システム10においてプロセッサが所定のプログラムを実行することで実現するデータ取得部220及び情報生成部230によって参照され、情報の取得及び生成に用いられる。詳細については、後述する情報提示システム10の動作の説明において例示する。なお、店舗マスタ240は、発注システム、在庫管理システム、売上管理システム等の小売の店舗に導入されている他のシステムでも利用されるものでよい。
ここまで説明した情報提示システム10の構成は、本開示に係る情報提示システムの行構成の一例であってこれに限定するものではない。
例えば、読取機100は、情報提示システムの一部として提供されるものではなくてもよい。
また、読取機100は上述のように各顧客が個別に携帯して使用する機器ではなく、店舗内の壁、天井、又は什器などに設置される、顧客の買物の一連の行動を感知することができる装置群であってもよい。具体的には、店舗内の複数個所に設置されたカメラであってもよい。
この場合、商品の保持に関する顧客の行動は、これらのカメラによって撮影される、商品及び顧客が写る映像の映像認識によって行われる。
または、この装置群には、商品又は顧客を識別するための情報を取得するためのRFリーダ等の、カメラが備えるイメージセンサ以外のセンサ類がさらに含まれてもよい。つまり各顧客の買物行動を個別に扱って時系列で捉えることができるよう、読取機100は各顧客を識別するための情報をさらに取得する。この情報を受信する店舗分析サーバ200は、この情報を用いて各顧客の識別を実行するための顧客識別部をさらに備える。
店舗分析サーバ200では、識別した各顧客、各顧客の商品の保持又は返却の行動、及び各顧客が保持を開始又は解除した商品を互いに関連付けて図3に示されるような時系列買物データが取得される。
[2.動作]
以下では、情報提示システム10の動作を、提示するデータの種類に応じた複数の例を挙げて説明する。
なお、読取機100から取得した商品特定情報に基づいてデータ取得部220が時系列買物データを得る手順までは、いずれの種類のデータが提示される場合でも基本的には共通である。また、いずれの種類のデータでも、出力の形式は、店舗の運営者等のデータの利用者がその用途に応じて決定することができる。以下の説明は、データの種類によって異なる情報生成部230の動作を中心に述べる。
[2-1.買物時間等に基づく分類]
急いでいる人とそうでない人とでは、店舗での購入品の傾向に差があることがこれまでの実験等により知られている。したがって各店舗では、自店の急いでいる顧客(以下、急ぎ客ともいう)に特徴的な購入品の傾向がわかれば、例えばそのような品目を店舗の入口と精算所とを結ぶ最短経路上に配置することで、急ぎ客にとって利便性の高い売場を作ることができる。
図4は、情報提示システム10が各顧客についての急ぎの程度に関する分類を用いた店舗分析情報を出力するための、情報生成部230による処理の手順例を示すフローチャートである。
この例では、顧客の急ぎの程度は、店舗で1回の買物にかけた時間(買物時間)と、異なる品目の商品それぞれの保持の開始の間隔(保持開始間隔)を用いて判定される。この買物時間及び保持開始間隔を、情報生成部230は、図3に示されるような時系列買物データから取得することができる。
ある顧客の買物時間及び保持開始間隔を取得した情報生成部230は、買物時間が第一閾値以下である否か判定する(ステップS41)。買物時間が第一閾値以下である場合(ステップS41でYes)、情報生成部230は、この顧客の分類を急ぎ客と決定する(ステップS45)。
第一閾値は、例えばこの店舗の顧客全体の買物時間の平均に基づいて設定される時間長である。この買物時間の平均もまた、情報提示システム10において時系列買物データから算出して取得される。第一閾値は、この平均の買物時間より短い時間、例えば平均の買物時間の4分の1の時間長に設定される。
ステップS41を用いて顧客の分類が急ぎ客と決定されるのは、例えば急いでいるためあらかじめ決めた購入品のみを買物かごに入れて早く精算を済ませようと速やかに移動するという行動又は心理状態にある可能性が高いためである。
買物時間が第一閾値を超える場合(ステップS41でNo)、情報生成部230は、この顧客の保持開始間隔が第二閾値以下であるか否か判定する(ステップS42)。買物時間が第二閾値以下である場合(ステップS42でYes)、情報生成部230は、この顧客の分類を急ぎ客と決定する(ステップS45)。
第二閾値は、例えばこの店舗の顧客全体の保持開始間隔の平均に基づいて設定される時間長である。この保持開始間隔の平均もまた、情報提示システム10において時系列買物データから算出して取得される。第二閾値は、この平均の保持開始間隔より短い時間、例えば平均の保持開始間隔の2分の1の時間長に設定される。
ステップS42までを用いて顧客の分類が急ぎ客と決定されるのは、例えばあらかじめ決めた購入品目を急いで買物かごに入れているが、その品目数が多いため買物時間は比較的長いという行動又は心理状態にある可能性が高いためである。
保持開始間隔が第二閾値を超える場合(ステップS42でNo)、情報生成部230は、この顧客の買物時間が第八閾値を超えるか否か判定する(ステップS43)。買物時間が第八閾値を超える場合(ステップS43でYes)、情報生成部230は、この顧客の分類を時間に余裕のある顧客と決定する(ステップS47)。
第八閾値もまた、例えばこの店舗の顧客全体の買物時間の平均に基づいて設定される時間長であり、同じく顧客全体の買物時間の平均に基づいて設定される第一閾値よりも長い時間、例えば平均の買物時間と同じ時間長に設定される。
ステップS43までを用いて顧客の分類が時間に余裕のある顧客と決定されるのは、例えば特に急ぐ理由はないため、購入する商品を急いで探して買物かご等に入れる必要がなく、店舗での滞在の時間も比較的長いという行動又は心理状態にある可能性が高いためである。
買物時間が第八閾値以下の場合(ステップS43でNo)、情報生成部230は、この顧客の保持開始間隔が第九閾値を超えるか否か判定する(ステップS44)。保持開始間隔が第九閾値を超える場合(ステップS44でYes)、情報生成部230は、この顧客の分類を時間に余裕のある顧客と決定する(ステップS47)。
第九閾値もまた、例えばこの店舗の顧客全体の保持開始間隔の平均に基づいて設定される時間長であり、同じく顧客全体の保持開始間隔の平均に基づいて設定される第二閾値よりも長い時間、例えば平均の保持開始間隔と同じ時間長に設定される。
ステップS44までを用いて顧客の分類が時間に余裕のある顧客と決定されるのは、例えば特に急ぐ理由はないために、購入する商品を急いで探して買物かご等に入れる必要はないが、購入品目数が少ないために店舗での滞在の時間は特に長くもない行動又は心理状態にある可能性が高いためである。
買物時間が第九閾値以下の場合(ステップS44でNo)、情報生成部230は、この顧客の分類を、急いではいないが時間に余裕のあるわけでもない中間的な顧客と決定する(ステップS46)。
ここまでのステップで顧客の分類を決定した情報生成部230は、決定した分類を分類情報とする。情報生成部230は、さらにこの分類情報と、当該顧客が保持した商品を示す保持商品情報とに基づく店舗分析情報を生成する(ステップS48)。このようにして得られる店舗分析情報とは、例えば多数の顧客について実行された図4に示す処理の結果を統計的に処理した情報であり、より具体的には、当該店舗において急ぎ客によって購入される傾向にある商品を示す。この店舗分析情報はデータ出力部250によって、店舗運営者が利用可能なデータとして出力される。図5は、データ出力部250が出力するデータの一例を示す図である。
この例では、急いでいる顧客、時間に余裕のある顧客、及び顧客全体がそれぞれ購入した品目の部門の上位10位までの情報が提示されている。また、顧客の分類間で同一の部門は線で結ばれている。各部門は、保持商品情報が示す商品が属する部門を、情報生成部230が店舗マスタ240に含まれる商品マスタを参照して取得したものである。
このような情報を利用して、店舗運営者は、例えば上位3位までの部門の棚が入口と精算所との間の経路沿いに配置するよう棚割を変更して、急ぎ客の買物経験のクオリティを向上させて再来店を促し、売上の増加を図ることができる。
なお、上記の処理手順及び提示される情報は一例であり、以下の変形例が考えられる。
例えば、上記のような分類の決定は、買物時間及び保持開始間隔の一方のみに基づいて行われてもよい。
また、保持開始間隔に関する判定は、商品間の経路の距離に応じて正規化された上で行われてもよい。例えば保持開始間隔は、商品間の物理空間の距離に応じて補正されてもよい。より具体的には、
L:処理対象の商品と、その直前に保持が開始された商品との最短経路長(この最短経路長は、例えば店舗マスタ240の売場マスタに情報として含まれ、情報生成部230が売場マスタを参照して取得してもよい)
V:平均歩行速度(時間帯、店舗業種、通路幅、各顧客の情報が取得可能であれば、性別及び年代に合わせた数値が用いられてもよい)
K:補正係数(1.0以上の値。他の商品の前で足を止めるなどの、移動に必要な時間以外の時間、処理対象の商品の購入の検討以外に要する時間を算入するための係数)
として、
補正保持開始間隔 = 実際の経過時間 - (L/V)×K
これにより、より精度の高い情報の提示が可能になる。
また、顧客の分類は3種類ではなく、2種類又は4種類以上に分類されてもよいし、時間幅毎の定量的な分類でもよい。なお、上記の例のような定性的な分類は、例えば統計的に得られた知見等に基づいて時間幅を区切ったものである。または、買物時間及び保持開始間隔から算出される、急ぎの程度を示す指標値(急ぎ指数)等の連続値に基づく、より細分化された分類がなされてもよい。
また、上記の例では、買物時間又は保持開始間隔と閾値との大小関係に基づいて顧客についての分類が決定されているが、上記のような顧客の分類は、買物時間又は保持開始間隔には基づきながら、閾値は用いない手法を用いて決定されてもよい。例えば、ある顧客の買物時間又は保持開始間隔の、全顧客の買物時間又は保持開始間隔におけるパーセンタイルを用いて分類が決定されてもよい。
また、上記の閾値又はパーセンタイルの算出に用いられる買物時間又は保持開始間隔は、全顧客の時系列買物データから得られるものでなくてもよい。例えば、直近の一定期間の顧客、同一時間帯の顧客、又は購入品目の数が同じか若しくは近い顧客の時系列買物データから得られる買物時間又は保持開始間隔が用いられてもよい。
また、パーセンタイルに代えて、昇順又は降順での順位を用いて上記の分類が決定されてもよい。
また、店舗分析情報に示される商品は上記の例のように部門でなくてもよく、個々の商品であってもよい。また、フィルタリングによって、特定の部門、店舗内の特定のエリアにある商品等に限定した店舗分析情報が提示されてもよい。図5に示される例は、部門が食品及び飲料に絞った店舗分析情報であり得る。
また、提示される店舗分析情報の利用の形態も上記の例に限定されない。例えば、急ぎ指数と各顧客が保持又は購入した商品のリストに基づいて、店舗での買物時間が最適化されるように店舗全体の棚割が決定されてもよい。この最適化とは、急ぎ客の買物時間を短くすることのみを指すのではなく、例えば時間に余裕のある顧客にとって気づきが多く、買物自体を楽しめ、いわゆる「ついで買い」を促すような売場への変化も指す。
また、上記では、顧客は買物時間又は保持開始間隔に応じた「急ぎ」の程度の区分に分類されているが、同様の時間に応じた顧客の区分の仕方はこれに限定されない。例えば、これらの時間に応じて、購入する商品を来店前から決めている「目的買い」の顧客か否かに分類することも可能である。このような顧客は、目的の商品がある売場を効率よく回る経路で店舗内移動することが多く、保持開始間隔又はさらに買物時間も短いといった、「急ぎ客」と類似の傾向を示すためである。
また、上記の例では、店舗分析情報は、店舗運営者に販売実績の情報として利用されているが、買物中の顧客の分類に利用されてもよい。
例えば情報生成部230は、保持する商品の組み合わせ、保持開始間隔等に基づいて買物中の顧客の急ぎの程度に関する分類を暫定的に決定してもよい。データ出力部250は、顧客、この顧客について決定された分類、及びこの顧客がすでに保持している商品を示す店舗分析情報を、デジタルサイネージ又は顧客が持つ情報機器を介して顧客に商品の推薦をするシステムに出力する。そしてこのシステムによって、この分類の顧客がこの後購入する可能性の高い商品が当該顧客に案内されてもよい。
また、店舗分析情報は、店舗で扱われる商品のメーカーに提示されて利用されてもよい。より具体的な例を挙げると、メーカーには、例えばそのメーカーのある製品が急ぎ客によって購入される傾向にあるという情報が店舗分析情報に基づいて提供される。この情報を得たメーカーは、急ぎ客が店頭で見つけやすいようパッケージのデザインを変更したり、POP広告を作成したりして配布することができる。メーカーにとっては、従来は店頭での観察、録画の確認、アンケート等によって時間と費用をかけてようやく把握し得るような需要者の店頭での行動又は心理状態に関する情報をより容易に得て、よりその行動又は心理状態に沿った商品開発が可能になる。
[2-2.商品保持の開始前の経過時間に基づく分類]
次に、商品を買物かごに入れる前にかかる時間に基づく分類の処理について説明する。
例えば、ある商品の購入の意思決定の前に迷いが顧客にある場合、入店からその商品を買物かごに入れるまで、又は直前に商品を買物かごに入れてから(又は売場に戻してから)その商品を買物かごに入れるまでにかかる時間は長くなる。また、商品を買う意思はあるが、その商品がなかなか売場で見つからない場合も同様である。このような状況が発生しやすい商品が分かれば、店舗運営者は、その商品の購入を促す情報を店頭で提供したり、商品をより見つけやすい位置に変更したりする等して潜在的な販売機会の逸失を低減することができる。
図6は、情報提示システム10が各商品について上記のような商品に該当するものを分類した店舗分析情報を出力するための、情報生成部230による処理の手順例を示すフローチャートである。
この例では、顧客にとっての商品の購入に関する迷い又は場所の特定の困難のある商品であるか否か、売場での各商品の保持の開始前の経過時間(保持前経過時間)と、各商品の売行を用いて判定される。この保持前経過時間を、情報生成部230は、図3に示されるような時系列買物データから取得することができる。また、売行に関する情報を、時系列買物データに示される各商品について、店舗がPOSシステムを用いて取得する販売実績データを参照することで取得することができる。なお、ここでの売行とは、例えば販売個数であるが、これに限定はされない。
ある顧客の保持前経過時間を取得した情報生成部230は、保持前経過時間が第三閾値以下であるか否か判定する(ステップS61)。保持前経過時間が第三閾値以下である場合(ステップS61でYes)、情報生成部230は、この商品の分類を通常の商品と決定する(ステップS63)。
第三閾値は、例えばこの店舗全体の保持前開始時間の平均に基づいて設定される時間長である。この保持開始間隔の平均は、情報提示システム10において時系列買物データから算出して取得することができる。
保持前経過時間が第三閾値を超える場合(ステップS61でNo)、情報生成部230は、この商品の売行と第四閾値との大小関係を判定する(ステップS62)。第四閾値は、例えば上述の販売実績データから、当該商品の属する部門の各商品の売行の平均に基づいて設定される個数の値である。
この商品の売行が第四閾値以下である場合(ステップS62でNo)、情報生成部230は、この商品の分類を、場所の特定に時間がかかった商品と決定する(ステップS64)。この商品の売行が第四閾値を超える場合(ステップS62でNo)、情報生成部230は、この商品の分類を、顧客が購入のために保持するか否かで迷った商品と決定する(ステップS65)。
ステップS62を用いて商品が上記のとおり分類されるのは、売行の高い商品は、店舗内での場所はすでに顧客に把握されているものの、何らかの事情で顧客が購入する商品の決定に時間がかかっている可能性が高いためである。何らかの事情とは、例えば同部門内で取り扱われる品目数が多いために、商品間の違いの認識が顧客にとって困難である場合、新商品の投入の頻度が比較的高いか品目数が多いために、顧客に新商品と従来商品との間での迷いが発生しやすい場合が考えられる。また、売行が低い商品は、商品の売場の場所が分かりにくい可能性、又は顧客は自分が買うつもりの商品がある売場の場所を知っているが、その商品が棚の中での場所又は陳列状態のせいで目立ちにくい可能性が高いためである。
ここまでのステップで商品の分類を決定した情報生成部230は、決定した分類を分類情報とする。情報生成部230は、さらにこの分類情報と、当該商品の保持商品情報とに基づいて店舗分析情報を生成する(ステップS66)。
このようにして得られる店舗分析情報とは、例えば所定の期間にわたって実行された図6に示す処理の結果を統計的に処理した情報であり、上記のように決定された各分類に属する商品を示す。この店舗分析情報は、データ出力部250によって店舗運営者が利用可能なデータとして出力される。例えば各分類に属する商品のリストとして店舗運営者に提示されてもよい。
このような情報を利用して、店舗運営者は、例えば場所の特定に時間がかかった商品を含む棚での各商品の場所又はフェイス数の変更、POP広告を用いた販売促進などを実行することができる。これにより、顧客にとってはこの商品が見つけやすくなり、買物がしやすくなり、店舗にとっては販売機会の逸失を低減することができる。また、顧客が保持するか否かで迷う商品については、店舗運営者は、より売りたい商品の販売促進又は商品間の差異に関する情報の提供のためのPOP広告の掲出、又は価格設定の変更などによって、手に取らせて保持することを促すことができる。
なお、顧客は購入を迷った上でいずれも購入しない、又は両方を購入するという選択もし得るため、店舗運営者はこれにより販売機会の逸失の低減を図り、売上の向上につなげることができる。
なお、上記の処理手順、用いられる情報、及び提示される情報は一例であり、変形例が考えられる。
例えば、上述の保持開始間隔の場合と同様に、保持前経過時間は、商品間の物理空間の距離に応じて補正されてもよい。より具体的には、
L:処理対象の商品と、その直前に保持が開始又は保持が解除された商品との最短経路長
V:平均歩行速度(時間帯、店舗業種、通路幅、各顧客の情報が取得可能であれば、性別及び年代に合わせた数値が用いられてもよい)
K:補正係数(1.0以上の値。他の商品の前で足を止めるなどの、移動に必要な時間以外の時間、処理対象の商品の購入の検討以外に要する時間を算入するための係数)
として、
補正保持前経過時間 = 実際の経過時間 - (L/V)×K
これにより、より精度の高い情報の提示が可能になる。
また、例えばチェーンストアであれば、第四閾値として、自店舗での売行の平均に限られず、規模及び立地の類似する他店舗での販売実績に基づく個数が用いられてもよい。
また、ステップS62における判定は、第四閾値を用いる代わりに、k-means法などの教師なし機械学習によってクラスタリングを行い、保持前経過時間及び売上に応じて適切なクラスタに含まれる商品が、各分類に属すると判定されてもよい。
また、上記の例では、保持前経過時間又は売行と閾値との大小関係に基づいて商品についての分類が決定されているが、上記のような商品の分類は、保持前経過時間又は売行基づきながら、閾値は用いない手法を用いて決定されてもよい。例えば、ある顧客の保持前経過時間の、全顧客の保持前経過時間に対するパーセンタイルを用いて分類が決定されてもよい。また、ある商品の売行の、同部門の各商品の売行におけるパーセンタイルを用いて分類が決定されてもよい。
また、上記の閾値又はパーセンタイルの算出に用いられる保持前経過時間又は売行は、全顧客の時系列買物データから得られるものでなくてもよい。例えば、直近の一定期間の顧客、又は同一時間帯の顧客の時系列買物データから得られる保持前経過時間又は売行が用いられてもよい。
また、パーセンタイルに代えて、昇順又は降順での順位を用いて上記の分類が決定されてもよい。
また、分類は個別の商品に関してではなく、商品の部門についてなされてもよい。この場合、売行の平均は、例えば上記のような他店舗の数値又は他店舗若しくは同店舗の部門間の売行の構成比等に応じて算出される値が用いられてもよい。
また、このような分類を示す店舗分析情報も、店舗で扱われる商品のメーカーに提示されて利用されてもよい。例えば場所が分かりにくい商品と分類された商品のメーカーは、当該商品のパッケージに、当該商品の特徴に関する情報を追加したり、視認性を向上させたりするための変更を加えることができる。
[2-3.商品保持の開始後の返却に基づく分類]
次に、商品の返却の発生率(以下、返却率という)に基づく分類の処理について説明する。
例えば、顧客が購入を迷う商品では、いったんは保持されても精算までに売場に返却される状況が、そうでない商品よりも高い頻度で発生すると考えられる。上述したように、顧客は購入を迷った上でいずれも購入しない、又は両方を購入するという選択もし得るため、店舗はこれにより販売機会を逸失している可能性がある。また顧客にとっては、例えば決め手を欠くためにいずれも買わなければ、その代わりに何かを買うか、又は何を買うかの検討をする時間と手間がかかり、やむを得ず両方を購入するような場合には、無用な出費がかかり、買物経験のクオリティが下がる。
店舗運営者は、このような商品を把握する情報が得られれば、例えばPOP広告で商品情報を顧客に提示することで、販売機会の逸失を低減し、売上の向上を図ることができる。また、顧客に対し、商品に関する情報を得た上で購入する商品を決定して、時間又は費用の無駄を抑えたクオリティの高い買物経験の場を提供することができる。
図7は、情報提示システム10が返却の発生率に基づく各商品についての分類を用いた店舗分析情報を出力するための、情報生成部230による処理の手順例を示すフローチャートである。
この例では、購入するか返却するかで迷った商品についての、購入するか否かについての顧客の迷いやすさの程度に関する分類が、当該商品の返却率に基づいて判定される。各商品の返却率を、情報生成部230は、図3に示されるような時系列買物データから算出して取得することができる。例えば、ある商品についての発生率は、当該商品の保持開始の総発生回数に対する返却の総発生回数の割合として算出される。
ある商品について返却率を取得した情報生成部230は、この発生率が所定の閾値よりも大きいか否か判定する(ステップS71)。発生率が所定の閾値より大きい場合(ステップS71でYes)、情報生成部230は、この商品の分類を、購入するか否かについて顧客が迷いやすい商品と決定する(ステップS72)。
この所定の閾値は、情報提示システム10において、例えば上記の時系列買物データから算出される、この商品の属する部門全体での返却率に基づいて設定される確率である。
返却率が当該閾値以下である場合(ステップS71でNo)、この商品の分類を、顧客によって購入が特に迷われやすくはない商品と決定する(ステップS73)。
ここまでのステップで商品の分類を決定した情報生成部230は、決定した分類を分類情報とする。情報生成部230は、さらにこの分類情報と、当該商品の保持商品情報とに基づいて店舗分析情報を生成する(ステップS74)。
このようにして得られる店舗分析情報とは、例えば所定の期間にわたって実行された図7に示す処理の結果を統計的に処理した情報であり、上記のように決定された各分類に属する商品を示す。この店舗分析情報は、データ出力部250によって店舗運営者が利用可能なデータとして出力される。例えば各分類に属する商品のリストとして店舗運営者に提示されてもよい。
このような情報を利用して、店舗運営者は、より売りたい商品の販売促進又は商品間の差異に関する情報の提供のためのPOP広告の掲出、又は価格設定の変更などをすることができる。これにより、店舗運営者は顧客の買物経験のクオリティの向上及び販売機会の逸失の低減を図り、売上の向上につなげることができる。
なお、上記の処理手順、用いられる情報、及び提示される情報は一例であり、変形例が考えられる。
例えば店舗分析情報は、返却率に基づく、迷われやすさの程度を示す指標値(迷われ指数)等の連続値に基づく分類を含んでもよい。より具体的な例として、
迷われ指数=exp(返却率-閾値)/(1+exp(返却率-閾値))
のように算出されてもよい。
また、分類は閾値との比較ではなく、商品の部門内で返却率の降順若しくは昇順又はパーセンタイルに基づいてなされてもよい。
また、このような分類を示す店舗分析情報も、店舗で扱われる商品のメーカーに提示されて利用されてもよい。例えば、迷われやすい商品のメーカーは、競合商品との差別化を図るパッケージのリニューアル、サイズ違い商品の発売、販促手法の展開、又は新商品の開発にこのような情報を利用することができる。
なお上述の2-2.における迷いの分類とは、買物中の行動において、商品を保持するまでの迷いであるか、いったん保持した後の迷いであるかという点で異なる。店舗分析情報の利用者は、この点を意識して販売戦略を立案することができる。
[2-4.商品間の競合に関する分類]
店舗運営者にとっては、商品間の競合関係は一般的な知識、感覚及び経験則からある程度把握し得る。しかしながら、売場で顧客が競合関係にある商品間でどのように検討を行っているかは、店頭での観察、録画の確認、アンケート等の特殊な調査以外では把握が難しかった。また、1対1ではない商品間での競合関係の発見は特に難しい。
ここで、顧客が保持する商品は、競合する商品間での入れ替わりが発生し得る。情報提示システム10では、このような情報を取得して店舗運営者に提示することができる。
図8は、情報提示システム10が商品間の競合関係に関する分類を用いた店舗分析情報を出力するための、情報生成部230による処理の手順例を示すフローチャートである。
この例では、商品の競合関係の有無が、ある商品での保持の発生、この商品と品目の異なる商品の返却の発生、各商品の保持商品情報に基づいて得られる各商品の部門間の関係を用いて判定される。情報生成部230は、このような商品の保持の発生及び返却の発生を図3に示されるような時系列買物データから取得することができる(ステップS81)。また、各商品の部門間の関係を、保持商品情報が示す商品について商品マスタを参照して取得することができる。
ある顧客の1回の買物分の時系列買物データから、ある商品(以下、第一商品とする)での保持の発生及びこの商品と品目の異なる商品(以下、第二商品とする)の返却の発生を検出した情報生成部230は、これらの発生に関する情報が、競合関係の存在を示す又は否定する条件に適合するか判定する。より具体的には、情報生成部230は、時系列買物データから取得する第一商品の保持の発生と第二商品の返却の発生の時間間隔の情報、上記の第一商品及び第二商品それぞれの保持商品情報及び商品マスタを用いて取得した第一商品及び第二商品それぞれの部門の情報が所定の条件に合致するか否かを判定する。これらの条件について図9A及び図9Bに示す例を参照して説明する。
図9Aは、競合関係の存在を示す条件(以下、競合適格条件ともいう)の例(a)から(e)を表にした図である。矢印は時系列での発生順を示し、各商品名(商品A等)を囲む実線は、各商品の保持の発生、破線は返却を示す。以下各例について説明する。
条件例(a)は、一対一の商品間での競合関係の存在を判定するための条件の例である。
この例では、いったん保持された商品Aが返却された後、商品Aの返却から閾値以下の時間間隔で商品Bの保持が発生した場合、商品Aと商品Bとは競合すると判定される。
または、商品Bが商品Aと類似する部門に属する場合に商品Aと商品Bとは競合すると判定される。複数の部門が類似するとは、例えばツリー構造で設定される複数の部門の親部門(1階層上の部門)が共通する場合、これらの部門が類似する。
なお、部門同士が類似するとの判定の基準である階層の数は、1階層に限定されず、適宜設定されてもよい。また、商品の部門がツリー構造で設定されていない場合、又はツリー構造で設定されている場合にも例外的な部門間の類似関係が、別途規定され、情報生成部230が参照可能なテーブル等のデータとして情報提示システム10に備えられていてもよい。部門同士が類似するとの判定の基準次第では、従来は競合しないと判定されがちな商品間での競合関係の存在が判定できる。例えば商品Aがアーモンドチョコレートであり、商品Bがカフェラテであるような場合でも、競合関係が存在すると判定され得る。
条件例(b)は、一対複数の商品間での競合関係の存在を判定するための条件の例である。
この例では、いったん保持された商品A及び商品Cが順に返却された後、商品Aの返却から閾値以下の時間間隔で商品Bの保持が発生した場合、商品A及びCと商品Bとは競合すると判定される。
または、商品Aの返却、商品Cの返却、及び商品Bの保持が所定の閾値以下の時間間隔で発生した場合、商品A及びCと商品Bとは競合すると判定される。
または、商品A及び商品Cのそれぞれと類似する部門に商品Bが属する場合、商品A及びCと商品Bとは競合すると判定される。
例えば商品Aが鮭おにぎり、商品Cが梅おにぎり、商品Bが弁当であって、顧客が2つのおにぎりの代わりに1つの弁当を選択した場合でも、競合関係が存在すると判定され得る。
条件例(c)も、一対一の商品間での競合関係の存在を判定するための条件の例であり、条件例(a)とは、商品Aの返却と商品Bの保持の発生の順序が入れ替わったケースである。
この例では、商品Bの保持の発生から閾値以下の時間間隔で商品Aの返却が発生した場合、商品Aと商品Bとは競合すると判定される。
または、商品Bが商品Aと類似する部門に属する場合に商品Aと商品Bとは競合すると判定される。
条件例(d)も、一対複数の商品間での競合関係の存在を判定するための条件の例であり、条件例(b)とは、商品A及び商品Cの返却と商品Bの保持の発生の順序が入れ替わったケースである。
この例では、商品Bの保持の発生から閾値以下の時間間隔で商品A及び商品Cの返却が発生した場合、商品Bと商品A及びCとは競合すると判定される。
または、商品Bの保持、商品Aの返却、及び商品Cの返却が所定の閾値以下の時間間隔で発生した場合、商品Bと商品A及びCとは競合すると判定される。
または、商品Bと類似する部門に商品A及び商品Cのそれぞれが属する場合、商品Bと商品A及びCとは競合すると判定される。
また、上記の条件例を複数組み合わせて用いることで、複数の商品の購入又は返却の発生順序がより複雑な場合にも競合関係の有無を判定することができる。
条件例(e)では、条件例(a)と条件例(c)とを組み合わせて用いることで、商品Aと商品Bとの間に競合関係、及び商品Bと商品Cとの競合関係があると判定される。買物の場面例に照らすと、顧客は商品A及び商品Cを買物かごに入れた後に、商品Aを返却すると速やかに代わりに商品Bを買物かごに入れている。この時点で、条件例(a)に照らして商品Aと商品Bとが競合すると判定される。ここで、商品Bを買物かごに入れてその中を見た顧客は、商品Bを購入するならば商品Cも不要であると考えて、すぐさま商品Cを返却する。ここで、今度は条件例(c)に照らして商品Bと商品Cとが競合すると判定される。
このように、本実施の形態における情報提示システム10では、買物行動の中で通常起こる商品の保持の開始及び返却の発生に表れる顧客心理にとっての競合関係を検出することができる。
図9Bは、競合関係の不存在を示す条件(以下、競合不適格条件という)の例(f)及びその例外を示す条件例(g)を表にした図である。
条件例(f)では、2度目の商品Aの保持が発生してから閾値以下の時間間隔で商品Aの返却が発生した場合、その後に商品Bの保持の開始があっても商品Aと商品Bとは競合しないと判定される。2度目の商品Aの保持の発生は例えば商品のバーコードの二重スキャンなどの顧客の誤操作によるものである可能性が高いため、このような場合には商品Aと商品Bとの間に競合関係はないと判定される。
これに対し条件例(g)では、2度目の商品Aの保持が発生してから商品Aの返却の発生までは短時間であるが、その間に商品Bの保持がさらに発生している場合に、2度目の商品Aの保持は上記のような誤操作によるものではない可能性が高いため、商品Aと商品Bとの間に競合関係があると判定される。
これらの条件例を用いた判定において、時間間隔と大小関係が比較される閾値は、本実施の形態における第六閾値の例である。
ステップS82において、情報生成部230は、第一商品の保持の発生と第二商品の返却の発生の時間間隔の情報、上記の第一商品及び第二商品それぞれの保持商品情報及び商品マスタを用いて取得した第一商品及び第二商品それぞれの部門の情報が、競合不適格条件、つまり上記の条件例のうち、条件例(f)に合致するか否か、合致する場合は条件例(g)に合致しないか判定する。
これらの情報が競合不適格条件に合致する場合(ステップS82でYes)、情報生成部230は、第一商品及び第二商品の分類を、相互に競合がない商品と決定する(ステップS85)。
これらの条件が競合不適格条件に合致しない場合(ステップS82でNo)、情報生成部230は、さらにこれらの条件が競合適格条件、つまり上記の条件例のうち、条件例(a)から(e)のいずれかに合致するか否か判定する(ステップS83)。
競合適格条件に合致しない場合、(ステップS83でNo)、情報生成部230は、第一商品及び第二商品の分類を、相互に競合がない商品と決定する(ステップS85)。
競合適格条件に合致する場合、(ステップS84でYes)、情報生成部230は、第一商品及び第二商品の分類を、相互に競合する商品と決定する(ステップS84)。
ここまでのステップで商品の分類を決定した情報生成部230は、決定した分類を分類情報とする。情報生成部230は、さらにこの分類情報と、当該商品の保持商品情報とに基づいて店舗分析情報を生成する(ステップS86)。
このようにして得られる店舗分析情報とは、例えば所定の期間にわたって実行された図8に示す処理の結果を統計的に処理した情報であり、上記のように決定された各分類に属する商品を示す。この店舗分析情報は、データ出力部250によって店舗運営者が利用可能なデータとして出力される。例えば、競合関係にあると判定された頻度が高い商品の組み合わせをその頻度の順に示すリストであってもよい。
なお、上記の処理手順及び提示される情報は一例であり、以下の変形例が考えられる。
例えば、商品の部門の類似関係は用いず、顧客の1回の買物において、ある商品の保持の発生とその他の品目の商品の返却の発生の共起の頻度の統計に基づいて、商品間の競合に関する判定がなされてもよい。有用な店舗分析情報が取得されるまで時間がかかる可能性は高いが、従来全く知られていなかった競合関係又は買い合わせを示す店舗分析情報の取得が見こまれる。
また、商品間の競合関係は、上記のように競合関係の有無ではなく、例えば強弱として店舗分析情報に示されてもよい。より具体的な例を挙げると、部門のツリー構造内での部門間の距離、または上記の競合関係にあると判定された頻度に基づいて求められる商品間の競合関係の強弱を示す指標値のような連続値に基づいて商品の分類がなされてもよい。
店舗運営者は、このような商品間の競合に関する情報に基づいて、品揃え、商品の配置、提案型のPOP広告等を検討し、売上の向上を図ることができる。また、顧客にとっては、例えば従来購入してきた商品の代替商品となり得る新たな商品又は商品の組み合わせの提案を受けることで、よく買物をする店舗でのマンネリの解消又はより幅広い選択肢からの買物ができることでの満足度の向上といった買物経験のクオリティの向上が見込まれる。
また、上記の例では、店舗分析情報は、店舗運営者に販売実績の情報として利用されているが、買物中に利用されてもよい。例えば、データ出力部250は、顧客、この顧客が返却した商品、及び返却された商品とともに競合すると分類された商品を示す店舗分析情報を、デジタルサイネージ又は顧客が持つ情報機器を介して顧客に商品の推薦をするシステムに出力する。そしてこのシステムによって、返却された商品と競合する商品が顧客に案内されてもよい。あるいは、店舗が売りたい商品と競合であると分類された商品の保持を開始した顧客に、店舗が売りたい商品が案内されてもよい。
また、このような店舗分析情報も、店舗で扱われる商品のメーカーに提示されて利用されてもよい。新たに分かる競合関係から、メーカーは例えば従来とは異なる市場又は販促活動のヒントを得ることができる。
[2-5.顧客の人員構成に関する分類]
従来は顧客がグループであること自体を、販売実績データとの結び付けが難しかったため、グループ特有の商品の購入に見られる傾向に関する情報は個人客の情報に比べて乏しかった。
情報提示システム10で取得される、複数の商品の保持の発生の時間間隔の情報を用いれば、所定の場合に顧客がグループであると判定することができる。以下、このような場合について説明する。
図10Aは、ある店舗における商品の部門別の配置を示す図である。また、図10Aには、この店舗のある顧客がした買物での動線が矢印で示される。図10Bは、この顧客がしたこの時の買物で取得された時系列買物データに示される、保持商品の部門と保持開始の時間間隔を一部抽出して示す図である。
図10Aと図10Bとを対比すると、例えば精肉の売場からペットボトル飲料までの売場までは比較的距離があるにもかかわらず、精肉の商品の保持の発生とペットボトル飲料の保持の発生との時間間隔は3秒と他の商品間の時間間隔と比較して、売場間の距離に対して短い。同様に、惣菜の商品の保持の発生と雑誌の保持の発生との時間間隔も、2秒と売場間の距離に対してより短い。売場間でこのような移動は人の移動速度を考えれば不可能であり、複数人での買物である可能性が高いことが推測される。
情報提示システム10では、図11に例示される処理手順で、顧客がグループ客であるかグループ客でないかの分類を決定し、売場分析情報を生成する。
この例では、顧客による商品の保持の発生の時間間隔及び、顧客が保持した商品を示す保持商品情報、及び顧客が保持した商品の売場間の経路の移動に係る所要時間(移動所要時間)が用いられる。この時間間隔及び保持商品情報を、情報生成部230は、図3に示されるような時系列買物データから取得することができる(ステップS111及びS112)。また、顧客が保持した商品の売場間の経路に係る平均的な時間長は、保持商品情報が示す商品について売場マスタを参照して取得することができる。例えば売場マスタには、各部門の売場間の最短経路の距離が示されている。この場合、情報生成部230は、この距離と人の平均的な歩行速度から移動所要時間を算出する。または、売場マスタには、各部門の売場間の最短経路の距離に応じた平均的な移動所要時間が直接示されていてもよい。
これらの情報を取得した情報生成部230は、時間間隔が移動所要時間以下であるか否か判定する(ステップS113)。
時間間隔が移動所要時間以下である場合(ステップS113Yes)、情報生成部230は、この顧客の分類をグループ客と判定する(ステップS114)。時間間隔が移動所要時間を超える場合(ステップS113No)、情報生成部230は、この顧客の分類をグループ客ではない客と決定する(ステップS115)。
ここまでのステップで顧客の分類を決定した情報生成部230は、決定した分類を分類情報とする。情報生成部230は、さらにこの分類情報と、当該顧客が保持した商品を示す保持商品情報とに基づく店舗分析情報を生成する(ステップS116)。
このようにして得られる店舗分析情報とは、例えば所定の期間にわたって実行された図11に示す処理の結果を統計的に処理した情報であり、上記のように決定された各分類に属する顧客が購入した商品を示す。この店舗分析情報は、データ出力部250によって店舗運営者が利用可能なデータとして出力される。例えば各分類に属する顧客が購入した商品のリストとして店舗運営者に提示されてもよい。
このような情報を利用して、店舗運営者は、例えばグループ客の購入頻度が高い商品の近くにまとめた売場づくりをし、また、この売場の案内表示をすることができる。また、その売場の周辺は、通路を広く取るといった売場設計をすることができる。これにより、グループ客の顧客にとっては利便性が増して買物経験のクオリティが向上する。店舗にとってはグループ客の来店頻度の向上が図られる、グループ客は客単価が高く、売上の向上につなげることができる。
(他の実施形態)
上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(central processing unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の店舗分析サーバを実現するソフトウェアプログラムは、次のようなプログラムである。
すなわち、このプログラムはコンピュータに、実店舗において買物中の顧客が保持する商品から当該商品を示す商品特定情報をセンサで逐次読み取る読取機から、この商品特定情報を取得させ、この商品特定情報に基づいて、当該顧客による時系列的な商品の保持に関するデータである時系列買物データを取得させ、この時系列買物データに基づいて顧客又は商品についての分類を示す分類情報を取得させ、この分類情報と、顧客が保持又は返却した商品を示す保持商品情報とに基づく店舗分析情報を生成させ、この店舗分析情報を、上記の実店舗の運営者が利用可能なデータとして出力させる。
以上、一つ又は複数の態様に係る情報提示システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれてもよい。