JP7115611B2 - 組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、組成物に関する。
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層に悪影響を及ぼすことから、その生産が規制されることが予定されている。HCFCとして、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225ca)、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC-225cb)等が挙げられる。HCFCの規制に伴い、これに代わる化合物の開発が望まれている。
HCFCに代わる化合物として、例えば、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)が挙げられる。HCFO-1233ydは、地球温暖化係数(GWP)が小さく、洗浄剤、溶剤、冷媒、発泡剤、エアゾール等の用途に好適に使用することができる。
HCFO-1233ydは構造異性体であるHCFO-1233ydのZ体(HCFO-1233yd(Z))とHCFO-1233ydのE体(HCFO-1233yd(E))が存在する。洗浄剤、溶剤、冷媒、発泡剤およびエアゾールの用途では、これらのうち、HCFO-1233yd(Z)が主に使用される。
特許文献1には、1-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244ca)とフッ化水素とから1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC-245ca)を製造する方法が開示されている。この方法では、HCFO-1233ydが副生するため、上記方法で得られた組成物からHCFO-1233ydを分離することで、HCFO-1233ydを含む組成物が得られる。
上記の方法で生成するHCFO-1233ydは、HCFO-1233yd(E)とHCFO-1233yd(Z)の混合物であるが、用途に合わせてHCFO-1233yd(Z)およびHCFO-1233yd(E)をそれぞれ単独で用いたり、混合物の組成を調整できることが好ましい。しかしながら、特許文献1には、HCFO-1233yd(E)とHCFO-1233yd(Z)とを分離することや組成を調整することについて記載されていない。
また、上記HCFO-1233ydの製造工程において水が混入することがある。HCFO-1233yd(Z)を含む組成物に水(湿分)が含まれると、洗浄剤、溶剤、冷媒、発泡剤またはエアゾールとして使用する際に、信頼性および性能の低下を招き、種々の問題を引き起こすことがある。そのような好ましくない影響を起こさないように、水の含有量をできるだけ少なくすることが好ましい。
通常、反応生成物からの副生物を取り除くには沸点差を利用して蒸留で行われるが、HCFO-1233yd(Z)の沸点は約54℃である一方、HCFO-1233yd(E)の沸点は約48℃であり沸点が近い。このため通常の蒸留塔での分離は困難であり、HCFO-1233yd(E)をより効率よく取り除く方法が求められていた。
また、HCFO-1233yd(Z)と水の混合物は共沸様組成物を形成するため、蒸留による分離が困難であり、水を効率よく取り除く方法が求められていた。
国際公開第1994/14737号
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、HCFO-1233yd(Z)と、HCFO-1233yd(E)と、水とを含む組成物から、HCFO-1233yd(E)および水を効率よく取り除くことができ、HCFO-1233yd(Z)の回収率が高く、かつHCFO-1233yd(Z)の純度が高められるHCFO-1233yd(Z)の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示す構成のHCFO-1233yd(Z)の製造方法を提供する。
[1]HCFO-1233yd(Z)、HCFO-1233yd(E)、および水を含有する蒸留用組成物を蒸留して、前記HCFO-1233yd(E)と前記水とを、共沸組成物または共沸様組成物として取り除くことを特徴とするHCFO-1233yd(Z)の製造方法。
[2]前記蒸留用組成物において、前記HCFO-1233yd(E)の含有量と前記水の含有量の合計に対する水の含有量の割合は0.001~5質量%である[1]記載のHCFO-1233yd(Z)の製造方法。
[3]前記蒸留用組成物を、HCFO-1233yd(Z)と水とを含有する組成物に、HCFO-1233yd(E)を添加して調製する、[1]または[2]記載のHCFO-1233yd(Z)の製造方法。
[4]前記蒸留用組成物を、HCFO-1233yd(Z)とHCFO-1233yd(E)とを含有する組成物に、水を添加して調製する、[1]または[2]記載の前記蒸留用組成物を1233yd(Z)の製造方法。
[5]前記蒸留用組成物を、HCFC-244caを脱フッ化水素反応して得られた1233yd(Z)を含む反応組成物を用いて調製する[1]~[4]のいずれか記載のHCFO-1233yd(Z)の製造方法。
[6]前記蒸留を、塔頂温度を40~55℃とした蒸留塔により行う、[1]~[5]のいずれか記載のHCFO-1233yd(Z)の製造方法。
本発明のHCFO-1233yd(Z)の製造方法によれば、HCFO-1233yd(Z)と、HCFO-1233yd(E)と、水とを含む組成物から、HCFO-1233yd(E)および水を効率よく取り除くことができ、HCFO-1233yd(Z)の回収率を高くでき、かつHCFO-1233yd(Z)の純度を高めることができる。
実施形態の製造方法に使用される蒸留装置の一例を示す図である。
本明細書において、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)は、単に「1233yd」ともいう。また、HCFO-1233ydの構造異性体であるHCFO-1233ydのZ体を、単に「1233yd(Z)」、HCFO-1233ydのE体を、単に「1233yd(E)」ともいう。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記した場合、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、分子内に二重結合を有し、E体とZ体が存在する化合物については、E体とZ体をそれぞれ化合物の略称の末尾に(E)、(Z)と表記して示す。なお、化合物名の略称の末尾に(E)、(Z)の表記がないものは、(E)体、(Z)体、(E)体と(Z)体の混合物のいずれかであることを示す。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の1233yd(Z)の製造方法は、1233yd(Z)、1233yd(E)、および水を含有する蒸留用組成物を蒸留して、前記蒸留用組成物から1233yd(E)と水とを、共沸組成物または共沸様組成物として取り除くことを特徴とする。ここで、1233yd(E)と水の共沸組成物または共沸様組成物は、その一部が取り除かれてもよく、全部が取り除かれてもよい。
まず、共沸組成物、共沸様組成物について説明する。
一般に、共沸組成物は、混合物において、液相の気化により生成される気相の組成が該液相の組成と同一となり、または、気相の液化により生成される液相の組成が該気相の組成と同一となるものとして定義される。共沸組成物は、蒸発、凝縮により組成が変化しないことから、蒸留、還流に好適に使用することができる。なお、共沸組成物の組成は、圧力条件により変化する。
一方、共沸様組成物は、共沸組成物に類似した挙動を示すものである。すなわち、共沸様組成物は、液相の気化により生成される気相の組成が該液相の組成と略同一となり、または、気相の液化により生成される液相の組成が該気相の組成と略同一となる。共沸様組成物は、蒸発、凝縮により組成がほとんど変化しないことから、共沸組成物と同様、蒸留、還流に好適に使用することができる。
本発明者らは、1233yd(E)と水が共沸組成または共沸様組成を形成することを見出した。さらには、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物は、1233yd(Z)と水との共沸組成物または共沸様組成物に優先して形成されることを見出した。
そして、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物は、1233yd(Z)に比較して沸点が低い。すなわち、1233yd(Z)の沸点が54℃程度であるのに対して、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物の沸点は40~48℃程度である。なお、沸点は、大気圧下における沸点である。大気圧は、101.325kPaである。
したがって、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物を利用することにより、1233yd(Z)と、1233yd(E)および水とを分離することができる。これにより、蒸留用組成物から1233yd(E)および水を効率よく取り除くことができ、1233yd(Z)の回収率を高くでき、かつ1233yd(Z)の純度を高めることができる。
1233yd(E)と水との共沸組成物は、大気圧下、下記式(1)で表される比揮発度が1.00となるものであり、1233yd(E)と水との共沸様組成物は、下記式(1)で表される比揮発度が1.00±0.20の範囲内となるものである。共沸様組成物は、比揮発度が前記範囲内であれば、共沸組成物とほぼ同様の効果を得ることができる。
比揮発度=(気相中の水のモル%/気相中の1233yd(E)のモル%)/(液相中の水のモル%/液相中の1233yd(E)のモル%) …(1)
所望の比揮発度を得ることができる組成範囲は、以下のようにして求めることができる。まず、1233yd(E)と水との混合物の組成を徐々に変化させて、液相および気相の組成をカールフィシャー水分計や、ガスクロマトグラフにより測定する。この液相および気相の組成を用いて、上記式(1)より比揮発度を求める。これにより、組成と比揮発度との相関が求められる。この相関から、所望の比揮発度とするための組成を求めることができる。
1233yd(E)と水との共沸組成物および共沸様組成物は、1233yd(E)の含有量と水の含有量の合計に対する水の含有量の割合が0.001~5質量%であることが好ましい。上記割合が前記範囲内であれば、比揮発度が1.00±0.20の範囲内となりやすく、沸点が40~48℃程度となりやすい。比揮発度を1.00に近づけて沸点を低下させる観点から、上記割合が0.01~2.5質量%であることがより好ましく、0.05~2質量%であることがさらに好ましく、0.1~2質量%であることが特に好ましい。
次に、蒸留用組成物について説明する。
蒸留用組成物は、1233yd(Z)、1233yd(E)、および水を含有する。蒸留用組成物は、1233yd(E)および水から選ばれる少なくとも1種と1233yd(Z)とを含有する組成物に、必要に応じて、1233yd(E)および水から選ばれる少なくとも1種を添加することにより調製してもよい。
1233ydは、例えば、国際公開第1994/14737号に開示された方法により得ることができる。すなわち、水酸化クロム触媒の存在下、1-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244ca)とフッ化水素とを供給して1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC-245ca)を製造する際の副生物として得ることができる。
また、1233ydは、例えば、HCFC-244caの脱フッ化水素反応により得ることができる。上記反応は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を反応剤として使用して、40~80℃の温度で行うことができる。
これらの製造方法により得られる1233ydは、通常、1233yd(Z)、1233yd(E)の混合体であり、また、製造工程において水が混入する場合がある。すなわち、上記製造方法により1233yd(Z)と、1233yd(E)および水から選ばれる少なくとも1種とを含有する反応組成物が得られる。上記の方法で得られた反応組成物をそのまま蒸留用組成物として用いてもよいし、反応組成物に含まれる、水、1233yd(E)の含有量に応じて、1233yd(E)および水から選ばれる少なくとも1種を添加して調製したものを蒸留用組成物として使用してもよい。
反応組成物は、以下のように分類することができる。すなわち、1233yd(Z)と水とを含有し、1233yd(E)を含有しない反応組成物(第1の反応組成物)、1233yd(Z)と1233yd(E)とを含有し、水を含有しない反応組成物(第2の反応組成物)、1233yd(Z)、1233yd(E)、および水を含有する反応組成物(第3の反応組成物)に分類することができる。
第1の反応組成物、すなわち、1233yd(Z)と水とを含有し、1233yd(E)を含有しない場合、1233yd(E)を添加することにより蒸留用組成物を得ることができる。1233yd(E)を添加することにより、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物を形成することができる。
第2の反応組成物、すなわち、1233yd(Z)と1233yd(E)とを含有し、水を含有しない場合、水を添加することにより蒸留用組成物を得ることができる。水を添加することにより、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物を形成することができる。
第3の反応組成物、すなわち、1233yd(Z)、水、および1233yd(E)を含有する場合、このままの状態で蒸留用組成物とすることができる。なお、第3の反応組成物には、水、1233yd(E)の含有量に応じて、1233yd(E)および水から選ばれる少なくとも1種を添加することができる。
本実施形態で用いる蒸留用組成物における1233yd(Z)の含有量は、蒸留用組成物の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。1233yd(Z)の含有量が上記下限値以上であれば、1233yd(E)と水を効率よく取り除くことができる。
蒸留用組成物における水および1233yd(E)のそれぞれの含有量は必ずしも制限されない。蒸留用組成物に水と1233yd(E)とが含まれることにより、水と1233yd(E)とから共沸組成物または共沸様組成物を形成することができる。
なお、蒸留用組成物に含まれる1233yd(E)および水の全てが共沸組成物または共沸様組成物を形成して蒸留用組成物から効率よく取り除かれることが好ましい。このような観点から、蒸留用組成物においては、1233yd(E)の含有量と水の含有量との合計に対する水の含有量の割合が0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~2.5質量%であることがより好ましく、0.05~2質量%であることがさらに好ましく、0.1~2質量%であることが特に好ましい。
水の割合は、1233yd(E)または水の添加により調整することができる。例えば、水の割合が少ない場合、水を添加することにより水の割合を増加させることができる。また、水の割合が多い場合、1233yd(E)を添加することにより水の割合を低下させることができる。
蒸留用組成物は、1233yd(Z)、1233yd(E)、水以外の成分を含有していてもよい。1233yd(Z)、1233yd(E)、水以外の成分としては、1233yd(Z)の製造原料、1233yd(Z)および1233yd(E)以外に生成する副生物等が挙げられる。1233yd(Z)、1233yd(E)、水以外の成分としては、具体的には、HCFC-244ca、1-クロロ-3,3-ジフルオロ-1-プロピン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、テトラフルオロプロパノールやメタノール等のアルコール等が挙げられる。1233yd(Z)、1233yd(E)、水以外の成分は、1233yd(Z)の回収率を高める観点から、蒸留用組成物の全量に対して、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。特に、テトラフルオロプロパノールやメタノール等のアルコールは、1233yd(E)と水の共沸組成の形成を阻害する可能性があることから、これらの化合物を含む場合には、蒸留用組成物の全量に対して5質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下とすることがより好ましい。
次に、蒸留について説明する。
本実施形態の1233yd(Z)の製造方法では、1233yd(Z)、1233yd(E)、および水を含有する蒸留用組成物を用いて蒸留を行う。蒸留用組成物に1233yd(E)と水とを共存させることにより、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物を形成させることができる。
1233yd(Z)の沸点が54℃程度であるのに対して、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物の沸点が40~48℃程度であることから、蒸留用組成物を蒸留することにより、蒸留用組成物から1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物の少なくとも一部を取り除くことができる。その結果、1233yd(E)および水の含有量が低減された組成物、すなわち、純度の高い1233yd(Z)が得られる。
蒸留装置は、蒸留用組成物から1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物の少なくとも一部を取り除くことができればよく、公知の蒸留装置を用いることができる。
図1は、蒸留装置の一例を示したものである。
蒸留装置10は、例えば、蒸留塔11を有し、この蒸留塔11には、蒸留用組成物を供給する配管12と、蒸留塔11の塔頂から留出物を取り出す配管13と、蒸留塔11の塔底から缶出物を取り出す配管14とが接続されている。蒸留装置10は、バッチ式、連続式のいずれでもよい。また、蒸留塔11は、中空式、多段式のいずれでもよい。
このような蒸留装置10においては、例えば、塔頂から、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物を含有する留出物を得ることができ、塔底から、1233yd(Z)を含有する缶出物を得ることができる。
なお、蒸留用組成物に、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物の組成範囲を超えるような過剰な1233yd(E)または水が含まれる場合には、これらの過剰な1233yd(E)または水は、例えば、塔底からの缶出物に含まれることがある。
また、多段式の蒸留塔10の場合、通常、多段式の蒸留塔10の中段に蒸留用組成物が供給される。この場合、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物を含有する留出物は、蒸留用組成物が供給される段よりも上側の段から得ることができる。また、1233yd(Z)を含有する缶出物は、蒸留用組成物が供給される段よりも下側の段から得ることができる。
蒸留時の圧力は、絶対圧で0.1~1.0MPaが好ましい。このような圧力の場合、蒸留塔の塔頂温度は、40~80℃が好ましい。蒸留時の圧力および蒸留塔の塔頂温度を上記範囲内とすることにより、蒸留用組成物から、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物の少なくとも一部を効率よく取り除くことができる。
例えば、蒸留時の圧力が絶対圧で0.1MPaの場合、蒸留塔の塔頂温度は、1233yd(E)と水との共沸組成物または共沸様組成物を含有する留出物の回収量を多くする観点から、40℃以上が好ましく、43℃以上がより好ましく、45℃以上がさらに好ましい。また、上記留出物に含有される1233yd(Z)の割合を少なくする観点から、55℃以下が好ましく、52℃以下がより好ましく、50℃以下がさらに好ましく、48℃以下が最も好ましい。
1233yd(Z)を含有する缶出物を蒸留用組成物として用いて、再び蒸留を行うことができる。缶出物に1233yd(E)および水が含有される場合、蒸留を行うことにより、1233yd(E)および水を分離することができ、さらに1233yd(Z)の純度が高められた缶出物を得ることができる。
また、1233yd(E)を含有する留出物を、蒸留用組成物として用いて、再び蒸留を行うことにより、1233yd(E)と水の割合が高められた留出物を得ることができる。また得られた留出物について、後述の方法等で脱水することにより、純度の高い1233yd(E)を得ることができる。
本実施形態の1233yd(Z)の製造方法では、蒸留することにより、例えば、缶出物の回収率を83%以上とすることができる。缶出物の回収率は、84%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。ここで、缶出物の回収率[%]は、蒸留用組成物の供給量と、缶出物の回収量とから、以下の式により求められる。
缶出物の回収率[%]=(缶出物の回収量)/(蒸留用組成物の供給量)×100
また、本実施形態の1233yd(Z)の製造方法では、蒸留することにより、例えば、缶出物における1233yd(Z)の回収率を85%以上にすることができる。缶出物における1233yd(Z)の回収率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。ここで、缶出物における1233yd(Z)の回収率[%]は、蒸留用組成物における1233yd(Z)の供給量と、缶出物における1233yd(Z)の回収量とから、以下の式により求められる。
缶出物における1233yd(Z)の回収率[%]=(缶出物における1233yd(Z)の回収量)/(蒸留用組成物における1233yd(Z)の供給量)×100
さらに、このような蒸留によれば、例えば、缶出物における1233yd(Z)、1233yd(E)および水の含有量の合計に対する1233yd(Z)の含有量の割合(1233yd(Z)の純度)を80質量%以上にすることができる。上記割合は、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%が最も好ましい。
蒸留により得られる缶出物を固体吸着剤と接触させることにより、缶出物中の水の含有量を低下させることができる。固体吸着剤として、例えば、シリカが挙げられる。シリカは、主としてSiOの化学組成を有する物質である。シリカとして、多孔質合成シリカゲル、メソポーラスシリカ、シリカアルミナ等が挙げられる。シリカは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。シリカの形状は、特に制限されず、粉末状、微粒子状、顆粒状、薄膜状等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されない。
(実施例1)
蒸留塔として、50段の理論段数を有する多段式の蒸留塔を用意した。この蒸留塔の塔頂から40段目の部分より、蒸留用組成物を1.0kg/hの供給量で供給した。蒸留用組成物として、表1に示すように、1233yd(Z)を0.8800kg/h、水を0.0050kg/h、および1233yd(E)を0.1150kg/hで供給した。その後、運転圧力を大気圧とし、塔頂温度を45.5℃として、連続蒸留を行った。
蒸留中、塔頂より留出物を抜き出すとともに、塔底より缶出物を抜き出した。そして、留出物、缶出物について、カールフィシャー水分計を使用して水の回収量を求めるとともに、ガスクロマトグラフィーを使用して1233yd(Z)および1233yd(E)の回収量を求めた。また、供給量と回収量から回収率(回収量/供給量)を求めた。
表1に、蒸留用組成物の供給量を示すとともに、留出物および缶出物の回収量と回収率をそれぞれ示す。また、表2に、蒸留用組成物、留出物および缶出物の組成と、1233yd(E)と水とにおける水の割合を示す。
なお、蒸留用組成物の組成は、各成分の供給量から求められる。留出物および缶出物の組成は、各成分の回収量から求められる。1233yd(E)と水とにおける水の割合は、1233yd(E)と水との供給量または回収量から求められる。
Figure 0007115611000001
Figure 0007115611000002
表1、2から明らかなように、1233yd(Z)、1233yd(E)、および水を含有する蒸留用組成物を使用することにより、缶出物の回収率を83質量%以上にすることができるとともに、缶出物における1233yd(Z)の含有量の割合を85質量%以上にすることができる。
(実施例2)
表3に示すように、蒸留用組成物における各成分の供給量を変更するとともに、塔頂温度を47.5℃としたことを除いて、実施例1と同様にして蒸留および測定を行った。表3に、留出物および缶出物の回収量と回収率をそれぞれ示す。また、表4に、蒸留用組成物、留出物および缶出物の組成と、1233yd(E)と水とにおける水の割合をそれぞれ示す。
Figure 0007115611000003
Figure 0007115611000004
表3、4から明らかなように、1233yd(Z)、1233yd(E)、および水を含有する蒸留用組成物を使用することにより、缶出物の回収率を83質量%以上にすることができるとともに、缶出物における1233yd(Z)の含有量の割合を85質量%以上にすることができる。
(実施例3)
表5に示すように、蒸留用組成物における各成分の供給量を変更するとともに、塔頂温度を51.5℃としたことを除いて、実施例1と同様にして蒸留および測定を行った。表5に、留出物および缶出物の回収量と回収率をそれぞれ示す。また、表6に、蒸留用組成物、留出物および缶出物の組成と、1233yd(E)と水とにおける水の割合をそれぞれ示す。
Figure 0007115611000005
Figure 0007115611000006
表5、6から明らかなように、1233yd(Z)、1233yd(E)、および水を含有する蒸留用組成物を使用することにより、缶出物の回収率を83質量%以上にすることができるとともに、缶出物における1233yd(Z)の含有量の割合を85質量%以上にすることができる。
(実施例4)
表7に示すように、蒸留用組成物における各成分の供給量を変更したことを除いて、実施例1と同様にして蒸留および測定を行った。なお、実施例4で用いた蒸留用組成物は、1-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロパンを50℃で水酸化カリウム水溶液と接触させて脱フッ化水素反応させることによって得た。脱フッ化水素反応後の粗液を分析したところ、1233yd(Z)、1233yd(E)の他に、未反応のHCFC-244ca、副生成物として1233ydがさらに脱フッ化水素反応した1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン、1233ydにテトラフルオロプロパノール(TFPO)が付加し、さらに脱フッ化水素反応した、または1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピンにTFPOが付加した分子式CHCl=C(CHF)OCHCFCHFで表される化合物(以下、1233yd-TFPO付加体と表す)が含まれていた。
表7に、留出物および缶出物の回収量と回収率をそれぞれ示す。また、表8に、蒸留用組成物、留出物および缶出物の組成と、1233yd(E)と水とにおける水の割合をそれぞれ示す。
Figure 0007115611000007
Figure 0007115611000008
表7、8から明らかなように、1-クロロ-2,2,3,3-テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素させて得られる反応組成物を蒸留用組成物として使用しても、缶出物の回収率を83質量%以上にすることができるとともに、缶出物における1233yd(Z)の含有量の割合を85質量%以上にすることができることがわかった。
(比較例1)
表9に示すように、蒸留用組成物における各成分の供給量を変更するとともに、塔頂温度を53.0℃としたことを除いて、実施例1と同様にして蒸留および測定を行った。表9に、留出物、缶出物の回収量、回収率を示す。また、表10に、蒸留用組成物、留出物、缶出物の組成、1233yd(E)と水とにおける水の割合を示す。
Figure 0007115611000009
Figure 0007115611000010
表9,10から明らかなように、比較例1の蒸留用組成物は、1233yd(Z)と水とを含有し、1233yd(E)を含有しない。このように1233yd(E)を含有しない場合、1233yd(E)を含有する場合に比べて、缶出物の回収率が低下する。また、1233yd(Z)と水を充分に分離できていないことが分かる。
本発明によれば、1233yd(E)および水を効率よく取り除くことができ、1233yd(Z)の回収率を高くでき、かつ1233yd(Z)の純度を高めることができる。このため、1233yd(Z)を使用する洗浄剤、溶剤、冷媒等の広範囲の分野で有効に利用することができる。
10…蒸留装置、11…蒸留塔、12、13、14…配管。

Claims (5)

  1. (Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと水とを含む組成物であり、
    前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの含有量が、前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと前記(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと前記水との合計の含有量に対して、90質量%以上であることを特徴とする組成物。
  2. 前記水の含有量が、前記組成物全量に対して、0.01質量%以下である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの含有量が、前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと前記(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと水との合計の含有量に対して、93質量%以上である、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの含有量が、前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと前記(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと水との合計の含有量に対して、95質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンの含有量が、前記(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと前記(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペンと水との合計の含有量に対して、98質量%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
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