JP7115008B2 - スタッドレスタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤ - Google Patents
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Description
しかし、スタッドレスタイヤ用コンパウンドは氷表面との密着力を高めて氷上摩擦力を向上させるため、夏用タイヤよりもオイル等の可塑剤を多量に配合してゴムを柔らかくすることが一般的に行われており、そのオイルが走行によって外部に流出してしまうことや、オイル量の少ないアンダートレッドにマイグレーションしてしまうことによって、トレッドゴム硬度が経時変化により上昇してしまう傾向がある。
また下記特許文献2には、ジエン系ゴムに特定の分子量を有するリシノール酸共重合体を配合するゴム組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示されたゴム組成物では、スタッドレスタイヤの氷上性能を高めることと、経時による物性変化を抑制することを同時に達成することができない。
すなわち本発明は以下のとおりである。
重量平均分子量が10000~30000の液状ポリエステル(A)を1~40質量部および可塑剤成分(B)を1~40質量部含み、
前記液状ポリエステル(A)および前記可塑剤成分(B)の総量に対し、前記液状ポリエステル(A)が20質量%以上を占めることを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
2.前記液状ポリエステル(A)のガラス転移温度が-60℃以下であることを特徴とする前記1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
3.前記液状ポリエステル(A)の構成成分中に、分子内に水酸基を持つ脂肪酸が含まれることを特徴とする前記1または2に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
4.前記分子内に水酸基を持つ脂肪酸がリシノール酸であることを特徴とする前記3に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
5.前記液状ポリエステル(A)が、リシノール酸に由来する構成単位(a)と、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)と、炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)とを含むことを特徴とする前記1~4のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
6.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに熱膨張性マイクロカプセルを0.5~20質量部含むことを特徴とする前記1~5のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
7.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに無機充填剤を20質量部以上含むことを特徴とする前記1~6のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
8.前記1~7のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用したスタッドレスタイヤ。
また、本発明のゴム組成物をトレッドに用いたスタッドレスタイヤは、高い氷上性能を有し、またオイルが走行によって外部に流出してしまったり、アンダートレッドにマイグレーションしてしまうこと等による、トレッドゴムの経時による物性の変化も抑制できる。
なお、合成イソプレンゴム(IR)は、本発明でいうNRに含まれるものとする。
本発明で使用される液状ポリエステル(A)は、常温(23℃)で液体のものであり、重量平均分子量が10000~30000のものであればとくに制限されないが、氷上性能をさらに高め、かつ、経時による物性変化もさらに抑制できるという観点から、その構成成分中に、分子内に水酸基を持つ脂肪酸が含まれるものが好ましく、前記分子内に水酸基を持つ脂肪酸がリシノール酸であることがさらに好ましい。具体的には、液状ポリエステル(A)は、リシノール酸エステル共重合体(A1)であることがとくに好ましい。
本発明で使用されるリシノール酸エステル共重合体(A1)は、リシノール酸に由来する構成単位と、これと共重合可能なモノマーとから構成され得る。
本発明では、リシノール酸エステル共重合体(A1)は、リシノール酸に由来する構成単位(a)と、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)と、炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)とを含むことが好ましい。
また、その他の構成単位を含む場合、上記構成単位(a)~(c)とその他の構成単位との合計を100モル%として、その他の構成単位は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
また、リシノール酸エステル共重合体(A1)の製造方法は公知であり、例えば国際公開WO2017/038734号パンフレットに開示されている。
なお、本発明で用いられるリシノール酸エステル共重合体(A1)の重量平均分子量は、氷上性能をさらに高め、経時による物性変化もさらに抑制できるという観点から、12000~19500が好ましい。
本発明で使用されるリシノール酸エステル共重合体(A1)は、前記のような特定の重量平均分子量範囲を有しているため、ジエン系ゴム中で安定に分散することができ、ゴムの硬度を低下させ、氷上性能を高めるとともに、走行によって外部に流出してしまうことや、オイル量の少ないアンダートレッドにマイグレーションしてしまうことを防止できる。
本発明に用いられる可塑剤成分(B)としては、例えばオイル、可塑剤、軟化剤、加工助剤、石油系樹脂、芳香族系樹脂を例示することができる。これら可塑剤成分は、1つであっても複数を組合わせて含有してもよい。またオイルとしてはジエン系ゴムを製造するとき添加された油展成分でも、ゴム組成物の調製時に添加するオイルでもよい。
本発明において、熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなる。熱膨張性マイクロカプセルの殻材はニトリル系重合体により形成することができる。
またマイクロカプセルの殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化または膨張する特性をもち、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n-ブタン、n-プロパン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。熱膨張性物質の好ましい形態としては、常温で液体の炭化水素に、常温で気体の炭化水素を溶解させたものがよい。このような炭化水素の混合物を使用することにより、未加硫タイヤの加硫成形温度域(150℃~190℃)において、低温領域から高温領域にかけて十分な膨張力を得ることができる。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU-80」または「EXPANCEL 092DU-120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー F-85D」または「マツモトマイクロスフェアー F-100D」等を使用することができる。
熱膨張性マイクロカプセルの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、例えば0.5~20質量部であり、好ましくは1~18質量部である。
本発明で使用される無機充填剤としては、例えばシリカ、クレー、マイカ、タルク、シラス、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。
無機充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、例えば20質量部以上であり、好ましくは30~120質量部である。
本発明では、カーボンブラックを使用することもできる。本発明の効果が向上するという観点から、窒素吸着比表面積(N2SA)が50~250m2/gであるのが好ましい。なお、窒素吸着比表面積(N2SA)はJIS K6217-2に準拠して求めた値である。
カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、例えば3~70質量部であり、好ましくは5~60質量部である。
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却させた。ついで、同バンバリーミキサーに該ゴム、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で170℃、10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
氷上性能:各種加硫ゴム試験片をトレッドに組み込んだタイヤサイズ215/60R16の空気入りタイヤを、16×7Jのリムに組み付け、空気圧(220[kPa])を充填し、試験車両(国産2リットルセダンFF車)に装着した。続いて、氷盤路であるテストコースにて上記試験車両により初速40[km/h]から急制動して、完全停止するまでの制動距離を測定した。結果は、標準例を100として指数で示した。指数が大きいほど、氷上性能に優れることを意味する。
結果を表1に示す。
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220。Tg=-105℃)
*3:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製N339)
*4:シリカ(ローディア社製ZEOSIL 1165MP)
*5:シランカップリング剤(エボニックジャパン(株)製Si69)
*6:オイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*7:リシノール酸エステル共重合体1(国際公開WO2017/038734号パンフレットに開示された方法により合成された、リシノール酸、セバシン酸および1,4-ブタンジオールからなる共重合体。Tg=-74℃、重量平均分子量=20000)
*8:リシノール酸エステル共重合体2(国際公開WO2017/038734号パンフレットに開示された方法により合成された、リシノール酸、セバシン酸および1,4-ブタンジオールからなる共重合体。Tg=-73℃、重量平均分子量=6000)
*9:リシノール酸エステル共重合体3(国際公開WO2017/038734号パンフレットに開示された方法により合成された、リシノール酸、セバシン酸および1,4-ブタンジオールからなる共重合体。Tg=-70℃、重量平均分子量=50000)
*10:熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製マツモトマイクロスフェアー F-100D)
*11:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄、硫黄含有量=95.24質量%)
*12:加硫促進剤(CBS)(Flexsys社製SANTOCURE CBS)
*13:加硫促進剤(DPG)(住友化学(株)製ソクシノールDG)
これに対し、比較例1は、リシノール酸エステル共重合体(A1)および可塑剤成分(B)の総量に対し、前記(A)成分の割合が本発明で規定する下限未満であるので、マイグレーション評価および氷上性能が共に向上していない。
比較例2は、可塑剤成分(B)を配合していないので、氷上性能が悪化した。
比較例3は、リシノール酸エステル共重合体(A1)を配合していないので、氷上性能が悪化した。
比較例4は、リシノール酸エステル共重合体(A1)の重量平均分子量が本発明で規定する下限未満であり、可塑剤成分(B)を配合していないので、マイグレーション評価が悪化した。
比較例5は、リシノール酸エステル共重合体(A1)の重量平均分子量が本発明で規定する上限を超え、可塑剤成分(B)を配合していないので、氷上性能が悪化した。
比較例6は、リシノール酸エステル共重合体(A1)の重量平均分子量が本発明で規定する下限未満であるので、マイグレーション評価が悪化した。
比較例7は、リシノール酸エステル共重合体(A1)の重量平均分子量が本発明で規定する上限を超えているので、氷上性能が悪化した。
Claims (6)
- 天然ゴムおよびポリブタジエンゴムを含み、前記ポリブタジエンゴムが30質量部以上を占めるジエン系ゴム100質量部に対し、
重量平均分子量が10000~30000の液状ポリエステル(A)を1~40質量部および可塑剤成分(B)を1~40質量部含み(ただし、前記可塑剤成分(B)は前記液状ポリエステル(A)を含まない)、
前記液状ポリエステル(A)および前記可塑剤成分(B)の総量に対し、前記液状ポリエステル(A)が20質量%以上を占め、
前記液状ポリエステル(A)の構成成分中に、分子内に水酸基を持つ脂肪酸が含まれ、かつ前記分子内に水酸基を持つ脂肪酸がリシノール酸である
ことを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。 - 前記液状ポリエステル(A)のガラス転移温度が-60℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
- 前記液状ポリエステル(A)が、リシノール酸に由来する構成単位(a)と、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位(b)と、炭素原子数2~10のジオールに由来する構成単位(c)とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
- 前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに熱膨張性マイクロカプセルを0.5~20質量部含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
- 前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに無機充填剤を20質量部以上含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
- 請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用したスタッドレスタイヤ。
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