ここで、好適には、前記変速機は、複数個の遊星歯車装置および複数個の摩擦係合装置を備えた有段式の自動変速機、または、一対のプーリに巻き掛けられたベルトから構成されるベルト式の無段変速機をはじめとする、公知の無段式の自動変速機が適用される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用される車両10に備えられたエンジン12から駆動輪26までの間の動力伝達経路の概略構成を説明する図であると共に、車両10に設けられた電子制御装置70の制御機能の要部を説明する図である。車両10は、駆動力源としてのエンジン12と、自動変速機18と、エンジン12と自動変速機18との間に介挿されているロックアップクラッチ15付のトルクコンバータ14とを、含んで構成されている。図1において、エンジン12により発生させられた動力は、ロックアップクラッチ15付のトルクコンバータ14を経て入力軸16から自動変速機18に入力され、自動変速機18の出力軸20からデファレンシャル装置22や一対の車軸(ドライブシャフト)24等を順次介して左右の駆動輪26へ伝達される。
自動変速機18は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース内において複数組の遊星歯車装置と複数の油圧式の摩擦係合装置とを有し、その摩擦係合装置によって複数のギヤ段が択一的に成立させられる公知の遊星歯車式自動変速機である。例えば、自動変速機18は、複数の摩擦係合装置の何れかの掴み替えにより(すなわち摩擦係合装置の係合と解放との切替えにより)変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。複数の摩擦係合装置はそれぞれ、エンジン12からの動力を受ける入力軸16と駆動輪26に動力を伝達する出力軸20との間で回転とトルクとを伝達する油圧式の摩擦係合装置である。この入力軸16は、自動変速機18の入力軸であって、且つ、トルクコンバータ14のタービン翼車によって回転駆動されるタービン軸でもある。
前記油圧式の摩擦係合装置は、油圧制御回路28によってそれぞれ係合と解放とが制御され、その油圧制御回路28内のソレノイドバルブ等の調圧によりそれぞれのトルク容量すなわち係合力が変化させられることにより、摩擦係合装置の前後の部材を選択的に断接するクラッチやブレーキである。ここで、係合装置のトルク容量(以下、クラッチトルクという)は、例えば係合装置の摩擦材の摩擦係数や摩擦板を押圧する係合油圧によって決まるものである。係合装置を滑らすことなく(すなわち係合装置において差回転速度を生じさせることなく)入力軸16と出力軸20との間でトルクを伝達する為には、そのトルクに対して各係合装置にて受け持つ必要がある伝達トルク分(すなわち係合装置の分担トルク)が得られるトルク容量が必要になる。但し、伝達トルク分が得られるトルク容量においては、トルク容量を増加させても伝達トルクは増加しない。
ロックアップクラッチ15は、トルクコンバータ14の不図示のポンプ翼車と不図示のタービン翼車との間に設けられており、ロックアップクラッチ15の係合力を調整するために設けられている係合側油室と解放側油室との間の差圧が制御されることにより、ロックアップクラッチ15の係合状態が調整される。ロックアップクラッチ15は、前記差圧が制御されることにより、完全係合状態、スリップ状態、または解放状態に切り替えられる。例えば、ロックアップクラッチ15が完全係合状態に切り替えられると、ポンプ翼車とタービン翼車とが一体的に回転させられる。
車両10には、例えば自動変速機18の変速制御などに関連する変速制御装置を含む電子制御装置70が備えられている。電子制御装置70は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。
電子制御装置70は、エンジン12の出力制御、自動変速機18の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や油圧制御用(変速制御用)等に分けて構成される。また、電子制御装置70には、各種センサ(例えば各回転速度センサ50、52、54、シフトポジションセンサ56、アクセル開度センサ58、スロットル弁開度センサ60、油温センサ62)などにより検出された各種信号(例えばエンジン12の回転速度を表すエンジン回転速度Ne、入力軸16すなわちタービン軸の回転速度を表すタービン回転速度Nt、車速Vに対応する出力軸20の回転速度を表す出力軸回転速度Nout、シフトレバー或いはパドルスイッチによるシフト操作位置Psh、運転者の駆動力要求に対応するアクセルペダルの操作量を表すアクセル開度Acc、スロットル弁開度θth、油圧制御回路28内の作動油の油温THoilなど)が、それぞれ供給される。また、電子制御装置70からは、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、自動変速機18の油圧アクチュエータおよびロックアップクラッチ15を制御する油圧制御回路28を作動させる為の油圧指令信号Spなどが、それぞれ出力される。
電子制御装置70は、エンジン12の出力を制御するためのエンジン出力制御部72、自動変速機18の変速制御を実行するための変速制御部74、車両の走行状態に基づいて自動変速機18の変速の実行を判断する変速判断部76、ロックアップクラッチ15のロックアップ制御を実行するロックアップ制御部78、ロックアップクラッチ15の保護のための自動変速機18のダウンシフトの実行を判断するロックアップ変速判断部80、加速要求判断部82、および駆動力徐変制御部84を、機能的に含んでいる。
エンジン出力制御部72は、例えば要求されたエンジントルクTe(以下、要求エンジントルクTedem)が得られるように、スロットル制御の為にスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射量制御の為に燃料噴射装置による燃料噴射量を制御し、点火時期制御の為にイグナイタ等の点火装置を制御するエンジン出力制御指令信号Seを出力する。エンジン出力制御部72は、例えばアクセル開度Accをパラメータとして車速Vと要求駆動力Fdemとの予め記憶された不図示の関係(駆動力マップ)から実際のアクセル開度Acc及び車速Vに基づいて要求駆動力Fdemを算出する。そして、エンジン出力制御部72は、例えば駆動輪26のタイヤ有効半径、現在の自動変速機18のギヤ段におけるギヤ比、出力軸20よりも駆動輪26側の動力伝達経路における終減速比、及びトルクコンバータ14のトルク比tに基づいて、要求駆動力Fdemが得られる要求エンジントルクTedemを算出する。なお、トルクコンバータ14のトルク比tは、例えば速度比(=タービン回転速度ωt/ポンプ回転速度ωp(エンジン回転速度ωe))とトルク比t、効率、及び容量係数とのそれぞれの予め記憶された公知の関係(トルクコンバータ14の作動特性図)から実際の速度比eに基づいて算出される。
変速制御部74は、自動変速機18の変速制御を実行する。変速制御部74は、変速判断部78またはロックアップ変速判断部80によって自動変速機18の変速を実行すべきと判断された場合には、変速すべきギヤ段が得られるように自動変速機18の自動変速制御を実行する。例えば、変速制御部74は、変速すべきギヤ段が達成されるように、自動変速機18の変速に関与する係合装置を係合および解放させる油圧指令信号Spを油圧制御回路28へ出力する。
変速判断部76は、車速V及びアクセル開度Accを変数として予め記憶された公知の関係(変速マップ、変速線図)から、実際の車速V及びアクセル開度Accで示される車両の走行状態に基づいて自動変速機18を変速すべきかの変速判断を行う。変速判断部76は、車両の走行状態が、前記変速マップ(変速線図)において各ギヤ段毎に予め設定されている、公知のアップシフト線またはダウンシフト線を跨いだか否かを判定し、アップシフト線またはダウンシフト線を跨いだ場合に、自動変速機18の変速を実行すべきと判断する。
ロックアップ制御部78は、ロックアップクラッチ15の係合状態を制御する。ロックアップ制御部78は、例えば車速Vおよびアクセル開度Accから構成されるロックアップクラッチ15の係合領域マップを記憶しており、その係合領域マップに基づいてロックアップクラッチ15を作動(係合)すべきかを判定する。例えば、車両の走行状態が、前記係合領域マップにおいてロックアップ係合領域にある場合、ロックアップクラッチ12を係合するよう判定される。このとき、ロックアップ制御部78は、ロックアップクラッチ12を係合または所定のスリップ量でスリップさせる指令を油圧制御回路28に出力する。
ロックアップ変速判断部80は、ロックアップクラッチ15のスリップ状態においてそのロックアップクラッチ15の摩擦材から発生する発熱に対して、ロックアップクラッチ15を保護するための自動変速機18のダウンシフトを実行するべきであるかを判定する。ロックアップ変速判定部80は、例えばロックアップクラッチ15のスリップ開始からの経過時間が、予め設定されている所定時間T以上経過した場合には、自動変速機18のダウンシフトを実行すべきと判断する。所定時間Tは、予め実験的または設計的に求められ、ロックアップクラッチ15の保護の観点から、ロックアップクラッチ15からの発熱を低減するために自動変速機18のダウンシフトが必要となる値に設定されている。
前記所定時間Tは、必ずしも一定値ではなく、各種諸元に基づいて適宜変更される。例えば、所定時間Tは、作動油の油温THoil、ロックアップクラッチ15のスリップ量(滑り量)に対応するエンジン回転速度Neとタービン回転速度Ntとの間の回転速度差ΔN(=Ne-Nt)、アクセル開度Accなどに応じて変更される。例えば、作動油の油温THoilが高くなると、ロックアップクラッチ15の摩擦材の温度が高くなることから、摩擦材の保護のためにロックアップクラッチ15のスリップによる発熱量を低減する必要が生じる。従って、作動油の油温THoilが高くなるほど、所定時間Tが短い値に設定される。また、ロックアップクラッチ15のスリップ量に対応する前記回転速度差ΔNが大きいほど、ロックアップクラッチ15の摩擦材からの発熱量も増加する。従って、前記回転速度差ΔNが大きいほど、所定時間Tが短い値に設定される。また、アクセル開度Accが高くなるほどエンジントルクTeが大きくなり、ロックアップクラッチ15に伝達されるトルクも増加するため、ロックアップクラッチ15で発生する発熱量が増加する。従って、アクセル開度Accが高くなるほど、所定時間Tが短い値に設定される。ロックアップ変速判断部80は、例えば、上記各種諸元をパラメータとする所定時間Tを求めるための関係マップを記憶しており、この関係マップに実際の値を適用することで所定時間Tを決定する。
また、ロックアップ変速判断部80は、ロックアップクラッチ15のロックアップ(係合またはスリップ係合)時においてこもり音が発生しやすい走行領域になった場合、自動変速機18のダウンシフトを実行すべきと判定することもできる。ロックアップ変速判断部80は、ロックアップクラッチ15のロックアップ時にこもり音が発生しやすい走行領域を予め記憶している。そして、ロックアップ変速判断部80は、ロックアップクラッチ15がロックアップに切り替えられると、車両10の走行領域がこもり音が発生しやすい走行領域に入ったかを判定し、こもり音が発生しやすい走行領域に入った場合には、自動変速機18のダウンシフトを実行すべきと判断する。なお、前記こもり音が発生しやすい走行領域は、予め実験的または設計的に求められ、例えばエンジン回転速度Ne、車速V、アクセル開度Acc等の各種諸元に基づいて規定されている。
ロックアップ変速判断部80は、自動変速機18のダウンシフトを実行すべきと判断すると、変速制御部74に対して自動変速機18のダウンシフト指令(ダウンシフト要求)を出力する。ロックアップ変速判断部80から変速制御部74にダウンシフト指令が出力されると、変速制御部74は、自動変速機18のダウンシフトを実行する。自動変速機18のダウンシフトが実行されると、自動変速機18の入力軸16の回転速度Ninすなわちタービン回転速度Ntが高くなるため、ロックアップクラッチ15のスリップ量に対応する回転速度差ΔNが減少する。これに関連して、ロックアップクラッチ15で発生する発熱量が減少するため、ロックアップクラッチ15が保護される。また、車両の走行領域がこもり音が発生しやすい走行領域にある場合、自動変速機18のダウンシフトが実行されると、例えばエンジン12の運転領域が変化し、走行領域がこもり音の発生しやすい走行領域から外れることで、こもり音の発生が抑制される。このように、ロックアップ変速判断部80によって自動変速機18のダウンシフトを実行すべきと判断された場合に自動変速機18のダウンシフトが実行されることで、ロックアップクラッチ15が保護されるとともに、ロックアップクラッチ15のロックアップによるこもり音の発生が抑制される。
ところで、ロックアップ変速判断部80に基づく自動変速機18のダウンシフトは、運転者の意図しない変速であるため、変速過渡期において運転者に違和感を与える虞がある。従って、ロックアップ変速判断部80によって判断される自動変速機18のダウンシフトの頻度は少ない方が望ましい。そこで、加速要求判断部82は、アクセル開度Accの変化率ΔAccが予め設定されている第1所定値αよりも大きいかを判定し、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値αよりも大きい場合に、ロックアップ変速判断部80から変速制御部74へのダウンシフト指令の出力を許可する。なお、アクセル開度Accの変化率Accが、本発明の加速要求量に対応している。
アクセル開度Accの変化率ΔAccは、アクセル開度Accの単位時間あたりの変化量であり、アクセル開度センサ58によって随時検出されるアクセル開度Accを時間微分することで算出される。このアクセル開度Accの変化率ΔAccが大きいほど、運転者の加速要求が強いことを示している。第1所定値αは、予め実験的または設計的に求められ、運転者の加速要求が強いことで、運転者の自動変速機18のダウンシフト中の変速ショックに対する感度が低くなる値に設定されている。すなわち、第1所定値αは、運転者の加速要求が強いことで、自動変速機18のダウンシフトによる変速ショックを運転者が気にならない(もしくは変速ショックを感じない)値に設定されている。
加速要求判断部82は、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値α以下の場合には、ロックアップ変速判断部80によって自動変速機18のダウンシフトを実行すべきと判断された場合であっても、ロックアップ変速判断部80から変速制御部74へのダウンシフト指令の出力を許可しない。すなわち、自動変速機18のダウンシフトが実行されない。
一方、加速要求判断部82は、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値αよりも大きい場合には、ロックアップ変速判断部80によって自動変速機18のダウンシフトを実行すべきと判断されると、ロックアップ変速判断部80から変速制御部74へのダウンシフト指令の出力を許可する。このとき、ロックアップ変速判断部80から変速制御部74にダウンシフト指令が出力されることで、変速制御部74は自動変速機18のダウンシフト制御を実行する。アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値αよりも大きい状態で、変速制御部74による自動変速機18のダウンシフトが実行された場合には、自動変速機18のダウンシフト過渡期において、運転者はダウンシフトによる変速ショックを殆ど感知しないため、変速ショックによって運転者が受ける違和感が抑制される。
また、加速要求判断部82は、ダウンシフトの変速過渡期においてもアクセル開度Accの変化率ΔAccを随時算出し、その変化率ΔAccが予め設定されている第2所定値β以下であるかを判定する。加速要求判断部82によって、ダウンシフト過渡期のアクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値β以下と判定された場合、駆動力徐変制御部84は、自動変速機18のダウンシフト過渡期における自動変速機18から出力される駆動力Foutの変化を、変化率ΔAccが第2所定値βよりも大きい場合に比べて緩やかにする駆動力徐変制御を実行する。
ここで、前記第2所定値βは、予め実験的または設計的に求められ、運転者の加速要求が弱くなり、運転者の自動変速機18のダウンシフト過渡期に発生する変速ショックに対する感度が高くなる、すなわち運転者が変速ショックを感知しやすくなる値の閾値に設定されている。従って、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値β以下になると、運転者が変速ショックを感じやすくなる。また、第2所定値βは、前記第1所定値αと同じ値であっても構わないし、異なる値であっても構わない。
駆動力徐変制御部84は、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値β以下になると、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Fout(出力軸トルクToutと同意)の変化勾配を、変化率ΔAccが第2所定値βよりも大きい場合に設定される駆動力Foutの変化勾配に対して緩やかに変化させる駆動力徐変制御を実行する。ここで、変化率ΔAccが第2所定値βよりも大きい場合に設定される駆動力Foutの変化は、変速判断部76に基づいて変速が判断された場合に実行される、通常のダウンシフトの過渡期に設定される駆動力Foutの変化に対応している。よって、通常のダウンシフトは、変化率ΔAccが第2所定値βよりも大きい場合のダウンシフトに対応している。
駆動力徐変制御部84は、例えば、要求エンジントルクTedemに対する実際のエンジントルクTeの変化勾配が、通常のダウンシフトにおけるエンジントルクTeの変化勾配よりも小さくなるように、エンジン出力を制御する指令をエンジン出力制御部72に出力する。エンジン出力制御部72は、駆動力徐変制御部84からの指令を受けると、エンジン12のエンジントルクTeの変化勾配が、通常のダウンシフトにおけるエンジントルクTeの変化勾配よりも小さくなるように制御する。エンジン出力制御部72は、例えば電子スロットル弁開度を通常のダウンシフトよりも低くしたり、燃料噴射量を通常のダウンシフトよりも少なくしたり、点火装置の点火時期を遅くしたり、バルブのタイミングを変更したりすることで、エンジントルクTeの変化勾配を通常のダウンシフトよりも小さくする。
エンジントルクTeの変化勾配が、通常のダウンシフト時の変化勾配に比べて緩やかに変化することで、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutについても緩やかに変化する。従って、ダウンシフト中に自動変速機18から出力される駆動力Foutが、通常のダウンシフト時における駆動力Foutに比べて緩やかに変化するため、ダウンシフト過渡期の駆動力変化によって運転者に与える違和感が緩和される。
また、駆動力徐変制御部84は、ダウンシフト中において自動変速機18から出力される駆動力Foutを緩やかに変化させる他の手段として、自動変速機18のダウンシフト過渡期に係合される摩擦係合装置の係合油圧(指示値)の勾配を、通常のダウンシフトにおいて設定される係合油圧(指示値)の勾配に比べて小さくする。駆動力徐変制御部84から変速制御部74に駆動力Foutの変化を緩やかにする指令が出力されると、変速制御部74は、ダウンシフト過渡期に係合される摩擦係合装置の係合油圧(指示値)の勾配を、通常のダウンシフトにおいて設定される係合油圧(指示値)の勾配に比べて小さくする。このように制御されることで、摩擦係合装置が過渡的にスリップ状態になり、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutが、通常のダウンシフトにおいて出力される駆動力Foutに比べて緩やかに変化する。よって、ダウンシフト過渡期の駆動力変化によって運転者に与える違和感が緩和される。
図2は、自動変速機18のダウンシフト過渡期において駆動力徐変制御が実行されたときの、アクセル開度Accおよびアクセル開度Accの変化率ΔAccに対する、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutの変化を示している。
図2に示すt1時点~t2時点において、運転者によってアクセルペダルが一定の変化割合で踏み込まれている。このときアクセル開度Accの変化率ΔAccが略一定値となる。t1時点~t2時点の間では、変化率ΔAccは第2所定値βよりも小さい値となっている。このとき、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutは、通常のダウンシフト時おける駆動力Foutの変化に比べて緩やかに変化している。
t2時点~t3時点の間では、アクセルペダルが一定の変化率で踏み戻されている。このとき、アクセル開度Accの変化率ΔAccが負の値となり、第2所定値βよりも小さくなる。従って、t2時点~t3時点の間においても、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutは、通常のダウンシフト時における駆動力Foutの変化に比べて緩やかに変化している。
t3時点~t4時点の間では、運転者によってアクセルペダルが大きく踏み込まれることで、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値βを越えている。このとき、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutが、通常のダウンシフト時に出力される駆動力Foutに切り替わることで、駆動力Foutの変化勾配が大きくなっている。
t4時点以降では、運転者によるアクセルペダルの踏込の変化割合がt3時点~t4時点の間に比べて小さくなっており、これに関連してアクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値βよりも小さくなっている。このとき、自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutが、通常のダウンシフト時における駆動力Foutの変化に比べて緩やかに変化している。
図3は、図1の電子制御装置70の制御作動であって、特に、走行時におけるロックアップクラッチ15の保護、および、ロックアップクラッチ15のロックアップによるこもり音の抑制を可能にする制御作動を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、走行中において繰り返し実行される。
変速判断部76の制御機能に対応するステップST1(以下、ステップを省略)では、車両の走行状態に基づく自動変速機18のダウンシフト要求が出力されていないかが判定される。ダウンシフト要求が出力されている場合には、ST1が否定され、本ルーチンは終了させられる。ST1においてダウンシフト要求が出力されない場合には、ST1が肯定されてST2に進む。
ロックアップ変速判断部80の制御機能に対応するST2では、ロックアップクラッチ15の保護およびロックアップによるこもり音の抑制を目的とした自動変速機18のダウンシフト要求が出力されているかが判定される。自動変速機18のダウンシフト要求が出力されない場合、ST2が否定され、本ルーチンが終了させられる。自動変速機18のダウンシフト要求が出力された場合、ST2が肯定されてST3に進む。
加速要求判断部82の制御機能に対応するST3では、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値αよりも大きいかが判定される。アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値α以下である場合、ST3が否定されて本ルーチンが終了させられる。アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値αよりも大きい場合、ST3が肯定されてST4に進む。
変速制御部74の制御機能に対応するST4では、自動変速機18のダウンシフトの実行が判断され、自動変速機18のダウンシフトが実行される。すなわち、ST1において自動変速機18のダウンシフトの実行が判断されない場合であって、且つ、ST2において自動変速機18のダウンシフトの実行が判断された場合において、さらに、ST3においてアクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値αよりも大きい場合には、自動変速機18のダウンシフトの実行が判断(許可)される。
加速要求判断部82の制御機能に対応するST5では、ダウンシフト過渡期におけるアクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値β以下であるかが判定される。アクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値よりも大きい場合、ST5が否定され、エンジン出力制御部72の制御機能に対応するST7において、通常のダウンシフト時の駆動力制御が実行される。
ST5において、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値β以下の場合には、ST5が肯定されてST6に進む。駆動力徐変制御部84の制御機能に対応するST6では、ダウンシフト過渡期において自動変速機18の出力軸20から出力される駆動力Foutを、自動変速機18の通常のダウンシフトに比べて緩やかに変化させる駆動力Foutの駆動力徐変制御が実行される。上記駆動力駆動力Foutの徐変制御が実行されることで、ダウンシフト中の駆動力変化が緩やかになり、運転者に伝達される変速ショックが緩和される。
上述のように、本実施例によれば、ロックアップクラッチ15の保護のために自動変速機18のダウンシフトが必要な場合には、ロックアップ変速判断部80によって自動変速機18のダウンシフトの実行が判断されるため、ロックアップクラッチ18の保護が図られる。また、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第1所定値αよりも大きい場合に自動変速機18のダウンシフトが許可されるので、運転者の加速操作に同期してダウンシフトが実行され、運転者の意図しないダウンシフトによる変速ショックに対して運転者が違和感を感じることを抑制できる。さらに、自動変速機18のダウンシフト過渡期におけるアクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値β以下になると、変化率ΔAccが第2所定値βよりも大きい場合に比べて駆動力Foutが緩やかに変化することで、駆動力Foutの変化によって運転者に与える違和感を緩和できる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、自動変速機18のダウンシフトの過渡期において、アクセル開度Accの変化率ΔAccが第2所定値α以下である場合に駆動力徐変制御が実行されていたが、アクセル開度Accの変化率ΔAccに代わって、アクセル開度Accの大きさに基づいて駆動力徐変制御の実行が判断されるものであっても構わない。すなわち、本発明の加速要求量として、アクセル開度Accの変化率ΔAccに代わってアクセル開度Accが適用されても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。