JP7118465B2 - 抗菌物質の使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、抗菌物質及び液状抗菌剤並びに液状抗菌剤の製造方法に関する。
従来、微生物が繁殖して汚染されることを防止するために、種々の抗菌物質が提案されている。
例えば、化粧料に微生物が繁殖してしまうことを防止するために、パラオキシ安息香酸エステル(所謂、パラベン)が添加されている。
また食品では保存料の類として、安息香酸や安息香酸ナトリウムを添加することにより、微生物の繁殖を抑制して食品の保存性を高めている。
しかしながら、これら化粧料や食品など抗菌の対象となる物(以下、単に対象物ともいう。)は、人体の皮膚に接触させたり経口摂取されるものであり、できるだけパラオキシ安息香酸エステルや、安息香酸、安息香酸ナトリウム等を使用することなく、微生物の繁殖を抑制したいという要望がある。
そこで本発明者は過去に鋭意研究を行い、微細銀粒子を担持させたポリペプチドを含有する銀溶液と、大根を所定の浸漬液中で発酵し搾汁して得られる大根発酵液とを混合してなる抗菌剤を提案している。
この銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤によれば、非加熱的な抗菌や殺菌が比較的困難なカビや酵母に対して効果的に抗菌や殺菌を行うことができる。
特開2010-059132号公報
ところが、上記従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤は、銀粒子の担体として機能するポリペプチドから銀粒子が脱落しやすいという問題があり、沈殿や凝集が生じる場合があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、上記従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤に比して安定性が高く、しかも、種々の液体である抗菌対象物に使用可能な抗菌物質の抗菌成分としての使用方法を提供する。
上記従来の課題を解決するために、本発明では、(1)いずれも平均分子量が120万以上の1重量部のヒアルロン酸ナトリウムと1±0.5重量部のキサンタンガムとを水に添加し、攪拌しながら水を添加しつつ溶解させ、この混合水溶液に対し攪拌しながらジアンミン銀イオン溶液を添加し、その後にアンモニア水を添加してアルカリ状態とし、その後グルコース溶液を添加して攪拌し、その後攪拌を停止して1.5~3時間以上静置反応させることで反応液を得て、この反応液を透析して得た直径1nm以上の銀の析出粒子が分散状態で付着した液状抗菌剤を、アニオン系界面活性剤であるココイルグルタミン酸カリウム、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタイン、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチルオクチルアミン、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、HLB値が19、15、13、11、9.5、8、6、2又は1のショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくともいずれか1つの成分を含む水溶液中にて抗菌成分として使用することとした。
また、本発明では、(2)いずれも平均分子量が120万以上の1重量部のヒアルロン酸ナトリウムと1±0.5重量部のキサンタンガムとを水に添加し、攪拌しながら水を添加しつつ溶解させ、この混合水溶液に対し攪拌しながらジアンミン銀イオン溶液を添加し、その後にアンモニア水を添加してアルカリ状態とし、その後グルコース溶液を添加して攪拌し、その後攪拌を停止して1.5~3時間以上静置反応させることで反応液を得て、この反応液を透析して得た直径1nm以上の銀の析出粒子が分散状態で付着した液状抗菌剤を、アニオン系界面活性剤であるココイルグルタミン酸カリウム、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタイン、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチルオクチルアミン、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、HLB値が19、15、13、11、9.5、8、6、2又は1のショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくともいずれか1つの成分を含む水性液状化粧料中にて抗菌成分として使用することとした。
また、本発明では、(3)いずれも平均分子量が120万以上の1重量部のヒアルロン酸ナトリウム1±0.5重量部のキサンタンガムとを水に添加し、攪拌しながら水を添加しつつ溶解させ、この混合水溶液に対し攪拌しながらジアンミン銀イオン溶液を添加し、その後にアンモニア水を添加してアルカリ状態とし、その後グルコース溶液を添加して攪拌し、その後攪拌を停止して1.5~3時間以上静置反応させることで反応液を得て、この反応液を透析して得た直径1nm以上の銀の析出粒子が分散状態で付着した液状抗菌剤を、アニオン系界面活性剤であるココイルグルタミン酸カリウム、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタイン、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチルオクチルアミン、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、HLB値が19、15、13、11、9.5、8、6、2又は1のショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくともいずれか1つの成分を含む食品中にて抗菌成分として使用することとした。
本発明に係る抗菌物質の抗菌成分としての使用方法によれば、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤に比して安定性が高く、しかも、種々の液体である抗菌対象物に使用可能な抗菌物質の抗菌成分としての使用方法を提供することができる。
本実施形態に係る抗菌物質の電子顕微鏡像を示した説明図である。
本発明は、直径が1nm以上の銀の析出粒子を分散状態で付着させた平均分子量120万以上の水溶性多糖類よりなる抗菌物質を提供するものである。
特に、析出させた銀の粒子の直径を1nm以上とし、より好ましくは1nm以上100nm以下、としているため、カビや酵母に対して極めて優れた抗菌効果や殺菌効果を発揮させることができる。なお、析出させた銀の粒子径が1nmを下回ると二次凝集が生じてしまうため好ましくなく、100nmを上回ると沈殿したり抗菌力が低下するため好ましくない。
また、銀の粒子を付着させる担体として水溶性多糖類を用いることとしたため、極めて安定性の高い抗菌物質とすることができる。
ここで水溶性多糖類は、水系溶媒(例えば、水や、水混和性有機溶媒や、水溶性物質を添加した水)に可溶な多糖類であれば特に限定されるものではない。このような多糖類としては例えば、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸、フコイダン、サクラン、キサンタンガム等を挙げることができ、特に好適にはヒアルロン酸やサクラン、キサンタンガムを用いることができる。
また、これらの水溶性多糖類は平均分子量が120万以上であるのが望ましい。平均分子量が120万を下回ると安定性が低下し、銀粒子が水溶性多糖類から脱落したり、凝集し易くなる。平均分子量を120万以上、より好ましくは平均分子量を180万以上とすることにより、水溶性多糖類からの銀の脱落を抑制しつつ、凝集し難い抗菌物質とすることができる。
また、水溶性多糖類は2種以上の水溶性多糖の複合体であっても良い。この場合、特に好ましくはヒアルロン酸とキサンタンガムとの複合体や、ヒアルロン酸とキサンタンガムに加え更なる水溶性多糖を組み合わせた複合体とすることで、極めて安定性の高い抗菌性物質とすることができる。
水溶性多糖類をヒアルロン酸とキサンタンガムとを用いた複合体とした場合、同複合体におけるヒアルロン酸の構成重量割合を「1」とした時のキサンタンガムの構成重量割合は、0.5~1.5とするのが望ましい。
キサンタンガムの構成重量割合がヒアルロン酸「1」に対して0.5を下回ると、キサンタンガムによる安定性向上の効果が得られにくくなる。また、キサンタンガムの構成重量割合がヒアルロン酸「1」に対して1.5を上回ると、ヒアルロン酸が元々有する金属粒子の担持機能が過剰量のキサンタンガムにより相殺されてしまい、安定性が低くなるため好ましくない。
他の水溶性多糖類を加えた場合であっても、水溶性多糖類としてヒアルロン酸とキサンタンガムとを使用して複合体を形成する場合には、ヒアルロン酸の構成重量割合を「1」とした時のキサンタンガムの構成重量割合を0.5~1.5、すなわちヒアルロン酸とキサンタンガムとの重量割合を大凡1:1±0.5とすることで、銀粒子の脱落・沈殿が効果的に抑制された安定性の高い抗菌性物質とすることができる。
また、本実施形態に係る抗菌物質は、水系溶媒中に存在させておくことで、極めて安定した液状抗菌剤として利用することができる。
特に、この液状抗菌剤は、銀の濃度を80ppm以上としておくことにより、所定の対象物に適宜添加して希釈させた状態で抗菌効果を発揮する液状抗菌剤として利用することができる。
付言すれば、本実施形態に係る抗菌物質は、対象物中において銀の濃度が0.1~8ppm程度となるように存在させておくことで、優れた抗菌効果や殺菌効果を発揮させることが可能であり、例えば液状抗菌剤の濃度を80ppmとしたならば、10倍~800倍希釈の範囲で希釈して使用することができる。
また本願では、前述の抗菌物質を含有する液状抗菌剤の製造方法についても提供する。
具体的には、平均分子量120万以上の水溶性多糖類と、ジアンミン銀イオンと、前記ジアンミン銀イオンの還元能を有する有機酸又は糖とを水系溶媒中で反応させて、直径が1nm以上の銀の析出粒子を分散状態で付着させた平均分子量120万以上の水溶性多糖類を含む反応液を得る反応工程と、前記反応液中に含まれるアンモニウム塩や硝酸塩、銀塩を除去して精製し液状抗菌剤とする液状抗菌剤調製工程と、を有することを特徴とする液状抗菌剤の製造方法を提供する。
ジアンミン銀イオンは、化学式[Ag(NH3)2]+で表される物質であり、例えば、下記の反応式に従って得ることができる。
2Ag+ + 2OH- → Ag2O + H2O
Ag2O + 4NH3+ H2O → 2[Ag(NH3)2]++ 2OH-
ジアンミン銀イオンの還元能を有する有機酸は特に限定されるものではないが、同有機酸が酸化された際に色調の変化を来さないものがより好ましい。有機酸としては例えば、アスコルビン酸やクエン酸を用いることができる。
また、ジアンミン銀イオンの還元能を有する糖についても特に限定されるものではないが、例えばグルコースやキシロース等を用いることができる。
また各成分は、94.05±5重量部(すなわち、89.05~99.05重量部)の水系溶媒と、0.95±0.5重量部(すなわち、0.45~1.45重量部)の平均分子量120万以上の水溶性多糖類と、2.6±2.5重量部(すなわち、0.1~5.1重量部)のジアンミン銀イオンの還元能を有する有機酸又は糖と、0.035±0.0315重量部(すなわち、0.0035~0.0665重量部)のジアンミン銀イオンとが混合される割合で用いるのが好ましい。
また、反応工程を行うにあたっては、水溶性多糖類と、ジアンミン銀イオンと、有機酸との他に、グリセリンやプルラン、グルコースなどの糖などを添加しても良い。
グリセリンは、反応液中に0.5~5重量%の濃度で添加しておくことにより、ヒアルロン酸の溶解性を向上できると共に、銀の担持量を増やすことができる。
また、グルコースやプルランは、反応液中に0.5~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%の濃度で添加しておくことにより、銀の安定性を増加させることができる。
また、この反応工程は、アルカリ条件下や過アルカリ条件下で行うようにしても良い。例えば、後述する〔2.液状抗菌剤の調製〕の調製例2にて述べる配合割合の反応液のpHに対して±0.5程度のpHの範囲内のアルカリ性条件下とすることにより、担持されず沈殿してしまう銀粒子の量を抑制することができ、しかも、液状抗菌剤の製品安定性、すなわち液状抗菌剤とした後の経時的な沈殿の生成をも抑制することができる。また、敢えて一例を挙げるならば、反応時のpHは例えば9~12程度、より好ましくはpH10~12程度とすることができる。
抗菌剤調製工程は、反応工程により得られた直径が1nm以上の銀の析出粒子を分散状態で付着させた平均分子量120万以上の水溶性多糖類を含む反応液から、アンモニウム塩や硝酸塩、銀塩等の塩類や未反応のジアンミン銀イオン、有機酸等を除去して液状抗菌剤とするための工程である。
本工程は、例えば分子量の違い等を利用して除去するなど公知の方法を採用することができ、より具体的には、透析を採用するのも一案である。
また、本抗菌剤調製工程では、精製工程にて得られた溶液に対し、適宜水系溶媒等を添加して希釈することにより本実施形態に係る抗菌物質の含有濃度を調整して本実施形態に係る液状抗菌剤を調製するようにしても良い。
このように、本実施形態に係る液状抗菌剤の製造方法によれば、上述の反応工程と、抗菌剤調製工程とを経ることにより、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤に比して安定性が高く、しかも、種々の液体である抗菌対象物に使用可能な液状抗菌剤を製造することができる。
以下、本実施形態に係る抗菌物質、液状抗菌剤、液状抗菌剤の製造方法、微生物繁殖抑制方法について、実験結果等を参照しつつ更に具体的に説明する。なお、以下の説明では、平均分子量120万以上の水溶性多糖類として平均分子量が120万のヒアルロン酸Naや分子量180万~220万、好ましくは200万程度のキサンタンガムを用い、ジアンミン銀イオンの還元能を有する有機酸又は糖としてクエン酸やグルコースを用いた例について説明するが、必ずしもこれらの組み合わせに限定されるものではない。ただし、出願人がこれらの組み合わせに限定することも妨げない。
〔1.ジアンミン銀イオン溶液の調製〕
まず、ジアンミン銀イオン溶液の調製を次の通り行った。すなわち、0.1mol/Lの硝酸銀水溶液10mlに対し、1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1mlを添加して十分に攪拌した。次いで、濁った混合液に対し、2.5%アンモニア水を混合液が透明になるまで(約4ml)添加して、銀濃度が約7000ppmのジアンミン銀イオン溶液を調製した。(ジアンミン銀イオン溶液A)
また別途、500ml容量のビーカーに334.69g量り取った0.1mol/L硝酸銀水溶液に対し、33.47gの1.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加して十分に攪拌し、濁った混合液に対し、167.34gの2.5%アンモニア水を混合液が透明になるまで添加して、銀濃度が約7000ppmのジアンミン銀イオン溶液を調製した。(ジアンミン銀イオン溶液B)
〔2.液状抗菌剤の調製〕
ビーカーに平均分子量120万のヒアルロン酸ナトリウムを0.95重量部量り取り、94.05重量部の水を加えて溶解させ、このヒアルロン酸ナトリウム水溶液に対し、0.1重量部のクエン酸を添加し、30℃にて十分に攪拌を行った。次に、5重量部のジアンミン銀イオン溶液Aを更に添加し、30℃にて22時間攪拌を行うことにより反応工程を行うことで反応液を得た。なお、以下においてこの反応液をHA-Ag(cit)と言う。
また、3.5kgの水を収容した20kg容量のステンレス製タンク内へ36gのヒアルロン酸ナトリウムと36gのキサンタンガムとを添加し、プロペラ攪拌機で300rpmの回転速度で攪拌しながら更に10kgの水を添加して40℃にて溶解させた。次いで、このヒアルロン酸ナトリウムとキサンタンガムとの混合水溶液(以下、HAXA水溶液という。)に対し攪拌を継続しながらジアンミン銀イオン溶液Bを反応液中で銀の濃度が終濃度250ppmとなる量で添加し、その5~30分後に15gの2.5%アンモニア水とを添加してアルカリ(過アルカリ)の状態とし、その5~30分後に、予め892.5gの水に225gのグルコースを溶解させたグルコース溶液を添加して5~15分攪拌し、攪拌を停止して1.5~3時間以上静置反応させることで反応液を得た。この時の反応液のpHは10.5であった。なお、以下においてこの反応液をHAXA-Ag(gul/am)と称する。
また、HAXA-Ag(gul/am)と同様の調製手順であるが、2.5%アンモニア水を添加することなく調製を行った反応液も得た。この時の反応液のpHは9.5であった。以下においてこの反応液をHAXA-Ag(gul)という。
次に、これら反応工程を経て得られた各反応液をそれぞれ所定量ずつ分取して透析チューブに収容し、この透析チューブを混合液量の約10倍の容量を有する容器に入れて流水下で一昼夜透析し、その後透析チューブから取り出して液状抗菌剤を得た。得られた液状抗菌剤HA-Ag(cit)中の銀濃度は140±20ppmであった。また、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul/am)中の銀濃度は200±20ppm、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul)中の銀濃度は160±20ppmであった。
〔3.精製度合い確認試験〕
次に、得られた各液状抗菌剤中に、アンモニウム塩や硝酸塩、銀塩が含まれているか否かについて確認を行った。
まず、得られた各液状抗菌剤に対し、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して加温し、臭気の有無と発生するガスのpHとの確認とを行うことで、アンモニウム塩の存在について検証した。液状抗菌剤にアンモニウム塩が含まれているならば、アンモニア臭が感じられ、発生するガスをpH試験紙に接触させることでアルカリ性を呈する。
その結果、いずれの液状抗菌剤からもアンモニア臭は感じられず、また、pH試験紙の色調にも変化は見られなかった。この結果から、各液状抗菌剤には、アンモニウム塩が含まれていない(検出限界以下である)ことが確認された。
次に、得られた各液状抗菌剤に対し、ジフェニルアミン試液を添加して反応させ、反応液の色調変化について確認を行った。液状抗菌剤に硝酸塩が含まれているならば、反応液は青色に変化する。
その結果、いずれの液状抗菌剤においても反応液の色調は変化せず、各液状抗菌剤には硝酸塩が含まれていない(検出限界以下である)ことが確認された。
次に、得られた各液状抗菌剤に対し、希塩酸を添加して反応させ、沈殿の有無について確認を行った。液状抗菌剤に銀塩が含まれているならば、白色沈殿が生じる。
その結果、いずれの液状抗菌剤においても白色沈殿が生じることはなく、各液状抗菌剤には銀塩が含まれていない(検出限界以下である)ことが確認された。
このように、本実施形態に係る液状抗菌剤には、アンモニウム塩、硝酸塩、銀塩が含まれていないことが確認された。
〔4.電子顕微鏡による確認試験〕
次に、電子顕微鏡にて液状抗菌剤中に含まれる抗菌物質について観察を行った。液状抗菌剤HA-Ag(cit)の電子顕微鏡像を図1に示す。
図1からも分かるように、液状抗菌剤HA-Ag(cit)中の抗菌物質は、水溶性多糖類のマトリクス中に直径1nm以上、大凡1nm~100nm程度に析出した銀粒子が分散状態で付着している(担持されている)のが観察された。また、図示は割愛するが、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul/am)、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul)のいずれにおいても、水溶性多糖類のマトリクス中に直径1nm以上、大凡1nm~100nm程度に析出した銀粒子が分散状態で付着している(担持されている)のが観察された。
〔5.抗菌性確認試験〕
次に、本実施形態に係る液状抗菌剤について、抗菌性の確認試験を行った。具体的には、本実施形態に係る液状抗菌剤HA-Ag(cit)、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul/am)、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul)のそれぞれを2%(w/w)で添加した化粧水を20mlずつ複数の容器に分注し、大腸菌液(Esherichia coli ; 3.1×108cfu/ml)、黄色ブドウ球菌液(Staphylococcus aureus ; 2.1×108cfu/ml)、緑膿菌液(Pseudomonas aeruginosa ; 2.5×108cfu/ml)、枯草菌液(Bacillus subtilis ; 4.0×107cfu/ml)、カンジダ液(Candida albicans ; 8.6×108cfu/ml)、黒カビ液(Aspergillus niger ; 2.6×108cfu/ml)をそれぞれ0.2ml添加して、4週間に亘り経過を観察した。液状抗菌剤HA-Ag(cit)にて得られた結果を表1に示す。
Figure 0007118465000001
表1中において括弧は、本実施形態に係る液状抗菌剤を添加しない場合の経過を示している。表1からも分かるように、本実施形態に係る液状抗菌剤を添加しない場合には、6種の試験菌のいずれにおいても微生物の繁殖が確認された。
一方、本実施形態に係る液状抗菌剤を添加した場合には、6種の試験菌のいずれにおいても、微生物の増殖抑制効果が観察された。特に、大腸菌や緑膿菌、カンジダに対しては、接種1日経過後において生菌が観察されず、極めて強力な増殖抑制効果が観察された。また、黄色ブドウ球菌に関しても、3日後には生菌が観察されなかった。
枯草菌に対しては、4週間経過後も完全に死滅させるには至らなかったものの、芽胞を形成する微生物に対してその菌数を107から102オーダーまで低減させており、芽胞形成菌に対しても有効であることが示唆された。
また、黒カビについても同様、4週間経過後も完全に死滅させるには至らなかったものの、その菌数を108から101オーダーまで低減させており、カビに対しても有効であることが示された。
また、具体的なデータは割愛するが、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul/am)、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul)のいずれにおいても、液状抗菌剤HA-Ag(cit)と略同様の抗菌傾向が観察された。
これらのことから、本実施形態に係る抗菌物質や液状抗菌剤は、極めて広範な菌種に対して有効であることが示された。
〔6.安定性試験(1)〕
次に、種々の界面活性剤の存在下における本実施形態に係る抗菌物質や液状抗菌剤の安定性について検討を行った。
具体的には、アニオン系界面活性剤であるココイルグルタミン酸カリウムの12%水溶液と、カチオン系界面活性剤である塩化セチルトリメチルアンモニウムの24%水溶液と、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタインの30%水溶液と、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチルオクチルアミンの1%水溶液とに対し、本実施形態に係る液状抗菌剤を添加して凝集や沈殿が起こるか否かについて確認を行った。なお本試験では、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの1.5%水溶液に対しても試験を行った。
また、比較対象として、先述した従来の抗菌剤である銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤を同様に添加して試験を行った。
その結果、本実施形態に係る液状抗菌剤(HA-Ag(cit)、HAXA-Ag(gul/am)、HAXA-Ag(gul))は、いずれもカチオン系界面活性剤の水溶液に対しては凝集及び沈殿が観察されたものの、それ以外のアニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン化キトサンの各水溶液においては、凝集や沈殿は観察されなかった。
一方、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤は、カチオン系界面活性剤である塩化セチルトリメチルアンモニウムの24%水溶液と、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドの1.5%水溶液において凝集や沈殿が観察された。
これらの結果から、本実施形態に係る抗菌物質や液状抗菌剤は、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤に比して安定性が高く、しかも、種々の液体である抗菌対象物に使用可能であることが示された。
〔7.安定性試験(2)〕
HLB値の異なる各種ショ糖脂肪酸エステルの存在化における、本実施形態に係る抗菌物質や液状抗菌剤の安定性について検討を行った。
具体的には、所定量の水に対し1%(w/w)に相当するショ糖脂肪酸エステルを添加し、溶解可能なものについては十分に溶解させた後、本実施形態に係る液状抗菌剤(HA-Ag(cit)、HAXA-Ag(gul/am)、HAXA-Ag(gul))を2%(w/w)添加し、十分に振盪させて3日間静置して沈殿や凝集の有無について確認した。ショ糖脂肪酸エステルは、HLB値が19、15、13、11、9.5、8、6、2、1のものを用いた。
また比較対象として、従来の抗菌剤である銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤を同様に添加して試験を行った。
その結果、本実施形態に係る液状抗菌剤は、いずれのHLB値のショ糖脂肪酸エステル存在下においても沈殿や凝集は観察されなかった。
一方、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤は、HLB値が19、15、13、11のサンプルにおいて凝集や沈殿が観察された。
これらの結果から、本実施形態に係る抗菌物質や液状抗菌剤は、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤に比して、安定性が高く、しかも、種々の液体である抗菌対象物に使用可能であることが示された。
〔8.安定性試験(3)〕
次に、本実施形態に係る液状抗菌剤をボディーソープに添加した場合の沈殿や凝集の有無について検討を行った。
具体的には、約200gのボディーソープに対し、本実施形態に係る液状抗菌剤(HA-Ag(cit)、HAXA-Ag(gul/am)、HAXA-Ag(gul))を0.5%(w/w)添加して静置し、沈殿や凝集が生じるか否かについて観察を行った。
その結果、沈殿や凝集は観察されず、本実施形態に係る抗菌物質や液状抗菌剤は、極めて安定性が高いことが示された。
〔9.安定性試験(4)〕
次に、本実施形態に係る液状抗菌剤の安定性の経時変化について検討を行った。
具体的には、50ml容量で尖鋭形状の透明プラスチック容器内に、液状抗菌剤HA-Ag(cit)、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul/am)、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul)をそれぞれ45mlずつ分注し、65℃に設定したインキュベータ内に収容して8週間(約2ヶ月間)加速試験に供した。
また比較対象として、従来の抗菌剤である銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤を同様に添加して試験を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0007118465000002
表2からも分かるように、本実施形態に係る液状抗菌剤はいずれも、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤と比較して、良好な安定性が確認された。
また、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul/am)、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul)は、HA-Ag(cit)に比して、より高い安定性を備えていることが確認された。特に、液状抗菌剤HAXA-Ag(gul/am)は6週間経過後においても銀粒子の沈殿が確認されず、極めて高い製品安定性を備えていることが示唆された。
上述してきたように、本実施形態に係る抗菌物質によれば、直径が1nm以上の銀の析出粒子を分散状態で付着させた平均分子量180万以上の水溶性多糖類よりなることとしたため、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤に比して安定性が高く、しかも、種々の液体である抗菌対象物に使用可能な抗菌物質を提供することができる。
また、本実施形態に係る液状抗菌剤の製造方法によれば、平均分子量180万以上の水溶性多糖類と、ジアンミン銀イオンと、前記ジアンミン銀イオンの還元能を有する有機酸又は糖とを水系溶媒中で反応させて、直径が1nm以上の銀の析出粒子を分散状態で付着させた平均分子量180万以上の水溶性多糖類を含む反応液を得る反応工程と、前記反応液中に含まれるアンモニウム塩や硝酸塩、銀塩を除去して精製し液状抗菌剤とする液状抗菌剤調製工程と、を有することとしたため、従来の銀溶液と大根発酵液とを混合してなる抗菌剤に比して安定性が高く、しかも、種々の液体である抗菌対象物に使用可能な液状抗菌剤の製造方法を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。

Claims (3)

  1. いずれも平均分子量が120万以上の1重量部のヒアルロン酸ナトリウムと1±0.5重量部のキサンタンガムとを水に添加し、攪拌しながら水を添加しつつ溶解させ、この混合水溶液に対し攪拌しながらジアンミン銀イオン溶液を添加し、その後にアンモニア水を添加してアルカリ状態とし、その後グルコース溶液を添加して攪拌し、その後攪拌を停止して1.5~3時間以上静置反応させることで反応液を得て、この反応液を透析して得た直径1nm以上の銀の析出粒子が分散状態で付着した液状抗菌剤の、アニオン系界面活性剤であるココイルグルタミン酸カリウム、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタイン、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチルオクチルアミン、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、HLB値が19、15、13、11、9.5、8、6、2又は1のショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくともいずれか1つの成分を含む水溶液中における抗菌成分としての使用。
  2. いずれも平均分子量が120万以上の1重量部のヒアルロン酸ナトリウムと1±0.5重量部のキサンタンガムとを水に添加し、攪拌しながら水を添加しつつ溶解させ、この混合水溶液に対し攪拌しながらジアンミン銀イオン溶液を添加し、その後にアンモニア水を添加してアルカリ状態とし、その後グルコース溶液を添加して攪拌し、その後攪拌を停止して1.5~3時間以上静置反応させることで反応液を得て、この反応液を透析して得た直径1nm以上の銀の析出粒子が分散状態で付着した液状抗菌剤の、アニオン系界面活性剤であるココイルグルタミン酸カリウム、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタイン、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチルオクチルアミン、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、HLB値が19、15、13、11、9.5、8、6、2又は1のショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくともいずれか1つの成分を含む水性液状化粧料中における抗菌成分としての使用。
  3. いずれも平均分子量が120万以上の1重量部のヒアルロン酸ナトリウムと1±0.5重量部のキサンタンガムとを水に添加し、攪拌しながら水を添加しつつ溶解させ、この混合水溶液に対し攪拌しながらジアンミン銀イオン溶液を添加し、その後にアンモニア水を添加してアルカリ状態とし、その後グルコース溶液を添加して攪拌し、その後攪拌を停止して1.5~3時間以上静置反応させることで反応液を得て、この反応液を透析して得た直径1nm以上の銀の析出粒子が分散状態で付着した液状抗菌剤の、アニオン系界面活性剤であるココイルグルタミン酸カリウム、両性界面活性剤であるラウラミドプロピルベタイン、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチルオクチルアミン、カチオン化キトサンであるキトサンステアラミドヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、HLB値が19、15、13、11、9.5、8、6、2又は1のショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくともいずれか1つの成分を含む食品中における抗菌成分としての使用。
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