JP2018172561A - リシノール酸共重合体組成物およびその架橋体 - Google Patents

リシノール酸共重合体組成物およびその架橋体 Download PDF

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真理子 木田
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明宣 竹原
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Wataru Makiguchi
航 牧口
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Takamasa Arino
恭巨 有野
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Kotaro Ichino
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新太郎 光永
Shintaro Mitsunaga
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Abstract

【課題】本発明は、混練性に優れるリシノール酸重合体組成物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のリシノール酸共重合体組成物は、リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、ジカルボン酸[β]と、ジオール[γ]との共重合体(A)100質量部と、補強材(B)10〜300質量部と、架橋剤(C)0.01〜10質量部とを含み、且つ、当該共重合体(A)が、少なくとも、リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位の含有量が、前記のリシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位と、ジカルボン酸[β]由来の構造単位と、ジオール[γ]由来の構造単位との合計に対し、10モル%以上100モル%未満の要件と、重量平均分子量が10,000以上500,000以下の要件を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、リシノール酸共重合体を含む組成物およびその架橋体に関する。
近年、地球温暖化問題、再生可能エネルギー、資源リサイクル、資源循環などの観点から、石油原料に替わる天然物由来原料をベースとした素材開発が活発化している。その中でも、ポリ乳酸をはじめとする種々のバイオベースポリマーの開発が行われている。
これらのバイオベースポリマーの中で、汎用ゴム様の物性を示すバイオベースポリマーとして、近年、リシノール酸(12−ヒドロキシ−cis−9−オクタデセン酸)系重合体が注目されている。リシノール酸は、ひまし油の加水分解などの方法で得られる物質である。リシノール酸系重合体は、架橋により、ゴム様の物性を示すことが知られている。
リシノール酸系重合体についての試みは、種々なされている。例えば、特許文献1には、合成ゼオライトなどの担体にリバーゼなどを担持した担持型酵素を触媒として、リシノール酸の重縮合を行う方法が開示されている。また、特許文献2には、リシノール酸の単独重合体、および、リシノール酸と12−ヒドロキシステアリン酸との共重合体、並びに、これらを含むゴム組成物が開示されている。
国際公開2008/029805号パンフレット 特開2009−235397号公報
特許文献2などに開示されているように、リシノール酸の単独重合体は知られているが、高分子量化が困難でなかなか検討が進んでいなかった。特許文献2では重量平均分子量が10万以上の重合体も得られたが、これらは粘度が低く、室温は液状であった。
このような液状の重合体は粘度が低いため混練時の剪断が掛かり難く、カーボンブラックなどを混合する際には、3本ロールで長時間混練処理を行う必要があるなど、加工上の改善の余地があることが判明した。
そのため、リシノール酸重合体として、混練時に剪断力のかかりやすく、ニーダー等で容易に混練が可能となる、溶融粘度が高い重合体が求められていた。
そこで、本発明は、かかる問題点を解決できる混練性に優れるリシノール酸重合体組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような状況において鋭意検討した結果、特定のリシノール酸共重合体が室温で半固体状を呈し、そのようなリシノール酸共重合体をリシノール酸重合体として用いることにより、上記の問題を改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]に関する。
[1]
リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、ジカルボン酸[β]と、ジオール[γ]との共重合体(A)100質量部と、
補強材(B)10〜300質量部と、
架橋剤(C)0.01〜10質量部と
を含み、且つ、前記共重合体(A)は、少なくとも下記要件(1)〜(2)を満たすリシノール酸共重合体組成物:
(1) リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位の含有量が、前記のリシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位と、ジカルボン酸[β]由来の構造単位と、ジオール[γ]由来の構造単位との合計に対し、10モル%以上100モル%未満 である;
(2) 上記共重合体(A)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量が10,000以上500,000以下である。
[2]
前記共重合体(A)が、炭素数2〜12のジカルボン酸[β1]および炭素数が2〜12のジオール[γ1]成分からなる群からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、前記[1]に記載のリシノール酸共重合体組成物。
[3]
上記共重合体(A)が、
(I)リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位10〜80モル%、
(II)炭素数2〜12のジカルボン酸[β1]由来の構造単位10〜45モル%および
(III)炭素数2〜12のジオール[γ1]由来の構造単位10〜45モル%
(但し、(I)、(II)、(III)の構造単位の合計を100モル%とする)
を含む、前記[1]または[2]に記載のリシノール酸共重合体組成物。
[4]
前記補強材(B)が、カーボンブラックおよびシリカからなる群から選ばれる1種類以上であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のリシノール酸共重合体組成物。
[5]
前記架橋剤(C)がイオウ系化合物(C1)である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のリシノール酸共重合体組成物。
[6]
前記[1]〜[5]のいずれかに記載のリシノール酸共重合体組成物を架橋してなるリシノール酸共重合体架橋体。
本発明によれば、リシノール酸重合体として、特定のリシノール酸共重合体を用いることにより、混練性に優れ、且つ、良好な機械物性を示す架橋体を与えうるリシノール酸重合体組成物を提供することができる。
〔リシノール酸共重合体組成物〕
本発明に係るリシノール酸共重合体組成物は、
リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、ジカルボン酸[β]と、ジオール[γ]との共重合体(A)100質量部と、
補強材(B)10〜300質量部と、
架橋剤(C)0.01〜10質量部と
を含む。
ここで、前記共重合体(A)は、少なくとも下記要件(1)〜(2)を満たす:
(1) リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位の含有量が、前記のリシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位と、ジカルボン酸[β]由来の構造単位と、ジオール[γ]由来の構造単位との合計に対し、10モル%以上100モル%未満 である;
(2) 上記共重合体(A)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量が10,000以上500,000以下である。
なお、本明細書において、共重合体(A)100質量部に対する各成分の質量部は、phrと呼ばれることがある。
以下、本発明の組成物、および、本発明の組成物を構成する各構成成分について詳細に説明する。
<共重合体(A)>
本発明のリシノール酸共重合体組成物を構成する共重合体(A)は、リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、ジカルボン酸[β]と、ジオール[γ]との共重合体である。すなわち、共重合体(A)は、リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位と、ジカルボン酸[β]由来の構造単位と、ジオール[γ]由来の構造単位とを含む。
以下、共重合体(A)について説明する。
(リシノール酸および/またはその誘導体[α])
本発明では、共重合体(A)を構成する成分の1つとして、リシノール酸および/またはその誘導体[α]が用いられる。すなわち、本発明で用いられる共重合体(A)は、リシノール酸およびその誘導体[α]由来の構造単位(以下、「構造単位[α']」と呼ぶことがある。)を含有することになる。ここで、本発明でいう構造単位[α']は、具体的には、下記式(1)または下記式(2)で表される構造単位である。
Figure 2018172561
リシノール酸の誘導体として、エステル化、またはエステル交換反応の条件下で、上記式(1)で表される構造単位または上記式(2)で表される構造単位を与える化合物が挙げられ、その例として、リシノール酸のエステル体、並びに、リシノール酸を水添して得られる12−ヒドロキシステアリン酸または12−ヒドロキシステアリン酸のエステル体等を挙げることができる。リシノール酸および/またはその誘導体[α]の中では、イオウ系化合物による架橋が可能という観点からリシノール酸またはリシノール酸のエステル体が好ましい。
リシノール酸および/またはその誘導体[α]として上述したこれらの化合物は、後述する触媒の存在下でエステル化、またはエステル交換反応で比較的容易に重合することができる。
リシノール酸またはその誘導体[α]は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、本発明では、共重合体(A)を得るにあたり、リシノール酸またはその誘導体[α]は後述するジカルボン酸[β]およびジオール[γ]などと組み合わせて用いられる。このとき、ジカルボン酸[β]およびジオール[γ]を使用する割合によって、得られる共重合体(A)の末端構造や分子量の調節を行うことも可能である。
本発明において、用いる各原料中に含まれる末端ヒドロキシル基の総モル量を(OH)、末端カルボキシル基の総モル量を(COOH)とした場合、それらのモル比(以後、OH/COOH比と称することがある。)の好ましい範囲は1.0〜5.0であり、より好ましくは1.0〜3.0である。OH/COOH比が1.0以上5.0以下である場合、後述するエステル化またはエステル交換反応において調製される低分子のオリゴマーに十分なヒドロキシル基末端が形成され、後述する重縮合時の反応性が向上する傾向がある。一方、OH/COOH比が5.0を超えると、過剰な原料ジオール[γ]の一部が樹脂の分解に寄与するため、重縮合時の反応性が低下することがある。
(ジカルボン酸[β])
本発明では、共重合体(A)を構成するもう1つの成分として、ジカルボン酸[β]が用いられる。すなわち、本発明で用いられる共重合体(A)は、ジカルボン酸[β]由来の構造単位(以下、「構造単位[β']」と呼ぶことがある。)を含有することになる。ここで、本発明でいう構造単位[β']は、具体的には、形式上、ジカルボン酸[β]に含まれる2つのカルボキシル基から−OHを除いてなる構造を有する構造単位である。
ジカルボン酸[β]としては、公知のジカルボン酸化合物を制限なく用いることができ、好ましくは脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族ジカルボン酸;及びこれら脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。
これらの中でも炭素数2〜12のジカルボン酸が好ましい。すなわち、本発明の好適な態様の1つにおいて、ジカルボン酸[β]は、炭素数2〜12のジカルボン酸[β1]である。その中でも、より好ましくは炭素数6〜10、特に好ましくは炭素数9〜10のジカルボン酸である。ジカルボン酸の炭素数が大きくなりすぎると、重縮合の反応性が低下する場合がある。炭素数9〜10のジカルボン酸としては、リシノール酸に比較的構造の近いセバシン酸、アゼライン酸を例示することができ、その中でも特に好ましくはセバシン酸である。
これらのジカルボン酸[β]は、1種単独で用いることができるし、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、前述のリシノール酸とのエステル体や低縮合化合物として用いることも可能である。
(ジオール[γ])
本発明では、共重合体(A)を構成するもう1つの成分として、ジオール[γ]が用いられる。すなわち、本発明で用いられる共重合体(A)は、ジオール[γ]由来の構造単位(以下、「構造単位[γ']」と呼ぶことがある。)を含有することになる。ここで、本発明でいう構造単位[γ']は、具体的には、形式上、ジオール[γ]に含まれる2つの水酸基から−Hを除いてなる構造を有する構造単位である。
ジオール[γ]としては、公知のジオールを制限なく用いることができ、好ましくはアルキレンジオールを挙げることができる。
アルキレンジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール、2,2−ビス〔4'−(2"−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、4,4'−ビス(2"−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィド、4,4'−ビス(2"−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホン、9,9−ビス〔4'−(2"−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕フルオレン、1,4−ビス(2'−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族ジヒドロキシ化合物のエチレンオキサイド付加物、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4'―ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水添ビスフェノールA)等の脂環式ジオールを挙げることができる。
これらのジオール[γ]としては一級アルコールが好ましい。ジオール[γ]が二級以上のアルコールであると重縮合の反応性が低下する場合がある。
これらの中でも炭素数2〜12のジオールが好ましい。すなわち、本発明の好適な態様の1つにおいて、ジオール[γ]は、炭素数2〜12のジオール[γ1]である。その中でも、より好ましくは炭素数2〜6、特に好ましくは炭素数2〜4のジオールである。ジオールの炭素数が大きくなりすぎると、重縮合の反応性が低下する場合がある。具体的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオールが好ましい。より好ましくは炭素数が比較的少ないエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールである。重縮合体の生分解性を期待する場合、好ましいジオール[γ]は天然のエステルから入手可能な1,4−ブタンジオールである。
これらのジオール[γ]は、1種単独で用いることができるし、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、前述のリシノール酸とのエステル体や低縮合化合物として用いることも可能である。
(その他の共重合成分)
本発明で用いられる共重合体(A)は、上述したリシノール酸および/またはその誘導体[α]と、ジカルボン酸[β]と、ジオール[γ]との共重合体である。言い換えると、本発明で用いられる共重合体(A)は、上述した構造単位[α']と、構造単位[β']と、構造単位[γ']とを含有している。例えば、本発明の好適な態様の1つにおいて、共重合体(A)は、上述した構造単位[α']と、構造単位[β']と、構造単位[γ']とのみからなる。
ただ、本発明で用いられる共重合体(A)は、これらのような態様のものに限定されず、上述したリシノール酸および/またはその誘導体[α]、ジカルボン酸[β]、並びに、ジオール[γ]以外の共重合成分(以下、「その他の共重合成分」)を、本発明の目的を損なわない範囲内で含んでいても良い。言い換えると、本発明で用いられる共重合体(A)は、上述した構造単位[α']、構造単位[β']、および構造単位[γ']のいずれにも該当しない構造単位(以下、「その他の構造単位」)を有していてもよいことになる。
ここで、「その他の共重合成分」の具体例として、
グリコール酸、4−ヒドロキシ安息香酸、4−(2'−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;並びに、
3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、および、3以上の水酸基を有するポリオール等の三官能以上の多官能成分
が挙げられる。
ここで、3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の具体例として、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、およびナフタレンテトラカルボン酸などが挙げられる、また、3以上の水酸基を有するポリオールの具体例として、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
(共重合体(A)の構成)
本発明のリシノール酸共重合体組成物において、共重合体(A)は、少なくとも下記要件(1)〜(2)を満たす。
要件(1):リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位の含有量が、前記のリシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位と、ジカルボン酸[β]由来の構造単位と、ジオール[γ]由来の構造単位との合計に対し、10モル%以上100モル%未満である。
すなわち、本発明で用いられる共重合体(A)は、上述した構造単位[α']、構造単位[β']、および構造単位[γ']の合計を100モル%としたときに、構造単位[α']を10モル%以上100モル%未満含む。
ここで、前記含有量の下限について見ると、加硫ゴムの低温物性を確保する観点から、構造単位[α']が10モル%以上、好ましくは30モル%以上である。一方、上限について見ると、室温で半固体状の共重合体が得られやすく、且つ、十分なロール加工性を確保する観点から、本発明では構造単位[α']が100モル%未満、好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
一方、ジカルボン酸[β]由来の構造単位(すなわち、上述した構造単位[β'])の含有割合は、0モル%を越え45モル%以下であることが好ましい。前記含有割合の下限側の範囲は、10モル%以上が好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、その上限側の範囲は、35モル%以下が好ましい。
また、ジオール[γ]由来の構造単位(すなわち、上述した構造単位[γ'])の含有割合は、0モル%を越え5モル%以下であることが好ましい。前記含有割合の下限側の範囲は、10モル%以上が好ましく、15モル%以上が更に好ましい。また、その上限側の範囲は、35モル%以下が好ましい。
ここで、本発明の好適な態様において、共重合体(A)は、
(I)リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位10〜80モル%、
(II)炭素数2〜12のジカルボン酸[β1]由来の構造単位10〜45モル%および
(III)炭素数2〜12のジオール[γ1]由来の構造単位10〜45モル%
(但し、(I)、(II)、(III)の構造単位の合計を100モル%とする)
を含む。
要件(2):上記共重合体(A)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量が10,000以上500,000以下である。
本発明で用いられる共重合体(A)がこのような範囲の重量平均分子量を有すると、加工時の取り扱いと加硫後の強度バランスの点で好ましい。
本発明で用いられる共重合体(A)は、1種単独の共重合体であってもよく、あるいは、2種以上の共重合体からなる混合物であってもよい。
ここで、本発明で用いられる共重合体(A)が2種以上の共重合体からなる混合物である場合、このような共重合体(A)を構成する各共重合体は、いずれも、上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、上記ジカルボン酸[β]と、上記ジオール[γ]との共重合体である。この場合、共重合体(A)全体として、上記要件(1)〜(2)を満たしていればよく、必ずしも、共重合体(A)を構成する各共重合体自体が個別に上記要件(1)〜(2)を満たすことまでは要さない。また、共重合体(A)を構成する各共重合体は、同じでも互いに異なっていても良い。例えば、共重合体(A)を構成する各共重合体は、構造単位[α']、構造単位[β']、および構造単位[γ']のうちの1以上が互いに異なっていてもよい。また、共重合体(A)を構成する各共重合体は、構造単位[α']と構造単位[β']と構造単位[γ']とオプションの「その他の構造単位」との比率が互いに異なっていてもよい。
(共重合体(A)の製造方法)
本発明で用いられる共重合体(A)は、上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、上記ジカルボン酸[β]と、上記ジオール[γ]とを互いにエステル重合反応させることにより得られる。このエステル重合反応を、上記「その他の共重合成分」で上述したヒドロキシカルボン酸、および、三官能以上の多官能成分などの共存下で行うと、「その他の構造単位」をも含む共重合体(A)を得ることができる。
製造方法として、従来公知の方法である直接エステル化法、エステル交換法などを適用することができる。
直接エステル化法では、上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]、上記ジカルボン酸[β]、上記ジオール[γ]、並びに、オプションの上記「その他の共重合成分」を常法により直接縮重合させることにより、共重合体を得ることができる。例えば、
上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、
上記ジカルボン酸[β]と、
上記ジオール[γ]と
を加圧下で昇温し、生成する縮合水を反応系外に除きながら低分子量の縮合物とした後、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物などの重縮合触媒の存在下に反応系内を減圧してジオールを系外に留去する。これにより、共重合体(A)として高分子量のポリエステル樹脂を製造することができる。なお、この例では、上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]とジカルボン酸[β]とジオール[γ]とを反応させる場合について触れたが、上記「その他の共重合成分」が共存する場合にも同様に行うことができる。
また、エステル交換法では、出発原料として、上記ジカルボン酸[β]に代えて上記ジカルボン酸[β]の対応するジアルキルエステルを用いてもよい。この場合には、上記ジカルボン酸[β]として、対応するジアルキルエステルを採用し、上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]、上記ジオール[γ]、並びに、オプションの上記「その他の共重合成分」とともに、常法により直接縮重合させることにより、共重合体を得ることができる。このとき、上記リシノール酸および/もしくはその誘導体[α]、並びに/または、上記「その他の共重合成分」で上述した各種化合物のうちカルボキシル基を有する化合物についても、対応するアルキルエステルの形で用いてもよい。例えば、
上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、
上記ジカルボン酸[β]のジアルキルエステルと、
上記ジオール[γ]と
を常圧で昇温し、生成するアルキルアルコールを反応系外に除きながら低分子量の縮合物とした後、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物などの重縮合触媒の存在下に反応系内を減圧にしてジオールを系外に留去する。これにより、高分子量のポリエステル樹脂を製造することができる。
ここで、本発明の1つの好適な態様においては、この重縮合触媒には、第1の金属化合物として、チタン化合物、アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとの1つの化合物、より好ましくは、チタン化合物が含まれている。
チタン化合物の具体的な例としては、テトラブチルチタネート、テトラ−iso−プロピルチタネート、アセチルトリ-iso-プロピルチタネート等が挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば酢酸アンチモン、ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウムを挙げることができる。チタン化合物、アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物は、それぞれ2種類以上のチタン化合物、2種類以上のアンチモン化合物および2種類以上のゲルマニウム化合物であってもよい。
チタン化合物の使用量は、製造される共重合体(A)に対して、金属換算(チタン換算)で1,000〜5,000質量ppmである。アンチモン化合物の使用量は、製造される共重合体(A)に対して、金属換算(アンチモン換算)で100〜30,000質量ppmである。ゲルマニウム化合物の使用量は、製造される共重合体(A)に対して、金属換算(ゲルマニウム換算)で100〜30,000質量ppmである。また、チタン化合物、アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物のうちの2種類以上を組みわせて使用してもよい。この場合のチタン化合物、アンチモン化合物およびゲルマニウム化合物の総量は、製造されるポリエステルに対してそれぞれの金属換算の合計として1,500〜60,000wtppmであることが好ましい。
また、この重縮合触媒は、第1の金属化合物に加えて、第2の金属化合物として、周期表の第2族および第8族〜第12族元素からなる群から選ばれる金属の化合物をさらに含んでいても良い。このような第2の金属化合物として、具体的にはカルシウム、マグネシウム、コバルト、亜鉛等の化合物を挙げることができ、好ましくはアルカリ土類金属と呼ばれている周期表の第2族元素の化合物であり、更に好ましくはカルシウムの化合物、マグネシウムの化合物である。カルシウムの化合物としては、例えば酢酸カルシウム、マグネシウムの化合物としては、例えば酢酸マグネシウム、コバルトの化合物としては、例えば酢酸コバルト、亜鉛の化合物としては、例えば酢酸亜鉛を挙げることができる。第1の金属化合物と第2の金属化合物とが組みわせて用いられる場合、第2の金属化合物に由来する金属原子の総モル数(X)と第1の金属化合物に由来するチタン原子、ゲルマニウム原子およびアンチモン原子の総モル数(Y)との比(以後、X/Y比と称することがある)は、通常0.05〜0.5である。
上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]等を含む原料の重合は、公知の条件で行うことが出来る。具体的には、前段の重合として、リシノール酸および/またはその誘導体[α]とジカルボン酸[β]とジオール[γ]等と、触媒である前記複数種の金属化合物とを反応装置に仕込み、加熱しつつ生成する水やアルコールを除去してエステル化反応またはエステル交換反応を進行させ、低分子量のオリゴマーを合成する。その後、後段の重合として、減圧状態にて重縮合反応を進行させ、発生するアルコール化合物を除去することで高分子量化を進行させる。前段の重合であるエステル化反応またはエステル交換反応により低分子量のオリゴマーを合成する際の具体的な好ましい温度範囲は200〜250℃、より好ましくは210〜230℃である。また、後段の重合である重縮合反応の具体的な好ましい温度範囲は220〜250℃、より好ましくは220〜230℃であり、反応装置内の圧力は好ましくは400Pa(3Torr)以下、より好ましくは133Pa(1Torr)以下である。反応装置内の圧力は低い方が好ましいのは自明であるが、生産コストなども考慮すると、前記圧力の下限は好ましくは0.05Torr、より好ましくは0.1Torrである。
なお、以上の例では、上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、ジカルボン酸[β]のジアルキルエステルとジオール[γ]とを反応させる場合について触れたが、上記「その他の共重合成分」が共存する場合にも同様に行うことができる。
なお、直接エステル化法およびエステル交換法におけるエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、上記に例示したような重縮合触媒を用いることが好ましい。
直接エステル化法、エステル交換法によるいずれの製造方法においても、反応系を均一な液状状態で保つために、反応温度が生成するオリゴマーおよびポリエステルの融点を下回らないように反応系を昇温しつつ反応を進めることが好ましい。さらに分子量(重量平均分子量)を上げる必要があれば、溶融重合で得られた共重合ポリエステル樹脂に固相重合を施し分子量を大きくすることもできる。
本発明で用いられる共重合体(A)は、リパーゼによるエステル重合反応によっても製造することができる。この方法では、上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]、ジカルボン酸[β]、ジオール[γ]、並びに、オプションの上記「その他の共重合成分」を、リパーゼ存在下で縮重合させることにより、共重合体を得ることができる。リパーゼとしては、Burkholderia cepacia由来の固定化リパーゼ(例えば、ワコーケミカル株式会社製の、リパーゼPS−CアマノII(商品名)、PS−DアマノI(商品名)等)が好ましく、この場合、高温でもリパーゼが失活しにくいために、反応温度を90℃まで上げることができる。また、反応条件としては、バルク条件下において、攪拌機付き反応器によるバッチ法とすることが好ましい。また、反応時間としては、触媒濃度、重合温度などの条件によって異なるが、通常4〜7日間である。
また、エステル重合反応は可逆反応であり、効率的な重合反応を進行させるためには、生成したアルコールや水を逐次除去することが好ましい。具体的には、反応系における圧力状態を減圧状態に維持したり、合成ゼオライト(例えば、モレキュラーシーブ4A)等の吸湿剤を反応系に非接触で設置した上で合成反応を実施したりすることが挙げられる。このような条件下において重合反応を実施することにより、単純かつ容易に重合反応を進行させることができ、共重合体(A)を効率よく合成することができる。
本発明においては、上記各エステル重合反応における上記リシノール酸および/またはその誘導体[α]、ジカルボン酸[β]、ジオール[γ]、並びに、オプションの上記「その他の共重合成分」の仕込み量の割合は、共重合体(A)において達成すべき上記構造単位[α']、[β']、[γ']および「その他の構造単位」の含量に応じて適宜調整することができる。
これらのようなエステル重合反応によって得られる共重合体は、そのままの形で共重合体(A)として採用してもよいが、さらに、従来公知の適当な方法を用いて水添反応を行うことにより、上記の構造単位[α']に含まれる二重結合の一部または全部につき水素付加を行ってもよい。例えば、まず、エステル重合反応によって、共重合体(A)のうち上記構造単位[α']として上記式(1)で表される構造単位を含む共重合体(A0)を調製し、その後、当該共重合体(A0)を部分的にあるいは完全に水添する等の処理を行ってもよく、そのような水添により得られた生成物を共重合体(A)として採用しても良い。
(本発明のリシノール酸共重合体組成物における共重合体(A)の役割)
本発明において、共重合体(A)は、リシノール酸共重合体組成物の主成分となる。ここで、共重合体(A)は一般的なゴムに類似する性質を有することから、本発明のリシノール酸共重合体組成物において、共重合体(A)はゴム主剤として機能する。見方を変えると、このような共重合体(A)を含む本発明のリシノール酸共重合体組成物は、ゴム組成物として機能することになる。
上記共重合体(A)は、一般的なゴムと同様、イオウや過酸化物などの架橋剤により架橋することができる。
<補強材(B)>
本発明のリシノール酸共重合体組成物は、架橋体としたときの引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質を高めるために、補強材(B)をさらに含む。
補強材(B)の種類としては、カーボンブラック、シリカ、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸、クレー等が挙げられる。これらの補強材は、1種単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
この中でも、ゴムマトリックスへの均一分散性と優れた補強性、および汎用性(コスト)という観点から、補強材は、カーボンブラックおよびシリカからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
カーボンブラックの種類は特に限定されないが、使用目的に応じて、通常ゴム工業において用いられる公知のタイプ、例えば、ファーネスブラック(ASTM D 1765による分類)、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
ここで、カーボンブラックは、シランカップリング剤等で表面処理して使用してもよい。
一方、シリカについても種類は特に限定されないが、使用目的に応じて、通常ゴム工業において用いられる公知の乾式シリカ、湿式シリカ等が挙げられる。
また、重質炭酸カルシウムとしては、市販されている「ホワイトンSB」(商品名;白石カルシウム株式会社)等を用いることができる。
補強材の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、補強材の配合量は通常、共重合体(A)100質量部に対して、10〜300質量部である。ここで、補強材の配合量は、好ましくは10〜200質量部である。
<架橋剤(C)>
本発明のリシノール酸共重合体組成物を構成する架橋剤(C)は、上記共重合体(A)を架橋可能である限り特に限定されず、硫黄系化合物、過酸化物系架橋剤などゴムの分野において通常用いられる種々のものであってもよい。
本発明においては、好適な架橋剤(C)として、イオウ系化合物(C1)が挙げられる。イオウ系化合物(C1)によりリシノール酸(共)重合体組成物を架橋することで、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物系架橋剤を用いた場合と比べて、ゴム架橋体に同等の低温特性を与えつつ、格段に優れた柔軟性や機械的特性を付与することができる。
イオウ系化合物(C1)の種類としては、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。この中でも、イオウやテトラメチルチウラムジスルフィドが好ましい。
一方、架橋剤(C)として過酸化物系架橋剤(C2)を用いることもできる。
過酸化物系架橋剤(C2)としては、
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカンなどのパーオキシケタール、並びに、
ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α、α'−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。
本発明のリシノール酸共重合体組成物における架橋剤(C)の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、好ましくは0.01〜5質量部である。
ここで、架橋剤(C)としてイオウ系化合物(C1)が用いられる場合、その含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
一方、架橋剤(C)として過酸化物系架橋剤(C2)が用いられる場合、その含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して0.5〜5質量部であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明のリシノール酸共重合体組成物は、上述した共重合体(A)、補強材(B)および架橋剤(C)を含むところ、用途に合わせてさらにその他の成分を含んでいても良い。
本発明のリシノール酸共重合体組成物に含まれうるその他の成分として、可塑剤、加硫促進剤、共架橋剤、加硫助剤、加工助剤、老化防止剤、活性剤、吸湿剤、発泡剤、発泡助剤等の種々の添加剤が挙げられる。また、必要に応じて、公知の着色剤、分散剤、難燃剤等もその他の成分として用いうる。
可塑剤
本発明のリシノール酸共重合体組成物は、その用途に応じて、ゴムの分野において軟化剤として一般的に用いられる公知の可塑剤をさらに含んでいてもよい。
このような可塑剤の具体例としては、プロセスオイル(例えば、「ダイアナプロセスオイル PS−430」(商品名;出光興産株式会社製)など)、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、およびワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、およびコールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ひまし油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、およびヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ、およびラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、およびラウリン酸亜鉛等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、およびロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、およびクマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、およびジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油、およびサブ(ファクチス)などが挙げられる。なかでも、石油系軟化剤が好ましい。石油系軟化剤の中では、石油系プロセスオイルが好ましく、この中でもパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル等がさらに好ましい。
ここで、上記可塑剤の含有量は、その用途により適宜選択でき、通常、共重合体(A)100質量部に対して、最大200質量部、好ましくは最大150質量部、より好ましくは最大130質量部が望ましい。
加硫促進剤
本発明に係るリシノール酸共重合体組成物には、上記共重合体(A)、補強材(B)および架橋剤(C)のほかに、加硫促進剤をさらに含んでいてもよい。
ここで、本発明に係るリシノール酸共重合体組成物において、加硫促進剤の含有量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。このような含有量でリシノール酸共重合体組成物に加硫促進剤が含まれることにより、リシノール酸共重合体組成物が優れた架橋特性を有し、得られるゴム架橋体におけるブルームの発生をより低減することができる。
加硫促進剤の具体例としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(例えば、「サンセラーCM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール(例えば、「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2−(4−モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、「ノクセラーMDB−P」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、アルデヒドアミン系;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、「サンセラーBZ」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;エチレンチオ尿素(例えば、「サンセラー22−C」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、N,N'−ジエチルチオ尿素等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系;その他亜鉛華(例えば、「META−Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)等が挙げられる。
共架橋剤
上記架橋剤(C)として過酸化物系架橋剤(C2)を用いる場合には、本発明に係るリシノール酸共重合体組成物には、上記共重合体(A)、補強材(B)および架橋剤(C)のほかに、物性や加硫速度改善などを目的として、必要に応じて、適宜な共架橋剤をさらに含むことができる。
共架橋剤の例として、ブレンマーPDE−100(日本油脂株式会社製商品名)の如きポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ジアリルフタレート(DAP)、タイク(日本化成株式会社製商品名)の如きトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、タック(株式会社武蔵野化学研究所製商品名)の如きトリアリルシアヌレート(TAC)、アクリエステルTHF(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)、サンエステルEG(三新化学工業株式会社製商品名)やアクリエステルED(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きジメタクリル酸エチレン(EDMA)、アクリエステルBD(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きジメタクリル酸1,3−ブチレン(BDMA)、サンエステルTMPMA(三新化学工業株式会社製商品名)やアクリエステルTMP(三菱レーヨン株式会社製商品名)やハイクロスM(精工化学株式会社製商品名)の如きトリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TMPMA)などが挙げられる。
この共架橋剤の添加量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、1〜10質量部程度が適当である。
またこの態様のリシノール酸共重合体組成物においては、過酸化物系架橋剤を用いた加硫の際にメタクリル酸エステルやタイク(日本化成株式会社)の如きトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、などを加硫助剤としてさらに添加してもよい。
加硫助剤
本発明に係るリシノール酸共重合体組成物には、上記共重合体(A)、補強材(B)および架橋剤(C)のほかに、加硫助剤をさらに含んでいてもよい。
加硫助剤の具体的例としては、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META−Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。その含有量は、通常、共重合体(A)100質量部に対して、1〜20質量部である。
加工助剤
本発明に係るリシノール酸共重合体組成物には、上記共重合体(A)、補強材(B)および架橋剤(C)のほかに、加工助剤をさらに含んでいてもよい。
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される化合物を使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
このような加工助剤は、通常、共重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは5質量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
老化防止剤
本発明に係るリシノール酸共重合体組成物から製造されたゴム製品は、さらに製品寿命を長くするために、老化防止剤を含有してもよい。また、老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤等が挙げられる。
具体的には、フェニルブチルアミン、N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2−メルカプトベンゾイルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。
これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができ、このような老化防止剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、通常0.3〜10質量部、好ましくは0.5〜7.0質量部、さらに好ましくは0.7〜5.0質量部である。老化防止剤の含有量が上記範囲内であると、リシノール酸共重合体組成物の架橋時における加硫阻害を低減することができ、得られるゴム架橋体におけるブルームの発生を低減することができる。
活性剤
本発明のリシノール酸共重合体組成物は、必要に応じて、活性剤を1種単独あるいは2種以上含有していてもよい。活性剤の具体的な例としては、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン、「アクチングB」(商品名;吉冨製薬株式会社製)、「アクチングSL」(商品名;吉冨製薬株式会社製)などのアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリテート、脂肪族および芳香族カルボン酸の亜鉛化合物(例えば、「Struktol activator 73」、「Struktol IB 531」および「Struktol FA541」(商品名;Schill & Seilacher社製))などのアミン系活性剤;「ZEONET ZP」(商品名;日本ゼオン株式会社製)などの過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物(例えば、「アーカード2HF」(商品名;ライオン・アクゾ株式会社製))などが挙げられる。
活性剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、0.2〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜4質量部である。
吸湿剤
本発明に係るリシノール酸共重合体組成物は、カーボンブラック中の水を除去するために、吸湿剤を含有していてもよい。
ここで、吸湿剤の種類としては、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ4A、ゼオライト、ホワイトカーボン等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、酸化カルシウムが好ましい。吸湿剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、0.5〜15質量部、好ましくは1.0〜12質量部、さらに好ましくは1.0〜10質量部である。
発泡剤および発泡助剤
本発明に係るリシノール酸共重合体組成物は、必要に応じて、発泡剤を1種単独あるいは2種以上含有していてもよい。発泡剤の種類としては、有機発泡剤 又はマイクロバルーンが挙げられ、その含有量としては、共重合体(A)100重量部に1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部を配合するとよい。発泡剤の含有量をこのような範囲内にすると、より適度な発泡倍率の発泡ゴム 組成物が得られ好ましい。
有機発泡剤 は、特に限定されるものではなく、ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニルヒドラジド系化合物等が好ましく、なかでもアゾ化合物がより好ましい。アゾ化合物はアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられ、ニトロソ化合物はN,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド等が挙げられ、スルホニルヒドラジド系化合物は、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。また、その他に、p−トルエンスルホニルアジド、4,4'−ジフェニルスルホニルアジド、4,4'−オキシビスベンゾソスルホニルヒドラジド等の有機発泡剤 を用いることもできる。これらは単独で若しくは2種以上併せて用いられる。特に好ましくは、加熱上昇、温度によるガス発生量の点から、アゾジカルボンアミドを用いるとよい。
また、マイクロバルーンは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を殻とする微細な中空体である。
なお、マイクロバルーンを使用した場合、ポリマー殻が発泡ゴム中に残ることから、本発明では有機発泡剤 を使用することが好ましい。
また、本発明に係るリシノール酸共重合体組成物は、必要に応じて、上記発泡剤とともに発泡助剤も含むことができる。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸などの有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。これらの発泡助剤は、上記共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
<リシノール酸共重合体組成物の製造方法>
本発明のリシノール酸共重合体組成物は、上記所定質量部の共重合体(A)、補強材(B)および架橋剤(C)と、必要により配合される上記「その他の成分」とから、一般的なゴム配合物の調製方法と同様の方法によって調製することができる。
例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類およびロール類を用いて共重合体(A)、補強材(B)、架橋剤(C)、および必要により配合されるその他の成分を80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、必要に応じてさらに加硫促進剤または加硫助剤などを加えて、オープンロールなどのロ−ル類あるいはニーダーを用いて、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状のリシノール酸共重合体組成物が得られる。このような本発明のリシノール酸共重合体組成物は、配合ゴムに相当するものである。
<リシノール酸共重合体組成物の用途>
本発明のリシノール酸共重合体組成物は、リシノール酸共重合体架橋体の原料として用いることができる。
本発明のリシノール酸共重合体組成物を原料としてリシノール酸共重合体架橋体を得る場合、リシノール酸共重合体架橋体は、上記リシノール酸共重合体組成物を、通常、押出成形機、カレンダーロール、プレス、インジェクション成形機、トランスファー成形機、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)等の加熱形態の加熱槽等種々の成形法によって所望形状に予備成形し、成形と同時にまたは成形物を加硫槽内に導入して加熱処理することにより架橋して得ることができる。この加熱処理には、HAV(熱空気)、PCM(ガラスビーズ流動床)、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽を用いることができる。また、加熱(架橋)する際の温度としては、一般的に140〜300℃、好ましくは150〜270℃、さらに好ましくは150〜250℃で、0.5〜30分間、好ましくは0.5〜20分間加熱する。また、成形、架橋に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。金型を用いない場合には、リシノール酸共重合体組成物 は通常連続的に成形・架橋される。
このように、本発明のリシノール酸共重合体架橋体は、上記リシノール酸共重合体組成物を架橋してなるものである。このリシノール酸共重合体架橋体は、ゴム架橋体に相当するものである。また、リシノール酸共重合体組成物は成形加工性に優れ、得られるゴム架橋体は永久歪みが小さく、柔軟性および機械的特性に優れているために、各分野のゴム製品として非常に有用である。
本発明のリシノール酸共重合体架橋体の用途としては、例えば、タイヤ、履物、ゴムロール、導電性ゴム、コンベヤベルト用カバーゴム、医療用ゴム製品、床材料等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各物性の測定方法は以下の通りである。
<共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)>
得られた共重合体(A)を、クロロホルムとヘキサフルオロイソプロパノールとの容積比1:1の混合溶液に溶解した後、更にクロロホルムで希釈して0.1%(w/v)の溶液を調製し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[Waters社製GPCシステム、検出器:RI(Waters社製2414)、カラム:PLgel 5μ MIXED-D(Polymer Laboratories社製)、カラム温度:40℃、流速:1ml/min、溶媒:クロロホルム]により、ポリスチレン標準サンプルを基準として重量平均分子量を算出した。
<共重合体(A)の組成>
共重合体(A)の組成は、以下の手順で分析した。
1)日本電子(株)製ECA500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒は重水素化クロロホルムを使用した。試料濃度を35mg/0.5mL、測定温度は50℃とした。
観測核は1H(500MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は6.3μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は8.5秒、積算回数は394回とし、テトラメチルシランの水素シグナルをケミカルシフトの基準値として測定した。各ピークは、常法によりアサインした。
2)得られた測定データを解析し、共重合体(A)を構成するカルボン酸およびアルコール成分を同定し、それらの構成比率を求めた。
<未加硫ゴム物性の評価>
(ポリマー性状)
リシノール酸共重合体組成物の性状は、常温で液体かどうかを評価することにより行い、常温で液体のものを「液体」、そうでないものを「固体」と判定した。
ここで、常温で液体かどうかの評価は、日本国消防庁ウェブサイトに掲載されている「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令(危険物の試験及び性状に係る部分)並びに危険物の試験及び性状に関する省令の公布について(通知)」(http://www.fdma.go.jp/kasai_yobo/about_shiken_unpan/00-010223ki11.pdf)の別添2 「1 液状の確認方法」に記載の方法に基づいて行った。具体的には、内径30mm、高さ120mmの平底円筒型の試験管で管底から55mm及び85mmの高さのところに標線(以下、それぞれ「A線」および「B線」という)を付したものに、A線までポリマーを充填し、25℃の恒温槽に試験管をB線まで浸し、10分間その状態を保持する。10分後試験管を恒温槽から水平な台上に直立状態のまま取出し、直ちに台の上に水平に倒す。試験管を倒してからポリマーの液面の先端がB線を通過するまでの時間を測定することによって行い、測定された時間が90秒以内であった場合に「液状」と判定した。一方、90秒を経過してもポリマーの液面の先端がB線に達しなかった場合には、「固体」と判定した。
(加硫速度)
実施例および比較例における未架橋のリシノール酸(共)重合体組成物を用いて、測定装置:MDR2000(ALPHA TECHNOLOGIES 社製)により、温度160℃および時間30分の測定条件下で、加硫速度(TC90)を以下のとおり測定した。
一定温度および一定のせん断速度の条件下で得られるトルク変化を測定した。トルクの最大値と最小値との差の90%のトルクに達成するまでの時間を加硫速度(TC90;分)とした。
(ロール加工性)
6インチオープンロールを用いて、リシノール酸(共)重合体組成物100gをロールに巻きつけ、その際の状態を観察するとともに、ロールからナイフを用いてコンパウンドを切り出す際のハンドリング性を以下の基準により評価した。
○:ロールへの良好な巻付き性を示し、ロールから容易にコンパウンドを剥がすことできる
×:バギング、または粘着により、安定的にコンパウンドが巻きつかず、ロールからコンパウンドを剥がすことができない。
巻きつけ条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15rpm、ロール間隙は0.5mmとした。
<加硫ゴム物性の評価>
(引張破断点応力、引張破断点伸び)
シートの引張破断点応力、引張破断点伸びを以下の方法で測定した。
シートを打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
(デュロメーターA硬度)
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
(圧縮永久ひずみ)
JIS K6262に準拠して測定した。ここで、試験片(直径:29mm;厚さh0:12.5mm)として、リシノール酸(共)重合体組成物から得たゴムシートを打ち抜いたものを用いた。
1対の圧縮板とスペーサとこれらを固定する保持具とを有する圧縮装置において、当該1対の圧縮板の間に試験片を挿入し、これらの圧縮板がスペーサに密着するまで保持具を締め付け、その状態で固定した。ここで、スペーサの厚さhSは、試験片の圧縮率が25%となるよう設定した。試験片を組み込んだ圧縮装置に対し、120℃または150℃にて72時間熱処理を行った。その後、試験片を圧縮装置から開放し、23℃恒温室で30分放置し、厚さh1を測定した。
前記h0、h1、hSを用いて、(h0−h1)/(h0−hS)×100を計算し、得られた値を圧縮永久ひずみ(CS:単位 %)とした。
(ブリード性)
熱処理の条件を70℃にて24時間としたことを除いては上記「圧縮永久ひずみ」と同様に試験片を圧縮および熱処理した後、表面を観察し、以下のように判定した。
ベタツキあり:×
ベタツキなし:○
(低温柔軟性(tanδ-Tg))
160℃で12分間熱プレスして架橋したゴムシートから、幅10mm、厚さ2mm、長さ30mmの短冊状のサンプルを調製した。このサンプルを用いて、レオメトリック社製のRDS−IIにより、歪み0.5%、周波 数1Hzの条件で粘弾性の温度分散(−70℃から25℃)を測定した。tanδ-Tg(℃)はtanδの温度依存性曲線からピーク温度を読み取ることにより導出した。
<(共)重合体(A)>
[製造例1](リシノール酸共重合体 P−1の製造)
500mlのガラス製重合反応用フラスコにリシノール酸30.5質量部、セバシン酸20.6質量部、1,4−ブタンジオール13.3質量部に酢酸カルシウム一水和物の20wt%水溶液を0.31質量部加え、30分かけ常温から210℃まで昇温した。210℃へ到達した後、チタンテトラブトキシドを0.20質量部、テトラテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの20wt%水溶液を0.03質量部加え、そのまま200℃で5時間保持して、エステル化反応を行った。
エステル化反応終了後、チタンテトラブトキシドを1.36質量部加え、60分かけて重縮合温度である200℃まで昇温させながら圧力を0.133kPa(1Torr)まで減圧し、重縮合反応を行った。定期的に反応物を少量抜出し、分子量を測定した。分子量Mwが6万となったところで反応を終了し(重縮合温度での加熱時間:6時間)、反応終了から10分以内に反応層から製造されたポリエステルを抜き出した。
以下の実施例では、得られたポリエステルをポリマーP−1として用いた。
[製造例2](リシノール酸共重合体 P−2の製造)
リシノール酸40.0質量部、セバシン酸13.6質量部、1,4−ブタンジオール9.7質量部としたことを除き、製造例1と同様にしてポリエステルを得た。
以下の実施例では、得られたポリエステルをポリマーP−2として用いた。
[製造例3](リシノール酸共重合体 P−3の製造)
重縮合温度を230℃とし、分子量Mwが10万となったところで反応を終了した(重縮合温度での加熱時間:3時間)ことを除き、製造例2と同様にしてポリエステルを得た。
以下の実施例では、得られたポリエステルをポリマーP−3として用いた。
[比較製造例1](リシノール酸単独重合体 P−4の製造)
リシノール酸59.7質量部とし、セバシン酸および1,4−ブタンジオールを用いなかったことを除き、製造例3と同様にしてポリエステルを得た。
以下の比較例では、得られたポリエステルをポリマーP−4として用いた。
上記ポリマーP−1〜P−4の特性値を表1に示す。
Figure 2018172561
<リシノール酸共重合体組成物および架橋体の調製>
[実施例1]
ポリマーP−1を共重合体(A)として用いた。ポリマーP−1 100質量部に対し、補強材(B)としてカーボンブラック(旭#50:旭カーボン(株)社製) 40質量部、加硫助剤として「酸化亜鉛2種」(商品名;堺化学工業株式会社製) 5質量部、および、加工助剤としてステアリン酸 1質量部を混合した後、ロール温度50℃の3本ロール(株式会社小平製作所社製3本ロール、ロール径:φ63.5 × 150mmL、ロール回転数:後15rpm、中38rpm、前90rpm)を用いて、薄通しを7回行うことで配合物を得た。
得られた上記配合物を上記3本ロールに巻きつけ、加硫促進剤として2−メルカプトベンゾチアゾール(サンセラーM:三新化学工業株式会社製) 0.5質量部、加硫促進剤としてテトラメチルチウラムジスルフィド(サンセラーTT:三新化学工業株式会社製) 1質量部、および、架橋剤(C)として粉末イオウ 1.5質量部を混合した後、ロール温度50℃の3本ロール(上述)を用いて、ロール間隙0.1で薄通しを7回行うことでリシノール酸共重合体組成物を得た。
得られたリシノール酸共重合体組成物の未架橋ゴム物性を、上記「未加硫ゴム物性の評価」に基づいて、測定した。
さらに、リシノール酸共重合体組成物を、160℃で、20分間プレスし、リシノール酸共重合体架橋体として厚み2mmのゴムシートを調製した。上記「加硫ゴム物性の評価」に基づいて、得られたゴムシートのデュロメーターA硬度、低温柔軟性、並びに、破断点強度TB(MPa)および破断点伸びEB(%)をそれぞれ測定した。
また、これとは別に、リシノール酸共重合体組成物を、160℃で、10分間プレスし、厚み12.5mm、直径29mmの成形体を調製し、ブリード性評価用の試験片とした。
評価結果を表2に示す。
[実施例2]
ポリマーP−1に代えてポリマーP−2を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
[実施例3]
2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムモノスルフィドおよび粉末イオウの量を、それぞれ、1質量部、2質量部および3質量部に変えたことを除き、実施例2と同様に行った。評価結果を表2に示す。
[実施例1−4]
ポリマーP−1に代えてポリマーP−3を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
[比較例1]
ポリマーP−1に代えてポリマーP−4を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
[比較例2]
カーボンブラックの量を100質量部に変えたことを除き、比較例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
Figure 2018172561

Claims (6)

  1. リシノール酸および/またはその誘導体[α]と、ジカルボン酸[β]と、ジオール[γ]との共重合体(A)100質量部と、
    補強材(B)10〜300質量部と、
    架橋剤(C)0.01〜10質量部と
    を含み、且つ、前記共重合体(A)は、少なくとも下記要件(1)〜(2)を満たすリシノール酸共重合体組成物:
    (1) リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位の含有量が、前記のリシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位と、ジカルボン酸[β]由来の構造単位と、ジオール[γ]由来の構造単位との合計に対し、10モル%以上100モル%未満 である;
    (2) 上記共重合体(A)の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量が10,000以上500,000以下である。
  2. 前記共重合体(A)が、炭素数2〜12のジカルボン酸[β1]および炭素数が2〜12のジオール[γ1]成分からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のリシノール酸共重合体組成物。
  3. 上記共重合体(A)が、
    (I)リシノール酸および/またはその誘導体[α]由来の構造単位10〜80モル%、
    (II)炭素数2〜12のジカルボン酸[β1]由来の構造単位10〜45モル%および
    (III)炭素数2〜12のジオール[γ1]由来の構造単位10〜45モル%
    (但し、(I)、(II)、(III)の構造単位の合計を100モル%とする)
    を含む、請求項1または2に記載のリシノール酸共重合体組成物。
  4. 前記補強材(B)が、カーボンブラックおよびシリカからなる群から選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリシノール酸共重合体組成物。
  5. 前記架橋剤(C)がイオウ系化合物(C1)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリシノール酸共重合体組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のリシノール酸共重合体組成物を架橋してなるリシノール酸共重合体架橋体。
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WO2023032862A1 (ja) * 2021-08-31 2023-03-09 株式会社Adeka ポリエステル系可塑剤、これを含有する塩化ビニル系樹脂組成物、およびその成形体

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