本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施の形態として、第1ないし第4の実施の形態について説明するが、そのうち、第1、第2、第4の実施の形態が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施の形態について、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。なお、実施の形態では、油圧ショベルの走行方向を前,後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左,右方向として説明する。
図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、建設機械を代表する油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回輪2Aを介して旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられた作業装置4とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場を走行し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
ここで、作業装置4は、後述する旋回フレーム12の左,右の縦板13Aに回動可能にピン結合されたブーム5と、ブーム5の先端に回動可能にピン結合されたアーム6と、アーム6の先端に回動可能にピン結合されたバケット7とを備えている。左,右の縦板13Aとブーム5との間にはブームシリンダ8が設けられ、ブーム5とアーム6との間にはアームシリンダ9が設けられ、アーム6とバケット7に設けられたバケットリンク7Aとの間にはバケットシリンダ10が設けられている。
そして、左,右の縦板13Aとブーム5とのピン結合部11A、ブーム5とアーム6とのピン結合部11Bには、後述するリュブリケータ34によってグリースが定期的に供給される。また、左,右の縦板13Aとブームシリンダ8とのピン結合部(図示せず)、ブーム5とブームシリンダ8とのピン結合部11D、ブーム5とアームシリンダ9とのピン結合部11E、アーム6とバケットシリンダ10とのピン結合部11F、アーム6とアームシリンダ9とのピン結合部11Cにも、リュブリケータ34によってグリースが定期的に供給される。これら複数のピン結合部11A~11Fは、例えばブーム5のフート部に設けられた集中給脂口(図示せず)に、それぞれ給脂配管を介して接続されている。
上部旋回体3は、下部走行体2に旋回可能に取付けられたベースとなる旋回フレーム12と、旋回フレーム12上に設けられた後述のカウンタウエイト15、建屋カバー16、ラジエータ17、オイルクーラ18、作動油タンク19、燃料タンク20、キャブ21、潤滑油収容箱26等を含んで構成されている。
車体フレームとしての旋回フレーム12は、上部旋回体3のベースを構成している。旋回フレーム12は、前,後方向に延びるセンタフレーム13と、センタフレーム13の左,右両側に配置され前,後方向に延びた左,右のサイドフレーム14(右側のみ図示)とを含んで構成され、強固な骨組み構造をなしている。旋回フレーム12のセンタフレーム13は、厚肉な底板(図示せず)と、底板の上面に立設された左,右の縦板13Aとを有している。左,右の縦板13Aの前端側はブームブラケットとなり、ブーム5およびブームシリンダ8がピン結合されている。また、旋回フレーム12の後端にはカウンタウエイト15が設けられ、カウンタウエイト15は、作業装置4との重量バランスをとっている。
建屋カバー16は、カウンタウエイト15の前側に位置して旋回フレーム12上に設けられている。建屋カバー16は、旋回フレーム12上に搭載されたエンジン、油圧ポンプ等の搭載機器(いずれも図示せず)を収容している。これにより、建屋カバー16の内部には、エンジン室およびポンプ室が形成されている。
ラジエータ17は、カウンタウエイト15の前側でかつ建屋カバー16の右側に隣接して旋回フレーム12上に設けられている。ラジエータ17は、エンジンを冷却するエンジン冷却水が流通する放熱部を有し、冷却ファン(図示せず)によって発生した冷却風が放熱部を通過することにより、エンジン冷却水の熱を冷却風中に放熱してエンジン冷却水を冷却する。オイルクーラ18は、ラジエータ17の前側に隣接して旋回フレーム12上に設けられている。オイルクーラ18は、油圧ショベル1に搭載された各油圧アクチュエータからの戻り油が流通する放熱部を有し、油圧アクチュエータからの戻り油の熱を冷却風中に放熱することにより、後述する作動油タンク19に還流する作動油を冷却する。
作動油タンク19は、建屋カバー16の前側に位置して旋回フレーム12の左端側に設けられている。作動油タンク19には、油圧ショベル1に搭載された油圧アクチュエータに供給される作動油が貯溜されている。燃料タンク20は、オイルクーラ18の前側に位置して旋回フレーム12の右端側に設けられている。燃料タンク20には、エンジン(図示せず)に供給される燃料が貯溜されている。
キャブ21は、作動油タンク19の前側に位置して旋回フレーム12の前部左側に設けられている。キャブ21は、オペレータが搭乗する運転室を画成している。キャブ21の内部には、運転席、走行用および作業用の操作レバー装置等(いずれも図示せず)が設けられている。オペレータが走行用の操作レバー装置を操作することにより、下部走行体2の走行動作が制御され、オペレータが作業用の操作レバー装置を操作することにより、上部旋回体3の旋回動作、作業装置4の俯仰動作が制御される。
フロア部材22は、潤滑油収容箱26の右側に位置して旋回フレーム12の前部右側に設けられている。フロア部材22は、四角形の平板によって形成され、例えば旋回フレーム12のセンタフレーム13と右サイドフレーム14との間を連結する張出しビーム(図示せず)上に取付けられている。フロア部材22の上面は、旋回フレーム12を構成する右サイドフレーム14の上面とほほ等しい高さ位置に配置されている。
タンク収容ケース23は、燃料タンク20とフロア部材22との間に位置して旋回フレーム12の前部右側に設けられている。タンク収容ケース23内には、尿素水タンク(図示せず)が収容されている。尿素水タンクには尿素水が貯留され、この尿素水は、エンジンの排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するためのNOx浄化装置(図示せず)に供給される。
ここで、タンク収容ケース23の上面は、前,後方向の前側(フロア部材22側)に位置する前上面23Aと、後側(燃料タンク20側)に位置する後上面23Bとにより階段状に形成されている。タンク収容ケース23の前上面23Aは、フロア部材22よりも高い位置に配置され、タンク収容ケース23の後上面23Bは、前上面23Aよりも高い位置に配置されている。また、燃料タンク20の前面20Aには、タンク収容ケース23側に張出す四角形状のステップ24が設けられ、ステップ24の上面は、タンク収容ケース23の後上面23Bよりも高い位置に配置されている(図3参照)。
これらのフロア部材22、タンク収容ケース23の前上面23Aおよび後上面23B、ステップ24は、旋回フレーム12と燃料タンク20の上面20Bとの間に4段の階段状のステップを構成している。また、図2に示すように、燃料タンク20の左側には、平板状のメンテナンスフロア25が設けられ、このメンテナンスフロア25は、燃料タンク20の上面20Bよりも低い位置に配置されている。従って、建屋カバー16内に収容されたエンジン等に対するメンテナンスを行うときには、作業者は、フロア部材22、タンク収容ケース23の前上面23Aおよび後上面23B、ステップ24、燃料タンク20の上面20B、メンテナンスフロア25を踏み進むことにより、迅速に建屋カバー16にアクセスすることができる構成となっている。
次に、第1の実施の形態に用いられる潤滑油収容箱26、リュブリケータ34等について説明する。
潤滑油収容箱26は、旋回フレーム12の右側の縦板13Aとタンク収容ケース23との間に位置して旋回フレーム12上に設けられている。潤滑油収容箱26は、燃料タンク20の前面20Aの前方に位置し、内部に後述のペール缶33、リュブリケータ34等が収容された箱本体27と、箱本体27に回動可能に取付られた蓋体28とを含んで構成されている。
潤滑油収容箱26の箱本体27は、上面板27A、底面板27B、前面板27C、左側面板27D、右側面板27Eによって囲まれ、前,後方向に延びる直方体状に形成されている。箱本体27の後部は、タンク収容ケース23の後面板(図示せず)によって閉塞されている。箱本体27の上面板27Aは、タンク収容ケース23の後上面23Bとほぼ等しい高さに設定されている。これにより、箱本体27の上面板27Aの後部側は、メンテナンス時に作業者が旋回フレーム12と燃料タンク20の上面20Bとの間を乗降するときの足場の一部を形成している。
箱本体27の上面板27Aの前側には、四角形状の上面開口27Fが形成されている。箱本体27の右側面板27Eの前側には、上,下方向に延びる四角形状の側面開口27Gが形成されている。側面開口27Gの上端は上面開口27Fに連通し、側面開口27Gの下端は底面板27B付近まで延びている。また、箱本体27の内部には、側面開口27Gの後側に位置して左側面板27Dと右側面板27Eとの間を連結する連結板27Hが設けられている。箱本体27の内部は、連結板27Hよりも前側の空間と後側の空間とに分割され、連結板27Hよりも前側の空間内にはペール缶33が収容され、連結板27Hよりも後側の空間内には後述のホースリール39が収容されている。
潤滑油収容箱26の蓋体28は、箱本体27の上面板27Aの前側に、ヒンジを介して上,下方向に回動可能に取付けられている。蓋体28は、前面板28A、後面板28B、左側面板28C、右側面板28D、上面板28Eによって囲まれた底のない直方体の箱状に形成され、前,後方向に延びている。箱本体27の上面開口27Fは、蓋体28によって開閉可能に覆われている。また、蓋体28と箱本体27の連結板27Hとの間には蓋保持機構29が設けられ、蓋体28は、蓋保持機構29によって箱本体27の上面開口27Fを開いた位置(図4の位置)を保持する。一方、箱本体27の右側面板27Eの前側には、平板状の側面カバー30が着脱可能または回動可能に設けられ、箱本体27の側面開口27Gは、側面カバー30によって開閉可能に覆われている。
従って、図4に示すように、蓋体28によって箱本体27の上面開口27Fを開き、側面カバー30によって箱本体27の側面開口27Gを開くことにより、箱本体27の前側には、上面開口27Fと側面開口27Gとが連なった大きな開口面積を有する容器出入れ口31が形成される。これにより、潤滑油収容箱26内に収容されたペール缶33を交換するときには、容器出入れ口31を通じて容易にペール缶33を潤滑油収容箱26に対して出し入れすることができる。
図4および図6に示すように、箱本体27の前面板27Cのうち箱本体27の内側に位置する内側面27C1には、内側枠部材32が溶接によって固着されている。内側枠部材32は、左,右方向の両端が前面板27C側に屈曲した断面U字状の枠体として形成され、内側枠部材32の上側には、前面板27Cとの間に左,右方向に延びる開口部32Aが形成されている。そして、内側枠部材32の開口部32Aには、リュブリケータ34の差込み部材38Bが着脱可能に差込まれる構成となっている。
潤滑油容器としてのペール缶33は、潤滑油収容箱26内に配置されている。ペール缶33は、例えば有底円筒状に形成された市販のグリースドラムからなり、その内部にはグリース等の潤滑油が貯留されている。ペール缶33の上端は開口端33Aとなり、この開口端33Aにはリュブリケータ34が取付けられる。
リュブリケータ34は、ペール缶33に取付けられた状態で潤滑油収容箱26内に配置されている。リュブリケータ34は、ペール缶33内に貯留されたグリースを、上述した作業装置4の各ピン結合部11A~11F等の給脂部位に供給(給脂)する。図7に示すように、リュブリケータ34は、蓋体35と、ポンプユニット36と、インサートプレート38とを含んで構成されている。
リュブリケータ34の蓋体35は、ペール缶33の開口端33Aを施蓋した状態で、ボルト等(図示せず)を用いてペール缶33に着脱可能に取付けられている。蓋体35は、ペール缶33の開口端33Aを施蓋する大径部35Aと、大径部35Aよりも小径な円筒状をなし、大径部35Aの上面から隆起した円筒部35Bとを有している。蓋体35の大径部35Aにはインサートプレート38が固定されている。
ポンプユニット36は、蓋体35の円筒部35Bに取付けられている。ポンプユニット36は、円筒部35Bの上面側に取付けられたポンプ本体36Aと、ポンプ本体36Aに接続された円筒状の吸込管36Bおよび角筒状の吐出管36Cと、ポンプ本体36Aを覆うポンプカバー36Dとにより構成されている。吸込管36Bの基端(上端)は、ポンプ本体36Aの吸込ポートに接続され、吸込管36Bの先端(下端)は、蓋体35から下方に突出し、蓋体35をペール缶33に取付けた状態でペール缶33の底部付近まで延びている。吐出管36Cの基端は、ポンプ本体36Aの吐出ポートに接続され、吐出管36Cの先端には、給脂ホース37の一端が接続されている。給脂ホース37の他端は、ブーム5のフート部に設けられた集中給脂口(図示せず)に接続されている。
従って、蓋体35をペール缶33に取付けた状態で、ポンプ本体36Aを作動させることにより、ペール缶33内のグリースは、吸込管36Bからポンプ本体36Aに吸込まれて加圧され、吐出管36Cを通じて給脂ホース37内に吐出する。給脂ホース37内に吐出したグリースは、集中給脂口へと圧送され、集中給脂口から給脂配管を介して複数のピン結合部11A~11F等にそれぞれ給脂される。
ポンプカバー36Dは、前,後方向に延びる直方体の箱状をなし、ポンプ本体36Aを外周側から取囲んでいる。ポンプカバー36Dの上面には、四角形の枠状の把手36Eが折畳み可能に取付けられている。これにより、把手36Eを持上げることにより、蓋体35、ポンプユニット36、インサートプレート38からなるリュブリケータ34を、一体的に把持することができる構成となっている。
インサートプレート38は、蓋体35の大径部35Aに取付けられている。インサートプレート38は、円筒部35Bを径方向から挟んだ状態で大径部35Aの上面にボルトを用いて固定された二股状の取付部材38Aと、大径部35Aの外周側で取付部材38Aから直角に屈曲し、ポンプユニット36の吸込管36Bに沿って上,下方向に延びた差込み部材38Bとにより構成されている。図4に示すように、インサートプレート38の差込み部材38Bは、リュブリケータ34(蓋体35)をペール缶33に取付けた状態で、潤滑油収容箱26の前面板27Cと内側枠部材32との間に形成された開口部32A内に差込まれる。これにより、潤滑油収容箱26内で前面板27Cとリュブリケータ34とを固定し、ペール缶33、リュブリケータ34等が油圧ショベル1の作動時の振動によって破損するのを抑えることができる構成となっている。
ホースリール39は、ペール缶33よりも後側に位置して潤滑油収容箱26内に配置されている。ホースリール39には延長ホース40が巻回され、延長ホース40の先端には、例えばグリースガン(図示せず)が接続されている。ホースリール39に給脂ホース37の先端を接続することにより、延長ホース40内にグリースが圧送される。従って、延長ホース40の先端に取付けられたグリースガンを操作することにより、作業装置4のピン結合部11A~11F以外のピン結合部、例えばアーム6とバケット7とのピン結合部11G、バケットリンク7Aとバケットシリンダ10とのピン結合部11H、旋回輪2A等の任意の給脂部位にグリースを給脂することができる。
次に、第1の実施の形態に用いられるリュブリケータ保持具としての吸込管保持部材41について、図6および図7を参照して説明する。
吸込管保持部材41は、潤滑油収容箱26を構成する箱本体27内に設けられている。吸込管保持部材41は、ペール缶33からリュブリケータ34を取外した状態で、ポンプユニット36の吸込管36Bを保持する。吸込管保持部材41は、鋼板材に曲げ加工を施すことにより、全体としてU字型に屈曲した板体として構成されている。即ち、吸込管保持部材41は、上,下方向に延びる板体からなる固定板41Aと、固定板41Aの下端から前方に張出した下張出し板41Bと、固定板41Aの上端から前方に張出した上張出し板41Cとを有し、上張出し板41Cには、ポンプユニット36の吸込管36Bが挿通される管挿通孔41Dが形成されている。
ここで、固定板41Aは、箱本体27の前面板27Cのうち箱本体27の内側に位置する内側面27C1に溶接等の手段を用いて固定されている。下張出し板41Bは、固定板41Aの下端から水平方向に折曲げられている。下張出し板41Bは、固定板41Aの左,右方向の幅寸法よりも大きな幅寸法を有し、下張出し板41Bの左,右方向の両側は、鉛直上向きに立上がる一対の立上り部41Eとなっている。上張出し板41Cは、固定板41Aの上端から水平方向よりも若干下向きに傾斜する方向に折曲げられている。これにより、上張出し板41Cの管挿通孔41Dに吸込管36Bを挿通したときに、吸込管36Bの下端は、固定板41Aと下張出し板41Bとに当接すると共に、下張出し板41Bの一対の立上り部41E間に配置される。この結果、リュブリケータ34を安定した姿勢に保持することができる構成となっている。
また、上張出し板41Cには、管挿通孔41Dと同心上に環状の保護部材41Fが取付けられている。保護部材41Fは、例えばゴム等の弾性体を用いて形成され、保護部材41Fの内径寸法は、吸込管36Bの外径寸法よりも大きく、かつ管挿通孔41Dの内径寸法よりも小さく設定されている。これにより、吸込管36Bは、上張出し板41Cの管挿通孔41Dと保護部材41Fとに挿通された状態で、管挿通孔41Dの内周縁に接触することなく保護部材41Fの内周面に接触する。この結果、吸込管36Bが管挿通孔41Dの内周縁に接触して損傷するのを抑えることができる構成となっている。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、以下、油圧ショベル1の動作について説明する。
まず、油圧ショベル1を用いて土砂の掘削作業等を行う場合には、オペレータは、キャブ21に搭乗し、キャブ21に設けられた走行用の操作レバー装置、作業用の操作レバー装置(いずれも図示せず)を操作する。これにより、油圧ショベル1を作業場所まで自走させ、作業場所において上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて掘削作業を行うことができる。
ここで、作業装置4に設けられた複数のピン結合部11A~11F等の給脂部位には、潤滑油収容箱26内に配置されたペール缶33からリュブリケータ34によってグリースが定期的に給脂される。このため、ペール缶33内のグリースが枯渇した場合には、空となったペール缶33に代えて、グリースが貯留された新たなペール缶33を潤滑油収容箱26内に配置する作業(ペール缶交換作業)が必要となる。そこで、このペール缶交換作業について説明する。
ペール缶交換作業を行う場合には、図4に示すように、蓋体28を上方に回動させて箱本体27の上面開口27Fを開くと共に、側面カバー30を横方向に回動させて箱本体27の側面開口27Gを開く。これにより、箱本体27の前側には、上面開口27Fと側面開口27Gとが連なった大きな開口面積を有する容器出入れ口31が形成される。このとき、リュブリケータ34は、空となったペール缶33に取付けられており、リュブリケータ34を構成するインサートプレート38の差込み部材38Bは、箱本体27の前面板27Cと内側枠部材32との間に形成された開口部32A内に差込まれている。
次に、リュブリケータ34の蓋体35をペール缶33から取外し、ポンプユニット36のポンプカバー36Dに設けられた把手36Eを持上げて、吸込管36Bをペール缶33から抜取る。その後、図5に示すように、箱本体27の前面板27Cに固定された吸込管保持部材41により、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34を保持する。即ち、ポンプユニット36の吸込管36Bを、吸込管保持部材41の上張出し板41Cに設けられた管挿通孔41Dと保護部材41Fとに挿通する。このとき、上張出し板41Cは、水平方向に対して下向きに傾斜しているので、吸込管36Bの下端は、固定板41Aと下張出し板41Bとに確実に当接すると共に、下張出し板41Bの一対の立上り部41E間に配置される(図7参照)。この結果、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34を、フロア部材22、タンク収容ケース23等に載置することなく、吸込管保持部材41を用いて安定した姿勢に保持することができる。
この状態で、空となったペール缶33は、箱本体27の前側に形成された容器出入れ口31を通じてフロア部材22へと引出された後、地上へと下ろされる。一方、グリースが貯留された新たなペール缶33は、フロア部材22上に載置された後、容器出入れ口31を通じて箱本体27内に配置される。そして、リュブリケータ34(ポンプユニット36)の吸込管36Bが、吸込管保持部材41から取外され、ペール缶33内に挿入された状態で、リュブリケータ34の蓋体35がペール缶33に取付けられる。このとき、蓋体35に取付けられたインサートプレート38の差込み部材38Bが、箱本体27の前面板27Cと内側枠部材32との間に形成された開口部32A内に差込まれる(図4参照)。
そして、図3に示すように、蓋体28を下方に回動させて箱本体27の上面開口27Fを閉じると共に、側面カバー30を横方向に回動させて箱本体27の側面開口27Gを閉じる。これにより、空となったペール缶33に代えて、リュブリケータ34が取付けられた新たなペール缶33が潤滑油収容箱26内に配置され、ペール缶交換作業が終了する。
このように、第1の実施の形態によれば、ペール缶交換作業を行う場合に、空のペール缶33から取外されたリュブリケータ34(ポンプユニット36)の吸込管36Bを、潤滑油収容箱26(箱本体27)に取付けられた吸込管保持部材41によって保持することができる。これにより、例えば取外されたリュブリケータ34を、フロア部材22、タンク収容ケース23等に載置する必要がなく、これらフロア部材22、タンク収容ケース23等が、リュブリケータ34から落下したグリースによって汚れるのを防止することができる。また、例えば取外されたリュブリケータ34を作業者が把持したまま、潤滑油収容箱26とフロア部材22との間でペール缶33の交換作業を行う必要がなく、ペール缶交換作業の作業性を高めることができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、下部走行体2および上部旋回体3からなる自走可能な車体と、上部旋回体3に設けられた作業装置4とからなり、上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム12と、旋回フレーム12に設けられ潤滑油を蓄えるペール缶33が内部に収容された潤滑油収容箱26と、ペール缶33に取付けられた状態で潤滑油収容箱26内に配置され給脂作業に用いられるリュブリケータ34とを備えてなる油圧ショベル1において、潤滑油収容箱26には、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34を保持する吸込管保持部材41が設けられている。
この構成によれば、取外されたリュブリケータ34を、吸込管保持部材41によって保持した状態で、潤滑油収容箱26に対する空のペール缶33と新たなペール缶33との交換作業を行うことができる。この結果、交換作業を行う作業者の両手が空くので、作業性を高めることができる。また、空のペール缶33から取外されたリュブリケータ34をフロア部材22、タンク収容ケース23等に載置することによりこれらフロア部材22等がグリースで汚れるのを防止することができる。
次に、図8は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、潤滑油収容箱の外側面に設けられた外側枠部材によって、リュブリケータ保持具を構成したことにある。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明は省略する。
図中、リュブリケータ保持具としての外側枠部材51は、潤滑油収容箱26の箱本体27を構成する右側面板27Eのうち、潤滑油収容箱26の外側となる外側面27E1に設けられている。外側枠部材51は、前,後方向の両端が右側面板27E側に屈曲した断面U字状の枠体として形成されている。外側枠部材51の前,後方向の両端は、右側面板27Eのうち側面開口27Gよりも後側となる部位の外側面27E1に、溶接等の手段を用いて固着されている。これにより、外側枠部材51と右側面板27Eとの間には前,後方向に延びる差込み口51Aが形成され、差込み口51Aの前,後方向の長さ寸法は、リュブリケータ34のインサートプレート38に設けられた差込み部材38Bの幅寸法よりも大きく設定されている。
そして、外側枠部材51の差込み口51Aには、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34(インサートプレート38)の差込み部材38Bが、上方から着脱可能に差込まれる。これにより、リュブリケータ34は、外側枠部材51によって潤滑油収容箱26の右側面板27E側に保持される構成となっている。
第2の実施の形態による油圧ショベルは、上述の如き外側枠部材51によって、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34を保持するもので、その基本的作用については、第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
然るに、第2の実施の形態によれば、外側枠部材51は、潤滑油収容箱26の右側面板27Eのうち、側面開口27Gよりも後側となる部位に設けられている。これにより、外側枠部材51によってリュブリケータ34を保持した状態で、潤滑油収容箱26内に配置されたペール缶33の上方および右側方(容器出入れ口31側)に大きなスペースを確保することができる。この結果、フロア部材22と潤滑油収容箱26との間でペール缶33を移送するときの作業性を高めることができる。
次に、図9は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、リュブリケータ34のポンプユニット36に設けられた把手36Eを掛け止めするフック部材によって、リュブリケータ保持具を構成したことにある。なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明は省略する。
図中、リュブリケータ保持具としてのフック部材61は、潤滑油収容箱26を構成する蓋体28の前面板28Aに設けられている。フック部材61は、ポンプユニット36の把手36Eの左,右方向の長さ寸法よりも小さな幅寸法を有する四角形状(台形状)の板体からなっている。フック部材61の基端は、蓋体28の前面板28Aのうち潤滑油収容箱26の内側となる内側面に溶接等の手段を用いて固着され、フック部材61の先端はJ字型に屈曲した掛止め部61Aとなっている。
フック部材61は、蓋体28が箱本体27の上面開口27Fを閉じたときには、潤滑油収容箱26内に格納され、蓋体28が箱本体27の上面開口27Fを開いたときには、前面板28Aの下端から斜め前方に突出する。この状態で、フック部材61の先端の掛止め部61Aに、ポンプユニット36の把手36Eが掛止めされることにより、リュブリケータ34は、フック部材61によって箱本体27の上方に保持される構成となっている。
第3の実施の形態による油圧ショベルは、上述の如きフック部材61によって、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34を保持するもので、その基本的作用については、第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
然るに、第3の実施の形態によれば、フック部材61は、蓋体28が箱本体27の上面開口27Fを開いたときに、ペール缶33の上方に配置される。このため、ペール缶33からリュブリケータ34を取外した後、直ちにポンプユニット36の把手36Eをフック部材61の掛止め部61Aに引掛けることができ、フック部材61によってリュブリケータ34を保持する作業を迅速に行うことができる。
次に、図10は本発明の第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、リュブリケータ34(ポンプユニット36)の吸込管36Bを保持する吸込管保持部材を、潤滑油収容箱26を構成する箱本体27の連結板27Hに設けたことにある。なお、第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明は省略する。
図中、リュブリケータ保持具としての吸込管保持部材71は、潤滑油収容箱26を構成する箱本体27の連結板27Hに設けられている。吸込管保持部材71は、リュブリケータ34を構成するポンプユニット36の吸込管36Bを保持する。吸込管保持部材71は、鋼管等の中空なパイプ体によって形成され、吸込管保持部材71の内周側は、吸込管36Bが挿通される管挿通孔71Aとなっている。吸込管保持部材71は、箱本体27の連結板27Hに溶接等の手段を用いて固着され、管挿通孔71Aは上方に開口している。
そして、吸込管保持部材71の管挿通孔71Aには、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34(ポンプユニット36)の吸込管36Bが、上方から着脱可能に挿通される。これにより、リュブリケータ34は、吸込管保持部材71によって、箱本体27の上方に保持される構成となっている。
第4の実施の形態による油圧ショベルは、上述の如き吸込管保持部材71によって、ペール缶33から取外されたリュブリケータ34を保持するもので、第4の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、ペール缶33を交換するときの作業性を高めることができる。
なお、第1の実施の形態では、吸込管保持部材41を、箱本体27の前面板27Cに取付ける構成を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば左側面板27Dの内側面に取付ける構成としてもよい。
また、第3の実施の形態では、フック部材61を、蓋体28の前面板28Aに取付ける構成を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば蓋体28の上面板28E等の前面板28A以外の部位に取付ける構成としてもよい。