JP7120145B2 - 型取り用シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴム型 - Google Patents
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Description
特に、電子機器、事務機、家庭電器、自動車部品などの分野では、商品開発段階や商品見本作製などの際に用いるプロトタイプ成形において、費用や所要期間の改善に効果的であることや、作業性が良好であることなどの点から、シリコーンゴム組成物を用いた型取り材料として付加反応型の液状シリコーンゴム組成物が多用されるようになってきた。
このような問題を解決するために、シリコーンゴム組成物に離型成分を添加し、離型性を向上する手法について様々な検討がなされている。
例えば、非反応性シリコーンオイルを配合する方法(特許文献1)、ジメチルシリコーンオイルを油層とした油中水型エマルジョンを配合する方法(特許文献2)、フェニル基含有ジメチルシリコーンオイルブリード成分を配合する組成物、高級脂肪酸または高級脂肪酸金属塩、分子末端にアルコキシシラン基を有するジメチルシリコーンオイルを配合する方法(特許文献3~5)、水を配合する方法(特許文献6)、ワックスを配合する方法(特許文献7)などが報告されている。
しかし、これらの手法では、シリコーンゴムの架橋に関与しない離型剤を配合するため、シリコーンゴム型の透明性や機械的強度の低下を招き易く、添加した離型剤が滲出して複製品が汚損するため用途によっては適しておらず、また、繰り返し使用による離型剤の枯渇に伴って離型性が悪化するという問題もあった。
1. (A)ケイ素原子と結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均式(1)
(R1 3SiO1/2)s[R1 1(H)SiO2/2]t(R1 2SiO2/2)u (1)
(式中、R1は、それぞれ独立して、付加反応性炭素-炭素不飽和結合を有しない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、sは、0または2であり、tおよびuは、2≦t、5≦t+u≦800、かつ、0.1≦t/(t+u)≦0.4を満たす数を表す。)
で表される直鎖状または環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基1個あたりの(B)成分中のケイ素原子と結合した水素原子の数が0.5~5.0個となる量、および
(C)ヒドロシリル化反応触媒
を含有することを特徴とする型取り用シリコーンゴム組成物、
2. (D)シリカを、(A)成分100質量部に対して5~100質量部含有する1の型取り用シリコーンゴム組成物、
3. 1または2の型取り用シリコーンゴム組成物からなるガラス用型取り剤、
4. 1または2の型取り用シリコーンゴム組成物を硬化させなるシリコーンゴム型、
5. 4のシリコーンゴム型を用いることを特徴とするエポキシ樹脂製複製品の製造方法
を提供する。
なお、本発明において、型取り用シリコーンゴム組成物とは、未硬化状態で流動性を有し、原型の全表面または一部の表面に、注型または塗布のような方法で接触させ、その状態で硬化させて樹脂などによる複製に供する型(型取り用の母型)を形成する未硬化状態の(液状)の組成物をいう。
また、本発明において、離型性とは、硬化した型(母型)の原型からの離型性のみでなく、得られた型(母型)からの複製品の離型性を含める用語として用いる。
(A)ケイ素原子と結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン
(B)下記平均単位式(1)
(R1 3SiO1/2)s[R1 1(H)SiO2/2]t(R1 2SiO2/2)u (1)
(式中、R1は、それぞれ独立して、付加反応性炭素-炭素不飽和結合を有しない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、sは、0または2であり、tおよびuは、2≦t、5≦t+u≦800、かつ、0.1≦t/(t+u)≦0.4を満たす数を表す。)
で表される直鎖状または環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(A)成分は、ケイ素原子と結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~5個有するオルガノポリシロキサンである。2個未満では組成物の硬化が不十分になる。また、上限は特に制限されないが、硬化物が脆くなることを防ぐという点から、10個以下が好ましい。
ケイ素原子に結合したアルケニル基としては、特に限定されるものではなく、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル基等の炭素原子数2~8のものが好ましく、炭素原子数2~4のものがより好ましく、ビニル基がより一層好ましい。
このアルケニル基は、分子鎖末端および分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)のいずれかまたは両方に存在してもよいが、少なくとも分子鎖両末端に存在することが好ましい。
その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル基等の直鎖または分岐のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、F、Cl、Br等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、そのような基の具体例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;2-シアノエチル基等のシアノ置換炭化水素基等が挙げられる。
これらの中でもメチル基が好ましい。
R2 cR3 dSiO(4-c-d)/2 (1)
(式中、R2は、それぞれ独立して、付加反応性炭素-炭素不飽和結合を有しない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、R3は、それぞれ独立してアルケニル基を表し、cは1.9~2.1、dは0.005~1.0、かつ、c+dは1.95~3.0を満たす数である。)
R3のアルケニル基としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基として上で例示した基と同様のものが挙げられるが、ビニル基が好ましい。
cは1.95~2.0の数が好ましく、dは0.01~0.5の数が好ましく、c+dは1.96~2.5を満たすことが好ましい。
ViR2 2SiO(R2 2SiO)eSiR2 2Vi (3)
ViR2 2SiO(R2ViSiO)f(R2 2SiO)gSiR2 2Vi (4)
Vi2R2SiO(R2 2SiO)eSiR2Vi2 (5)
Vi3SiO(R2 2SiO)eSiVi3 (6)
Vi2R2SiO(R2ViSiO)f(R2 2SiO)gSiR2Vi2 (7)
Vi3SiO(R2ViSiO)f(R2 2SiO)gSiVi3 (8)
R2 3SiO(R2ViSiO)h(R2 2SiO)gSiR2 3 (9)
(式中、Viは、ビニル基を意味する(以下同様)。R2は、上記と同じ意味を表す。)
特に、eは、10≦e≦10,000を満たす整数が好ましく、50≦e≦2,000を満たす整数がより好ましい。
また、fおよびgは、10≦f+g≦10,000、かつ、0≦f/(f+g)≦0.2を満たす整数が好ましく、50≦f+g≦2,000を満たす整数がより好ましい。
hは2以上の整数である。)
hは、2以上の整数であるが、2≦h、10≦f+g≦10,000、かつ、0≦h/(g+h)≦0.2を満たす整数が好ましく、50≦g+h≦2,000を満たす整数がより好ましい。
なお、(A)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(B)成分は、下記平均単位式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化反応することにより架橋剤として作用する。
(R1 3SiO1/2)s[R1 1(H)SiO2/2]t(R1 2SiO2/2)u (1)
(式中、R1は、それぞれ独立して、付加反応性炭素-炭素不飽和結合を有しない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、sは、0または2であり、tおよびuは、2≦t、5≦t+u≦800、かつ、0.1≦t/(t+u)≦0.4を満たす数を表す。)
sは、0または2であり、即ち、(B)成分は直鎖状または環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、sは好ましくは2、即ち、直鎖状の構造である。
tおよびuは、2≦t、5≦t+u≦800、かつ、0.1≦t/(t+u)≦0.4を満たす数であるが、tは、好ましくは2~300の数であり、より好ましくは3~200の数である。また、t/(t+u)は0.14~0.25の範囲が好ましい。
より具体的には、下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。なお、式中、Meは、メチル基を意味する(以下同様)。
なお、(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(C)成分は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応触媒である。
その具体例としては、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0または6である。)等の塩化白金、塩化白金酸および塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム-オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸または塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとの錯体などの白金族金属系触媒が挙げられる。
なお、(C)成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の型取り用シリコーンゴム組成物には、硬度および引張り強さなどの物理的強度の向上のため、(D)成分としてシリカを添加してもよい。
シリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ(石英粉)、沈降性シリカ、これらの表面を疎水化処理したシリカ等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
表面処理剤の使用量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5~50質量部、より好ましくは1~40質量部、より一層好ましくは2~30質量部である。表面処理剤の使用量が上記範囲内であると、組成物中に表面処理剤またはその分解物が残らず、流動性が得られ、経時で粘度が上昇することを抑制できる。
本発明の型取り用シリコーンゴム組成物には、組成物を調製する際や、型取りの際などの加熱硬化前に、増粘やゲル化を起こさないようにヒドロシリル化反応触媒の反応性を制御する目的で、必要に応じて(E)反応制御剤を添加してもよい。
反応制御剤の具体例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、1-エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、3-メチル-1-ブチン-3-オールが好ましい。
本発明の型取り用シリコーンゴム組成物には、上記(A)~(E)成分以外にも、本発明の目的を損なわない限り、以下に例示するその他の成分を配合してもよい。
その他の成分としては、酸化鉄、カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉等の導電剤;酸化チタン、酸化セリウム等の耐熱剤;ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤;接着性付与剤;チクソ性付与剤等が挙げられる。
本発明の型取り用シリコーンゴム組成物は、(A)成分、(C)成分および必要に応じてその他の成分からなる第一剤と、(A)成分、(B)成分および必要に応じてその他の成分からなる第二剤を別々に調製し、使用前に第一剤と第二剤を混合する二剤型の組成物としてもよい。なお、第一剤および第二剤で共通に使用される成分があってもよい。組成物をこのような二剤型とすることにより、さらに保存安定性が確保できる。
加熱硬化させる場合、70~200℃で30秒~60分間、特に90~120℃で1分~30分間の条件で硬化させることが好ましい。
下記成分を表1に示される配合比(質量部)で混合し、シリコーンゴム組成物を調製した。具体的には、まず(A)成分85質量部、(D)成分30質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、水2質量部を25℃でニーダーを用いて30分混合後、150℃に昇温し、4時間撹拌を続け、25℃に冷却した後に(A)成分15質量部を混合して得られたシリコーンゴムベースに、(C)成分を添加し、プラネタリーミキサーを用いて25℃で15分間撹拌混合後、(B)成分を添加し、プラネタリーミキサーを用いて25℃で15分間撹拌混合を行い、さらに25℃で30分間減圧脱泡し、シリコーンゴム組成物を得た。
(A-1)両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、25℃における粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.006mol/100g)
(B-1)下記平均構造式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.0018mol/g)
(C-1)白金1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のジメチルシロキサン溶液(白金含有量1.0質量%)
(D-1)フュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル300、BET比表面積300m2/g)
(E-1)エチニルシクロヘキサノール
[離型性]
図1(A)~(C)に示されるように、実施例1~3および比較例1~3で調製した型取り用シリコーンゴム組成物3を、逆勾配のガラス製マスタ1を置いた枠2の内部に流し込み、100℃、50分の硬化条件にて硬化してシリコーンゴム型4を作製した。シリコーンゴム型4がガラス製マスタ1から手で容易に剥離できるか否か、および剥離したシリコーンゴム型4の表面を目視にて観察することにより、シリコーンゴム型4の離型性を評価した。
シリコーンゴム型4がガラス製マスタから容易に剥離することができ、かつ、シリコーンゴム型4の表面が平滑であって表面の状態が良好であるものを○と表示し、シリコーンゴム型4の一部が凝集破壊してガラス製マスタ1に付着しているものを×と表示した。
[エポキシ樹脂複製回数]
図2(A)~(C)に示されるように、上記と同様の手順で作製し、ガラス製マスタ1から剥離したシリコーン型4の空隙部4Aに、熱硬化性エポキシ樹脂5(商品名:NM102A/B、ペルノックス社製)を流し込み100℃×60分で硬化させてエポキシ樹脂複製品6を作製した。作製したエポキシ樹脂複製品6をシリコーン型4から取り出す作業を繰り返し、シリコーン型4への樹脂の付着が無く容易に取り出し可能な回数を確認した。
一方、本発明の(B)成分を用いていない比較例1~3では、ガラスおよびエポキシ樹脂から剥離し難くなり、エポキシ樹脂の複製回数も少なく、型取りに適したものではないことがわかる。
2 枠
3 型取り用シリコーンゴム組成物
4 シリコーンゴム型
4A 空隙部
5 エポキシ樹脂
6 エポキシ樹脂製複製品
Claims (5)
- (A)ケイ素原子と結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均式(1)
(R1 3SiO1/2)s[R1 1(H)SiO2/2]t(R1 2SiO2/2)u (1)
(式中、R1は、それぞれ独立して、付加反応性炭素-炭素不飽和結合を有しない非置換または置換の1価炭化水素基を表し、sは、0または2であり、tおよびuは、2≦t、5≦t+u≦800、かつ、0.1≦t/(t+u)≦0.4を満たす数を表す。)
で表される直鎖状または環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のケイ素原子と結合したアルケニル基1個あたりの(B)成分中のケイ素原子と結合した水素原子の数が0.5~5.0個となる量、
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
(D)シリカ:(A)成分100質量部に対して5~100質量部、および
(E)反応制御剤
のみを含有し、
前記(A)成分が、下記式(3)で表されるオルガノポリシロキサンであり、
ViR 2 2 SiO(R 2 2 SiO) e SiR 2 2 Vi (3)
(式中、Viは、ビニル基を意味し、R 2 は、メチル基を表し、eは、50≦e≦2,000を満たす整数である。)
前記(E)成分が、1-エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、および3-メチル-1-ブチン-3-オールから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする型取り用シリコーンゴム組成物。 - (D)シリカを、(A)成分100質量部に対して20~50質量部含有する請求項1記載の型取り用シリコーンゴム組成物。
- 請求項1または2記載の型取り用シリコーンゴム組成物からなるガラス用型取り剤。
- 請求項1または2記載の型取り用シリコーンゴム組成物を硬化させてなるシリコーンゴム型。
- 請求項4記載のシリコーンゴム型を用いることを特徴とするエポキシ樹脂製複製品の製造方法。
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