[硬化性組成物]
以下、本発明の硬化性組成物について説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」を包括する意味で使用し、これらの一方または双方であり得る。「(メタ)アクリロイル基」が、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の双方である場合には、それらの基の合計を(メタ)アクリロイル基の数とする。
本発明の硬化性組成物は、
以下の成分:
(A1)置換基を有していてもよいスチレンに由来する構成単位および酢酸ビニルに由来する構成単位を含む共重合体である低収縮化剤(以下、「成分(A1)」と称することがある)、
(A2)(メタ)アクリロイル基を1以上含む単量体(以下、「成分(A2)」と称することがある)、ならびに
(B)硬化剤(以下、「成分(B)」と称することがある)、
を含む。
本発明の硬化性組成物が上記成分(A2)を含むことにより、流動性を有する硬化性組成物を得ることができ、該硬化性組成物を所望の大きさまたは形状の成形体へ成形することができる。
硬化性組成物が成分(A2)を含むことにより、硬化性組成物中に、重合性官能基を有する成分が含まれる。このような硬化性組成物を硬化すると、硬化性組成物の硬化により得られる成形体に成分(A2)の重合物が含まれ、硬い成形体を得ることができる。
本発明の硬化性組成物において、成分(A1)、および成分(A2)、ならびに、存在する場合には、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を有するポリマー(以下、「ポリマー」あるいは「成分(A3)」と称することがある)の総量は、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、および成分(B)の総量100質量部に対して、99.95質量部以下99.5質量部以上の範囲で含まれていることが好ましく、99.9質量部以下99.5質量部以上の範囲で含まれていることがより好ましく、99.8質量部以下99.5質量部以上の範囲で含まれていることがさらに好ましい。なお、本明細書において、「成分(A1)、成分(A2)、および成分(A3)の総量」は、成分(A3)が存在する場合には、成分(A1)、成分(A2)、および成分(A3)の総量を、成分(A3)が存在しない場合には、成分(A1)、および成分(A2)の総量を意味する。
本発明の硬化性組成物は、成分(A1)、成分(A2)、および、後述する成分(B)以外に、必要に応じて後述する成分(A3)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤を含み得る。成分(A1)、成分(A2)、および成分(A3)の総量は、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、10質量部以上40質量部以下の範囲で含んでいてもよく、10質量部以上35質量部以下の範囲で含んでいてもよく、15質量部以上35質量部以下の範囲で含んでいてもよい。成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤については後述する。なお、本明細書において、「成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量」は、「成分(A1)、成分(A2)、および成分(B)、ならびに、存在する場合には、成分(A3)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量」を意味する。
成分(A2)は、(メタ)アクリロイル基を1つ有する単量体(以下、「成分(A2-1)」と称することがある)、および/または、(メタ)アクリロイル基を2以上有する単量体(以下、「成分(A2-2)」と称することがある)を含むことができる。
一の態様において、成分(A2)は、成分(A2-1)、および、成分(A2-2)よりなる群より選ばれる少なくとも1を含むことができ、好ましくは、成分(A2-1)および成分(A2-2)を含む。
成分(A2-1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等のプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等のブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素数1~15のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アリル(メタ)アクリレート等の1の(メタ)アクリロイル基および炭素-炭素二重結合(但し、(メタ)アクリロイル基を除く)を有する単量体を挙げることができる。上記(A2-1)としては、炭素数1~15のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
成分(A2-2)としては、(メタ)アクリロイル基を2~6有する単量体が好ましい。
成分(A2-2)は、下記式(1)または(2)で表される単量体であってもよい。
CH2=CH-CO-O-(CmH2m-O)n-CO-CH=CH2 (1)
CH2=CCH3-CO-O-(CmH2m-O)n-CO-CCH3=CH2 (2)
式(1)および(2)中、mは1以上10以下の整数を表し、nは1以上15以下の整数を表す。nが2以上のとき、複数ある(CmH2m-O)は同一であっても異なっていてもよい。
成分(A2)は、重合反応において、単量体の粘度が高くなることにより生じ得る未反応の(メタ)アクリロイル基を少なくする観点で、分子鎖の短い方が好ましく、mが1以上6以下であることが好ましく、nが1以上14以下であることが好ましく、nが1以上8以下であることがより好ましく、nが1以上5以下であることがさらに好ましい。
m=2である式(1)または(2)で表される単量体としては、例えば、n=1であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、n=2であるジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、n=3であるトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、n=4であるテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、n=6~14)が挙げられる。
m=2である式(1)または(2)で表される単量体は、重合反応において、単量体の粘度が高くなることにより生じ得る未反応の(メタ)アクリロイル基を低減させる観点で、分子鎖が短い方が好ましく、nは1以上5以下であることが好ましい。
m=3である式(1)または(2)で表される単量体としては、例えば、n=1であるプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、n=2であるジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、n=3であるトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、n=6~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
n=1である式(1)または(2)で表される単量体としては、例えば、m=2であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、m=4である1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、m=5であるネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、m=6である1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、m=9である1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、m=10である1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
n=1である式(1)または(2)で表される単量体は、重合反応において、単量体の粘度が高くなることにより生じ得る未反応の(メタ)アクリロイル基を少なくする観点で、分子鎖の短い方が好ましく、mが1以上10以下であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましい。
式(1)または式(2)で表される単量体のうち、m=2である単量体、または、n=1である単量体が好ましい。
成分(A2-2)は、下記式(3)または(4)で表される単量体であってもよい。
(HO-CH2)4-k-C-(CH2-O-CO-CH=CH2)k (3)
(HO-CH2)4-k-C-(CH2-O-CO-CCH3=CH2)k (4)
式(3)および(4)中、kは2以上4以下の整数を表す。
式(3)または(4)で表される単量体としては、例えば、k=3であるペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、k=4であるペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
成分(A2-2)は、下記式(5)または(6)で表される単量体であってもよい。
(CH2=CH-CO-O-CH2)r-C(CH2OH)3-r-CH2OCH2-C(CH2OH)3-q-(CH2O-CO-CH=CH2)q (5)
(CH2=CCH3-CO-O-CH2)r-C(CH2OH)3-r-CH2OCH2-C(CH2OH)3-q-(CH2O-CO-CCH3=CH2)q (6)
式(5)および(6)中、qおよびrは、それぞれ独立に1以上3以下の整数を表す。
上記式(5)または(6)で表される単量体としては、例えば、q=2かつr=2であるジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、q=3かつr=2であるジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、q=3かつr=3であるジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
成分(A2-2)は、下記式(7)または(8)で表される単量体であってもよい。
CH3-CH2-C(CH2OH)3-p-(CH2O-CO-CH=CH2)p (7)
CH3-CH2-C(CH2OH)3-p-(CH2O-CO-CCH3=CH2)p (8)
式(7)および(8)中、pは1以上3以下の整数を表す。
式(7)または(8)で表される単量体としては、例えば、p=3であるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
成分(A2-2)は、下記式(9)または(10)で表される単量体であってもよい。
(CH2=CH-COO-CH2)s-C(C2H5)3-s-CH2OCH2-C(C2H5)3-t-(CH2O-CO-CH=CH2)t (9)
(CH2=CCH3-COO-CH2)s-C(C2H5)3-s-CH2OCH2-C(C2H5)3-t-(CH2O-CO-CCH3=CH2)t (10)
であってもよい。
式(9)および(10)中、sおよびtは、それぞれ独立に1以上3以下の整数を表す。
式(9)または(10)で表される単量体としては、例えば、s=2かつt=2である、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を3以上有する単量体の中では、(メタ)アクリロイル基を3つ有する単量体、および、(メタ)アクリロイル基を4つ有する単量体は、粘度が高すぎないために重合反応時に反応性の低下が生じにくく、未反応の(メタ)アクリレートが残留しにくいことから好ましい。
成分(A2-2)は、重合反応において、単量体の粘度が高くなることにより生じ得る未反応の(メタ)アクリロイル基を少なくする観点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
成分(A2-2)としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを用いることがさらに好ましい。
未反応の(メタ)アクリロイル基を少なくすると、密な架橋構造を有する成形体を形成することができる。従って、上記成分(A2-2)を加え、かつ未反応の(メタ)アクリロイル基を少なくすることで、硬化性組成物を硬化させて得られた成形体は密な架橋構造を有し、得られた成形体の表面硬度を高めることができる。
成分(A2-1)および成分(A2-2)は、それぞれ単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
硬化性組成物のまとまりを向上させる観点では、成分(A2)には、(A2-2)が含まれることが好ましい。成分(A2-2)は、成分(A2)100質量部に対して、17質量部以上100質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、20質量部以上100質量部以下の範囲含まれることがより好ましく、40質量部以上100質量部以下の範囲含まれることがさらに好ましく、40質量部以上91質量部以下の範囲含まれることがより好ましく、67質量部以上83質量部以下の範囲含まれることが特に好ましい。
一の態様において、成分(A2)は、成分(A2-1)および成分(A2-2)を含むことが好ましい。本発明の硬化性組成物において、成分(A2-1)と成分(A2-2)とは質量比において、成分(A2-1):成分(A2-2)が1:1~1:10の範囲含まれることが好ましく、1:2~1:5の範囲含まれることがより好ましい。
一の態様において、成分(A2-2)は、成分(A2)、および、存在する場合には成分(A3)の総量100質量部に対して、40質量部以上100質量部以下の範囲で含まれていてもよく、40質量部以上90質量部以下の範囲で含まれていてもよい。成分(A2-2)を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物を調製するために成分(A1)、(A2)および(B)等の原料を混練する際、または、得られた硬化性組成物の保管時に、成分(A2)の揮発を抑制することができ、硬化性組成物表面の乾燥を抑えることができる。
一の態様において、成分(A2-2)は、成分(A2)、および、存在する場合には成分(A3)の総量100質量部に対して、50質量部を超えて100質量部以下の範囲で含まれていてもよく、50質量部を超えて90質量部以下の範囲で含まれていてもよく、55質量部以上90質量部以下の範囲で含まれていてもよい。成分(A2-2)を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物を調製するために成分(A1)、(A2)および(B)等の原料を混練する際、または、得られた硬化性組成物の保管時に、成分(A2)の揮発を抑制することができ、硬化性組成物表面の乾燥を抑えることができる。
成分(A1)は、置換基を有していてもよいスチレンに由来する構成単位、および酢酸ビニルに由来する構成単位を含む共重合体である。
硬化性組成物が成分(A1)を含むことにより、本発明の硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得、例えば、硬化性組成物の調製時の粘度が低くなり得る。このような硬化性組成物は良好に混合され得、硬化性組成物に含まれる成分が良好に分散され得る。このような硬化性組成物は、良好にまとまり得、特に硬化性組成物をシートモールディングコンパウンド(SMC)またはバルクモールディングコンパウンド(BMC)として用いるときのハンドリング性が良好になり得る。このような硬化性組成物は調製が容易になり得る。良好にまとまる硬化性組成物を用いることによって、硬化性組成物を用いて成形体を形成するときに成形体に割れ等が生じにくい。従って、硬化性組成物は、所望の成形体の形成に寄与し得る。本明細書において、硬化性組成物、SMC、またはBMCが良好にまとまり得るとは、硬化性組成物、SMCまたはBMCの表面が、パサつきにくく、言い換えると、一様にしっとりした状態にあり部分的に乾燥しておらず、且つ、硬化性組成物に凝集物が生じにくいことを示す。凝集物が生じにくいこととしては、硬化性組成物から細かい粒状の物質が分離しにくいことを挙げることができる。代表的には、機械的に外力、例えば機械的な撹拌又は混合、を加えたときに、しっとりした状態にある表面を有する1つの塊状物を形成し得ることをいう。
成分(A1)を含むことにより、本発明の硬化性組成物の表面における粘着性が抑制され得る。特に、硬化性組成物をSMCまたはBMCとして用いるときに、その表面におけるべたつき、すなわち、粘着性が抑制され得、硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得る。本明細書において、「粘着性」とは、周囲の物質に付着した後、離れるときに周囲の物質に残りにくいことをいう。
さらに、成分(A1)は、硬化性組成物を硬化させ成形する際の成形収縮の抑制に寄与し得る。本発明の硬化性組成物から形成された成形体においては、欠陥が生じにくいため、例えば、黒系材料のような濃色系材料からなる成形体の表面における部分的に白く見える箇所が生じにくい。
置換基を有していてもよいスチレンにおける置換基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。置換基を有していてもよいスチレンとしては、スチレン、α-メチルスチレン、α-ブチルスチレンが挙げられ、スチレンまたはα-アルキルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
成分(A1)は、置換基を有していてもよいスチレンに由来する構成単位および酢酸ビニル以外の他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸等が挙げられる。
上記成分(A1)に含まれる、置換基を有していてもよいスチレンに由来する構成単位および酢酸ビニルに由来する構成単位は、成分(A1)を構成する単量体に由来する構成単位100モルに対して、80モル以上100モル以下であることが好ましく、90モル以上100モル以下であることがより好ましい。
成分(A1)は、スチレンに由来する構成単位および酢酸ビニルに由来する構成単位からなる共重合体、即ち、スチレン-酢酸ビニル共重合体であることがさらに好ましい。
成分(A1)は、置換基を有していてもよいスチレンに由来する構成単位および酢酸ビニルに由来する構成単位を含むブロック共重合体であることが好ましく、スチレンに由来する構成単位および酢酸ビニルに由来する構成単位からなるブロック共重合体であることがより好ましい。
成分(A1)中、質量比において、酢酸ビニルに由来する構成単位:置換基を有していてもよいスチレンに由来する構成単位は、5:95~30:70であることが好ましく、5:95~15:85であることがより好ましく、例えば、10:90である。
成分(A1)は、該成分(A1)を30質量%含むスチレン溶液の25℃における粘度が0.2~5.0Pa・sの範囲にあってもよい。
硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)、成分(A2)および成分(A3)の総量100質量部に対して、5質量部以上含んでいてもよく、8質量部以上含んでいてもよい。本発明の硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)の総量100質量部に対して、30質量部以下で含んでいてもよく、25質量部以下で含んでいてもよい。なお、本発明においては、硬化性組成物は、成分(A2)および成分(A1)、および後述するポリマー、成分(A1)以外の他の低収縮化剤を含み得る。
本発明の硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)、成分(A2)、および成分(A3)の総量100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下で含んでいてもよく、8質量部以上25質量部以下で含んでいてもよく、10質量部以上20質量部以下で含んでいてもよい成分(A1)を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得、特に硬化性組成物表面における粘着性が抑制され得る。
本発明の硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)および成分(A2)の総量100質量部に対して、5質量部以上含んでいてもよく、8質量部以上含んでいてもよく、10質量部以上含んでいてもよい。硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)および成分(A2)の総量100質量部に対して、30質量部以下で含んでいてもよく、25質量部以下で含んでいてもよい。
本発明の硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)および成分(A2)の総量100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下で含んでいてもよく、8質量部以上25質量部以下で含んでいてもよく、10質量部以上25質量部以下で含んでいてもよい。成分(A1)を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得、特に硬化性組成物の表面における粘着性が抑制され得る。硬化性組成物を硬化させ成形する際の硬化性組成物の収縮を抑える観点で、成分(A1)を上記範囲の下限値以上で含むことが好ましい。当該収縮を抑える観点と、成形体に一定の硬度を与える観点とから、上記成分(A1)を上記範囲の上限値以下含むことが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、0.1質量部以上の範囲で含んでいてもよく、1量部以上の範囲で含んでいてもよく、1.5質量部以上の範囲で含んでいてもよく、10質量部以下の範囲で含んでいてもよく、8質量部以下の範囲で含んでいてもよく、6質量部以下の範囲で含んでいてもよい。本発明の硬化性組成物は、成分(A1)を、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下の範囲で含んでいてもよく、1質量部以上8質量部以下の範囲で含んでいてもよく、1.5質量部以上6質量部以下の範囲で含んでいてもよい。成分(A1)を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得、特に硬化性組成物表面における粘着性が抑制され得る。成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤については後述する。
本発明の硬化性組成物は、成分(A1)以外の他の低収縮化剤を含み得る。他の低収縮化剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、酸変性ポリスチレン、酸変性ポリ酢酸ビニル、変性ポリ酢酸ビニル等の飽和ポリマー、またはこれらの共重合体を挙げることができる。共重合体としては、例えば、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体を挙げることができる。共重合体としては、ブロック共重合体を用いることが好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。このような低収縮化剤を含むことによって、硬化性組成物は、硬化性組成物を硬化させ成形する際の成形収縮の抑制に寄与し得る。
一の態様においては、本発明の硬化性組成物は、上記他の低収縮化剤を含まない。即ち、本態様においては、本発明の硬化性組成物に含まれる低収縮化剤は、成分(A1)のみである。
本発明の硬化性組成物は、好ましくは、さらに、成分(A3)を含む。
成分(A3)を含むことにより、本発明の硬化性組成物の粘着性を抑制でき得る。このような本発明の硬化性組成物は、成形体の成形性の向上に寄与できる。特に本発明の硬化性組成物を用いると、所望の形状の成形体の形成が容易になる。
成分(A3)は、成分(A2)として例示した単量体に由来する構成単位を有し得、具体的には、上記構成単位としてメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等を用いることができる。成分(A3)は、成分(A2)に由来する構成単位を、単独で含んでいてもよく、複数の成分(A2)に由来する構成単位を組み合わせて含んでいてもよい。
成分(A3)は、さらに、(メタ)アクリロイル基を有する単量体以外の他の単量体に由来する構成単位を含み得る。上記他の単量体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体と共重合可能な単量体であることが好ましい。上記他の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-ブチルスチレン等のα-アルキルスチレン等の置換基を有していてもよいスチレン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、酢酸ビニル等の単官能の不飽和単量体;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の炭素-炭素不飽和結合を複数有する単量体が挙げられる。成分(A3)は、他の単量体に由来する構成単位を、単独で含んでいてもよく、複数の単量体に由来する構成単位を組み合わせて含んでいてもよい。
成分(A3)は、上記(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位と上記他の単量体に由来する構成単位の質量比、すなわち、上記(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位:上記他の単量体に由来する構成単位が、100:0~80:20となるように含み得る。
一の態様においては、成分(A3)は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体以外の他の単量体に由来する構成単位を含まない。即ち、本態様においては、成分(A3)は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位のみを含む。
成分(A3)は、架橋構造を有することが好ましい。上記架橋構造を有する成分(A3)は、上記成分(A2-2)に由来する構成単位、および、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の炭素-炭素不飽和結合を複数有する単量体に由来する構成単位からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
成分(A3)において、架橋構造を構成し得る単量体に由来する構成単位を、成分(A3)100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下の範囲で含むことが好ましい。
成分(A3)の製造方法としては、例えば、乳化重合、懸濁重合、分散重合などの粒子状の重合体を生成する重合方法や、他の重合方法で得られた架橋重合体を粉砕する方法が挙げられ、具体的には、特開平5-155907号公報に記載の方法が挙げられる。
成分(A3)は、粒子形状にあることが好ましい。成分(A3)の平均粒径は、1μm以上100μm以下の範囲にあることが好ましく、20μm以上50μm以下の範囲にあることがより好ましい。このような平均粒径の成分(A3)を用いることにより、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の外観に成分(A3)の形状が現れにくく、成形体の外観が良好になり得る。このような成分(A3)を用いることにより、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の硬度(耐傷付き性)のばらつきを低減し得る。上記平均粒径は、累積50%重量の粒子径であり、光回折散乱粒径測定機(マルバーン社製、マスターサイザー)により測定することができる。
成分(A3)は、本発明の硬化性組成物中、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下の範囲で含まれていてもよく、2質量部以上7質量部以下の範囲で含まれていてもよい。
成分(A2)と成分(A3)とは、硬化性組成物において、成分(A2):成分(A3)の質量比が、1.5:1~6:1の範囲にあることが好ましく、2.0:1~6:1の範囲にあることがより好ましく、3.0:1~5.5:1の範囲にあることが更に好ましい。
本発明の硬化性組成物は、成分(A2)以外の他の単量体をさらに含むことができる。上記他の単量体としては、成分(A2)と共重合可能な単量体を用いることができる。他の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-ブチルスチレン等の置換基を有していてもよいスチレン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、酢酸ビニル等の単官能の不飽和単量体;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等の炭素-炭素不飽和結合を複数有する単量体が挙げられる。
一の態様において、本発明の硬化性組成物は、成分(A2)以外の他の単量体を含まない。
本発明の硬化性組成物は、上記成分(A3)以外の他のポリマーをさらに含み得る。
一の態様において、本発明の硬化性組成物は、上記他のポリマーを含まない。
成分(B)は、成分(A2)をラジカル重合する開始剤として機能する。成分(B)としては、例えば、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンテン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-シアノ-2-プロピラゾホルムアミド、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシ-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチル-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-バレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシル、ジアルキルパーオキサイド系開始剤;t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ-t-ブチルパーオキシアゼレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル系開始剤;t-ブチルパーオキシアリルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネイト系開始剤;1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパ-オキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ヘキシルパ-オキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール系開始剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
成分(B)の10時間半減期温度、すなわち、半減期が10時間となる温度は、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、また、130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。成分(B)の10時間半減期温度は、60℃以上130℃以下が好ましく、80℃以上120℃以下がより好ましい。
成分(B)は、成分(A1)、成分(A2)、および成分(B)、ならびに存在する場合には成分(A3)の総量100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲で含まれていることが好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下の範囲で含まれていることがより好ましく、0.2質量部以上0.5質量部以下の範囲で含まれていることがさらに好ましい。
成分(B)は、硬化性組成物中、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、0.03質量部以上3.0質量部以下の範囲で含まれていてもよく、0.05質量部以上2.0質量部以下の範囲で含まれていてもよい。
本発明の硬化性組成物は、顔料を、さらに含むことができる。顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを挙げることができる。好ましくは、顔料は、カーボンブラック、および酸化チタンからなる群より選ばれる少なくとも1である。
顔料は、本発明の硬化性組成物中、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、0.1質量部以上12質量部以下の範囲で含まれていてもよい。顔料を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の外観が良好になり得る。
顔料は、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、0.5質量部以上8質量部以下の範囲で含まれることがより好ましい。顔料を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の外観が良好になり得る。
本発明の硬化性組成物は、無機フィラーをさらに含むことができる。無機フィラーを含むことにより、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐熱性が向上し得、成形体の耐傷付き性が良好になり得る。
無機フィラーとしては、成分(A2)に不溶で、その重合および硬化を阻害しないものを用いることが好ましく、例えば、硅石フィラー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、タルク、ベントナイト等のクレー、ガラスフィラー、ガラス繊維を挙げることができる。好ましくは、無機フィラーは、硅石フィラー、ガラスフィラーおよびガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは、硅石フィラーおよびガラスフィラーの少なくとも一方、ならびにガラス繊維である。無機フィラーは粒子形状であってもよく、繊維状であってもよい。
硅石フィラーは、結晶性シリカを主成分として含むフィラーである。硅石フィラーは、通常、SiO2およびAl、Fe等の不純物を含有する。結晶性シリカを主成分として含む硅石フィラーは、硅石フィラー100質量部に対して、SiO2を97質量部以上含むことが好ましく、99質量部以上含むことがより好ましい。SiO2の含有量は、ICP発光分光分析法を用いてSi量を測定することにより求めることができる。硅石フィラーを含むことにより、硬化性組成物硬化させて得られる成形体の耐傷付き性が高くなり得る。例えば、成形体の表面におけるモース硬度が3以上であってもよい。
硅石フィラーは、粒子形状であってもよい。硅石フィラーは、平均粒径が、例えば1μm以上30μm以下の範囲にあるものを用いることができ、より具体的には、2μm以上20μm以下の範囲にあるものを用いることができる。ここで、平均粒径は、体積基準によるメディアン径を意味し、レーザ回析・散乱式粒度分析測定によって測定した値である。
硅石フィラーは、本発明の硬化性組成物中に、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、50質量部以上の範囲で含まれることが好ましく、55質量部以上の範囲で含まれることがより好ましい。硅石フィラーは、本発明の硬化性組成物中に、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、75質量部以下の範囲で含まれていることが好ましく、72質量部以下の範囲で含まれていることがより好ましく、70質量部以下の範囲で含まれていることがさらに好ましい。硅石フィラーは、本発明の硬化性組成物中に、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、50質量部以上75質量部以下の範囲で含まれていてもよく、55質量部以上72質量部以下の範囲で含まれていてもよい。硅石フィラーを上記の範囲で含むことにより、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐熱性と耐傷付き性を向上させ得、本発明の硬化性組成物の粘度を取り扱いの容易な範囲に調製し得、本発明の硬化性組成物のハンドリング性を良好とし得る。
硅石フィラーは、成分(A2)100質量部に対して、250質量部以上の範囲で含まれることが好ましく、300質量部以上の範囲で含まれることがより好ましく、310質量部以上の範囲で含まれることがさらに好ましく、400質量部以上で含まれていてもよい。上記硅石フィラーは、成分(A2)100質量部に対して、450質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、440質量部以下の範囲で含まれることがより好ましく、430質量部以下の範囲で含まれることがさらに好ましい。硅石フィラーは、例えば、成分(A2)100質量部に対して、250質量部以上450質量部以下の範囲で含まれてもよく、300質量部以上450質量部以下の範囲で含まれてもよく、310質量部以上450質量部以下の範囲で含まれてもよい。硅石フィラーを上記の範囲で含むことにより、成形体の耐熱性と耐傷付き性を向上させ得、本発明の硬化性組成物の粘度を取り扱いの容易な範囲に調製し得、硬化性組成物のハンドリング性を良好にし得る。
ガラスフィラーは、非晶性シリカを主成分として含むフィラーである。ガラスフィラーは、Si原子と他の金属原子とを有するガラスからなる。他の金属原子としては、Al、Ca、Mg、Zr、Na、Sr、およびZn等が挙げられる。
ガラスは、Si原子と2以上の他の金属原子とを含んでいてもよい。ガラスとしては、例えば、SiO2と、他の金属酸化物とを含むガラスが挙げられる。SiO2以外の金属酸化物としては、Al2O3、CaO、MgO、ZrO2、Na2O、SrO、およびZnO等が挙げられる。ガラスは、SiO2と、2以上の他の金属酸化物を含んでいてもよい。非晶性シリカを主成分として含むガラスフィラーは、ガラスフィラー100質量部に対して、SiO2を60質量部以上含むことが好ましい。SiO2の含有量は、ICP発光分光分析法を用いてSi量を測定することにより求めることができる。
ガラスフィラーは、さらにB2O3、F2等の成分を含んでいてもよい。ガラスフィラーとしては、組成の異なる2種以上のガラスフィラーを併用してもよい。
ガラスフィラーは、粒子形状にあるものを用いることができる。ガラスフィラーのメディアン径は、1μm以上20μm以下の範囲であることが好ましく、1μm以上10μm以下の範囲であることがより好ましく、3μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
ガラスフィラーのメディアン径が上記の範囲内であることによって、硬化性組成物の流動性がより良好になり得る。このような硬化性組成物は、より優れた耐傷付き性を有する成形体の形成に寄与し得る。ガラスフィラーのメディアン径は、レーザ回折法により計測することができる。具体的には、JIS Z8825に準拠して粒度分布を測定し、得られる体積基準の累積分布において、50%累積粒子径、すなわち、d50値をメディアン径と定めることができる。
ガラスフィラーは、本発明の硬化性組成物中に、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、50質量部以上の範囲で含まれることが好ましく、55質量部以上の範囲で含まれることがより好ましく、60質量部以上の範囲で含まれることがさらに好ましい。ガラスフィラーは、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、75質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、72質量部以下の範囲で含まれることがより好ましく、70質量部以下の範囲で含まれることがさらに好ましい。ガラスフィラーを上記の範囲で含むことにより、成形体の耐熱性と耐傷付き性を向上させつつ、硬化性組成物の粘度を取り扱いの容易な範囲に調製し得、硬化性組成物のハンドリング性を良好にし得る。ガラスフィラーは、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、50質量部以上75質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、55質量部以上72質量部以下の範囲で含まれることがより好ましく、60質量部以上70質量部以下の範囲で含まれることがさらに好ましい。
ガラス繊維は、例えば、平均繊維長が0.5mm以上30mm以下の範囲のものを用いてもよく、平均繊維長が1mm以上15mm以下の範囲のものを用いてもよい。ガラス繊維とは、繊維形状をしたもので、ガラス繊維の材質としては、例えば、アルカリガラスおよび無アルカリガラスが挙げられる。ガラス繊維は、平均繊維長の異なる2以上のガラス繊維を組み合わせて用いてもよい。
ガラス繊維は、例えば、平均径が5μm以上20μm以下の範囲のものを用いることができる。
ガラス繊維は、表面が表面処理されたものであってもよい。表面処理としては、例えば、シランカップリング剤による処理が挙げられる。表面処理後にガラス繊維の表面に存在する官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等が挙げられる。成形体中の樹脂との界面強度をより高める点で、上記官能基は、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリル基、またはメルカプト基であることが好ましい。
無機フィラーを加えることにより、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐熱性が向上し得、成形体の耐傷付き性が良好になり、ガラス繊維を加えることで、さらに成形体の耐衝撃性が良好になり得る。
無機フィラーは、本発明の硬化性組成物中、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、50質量部以上の範囲で含まれていてもよく、55質量部以上の範囲で含まれていてもよく、60質量部以上の範囲で含まれていてもよく、65質量部以上の範囲で含まれていてもよく;85質量部以下の範囲で含まれていてもよく、80質量部以下の範囲で含まれていてもよく、77質量部以下の範囲で含まれていてもよい。無機フィラーは、硬化性組成物中、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、60質量部以上85質量部以下の範囲で含まれていてもよく、65質量部以上80質量部以下の範囲で含まれていてもよく、65質量部以上77質量部以下の範囲で含まれていてもよい。無機フィラーを上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐熱性と耐傷付き性を向上させ得、硬化性組成物の粘度を取り扱いの容易な範囲に調製し得、硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得る。
硅石フィラーおよびガラスフィラーの少なくとも一方(以下、成分(c)と称することがある)は、本発明の硬化性組成物中、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、50質量部以上の範囲で含まれていてもよく、55質量部以上の範囲で含まれていてもよく、60質量部以上の範囲で含まれていてもよく、75質量部以下の範囲で含まれていてもよく、72質量部以下の範囲で含まれていてもよく、70質量部以下の範囲で含まれていてもよい。成分(c)は、硬化性組成物中、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、50質量部以上75質量部以下の範囲で含まれていてもよく、55質量部以上72質量部以下の範囲で含まれていてもよく、60質量部以上70質量部以下の範囲で含まれていてもよい。成分(c)を上記の範囲で含むことにより、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐熱性と耐傷付き性を向上させ得、硬化性組成物の粘度を取り扱いの容易な範囲に調製し得、硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得る。
一の態様において、無機フィラーは、硅石フィラーおよびガラス繊維である。好ましくは、本発明の硬化性組成物は、さらに顔料としてカーボンブラックを含む。本態様において、硬化性組成物は、好ましくは、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対し、硅石フィラーを、50質量部以上75質量部以下の範囲で含み、かつ、カーボンブラックを0.1質量部以上12質量部以下の範囲で含む。硅石フィラーとカーボンブラックを上記の範囲で含むことにより、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐熱性、耐傷付き性および外観を向上させ得、本発明の硬化性組成物のハンドリング性を良好にし得る。
一の態様において、無機フィラーは、ガラスフィラーおよびガラス繊維である。好ましくは、本発明の硬化性組成物は、さらに、顔料として酸化チタンを含む。本態様において、硬化性組成物は、好ましくは、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対し、ガラスフィラーを、50質量部以上75質量部以下の範囲で含み、かつ、酸化チタンを0.1質量部以上5質量部以下の範囲で含む。ガラスフィラーと酸化チタンを上記の範囲で含むことにより、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐熱性、耐傷付き性および外観を向上させ得、硬化性組成物のハンドリング性を良好にし得る。
本発明の硬化性組成物中、成分(c)とガラス繊維との含有量比、即ち、成分(c)/ガラス繊維は、質量基準で、3/1以上100/1以下であることが好ましく、4/1以上80/1以下であることがより好ましく、5/1以上30/1以下であることが特に好ましい。成分(c)とガラス繊維との含有量比が上記の範囲内であることによって、硬化性組成物の流動性がより良好になり得、該硬化性組成物を所望の成形体に成形しやすくなる。
より好ましい態様においては、本発明の硬化性組成物において、無機フィラーとして、ガラスフィラーまたは硅石フィラーの少なくとも一方と、ガラス繊維とを含む。本態様においては、ガラス繊維を、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、2質量部以上20質量部以下の範囲で含む。
本発明の硬化性組成物は、補強材を、さらに含むことができる。補強材としては、例えば、ビニロン繊維、アクリル繊維を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。補強材は、硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐衝撃性の向上に寄与し得る。
補強材は、例えば、成分(A1)、成分(A2)、成分(A3)、成分(B)、無機フィラー、補強材、顔料および助剤の総量100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲で用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、架橋ゴム粒子をさらに含むことができる。
架橋ゴム粒子を含むことにより、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる成形体の耐衝撃性が良好になり得る。架橋ゴム粒子を含むことにより、本発明の硬化性組成物のハンドリング性が良好になり得、良好に混合され得る。例えば、本発明の硬化性組成物をSMCまたはBMCとするときに、SMCまたはBMCのハンドリング性が良好になり得る。特に、BMCとしたときに、良好にまとまり得るBMCが得られ得る。
架橋ゴム粒子の一次粒子の平均粒径は、50nm以上500nm以下の範囲にあることが好ましく、70nm以上300nm以下の範囲にあることがより好ましい。上記一次粒子の平均粒径は、成形体の断面を染色し、観察される粒子の径を測定することで求められる。
架橋ゴム粒子は、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を有する材料から形成され得る。炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体としては、例えば、マレイン酸ジアリル、(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは1種のみ用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋ゴム粒子は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン、α-アルキルスチレン、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1の単量体に由来する構成単位と、上記炭素-炭素二重結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位とを有する材料から形成されてもよい。
上記(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、例えば、成分(A2-1)、または成分(A2-2)として上記に例示したものを挙げることができる。(メタ)アクリロイル基を有する単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート等のプロピル(メタ)アクリレート;n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等のブチル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ラウリル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
α-アルキルスチレンとしては、例えば、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレンを挙げることができる。
架橋ゴム粒子は、単層のゴム粒子であっても2以上の層を有する多層のゴム粒子であってもよい。好ましくは、架橋ゴム粒子は多層のゴム粒子である。
好ましくは、架橋ゴム粒子は、ゴム状ポリマーからなる材料、および、ガラス状ポリマーからなる材料からなる群より選ばれる少なくとも1の材料から形成される。ゴム状ポリマーからなる材料としては、アクリル酸エステルに由来する構成単位を50質量%以上含む材料を、ガラス状ポリマーからなる材料としては、メタクリル酸エステルに由来する構成単位を50質量%以上含む材料を含む材料を挙げることができる。
アクリル酸エステルは、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸エステルであることが好ましく、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシルを挙げることができる。
メタクリル酸エステルは、炭素数1~8のアルキル基を有するメタクリル酸エステルであることが好ましく、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、およびメタクリル酸シクロヘキシルを挙げることができる。
なお、以下において、ゴム状ポリマーからなる材料から形成される層または部分を「軟質層」、ガラス状ポリマーからなる材料から形成される層または部分を「硬質層」と称することがある。すなわち、上記架橋ゴム粒子は、軟質層、および、硬質層からなる群より選ばれる少なくとも1から形成される。
軟質層は、さらに、スチレン、イソプレン、およびクロロプレンからなる群より選ばれる少なくとも1の単量体に由来する構成単位をさらに含む材料からなり得る。
硬質層は、炭素数1~4のアルキル基を有するアクリル酸エステル、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1の単量体に由来する構成単位をさらに含む材料からなり得る。炭素数1~4のアルキル基を有するアクリル酸エステルとしては、アクリル酸n-ブチル等が挙げられる。
好ましい態様において、架橋ゴム粒子は、多層構造のゴム粒子であり、さらに好ましくは、少なくともコア部とコア部を覆う被覆層とを有し、前記コア部および前記被覆層の少なくとも一方が、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を有する材料から形成される粒子である。炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体は上記のとおりである。上記コア部とは、粒子の最も中心に存在する部分である。
コア部は、好ましくは、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を有する材料から形成される。コア部を形成する材料に含まれる炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体単位の含有量は、コア部を形成する材料100質量部に対して、好ましくは、0.0001質量部以上10質量部以下の範囲であり得る。
コア部は、硬質層および軟質層のいずれから形成されてもよい。被覆層は、硬質層および軟質層のいずれから形成されてもよい。例えば、コア部が硬質層から形成され、被覆層が軟質層から形成されていてもよい。
被覆層は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を有する材料から形成されることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、成分(A2)として記載した単量体を用いることができ、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アリルを用いることができる。
一の態様において、被覆層を構成する材料は、さらにスチレンに由来する構成単位を含み得る。すなわち、被覆層を構成する材料は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位およびスチレンに由来する構成単位を有し得る。本態様において、被覆層は、好ましくは、軟質層から形成される。
一の態様において、被覆層は、ゴム架橋粒子の最外層であり、さらに好ましくは、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を含まず、より好ましくは架橋構造を有しない。ここで、最外層とは、ゴム架橋粒子の粒子表面を形成する材料を含む層をいう。すなわち、最外層は、粒子の最も中心から離れて存在する層である。本態様において、架橋ゴム粒子は、コア部と被覆層とを有し、該被覆層は最外層である。本態様において、コア部は、1層から形成されることが好ましい。
一の態様において、被覆層は、コア部を覆う第1の被覆層と、第1の被覆層を覆う最外層とを含む。最外層は、第1の被覆層を直接覆ってもよく、別の層が介在するように第1の被覆層を覆ってもよい。コア部および最外層は、上記のとおりである。
本態様において、架橋ゴム粒子は、軟質層と硬質層とをそれぞれ1以上有する二層以上を有するゴム粒子であることが好ましい。
一の態様において、架橋ゴム粒子は、軟質層と硬質層とをそれぞれ1以上有する三層以上を有する架橋ゴム粒子であることが好ましい。本態様の架橋ゴム粒子は、成形加工時の熱劣化や加熱によるゴム粒子の変形を抑制し、成形体の耐熱性を特に向上する観点から有利である。なお、架橋ゴム粒子中に、2以上の軟質層、または、2以上の硬質層が存在するとき、各軟質層、または、各硬質層は、それぞれ同じ材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成されていてもよいが、例えば、異なる材料から形成される。
本態様の架橋ゴム粒子は、粒子の中心から外側に向かって順に、コア部、中間層、および最外層を有する構造であることが好ましい。コア部および最外層については上記のとおりである。中間層とは、コア部と最外層の間に存在する層であり、例えば、上記第1の被覆層である。中間層は、2以上の層を有していてもよい。本態様の架橋ゴム粒子において、コア部および最外層は、軟質層から形成されても硬質層から形成されてもよく、中間層は、軟質層から形成されても硬質層から形成されてもよく、軟質層と硬質層の積層体から形成されてもよい。
本態様の架橋ゴム粒子の構造としては、例えば、粒子の中心から外側に向かって順に、軟質層-硬質層-軟質層-硬質層、軟質層-硬質層-硬質層、軟質層-軟質層-硬質層、硬質層-軟質層-硬質層、硬質層-硬質層-軟質層-硬質層、硬質層-軟質層-硬質層-硬質層から形成された構造が挙げられる。好ましくは、上記構造は、粒子の中心から外側に向かって順に、硬質層-軟質層-硬質層から形成された三層構造、硬質層-硬質層-軟質層-硬質層から形成された四層構造、または硬質層-軟質層-硬質層-硬質層から形成された四層構造である。
本態様の架橋ゴム粒子は、好ましくは、コア部および最外層が硬質層から形成され、中間層が軟質層から形成される三層構造のゴム粒子である。コア部および最外層が硬質層から形成されることにより、架橋ゴム粒子の変形が抑制され得る。中間層が軟質層から形成されることにより、架橋ゴム粒子の靭性が向上し得る。
本態様において、最外層は、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を有しないことが好ましく、硬質層から形成されることがより好ましい。さらに好ましくは、最外層は、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、およびアクリル酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも2の構成単位を有する材料から形成される共重合体である。最外層は、特に好ましくはメタクリル酸メチル、およびアクリル酸メチルに由来する構成単位を有する材料から形成される。
本態様において、コア部は、好ましくは、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を有する硬質層から形成される。
本態様において、コア部を形成する材料に含まれる炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体単位の含有量は、コア部を形成する材料100質量部に対して、好ましくは、0.0001質量部以上10質量部以下の範囲であり得る。
本態様において、より好ましくは、コア部は、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位、炭素数1以上4以下のアルキル基を有するメタクリル酸エステルに由来する構成単位、または炭素数1以上4以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する構成単位を有する材料から形成される。上記コア部は、例えば、コア部を形成する材料100質量部に対して、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を、0.01質量部以上10質量部以下、メタクリル酸メチル等の炭素数1以上4以下のアルキル基を有するメタクリル酸エステルに由来する構成単位を、60質量部以上99.99質量部以下、アクリル酸メチル等の炭素数1以上4以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する構成単位を、0質量部以上30質量部以下で含み得る。特に好ましくは、上記コア部は、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体、メタクリル酸メチル、およびアクリル酸メチルに由来する構成単位を有する材料から形成され、特に好ましくは、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体、メタクリル酸メチル、およびアクリル酸メチルに由来する構成単位からなる材料から形成される。
本態様において、好ましくは、中間層は、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を有する材料から形成され、より好ましくは炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を有する硬質層から形成される。
本態様において、上記中間層を形成する材料に含まれる炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体単位の含有量は、中間層を形成する材料100質量部に対して、好ましくは、0.0001質量部以上10質量部以下であり得る。
本態様において、より好ましくは、中間層は、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位、炭素数1以上8以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する構成単位、およびスチレンに由来する構成単位からなる群より選ばれる少なくとも1を有する材料から形成される。中間層は、例えば、中間層を形成する材料100質量部に対して、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体に由来する構成単位を、0.01質量部以上10質量部以下、アクリル酸n-ブチル等の炭素数1以上8以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する構成単位を、40質量部以上99.99質量部以下、スチレンに由来する構成単位を、0質量部以上50質量部以下の範囲で含み得る。特に好ましくは、中間層は、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体、アクリル酸n-ブチルおよびスチレンに由来する構成単位を有する材料から形成され、特に好ましくは、炭素-炭素不飽和結合を2以上有する多官能単量体、アクリル酸n-ブチルおよびスチレンに由来する構成単位からなる材料から形成される。
本態様において、架橋ゴム粒子中、コア部および中間部の厚みと最外層の厚みとの比は、例えば、一次粒子において、コア部および中間部の厚み:最外層の厚みが20:1~5:1であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、助剤(減粘剤)を、さらに含むことができる。
減粘剤としては、例えば、リン酸エステル型の界面活性剤を挙げることができる。リン酸エステル型の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12~15)エーテルリン酸を用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、さらに、離型剤、紫外線吸収剤、染料、重合抑制剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、難燃化剤等を含むことができる。
離型剤としては、リン酸ポリエステル、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛を例示することができる。
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系、サリレート系、シアノアクリレート系、シュウ酸アニリド系、または、ベンゾフェノン系等を用いることができる。
重合抑制剤としては、例えば、キノン類、ハイドロキノン類、p-tert-ブチルカテコール等のフェノール類を挙げることができる。
連鎖移動剤としては、例えば、t-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス-(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β-メルカプトプロピオン酸;β-メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル等のチオール化合物を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤としては、例えば、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]を挙げることができる。
[成形体]
以下、本発明の成形体について説明する。
本発明の成形体は、本発明の硬化性組成物より形成される。
本発明の成形体は、キッチン用具、サニタリー用途等に用いられ得、例えば、キッチンシンク、カウンタートップ、または洗面ボウルであり得る。
以下、本発明の成形体の製造に適した製造方法の一例について説明する。
上記製造方法は、
成分(A1)および成分(A2)、ならびに(B)硬化剤、を含む硬化性組成物を調製する工程(a)、および
硬化性組成物を硬化させて成形体を形成する工程(b)、を含む。上記成分(A1)は、置換基を有していてもよいスチレンは、スチレンまたはα-アルキルスチレンであることが好ましい。
工程(a)は、成分(A1)、成分(A2)、および(B)を含む硬化性組成物を調製する工程である。
工程(a)は、例えば、20℃以上50℃以下の温度範囲で行うことができる。
一の態様において、工程(a)は、成分(A1)、成分(A2)、および(B)を含む混合物を調製し、この混合物を、例えば、40℃以上80℃以下の温度範囲において、例えば、1時間以上6時間以下で静置し、硬化性組成物を調製することを含み得る。このような工程を経ることにより増粘した硬化性組成物が得られる。本態様は、工程(b)において圧縮成形法を用いるときに有利である。
工程(a)は、例えば、成分(A1)、成分(A2)、および(B)を含む混合物を混練することを含み得る。上記混練には、例えば、ニーダー、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機、プラネタリーミキサー、トリミックスミキサー、ヘンシェルミキサーを用いることができる。
一の態様において、工程(a)は、成分(A1)、成分(A2)、および(B)を含む混合物を調製および混練し、硬化性組成物を調製することを含み得る。
一の態様において、工程(a)は、成分(A1)、成分(A2)、および(B)を含む混合物を調製し、その後、この混合物を混練することにより、硬化性組成物を調製することを含み得る。
一の態様において、工程(a)は、成分(A1)、成分(A2)、および(B)を含む混合物を調製および混練し、この混合物を、例えば、40℃以上80℃以下の温度範囲において、例えば、1時間以上6時間以下静置し、硬化性組成物を調製することを含み得る。
一の態様において、工程(a)は、成分(A1)、成分(A2)、および(B)を含む第1混合物を調製し、前記第1混合物を混練して第2混合物を形成し、さらに前記第2混合物を、例えば40℃以上80℃以下の温度範囲において、例えば、1時間以上6時間以下で静置し、硬化性組成物を調製することを含み得る。
工程(a)における硬化性組成物の調製は、一段階において各成分を調製してもよく、各成分を逐次的に添加し多段階で調製してもよい。
工程(a)において、各成分、例えば成分(A1)および成分(A2)は、必要に応じて、他の成分に溶解または分散させて加えることができる。
一の態様において、硬化性組成物は、さらに、成分(A3)を含む。
上記の態様において、工程(a)は、成分(A2)および成分(A3)を有するアクリルシロップを調製し、このアクリルシロップと成分(A1)および成分(B)を調製することを含んでいてもよい。本態様は、成分(A3)の硬化性組成物中における分散性を向上し得る観点から有利である。
工程(a)で得られる硬化性組成物は、例えば、液状、または固形状であり得る。
硬化性組成物が固形状である場合には、例えば、SMCまたはBMCであり得る。硬化性組成物がSMCまたはBMCである場合には、工程(a)において、成分(A1)、成分(A2)および(B)を含む混合物を調製および混練することを含むことが好ましい。
工程(b)は、工程(a)で得られた硬化性組成物を硬化させて成形体を形成する工程である。
好ましくは、工程(b)は、圧縮成形法を用いて、硬化性組成物を硬化させて成形体を形成することを含み得る。
圧縮成形法としては、当該技術分野において通常用いられる方法を用いることができる。
好ましい態様において、工程(b)は、圧縮成形法を用いて、硬化性組成物を硬化させて成形体を形成することを含む。即ち、工程(b)は、工程(a)で得られた硬化性組成物を加熱および圧縮成形し、硬化性組成物を硬化させて成形体を形成し得る。本態様によると、複雑な形状の成形体の形成が容易になり得る。本態様によると、得られる成形体の寸法精度が良好になり得る。また、本態様によると、得られる成形体の表面の平滑性が高くなり得る。
本態様において、より具体的には、SMCまたはBMCである硬化性組成物を、一対の上金型および下金型を備えた金型内に配置し、加圧下においてSMCまたはBMCを加熱および圧縮成形を行い、成形体を形成し得る。
本態様において、加熱温度は、硬化性組成物の硬化が行われる温度であればよく、成分(B)の10時間半減期温度よりも高い温度で行うことが好ましく、100℃以上の温度で行うことがより好ましい。加熱温度は、硬化性組成物に含まれる成分、例えば、成分(A2)および成分(A3)の分解温度よりも低いことが好ましく、例えば、150℃以下、より具体的には140℃以下で行うことができる。
本態様において、圧縮は、通常、3MPa以上12MPa以下の圧力下で行われる。
本態様において、加熱および圧縮成形の時間は、例えば、1分以上50分以下とすることができる。
本態様において、上記工程(b)は、硬化性組成物を100℃以上の加熱下で、1分以上50分以下で行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
容量1Lの双腕型ニーダー(株式会社トーシン製)に、以下の成分を表1に記載の質量部で加えた。
・メチルメタクリレート(以下、「MMA」と称することがある)
・ネオペンチルグリコールジメタクリレート(FA-125M、日立化成株式会社製。以下、「NPG」と称することがある)
・ポリマー(特開平5-155907号公報の実施例3に記載方法で製造した(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を有する架橋構造体)
・低収縮化剤(スチレン-酢酸ビニルブロック共重合体、モディパーSV10B、日油株式会社製)
・硬化剤(カヤカルボン(登録商標)BIC-75、化薬アクゾ株式会社製)
・減粘剤(フォスファノールRS-710、東邦化学工業株式会社製)
・硅石フィラー(雪印特級No.4、丸釜釜戸陶料株式会社製、平均粒径6μm)
・ガラス繊維(ECS03-670、セントラルグラスファイバー株式会社製、繊維長3mm、繊維径13μm)
・顔料マスターバッチ(カーボンブラックを30重量%およびポリスチレン樹脂を70重量%含むマスターバッチ)
その後、40分間混練を行い、硬化性組成物を得た。
得られた硬化性組成物を、アルミパウチに封入した。このアルミパウチを、60℃の熱風乾燥炉内に3時間静置した。その後、アルミパウチを乾燥炉から取り出し、室温まで冷却し、粘土状の硬化性組成物(BMC)を得た。
(実施例2)
減粘剤としてRS-710の代わりにDYSPERBYK-111(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を用い、実施例1で用いた顔料マスターバッチとともにカーボンブラック(シグマ-アルドリッチ社製)を加えた以外は、実施例1と同じ成分を用いた。それぞれの成分の質量部を表1に表示する。
その後、実施例1と同様の操作を行い、粘土状の硬化性組成物(BMC)を得た。
(実施例3)
フィラーとして硅石フィラーの代わりにガラスフィラー(CF0023-05C、日本フリット社製、粒径6μm)を、顔料としてカーボンブラックの代わりに酸化チタン(R-TC30、HUNTSMAN社製、平均粒径0.2μm)を加えた以外は、実施例1と同じ成分を用いた。それぞれの成分の質量部を表1に表示する。
その後、実施例1と同様の操作を行い、粘土状の硬化性組成物(BMC)を得た。
(比較例1)
低収縮化剤として、モディパーSV10Bの代わりにモディパーMS10B(メチルメタクリレート-スチレン系ブロック共重合体、日油株式会社製)を、減粘剤としてRS-710の代わりにDYSPERBYK-111を用いた以外は実施例1と同じ成分を用いた。それぞれの成分の質量部を表1に表示する。
その後、実施例1と同様の操作を行い、粘土状の硬化性組成物(BMC)を得た。
表1に実施例および比較例で加えた成分、およびそれぞれの質量部を示す。表1において「-」は加えていないことを示す。
(実施例4)
ポリマーを用いないこと以外は、実施例1と同じ材料を用い、実施例1と同様に行い、硬化性組成物(BMC)を得た。なお、各材料の比率は、表2に記載の値とした。
(比較例2)
ポリマーを用いないこと以外は、比較例1と同じ材料を用い、比較例1と同様に行い、硬化性組成物(BMC)を得た。なお、各材料の比率は、表2に記載の値とした。
表2に、実施例4および比較例2で加えた材料、およびそれぞれの質量部を示す。表2において「-」は加えていないことを示す。
(実施例5)
NPGの代わりに、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学製:以下、「HD-N」と称することがある)を用いた以外は実施例1と同様に行い、硬化性組成物(BMC)を得た。
(比較例3)
NPGの代わりに、HD-Nを用いた以外は比較例1と同様に行い、硬化性組成物(BMC)を得た。
表3に、実施例5および比較例3で加えた材料、およびそれぞれの質量部を示す。表3において「-」は加えていないことを示す。
(実施例6)
各材料を表4に記載の比率で用いた以外は実施例1と同様に行い、硬化性組成物(BMC)を得た。
(実施例7)
MMAを用いないこと以外は実施例1と同じ材料を用い、実施例1と同様に行い、硬化性組成物(BMC)を得た。なお、各材料の比率は表4に記載の値とした。
表4に、実施例6および7で加えた材料、およびそれぞれの質量部を示す。表4において「-」は加えていないことを示す。
(BMCのハンドリング性評価)
実施例1~7および比較例1~3で得られたBMCについて、その物性を以下のように評価した。結果を表5に示す。
BMCのまとまり評価
A:BMC表面にパサつきや凝集物の付着がなく、BMCは良好にまとまった。
B:BMC表面がパサつき、凝集物が付着し、BMCのまとまりが悪かった。
BMCの粘着性評価
A:BMCの表面の粘着性が抑制されており、手で触ったときに、べたつきがなく、手に付着しなかった。
B:BMCの表面に粘着性があり、BMCの表面を触ったときに手に付着した。
ハンドリング性評価
A:BMCのまとまり評価およびBMCの粘着性評価が共にAであり、BMCのハンドリング性は最も良好であった。
B:BMCのまとまり評価はAであったが、BMCの粘着性評価はBであり、BMCのハンドリング性は良好であった。
C:BMCのまとまり評価がBであった。
(成形体の外観評価)
実施例1~7および比較例1~3において得られたBMCをそれぞれ、キャビティサイズ7150mm×60mm×4mmの成形型枠内に、70gのBMCを入れ、温度120℃、型締め圧力6MPaの条件下で、5分間圧縮成型して成形体を作製した。
得られた成形品について、その外観を目視で以下のように評価した。なお、以下においてA~Bは使用可能な範囲である。結果を表5および6に示す。
A:成形体の表面において部分的に白く見える箇所もなかった。
B:成形体の表面において部分的に白く見える箇所がわずかにあった。
C:成形体の表面において部分的に白く見える箇所があった。